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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20240311BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20240311BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B13/14 N
B66B3/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022024634
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121349
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】西田 岳人
(72)【発明者】
【氏名】上原 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勉
(72)【発明者】
【氏名】野津 博樹
(72)【発明者】
【氏名】森松 潤紀
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087242(WO,A1)
【文献】特開2018-203402(JP,A)
【文献】特開2017-065848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
B66B 13/14
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数号機のかごを有するエレベータシステムにおいて、
エレベータの乗場に面する第一エリアと、前記第一エリアよりも前記エレベータから離れた位置にある第二エリアとの境界に設けられた、物体検知によって開閉する自動ドアと、
前記自動ドアの戸開時間を測定する戸開時間測定部と、
前記戸開時間測定部によって測定した前記戸開時間に基づいて、前記第二エリアから前記第一エリアに移動する前記自動ドアの通過人数を推定する人数推定器と、
推定した通過人数と前記かごの定員とを比較し、実施する乗場呼びの台数を決定する乗場呼び登録装置と、
決定した台数の前記かごを配車する運行制御装置と、
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記かご内の荷重を検知する荷重検知装置と、
前記荷重検知装置より取得した荷重から、前記かごへの実際の乗車人数を算出する乗車人数算出手段と、
前記自動ドアの戸開時間と前記乗車人数との関係を学習する学習手段と、
設定した値から、前記学習手段の学習ごとに更新して保存する記憶手段と、
をさらに備える請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記かご内の画像情報を取得する撮像装置と、
前記撮像装置より取得した画像から、前記かごへの実際の乗車人数を算出する乗車人数算出手段と、
前記自動ドアの戸開時間と前記乗車人数との関係を学習する学習手段と、
設定した値から、前記学習手段の学習ごとに更新して保存する記憶手段と、
をさらに備える請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記人数推定器は、前記記憶手段の更新前には、前記自動ドアの動作開始後から前記かごが出発するまでの間における、前記自動ドアが全開状態を維持した累積時間に基づき前記通過人数を推定し、前記記憶手段の更新後には、前記自動ドアの戸開時間とともに前記記憶手段から抽出したデータに基づき前記通過人数を推定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記人数推定器は、前記記憶手段の更新前には、戸開時間とともに、前記自動ドアの動作開始後から前記かごが出発するまでの間における、前記自動ドアが全開状態を一定時間維持して戸閉開始した後、再度戸開を開始する一連の開閉動作の回数に基づき前記通過人数を推定し、前記記憶手段の更新後には、前記自動ドアの戸開時間とともに前記記憶手段から抽出したデータに基づき前記通過人数を推定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記一連の開閉動作は、前記自動ドアが全開状態を一定時間維持し、前記自動ドアが戸閉開始してから戸閉完了する前に再度戸開を開始する場合、もしくは、前記自動ドアが全開状態を一定時間維持し、前記自動ドアが戸閉完了してから所定時間内に再度戸開を開始する場合に限ることを特徴とする請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記戸開時間、前記乗車人数に加えて、推定した前記通過人数と、曜日や時間帯との相関を累積して保存し、保存したデータから数値を導くことを特徴とする請求項乃至請求項6のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
複数号機のかごを有するエレベータシステムにおいて、
エレベータの乗場に面する第一エリアと、前記第一エリアよりも前記エレベータから離れた位置にある第二エリアとの境界に設けられた、物体検知によって開閉する自動ドアと、
前記第二エリアから前記第一エリアに移動する前記自動ドアの通過人数を計測するカウントセンサと、
前記カウントセンサからの情報を取得する人数推定器と、
推定した通過人数と前記かごの定員とを比較し、実施する乗場呼びの台数を決定する乗場呼び登録装置と、
決定した台数の前記かごを配車する運行制御装置と、
を具備するエレベータシステム。
【請求項9】
前記かごの定員は、前記かごの最大積載量以下で任意に設定することを可能とし、
前記乗場呼び登録装置は、前記通過人数と前記かごの定員との比較結果に基づいて、前記通過人数が前記かごの一台分の定員未満の場合は一台のかご呼びを行い、前記通過人数が前記かごの一台分の定員以上であった場合は二台以上のかご呼びを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記乗場呼び登録装置は、前記通過人数が前記かごの定員以上であった場合、一台の前記かごが前記乗場に到着、戸開している間のかごドアの戸開時間を延長することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記乗場呼び登録装置は、一台の前記かごが戸開し、利用者が前記かごに乗り込んでいる間は戸閉ボタンを無効化することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記運行制御装置による前記かごの配車中には、一部を点灯もしくは点滅する乗場操作盤を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステム、特に自動ドアと連動して動作するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータは、建物内において上下方向に人や物を輸送するシステムとして知られており、乗りかごの号機毎に独立して制御する方法と、複数の乗りかごを一括で制御する群管理を行う方法とが存在する。規模の大きなビルや商業施設では、輸送効率向上のために複数台の乗りかごを一括管理する群管理システムが用いられることが多い。群管理では乗場呼びに円滑に対応するために、乗りかごの待機位置は異なる階とすることがある。
【0003】
また、建物の出入口と乗場との間に設けられたドアのセキュリティシステムによってドアロックの解除とエレベータの乗場呼び出しとを連動させ利用者の属性や目的地を把握して乗りかごの運行制御を行うシステムや、同様に建物の出入口と乗場との間に設けられたゲートによって人数を計測して乗車する乗りかごの割当てを行うシステムが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平7-115804号公報
【文献】特開2018-203402号公報
【文献】特開2018-002351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のシステムでは、エレベータを利用できる人が制限されるためセキュリティ面が確保されるものの、不特定多数の利用者が利用する場合においては適しておらず、利用性が低減されてしまう。
【0006】
その他、ドア本体のセキュリティシステムの代わりにゲート等を必要とする場合であっても、居住用のマンションの基準階に新たに設置することは利用者の動線及び設置費用を考えるとあまり現実的ではない。更にゲートの設置場所は広範囲となってしまい、また利用者の入場速度の低下も懸念される。
【0007】
そこで本実施形態では、利用者の属性等の判断を必要とせず、エレベータと自動ドアの動作状況に基づき利用者の乗場での待機時間を削減可能とした連動システムについて提案する。特にマンションや商業施設等自動ドアを有する建物において、自動ドアの動作により通過人数を推定し、人数に適した台数のかごを手配することを可能とし、より簡単な構成で、利用者の属性等を限定せずにエレベータの効率的な運行を実施可能としたシステムを構築することを目的とする。更に、推定した通過人数と実際に乗りかごに乗り込んだ人数とを学習することで、推定精度を向上させる。
【0008】
なお、本実施形態では、すでに自動ドアを有している建物であれば大がかりな設備を新たに設ける必要は無く、制御のプログラム等簡素な仕組みを設けることで自動ドアと連動したエレベータシステムを構築することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、実施形態のエレベータシステムは、複数号機のかごを有するエレベータシステムにおいて、エレベータの乗場に面する第一エリアと、前記第一エリアよりも前記エレベータから離れた位置にある第二エリアとの境界に設けられた、物体検知によって開閉する自動ドアと、前記自動ドアの戸開時間に基づいて、前記第二エリアから前記第一エリアに移動する前記自動ドアの通過人数を推定する人数推定器と、推定した通過人数と前記かごの定員とを比較し、実施する乗場呼びの台数を決定する乗場呼び登録装置と、決定した台数の前記かごを配車する運行制御装置と、
を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エレベータと自動ドアの概略図である。
図2】システムの仕組みを示すブロック図である。
図3】機械学習前の戸開時間と推定通過人数の関係の一例を示す図である。
図4】戸開時間と推定通過人数について、学習前の初期値と学習後の対応表の一例である。
図5】一般的な自動ドアの概略図である。
図6】自動ドアのセンサが検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。
図7】自動ドアが戸開状態の間に再度センサが検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。
図8】自動ドアが戸閉動作を開始した後に再度センサが検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。
図9】自動ドアの戸開時間を計測する動作を示すフローチャートである。
図10】自動ドアの通過人数を推定する動作を示すフローチャートである(A:通過人数推定、B:学習)。
図11】乗場における待ち人数カウントを示すフローチャートである。
図12】配車処理の動作を示すフローチャートである。
図13】第二実施形態に係るエレベータと自動ドアの概略図である。
図14】第二実施形態に係るシステムの仕組みを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、図面を参照して本実施形態のエレベータ及び周辺の構成と動作を説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0012】
図1から図5を用いて実施形態に係るシステムについて説明する。
【0013】
図1は実施形態に係るエレベータと自動ドアの全体概略図であり、ソフトウェア毎の接続関係を示している。
【0014】
図1において、エレベータは、二台の乗りかご1を有している。乗場2及び自動ドア3が設けられ、基準階のフロアは乗場2側の第一エリアと乗場2から離れた第二エリアとからなる。第一エリアと第二エリアとの境界に自動ドア3が設けられている。乗りかご1と自動ドア3は、制御装置4に接続して信号のやり取りを可能としている。利用者は、第二エリアから自動ドア3を通過し乗場2のある第一エリアへ移動して、乗りかご1に乗り込むことができる。ここでの利用者とは任意の階床へ移動することを目的とした人物等を示す。
【0015】
利用者は、乗場2から出入口21を介して乗りかご1に乗り込むことができる。乗場2には、出入口21の通過を規制する開閉可能な乗場ドア22が設けられており、乗りかご1のかごドア11が動き始めると、乗場ドア22はかごドア11に連動して戸開を開始する。かごドア11は不図示のドアモータからの動力により動作し、乗場ドア22のインターロックが解除されることで連動されて戸開状態となる。また、乗りかご1は、目的の行先階等を登録するかご内操作盤12、底部に乗りかご1本体の重さを含めてかかる荷重を検知する荷重検知装置(センサ)13、上方に乗りかご1内の画像や映像等の視覚情報を取得する撮像装置14を乗りかご1に備える。
【0016】
なお、荷重検知装置13は、実施形態では乗りかご1の底部に設けるものとしているが、それ以外にも昇降路上部かつ乗りかご1を吊るしているロープに繋げて配置してもよい。撮像装置14の取付位置は乗りかご1内部に限定されず、乗場2を見渡せる場所であっても構わない。
【0017】
図1では乗りかご1が二台設けられている場合を示しているが、乗りかご1の台数は二台に限らずそれ以上設けられていてもよい。複数設けられた乗りかご1のうち、少なくとも一台の乗りかご1は基準階に待機する。
【0018】
また、乗場2には乗場操作盤23が設けられ、かご呼びが登録されているときにはその旨視認可能とする。例えば、かご呼びが登録されているときは乗場操作盤23を点灯させておく等、利用者に視認可能に報知する。
【0019】
自動ドア3は扉の開閉制御を行うドア制御部31を備えており、ドア制御部31は、戸開閉の動作等を制御するとともに、扉の戸開時間や戸開閉の動作等、開閉に係る状態を示す情報を取得する。なお、自動ドア3の仕組みは後述する。
【0020】
制御装置4は、本システムに係る制御を行う装置として設けられた、例えば機械室内の制御盤のことである。制御装置4は、号機の運行制御を行う運行制御部41を有している。また、かご内操作盤12、荷重検知部13、撮像装置14、乗場操作盤23、ドア制御部31は制御装置4に接続し、エレベータの運行に係る制御を行う。
【0021】
また、自動ドア3及びエレベータの動作に係るシステムにおいて、システム内のソフトウェアは、乗りかご1の運行制御部41及び自動ドア3のドア制御部31と連動し、各機器の制御を行っている。そこで、次の図2を用いて制御及び周辺の仕組みについて説明する。
【0022】
本システムは、戸開時間測定部32と、通過人数推定部(人数推定器)42と、待ち人数予測部43と、定員情報保持部44、配車台数決定部(乗場呼び登録装置)45と、運行制御部(運行制御装置)41と、乗車人数算出部(乗車人数算出手段)46と、学習手段47と、テーブル/記憶部(記憶手段)48とから構成される。
【0023】
戸開時間測定部32は、ドア制御部31において取得した情報のうち戸開時間を計測し、戸開時間信号aとして出力して通過人数推定部42及び学習手段47に送信する。自動ドア3の動作が生じ、戸開時間が発生する毎に、都度通過人数推定部42側へ戸開時間の情報を送信する。戸開時間測定部32は、自動ドア3側で有しており、図示するように自動ドア3のドア制御部31と一体として設けても構わない。
【0024】
通過人数推定部42は、戸開時間測定部32から受信した自動ドア3の戸開時間の情報(戸開時間信号a)と、テーブル(記憶部)48に保存されている情報(信号hについては後述)に基づき、テーブル(記憶部)48を参照して自動ドア3の通過人数を推定し、推定通過人数信号bとして出力して待ち人数予測部43に送信する。テーブル(記憶部)48に保存される情報については後述する。戸開時間測定部32は、自動ドア3の開閉動作の都度、戸開時間の情報(戸開時間信号a)を生成し、送信する。通過人数推定部42は、戸開時間測定部32から戸開時間の情報(戸開時間信号a)を受信する毎に自動ドア3の通過人数を推定し、待ち人数予測部43へ推定通過人数の情報(推定通過人数信号b)を送信し、推定通過人数の情報は都度リセットする。自動ドア3の戸開時間から、通過人数を推定する例については、自動ドア3の仕組みと共に後述する。なお、推定通過人数信号bは学習手段47に送信し、学習する情報に連動するとしても構わない(不図示)。
【0025】
待ち人数予測部43は、乗場2において乗りかご1を利用する為に待機している人数を予測する。通過人数推定部42から受信した推定通過人数の情報(推定通過人数信号b)に基づき、加算し、乗場に待機する人数を算出したものを待機人数の予測値とする。待ち人数予測部43は、推定通過人数信号bを受信する度に、自動ドア3の通過人数を加算して、乗場2での待ち人数を更新して算出する。また、後述する乗車人数算出部46から配車されたかごへの乗り込み人数の情報(信号fについては後述)を受信し、乗り込み人数を減算することで、乗場待機人数(待ち人数)を更新する。更新した最新の乗場待機人数(待ち人数)の予測値は、常時、読み出し可能に保存しておく。
【0026】
なお、通過人数推定部42にて推定した通過人数が整数でなく小数点以下の値を含む場合は、その情報を含んだまま待ち人数予測部43に送信し、待ち人数予測部43にて加算減算して乗場待機人数(待ち人数)を算出する際に小数点第一位を四捨五入して、乗場待機人数(待ち人数)を更新する。小数点以下の数値の取り扱いは任意で定めるものとし、四捨五入でなく、繰り上げ等としても構わない。
【0027】
配車台数決定部45は、待ち人数予測部43に更新して保存した最新の乗場待機人数(待ち人数)の情報を、定期的に読み取りにいく。読み取りの頻度は、例えば3秒毎、1秒毎、0.5秒毎等、任意に設定して構わない。また、閑散時は読み取りの頻度を大きく取り(例えば3秒)、混雑時は読み取りの頻度を小さく取る(例えば1秒)等、曜日や時間帯で読み取りの頻度を変更するとしてもよい。なお、待ち人数予測部43にて保持する最新の乗場待機人数(待ち人数)の情報は、定期的、もしくは待ち人数に変化が生じたときに、配車台数決定部45に送信するとしても構わない。
【0028】
配車台数決定部45が乗場待機人数(待ち人数)を読み出した場合は、最新の乗場待機人数(待ち人数)と乗りかご一台あたりの定員とを比較し、比較結果に基づいて配車する乗りかご台数を決定するとともに、運行制御部41に対して動作制御の指示を出す。なお、配車台数決定部45は乗場呼び登録装置として、たとえ乗場に立ち入った利用者がボタン押下等の指示をせずとも乗場呼びを登録する役割を有する。乗りかご一台あたりの定員については、定員情報保持部44に保持されており、かご内定員信号cとして配車台数決定部45に送信される。
【0029】
このように、配車台数決定部45にて、乗場待機人数(待ち人数)とシステム内のかご内定員とを比較し、乗場待機人数(待ち人数)が一台当たりのかご内定員よりも小さいか否かを判定する。乗場待機人数(待ち人数)とかご内定員とが、同じ人数かもしくはかご内定員よりも乗場待機人数(待ち人数)が少ない人数を示す場合、配車台数決定部45は出発階に呼び出す必要のあるかご台数を一台と判定し、一台応答信号dを出力する。乗場待機人数(待ち人数)がかご内定員よりも多く、2台分のかご内定員の合計人数以下を示す場合、運行制御部41は出発階に呼び出す必要のあるかご台数を二台と判定し、二台応答信号eを出力する。乗場待機人数(待ち人数)がかごの二台分の定員よりも多い場合は、適した台数を配車する信号を出力する。
【0030】
運行制御部41は、配車台数決定部45から受けた指示に従って乗りかご1の運行制御を行う。
【0031】
乗車人数算出部46は、荷重検知装置13と撮像装置14のいずれかもしくは両方から、乗客の乗りかご1への乗り込みを検知し、乗車人数を算出する。荷重検知装置13を用いる場合はかかる荷重の変化から、撮像装置14を用いる場合は物体検知等から乗り込みの有無を判定した上で、荷重の変化量や画像のパターン認識等からおよその乗車人数を算出する。算出した乗車人数に関する情報は、乗車人数信号fとして出力して待ち人数予測部43及び学習手段47に送信する。
【0032】
また、乗車人数算出部46から乗車人数信号fを受信した場合、待ち人数予測部43では推定通過人数信号bと乗車人数信号fに基づいて積み残した乗客数を算出し、乗場待機人数信号cとして配車台数決定部45に送信する。
【0033】
学習手段47は、乗車人数信号fを受信すると、乗車人数算出部46にて算出した実際の乗車人数(乗車人数信号f)と、これまでに受信した戸開時間の情報(戸開時間信号a)とを連動し、一台のかご呼びに対する推定通過人数と実際の乗車人数との差分を算出して機械学習を行い、自動ドア3の戸開時間に対応する通過人数を定め、テーブル(記憶部)48に記憶する。加えて曜日や時間帯との相関を保存してもよい。テーブル(記憶部)48に記憶された最新の情報は、新たな時間人数対応信号gとして通過人数推定部42に送られ、自動ドア3の通過人数を推定する際に用いられる。
【0034】
ただし、学習手段47による戸開時間、推定通過人数、乗車人数についての機械学習の以前には、自動ドア3の戸開時間と推定通過人数について初期設定時の関係を仮に設定しておくこととし、これに関しては後述する。なお、時間人数対応信号gについて、テーブル(記憶部)48に記憶された情報がある場合に通過人数推定部42に送信するとしたが、それに限らず、更新した過去の情報に基づくものではない初期値の戸開時間と推定との相関に基づく信号を送信するとしても構わない。この場合、戸開時間と推定通過人数の相関に基づく信号は、学習前は初期値、新たな乗車人数の情報が更新された後は更新後の情報(時間人数対応信号g)とする。
【0035】
また、例えば、学習手段47は具体的に回帰分析による機械学習を行うこととしても構わない。一般的な機械学習とは、与えられた情報やデータから反復的に学習し、ルールやパターンを掴んで法則化するものであり、その中でも回帰分析は、数値を学習して未知のデータから数値を予測する手法である。少なくとも自動ドア3の戸開時間と乗りかご1の乗車人数とを座標における点のデータとして保存する。複数のデータを収集すると、直線もしくは曲線の方程式のモデルを作成可能となり、この方程式を用いて新たに推定通過人数を算出することができるようになる。更に曜日と時間帯について別のパラメータとして加えることが望ましく、このようにすると人流変化を適切に予測することが可能となる。
【0036】
テーブル(記憶部)48において過去の情報が保存され回帰分析が既に行われている場合、通過人数推定部42は、それまでに得られた分析結果から推定通過人数を算出したデータを抽出し、更新したデータに基づいた時間人数対応信号gが送信され、通過人数を推定できる。
【0037】
ここで、図3及び図4を用いて、自動ドア3の戸開時間と推定通過人数との関係を示す。図3は、戸開時間と推定通過人数についての初期値を方程式で設定している例であり、図4は、戸開時間と推定通過人数について、初期値と学習手段47による学習後の対応表を一定秒数の範囲毎に設定して例示したものである。
【0038】
図3図4いずれの場合であっても、システム内には始めからデータが蓄積されているわけではないため、学習手段47による学習の以前に通過人数を推定する際には、あらかじめ戸開時間と推定通過人数との関係を方程式や条件等で定めておく必要がある。図4に示すように、初期値としては、例えば、戸開時間が0秒から2秒の間であれば人数カウントを1と推定し、戸開時間が2秒から4秒の間であれば人数カウントを2人と推定する等である。
【0039】
初期値については、他にも時間帯で個別に設定しても構わず、オフィスビル等の場合、平日の通勤時間や昼食休憩の時間帯は特に混雑するため、例えば、8時から9時の間は0秒から2秒の間で通過人数を2人、9時から12時の間は0秒から2秒の間の通過人数を1人となると仮定してもよい。
【0040】
また、設置される建物の規模や自動ドア3の大きさ、利用者層に基づいて設定を変更することが望ましい。商業施設等幅の広い自動ドア3を配置する場合だと、同時に複数人が通過することも十分に考えられるが、主用途をオフィスとした建物であれば時間帯によってシステム稼働開始時は精度が低い場合もある。そのため、人流等の情報を加味した上で人数を設定することでより精度を向上させることが可能である。更に、施設の用途や時間帯、曜日等を加味するとなおよい。
【0041】
また、学習手段47における学習は、戸開時間に対応する実際の乗車人数を連動して記憶し、パターンの平均を取ることとする。例えば、0秒から2秒の間の長さ戸開していたとき、実際の乗車人数は1人であることが7回、2人であることが2回、4人であることが1回あったとする。この場合、学習後はその平均をとり、0秒から2秒の間戸開していたときの推定通過人数は1.5人と推定する(図4参照)。2秒から4秒、4秒から6秒、6秒から8秒、それ以外も同様に戸開時間の範囲とそれに対応する実際の乗車人数の情報入手の回数に相当して平均を取得していくことで、より通過人数推定部42における人数推定の精度の向上を見込める。なお、戸開時間から乗車人数の平均値を算出して推定通過人数とする際の、秒数の間隔等は任意に設定する。
【0042】
小数点以下の値については、待ち人数予測部43を除いて、その情報を含んだまま取り扱うこととする。なお、かご内定員に基づいて配車台数を決定する際に参照する乗場待機人数(待ち人数)が整数となるように、待ち人数予測部43にて近似値を算出する。
【0043】
通過人数推定部42では、テーブル(記憶部)48からの情報に基づいて戸開時間に対応する推定通過人数へ変換するが、学習手段47が設定した初期値を学習の都度更新した上でテーブル(記憶部)48に保存し、それを活用することで人数推定の精度を向上させる。よって図8における戸開時間と推定通過人数との関係は更新の度に変化を重ねることとなる。それぞれの関係性は、状況に応じて任意に変更可能とし、学習手段47により都度学習し、テーブル(記憶部)48に保存することで精度を向上させることを可能としている。
【0044】
このようにして、テーブル(記憶部)48の更新結果に基づき、自動ドア3の戸開時間、乗車人数等の蓄積した過去のデータからより精度のよい推定を実施することができる。すなわち、抽出した新たな情報を参考に今回のかご呼びの台数を決定することも可能となり、テーブル(記憶部)48への保存及びデータの抽出・比較を繰り返すことにより、本実施形態のシステムを利用すれば、より実用的な学習をする仕組みとなっている。
【0045】
また、加えて、テーブル(記憶部)48における機械学習について、具体的には、一定秒数間隔に乗車人数を収集しそれらの異常値と推定される値がある場合には、それを除外した平均値を算出する方法を用いても構わない。例えば、戸開時間が0秒から2秒の間の場合、実際の乗車人数が1人であることが14回、2人であることが6回、6人であることが1回生じたとき、6人の乗車人数は異常値として除外して平均を算出すると、自動ドア3の戸開時間が0秒以上2秒未満であったとき、1回あたりおよそ1.3人と算出される。このようにして、異常値を判断して除外した平均値について、2秒以上4秒未満、4秒以上6秒未満等いくつかのパターンを導き出す。
【0046】
ここまで自動ドア3の戸開時間から通過人数を推定する流れについて説明したが、ここで戸開時間信号aが基づく基本的な自動ドア3の仕組み及び戸開時間の計測について、図5から図8を用いて説明する。
【0047】
図5は、自動ドア3の概略図であり、乗場2側とは反対側の第二エリア側から見た図である。実施形態における自動ドア3とは、動力によって扉33の開閉を行う設備のことである。一般には、無目や天井等に取り付けられたセンサ34で人や物の接近等を検知し、ドア制御部31へ信号を送り、その信号を受けて扉33が動く仕組みとなっている。センサ34の検知範囲に人物が入り込むと、扉33は開動作を開始し、一定時間経過後は速やかに閉動作が開始する。センサ34は、起動センサ及び補助センサを示す。起動センサは、扉33が閉状態のときに通行人を検知して作動信号を送信するもので、例えば、光線反射や電波を用いた検知方式、扉に取り付けられたプレートを用いるタッチ方式等が存在する。補助センサは、扉33の閉動作の途中で検知すると反転し挟まれないようにすることで安全性を高めるもので、例えば、光線反射反射方式や方立に取り付けた光電方式等がある。なお、自動ドア3は、一定時間経過後に戸閉開始する上述の仕様に限らず、物体がセンサの検知範囲から外れた後戸閉開始する仕様であっても構わない。一般的には、開閉速度は40cm/s程度であり、戸開保持時間は1.5~3秒程度である。
【0048】
図6から図8には、自動ドア3の経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を示す。
【0049】
図6は、自動ドア3のセンサ34が検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。全閉状態(ドア開閉度合い0%)だった自動ドア3は、およそ定速で開動作を行い、全開状態(ドア開閉度合い100%)となる。自動ドア3が全開状態となると、一定時間(q)開状態を保持する。その後、閉動作を開始し全閉状態となる。
【0050】
図7は、自動ドア3が戸開状態の間にセンサ34が再度検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。全閉状態(ドア開閉度合い0%)から全開状態(ドア開閉度合い100%)となる。自動ドア3が全開状態となり、一定時間よりも前の時点(r)で再度センサ検知が有りと判定されると、再検知時点から一定時間(q)開状態を保持する(r<q)。その後は図6と同様、閉動作を開始し全閉状態となる。
【0051】
図8は、自動ドア3が戸閉動作を開始した後にセンサ34が再度検知した場合の、経過時間と自動ドア開閉度合いの関係を表す図である。全閉状態(ドア開閉度合い0%)から全開状態(ドア開閉度合い100%)へ動作し、開状態を一定時間保持するまでの流れは図6と同様である。開状態を保持後、閉動作を開始した後、補助センサ検知が有ると、閉方向への自動ドア3の動作が反転し、全開状態へと動作する。その後は再度センサの検知が無い限りは図6と同様、一定時間(q)開状態を保持し、閉動作を開始して自動ドア3は全閉する。
【0052】
なお、図7及び図8は組み合わせて作用することも可能である。図6から図8その他いずれの場合であっても、開閉にかかる時間や全開状態保持時間は機種によって異なり、設置場所や利用状況によって任意に設定してもよい。また、開動作と閉動作の動作速度は同等でなくても構わない。このようにして自動ドア3は一連の開閉動作を行うこととする。
【0053】
本実施形態で、戸開時間測定部32において計測する「戸開時間」とは、全閉状態から戸開動作を開始し、全閉状態に戻るまでの時間のことをいう。なお、図6から図8に示す全開状態の時間を戸開時間として任意に設定しても構わない。この場合は、戸開動作を開始して全閉状態に戻るまでの時間のうち、全開状態の合計時間となる。なお、上述のように、戸開時間信号aは戸閉完了後に出力することとしており、戸開状態が継続する場合の配車処理については後述する。
【0054】
以上には、システムの構成とともに、自動ドア3の動作が生じてからの戸開時間計測による戸開時間信号a等の信号のやり取りについて説明した。
【0055】
次に、図9から図12を用いて自動ドア3の動作が開始してからエレベータが動作するまでの処理の流れを示す。
【0056】
図9は、自動ドアの動作に係る処理についてのフローチャートである。ドア制御部と戸開時間測定部32とを連動させて動作を実施する。
【0057】
まずは、自動ドア3のセンサ31の検知の有無によって利用者検知の有無を判定する(ステップS101)。センサ31の検知が有り、利用者が検知された場合(ステップS101:Yes)、戸開動作が開始する(ステップS102)。利用者の検知が無い場合(ステップS101:No)は利用者の検知が有るまで動作を繰り返す。
【0058】
ステップS102に進むと、戸開動作が開始されるとともに、自動ドア3の戸開時間の計測を開始する(ステップS103)。自動ドア3の戸開が完了すると(ステップS104)、自動ドア3は戸開状態を維持し、所定時間経過したか否か判定する(ステップS105)。戸開状態を所定時間経過したと判定された場合(ステップS105:Yes)、自動ドア3の戸閉を開始する(ステップS106)。自動ドア3の戸閉を完了したか否か判定し(ステップS107)、戸閉が完了したと判定した場合(ステップS107:Yes)は、ステップS103から開始した戸開時間の計測を終了する(ステップS108)。ステップS103からステップS108の間に計測した戸開時間の情報(戸開時間信号a)を通過人数推定部42及び学習手段47に送信し(ステップS109)、戸開時間を計測するフローチャートは終了する。通過人数を推定するフローチャートに続く。
【0059】
ステップS107にて、戸閉が完了していない段階(ステップS107:No)では、補助センサ等による利用者検知の有無を判定する(ステップS110)。戸閉を開始してから戸閉が完了するまでの間に、利用者の検知が有った場合(ステップS110:Yes)は、自動ドア3は動作反転し、再戸開(ステップS111)し、ステップS104に続く。戸閉完了までの間に、利用者の検知が再度無かった場合(ステップS110:No)は、ステップS107に続く。
【0060】
ステップS105にて、戸開状態において所定時間が経過していない段階(ステップS105:No)では、補助センサ等による利用者検知の有無を判定する(ステップS112)。
【0061】
戸開状態の間に、利用者検知が有った場合(ステップS112:Yes)は、戸開時間を延長する(ステップS113)。延長した戸開時間を含め任意に設定可能な所定時間を経過したか否か判定し(ステップS114)、戸開状態を所定時間経過したと判定された場合(ステップS114:Yes)、ステップS106に続く。
【0062】
ステップS114にて、戸開状態において所定時間が経過していない段階(ステップS114:No)では、補助センサ等による利用者検知の有無を判定する(ステップS115)。利用者検知が有った場合(ステップS115:Yes)はステップS113に続き、利用者検知が無かった場合(ステップS115:No)はステップS114に続く。
【0063】
ステップS112にて、所定時間経過までの間に、利用者の検知が再度無かった場合(ステップS112:No)は、ステップS105に続く。
【0064】
このようにして、図9の流れで自動ドア3の戸開時間を計測し、戸開時間信号aを所定の装置に送信する。
【0065】
次に図10を用いて自動ドア3を通過した人数を推定する処理について説明する。通過人数推定部42での通過人数の推定の流れ及びそれに伴って学習手段47の機械学習の流れを説明する。特に、図10(B)は、図3(B)に示した信号のやり取りに相当する。
【0066】
図10(A)に示すように、流れが開始すると、戸開時間測定部32から戸開時間信号aが受信されたか否か判定する(ステップS201)。戸開時間信号aを受信していない場合(ステップS201:No)、戸開時間信号aを受信するまでステップS201を繰り返し、ステップS201にて戸開時間信号を受信した場合(ステップS201:Yes)は、テーブル(記憶部)48を参照し(ステップS202)、通過人数を推定する。ステップS202にて、テーブル(記憶部)48から戸開時間に対応する推定通過人数の情報(推定通過人数信号b)を読み出し、待ち人数予測部43に送信する(ステップS203)。
【0067】
ステップS202にて参照するテーブル(記憶部)48には、学習手段47での学習の結果が保存される。学習手段47は、推定した通過人数と実際の乗客人数とを連動して機械学習を以下の方法で行う(図10(B))。
【0068】
学習手段47においては、まずは図8に示したように戸開時間と推定通過人数の関係について、初期値を設定しておく(ステップS301)。次に通過人数推定部42から戸開時間信号aを一回以上受信する(ステップS302)。
【0069】
その後、乗車人数算出部46から乗車人数信号fが受信されたか否か判定するステップに進む(ステップS303)。
【0070】
乗車人数信号fを受信していない場合(ステップS303:No)、乗車人数信号fを受信するまでステップS303を繰り返し、ステップS303にて乗車人数信号fを受信した場合(ステップS303:Yes)は、戸開時間と実際の乗車人数と連動させて学習する(ステップS304)。
【0071】
なお、ステップS302とステップS303の間で、推定通過人数信号bを受信するとした場合(不図示)、戸開時間と実際の乗車人数に加えて、推定通過人数を連動させるとしてもよい。
【0072】
学習手段47にて学習が完了したか否かを判定し(ステップS305)、乗場の配車が完了していない場合や途中で再度信号の受信を確認した場合は完了していないとして、ステップS302へ続く(ステップS305:No)。ステップS305にて、学習手段47の学習が完了した場合(ステップS305:Yes)は、学習した内容に基づいてテーブル(記憶部)48を更新し(ステップS306)、ステップS302へ続く。
【0073】
これにより、テーブルが戸開時間と推定通過人数と実際の乗車人数との対応関係を保存することが可能となる。
【0074】
次に図11を用いて乗場2の乗場待機人数(待ち人数)の予測値を算出する処理について説明する。
【0075】
待ち人数予測部43は、数式1に示すように処理開始時の待ち人数(W)を0として待ち人数(W)の算出を開始する(ステップS401)。
【0076】
[数1]W=0 ・・・(1)
【0077】
待ち人数予測部43は、推定通過人数信号bと乗車人数信号fのいずれかを受信したか否か判定する(ステップS402)。
【0078】
推定通過人数信号bを受信する場合(ステップS402:Yes上段)は、以下の数式2に基づいて、現在の待ち人数(W)に通過推定人数Bを加算し、これを最新の待ち人数(W)として、更新して保存する(ステップS403)。
【0079】
[数2]W=W+B ・・・(2)
【0080】
数式2におけるBは通過人数推定部42にて推定した通過人数(人)であり、推定通過人数信号bを受信する度に加算する。ステップS403の後、ステップS402の動作を繰り返す。
【0081】
乗車人数信号fを受信する場合(ステップS402:Yes下段)は、以下の数式3に基づいて、現在の待ち人数(W)から乗車人数Fを減算し、これを最新の待ち人数(W)として、更新して保存する(ステップS404)。
【0082】
[数3]W=W-F ・・・(3)
【0083】
数式3におけるFは乗車人数算出部46にて算出した乗車人数(人)であり、乗車人数信号fを受信すると、自動ドア3を通過して乗場に待機する利用者のうちF人は乗りかご1に乗り込んだとみなされるため、その分を減算する。ステップS404の後、ステップS402の動作を繰り返す。
【0084】
推定通過人数信号bと乗車人数信号fのいずれも受信しない場合(ステップS402:No)は、ステップS402を繰り返す。このようにして、待ち人数(W)を都度更新し、待ち人数予測部43にて読み出し可能に保存しておく。
【0085】
次に図12を用いて乗りかご1の配車処理について説明する。
【0086】
処理が開始すると、配車台数決定部45は、待ち人数予測部43における待ち人数(W)の読み取りを定期的に行い(ステップS501)、読み出した最新の待ち人数(W)が1以上か否か判定する(ステップS502)。待ち人数(W)が1未満の場合(ステップS502:No)、ステップS501及びステップS502を繰り返し、待ち人数(W)が1以上の場合(ステップS502:Yes)は、配車台数決定部45にて乗場待機人数(待ち人数)と乗りかご1台あたりの定員とを比較し、配車台数決定部45にて、以下の数式4に基づいて必要な配車台数(N)を算出する(ステップS503)。
【0087】
[数4]N=W/(かご一台当たりの定員) ・・・(4)
【0088】
数式4で算出したNが自然数の場合はN台、Nが自然数でない場合は[N]+1台を配車する。なお、[N]は、実数NにおけるNの整数部分(N以下の最大の整数)である。
【0089】
ステップS503で算出した配車台数(N)を運行制御部41に指示し、所定の台数の乗りかごを配車する(ステップS504)。再度乗場2における待ち人数(W)を確認し(ステップS505)、ステップS502での待ち人数(W)と差分があった場合は、ステップS503とステップS504を繰り返す。
【0090】
乗場2に乗りかご1が着床し、利用者の乗りかご1への乗車と、乗りかご1の戸閉及び出発を判定する(ステップS506)。乗りかご1への利用者の乗車、乗りかご1の戸閉及び出発したことを確認できない場合(ステップS506:No)は、所定動作有りと判定されるまでステップS506を繰り返し、所定動作があった場合(ステップS506:Yes)は、荷重検知部16もしくは撮像装置17を介して得た情報をもとに乗車人数算出部46にて乗車人数信号fを検知し(ステップS507)、待ち人数予測部43及び学習手段47に乗車人数信号fを送信する(ステップS508)。信号の送信を確認したら、配車台数決定部45において算出した配車台数(N)のうち一台が出発したとし(ステップS509)、残りの配車台数(N-1)が0になったか否か判定する(ステップS510)。
【0091】
複数台配車している場合であって所定台数すべての乗りかごが配車完了した場合、もしくは、配車台数が1台で配車完了した場合は、残りの配車台数(N-1)が0と判定し(ステップS510:Yes)、ステップS501に戻り、所定の動作を行う。このとき、更新後の待ち人数(W)を確認する。残りの配車台数(N-1)が0ではない場合(ステップS510:No)、すなわち、複数台配車している場合であって、所定台数すべての乗りかごが配車されていない場合、各乗りかごを対象にステップS505からステップS507の動作を繰り返す。
【0092】
このようにして、待ち人数予測部43から乗場2での待ち人数を受信するたびに配車フローが動作し、適した台数の乗りかご1を配車することが可能となる。
【0093】
図10から図13を通じて、自動ドア3の戸開時間から通過人数を推定、乗場2における待ち人数を算出し、適した台数の乗りかご1を配車する流れについて説明した。これらの処理は、例えば、一台の定員を5人とした乗りかご1が複数台設けられているエレベータにおいて、直前に設けられた自動ドア3を乗りかご1が出発する前に7人の乗車希望者が通過した場合に二台の乗りかご1を配車することを示している。一組目が2人、二組目が2人、三組目が3人の順に計7人通過した場合、一組目が通過した段階で一台の乗りかごを呼び登録し、途中で一組目から三組目の人数の合計すなわち推定累積状況を算出することで積み残しが生じないように動作する。
【0094】
なお、配車台数決定部45において、比較する乗りかご一台当たりの定員は、乗り込み数を抑えることを加味して、最大定員数ではなく任意の割合、例えば定員の80%としても良い。この場合、上述した数式4の「かご一台当たりの定員」を任意の割合に変更することとする。
【0095】
運行指示が出力されてから、乗場2に所定台数の乗りかごが到着するまでに、自動ドア3のセンサが再度検知した場合は、それまでと同様に自動ドア3の戸開時間から通過人数を推定し、乗場2での待ち人数に加算することで、後から自動ドア3を通過し乗場2に待機する乗客数の総数を推定する。新たに通過した乗客も加味した上で、元の制御におけるかご台数で運搬が可能ではないと判定した場合は配車に関して新たな指示を出力する。
【0096】
運行制御が行われている最中、すなわち乗りかご1の配車中には、乗場2における乗場操作盤23のかご呼びボタンは点灯する。特に複数台の乗りかごが乗場2に配車されている場合は、一台目が発車した後であっても二台目が到着するまではかご呼びボタンの点灯は継続しておく。利用者に視認可能となる方法であれば点灯の代わりに点滅等であっても構わない。かご呼びボタンについては、特に進行方向のボタンを点灯もしくは点滅することとしておく。
【0097】
ここまで、自動ドア3とエレベータとの連携システムに、適した台数の乗りかごの配車について説明した。実施形態内では、運行制御部41へ指示する制御内容について、配車台数の決定を行うと説明したが、それに加えて、戸開時間調整や乗りかご1内のかご内操作盤14の戸閉ボタン機能の無効化等の制御を行うとしても構わない。これらの場合、配車台数決定部45は、配車台数の決定を行い、戸開時間やボタン機能を制御するための動作を決定する。
【0098】
戸開時間調整については、乗場待機人数とかご定員とを比較した上で、推定した乗客数が定員よりも多い場合に、かごドアの戸開時間を延長する仕組みとする。このとき、配車台数決定部45は一台応答信号dを出力した上で、到着したかごの戸開時間を延長する指示を出力する。このようにすると、乗客の乗り込みの際の安全性を向上させることが可能となる。
【0099】
ボタン機能の無効化については、乗場待機人数とかご定員とを比較した上で、推定した乗客数が定員よりも多い場合に、着床したかごの操作盤における戸閉ボタンを一時的に無効化する仕組みとする。戸閉ボタンの無効化とともに、その旨乗りかご1内に音声アナウンス等で報知する。このとき、戸開時間調整の場合と同様に配車台数決定部45は一台応答信号dを出力した上で、到着したかごの戸開している間に一時的に戸閉ボタンを無効化する指示を出力し、一定時間経過後自動で閉動作を開始する。このようにすると、乗客の乗り込みの際の安全性を向上させることが可能となる。
【0100】
本実施形態では、自動ドア3が動作し、戸閉完了後に戸開時間信号aが出力されることにより配車システムが起動することとしているが、ここで、戸開状態、すなわち戸閉完了しない状態が一定時間継続した場合の配車処理について説明する。
【0101】
戸閉完了しない状態が継続するということはすなわち絶えず利用者が通過していると推定でき、この場合は、複数台の乗りかごを配車する必要がある。自動ドア3の戸開を開始してから、一定時間継続して戸開状態を維持した場合、乗場呼び可能な乗りかごを判断して、配車可能な乗りかごのすべてもしくは任意の割合を自動ドア3の有する階に配車する。一定時間とは、例えば1分間とし、戸開維持の情報を定期的に配車台数決定部45もしくは運行制御部41に送信する。さらに、一定時間経過後、さらに任意に定めた時間を経過したか否かに基づいて、配車制御を継続するか終了するか判断する。自動ドア戸開時間の上限値を設定することで、混雑時にも継続的に配車可能となり、利便性が向上する。
【0102】
以上に述べたように、実施形態によれば、自動ドア3の戸開時間から出発階乗場における乗客人数を推定し、それに基づいて制御を行うことで、乗場2の乗場操作盤23を改めて操作することなく、利用者の利便性を向上させることができる。利用者はエレベータ乗車の前に自動ドア3を通過することが必須となる構造であるため、システムとしては乗場操作盤23の動作の有無を常に監視する必要が無く、自動ドア3が動作するまでは非稼働状態を維持することができる。したがって、インジケータ等の表示を含め乗場2における待機電力を抑えることが可能となり、部品等の長寿命化が図れる。なお、乗場操作盤23は、自動ドア3の動作が生じた場合に限り、動作時から一定時間だけ反応可能とする。また乗場2に設けられた乗場操作盤23が複数の場合は、複数の乗場操作盤23のうち一定数の乗場操作盤23のみを反応可能とするように制御するとしても構わない。
【0103】
他にも、自動ドア3を通過後、乗場2で車椅子用ボタン(不図示)が押下された場合、かご内に乗り込んだときの車椅子の占有面積と通過人数とに基づいて、乗りかご1の配車台数を決定する。例えば、定員が8人のエレベータにおいて、車椅子の利用者の他に自動ドア3を通過した人数が1人だと推定された場合はかご呼びが一台でも構わないが、車椅子利用者の他に6人が通過したと推定されるとかご呼びは二台必要となるため、操作された状況に合わせて適した台数のかごを配車する。
【0104】
なお、実施形態はエントランス等を備える基準階での適用が望ましい。自動ドア3通過後、利用者自らがボタンを操作することなくかご呼びが実施され、運行制御を行われているときに、乗場2の一般用ボタン(乗場操作盤23)が点灯等されるとしているが、車椅子用ボタンはそれに限らず、必要な利用者が必要時に押下することを可能とする。
【0105】
<第二実施形態>
【0106】
次に、図13及び図14を用いて第二実施形態を説明する。以降、同一構成要素は同一符号を付し、重複する説明を省略する。上述した第一実施形態では、自動ドア3が戸開状態を維持した累積時間によって乗場乗客数を推定し、かつ、更新した過去の情報を参照するのに対し、第二実施形態は、カウントセンサを設置することで人数把握の精度を向上させたものである。
【0107】
図13は第二実施形態に係るエレベータと自動ドア3の概略図である。カウントセンサ51をドア近傍に設け、自動ドア3動作後に通過した利用者の人数をカウント可能としている。なお、カウントセンサ51が備わる場合には、図1に示すような荷重検知装置16や撮像装置17を設けなくても構わない。第一実施形態では、乗りかご1に乗り込む際に荷重検知装置16もしくは撮像装置17により算出している乗車人数を、第二実施形態においては配車前に算出可能となり、人数把握の精度を向上させるとともに、適した乗場呼び登録及び乗りかご1の手配を行うことができる。
【0108】
カウントセンサ51は例えば、複数の光電センサによる人物の検知位置や方向等から入退室を判断する仕組みや、3D視覚センサにより得られる多次元の奥行き検知を通じて、通過人数や属性を判断する仕組みを活用する。算出したカウントの情報を共有することで、エレベータの乗りかご1と、自動ドア3とを一体的に管理することが可能となる。カウントセンサ51は、検知範囲において、内蔵された複数のセンサが検知するタイミングのずれから、利用者の向かってくる方向や人数を算出する。
【0109】
次に、第二実施形態に係るシステムの仕組みについて図14を用いて説明する。
【0110】
本システムは、戸開時間測定部32と、カウントセンサ51から得られた情報から自動ドア3の通過人数を算出する通過人数推定部42と、待ち人数予測部43と、定員情報保持部44と、配車台数決定部45と、運行制御部41とから構成される。
【0111】
戸開時間測定部32は、戸開時間を計測し、戸開時間信号aとして出力して通過人数推定部42に送信する。また、カウントセンサ51は、通過人数を算出し、センサ検知信号hとして出力して通過人数推定部42に送信する。戸開時間信号aとセンサ検知信号hを受信した通過人数推定部は、これらの信号について、センサ検知信号hを推定通過人数信号bとして配車台数決定部45に送信する。センサ検知信号hを推定通過人数信号bとする他、連動させて記憶させてもよい。
【0112】
待ち人数予測部43は、自動ドア3の動作が一度の場合は、通過人数を乗場待機人数(待ち人数)と同数とし、ドア制御部35とカウントセンサ51の少なくとも一方が複数回動作した場合は、カウントした通過人数を都度加算したものを乗場待機人数(待ち人数)として、都度更新して保存する。
【0113】
配車台数決定部45は、更新した乗場待機人数(待ち人数)を定期的に読み取り、読み出した乗場待機人数(待ち人数)の情報と、定員情報保持部44より取得したかご内定員信号cとに基づき、乗場待機人数とかご内定員とを比較し、乗場待機人数がかご内定員よりも小さいか否かを判定する。判定結果に基づき、適したかごの台数の応答信号(一台応答信号d、二台応答信号eもしくは台数を指定した信号)を出力し、運行制御部41に送信する。運行制御部41は、配車台数決定部45から受けた指示に従って乗りかご1の運行制御を行う。
【0114】
このようにして、第二実施形態では、以上の構成を有することで乗場2の待機人数をより高精度で推定し、適した台数の乗りかご1を配車する。なお、学習手段47及びテーブル(記憶部)48は有しているとなおよく、カウントセンサ51による通過人数の算出結果と戸開時間とを連動して保存することで、自動ドア3もしくはカウントセンサ51の異常検知を速やかに行うことが可能となる。
【0115】
以上に述べたように、第二実施形態によれば、自動ドア3近傍に通過人数を計測するカウントセンサ51を設け、センサ検知を開始してから自動ドア3及びカウントセンサ51の動作が生じるたびに適した台数の乗りかご1を配車制御する。これによれば、乗場2における利用者の待機時間の削減を図りつつ、精度を向上させた状態で、乗りかご1に乗り込む前に無駄なく適した運行制御を行うことが可能である。
【0116】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1…乗りかご(かご)、11…かごドア、12…かご内操作盤、13…荷重検知装置、14…撮像装置、2…乗場、21…出入口、22…乗場ドア、23…乗場操作盤、3…自動ドア、31…ドア制御部、32…戸開時間測定部、33…扉、34…センサ、4…制御装置、41…運行制御部(運行制御装置)、42…通過人数推定部(人数推定器)、43…待ち人数予測部、44…定員情報保持部、45…配車台数決定部(乗場呼び登録装置)、46…乗車人数算出部(乗車人数算出手段)、47…学習手段、48…テーブル/記憶部(記憶手段)、51…カウントセンサ、
a…戸開時間信号、b…推定通過人数信号、c…かご内定員信号、d…一台応答信号、e…二台応答信号、f…乗車人数信号、g…時間人数対応信号、h…センサ検知信号、B…推定通過人数、F…乗車人数、N…配車台数、W…待ち人数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14