(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】後方鼻神経アブレーション用針器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2021558967
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2020052811
(87)【国際公開番号】W WO2020201927
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516389190
【氏名又は名称】アクラレント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Acclarent, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】パルシ・ジェットミア
(72)【発明者】
【氏名】アクバリアン・ファテメ
(72)【発明者】
【氏名】ファング・イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】パパダキス・アタナシオス
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー・ジュリー・エム
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-509619(JP,A)
【文献】米国特許第05403311(US,A)
【文献】特表2007-508113(JP,A)
【文献】特表2005-527291(JP,A)
【文献】特開2007-000237(JP,A)
【文献】特開2010-263926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具であって、
(a)ユーザによって把持されるように構成された外側管と、
(b)前記外側管内に摺動可能に配設された針とを含み、前記針が、
(i)針管腔と、
(ii)組織を穿孔するように構成された遠位針先端部であって、前記針管腔が前記遠位針先端部に向かって開口し、前記遠位針先端部が前記針管腔から組織に流体を送達するように構成されている、遠位針先端部と、
(iii)前記遠位針先端部に配置された電極であって、組織をアブレーションするために
組織にRFエネルギーを供給するように動作可能である、電極とを含み、
前記針は、前記遠位針先端部が前記外側管内に同軸上に収容される近位格納位置と、前記遠位針先端部が前記外側管から露出して組織を穿孔するように構成される遠位延出位置との間で、前記外側管に対して並進可能であ
り、
前記針が、更に、
(i)前記針の第1の部分から横方向に延在する第1の突出部と、
(ii)前記針の第2の部分から前記横方向に延在する第2の突出部とを含み、
前記外側管が、
(i)前記第1の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第1の長手方向スロットと、
(ii)前記第2の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第2の長手方向スロットとを含む、外科用器具。
【請求項2】
前記電極は、前記針が前記遠位延出位置にあるときに単極RFエネルギーを組織に供給するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記遠位針先端部が、前記電極を画定する導電性材料を含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記針の外側面と前記外側管の内側面との間に配置された電気絶縁層を更に含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記電気絶縁層は、前記電気絶縁層の遠位端が前記遠位針先端部の近位で終端するように、前記針に固定されている、請求項4に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記針の近位端が、流体源と連結するように構成され、前記針管腔が、前記遠位針先端部を介して前記流体源から組織に流体を伝達するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記針が、シャフト軸に沿って長手方向に延在する針シャフトを更に含み、前記遠位針先端部は、前記針シャフトから遠位に延出し、前記遠位針先端部が前記シャフト軸と非同軸となるオフセット構成に向かって弾性的に付勢されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記遠位針先端部の開口部が、前記オフセット構成において前記シャフト軸から離れる方向に向けられている、請求項7に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記オフセット構成が、湾曲した構成又は角度の付いた構成のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記針が電気コネクタを更に含み、前記電気コネクタがRFエネルギー源と電気的に結合するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記第1の突出部がアクチュエータタブを含み、前記第2の突出部が電気コネクタを含む、請求項
1に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記外側管及び前記針は、前記針が前記近位格納位置にあるときに、前記外科用器具の中心軸に沿って同軸上に延在するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項13】
外科用システムであって、
(a)請求項1に記載の外科用器具と、
(b)前記針の前記電極と動作可能に結合されたRFエネルギー源と、
(c)前記針管腔と動作可能に結合された流体源と、
(d)前記RFエネルギー源と動作可能に結合された接地パッドとを含み、
前記外科用器具が、前記遠位針先端部を介して前記流体源から流体を分注しながら、前記RFエネルギー源からのRFエネルギーを用いて前記電極に通電するように動作可能であり、
前記電極が、組織をアブレーションするために、前記接地パッドと協働して、単極RFエネルギーを
組織に供給するように構成されている、外科用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年4月4日に出願された、「Needle Instrument for Posterior Nasal Neurectomy Ablation」と題する米国特許出願第62/829,068号について優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
鼻炎は、鼻腔内の粘膜の刺激作用及び炎症として呈する医学的状態である。炎症は、過剰な量の粘液の生成をもたらし、これは鼻汁、鼻詰まり、くしゃみ、及び/又は後鼻漏を引き起こす可能性がある。アレルギー性鼻炎は、空中のアレルゲンなどの環境因子に対するアレルギー反応であり、非アレルギー性(又は「血管運動性の」)鼻炎は、環境要因とは独立して呈する慢性的な状態である。鼻炎の従来の治療としては、例えば、抗ヒスタミン剤、局所又は全身コルチコステロイド、及び局所抗コリン薬が挙げられる。
【0003】
症状が重度かつ持続的である難治性鼻炎の場合、更なる治療の選択肢は、翼突管(又は「翼状の」)神経の一部分の外科的除去であり、ヴィディアン神経切除術として知られる処置である。ヴィディアン神経切除術の理論的な基礎は、鼻炎が鼻腔の副交感神経と交感神経の神経支配間の不均衡、及び結果として生じる粘膜の粘液腺の過剰刺激によって引き起こされるということである。ヴィディアン神経切除術は、この不均衡をかき乱し、ヴィディアン神経の外科的治療を介して鼻粘膜分泌物を減少させることを目的とする。しかしながら、場合によっては、ヴィディアン神経切除術は、涙腺に付帯的損傷を引き起こす可能性があり、その涙腺は、ヴィディアン神経によって刺激される。かかる涙腺の損傷は、患者に慢性ドライアイなどの長期的な健康合併症をもたらすことが知られている。後鼻神経切除術、又は後鼻神経の一部分の外科的除去は、難治性鼻炎を治療するためのヴィディアン神経切除術の有効な代替法として知られている。
【0004】
図1は、鼻腔(10)、前頭洞(12)、蝶形骨洞(14)、及び蝶形骨(16)を示す、患者の頭部の一部分の左矢状面の図を示す。鼻腔(10)は、鼻甲介(20)と、中部鼻甲介(22)と、上部鼻甲介(24)とを含む鼻部の壁(18)によって横方向に画定される。ヴィディアン神経(32)は、蝶形骨(16)によって部分的に画定され、中部鼻甲介(22)と概ね整列して蝶形骨洞(14)の後方に位置するヴィディアン(すなわち「翼状の」)管(30)の内部に存在する。翼突管神経(32)は、より大きな錐体神経(34)と深い錐体神経(36)との接合部によってその後方の端部に形成され、その前方の端部において、鼻粘膜への血流の調節を司る翼口蓋神経節(38)と接合する。後鼻神経(40)は、翼突口蓋神経節(38)と接合し、下鼻甲介(20)を取り囲む領域を通って延在する。
【0005】
ヴィディアン神経切除術を行うための器具及び方法、並びに後方鼻神経は知られているが、本発明者らよりも以前に、添付の特許請求の範囲に記載された発明を行い、又は使用した者はいないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、上記の本発明の一般的な説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【
図1】患者の頭部の一部分の左矢状面の図を示しており、特定の副鼻腔及び神経の詳細を示し、ヴィディアン神経及び後鼻神経が含まれる。
【
図2】RFアブレーション器具を含む例示的な外科用システムの概略斜視図を示す。
【
図3】
図2のRFアブレーション器具の分解斜視図を示し、RFアブレーション器具の外側管及び内側針を示す。
【
図4A】
図2のRFアブレーション器具の側面断面図を示し、外側管に対して近位格納位置にある内針を示す。
【
図4B】
図2のRFアブレーション器具の側面断面図を示し、外側管に対して遠位延出位置にある内針を示す。
【
図5】
図2のRF外科用システムと共に使用するのに適した別の例示的なRFアブレーション器具の斜視図を示す。
【
図6A】
図5のRFアブレーション器具の遠位部分の側面断面図を示し、外側管に対して近位格納位置にある内針を示す。
【
図6B】
図5のRFアブレーション器具の遠位部分の側面断面図を示し、外側管に対して遠位延出位置にある内針を示す。
【
図7】
図2のRF外科用システムと共に使用するのに適した別の例示的なRFアブレーション器具の斜視図を示す。
【
図8A】
図7のRFアブレーション器具の遠位部分の側面断面図を示し、外側管に対して近位格納位置にある内針を示す。
【
図8B】
図7のRFアブレーション器具の遠位部分の側面断面図を示し、外側管に対して遠位延出位置にある内針を示す。
【
図9A】患者の頭部の一部分の左矢状面の図を示しており、患者の鼻腔内へRF外科用器具が挿入され、外側管に対して内針が遠位に延出して後鼻神経領域内の鼻部の壁を穿孔しているところを示している。
【
図9B】遠位延出位置にある
図9AのRFアブレーション器具の遠位部分の拡大概略側面図を示し、針の遠位端が、鼻部の壁面の下の後鼻神経の一部分にRFエネルギー及び液体を供給し、それによって神経部分をアブレーションするところを示す。
【
図9C】
図9Bの後鼻神経の概略側面図を示し、RF外科用器具によるRFアブレーション後の神経の標的部分を示す。
【0007】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の様々な実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を例示するものであり、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が、示される正確な配置に限定されない点は理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特定の実施例の以下の説明文は、本発明の範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴部、態様、実施形態、及び利点は、本発明を実施するために想到される最良の形態の1つを実例として示す以下の説明文より、当業者には明らかとなろう。理解されるように、本発明は、いずれも本発明から逸脱することなく、他の異なるかつ明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものとみなされるべきである。
【0009】
本開示の明瞭さのために、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して本明細書で定義される。「近位」という用語は、外科医のより近くに配置された要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近くにかつ外科医から更に離れて配置された要素の位置を指す。また、図面を参照して「上」、「下」、「上側」、「下側」、「垂直」、「水平」などの空間的用語が本明細書で使用される限り、このような用語は例示的な記述目的にのみ使用されて、限定も絶対も意図していないことが理解されるであろう。その点において、本明細書に開示されるものなどの外科用器具を、本明細書で図示及び記載するものに限定されない様々な配向及び位置で使用してもよいことが理解される。
【0010】
本明細書で使用されるとき、任意の数値、又は数値の範囲に関連する「約」、「ほぼ」などの用語は、参照される正確な値、並びに参照される特徴、又は特徴の組み合わせが、本明細書に記載されている意図された目的のために機能することができる適切な寸法の許容誤差を包含することが意図されている。
【0011】
I.延出可能なアブレーション針を備える器具を有する例示的なRFアブレーション外科用システム
いくつかの例では、従来のヴィディアン神経アブレーション術の代替として、後鼻神経(40)などの鼻神経の効果的かつ安全なRFアブレーションを容易にするために、格納位置と延出位置との間で選択的に作動可能なアブレーション針を有するRFアブレーション器具を提供することが望ましい場合がある。以下に説明する例示的なRFアブレーション器具(110、210、310)の各々は、このように機能する。
【0012】
図2は、高周波(RF)エネルギーを用いて、患者の鼻腔(10)内の、後鼻神経(40)などの神経をアブレーションするように動作可能な例示的なRFアブレーション外科用システム(100)を示す。外科用システム(100)は、外側管(120)と外側管(120)内に同軸に摺動可能に配設された内側アブレーション針(140)とを有するRFアブレーション器具(110)と、アブレーション針(140)と電気的に結合されたRF発生装置(102)と、アブレーション針(140)の中心管腔と流動的に結合された流体源(104)とを含む。本実施例のシステム(100)は、更に、アブレーション針(140)の遠位先端部(144)に配設された電極と電気的に接触する位置にある組織(例えば、神経)の単極RFアブレーションを可能にするために、以下でより詳細に説明する、RF発生装置(102)と電気的に結合されたRF接地パッド(106)を含む。流体源(104)は、アブレーション針(140)の中央管腔に流体を供給するように構成され、アブレーション針は、アブレーションされている組織に流体を分注して、組織の温度を調節し、任意選択的に、電極と組織との電気的結合を併せて強化する。
【0013】
図3~
図4Bに示すように、RFアブレーション器具(110)の外側管(120)は、近位端(122)と、遠位端(124)と、それらの間に延在する管腔(126)とを含む。管腔(126)は、後述するように、内部にアブレーション針(140)を摺動可能に受け入れるような大きさに形成される。外側管(120)の近位部分は、外側管(120)の第1の側面を通って横方向に延びる第1の長手方向スロット(128)と、外側管(120)の対向する第2の側面を通って横方向に延びる第2の長手方向スロット(130)(
図4A~
図4Bを参照されたい)とを含む。
【0014】
アブレーション針(140)は、針(140)の近位端を画定する細長いシャフト(142)と、針シャフト(142)から遠位に延び、アブレーション針(140)の遠位端を画定する遠位先端部(144)とを含む。遠位先端部(144)は、組織を穿孔するように構成された鋭利な先端で遠位に終端する。針管腔(146)は、針(140)の全体を通って長手方向に延在し、針管腔(146)が遠位先端部(144)で遠位に開いている。以下に説明するように、針管腔(146)は、流体源(104)と流動的に結合して、流体源(104)からアブレーション針(140)によってアブレーションされる組織に流体を伝達するように構成される。本実施例の針遠位先端部(144)は、針シャフト(142)及び外側管(120)と同軸上に延在する。他のバージョンでは、針遠位先端部(144)は、針シャフト(142)に対して非同軸上に延在する形状で予め形成されてもよい。そのようなバージョンでは、針遠位先端部(144)は、例えば、
図5~
図8Bに関連して以下で説明するように、そのような予め形成された形状に向かって弾性的に付勢されるにもかかわらず、針シャフト(142)及び外側管(210)と同軸上に一直線になる直線的な構成に向いて偏向可能に維持され得る。
【0015】
アブレーション針(140)は、更に、針遠位先端部(144)に配設された電極(150)を含む。電極(150)は、RF発生装置(102)から電極(150)と電気的に接触する位置にある組織にRFエネルギーを供給し、それによって組織をRFエネルギーでアブレーションするように構成される。本バージョンでは、針遠位先端部(144)及び針シャフト(142)は、ニッケル-チタン合金(又は「ニチノール」又はばね鋼などの導電性材料で形成され、その結果、針遠位先端部(144)自体が電極(150)を画定し、針シャフト(142)が針遠位先端部(144)にRFエネルギーを供給する導体として機能する。電気コネクタ(152)は、針シャフト(142)の近位部分に取り付けられ、RF発生装置と電気的に結合して、針シャフト(142)を介してRFエネルギーを電極(150)に供給するように構成される。他のバージョンでは、針遠位先端部(144)及び/又は針シャフト(142)は、非導電性材料で形成してもよく、及び/又は、電極(150)を、針遠位先端部(144)とは別個に形成して、針遠位先端部(144)に固定してもよい。いくつかのそのようなバージョンでは、電極(150)は、針シャフト(142)によって画定されない、ワイヤ(図示せず)などの導体を介して電気コネクタ(152)と電気的に結合されてもよい。
【0016】
上述したように、本実施例のRFアブレーション器具(110)は、針遠位先端部(144)に画定された単一の電極(150)を含む。
図2に示すように、電極(150)は、RF接地パッド(106)と協働して、単極RFエネルギーで組織を治療するように構成される。かかる構成は、後鼻神経(40)の効果的なRFアブレーションに必要とされる十分なエネルギーレベルを有利に提供する。ただし、他のバージョンでは、外科用システム(100)からRF接地パッド(106)を省略してもよく、針遠位先端部(144)に、バイポーラRFエネルギーで様々な種類(例えば、後鼻神経(40)以外)の組織を協働して治療するように構成された一対の電極(150)を設けてもよいことが理解されよう。そのような構成は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年2月15日に出願された、「Instrument for Endoscopic Posterior Nasal Nerve Ablation」と題する米国特許出願第62/806,009号が教示するところのいずれか1つ以上に従って構成及び動作可能とすることができる。
【0017】
加えて、いくつかのバージョンでは、針遠位先端部(144)は、更に、電極(150)によってアブレーションされている組織(例えば、神経)の状態を感知するように動作可能な1つ以上の組織センサを含んでもよい。そのような各々のセンサは、感知された状態を示す外科用システム(100)のプロセッサ(図示せず)に信号を伝達することができる。信号を受信することに応答して、次いで、システムプロセッサは、RF発生装置(102)から電極(150)に供給されるRFアブレーションエネルギーを調整する(例えば、動作を停止させる)ことができ、かつ/又は、感知された組織の状態を通知する、操作者への指示を提供することができる。いくつかのバージョンでは、かかるセンサは、アブレーション中に標的組織の温度を測定するように動作可能な熱電対を含んでいてもよい。他のバージョンでは、かかるセンサは、アブレーション中に組織の電気インピーダンスを測定するために低電力RF信号を標的組織に供給するように動作可能な一対の検出電極を含んでいてもよい。このようないくつかの変形形態では、かかる検出電極は、電極(150)とは別個に設けることができる。他のそのようなバージョンでは、電極(150)は、アブレーション電極及び検出電極の両方として動作可能であり得る。いずれの構成においても、低電力RF信号は、標的組織に対して、電極(150)によって供給される高電力RFアブレーションエネルギーと同時に、又は迅速に交互に供給することができる。標的組織が実質的に無傷でアブレーションされない状態のままである間、低電力RF信号は、比較的低いインピーダンスを有する組織を自由に通過することになる。組織のアブレーションが進行するに従い、検出電極は、組織のインピーダンスの増加を検出することになり、その増加は、システムプロセッサに伝達される。
【0018】
図3に最もよく示されているように、アブレーション針(140)は、更に、針シャフト(142)の外側面に設けられ、電気コネクタ(152)と針遠位先端部(144)との間に長手方向に延在する電気絶縁層(154)を含む。電気絶縁層(154)は、特に外側管(120)とアブレーション針(140)の両方が導電性材料で形成されているバージョンでは、針シャフト(142)と外側管(120)の内側面との間の電気的短絡を防止するように構成される。電気絶縁層(154)の遠位端は、針遠位先端部(144)が組織と接触するために露出され、それによって電極(150)として動作可能となるように、針遠位先端部(144)の近位端で終端する。いくつかのバージョンでは、電気絶縁層(154)は、コーティングとして針シャフト(142)に塗布してもよい。他のバージョンでは、電気絶縁層(154)は、管腔(126)を画定する外側管(120)の内側面に形成されてもよい。
【0019】
アブレーション針(140)は、更に、電気コネクタ(152)と一直線上に並んで、電気コネクタ(152)と対向する針シャフト(142)の近位部分から横方向外側に突出する細長いタブ(156)の形態の突出部を含む。タブ(156)は、外側管(120)に対して針(140)を長手方向に選択的に作動させるアドバンサーとして動作可能である。その点に関して、アブレーション針(140)は、アドバンサータブ(156)が第1の長手方向スロット(128)を通って横方向に突出し、かつ、電気コネクタ(152)が第2の長手方向スロット(130)を通って横方向に突出するように、外側管(120)内に摺動可能に収容される。アドバンサータブ(156)及び電気コネクタ(152)は、針シャフト(142)が管腔(126)を通って並進するときに、アドバンサータブ(156)が第1の長手方向スロット(128)内で長手方向に摺動し、これと同時に電気コネクタ(152)が第2の長手方向スロット(130)内で長手方向に摺動するように、針シャフト(142)に固定される。アドバンサータブ(156)は、非導電性材料で形成されてもよく、あるいは電気コネクタ(152)及び電極(150)から電気的に絶縁されてもよい。
【0020】
図4A及び
図4Bに示すように、アブレーション針(140)は、外側管(120)に対して、近位格納位置(
図4A)と遠位延出位置(
図4B)との間でアドバンサータブ(156)を介して作動可能である。
図4Aの例示的な近位格納位置では、アドバンサータブ(156)及び電気コネクタ(152)は、長手方向スロット(128、130)の近位端に配置されており、針遠位先端部(144)は、外側管(120)の遠位端内に隠れている。
図4Bの例示的な遠位延出位置では、アドバンサータブ(156)及び電気コネクタ(152)は、長手方向スロット(128、130)の遠位端に配置されており、針遠位先端部(144)は、外側管(120)の遠位端を越えて遠位に延在するように外側管(120)から露出している。図示のように、本実施例のアブレーション針(140)は、針(140)の近位端が、延在位置及び格納位置のいずれにおいても外側管(120)の近位端(122)の近位に延在するような十分な長さで形成され、その結果、針(140)が流体源(104)と結合した状態を維持することが可能になる。
図9A~
図9Cに関連して以下により詳細に説明するように、アブレーション針(140)は、RFアブレーション器具(110)の遠位端を鼻腔(10)に挿入した後に、近位格納位置から遠位延出位置まで作動させて、患者の鼻部の壁(18)を穿孔するように構成されている。
【0021】
II.弾力のある針先が成形された例示的な代替的なRFアブレーション器具
場合によっては、針遠位先端部(144)が針シャフト(142)の長手方向軸からオフセットされた予め形成された形状に向かって弾性的に付勢され、遠位針先端部(144)が外側管(120)から遠位に延在しているとき、針遠位先端部(144)は針シャフト(142)及び外側管(120)と非同軸となるように、RFアブレーション器具(110)のアブレーション針(140)を構成することが望ましい場合がある。そのようなオフセット構成では、針遠位先端部(144)は、シャフト(142)の長手方向軸から離れる方向に向けられるので、針シャフト(142)を曲げたり傾けたりすることなく、鼻腔(10)などの針遠位先端部(144)が配置される体腔の特定の部分に容易にアクセスするのにより適している。
【0022】
図5は、RFアブレーション器具(110)の代わりに外科用システム(100)と共に使用するのに適した例示的な代替のRFアブレーション器具(210)を示す。RFアブレーション器具(210)は、以下に別段の記載があることを除いて、上述したRFアブレーション器具(110)と同様である。RFアブレーション器具(110)と同様に、RFアブレーション器具(210)は、外側管(220)と、外側管(220)内に摺動可能に配設されたアブレーション針(240)とを含む。アブレーション針(240)は、外側管(220)と同軸上に配置された細長い針シャフト(242)と、単極RFエネルギーで組織をアブレーションするように構成された電極(250)を有する針遠位先端部(244)とを含む。針遠位先端部(144)とは異なり、針遠位先端部(244)は、針シャフト(242)及び外側管(220)と非同軸関係で、針遠位先端部(244)が針シャフト(242)の長手方向軸から離れる方向に向けられるように、予め形成された湾曲形状に向かって弾性的に付勢される。
【0023】
図6Aに示すように、針遠位先端部(244)は、アブレーション針(240)が外側管(220)に対して近位格納位置にあるとき、針シャフト(242)及び外側管(220)と同軸の直線的な構成に弾性的に変形するように構成される。
図6Bに示すように、遠位針先端部(244)は、遠位針先端部(244)を外側管(220)から露出させる針(240)の遠位延出に応答して、直線的な構成から、遠位針先端部(244)が針シャフト(242)及び外側管(220)と非同軸であるその自然な湾曲した構成に弾性的に変化するように構成される。有利には、かかる構成は、RFアブレーション器具(210)の遠位端を患者の体腔に挿入する間、遠位針先端部(244)が外側管(220)内に安全に収容されることを可能にする一方で、併せて、遠位針先端部(244)がその後に標的アブレーション部位への効果的なアクセスを促進する向きをとることを可能にする。
【0024】
図7は、RFアブレーション器具(110)の代わりに外科用システム(100)と共に使用するのに適した別の例示的な代替のRFアブレーション器具(310)を示す。RFアブレーション器具(310)は、以下に別段の記載があることを除いて、上述のRFアブレーション器具(110、210)と同様である。RFアブレーション器具(110、210)と同様に、RFアブレーション器具(310)は、外側管(320)と、外側管(320)内に摺動可能に配設されたアブレーション針(340)とを含む。アブレーション針(340)は、外側管(320)と同軸上に配置された細長い針シャフト(342)と、単極RFエネルギーで組織をアブレーションするように構成された電極(350)を有する遠位針先端部(344)とを含む。針遠位先端部(244)と同様に、針遠位先端部(344)は、針遠位先端部(344)が針シャフト(342)の長手方向軸から離れる方向に向く予め形成された構成に向かって弾性的に付勢される。具体的には、針遠位先端部(344)は、針遠位先端部(344)が針シャフト(342)及び外側管(320)と非同軸関係で針シャフト(342)に対して角度的に延在する角度の付いた構成に向かって弾性的に付勢される。
【0025】
図8Aに示すように、針遠位先端部(344)は、アブレーション針(340)が外側管(320)に対して近位格納位置にあるとき、針シャフト(342)及び外側管(320)と同軸の直線的な構成に弾性的に変形するように構成される。
図6Bに示すように、針遠位先端部(344)は、針遠位先端部(344)を外側管(320)から露出させる針(340)の遠位延出に応答して、直線的な構成からその元の湾曲した構成に弾性的に変化するように構成される。
【0026】
III.後鼻神経をアブレーションする例示的な方法
RFアブレーション外科用システム(100)及びRFアブレーション器具(110、210、310)の例示的な特徴を先で説明してきたが、ここで、システム(100)を用いて患者の後鼻神経(40)上で神経アブレーションを行う例示的な方法を、
図9A~
図9Cに関連して説明する。例示的な方法は、RFアブレーション器具(110)を用いて実施されることを示しているが、RFアブレーション器具(110、210、310)を用いて同様の方法を実施してもよいことが理解されよう。更に、後鼻神経を治療するための外科用システム(100)を示して説明しているが、外科用システム(100)は、鼻腔(10)内の他の神経をアブレーションするために、又は、患者の様々な他の解剖学的領域の組織をアブレーションするために、様々な他の外科手術用途に使用することができることが理解されよう。例えば、本明細書の教示は、以下の文献、2019年12月12日に公開され、「Apparatus and Method for Performing Vidian Neurectomy Procedure」と題する米国特許出願公開第2019/0374280号(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)、の教示のうちの少なくともいくつかと組み合わせてもよい。
【0027】
図9Aに示すように、RFアブレーション器具の遠位端は、鼻腔(10)に挿入され、下鼻甲介及び中鼻甲介(20、22)の後端に向かっており、これは、例えば、内視鏡(図示せず)によって提供される視覚化の下で実行することができる。後鼻神経(40)の標的部分が存在する鼻部の壁(18)の標的部位に到達すると、操作者は、アドバンサータブ(156)を遠位に前進させ、それにより、アブレーション針(140)を延ばし、針遠位先端部(144)で鼻部の壁(18)を穿孔する。次いで、
図9B及び
図9Cに示すように、単極RFエネルギーを用いて電極(150)に通電し、それにより、後鼻神経(40)の一部をアブレーションする。同時に、針遠位先端部(144)は、針管腔(146)からアブレーション部位に流体を送達し、それにより、アブレーション中に後鼻神経(40)及び周囲鼻組織の温度を調節する。上述したように、分注された流体は、電極(150)と後鼻神経(40)との間の電気的結合を強化するようにも機能し得る。
【0028】
本明細書には示されていないが、上述のRFアブレーション器具(110、210、310)のいずれか1つ以上は、患者内の針遠位先端部(144)の位置決めを更に容易にするために、画像誘導手術(IGS)ナビゲーションシステムの機能と組み合わされてもよい。例として、そのようなIGSナビゲーションシステムは、以下の文献の教示のうちの少なくともいくつかに従って、構築及び動作可能とすることができる。すなわち、2010年5月18日に発行され、「Methods and Devices for Performing Procedures within the Ear,Nose,Throat and Paranasal Sinuses」と題する米国特許第7,720,521号(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)、及び/又は米国特許出願公開第2014/0364725号、発明の名称「Systems and Methods for Performing Image Guided Procedures within the Ear,Nose,Throat and Paranasal Sinuses」(2014年12月11日公開)(開示内容は参照により本明細書に組み込まれている)。
【0029】
IV.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出におけるどの時点でも提示され得る、いずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではないと理解されよう。一切の権利放棄を意図するものではない。以下の実施例は、単なる例示の目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で構成及び適用が可能であると考えられる。また、いくつかの変形では、以下の実施例において言及される特定の特徴部を省略してよいことも考えられる。したがって、本発明者又は本発明者の利益の承継者により、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴部のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。以下に言及される特徴部以外の更なる特徴部を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の書類提出において示される場合、それらの更なる特徴部は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【実施例1】
【0030】
外科用器具であって、(a)ユーザによって把持されるように構成された外側管と、(b)当該外側管内に摺動可能に配設された針とを含み、当該針が、(i)針管腔と、(ii)組織を穿孔するように構成された遠位針先端部であって、当該針管腔が当該遠位針先端部に向かって開口し、当該遠位針先端部が当該針管腔から組織に流体を送達するように構成されている、遠位針先端部と、(iii)当該遠位針先端部に配置された電極であって、組織をアブレーションするために当該組織にRFエネルギーを供給するように動作可能である、電極とを含み、当該針は、当該遠位針先端部が当該外側管内に同軸上に収容される近位格納位置と、当該遠位針先端部が当該外側管から露出して組織を穿孔するように構成される遠位延出位置との間で、当該外側管に対して並進可能である、外科用器具。
【実施例2】
【0031】
当該電極は、当該針が当該遠位延出位置にあるときに単極RFエネルギーを組織に供給するように構成されている、実施例1に記載の外科用器具。
【実施例3】
【0032】
当該遠位針先端部が、当該電極を画定する導電性材料を含む、実施例1又は2のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例4】
【0033】
当該針の外側面と当該外側管の内側面との間に配置された電気絶縁層を更に含む、実施例1から3のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例5】
【0034】
当該電気絶縁層は、当該電気絶縁層の遠位端が当該遠位針先端部の近位で終端するように、当該針に固定されている、実施例4に記載の外科用器具。
【実施例6】
【0035】
当該針の近位端が、流体源と連結するように構成され、当該針管腔が、当該遠位針先端部を介して当該流体源から組織に流体を伝達するように構成されている、実施例1から5のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例7】
【0036】
当該針が、シャフト軸に沿って長手方向に延在する針シャフトを更に含み、当該遠位針先端部は、当該針シャフトから遠位に延出し、当該遠位針先端部が当該シャフト軸と非同軸となるオフセット構成に向かって弾性的に付勢されている、実施例1から6のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例8】
【0037】
当該遠位針先端部の開口部が、当該オフセット構成において当該シャフト軸から離れる方向に向けられている、実施例7に記載の外科用器具。
【実施例9】
【0038】
当該オフセット構成が、湾曲した構成又は角度の付いた構成のうちの少なくとも1つを含む、実施例7又は8のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例10】
【0039】
当該針が電気コネクタを更に含み、当該電気コネクタがRFエネルギー源と電気的に結合するように構成されている、実施例1から9のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例11】
【0040】
当該針が、横方向突出部を更に含み、当該外側管が、当該横方向突出部を摺動可能に受け入れる長手方向スロットを含み、当該横方向突出部が、当該長手方向スロットを通して露出され、それにより、当該横方向突出部が、当該外側管に対して当該針を作動させるためにユーザによって係合されるように構成されている、実施例1から10のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例12】
【0041】
当該針が、更に、(i)当該針の第1の部分から横方向に延在する第1の突出部と、(ii)当該針の第2の部分から横方向に延在する第2の突出部とを含み、当該外側管が、(i)当該第1の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第1の長手方向スロットと、(ii)当該第2の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第2の長手方向スロットとを含む、実施例1から11のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例13】
【0042】
当該第1の突出部がアクチュエータタブを含み、当該第2の突出部が電気コネクタを含む、実施例12に記載の外科用器具。
【実施例14】
【0043】
当該外側管及び当該針は、当該針が当該近位格納位置にあるときに、当該外科用器具の中心軸に沿って同軸上に延在するように構成されている、実施例1から13のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例15】
【0044】
外科用システムであって、(a)請求項1から14のいずれかに記載の外科用器具と、(b)当該針の当該電極と動作可能に結合されたRFエネルギー源と、(c)当該針管腔と動作可能に結合された流体源と、(d)当該RFエネルギー源と動作可能に結合された接地パッドとを含み、当該外科用器具が、当該遠位針先端部を介して当該流体源から流体を分注しながら、当該RFエネルギー源からのRFエネルギーを用いて当該電極に通電するように動作可能であり、当該電極が、組織をアブレーションするために、当該接地パッドと協働して、単極RFエネルギーを当該組織に供給するように構成されている、外科用システム。
【実施例16】
【0045】
外科用器具であって、(a)外側管と、(b)当該外側管内に摺動可能に配設された針とを含み、当該針が、(i)長手方向シャフト軸を画定するシャフトと、(ii)組織を穿孔するように構成された遠位先端部であって、当該遠位先端部が、当該長手方向シャフト軸に対するオフセット構成に向かって弾性的に付勢されている、遠位先端部と、(iii)当該遠位先端部に配設された電極であって、組織をアブレーションするために当該組織にRFエネルギーを供給するように動作可能である、電極とを含み、当該針は、当該遠位先端部が当該外側管内に収容される近位格納位置と、当該遠位先端部が当該外側管から露出する遠位延出位置との間で、当該外側管に対して並進可能であり、当該遠位先端部は、当該遠位先端部が当該外側管から遠位へ延出することに応じて、第1の構成から当該オフセット構成へと弾性的に変化するように構成されている、外科用器具。
【実施例17】
【0046】
当該遠位先端部が、当該第1の構成であるときに、当該長手方向シャフト軸と同軸上に延在するように構成されている、実施例16に記載の外科用器具。
【実施例18】
【0047】
当該オフセット構成が、当該長手方向シャフト軸に対して湾曲した構成又は角度の付いた構成のうちの少なくとも1つを含む、実施例16又は17のいずれかに記載の外科用器具。
【実施例19】
【0048】
RFアブレーション器具を用いて患者の後鼻神経をアブレーションする方法であって、当該RFアブレーション器具が、外側管と、当該外側管内に摺動可能に配設され、電極を備える遠位針先端部を有する針とを含み、当該方法が、(a)当該遠位針先端部が当該外側管内に格納された状態にある間に、当該RFアブレーション器具の遠位端を当該患者の鼻腔内に挿入すること、(b)当該後鼻神経を覆う鼻部の壁の一部分に当該RFアブレーション器具の当該遠位端を配置すること、(c)当該針を遠位に作動させて当該外側管から当該遠位針先端部を露出させること、(d)露出した当該遠位針先端部で当該鼻部の壁を穿孔して、当該電極を当該後鼻神経に電気的に接触させること、及び、(e)RFエネルギーを用いて当該電極に通電し、それによって、当該RFエネルギーを用いて当該後鼻神経の一部分をアブレーションすること、を含む、方法。
【実施例20】
【0049】
当該針が、当該遠位針先端部に向かって開口する管腔を含み、当該方法が、RFエネルギーを用いて当該電極に通電しながら、当該遠位針先端部を介して当該鼻部の壁内に流体を送達することを更に含む、実施例19に記載の方法。
【0050】
V.その他
本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が、当業者には容易に明らかとなろう。かかる改変及び変形は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0051】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるあらゆる特許、公報、又はその他の開示内容は、全体的に又は部分的に、組み込まれる内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載されるその他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれると理解されるべきである。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれると言及されているが、現行の定義、見解、又は本明細書に記載される他の開示内容と矛盾する任意の内容、又はそれらの部分は、組み込まれた内容と現行の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ、組み込まれるものとする。
【0052】
上記の装置の変形例は、医療専門家により行われる従来の治療及び処置における用途のみではなく、ロボット支援された治療及び処置における用途をも有することができる。単に一例として、本明細書の様々な教示は、ロボット外科用システム、例えばIntuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムなどに容易に組み込まれ得る。同様に、当業者であれば、本明細書における様々な教示を、以下のうちのいずれかの様々な教示と容易に組み合わせることができることを認識するであろう:1998年8月11日に発行され、「Articulated Surgical Instrument For Performing Minimally Invasive Surgery With Enhanced Dexterity and Sensitivity」と題する米国特許第5,792,135号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、2014年7月22日に発行され、「Robotically-Controlled Surgical End Effector System」と題する米国特許第8,783,541号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、2013年7月9日に発行され、「Drive Interface for Operably Coupling a Manipulatable Surgical Tool to a Robot」と題する米国特許第8,479,969号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、2014年8月12日に発行され、「Robotically-Controlled Cable-Based Surgical End Effectors」と題する米国特許第8,800,838号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、及び/又は2013年11月5日に発行され、「Robotically-Controlled Surgical End Effector System with Rotary Actuated Closure Systems」と題する米国特許第8,573,465号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0053】
上述の装置の変形例は、1回の使用後に処分するように設計することができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。変形例は、いずれか又は両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整され得る。再調整は、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立工程の、任意の組み合わせを含み得る。特に、装置のいくつかの変形例は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部分若しくは部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換後、装置のいくつかの変形例を、再調整用の施設において、又は処置の直前にユーザによってのいずれかで、その後の使用のために再組立することができる。当業者であれば、装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用することができることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
【0054】
単に一例として、本明細書に記載される変形例は、処置の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌技術では、装置をプラスチック製又はTYVEK製のバックなど、閉鎖及び封止された容器に入れる。次いで、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置いてもよい。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させ得る。次いで、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器内に保管してもよい。β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で既知のその他の任意の技術を用いて、装置を滅菌してもよい。
【0055】
以上、本発明の様々な実施形態を示し、記載したが、当業者による適切な改変により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。かかる可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかになるであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具であって、
(a)ユーザによって把持されるように構成された外側管と、
(b)前記外側管内に摺動可能に配設された針とを含み、前記針が、
(i)針管腔と、
(ii)組織を穿孔するように構成された遠位針先端部であって、前記針管腔が前記遠位針先端部に向かって開口し、前記遠位針先端部が前記針管腔から組織に流体を送達するように構成されている、遠位針先端部と、
(iii)前記遠位針先端部に配置された電極であって、組織をアブレーションするために前記組織にRFエネルギーを供給するように動作可能である、電極とを含み、
前記針は、前記遠位針先端部が前記外側管内に同軸上に収容される近位格納位置と、前記遠位針先端部が前記外側管から露出して組織を穿孔するように構成される遠位延出位置との間で、前記外側管に対して並進可能である、外科用器具。
(2) 前記電極は、前記針が前記遠位延出位置にあるときに単極RFエネルギーを組織に供給するように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(3) 前記遠位針先端部が、前記電極を画定する導電性材料を含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(4) 前記針の外側面と前記外側管の内側面との間に配置された電気絶縁層を更に含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(5) 前記電気絶縁層は、前記電気絶縁層の遠位端が前記遠位針先端部の近位で終端するように、前記針に固定されている、実施態様4に記載の外科用器具。
【0057】
(6) 前記針の近位端が、流体源と連結するように構成され、前記針管腔が、前記遠位針先端部を介して前記流体源から組織に流体を伝達するように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(7) 前記針が、シャフト軸に沿って長手方向に延在する針シャフトを更に含み、前記遠位針先端部は、前記針シャフトから遠位に延出し、前記遠位針先端部が前記シャフト軸と非同軸となるオフセット構成に向かって弾性的に付勢されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(8) 前記遠位針先端部の開口部が、前記オフセット構成において前記シャフト軸から離れる方向に向けられている、実施態様7に記載の外科用器具。
(9) 前記オフセット構成が、湾曲した構成又は角度の付いた構成のうちの少なくとも1つを含む、実施態様7に記載の外科用器具。
(10) 前記針が電気コネクタを更に含み、前記電気コネクタがRFエネルギー源と電気的に結合するように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
【0058】
(11) 前記針が、横方向突出部を更に含み、前記外側管が、前記横方向突出部を摺動可能に受け入れる長手方向スロットを含み、前記横方向突出部が、前記長手方向スロットを通して露出され、それにより、前記横方向突出部が、前記外側管に対して前記針を作動させるためにユーザによって係合されるように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(12) 前記針が、更に、
(i)前記針の第1の部分から横方向に延在する第1の突出部と、
(ii)前記針の第2の部分から横方向に延在する第2の突出部とを含み、
前記外側管が、
(i)前記第1の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第1の長手方向スロットと、
(ii)前記第2の突出部を摺動可能に受け入れるように構成された第2の長手方向スロットとを含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(13) 前記第1の突出部がアクチュエータタブを含み、前記第2の突出部が電気コネクタを含む、実施態様12に記載の外科用器具。
(14) 前記外側管及び前記針は、前記針が前記近位格納位置にあるときに、前記外科用器具の中心軸に沿って同軸上に延在するように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(15) 外科用システムであって、
(a)実施態様1に記載の外科用器具と、
(b)前記針の前記電極と動作可能に結合されたRFエネルギー源と、
(c)前記針管腔と動作可能に結合された流体源と、
(d)前記RFエネルギー源と動作可能に結合された接地パッドとを含み、
前記外科用器具が、前記遠位針先端部を介して前記流体源から流体を分注しながら、前記RFエネルギー源からのRFエネルギーを用いて前記電極に通電するように動作可能であり、
前記電極が、組織をアブレーションするために、前記接地パッドと協働して、単極RFエネルギーを前記組織に供給するように構成されている、外科用システム。
【0059】
(16) 外科用器具であって、
(a)外側管と、
(b)前記外側管内に摺動可能に配設された針とを含み、前記針が、
(i)長手方向シャフト軸を画定するシャフトと、
(ii)組織を穿孔するように構成された遠位先端部であって、前記遠位先端部が、前記長手方向シャフト軸に対するオフセット構成に向かって弾性的に付勢されている、遠位先端部と、
(iii)前記遠位先端部に配設された電極であって、組織をアブレーションするために前記組織にRFエネルギーを供給するように動作可能である、電極とを含み、
前記針は、前記遠位先端部が前記外側管内に収容される近位格納位置と、前記遠位先端部が前記外側管から露出する遠位延出位置との間で、前記外側管に対して並進可能であり、
前記遠位先端部は、前記遠位先端部が前記外側管から遠位へ延出することに応じて、第1の構成から前記オフセット構成へと弾性的に変化するように構成されている、外科用器具。
(17) 前記遠位先端部が、前記第1の構成であるときに、前記長手方向シャフト軸と同軸上に延在するように構成されている、実施態様16に記載の外科用器具。
(18) 前記オフセット構成が、前記長手方向シャフト軸に対して湾曲した構成又は角度の付いた構成のうちの少なくとも1つを含む、実施態様16に記載の外科用器具。
(19) RFアブレーション器具を用いて患者の後鼻神経をアブレーションする方法であって、前記RFアブレーション器具が、外側管と、前記外側管内に摺動可能に配設され、電極を備える遠位針先端部を有する針とを含み、前記方法が、
(a)前記遠位針先端部が前記外側管内に格納された状態にある間に、前記RFアブレーション器具の遠位端を前記患者の鼻腔内に挿入すること、
(b)前記後鼻神経を覆う鼻部の壁の一部分に前記RFアブレーション器具の前記遠位端を配置すること、
(c)前記針を遠位に作動させて前記外側管から前記遠位針先端部を露出させること、
(d)露出した前記遠位針先端部で前記鼻部の壁を穿孔して、前記電極を前記後鼻神経に電気的に接触させること、及び、
(e)RFエネルギーを用いて前記電極に通電し、それによって、前記RFエネルギーを用いて前記後鼻神経の一部分をアブレーションすること、を含む、方法。
(20) 前記針が、前記遠位針先端部に向かって開口する管腔を含み、前記方法が、RFエネルギーを用いて前記電極に通電しながら、前記遠位針先端部を介して前記鼻部の壁内に流体を送達することを更に含む、実施態様19に記載の方法。