(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】少なくとも1つの変位可能なコンタクトアセンブリを備えるモジュールコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20240311BHJP
H01R 27/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01R11/01 Q
H01R27/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004077
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】10 2021 100 997.9
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】クリス ビューヒリング
(72)【発明者】
【氏名】フランク ケーニー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル エーハイム
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ビヨルン ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ディストラー
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-106802(JP,A)
【文献】特開2015-167097(JP,A)
【文献】実開平04-092367(JP,U)
【文献】特開2019-009115(JP,A)
【文献】特開2017-089532(JP,A)
【文献】特開平11-025844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0403329(US,A1)
【文献】特開2017-27677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 4/34,4/38,4/58
H01R 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電気モジュール(2)、特に2つのバッテリモジュールを電気的に接続するためのモジュールコネクタ(1)であって、
導体アセンブリ(10)と、
互いに離間し、前記モジュールコネクタ(1)の
前記導体アセンブリ(10)によって互いに電気的に接続され、前記モジュールコネクタ(1)を前記2つの電気モジュール(2)に締結し、かつ前記2つの電気モジュール(2)と前記導体アセンブリ(10)との間の電気接続を確立するように構成されている2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)と、
前記導体アセンブリ(10)および前記コンタクトアセンブリ(4、4a、4b)が収容されている電気絶縁ハウジング(20)とを備え、
前記2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)は、同一であるように構成され、前記2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)の一方が他方に向かう変位方向(18)および/または他方から離れる変位方向(18)において、前記導体アセンブリ(10)に対して変位可能に前記導体アセンブリ(10)に締結されており、
前記導体アセンブリ(10)は
2つの孔(63)を含み、
それぞれの前記孔(63)を、前記変位可能な
2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)
のそれぞれが貫通し、
それぞれの前記孔(63)において、前記変位可能な
2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)
のそれぞれが変位可能であ
り、
前記導体アセンブリ(10)に締結された前記2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)間の距離は、前記導体アセンブリ(10)の変形なしに、前記導体アセンブリ(10)に対する前記2つのコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)の少なくとも一方の前記変位方向(18)への変位により変更され、
前記ハウジング(20)は、前記変位方向(18)に伸縮式に構成されている、
モジュールコネクタ
(1)。
【請求項2】
前記孔(63)は長孔(64)であり、前記長孔(64)の長手方向(66)が前記変位方向(18)を向いている、請求項1に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項3】
前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)は、前記ハウジング(20)において変位方向(18)に固定されている、請求項1または2に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項4】
少なくとも前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)は締結要素(32)を含み、前記締結要素(32)は、前記導体アセンブリ(10)に対して回転軸(48)を中心に回転可能であり、前記回転軸(48)に沿って変位可能に前記ハウジング(20)に保持されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項5】
前記締結
要素(32)は、2つの離間した軸受点(47、60)において、前記導体アセンブリ(10)に対して前記回転軸(48)を中心に回転可能であり、前記回転軸(48)に沿って変位可能であり、前記2つの軸受点(47、60)は、前記導体アセンブリ(10)の異なる側に配置されている、請求項4に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項6】
少なくとも前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)は、前記導体アセンブリ(10)に対して変位可能なコンタクトリング(50)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項7】
前記コンタクトリング(50)と前記導体アセンブリ(10)とは、接触域(68)において接触し、前記接触域(68)の表面積は、前記コンタクトリング(50)に対する前記導体アセンブリ(10)の前記変位方向(18)の変位に関係なく同一である、請求項6に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項8】
少なくとも前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)の締結要素(32)と少なくとも前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a、4b)のコンタクトリング(50)とは、前記変位方向(18)において互いに変位不能に接続されている、請求項4または5および6または7に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項9】
前記コンタクトアセンブリ(4、4a、4b)の各々に、指接触保護部および/または接触保護部(40)が設けられ、前記指接触保護部および/または接触保護部(40)は軸受点(47、60)の一部である、請求項1から7および8のいずれか一項に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項10】
前記ハウジング(20)は、前記変位方向(18)において互いに対して変位可能な2つのハウジング部(26、28)を含み、前記2つのハウジング部(26、28)の一方が、前記2つのハウジング部(26、28)の他方内に突出する、請求項1から
9のいずれか一項に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項11】
少なくとも前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a)は、前記変位方向(18)の変位に対して、前記変位可能なコンタクトアセンブリ(4、4a)を収容する前記ハウジング部(26、28)に堅固に結合されている、請求項
10に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項12】
前記導体アセンブリ(10)は、少なくとも前記コンタクトアセンブリ(4、4a、4b)における電源レール(12、12a、12b)によって形成されている、請求項1から
11のいずれか一項に記載のモジュールコネクタ(1)。
【請求項13】
前記コンタクトリング(50)は、前記ハウジング(20)の座部(56)に受け入れられる半径方向に突出する肩部(52)を含み、前記肩部(52)は、前記導体アセンブリ(10)と前記ハウジング(20)との間に配置される、請求項6に記載のモジュールコネクタ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの電気モジュール、特に2つのバッテリモジュールを電気的に接続するためのモジュールコネクタに関する。バッテリモジュールは、電気自動車用のバッテリモジュールであることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
電気モジュールが格子状に配置されていても、モジュールコネクタに接続される2つの電気モジュール間の距離は、所定の基準距離からずれることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような位置ずれを補償することができるモジュールコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、最初に述べたモジュールコネクタに関して、互いに離間し、導体アセンブリによって互いに電気的に接続され、モジュールコネクタを2つの電気モジュールに締結し、かつ2つの電気モジュールと導体アセンブリとの間の電気接続を確立するように構成されている2つのコンタクトアセンブリによって、ならびに、導体アセンブリおよびコンタクトアセンブリが収容されている電気絶縁ハウジングによって達成され、2つのコンタクトアセンブリの少なくとも一方は、2つのコンタクトアセンブリの他方に向かう変位方向および/または他方から離れる変位方向において導体アセンブリに対して変位可能に導体アセンブリに締結されている。
【0005】
本発明による解決策により、2つのコンタクトアセンブリ間の距離を簡単な方法で変更することが可能になる。1つの変位可能なコンタクトコネクタを、導体アセンブリに対して動かすだけでよい。モジュール間の異なる距離を補償するために弾性的に曲げて開く必要がある湾曲した柔軟な導体アセンブリとは対照的に、本発明による解決策により、装着中に、力を使わない距離の変更が可能になる。
【0006】
上記の解決策を、以下で説明するさらなる構成によってさらに改良することができる。個々の構成はそれ自体独立して有利であり、必要に応じて互いに組み合わせることができる。
【0007】
有利な構成によれば、導体アセンブリは、孔、特に長孔を含むことができ、この孔を、変位可能なコンタクトアセンブリが導体アセンブリに対して変位可能に貫通する。特に、コンタクトアセンブリは、長孔に沿って変位可能であってよい。このような構成は、構造的に簡単で安価に製造できる。
【0008】
変位可能なコンタクトアセンブリは、それぞれの電気モジュールに完全に締結されるまで変位可能であることが好ましい。
【0009】
コンタクトアセンブリは、モジュールコネクタを2つの電気モジュールの一方に締結するための締結要素を含むことができる。締結要素を、例えば、ねじとして構成することができる。締結要素は、導体アセンブリの孔、特に長孔を貫通することができ、孔に沿って変位方向に変位可能であってよい。締結要素の変位性により、バッテリモジュール間の異なる距離を簡単な方法で補償することが可能になる。ねじは、良好な導電性を有する材料から作製することができ、モジュールコネクタを通る電流路の一部であってよく、この電流路に沿って電流が2つの電気モジュールの一方から他方へ流れる。ねじは必ずしもねじ山を含む必要はなく、ねじ山の代わりに、1つもしくは複数のラッチ要素または差込ロックが存在してもよい。
【0010】
変位可能な締結要素は、特に電気モジュールに締結するために、回転軸を中心に回転可能であってよく、回転軸に沿って変位可能にハウジングに保持されてよい。この構成により、例えば、ねじ山または差込ロックを用いて簡単な締結が可能になる。
【0011】
変位可能なコンタクトアセンブリまたは変位可能な締結要素(コンタクトアセンブリがこれを含む場合)はそれぞれ、ハウジングにおいて変位方向に固定されることが好ましい。固定部は、回転軸に垂直に伸びる平面に存在していてもよい。このような固定部により、帯電部への接触を可能にし得る間隙が確実に生じなくなる。このために、さらなる構成におけるハウジングは、少なくともコンタクトアセンブリに指および/または接触保護部を形成することもできる。
【0012】
さらなる有利な実施形態によれば、モジュールコネクタの残りの部分は、コンタクトアセンブリの周りを旋回可能であってよい。これにより、2つの電気モジュールを接続するためにモジュールコネクタを正確に位置合わせすることが可能になる。モジュールコネクタの残りの部分が周りを旋回可能なコンタクトアセンブリは、導体アセンブリに対して変位可能であっても固定されていてもよい。
【0013】
変位可能なコンタクトアセンブリまたは変位可能な締結要素(存在する場合)はそれぞれ、ハウジングにおいて、旋回軸に垂直に延びる平面に固定されることが好ましい。これも、コンタクトアセンブリまたは締結要素がハウジングに対して変位するときに普通なら生じ得る、モジュールコネクタの不要な間隙を防ぐのに役立つ。
【0014】
大電流に対して十分な導電性断面を提供するために、少なくとも変位可能なコンタクトアセンブリは、特に締結要素(存在する場合)と共に、導体アセンブリに対して変位可能なコンタクトリングを含むことができる。特に、コンタクトリングを、コンタクトアセンブリの残りの部分と一体に変位可能に組み合わせることができる。変位方向は、例えば、長孔の方向によって予め決めることができる。コンタクトリングはスリーブ状であってよい。コンタクトリングは電流路の一部である。コンタクトリングは、円形もしくは多角形のベース領域または外側輪郭と、締結デバイスのための通路開口部とを有することができる。
【0015】
コンタクトリングは、少なくともモジュールコネクタが2つの電気モジュールに取り付けられているモジュールコネクタの状態で、導体アセンブリに接触する。これにより、コンタクトリングを介した電流の流れが可能になる。加えてまたは代わりに、締結デバイスは、導体アセンブリと電気モジュールとの間に導電接続を確立することもできる。
【0016】
コンタクトリングと導体アセンブリとは、特に平面の接触域において互いに接触することができ、接触域の表面積は、導体アセンブリに対する変位可能なコンタクトアセンブリの変位または相対位置に関係なく同一である。±15%のずれがあっても、同一であるとみなされる。この構成により、モジュールコネクタの境界抵抗が、コンタクトアセンブリの変位位置とは無関係であることが確実になる。これにより、コンタクトアセンブリと導体アセンブリとの相対位置に関係なく、大電流であっても伝達することができる。
【0017】
接触域の表面積ができるだけ一定のままであることを確実にするために、長孔の長さは、接触域の平面においてそれぞれ測定された、コンタクトリングの通過開口部の直径の半分とコンタクトリングの外径の半分との合計以下であってよい。代わりにまたは加えて、長孔と長孔に最も近い導体アセンブリの端部との間の距離は、同様に接触域の平面においてそれぞれ測定された、コンタクトリングの外径と通路開口部の直径との差の半分以上でなければならない。
【0018】
コンタクトリングは、導体アセンブリに面した端部に、半径方向に突出する肩部を含むことができる。一方、この肩部は、導体アセンブリとコンタクトリングとの間でコンタクトリングによって拡大される。肩部はまた、ハウジングの相補座部に受けられ、このようにしてコンタクトリングをハウジングにおいて固定することができる。
【0019】
締結要素とコンタクトリングとを、変位方向において、または旋回軸および/もしくは回転軸に垂直な平面においてそれぞれ、互いに対して変位不能に接続することができる。このような固定は、例えば、締結要素が貫通するコンタクトリングの通路開口部によって可能になり得る。
【0020】
さらに有利な構成によれば、コンタクトアセンブリの締結要素の軸受点を、導体アセンブリの各側に設けることができ、締結要素は、軸受点において、導体アセンブリに対して回転軸を中心に回転可能であり、回転軸に沿って変位可能である。2つの離間した軸受点により、締結要素が食い込むことを防ぐ。
【0021】
回転軸に垂直な動きが、軸受点によって阻止されることが好ましい。軸受点を、コンタクトリングに位置させることができ、例えば、締結要素が貫通するコンタクトリングの通路開口部によって形成することができる。
【0022】
軸受点を、ハウジングと、締結要素の頭部、例えばねじ頭によって形成することができる。
【0023】
コンタクトアセンブリの各々に、指および/または接触保護部を設けることができる。指および/または接触保護部は、特に規格に準拠して構成され、動作中にモジュールコネクタの通電部品との不慮の接触を防ぐ。指および/または接触保護部は、軸受点、特にねじ頭の軸受点の一部であってよい。例えば、ねじ頭を、電気絶縁材料で被覆またはカバーすることができる。このようなねじ頭の指および/または接触保護部は、回転軸を中心に回転可能な方法で、ハウジング、例えばハウジングのカラーに当接することができる。
【0024】
モジュールコネクタの2つのコンタクトアセンブリの一方のみが導体アセンブリに対して変位可能であれば十分である。しかしながら、大きい距離の変化を補償することができるように、モジュールコネクタの両方のコンタクトアセンブリが、同一の構成であり、導体アセンブリに対して変位可能に導体アセンブリに締結されることも可能である。例えば、両方のコンタクトアセンブリは、導体アセンブリの孔、特に長孔を貫通することができ、孔において変位可能であってよい。
【0025】
さらなる有利な構成によれば、ハウジングを変位方向に伸縮式に構成することができる。ハウジングは、伸縮式であるため、通電要素との接触が確立され得る間隙が生じることなく、2つのコンタクトアセンブリ間の距離の変化に従うことができる。
【0026】
さらなる有利な構成によれば、ハウジングは、互いに対して変位可能な2つのハウジング部を含むことができ、2つのハウジング部の一方が、2つのハウジング部の他方内に突出するまたは挿入される。この構成によっても、ハウジングは、2つのコンタクトアセンブリ間の距離の変化に従うことができる。
【0027】
コンタクトアセンブリと導体アセンブリとは、ハウジング部に捕捉的に収容されていることが好ましい。それぞれ、コンタクトアセンブリを各ハウジング部に関連付けることができ、または各ハウジング部がコンタクトアセンブリを収容する。捕捉的なホルダにより、モジュールコネクタを組立て中に容易に取り扱うことができる。
【0028】
各ハウジング部を2つのハウジング半部から組み立てることができ、ハウジング半部の各々は、導体アセンブリの一部と2つのコンタクトアセンブリの一方との周りで組み立てられ、閉じられる。これにより、コンタクトアセンブリ、ハウジング部、および導体アセンブリの捕捉的な接続を簡単な方法で確立することができる。
【0029】
各コンタクトアセンブリは、変位方向の変位に対して、コンタクトアセンブリを収容するハウジング部に堅固に結合されていることが好ましい。したがって、この構成では、コンタクトアセンブリは、それぞれのハウジング部においてその位置を保持する。このような構成におけるコンタクトアセンブリ間の距離の変化の補償は、コンタクトアセンブリを収容するハウジングまたはハウジング部におけるコンタクトアセンブリの動きによってではなく、ハウジング部同士の相対的な動きによってのみ行われることが好ましい。これにより、規格に準拠した指および/または接触保護部を提供することがより容易になる。また、2つのコンタクトアセンブリ間の可能な最大距離が想定されているときでも、互いに対して変位可能なハウジング部が重なり合うことが好ましい。1つの構成では、2つのハウジング部が2つのコンタクトアセンブリの中間で重なり合う。
【0030】
導体アセンブリを、少なくともコンタクトアセンブリにおける電源レールによって形成することができる。電源レールは、矩形断面を有することが好ましく、矩形の平坦面が、電気モジュールまたはコンタクトリングの方向および電気モジュールまたはコンタクトリングから離れる方向を向いていることが好ましい。
【0031】
電源レールは、一方のコンタクトアセンブリから他のコンタクトアセンブリへ端から端まで延びることができる。このような場合の温度変動による長さの変化を補償するために、電源レールは、2つのコンタクトアセンブリ間に、特に中間に、アーチ、例えばU字状のアーチを有することができる。あるいは、導体アセンブリは、コンタクトアセンブリの2つの電源レール間に、可撓性導体部、例えば、ケーブル、編地、織布、または導体編組を含むことができる。可撓性導体部またはアーチは、温度に関連する長さの変化を補償するためだけに役立つ。コンタクトアセンブリ間の距離の適応は、可撓性導体部の弾性変形なしに、導体アセンブリに対する少なくとも1つの変位可能なコンタクトアセンブリの変位によってのみ行うべきである。これが、力を使わずにモジュールコネクタと電気モジュールとの接続を維持する唯一の方法である。
【0032】
以下で、図面を参照しながら、異なる単に例示的な構成に基づいて、本発明を例として説明する。個々の構成は、特徴の可能な組合せを再現しているに過ぎない。それぞれの特徴に関連する技術的効果が特定の適用に重要でない場合、構成の個々の特徴を上記の説明に従って省略することができる。逆に、特徴に関連する技術的効果が構成の特定の適用に重要である場合、この特徴を説明される構成に追加することができる。
【0033】
図中、機能および/または構造に関して互いに対応する特徴については同一の参照符号を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図1のモジュールコネクタの部分分解概略斜視図である。
【
図3】さらなるモジュールコネクタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1および
図2に、2つの電気モジュール2、例えば、2つのバッテリモジュール、特に電気自動車のバッテリモジュール2を、導電的な方法で接続するモジュールコネクタ1が示されている。
【0036】
モジュールコネクタ1は、互いに離間した2つのコンタクトアセンブリ4を備え、コンタクトアセンブリ4は、電気モジュール2との電気接触を確立し、モジュールコネクタ1を電気モジュール2に締結するように機能する。
【0037】
コンタクトアセンブリ4との電気的および機械的な接続のために、コンタクトアセンブリ4に相補的に構成されている接触締結点6(contact and fastening point)が、電気モジュール2に設けられている。接続される電気モジュール2の接触締結点6間の距離8は、通常、予め決められているが、所定の基準距離からずれることがある。
【0038】
モジュールコネクタ1は、両方のコンタクトアセンブリ4を電気的に接続する導体アセンブリ10を備える。導体アセンブリ10は、両方のコンタクトアセンブリ4間の端から端まで延びる電源レール12であってよい。温度変動による導体アセンブリ10の長さの変化を補償するために、電源レール12は、好ましくは両方のコンタクトアセンブリ4間にアーチ14、特にU字状のアーチを有することができる。電源レール12は、矩形の導電性断面を有し、その平坦面16が、電気モジュール2に向かう方向および電気モジュール2から離れる方向を向いていることが好ましい。他の導電性断面、例えば、正方形、多角形、円形、長円形、またはU字状も可能である。
【0039】
少なくとも一方のコンタクトアセンブリ4aは、他方のコンタクトアセンブリ4bに向かう方向または他方のコンタクトアセンブリ4bから離れる方向で、導体アセンブリ10に対して変位方向18に変位可能である。これにより、所定距離8からのずれを補償することができる。
【0040】
長さを補償するために、1つの変位可能なコンタクトアセンブリ4aのみが設けられていれば十分である。しかしながら、モジュールコネクタ1のコンタクトアセンブリ4が同一に構成され、両方のコンタクトアセンブリ4aが変位可能であると好ましい。
【0041】
モジュールコネクタ1は、導体アセンブリ10およびコンタクトアセンブリ4が収容されているハウジング20を備える。ハウジングは電気絶縁材料から作製され、少なくともコンタクトアセンブリ4の領域で、指および接触保護部の一部となる。この指および接触保護部は、特に規格に準拠しており、帯電部との接触を防ぐ。
【0042】
異なる距離8を補償するために、変位可能なコンタクトアセンブリ4aを、ハウジング20内で変位可能であるように配置することができる。しかしながら、変位可能なコンタクトアセンブリ4aは、変位方向18に対してハウジング20に堅固に結合されていることが好ましい。変位可能なコンタクトアセンブリ4aは、変位方向18において、好ましくは変位方向18に平行な平面22において、ハウジング20と共に変位することができる。
【0043】
平面22は旋回軸24の周りに垂直に延び、旋回軸24を中心に、一方のコンタクトアセンブリ、例えば、変位可能なコンタクトアセンブリ4aが他方のコンタクトアセンブリ4または4bのそれぞれの周りを旋回することができる。旋回軸24は、一方のコンタクトアセンブリ4を貫通し、両方のコンタクトアセンブリ4間または両方のコンタクトアセンブリ4の同一の要素のそれぞれの間の接続線に垂直に延びている。モジュールコネクタ1の残りの部分は、旋回軸24が貫通するコンタクトアセンブリ4の周りを旋回することができ、それに応じて組立て中に残りの部分を位置合わせすることができる。旋回軸24は、両方のコンタクトアセンブリ4、4a、4bの各々を貫通することができ、(残りの)モジュールコネクタ1が各コンタクトアセンブリ4、4a、4bの周りを旋回できるようになっている。
【0044】
ハウジング20は、互いに対して変位方向18に変位可能な2つのハウジング部26、28を含むことができる。ハウジング部26、28は、両ハウジング部の可動性を変位方向18の変位性に限定するガイド29を形成することができる。
【0045】
例えば、ハウジング20を伸縮式に構成することができる。このために、一方のハウジング部26を他方のハウジング部28に挿入することができる。2つの伸縮式ハウジング部26、28は、特に両方のコンタクトアセンブリ4の中間で重なり合うことができる。アーチ14がこの箇所に配置される場合には、伸縮動作中にアーチ14を収容できるように、両方のハウジング部26の内法をそれに応じて増加させることができる。ハウジング部26の内法は、コンタクトアセンブリ4に向かって減少していてもよい。
【0046】
当然、3つ以上の伸縮式ハウジング部26、28が存在してもよい。例えば、第3のハウジング部を、2つの外側ハウジング部間の中央に配置することができる。2つの外側ハウジング部を中央ハウジング部に変位可能に挿入することができ、または中央ハウジング部を2つの外側ハウジング部に変位可能に挿入することができる。
【0047】
ハウジング部26、28の各々において、2つのコンタクトアセンブリ4の一方は、少なくとも変位方向18において、好ましくは変位方向18を含む平面22において、それぞれのハウジング部26、28に対して動かないように保持される。
【0048】
1つのまたは各ハウジング部26、28を、2つ以上のハウジングシェル26a、26b、28a、28bによって形成することができる。ハウジングシェル26a、26bまたは28a、28bを、好ましくは平面22に垂直に、または電気モジュール2側を向く組立方向30で、または旋回軸24に沿った向きの組立方向30でそれぞれ、組み立てる、例えば、共にクリップ留めすることができる。このようにして、コンタクトアセンブリ4と導体アセンブリ10の一部とをハウジング部26、28に配置することができ、その後、2つのハウジングシェル26a、26bまたは28a、28bのそれぞれが、それぞれのコンタクトアセンブリ4および導体アセンブリ10のそれぞれの部分の周りで閉じられる。
このようにして、導体アセンブリ10とコンタクトアセンブリ4とは、ハウジング20またはそれぞれのハウジング部26、28においてそれぞれ、捕捉的に保持される。どのハウジング部26、28が他のハウジング部28、26に挿入されるかは関係ない。
【0049】
コンタクトアセンブリ4は、例えばねじ34の形態の締結要素32を含むことができる。ねじ軸36の端部38に、指および/または接触保護部40を設けることができる。締結要素32を、少なくとも電源レール12または電気モジュールに接触しない箇所において、指および/または接触保護部40で被覆および/またはカバーすることができる。
【0050】
ねじ頭42の指および/または接触保護部40は、カラー46まで半径方向に延びる、1つまたは複数の半径方向に突出するリブ44を含むことができる。カラー46は、ハウジング20によって形成され、導体アセンブリ10から離れて突出し、このカラー46にリブ44が当接することができる。カラー46の内側輪郭は円形であることが好ましいが、多角形であってもよい。リブ44は周方向(circumferential)であることが好ましく、カラー46の内側輪郭に相補的な外側輪郭を有し、ねじ頭の指および/または接触保護部40がカバーの一種としてカラー46の内部を閉じ、導体アセンブリ10への直接のアクセスを防止するようになっている。カラー46は、ハウジング20によって形成された指および/または接触保護部の一部である。
【0051】
このような構成により、ハウジング20、特にそのカラー46とねじ頭42とは、同時に、コンタクトアセンブリ4aのためのガイドまたは軸受点47を共に形成することができる。軸受点47により、締結要素32は、回転軸48を中心に回転することができ、ハウジング20および導体アセンブリ10に対して変位可能であるように回転軸48に沿って導かれるが、他の動作方向には固定される。
【0052】
ねじ頭42と反対側に配置された導体アセンブリ10に関し、コンタクトアセンブリ4は、図示のようにスリーブ状に構成することもできるコンタクトリング50を含む。コンタクトリング50は、電気を非常によく通す材料、例えば銅および/またはアルミニウムから形成された材料またはこれを含む材料から作製される。締結要素32は、コンタクトリング50を貫通する。
【0053】
コンタクトリング50は、半径方向に突出する肩部52を含むことができ、肩部52は、相補的に形成されているハウジング20またはハウジング部26、28の座部56に受け入れられる。したがって、肩部52は、導体アセンブリ10とハウジング20との間に配置される。
【0054】
コンタクトリング50は、好ましくは締結要素32のためのさらなる軸受点60を形成する通路開口部58を含む。軸受点47と同様に、締結要素32は、コンタクトリング50によって、軸受点60において回転軸48を中心に回転することができ、回転軸48に沿って変位可能に導かれるが、それ以外は固定される。
【0055】
2つの軸受点60は、導体アセンブリ10に対して互いに反対側に配置され、これにより、締結要素32がハウジング20において傾くことを防止する。
【0056】
コンタクトリング50は、変位方向18または平面22における動作のそれぞれに対して、締結要素32に堅固に結合されていることが好ましい。したがって、コンタクトリング40は、締結要素32が導体アセンブリ10に対して変位するときに、締結要素32と共に動く。
【0057】
コンタクトリング50を、ハウジング20またはハウジング部26、28において動かないように保持することができ、コンタクトリング50が、他のコンタクトアセンブリ4bに対する変位可能なコンタクトアセンブリ4aの締結要素32の変位を、ハウジング20またはハウジング部28に伝えるようになっている。したがって、軸受点47、60は、締結要素32を導くだけでなく、それぞれ、変位可能なコンタクトアセンブリ4aの変位18をハウジング部28に伝え、またはハウジング20の伸縮動作をコンタクトアセンブリ4aに伝えるようにも機能する。
【0058】
ハウジング20またはハウジング部28はそれぞれ、カラー62を形成することが好ましく、このカラー62は、カラー46の反対側に配置され、電気モジュール2に向かって、または回転軸48に沿って突出し、かつコンタクトリング50を越えて突出する。カラー62は、ハウジング20によって提供される指および接触保護部の一部でもある。
【0059】
コンタクトアセンブリ4の変位方向18への変位性を可能にするために、導体アセンブリ10に、孔63、特に長孔64を設けることができ、その孔63もしくは長孔64を、コンタクトアセンブリ4または締結要素32(存在する場合)が貫通する。コンタクトアセンブリ4は、孔63において変位方向18に変位可能である。
【0060】
長孔64の長手方向66は、変位方向18に対応することが好ましい。変位方向18または長手方向66はそれぞれ、他方のコンタクトアセンブリ4側を向いている。変位方向18または長手方向66は、旋回軸24と交差することが好ましい。締結要素32は、距離8が変化する間、それに応じて長孔64において変位可能である。長孔64は、平面22に配置されることが好ましい。
【0061】
コンタクトアセンブリ4間の距離8に関係なく、電気モジュール2間で常に同一または少なくともほとんど変化しない電気境界抵抗を得るために、導体アセンブリ10およびコンタクトリング50が少なくとも電気モジュール2に取り付けられたモジュールコネクタ1に接触する、特に平面の接触域68の表面積は、コンタクトリング50またはコンタクトアセンブリ4のそれぞれと導体アセンブリ10との相対位置に関係なく同一である。接触域68の表面積の、±15%の範囲の小さい変化があっても、同一の表面積であるとみなされる。
【0062】
接触域68の一定の表面積を確保する1つの方法は、長孔64の長さ70を、接触域68の平面76におけるコンタクトリング50の通路開口部58の直径72の半分とコンタクトリング50の外径74の半分との合計以下にすることである。さらに、長孔64と、長孔64に最も近い導体アセンブリ10の端部80との間の距離78は、平面76におけるコンタクトリングの外径74と通路開口部の直径72との差の半分以上でなければならない。
【0063】
前述したように、2つのコンタクトアセンブリ4の一方のみを変位可能にすれば、すなわち、例えば長孔64に貫通させれば十分である。長孔64の代わりに、変位方向18または平面22において変位不能なコンタクトアセンブリ4を導体アセンブリ10に対して変位不能に固定する孔が、変位不能なコンタクトアセンブリ4に存在してもよい。
【0064】
図1および
図2の構成において、それぞれ、導体アセンブリ10は、コンタクトアセンブリ4間で端から端まで配置された電源レール12を含み、または導体アセンブリ10は、端から端までの電源レール12から構成される。
【0065】
しかしながら、
図3に示すように、変位可能なコンタクトアセンブリ4aのみ、または両方のコンタクトアセンブリ4に電源レールがあれば十分である。導体アセンブリ10は、これらの電源レール12a、12b間に、例えば織布、編地、ケーブル、またはワイヤメッシュの形態の可撓性導体82を含むことができる。可撓性導体82の領域において、導体アセンブリは、端から端までの電源レール12の場合のようにアーチ14を有することができる。それ以外は、
図3の構成は
図1および
図2の構成と同一である。
【符号の説明】
【0066】
1 モジュールコネクタ
2 電気モジュール
4 コンタクトアセンブリ
4a 変位可能なコンタクトアセンブリ
4b 他の変位可能なまたは固定のコンタクトアセンブリ
6 電気モジュールの接触締結点
8 距離
10 導体アセンブリ
12 電源レール
12a 電源レール
12b 電源レール
14 電源レールのアーチ
16 電源レールの平坦面
18 変位方向
20 ハウジング
22 平面
24 旋回軸
26 ハウジング部
26a ハウジングシェル
26b ハウジングシェル
28 ハウジング部
28a ハウジングシェル
28b ハウジングシェル
29 ガイド
30 組立方向
32 締結要素
34 ねじ
36 ねじ軸
38 ねじ軸の自由端部
40 指および/または接触保護部
42 ねじ頭
44 半径方向に突出するリブ
46 ねじ頭の周りのカラー
47 軸受点
48 回転軸
50 コンタクトリング
52 肩部
56 肩部のためのハウジングの座部
58 コンタクトリングの通路開口部
60 締結要素の軸受点
62 コンタクトリングの周りのカラー
63 孔
64 長孔
66 長孔の長手方向
68 コンタクトリングと導体アセンブリとの接触域
70 長孔の長さ
72 通路開口部の直径
74 コンタクトリングの外径
76 接触域の平面
78 長孔から導体アセンブリの端部までの距離
80 導体アセンブリの端部
82 可撓性導体