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特許7451590媒体輸送用の装置を製造する方法、及び、装置
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  • 特許-媒体輸送用の装置を製造する方法、及び、装置 図1
  • 特許-媒体輸送用の装置を製造する方法、及び、装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】媒体輸送用の装置を製造する方法、及び、装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/20 20060101AFI20240311BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240311BHJP
   B29C 49/50 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B29C49/20
B29C49/04
B29C49/50
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022052062
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2022159103
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】21166247.3
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518148098
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ウィンター
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン デイベル
(72)【発明者】
【氏名】アルテム トゥツィン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-023179(JP,A)
【文献】特開平09-123258(JP,A)
【文献】特開平10-211647(JP,A)
【文献】特開平07-214655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形部品として形成される基体(2)と、少なくとも1つの機能要素(3)とを備える、媒体輸送用の装置(1)を製造するための方法であって、
ポリマー材料からなるプリフォームと、少なくとも1つの機能要素(3)とが提供され、
前記プリフォーム及び前記機能要素(3)は、ブロー金型(4)内に配置され、
前記基体(2)は、前記プリフォームから形成され、
前記プリフォームは、成形中は前記機能要素(3)に当接し、
前記ブロー金型(4)は、第1金型要素(5)及び第2金型要素(6)を有し、
前記第1金型要素(5)と前記第2金型要素(6)との間で、前記プリフォームから前記基体(2)が形成され、
前記第1金型要素(5)及び前記第2金型要素(6)は、ブロー成形中に前記機能要素(3)の領域内で前記プリフォームから生成される余分な材料を除去できるような態様で前記機能要素(3)に当接し、
前記第1金型要素(5)及び前記第2金型要素(6)は、ブロー成形中に、弾性変形によって前記機能要素(3)に当接する
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1金型要素(5)及び前記第2金型要素(6)は、前記余分な材料を前記基体(2)から除去できるような態様で、互いに当接し且つ前記機能要素(3)に当接する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記機能要素(3)は、ポリマー材料から形成されている
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1金型要素(5)及び前記第2金型要素(6)には、プレスオフエッジ(7)が装備されており、
該プレスオフエッジは、ブロー成形中に、線状に且つ弾性変形によって前記機能要素(3)に当接する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体輸送用の装置を製造する方法に関し、この装置は、ブロー成形部品として形成される基体と、少なくとも1つの機能要素とを備える。
【背景技術】
【0002】
媒体輸送用の装置は、例えば電気自動車に必要である。電気自動車の電池、特にリチウムイオン電池は、限定された温度範囲内でのみ、最適な能力を発揮する。このため、周囲温度に応じて電池の加熱又は冷却が必要になることがある。よって、電池のセルを所望の温度範囲内で温度制御するために、電気自動車のドライブユニットは、通常、管路装置を有する温度制御回路を備えており、この管路装置を通して、温度制御媒体等をセルに供給することができる。
【0003】
さらに、電気自動車のドライブユニット全体の構成要素の温度を制御する、特に冷却することが必要な場合がある。これらの構成要素には、電池のほかに、パワーエレクトロニクス機器や電気モータが含まれる。充電用エレクトロニクス機器やこれに関連するプラグ接続部やケーブルも、温度制御ユニットによって冷却することができる。高速充電処理に関しては、このことは特に重要である。
【0004】
ドライブユニット内での使用に加えて、車両エレクトロニクス機器におけるその他の部分、特にセンサ及び車載コンピュータに関連するさらなる応用分野がある。車両が自動運転用に装備される場合、強力なセンサ及び強力なコンピュータが必要になり、この場合、システムがほぼ冗長になる。車両内の設置するスペースが限られているため、これらのシステムは、これらの構成要素の温度を制御する温度制御ユニットについても特別な要件を有する。
【0005】
空調システム内でも温度制御媒体が使用される。空調システム、特に移動式空調システムは、温度制御媒体を空調システムの個々の装置間で輸送可能にする管路装置を備える。移動式空調システム、例えば自動車の車内空調用の空調システムでは、管路装置は比較的複雑な構造を有している。さらに、装置のさらなる構成要素、例えばポンプ等の機能要素は、装置に一体化して設置するスペースを節約する必要がある。機能要素を装置に一体化すると、装置を組み立てる手間が減るという利点も生じる。しかし、特に装置を組み立てる際に機能要素が脱落しないような態様で装置に保持されることは、確実にしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、基体に一体化される機能要素と共に、基体をブロー成形部品として安価に製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴により達成される。従属請求項は、有利な実施形態を示している。
【0008】
ブロー成形部品として形成される基体と、少なくとも1つの機能要素とを備える、媒体輸送用の装置を製造するための本発明による方法である。本方法では、ポリマー材料からなるプリフォームと少なくとも1つの機能要素とが提供され、プリフォーム及び機能要素はブロー金型内に配置され、基体はプリフォームから形成され、プリフォームは成形中は機能要素に当接し、ブロー金型は第1金型要素及び第2金型要素を有し、第1金型要素と第2金型要素との間でプリフォームから基体が形成され、第1金型要素及び第2金型要素は、ブロー成形中に機能要素の領域内でプリフォームから生成される余分な材料を除去できるような態様で機能要素に当接する。
【0009】
ブロー成形工程の完了後、1つの部品からなる基体は、好ましくは形状接続式に、脱落しない態様で機能要素に接続される。基体はプリフォームから作成されるが、このプリフォームは管として形成可能であり、この管が成形用の2つの金型要素の間に配置される。工程中、プリフォームは、ブロー金型内に配置されている機能要素にも当接するようになる。
【0010】
これに関連して、流れを誘導する接続が、基体と機能要素との間に形成されることが特に好ましい。従って、少なくとも1つの流路を基体に形成することができ、この流路は、機能要素内に誘導するさらなる流路へとつながっている。基体と機能要素との間の移行部、又は、基体と機能要素との間の中間領域は、永続的に封止されるべきである。
【0011】
基体を製造するために、ブロー金型の2つの金型要素は、少なくとも複数個所で機能要素に当接する。プリフォームから基体を成形している際に、基体と機能要素との間に規定の移行部を生成する必要がある。本発明による方法では、ブロー成形中、金型要素は、ブロー成形中に機能要素の領域内で生成される余分な材料を除去できるような態様で、機能要素に当接する。この目的で、好ましくは、第1金型要素と第2金型要素は、余分な材料を基体から分離するような態様で、互いに当接し且つ機能要素に当接する。
【0012】
好ましくは、2つの金型要素は、閉じられた後に、余分な材料を基体から分離する所定の領域を機能要素の領域内に生成するように、プリフォームを締め付ける。パリソン廃材とも称される余分な材料とは、金型要素が閉じられた後に、基体を形成する金型要素の領域の外にあるプリフォームの材料のことである。2つの金型要素が互いに接触して互いに当接すると接触領域内に継ぎ目が生成されるが、そこにできる余分な材料は、離型後に剥がれ落ちるか、又は、少なくとも容易に除去することができる。しかしながら、機能要素を基体に直接形成する場合には、継ぎ目は遮られ、金型要素同士はこれらの箇所では接触しない。その際、継ぎ目は、複数箇所において機能要素に沿って延在する。そこにできる余分な材料を容易に除去できることを確実にするために、ブロー成形中、2つの金型要素は、この領域内でも余分な材料を基体から分離するような態様で機能要素に当接する。その際、この余分な材料は、離型直後に剥がれ落ちるか、又は、断裂又は切断等の簡易な手段により除去することができる。
【0013】
好ましくは、機能要素は、ポリマー材料から形成されている。好適な材料は、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性エラストマー等のプラスチックである。ここで、機能要素の材料は、ブロー成形中に機能要素が形状的に安定しているものが選択される。このためには、機能要素用に選択されるプラスチックは、プリフォームのブロー成形に必要な温度を上回るガラス転移温度を有する。別の方法として、機能要素は、金属材料製、セラミック材料製、又は、ガラス製としてもよい。
【0014】
第1金型要素及び第2金型要素は、好ましくは、ブロー成形中に、弾性的な予荷重によって機能要素に当接する。この場合、2つの金型要素は、機能要素に永続的な変形を全く生じさせることなく、機能要素に緊密に当接する。
【0015】
第1金型要素及び第2金型要素には各プレスオフエッジ(press-off edge)を装備することができ、これらのプレスオフエッジは、ブロー成形中に、線状に且つ弾性的な予荷重によって機能要素に当接する。これにより、特に非常に明確な領域が生成されて、ブロー成形後にできる余分な領域を除去するのが特に容易になる。プレスオフエッジは、リブの形状に形成されていてもよい。実施形態によっては、プレスオフエッジを切断縁とすることもでき、この切断縁によって基体を余分な材料から分離する。
【0016】
本発明による装置は、前述の方法により得ることができる。好ましくは、装置は、温度制御媒体用の分配構造となっている。
【0017】
機能要素は接続片として形成することができ、機能要素は、例えばホース接続部や管路接続部を形成することができる。ホース接続部により、装置を、媒体を基体内へ供給可能な1つ又は複数のホースに接続することが容易になる。しかしながら、機能要素は、アダプタ、弁、ポンプ、センサとして、又は、前述の要素の一部として形成することもできる。
【0018】
装置は、車両での使用に適しており、特に好ましくは電気自動車での使用に特に適している。本発明による製造方法によれば、装置は、コンパクトとなり且つ機能要素と一体化される。これにより、装置は、電気自動車で温度制御媒体用の分配構造として使用するのに適したものになる。
【0019】
本発明における装置及び本発明における方法の、実施形態の幾つかを、以下で図を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】媒体輸送用の装置を概略的に示した図である。
図2】ブロー金型を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、媒体輸送用の装置1を示す。本事例において、装置1は、温度制御媒体用の分配構造をなしており、この装置1は電気自動車の温度制御回路内で使用される。温度制御媒体を、この装置1を介して分配し、電池、電気モータ、パワーエレクトロニクス等の温度制御が必要な装置に供給することができる。
【0022】
装置1は、ブロー成形部品として形成される基体2と、基体2に脱落しないような態様で接続されている複数の機能要素3とを備える。この場合、機能要素3は、接続片として形成されており、温度制御媒体輸送用のホースを収容するために使用される。
【0023】
基体2は、機能要素3と同様に、ポリマー材料製である。機能要素3は射出成形により製造される。機能要素3用のプラスチックは、そのガラス転移温度が基体2をブロー成形で製造するのに必要な温度を上回るように、選択される。
【0024】
ブロー成形工程中には、機能要素3が既にブロー金型4内に配置されているため、基体2は、形状接続式に及び脱落しないような態様で、機能要素3上に直接に成形される。その結果、装置1は、組み立てが容易なユニットとなる。
【0025】
図2は、装置1を製造するためのブロー金型4を示す。ブロー金型4は第1金型要素5及び第2金型要素6を有し、ブロー成形中に、第1金型要素5と第2金型要素6との間で、プリフォームから基体2が形成される。その際に、プリフォームは、第1金型要素5と第2金型要素6との間の移行部にて締め付けられ、これにより、継ぎ目に沿って余分な材料がでる。この余分な材料は、形成工程後に除去される。
【0026】
機能要素3の領域では、第1金型要素5及び第2金型要素6は、ブロー成形中に機能要素3の領域内で生成される余分な材料を除去できるような態様で機能要素3に当接する。この場合、第1金型要素5及び第2金型要素6は、ブロー成形中、弾性的な予荷重によって機能要素3に当接する。予荷重は、機能要素3に機能制限を生じさせかねない変形が生じないように選択される。
【0027】
第1金型要素5及び第2金型要素6には、機能要素3に関連する領域内に、プレスオフエッジ7が装備されており、これらのプレスオフエッジ7は、ブロー成形中に、線状に且つ弾性的な予荷重によって機能要素3に当接する。これによって、さらに、基体2と機能要素3との間の領域内に継ぎ目に類するものが形成され、この領域では、余分な材料を特に容易に除去することができる。ブロー成形後、余分な材料を切り落としたり又は削ぎ落としたりすることができる。余分な材料を削ぎ落とし、それにより製造工程のスピードを上げることが好ましい。実施形態によっては、プレスオフエッジ7を切断縁とすることもでき、この切断縁によって基体2を余分な材料から明確に分離する。
図1
図2