(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】蠕動運動ポンプを備えるハンドヘルド眼科用プローブ、および関連の機器、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61F9/007 130B
(21)【出願番号】P 2022080106
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2019511375の分割
【原出願日】2017-08-18
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ ジャビア オチョア
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536758(JP,A)
【文献】米国特許第05840069(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0213993(US,A1)
【文献】米国特許第04417856(US,A)
【文献】特表平08-510812(JP,A)
【文献】特表2005-518505(JP,A)
【文献】特表2016-516483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって掴まれるようなサイズおよび形状にされたハウジングと;
前記ハウジングから延在しかつ患者の眼に貫入し、それを治療するようなサイズにされているチップであって、前記眼から物質を運ぶように配置された吸引ルーメンを含む、チップと;
前記ハウジング内に配置された蠕動運動ポンプと;を含むハンドヘルドプローブを含む眼科手術システムであって、
前記蠕動運動ポンプが、
導管ルーメンが延在する変形可能な導管であって、前記導管ルーメンは前記吸引ルーメンと流体連通している、変形可能な導管;
前記変形可能な導管と接触しかつ外周面を含む複数のローラであって、前記複数のローラは、前記変形可能な導管と係合して、前記変形可能な導管を変形させる、複数のローラ;
前記複数のローラの各ローラの前記外周面と接触するローラ駆動装置であって、前記複数のローラは、前記ローラ駆動装置の動きに応答して前記変形可能な導管に沿って可動であり、前記導管ルーメン内の物質をそれに沿って動かす、ローラ駆動装置;及び
前記複数のローラに対して前記ローラ駆動装置とは反対側に位置して、前記複数のローラの外周面と接触するトラックハウジング;を含み、
前記ローラ駆動装置と前記トラックハウジングとの間に支持部材が位置決めされており、前記支持部材に形成された複数の凹部は、前記複数のローラを受け入れるようなサイズ及び形状にされており、前記支持部材は
前記ローラの回転軸の方向において両側から前記複数のローラを挟み込むように配置されている、眼科手術システム。
【請求項2】
前記ローラ駆動装置は、前記複数のローラを通って延在するアクスルを含まない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記蠕動運動ポンプは、円形構成に配置された複数のローラを含み、および前記複数のローラは、前記変形可能な導管と接触しかつ前記変形可能な導管と前記ローラ駆動装置との間に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ローラ駆動装置は、前記複数のローラと接触する面を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ローラ駆動装置は、前記複数のローラを収容するようなサイズおよび形状にされた溝を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記蠕動運動ポンプは、さらに、チャンネルを画成するトラックハウジングを含み、前記チャンネルは、前記複数のローラが移動するトラックを画成する、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記変形可能な導管は前記チャンネル内に位置決めされ、および前記複数のローラは、前記変形可能な導管および前記ローラ駆動装置と接触しながら、前記トラックに沿って動くように配置される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記トラックは、前記チャンネル内への前記複数のローラの動きを制限することによって、前記変形可能な導管の変形を制限する接触面を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記蠕動運動ポンプは、さらに、複数の凹部を有するガイド部材を含み、前記複数のローラのそれぞれが、前記複数の凹部のそれぞれ1つに位置決めされる、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記プローブは、前記ハウジング内に配置されたモータをさらに含み、前記モータは、前記ローラ駆動装置に結合されたモータシャフトを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記モータが前記ローラ駆動装置を回転させる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記変形可能な導管が、前記物質を第1の方向に運ぶ第1のセグメントと、前記物質を第2の方向に運ぶ第2のセグメントとを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
ユーザによって掴まれるようなサイズおよび形状にされたハウジングと;
前記ハウジングから延在しかつ眼に貫入するようなサイズにされているチップであって、流体を運ぶように配置されたチップルーメンを含む、チップと;
前記ハウジング内に配置された蠕動運動ポンプであって、
導管ルーメンを画成する変形可能な導管であって、前記導管ルーメンは前記チップルーメンと流体連通している、変形可能な導管;
前記変形可能な導管と接触する複数のローラであって、前記複数のローラは、前記変形可能な導管に局部的な変形を形成し、前記複数のローラのそれぞれが外周面を含む、複数のローラ;
前記複数のローラの各ローラの前記外周面と接触するローラ駆動装置であって、前記複数のローラは、前記ローラ駆動装置の動きに応答して可動であり、前記導管ルーメン内の物質をそれに沿って輸送する、ローラ駆動装置;及び
前記複数のローラに対して前記ローラ駆動装置とは反対側に位置して、前記複数のローラの外周面と接触するトラックハウジング;を含む、蠕動運動ポンプと、
前記ハウジング内に配置されたモータであって、前記モータは、前記ローラ駆動装置に結合されたモータシャフトを含み、前記ローラ駆動装置は、前記モータシャフトの動きに応答して可動である、モータと
を含む、ハンドヘルドプローブ
を含む眼科手術システムであって、
前記ローラ駆動装置と前記トラックハウジングとの間に支持部材が位置決めされており、前記支持部材に形成された複数の凹部は、前記複数のローラを受け入れるようなサイズ及び形状にされており、前記支持部材は
前記ローラの回転軸の方向において両側から前記複数のローラを挟み込むように配置されている、眼科手術システム。
【請求項14】
前記モータを加減速するために、前記モータに制御信号を送信するように動作可能であるコントローラをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記変形可能な導管と流体連通するドレン溜め部をさらに含み、前記導管ルーメン内で輸送される物質は、前記ドレン溜め部に堆積される、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月30日出願の米国仮特許出願第62/381,455号明細書の利益を主張し、その内容全体を本願明細書に援用する。
【0002】
本開示は、眼科手術機器、システム、および方法に関する。より詳細には、限定するものではないが、本開示は、蠕動運動ポンプを有するハンドヘルドプローブに関する。
【背景技術】
【0003】
人の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分に光を透過させ、かつ水晶体によって、網膜上に像の焦点を合わせることによって、視覚をもたらす。焦点を合わせられた像の品質は、眼のサイズおよび形状、ならびに角膜および水晶体の透明度を含む、多くの要因に依存する。老化や疾病によって水晶体の透明度が低くなると、網膜へ透過される光が減少するため、視覚は低下する。この眼の水晶体の欠陥は、医学的に白内障として知られている。この状態に対して一般に認められた治療では、水晶体を外科的に除去し、かつ人工の眼内レンズ(IOL)によって水晶体の機能を置き換えることである。
【0004】
白内障水晶体は、超音波水晶体乳化吸引法と呼ばれる外科技術を使用して除去され得る。超音波水晶体乳化吸引処置において使用される典型的な手術用プローブは、超音波駆動式切断針を有するハンドピースまたはハンドヘルドプローブを含む。処置の間、外科医は、切断針のチップすなわち先端を眼の水晶体に接触させるようにする。切断針は、高速で振動して、チップとの接触によって水晶体を細分化する(fragment)。処置を通して、灌流用の流体が眼に送給される。水晶体の破片を含む流体はまた、眼から吸引される。場合によっては、切断針は、流体が吸引される吸引ルーメンを含む。流体は、眼から、吸引ルーメンを通って、弾性チューブを通って、ドレン溜め部へと吸引され得る。
【0005】
超音波水晶体乳化吸引処置の間によくある現象は、吸引ルーメンの遮断、または閉塞から生じる。灌流流体および水晶体断片は、眼の内部から切断針の吸引ルーメンを通って吸引されるため、吸引ルーメンの直径よりも大きい組織片が、特に切断針のチップにおける吸引ルーメンの開口部において、吸引ルーメンを閉塞させたりまたは詰まらせたりし得る。吸引ルーメンが詰まると、真空圧が高まり、弾性チューブを潰す原因となる。閉塞が除去されると、望ましくないほどの大量の流体および組織が、眼から吸引ルーメンへと急速に引き込まれ過ぎる可能性がある。これは閉塞後サージ(post-occlusion surge)として知られている。場合によっては、閉塞後サージは、眼を潰すおよび/または水晶体嚢(lens capsule)を引き裂く原因となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ハンドヘルドプローブを含み得る例示的な眼科手術システムについて説明する。プローブは、ユーザによって掴まれるようなサイズおよび形状にされたハウジングを含み得る。プローブはまた、ハウジングから延在しかつ患者の眼に貫入し、それを治療するようなサイズにされているチップを含み得る。チップは、眼から流体を運ぶように配置された吸引ルーメンを含み得る。プローブはまた、ハウジング内に配置された蠕動運動ポンプを含み得る。ポンプは、導管ルーメンが延在する変形可能な導管を含み得る。導管ルーメンは、吸引ルーメンと流体連通し得る。ポンプはまた、変形可能な導管と接触するローラを含み、および外周面を含み得る。ローラは、変形可能な導管と係合して、変形可能なチューブを変形させ得る。ポンプはまた、ローラの外周面と接触しているローラ駆動装置を含み得る。ローラは、ローラ駆動装置の動きに応答して変形可能な導管に沿って可動とし、導管ルーメン内の物質の、それに沿った動きを引き起こし得る。
【0007】
本開示はまた、ハンドヘルドプローブを含み得る眼科手術システムを開示し得る。ハンドヘルドプローブは、ユーザによって掴まれるようなサイズおよび形状にされたハウジングと、ハウジングから延在しかつ眼に貫入するようなサイズにされているチップと、ハウジング内に配置された蠕動運動ポンプとを含み得る。チップは、流体を運ぶように配置されたチップルーメンを含み得る。ポンプは、導管ルーメンを画成する変形可能な導管を含み得る。導管ルーメンはチップルーメンと流体連通し得る。ポンプはまた、変形可能な導管と接触する複数のローラを含み得る。複数のローラは、変形可能な導管に局部的な変形を形成し得る。複数のローラのそれぞれは、外周面を含み得る。ポンプはまた、複数のローラの各ローラの外周面と接触するローラ駆動装置を含み得る。複数のローラは、ローラ駆動装置の動きに応答して可動であり、導管ルーメン内の物質をそれに沿って輸送し得る。プローブはまた、ハウジング内に配置されたモータを含み得る。モータは、ローラ駆動装置に結合されたモータシャフトを含み得る。ローラ駆動装置は、モータシャフトの動きに応答して可動とし得る。
【0008】
さらに、本開示は、眼科手術方法に関する。例示的な方法は、患者の眼に手術用プローブのチップを挿入することを含み得る。チップは、眼から物質を運ぶように配置された吸引ルーメンを含み得る。方法はまた、複数のローラを変形可能な導管に接触させて、複数のローラのそれぞれによって、変形可能な導管の局部的な変形を引き起こすこと;ローラ駆動装置によって複数のローラのそれぞれの外周面に係合すること;および変形可能な導管に沿った複数のローラの動きを引き起こすようにローラ駆動装置を動かすことによって、眼から物質を吸引して、変形可能な導管のルーメン内に含まれる物質を蠕動式にポンプで送ることを含み得る。
【0009】
異なる実施例では、本開示の様々な態様は、以下の特徴の1つ以上を含み得る。ローラ駆動装置は、ローラを通って延在するアクスルを含まなくてもよい。蠕動運動ポンプは、円形構成に配置された複数のローラを含み得る。複数のローラは、変形可能な導管と接触し、かつ変形可能な導管とローラ駆動装置との間に配置され得る。ローラ駆動装置は、複数のローラと接触している面を含み得る。蠕動運動ポンプは、さらに、チャンネルを画成するトラックハウジングを含み得る。チャンネルは、複数のローラが移動するトラックを画成し得る。変形可能な導管は、チャンネル内に位置決めされ得、および複数のローラは、変形可能な導管およびローラ駆動装置と接触しながら、トラックに沿って動くように配置され得る。トラックは、チャンネル内への複数のローラの動きを制限することによって、変形可能な導管の変形を制限する接触面を含み得る。蠕動運動ポンプはまた、複数の凹部を有するガイド部材を含み得る。複数のローラのそれぞれは、複数の凹部のそれぞれ1つに位置決めされ得る。プローブはまた、ハウジング内に配置されたモータを含み得る。モータは、ローラ駆動装置に結合されたモータシャフトを含み得る。モータは、ローラ駆動装置を回転させ得る。ローラは球形とし得る。変形可能な導管は、物質を第1の方向に運ぶ第1のセグメントと、物質を第2の方向に運ぶ第2のセグメントとを含み得る。
【0010】
コントローラは、モータを加減速するために、モータに制御信号を送信するように動作可能とし得る。変形可能な導管とドレン溜め部が流体連通し得る。導管ルーメン内で輸送された物質は、ドレン溜め部に堆積され得る。ハンドヘルドプローブは超音波水晶体乳化吸引プローブとし得る。
【0011】
ローラ駆動装置は、手術用プローブ内に配置されたモータに結合され得、およびモータは、ローラ駆動装置に結合されたモータシャフトを含み得る。変形可能な導管は、トラックハウジングに形成されたチャンネル内に配置され、および複数のローラは、チャンネルによって形成されたトラックに沿って動かされ得る。
【0012】
上述の概要および以下の図面および詳細な説明は、双方とも、本質的に例示および説明であり、および本開示の範囲を限定せずに、本開示の理解をもたらすことを意図することが理解される。そのことについては、本開示の追加的な態様、特徴、および利点が、下記から当業者に明らかである。
【0013】
添付図面は、本明細書で開示するシステム、機器、および方法の実施例を説明し、および説明と共に、本開示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】例示的な眼科手術システムのブロック図である。
【
図4】超音波水晶体乳化吸引プローブのブロック図である。
【
図5】例示的な蠕動運動ポンプの一部分の図である。
【
図9】
図7および
図8の蠕動運動ポンプのトラックハウジングの図である。
【
図10】例示的な蠕動運動ポンプの縦断面図である。
【
図11】例示的な蠕動運動ポンプを含むハンドヘルドプローブの一部分の縦断面図である。
【
図12】
図11のハンドヘルドプローブおよび蠕動運動ポンプの端面の断面図である。
【
図13】蠕動運動ポンプの例示的な態様の図である。
【
図14】
図13の蠕動運動ポンプの例示的な態様を示すグラフである。
【0015】
これらの図面は、以下の詳細な図面を参照することにより、より良好に理解される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の原理の理解を促すために、ここで、図面に示す実施例を参照し、およびそれらを説明するために特殊言語を使用する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定を意図しないことが理解される。説明の機器、器具、方法に対する任意の代替例およびさらなる修正例、および本開示の原理の任意のさらなる適用例は、本開示が関連する当業者が通常思いつくように、十分に考慮される。特に、1つ以上の実施例を参照して説明した特徴、構成要素、および/またはステップは、本開示の他の実施例を参照して説明した特徴、構成要素、および/またはステップと組み合わせられ得ることが十分に考慮される。簡潔にするために、場合によっては、図面を通して同じ参照符号を使用して、同じまたは同様の部分を指す。
【0017】
本開示は、概して、蠕動運動ポンプを使用して、眼から、物質、例えば流体、水晶体粒子、他の生物学的物質を含む他の物質、またはそれらの組み合わせを吸引するための機器、システム、および方法に関する。いくつかの実施例では、ポンプは、超音波水晶体乳化吸引プローブなどのハンドヘルド手術用プローブに収まるように配置される。ポンプは、吸引流体が流れる可撓性/変形可能な導管と接触している1つ以上のローラを含む。ポンプはまた、ローラの周辺または外表面と接触しているローラ駆動装置を含む。例えば、ローラ駆動装置は、ローラと摩擦係合してそれを動かす面を有する回転プレートまたは回転シリンダーとし得る。ローラ駆動装置は、導管に沿ってローラを動かして、流体の流れを促す。従来の蠕動運動ポンプについて、
図1を参照して下記でより詳細に説明する。
【0018】
図1は、チューブ40に沿って方向18に動くためにローラ12を用いる従来のポンプ10を示す。ローラ12はモータによって駆動され得る。ローラ12とチューブ40との間の摩擦によって、ローラ12をアクスル20の周りで方向16に回転させる。アクスル20は、ローラ12がチューブ40に沿って方向18に動くため、方向18に平行移動する。ローラ12はチューブ40に接触してそれを変形させ、ローラ12の両側において、チューブ40内に高圧領域および低圧領域を生じる。ローラ12がチューブ40に沿って方向18に動くとき、高圧領域および低圧領域はチューブ40に沿って動く。ローラ12が方向18に動くとき、ローラ12は、チューブ40内の物質を方向18に蠕動式に動かす。
【0019】
そのようなポンピング機構では、ローラ12と、アクスル20(ローラ12がその周りで回転する)との間に高摩擦が生じ得る。この摩擦に打ち勝つようにすることは、超音波水晶体乳化吸引プローブの設計および製造を複雑にし得る。追加的な構成要素、例えば軸受14が、ローラ-アクスル摩擦を最小限にするために、ポンプ10に追加される必要がある可能性がある。摩擦に打ち勝つために、比較的出力が大きいモータが、ポンプ10を操作するために使用され得る。しかしながら、そのようなモータは、超音波水晶体乳化吸引プローブに実装するには大きすぎたり、重すぎたり、および/または高価すぎたりする可能性がある。
図1に示すようなタイプの蠕動運動ポンピング機構は、弾性チューブと、チューブに接触する構成要素との間に高摩擦を伴い得る。その結果、プローブは、摩擦に打ち勝つために、追加的な潤滑な構成要素および/またはよりパワーすなわち動力のあるモータを必要とする可能性がある。
【0020】
しかしながら、従来のシステムとは異なり、本明細書で説明する蠕動運動ポンプは、ローラを通って延在するアクスルを含まない。例えば、ローラを通って延在するアクスルを介するローラとは反対に、モータのモータシャフトは、ローラ駆動装置に結合され得る。
【0021】
本開示の機器、システム、および方法は、従来の吸引ポンプを上回る多数の利点をもたらす。例えば、本明細書で説明するポンプの配置構成はアクスルを用いないため、アクスルとローラとの間の相互作用から生じる摩擦を最小限にする。摩擦効果は、より小規模ではシステムの動力学に影響を及ぼし得るため、摩擦を最小限にすることは、ポンプを小型化するのにより適している。より小型のポンプは手術用プローブ内に実装でき、これにより、閉塞後サージ効果を好都合に減少させるかまたはなくす。より小型、より軽量、および/またはより安価なモータを使用して、摩擦の少ないポンプを駆動し得る。アクスルの省略も、潤滑にする必要を最小限にする。本明細書で説明するポンプのいくつかの実施例はまた、幾何学的形状が単純であるローラを用い、これは、単純なポンプ設計を可能にし得る。
【0022】
図2は、例示的な眼科手術システム100を示す。
図3は、眼科外科的処置を行うために操作する様々なサブシステムを示すシステム100のブロック図である。
図2および
図3を参照して説明すると、例示的なシステム100は、ハンドヘルドプローブ112、およびコンソール101を含む。コンソール101は、可動ベースハウジング102、および外科的処置の間のシステムの動作および性能に関するデータを示す関連のディスプレイ画面104を含む。
【0023】
システム100は、複数のサブシステムの少なくとも一部を含む。例えば、システム100は、足踏みペダルサブシステム106、流体力学サブシステム(fluidics subsystem)110、および超音波発生サブシステム116を含み、それらは全て、コンピュータシステム103と連携して、超音波水晶体乳化吸引法の外科的処置を行う。コンピュータシステム103は、プロセッサーおよびメモリを含み、およびハウジング102内に配置され得る。足踏みペダルサブシステム106は足踏みペダル108を含む。流体力学サブシステム110は、ハンドヘルドプローブ、例えば統合吸引ポンプを有するハンドヘルドプローブ112を含む。超音波発生サブシステム116は、ハンドヘルドプローブ112の切断針に超音波振動を提供する。いくつかの実施例では、サブシステム106、110、116のいくつかは、コンソール101から分離できるおよび/またはそこに配置されていない構成要素または要素を含み得る。これらのサブシステムは、外科的処置の様々な局面を行うために、重なり合いかつ連携し得る。
【0024】
サブシステム106、110、および116の1つ以上は、コンピュータシステムと電気通信し得る。図示の例では、サブシステム106、110、および116は、コンピュータシステム103と電気通信している。いくつかの実施例では、コンピュータシステム103は、サブシステム106、110、および116の1つ以上に制御信号を送信して、それに関連するプローブ、例えば、プローブ112などの動作を制御し得る。プローブ112およびコンソール101は、電気ケーブル113および1つ以上の可撓性導管114によって接続され得る。コンソール101は、例えばプローブ112などのプローブ112の統合吸引ポンプを駆動する駆動機構へ電力を伝送し得る。コンソール101はまた、他の駆動機構に供給するプローブへ電力を伝送し得る。例えば、コンソール101は、超音波切断針を操作するための電力を提供し得る。いくつかの実施例では、1つ以上の可撓性導管114は、手術部位に灌流流体を供給し、かつ吸引流体を、眼からプローブ112を経て運び得る。
【0025】
図4は、例示的な実施例による流体力学サブシステム110の一部を概略的に示すブロック図である。流体力学サブシステム110は、灌流経路130、吸引経路140、およびプローブ112を含む。プローブ112は、外科医などのユーザによって掴まれ、手で持って使用されるサイズおよび形状にされたハウジング150を含み得る。いくつかの実施例では、プローブ112は、灌流スリーブ152および切断針154を含む超音波水晶体乳化吸引プローブとし得る。灌流スリーブ152および切断針154はハウジング150から延在し得る。
図4では、理解しやすくするために灌流スリーブ152および切断針154は別々に示されているが、異なる実施例では、灌流スリーブ152および切断針154は、同軸としても、または他の方法で配置されてもよい。灌流スリーブ152および切断針154は、患者の眼160に貫入し、それを治療するようなサイズにされ得る。
【0026】
いくつかの実施例では、プローブ112は、超音波水晶体乳化吸引プローブとして特徴付けられ得るが、プローブ112はスタンドアロンの吸引プローブとし得ることが理解される。プローブ112はまた、統合ポンプ200および/またはモータ161を有する、別のタイプの手術用プローブとし得る。例えば、プローブ112は、照明プローブ、レーザプローブ、および/または硝子体(vitreous)切断プローブとし得る。
図4に示す例では、プローブ112は、統合ポンプ200およびモータ161を含む。他の実施例では、プローブ112は、モータ以外の、他のタイプの駆動機構を含み得る。さらに、他の実施例では、プローブ112は、統合ポンプ200、またはモータ161、またはそれら双方を含み得る。
【0027】
いくつかの超音波水晶体乳化吸引処置の過程において、切断針154のチップ164、および灌流スリーブ152の端部166は、眼の外側組織内の小さな切開部を通って前眼部160に挿入され得る。水晶体を乳化するまたは他の方法で分割するために、外科医は、切断針154のチップ164を眼160の水晶体と接触させるため、振動しているチップ164が水晶体を細分化する。灌流流体が、灌流流体供給部134からスリーブ152の灌流ルーメン156を経由して手術部位へ、例えば、前眼部160内へと送給され得る。結果として得られる破片が、処置の間に眼にもたらされる灌流溶液と一緒に、眼160から切断針154の内側ボアまたはルーメン158を通って吸引される。吸引される物質は、ドレン溜め部144内へと送給される。
【0028】
処置の複数の選択期間を通して、またはその間、灌流用の流体は、眼160へポンプで送り込まれ得る。いくつかの実施例では、切断針154は、環状の通路を画成するスリーブ152の灌流ルーメン156を通って延在し得る。灌流用の流体は、環状の通路内で灌流スリーブ152と切断針154との間を通過し、かつ灌流スリーブ152の端部166においておよび/または端部166の近くの灌流スリーブ152に形成された1つ以上のポートまたは開口部から、眼160へ流出し得る。
【0029】
図示の例では、プローブ112は、灌流導管132を含む灌流経路130の構成要素を含む。場合によっては、灌流経路30の1つ以上の構成要素は、灌流流体を運ぶためのルーメンを画成する可撓性および/または変形可能なチューブとし得る。
図4に示す例では、導管132は、灌流流体供給部134からプローブ112まで延在し得る。導管132の少なくとも一部分はハウジング150内に配置され、および灌流流体供給部134、およびスリーブ152の灌流ルーメン156と流体連通している。外科的処置の間、灌流流体は、灌流流体供給部134から、灌流導管132および灌流ルーメン156を通って、眼160内へと流れ得る。灌流流体は、食塩水または平衡塩類溶液とし得る。灌流流体は、眼圧を維持し得、および眼160から吸引される流体と入れ替わることによって、外科的処置の間に眼160が潰れるのを防止し得る。灌流用の流体はまた、熱、例えば超音波切断針154の振動によって生成される熱から、眼組織を保護し得る。さらに、灌流用の流体は、乳化した水晶体の破片を懸濁し、眼160から吸引し得る。いくつかの実施例では、灌流流体供給部134は、プローブ112から離間され得る。例えば、いくつかの実施例は、静脈用ポール(intravenous pole)に、固定したまたは調整可能な高さで配置される、灌流流体供給部134を含む。他の実施例は、コンソール101内に配置された灌流流体供給部134を含む。
【0030】
プローブ112はまた、吸引経路140の構成要素を含み得る。例えば、プローブ112は、吸引導管142の全てまたは一部を含み得る。吸引導管142は、吸引した物質を運ぶルーメンを有する可撓性および/または変形可能なチューブの形態にあるとし得る。導管132、142は、シリコーンまたは他のタイプのポリマーを含む任意の好適な弾力材で形成され得る。
【0031】
図4に示すように、導管142は、プローブ112からドレン溜め部144まで延在する。吸引導管142の少なくとも一部分は、ハウジング150内に配置され得る。吸引導管142は、切断針154の吸引ルーメン158およびドレン溜め部144と流体連通する。吸引流体は、眼160から吸引ルーメン158および吸引導管142を通って流れ、およびドレン溜め部144に集まる。吸引流体は、灌流流体(例えば、灌流経路を経由して眼160へ送給された灌流流体)、眼160からの生体液、および/または眼160からの生体物質、例えば乳化された眼の水晶体断片を含み得る。ドレン溜め部144は、プローブ112から離間されていてもよく、および例えば、いくつかの実施例ではコンソール101内に配置されてもよい。
【0032】
ポンプ200は、吸引経路140と関連付けられ得る。ポンプ200は、吸引導管142とインターフェースを取るように配置されて、眼160からドレン溜め部144の方へ向かう吸引流体の流れを促し得る。例えば、ポンプ200は、モータ161によって駆動される蠕動運動ポンプとし得る。モータ161のモータシャフトは、ローラ駆動装置、例えばポンプ200の動くプレートおよび/または動くシリンダーに機械的に結合され得る。モータシャフトの回転が、ローラ駆動装置の対応する回転を引き起こす。モータ161および/またはポンプ200の様々な実施例は、モータシャフトおよびローラ駆動装置と併せて、
図5~15に示されておりおよび/または説明されている。
【0033】
いくつかの実施例では、ポンプ200または別のポンプは、灌流導管132とインターフェースを取るように配置され得る。例えば、ポンプ200は、灌流導管132とインターフェースを取るように配置されて、灌流流体供給部134から眼160の方へ向かう灌流流体の流れを促し得る。従って、ポンプ200は、流体を、眼160から(吸引導管142に沿って)および/または眼160の方へ(灌流導管132に沿って)方向付けるように、プローブ112内に実装され得る。
【0034】
流体力学サブシステム110はまた、モータ161と電気通信するコントローラ170を含み得る。コントローラ170は、1つ以上のプロセッサーおよび1つ以上のメモリデバイスを含み得る。いくつかの実施例では、プロセッサーは、並列または順次処理を実行できる1つ以上の処理コアを含み得る。他の実施例では、コントローラ170は、例えば、限定されるものではないが、特定用途向け集積回路(ASIC)などの、専用の1つのハードウェアとし得る。1つ以上のメモリデバイスは、任意のメモリまたはモジュールを含み得、および、限定されるものではないが、磁気媒体、光媒体、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、リムーバブル・メディア、または任意の他の好適なローカルまたはリモートメモリ要素を含む、揮発性または不揮発性メモリの形態を取り得る。1つ以上のメモリデバイスは、1つ以上のプロセッサーによって使用および/または実行するための1つ以上のプログラムおよび/またはデータを記憶し得る。
【0035】
モータ161は、コントローラ170によって送信された制御信号に応答して動作し得る。場合によっては、コントローラ170は、モータ161のオン/オフステータス、動作周波数、および/または他のパラメータを制御し得る。例えば、コントローラ170は、制御信号をモータ161へ送信して、モータ161を加減速させ得る。ポンプ200はモータ161に結合されているため、モータ161の動作は、次に、ポンプ200の動作を引き起こす。いくつかの実施例では、コントローラ170は、コンピュータシステム103(
図2)とは異なり得る。他の実施例では、コントローラ170は、コンピュータシステム103の一部とし、かつモータ161と通信し得る。
【0036】
図5は、例示的な蠕動運動ポンプ500の態様を示す。ポンプ500は、
図4のポンプ200の一部とし得るか、またはそれを形成し得る。導管540は、
図4の導管142の一部分を形成し得る。
【0037】
ポンプ500は、ローラ502およびローラ駆動装置510を含む。ローラ502は、ローラ駆動装置510によって導管540に沿って動かされる。導管540はルーメン542を画成する。図示の例では、ローラ駆動装置510は、ローラ502と接触する面516を有するプレートである。特に、ローラ駆動装置510の面516は、ローラ502の外周面503と係合する。図示の例では、ローラ駆動装置510の面516は、全体的に平面的である。しかしながら、面516は、非平面的としてもよい。ローラ502は、導管540に接触してそれを変形させる。詳細には、
図5に示すように、ローラ502は導管540を締め付けて、内面544がそれ自体に接触して、導管540内に局部的な閉塞部を形成するようにする。導管540内の流体の流れは、ほんの一瞬の間、ローラ502との接触点において閉塞され得る。しかしながら、ローラ502との接触およびその動きによって、導管540内に高圧領域および低圧領域が生じる。導管540内に生じた圧力によって、ルーメン542内の流体を方向511に流す。それゆえ、ポンプ500は、物質を蠕動式にポンプで送る。
【0038】
ローラ駆動装置510は、モータ、例えば、
図3に示すモータ161などに結合され得る。ここでは、しかしながら、ローラ502は、モータ161によって直接駆動される。むしろ、ローラ502は、方向504に回転し、およびローラ駆動装置510が方向511に駆動されている結果、方向511に平行移動する。それゆえ、
図1に示す従来のポンプ400とは対照的に、ローラ502は、ローラ502の中心を通って延在するアクスルを有しないため、それによって駆動されない。その代わりに、モータ161によって駆動されるローラ駆動装置510が、ローラ502の外周面503に接触する。ポンプ500内のアクスル-ローラインターフェースの省略は、摩擦源を好都合になくし、かつポンプ500を操作するためにモータ161が打ち勝つ必要のある摩擦の総量を最小限にする。従って、ポンプ500を操作するためにプローブ112に含まれるポンプ161は、より軽量、より小型、およびより安価になり得る。
【0039】
ローラ502は、好適なポンプ作用をもたらす任意の形状とし得る。いくつかの実施例では、ローラ502は、球形のボールローラとして付形される。そのような実施例では、ローラ502の外周面503は弧状の面であり、およびローラ駆動装置510の面516に接触している。いくつかの実施例では、ローラ502は、ステンレス鋼などの金属で形成され得る。他の実施例では、ローラ502は、シリコーンまたは他のタイプのポリマープラスチックおよび/またはゴムなどの非金属材料から形成され得る。例えば、ローラ502は、高デュロメータのシリコーンで形成され得る。
【0040】
球形のボールローラを用いることは、好都合にも、ポンプ500の製造を単純にし得る。以前の蠕動運動ポンプは、ローラ、および/または弾性チューブと接触する他の構成要素に、複雑な幾何学的形状を必要とした。例えば、以前の蠕動運動ポンプは、テーパ付きの形状またはヘリカルスクリュー/スクリューエキスパンダ(helical scroll)を備えるローラを用いた。より単純な幾何学的形状を有する球形のボールローラは、製造、獲得、および/またはポンプ500への実装が、より簡単である。
【0041】
プローブ112の蠕動運動ポンプ500は任意の数のローラを含み得る。例えば、ポンプ500は、
図5に示す単一のローラ502を含む。他の場合には、2つ以上のローラ502を使用してもよい。例えば、いくつかの実施例では、ポンプ500は、2~18個のローラを使用し得る。しかしながら、範囲はそのように限定されない。むしろ、任意の数のローラ502がポンプ500において使用され得る。例えば、
図11および
図12に示す例示的なポンプ800は、4個のローラ802を用いる。
図6、
図7、および
図13に示す例示的なポンプ600、700、および900はそれぞれ、6個のローラを含む。
図10に示す例示的なポンプ750は、12個のローラ702を含む(
図10の縦断面図では、4個のローラ702が示されており、および8個のローラ702は隠れている)。
【0042】
本開示の範囲内にあるポンプは、様々な構成に配置されたローラを有し得る。例えば、ローラは、長手方向、軸方向/半径方向、および/または周方向の間隔の任意の組み合わせで、互いに対して位置決めされ得る。例えば、
図6、
図7、
図12、および
図13にそれぞれ示すように、ポンプ600のローラ602、ポンプ700のローラ702、ポンプ800のローラ802、およびポンプ900のローラ902は、全体的に円形構成に配置され得る。さらに、ローラは、例えば、
図6に示すように、円周上で互いに離間され得る。いくつかの実施例では、導管内に高圧領域と低圧領域との圧力差が常に確実に存在するようにするために、導管内の流体の流れをほんの一瞬の間閉塞する少なくとも1つのローラがあるように、ローラは配置され得る。
図6に示すように、ローラは互いに離間されるため、隣接するローラによって締め付けられる、閉塞される、または他の方法で変形されるチューブの2つの部分の間に、非閉塞チューブの一部分が置かれるようにする。チューブのこの非閉塞部分内の流体は、ローラによって所望の方向に促される。
【0043】
図5では、導管540は線形構成に配置されているとして示されている。ローラ駆動装置510は、方向511において線形に可動である。ローラ駆動装置510の平行移動によって、方向511における、導管540に沿ったローラ502の対応する線形の変位を引き起こす。他の実施例では、導管は非線形構成に配置されてもよく、およびローラ駆動装置およびローラは、非線形経路に沿って動き得る。例えば、ローラ駆動装置およびローラは、1つ以上の長手方向、軸方向/半径方向、および/または周方向において動くように配置され得る。ローラ駆動装置およびローラは、同じまたは異なる経路に沿って動き得る。一般的に、ローラは、導管に接触し、それを変形させ、およびそれ沿って動き得る。ローラ駆動装置は、ローラに接触し、かつ導管に沿ったローラの動きを促すように配置される。
【0044】
図6は、導管640のセグメントにわたって円形構成に配置された複数のローラ602を有するポンプ600の一部分を示す。
図6に示す導管640のセグメントは、全体的に円形またはリング形状に配置される。円形構成は、好都合にも、プローブのハウジング、例えば例示的なプローブ112のハウジング150内に導管640をよりコンパクトにまとめることができるようにし得る。図示の例では、ポンプ600は、反時計回りの方向611にローラ602を回転させ、それにより、流体が、導管640のセグメントを反時計回りの方向611に通るように促す。ポンプ600はまた、時計回りの方向に操作されてもよい。物質(例えば、流体または流体混合物)のボーラスが、隣接するローラ602間の体積部にある導管640によって運ばれ得る。流体は、方向642において導管640にポンプで送り込まれ、および方向644において導管640から出る。
【0045】
ポンプ600は、ローラ602と接触しているローラ駆動装置650を含む。ローラ駆動装置650は、反時計回りの方向611に回転して、ローラ602も導管640に沿って方向611に回転するようにする。ローラ602は、ローラ602が導管に沿って方向611に動くときに、導管640に接触してそれを変形させて、流体が導管640を通るように促す。
【0046】
図7~10は、例示的なポンプ700を示す。ポンプ700は、ローラ702、ローラ駆動装置710、トラックハウジング720、およびガイド部材730を含む。
図7は、ポンプ700の図である。
図8は、ポンプ700の縦断面図である。
図9は、トラックハウジング720の図である。
【0047】
ポンプ700は、円形構成に配置された複数のローラ702を含む。ローラ駆動装置710は、プレート712およびシャフト714を含む。例えば、プレート712およびシャフト714は、一体的に形成され得る。いくつかの実施例では、プレート712は、シャフト714に、例えばシャフト714の端部に形成されたフランジの形態にあるとし得る。モータ161はシャフト714に機械的に結合されて、シャフト714を方向711に回転させ得る。プレート712は、
図8に示す面716を含み、この面は、ローラ702の外周面703に接触して、ローラ702を摩擦式に駆動する。ローラ702の外周面703とプレート712の面716は互いに係合し、プレート712の回転によって対応してローラ702を回転させるようにし、ローラ702のそれぞれを個々の軸A1の周りで回転させ、軸A1はそれぞれ、長手方向軸A2から半径方向外向きにおよびそれに対して垂直に延在する。ローラ702は、集合体として、ローラ駆動装置710の長手方向軸A2の周りで周方向経路に沿って回転する。プレート712の面716は、ローラ702のそれぞれの部分を受け入れるまたは収容するようなサイズおよび形状にされた環状の溝718を含む。いくつかの実施例では、面716は、環状の溝718を省略してもよく、むしろ、複数の個々の窪みを含む。窪みのそれぞれが、ローラ702のうちの1つを受け入れ、かつローラ702の外周面703に対応する形状を有する。他の実施例では、面716は全体的に平面的としてもよく、および環状の溝または個々の窪みを除外し得る。
【0048】
図9に示すように、トラックハウジング720には円形チャンネル726が形成されている。チャンネル726は、ローラ702が動くための経路を形成するトラック722を画成する。トラック722は、縁724aおよび724bを含む。図示の例では、縁724aおよび724bは、チャンネル726のそれぞれ外縁および内縁に形成された面取り部によって画成される。ローラ702は、ローラ702の複数の部分が縁724aおよび724bと接触しながら、縁724aと724bとの間のチャンネル726に沿って移動する。いくつかの実施例では、トラック722の幅は、ローラ702の直径を下回ってもよい。
【0049】
チャンネル726は、トラック722と端面729との間に形成された環状の間隙727を含む。チャンネル726に形成された環状の間隙727内に可撓性導管740が位置決めされる。場合によっては、間隙727の深さは、ローラ702がトラック722に沿って動かされるときに導管740がローラ702によって完全に閉塞されるように、選択される。他の実施例では、間隙727の深さは、ローラ702がトラック722に沿って動かされるときに導管740がローラ702によって完全に閉塞されるのを防止するようにし得る。トラック722およびチャンネル726は、ローラ702が可撓性導管740に接触しかつそれを変形させながらトラック722の周りで回転するように、配置される。
【0050】
ローラ702は、トラック722を巡っておよび導管740に沿って回転しながら、縁724aおよび724bに当接しかつそれに沿って転がる。ローラ702と縁724aおよび724bとの間の接触は、ローラ702の、チャンネル726内への長手方向の進入を制限することによって、ローラが、選択した量を上回って導管740を変形させるのを防止する。これにより、好都合にも、導管740に対する望ましくない高い荷重を防止し、それにより、導管740の摩耗を減少させ、および導管740の引き裂きを防止する。トラックハウジング720はまた、例えば、
図8に示すように、導管740が通過して延在するポート728を含む。場合によっては、導管740の両端部は、ポート728を通って延在する。他の実施例では、トラックハウジング720は、導管740の対向端部が通過して延在する別々のポートを含み得る。
【0051】
図8には、異なる長さのチューブであるとして導管740が示されている。しかしながら、本開示の範囲はそのように限定されない。他の実施例では、導管740は、他の方法で形成されてもよい。例えば、導管740は、トラックハウジング720に統合され得るまたはそれに一体的に形成され得る。いくつかの実施例では、弾力材が、トラックハウジング720上にオーバーモールドされ、かつトラック722の周りに位置決めされ得、オーバーモールドされた弾力材が、トラック722の周りにシールを形成するようにする。いくつかの実施例では、導管740を形成する、オーバーモールドされた弾力材は、凸状の断面形状を有し得る。いくつかの実施例では、弾力材、およびチャンネル726の表面は、流体が運ばれ得るルーメンを画成する。流体は、ルーメン内を自由に流れ得る(例えば、異なるチューブがない)。ポンプ700は、ローラ702がトラック722に沿って動くときに、ローラ702によって弾力材を圧迫することによって、流体の流れを促し得る。一体的に形成された導管は、好都合にも、製造をより効率的にし、および製造コストを削減し得る。導管は、トラックハウジング720が製造されるのと同時に、トラックハウジング720内に形成され得る。その結果、チャンネル726内に異なるチューブを位置決めする追加的なステップが回避され得る。
【0052】
図7および
図8に示すように、ポンプ700は、ローラ駆動装置710とトラックハウジング720との間に配置されたガイド部材730を含む。ガイド部材730は、ガイド部材730を通って長手方向に延在する複数の開口部732を含む。開口部732は、それぞれのローラ702を受け入れるようなサイズにされる。ローラ702は開口部732内に位置決めされて、ローラ702の複数の部分が、ガイド部材730の長手方向の両側面から突出するようにする。
【0053】
ガイド部材730は、ローラ702の全ての中心を通って延在する基準面が軸A1を含むかまたはそれと平行でありかつ長手方向軸A2に対して直角であるような向きにされる。ガイド部材730は、ローラ702がプレート712によって導管740に沿って回転されるときに、ローラ702の周方向の間隔、半径方向の位置決め、および/または軸方向の位置決めを維持するように配置され得る。そのことについては、ガイド部材730は、ローラ702の互いに対する不要な周方向の動き、ローラ702の半径方向の動き、および/または軸方向の動きを防止することによって、ローラ702の円形構成を保ち得る。これは、好都合にも、ローラ702がローラ駆動装置710によって導管740に沿って駆動されるときでも、ローラ702を互いに対して公知の固定位置に保つことによって、導管740内での規則的な、周期的な、蠕動式の流体の流れを保証し得る。
【0054】
図10は、別の実施例による別の例示的なポンプ750の縦断面図である。ポンプ750は、複数のローラ702、ローラ駆動装置710、トラックハウジング720、およびガイド部材730を含む。ローラ702、トラックハウジング720、ガイド部材730、およびローラ駆動装置710は、ポンプ700に関連して上述したものと同様とし得る。しかしながら、ローラ駆動装置710はまた、下記で説明するように、複数のローラ704の外周面に接触する、プレート712に形成された面717を含む。ポンプ750は、さらに、支持部材780内に位置決めされた複数のローラ704と、トラックハウジング770内に形成されたチャンネル776とを含む。トラック772は、チャンネル776の縁774aおよび774bによって画成される。上述のトラック722と同様に、縁774aおよび774bは、チャンネル776のそれぞれ外縁および内縁に形成された面取り部によって画成される。ローラ704は、ローラ駆動装置710の回転によってトラック722に沿って運ばれる。導管760がチャンネル776内に位置決めされる。ローラ704がトラック722に沿って動かされて導管760を圧迫すると、ローラ704は、縁774aおよび774bと接触する。ローラ704は導管760に接触してそれを変形させて、導管760内に形成されたルーメンの全てまたは一部を閉塞させる。トラック772の縁774aおよび774bは、ローラがチャンネル776内へと延在できる量、および導管760がローラ704によって閉塞される量を制限する。
【0055】
また、導管740と同様に、導管760は、トラックハウジング770と統合され得るかまたはそこに一体的に形成され得る。いくつかの実施例では、弾力材が、トラックハウジング770上にオーバーモールドされ、およびトラック772の周りに位置決めされて、オーバーモールドされた弾力材が、トラック772の周りにシールを形成するようにし得る。いくつかの実施例では、導管760を形成する、オーバーモールドされた弾力材は、凸状の断面形状を有し得る。いくつかの実施例では、弾力材およびチャンネル776の表面は、場合によっては、流体が運ばれ得るルーメンを画成し、およびチャンネル776を含む、流体の流れ用のルーメンを画成し得る。
【0056】
チャンネル776は、トラック722と端面733との間に形成された環状の間隙731を含む。可撓性導管760は、チャンネル776に形成された環状の間隙731内に位置決めされる。場合によっては、間隙731の深さは、ローラ704がトラック772に沿って動かされるときに、導管760がローラ704によって完全に閉塞されるように、選択される。他の実施例では、間隙731の深さは、ローラ704がトラック772に沿って動かされるときに、導管760がローラ704によって完全に閉塞されるのを防止するような深さとし得る。トラック772およびチャンネル776は、ローラ704が可撓性導管760と接触してそれを変形させながらトラック772の周りで回転するように、配置される。
【0057】
ローラ704は、支持部材780に形成された凹部752内に位置決めされる。支持部材780は、ガイド部材370と同様に動作して、ローラ704がプレート712によって導管760に沿って回転されるときに、支持部材780が、ローラ704の周方向の間隔、半径方向の位置決め、および/または軸方向の位置決めを維持するようにする。
図10に示すように、面717は、ローラ704のそれぞれの部分を受け入れるまたは収容するようなサイズおよび形状にされた環状の溝719を含む。他の実施例では、面717は、環状の溝719を省略してもよい。
【0058】
動作中、ローラ駆動装置710は、トラックハウジング720およびトラックハウジング770の双方に関して軸A3の周りで回転する。プレート712の面717は、ローラ704の外周面715と接触し、および面716は、ローラ702の外周面703と接触する。プレート712の面717はローラ704の外周面715と摩擦係合して、ローラ704を回転させる。同様の方法で、ローラ702も面716によって回転される。面716および717は、プレート712の対向側面である。プレート712は、異なる組のローラ702および704を同時に駆動して、ローラ駆動装置710が軸A3の周りで回転されるときに、流体がそれぞれ導管740および760を通るように促す。いくつかの実施例では、導管740および760は、互いに流体連通し得る。従って、導管740および760は、同じ流路の異なるセグメントとし得る。他の実施例では、導管740および760は、互いに分離しているため、互いに流体連通していない可能性がある。いくつかの実施例では、トラックハウジング770には、導管760が通過し得る1つ以上のポートが形成され得る(上述のポート728と同様とし得る)。
【0059】
図11および
図12は、プローブ112の一部分を示す。プローブ112は、モータ161と、ローラ802およびローラ駆動装置810を有する例示的な蠕動運動ポンプ800とを含む。
図11は、
図12の断面線11-11に沿って取ったプローブ112の縦断面図である。
図12は、プローブ112の横断面図である。
【0060】
ポンプ800およびモータ161は、プローブ112のハウジング150内に配置される。電気ケーブル113がモータ161に電力を提供する。モータ161はモータシャフト162を含む。モータシャフト162は、ポンプ800のローラ駆動装置810に結合され、モータシャフト162が回転されるときにローラ駆動装置810が回転されるようにする。いくつかの実施例では、ローラ駆動装置810はモータシャフト162に取り付けられる。図示の実施例では、ローラ駆動装置810は回転シリンダーである。モータシャフト162は、ローラ駆動装置810のボア813内に受け入れられる。シャフト162の回転によって、ローラ駆動装置810の対応する回転を引き起こす。
【0061】
ローラ駆動装置810は、全体的にシリンダー形状を有する。ローラ駆動装置810の面816は、1つ以上のローラ802の外周面803に接触している。ローラ駆動装置810の面816は、溝818を含み得、そこに、ローラ802は位置決めされる。溝818は、ローラ802のうちの少なくとも1つを収容するようなサイズおよび形状にされている。図示の例では、溝818は、全てのローラ802を受け入れるようなサイズおよび形状にされている。いくつかの実施例では、ローラ駆動装置810は、全てのローラ802の中心を含む基準面803に対して直角に位置する。基準面803は、ローラ802のそれぞれを、第1の半体805および第2の半体807に分割する。溝818の少なくとも一部分は、第1の半体805の一部分、第2の半体807の一部分、または第1の半体805および第2の半体807の双方の一部分の周りに延在する。いくつかの実施例では、ローラ駆動装置810の少なくとも遠位部分は、第1の方向809、第2の方向811において、または第1および第2の方向809および811の双方において、ローラ802を越えて長手方向に延在する。
【0062】
ポンプ800はトラックハウジング820を含む。チャンネル826がトラックハウジングに形成され、かつトラック822を画成する。ポンプ800が動作している間、ローラ802はトラック822に沿って動かされる。導管840および導管860は、チャンネル826の一部分に配置される。トラック822は円形経路を画成し、および導管840および860は、ローラ802がトラック822に沿って動かされるときに、ローラ802によって圧迫される。トラック822は、チャンネル826の面取りされた縁824aおよび824bによって画成される。
【0063】
図12に示すように、導管840および860のそれぞれは、全体的に半円形構成にあるチャンネル826のそれぞれの部分内に位置決めされる。2つの導管840および860を示すが、ポンプ800は、場合によっては1つの導管または3つ以上の導管と一緒に用いられ得ることが理解される。いくつかの実施例では、1つの導管は、例えば、
図6に示すようなものなど、全体的に円形構成のチャンネル826内に位置決めされ得る。縁824aおよび824bは、チャンネル826内へのローラ802の半径方向の動きを制限し、かつローラ802による導管840および860の損傷変形を防止する。
【0064】
動作中、ローラ駆動装置810は、ローラ802を、ハウジング150の長手方向軸A4の周りの、トラック822によって画成された円形経路に沿って、縁824aおよび824bと接触させる。ローラ802は、導管840および860に周期的に接触しかつそれらを閉塞して、物質をそれぞれ通過させる。ローラ802がローラ駆動装置810の動きに応答して動くときに、導管840および860の様々な部分はローラ802と接触する。
【0065】
図11は、ローラ802が導管840および860に載りかつそれらを圧迫するときに、部分的にのみ閉塞される導管840および860のルーメン841および861をそれぞれ示すが、本開示の範囲はそのように限定されない。いくつかの実施例では、ローラ802は、導管840および860を部分的にのみ圧迫して、ルーメン841および861が部分的にのみ制限されるようにし得る。しかしながら、他の実施例では、ローラ802は、導管840および860を完全に圧迫して、ルーメン841および861が完全に閉塞されるようにし得る。さらに他の実施例では、導管840および860、および/またはチャンネル826またはトラック822のサイズは、ルーメン841および861の一方が完全に閉塞されるが、ルーメン841および861の他方が部分的にのみ閉塞されるように、選択され得る。
【0066】
ローラ駆動装置810とトラックハウジング820との間に支持部材830が位置決めされる。支持部材830に形成された複数の凹部832は、ローラ802を受け入れるようなサイズおよび形状にされる。支持部材830は、ローラ駆動装置810がローラ802を長手方向軸A4の周りで回転するように駆動するときに、ローラ802の長手方向の動き(すなわち、第1および第2の方向809および811におけるローラ802の動き)を制限する。
【0067】
図13は、例示的な蠕動運動ポンプ900を示す。ローラ902は円形構成に配置される。ローラ駆動装置910は、ローラ902を円形経路において方向911に回転させる。ローラ902は導管940および960に接触して、導管940および960内に含まれる物質が、上述のように運ばれるようにする。ローラ902は、導管940および960に形成されたルーメンを完全にまたは部分的に閉塞し得る。ポンプ900は、導管940および960内の流体を異なる方向にポンプで送るように配置される。例えば、ローラ902は、導管940内の物質(例えば、流体)を方向942に、および導管960内の物質(例えば、流体)を方向964に促す。Q
1 INおよびQ
1 OUTは、導管940を経由して、それぞれポンプ900に流入するおよびそこから流出する物質の流量を表す。Q
2 INおよびQ
2 OUTは、導管960を経由して、それぞれポンプ900に流入するおよびそこから流出する物質の流量を表す。方向964は方向962とは異なる。詳細には、図示の例では、方向964は方向962と反対である。従って、単一方向911のローラ902の動きによって、2つの異なる方向に物質を促し得る。いくつかの実施例では、導管940および960は、互いに流体連通していない別々の流路の部分を形成し得る。他の実施例では、導管940および960は、同じ流路の異なるセグメントとしてもよい。それゆえ、導管940および960内の物質は、異なる方向942および962に流れ得るが、導管940および960の双方の物質は、眼160から吸引導管、例えば
図3に示す吸引導管142を経由してポンプで送られている物質とし得る。
【0068】
図14は、どのように
図13の配置構成がポンプ900の出力における脈動を好都合に最小限にし得るかを示すグラフ1000を示す。グラフ1000に関連する利益は、本明細書で説明する他のポンプにも適用可能である。脈動は、導管940および960および/またはローラ902の構成に起因して発生するポンプ900の流体出力の周期的な増減を説明する。曲線1010は、導管940単独内の流量を示し、および曲線1020は、導管960単独内の流量を示す。曲線1010および1020は、それぞれ最小値1011および1021を含む。最小値1011および1021は、それぞれ、ローラ902と接触したことにより閉塞される導管940および960の一部分を表す。最小値1011および1021は、それぞれ導管940および960を通る流量の減少を反映する。曲線1010および1020はまた、最大値1013および1023を含む。ローラ902が導管940および960を完全に閉塞する場合、導管940および960のこれらの部分は、本質的に物質を含まない。最大値1013および1023は、それぞれローラ902間に配置される導管940および960の部分を表す。導管940および960のこれらの部分は、ローラ902間の導管940および960に形成されたそれぞれのルーメンの部分によって画成された量の物質を含む。導管940および960は、隣接するローラ902間の導管940および960の体積部内で運ばれる流体のボーラスを周期的に出力する。曲線1010および1020によって示す流量の比較的大きな変動(最大値と最小値との差)は、導管940および960のそれぞれを他方とは無関係に考慮するときに、この周期的な流体出力を示し得る。
【0069】
ポンプ900の配置構成は、好都合にも、導管940および960内の流れが互いに180°位相がずれるように導管940および960およびローラ902を構成することによって、流量の変動を最小限にする。それゆえ、曲線1010および1020に示される流量の最大値および最小値が、互いに相殺される。そのような構成では、曲線1030によって示されるように、導管940および960を通る正味流量または組み合わせた流量の変動(最大値と最小値との差)は減少し、個々の導管940および960を通る流量と比較して、最小値が低くされた、より連続的な流れにする。従って、ポンプ900は、好都合にも、より一様な(すなわち、変動の少ない)およびより連続的な総流体出力を有する。
図13には2つの導管940および960を示すが、3つ以上の導管セグメントがポンプ900に実装されて、流体の流れの変動をさらにより大きな程度でさらに減少させ得ることが理解される。
【0070】
図15は、例示的な眼科手術方法1100のフロー図である。他の実施例では、方法1100のステップは、
図15に示すものとは異なる順序で実行されてもよく、追加的なステップが、説明のステップの前、その間、および/またはその後に提供されてもよく、および/または説明のステップのいくつかが置換されたりまたは除外されたりしてもよいことが理解される。方法1100のステップの1つ以上は、眼科外科的処置の間に、外科医などの医療専門家によって実施され得る。
【0071】
1110において、方法1100は、患者の眼に手術用プローブのチップを挿入することを含む。例えば、外科医が、前眼部160に切断針のチップを挿入し得る。例えば、
図2に示すような、プローブ112の切断針154のチップ164は、患者の眼に挿入され得る。切断針は、吸引ルーメン158、例えば、切断針154に形成された吸引ルーメン158などを含み得る。1115において、外科医は、チップを眼の水晶体に接触させる。チップは、高速で振動し(例えば、超音波式に)、水晶体が細分化されるかまたは乳化されるようにする。プローブはまた、灌流スリーブ、例えば、灌流スリーブ152などを含み得る。灌流スリーブは、灌流ルーメン、例えば灌流ルーメン156を含み、そこを通って灌流流体が眼へ送給される。
【0072】
方法1100はまた、手術用プローブ内に配置された蠕動運動ポンプを使用して、例えば本明細書で説明する蠕動運動ポンプのいずれかを使用して、眼から流体を吸引することを含む。1120において、ポンプは、吸引導管、例えば吸引導管142などとインターフェースを取り得る。吸引導管は、例えば、可撓性または変形可能なチューブとし得る。吸引導管は、切断針に形成された吸引ルーメン、例えば切断針154に形成された吸引ルーメン158と流体連通して置かれ得る。ポンプは、吸引導管と接触する1つ以上のローラを含み得る。ローラは、吸引導管と接触して置かれ、および、ローラが上述の通りローラ駆動装置によって駆動されると、ローラは、吸引導管内に形成されたルーメンを閉塞して、物質を蠕動式にポンプで送る。ローラ駆動装置は、上述の通り回転プレートまたは回転シリンダーとしてもよく、およびローラを平行移動させる、回転させる、および/または他の方法で動かすように配置される。吸引導管は、眼から流体をポンプで送る。
【0073】
本明細書で説明するようにローラを吸引導管に沿って動かしかつ吸引導管を圧迫するようにするポンプの動作は、1130において示すように、吸引流体をポンプで送りかつ眼から除去する。吸引流体は、灌流流体および/または生物学的物質、例えば細分化/乳化した水晶体粒子を含み得る。
【0074】
当業者は、本開示に含まれる実施例は、上述の特定の例示的な実施例に限定されないことを理解する。そのことについては、説明に役立つ実施例を図示および説明したが、広範囲の修正、変更、組み合わせ、および代替が、上述の開示において考慮される。本開示の範囲から逸脱することなく、上記に対してそのような変形が行われ得ることが理解される。従って、添付の特許請求の範囲は、広範におよび本開示と一致して解釈されることが適切である。