(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】混合材料のゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240311BHJP
A63B 60/02 20150101ALI20240311BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240311BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B60/02
A63B102:32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109529
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2021085247の分割
【原出願日】2017-05-26
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591086452
【氏名又は名称】カーステン マニュファクチュアリング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジェイ. モラレス
(72)【発明者】
【氏名】ライアン エム. ストック
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アール. ジャーツソン
(72)【発明者】
【氏名】タイラー エイ. ショー
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-062130(JP,A)
【文献】特開2008-161597(JP,A)
【文献】特表2012-509102(JP,A)
【文献】特開2013-031656(JP,A)
【文献】特開2003-144590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0297960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14,60/02,102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、
前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、
前記リア本体は、クラウン部材、及び、前記クラウン部材に結合されるソール部材を備え、
前記ソール部材は、
充填材入り熱可塑性材料から形成される構造層であって、
前記金属製のフロント本体に接触しており、接合される前方部分と、
前記ソール部材の周囲部を画定する後方周辺部分と、
前記前方部分から離間している加重部分と、
前記前方部分から前記加重部分まで延びる構造部材であって、前記前方部分と前記加重部分の両方と一体に成形される前記構造部材と、
前記加重部分に取外し可能に結合される金属製のウェイトと、
を備える、前記構造層と、
前記金属製のフロント本体に当接するように、前記構造層の外側面に接合される弾性層であって、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される前記弾性層と、を備
え、
前記弾性層は、約0.5mm~約0.7mmの範囲の一様な厚さを有しており、
前記構造層の少なくとも一部の厚さが、約0.5mm~約0.7mmの範囲である、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含み、
前記共通の樹脂成分は、ポリフェニレン・サルファイド、又はポリエーテル・エーテル・ケトンを含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記クラウン部材は、充填材入り熱可塑性材料から形成されるクラウン構造層と、繊維強化熱可塑性複合材料から形成されるクラウン弾性層と、を備える、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記加重部分は、前記後方周辺部分と一体であり、
前記加重部分は、非一様な厚さを有する1個以上の加重受容チャネルを画定する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
ゴルフクラブヘッドであって、
ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、
前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、
前記リア本体は、クラウン部材、及び、前記クラウン部材に結合されるソール部材を備え、
前記ソール部材は、
充填材入り熱可塑性材料から形成される構造層であって、
前記金属製のフロント本体に接触しており、接合される前方部分と、
前記ソール部材の周囲部を画定する後方周辺部分と、
前記前方部分から離間している加重部分と、
前記前方部分から前記加重部分まで延び、かつ、前記前方部分と前記加重部分の両方と一体に成形される第1の補強部材と、
複数の第2の補強部材であって、前記複数の第2の補強部材のそれぞれは、前記前方部分から前記後方周辺部分まで延び、前記加重部分から離れている、前記複数の第2の補強部材と、
前記加重部分に取外し可能に結合される金属製のウェイトと、
を備える前記構造層と、
前記金属製のフロント本体に当接するように、前記構造層の外側面に接合される弾性層であって、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される前記弾性層と、を備
え、
前記弾性層は、約0.5mm~約0.7mmの範囲の一様な厚さを有しており、
前記弾性層と前記構造層との合計の厚みは、1.0mmから1.5mmの間にある、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記金属製のフロント本体は、さらに、前記周囲フレームの外側面から内側方向に窪んだ接合フランジを備え、
前記構造層は、前記接合フランジに接着的に接合されており、
前記弾性層の外側面は、前記周囲フレームの外側面と面一であり、
前記金属製のフロント本体は、さらに、前記周囲フレームを前記接合フランジに結合する延長壁を備え、
前記構造層及び前記弾性層のそれぞれは、前記延長壁に当接し、
前記第1の補強部材及び前記複数の第2の補強部材は、前記ストライクフェイスとゴルフボールとの間のインパクト中において、前記加重部分と前記延長壁に動的な負荷を伝達するように作用する、請求項
6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含み、
前記共通の樹脂成分は、前記充填材入り熱可塑性材料中に、容積で約55%を超える量で存在し、前記繊維強化熱可塑性複合材料中に、容積で約35%未満である量で存在する、請求項
6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含み、
前記共通の樹脂成分は、ポリフェニレン・サルファイド、又はポリエーテル・エーテル・ケトンを含む、請求項
6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記クラウン部材は、充填材入り熱可塑性材料から形成されるクラウン構造層と、繊維強化熱可塑性複合材料から形成されるクラウン弾性層と、を備える、請求項
6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記加重部分は、非一様な厚さを有する1個以上のウェイト受容チャネルを画定する、請求項
6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
ゴルフクラブヘッドであって、
ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、
前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、
前記リア本体は、クラウン部材、及び、前記クラウン部材に結合されるソール部材を備え、
前記ソール部材は、
充填材入り熱可塑性材料から形成される構造層であって、
前記金属製のフロント本体に接触しており、接合される前方部分と、
前記ソール部材の周囲部を画定する後方周辺部分と、
前記前方部分から離間している加重部分と、
前記構造層の厚みを通って延びる複数の開口部と、
前記加重部分に取外し可能に結合される金属製のウェイトと、
を備える、前記構造層と、
前記金属製の
フロント本体に当接し、前記複数の開口部のそれぞれを横切って延びるように、前記構造層の外側面に接合される弾性層であって、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される前記弾性層と、を備
え、
前記弾性層は、約0.5mm~約0.7mmの範囲の一様な厚さを有しており、
前記構造層の少なくとも一部の厚さが、約0.5mm~約0.7mmの範囲である、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の熱可塑性樹脂成分を備え、
前記構造層は、中間的な接着材を使用することなく、前記弾性層に直接接合され、
前記共通の熱可塑性樹脂成分は、ポリフェニレン・サルファイド、又は、ポリエーテル・エーテル・ケトンを含む、請求項
12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記加重部分は、前記後方周辺部分と一体であり、
前記加重部分は、非一様な厚さを有する1個以上のウェイト受容チャネルを画定する、請求項
12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記金属製のフロント本体は、さらに、前記周囲フレームの外側面から内側方向に窪んだ接合フランジを備え、
前記構造層は、前記接合フランジに接着的に接合されており、
前記弾性層の外側面は、前記周囲フレームの外側面と面一であり、
前記金属製のフロント本体は、さらに、前記周囲フレームを前記接合フランジに結合する延長壁を備え、
前記構造層及び前記弾性層のそれぞれは、前記延長壁に当接する、請求項
12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記ゴルフクラブヘッドは、さらに、
強化された材料の帯で形成され、前記クラウン部材が前記ソール部材に合わさるスカートを備え、
前記スカートは、前記ソール部材を動作可能に補強し、前記ストライクフェイスとゴルフボールとの間のインパクト中において、前記加重部分及び前記延長壁からの負荷経路を提供する、請求項
15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含み、
前記共通の樹脂成分は、前記充填材入り熱可塑性材料中に、容積で約55%を超える量で存在し、前記繊維強化熱可塑性複合材料中に、容積で約35%未満である量で存在する、請求項
12に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年5月27日に出願された米国特許仮出願第62/342,741号からの優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、一般に、混合材料構成を用いたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
一定の合計スイングウェイトのための理想的なクラブ設計では、クラブ性能をカスタマイズするよう努めることにおいて、特別に配置する付加的な裁量質量を設計者に提供するように、(弾力性を犠牲にすることなく)構造的な質量の大きさが最小化されることになる。一般に、すべてのゴルフクラブヘッド質量の合計は、構造的な質量の合計量と、裁量質量の合計量と、の総和である。構造的な質量は、概して、繰り返されるインパクトに耐えるために必要な構造的弾力性をクラブヘッドに提供するのに必要となる材料の質量を指す。構造的な質量は、設計への依存度が高く、特定の質量分布に対する比較的低い制御量を設計者に提供する。反対に、裁量質量は、クラブの性能及び/又は復元許容性をカスタマイズする唯一の目的のために、クラブヘッド設計に付加できる任意の付加質量(最小の構造的必要性を超える)である。クラブヘッドの慣性モーメント(MOI)を最大化し、かつ、重心(COG)を下げる/後退させるように、裁量重量を最大化する手段を提供する、すべての金属のゴルフクラブヘッドに対する代替設計が当技術分野で求められている。
【0004】
ここで提供された背景説明は、いくつかのクラブに関する専門用語を明確に説明しようとしているが、それは例示的なものであり、限定することを意味していない。業界内の慣行、米国ゴルフ協会(USGA)、又は、R&A等のゴルフ機構により設定されたルール、及び命名規則は、本出願の範囲を逸脱することなく専門用語のこの説明を増補することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】混合材料ゴルフクラブヘッドの概略的な斜視図である。
【
図2】混合材料ゴルフクラブヘッドの概略的な底面図である。
【
図3】
図1で示されたものに類似した混合材料ゴルフクラブヘッドの実施形態の概略的な分解斜視図である。
【
図4】混合材料ゴルフクラブヘッドのソール部材の概略的な斜視図である。
【
図5】断面5-5に沿った、
図4のソール部材の一部の概略的な拡大断面図である。
【
図6】線6-6に沿った、
図2のゴルフクラブヘッドの接合構造の概略的な部分横断面図である。
【
図7】線7-7に沿った、
図2のゴルフクラブヘッドの接合構造の概略的な部分横断面図である。
【
図8】混合材料ゴルフクラブヘッドを製造する方法を示す概略的な流れ図である。
【
図9】混合材料クラウン部材の概略的な上面斜視図である。
【
図10】混合材料クラウン部材の概略的な底面斜視図である。
【
図11】
図2の線11-11に沿ったものなど、混合材料ゴルフクラブヘッドの実施形態の概略的な側面横断面図である。
【
図12】混合材料ソール部材の実施形態の概略的な上面斜視図である。
【
図13】混合材料ソール部材の実施形態の概略的な上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下で論ずる本実施形態は、金属製の打撃面及びフロントフレーム構造と組み合わせた混合材料のリア本体構成を利用するクラブヘッドを対象とする。混合材料のリア本体は、繊維強化熱可塑性複合材の弾性層と、成形された熱可塑性の構造層と、から構成される。混合材料のリア本体構成を利用することは、構造的な重量を大幅に低減しながら、何らかの設計柔軟性を犠牲にすることはない。
【0007】
以下で述べる混合材料のリア本体の実施形態のさらなる利点は、製造者が、裁量質量を再導入するためのロバスト手段を提供する能力を有することである。このような設計は、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)などの充填材入り熱可塑性樹脂から完全に形成することができ、繊維強化複合材を使用することは、連続する外側面にわたってより強度があり、より軽量な構成を提供する。成形された弾性層は、充填材入り熱可塑性樹脂をさらに備える。繊維強化熱可塑性複合材の弾性層と成形された熱可塑性の構造層との両方において熱可塑性樹脂を有することは、これらの材料を一体成形する能力を提供する。これは、熱可塑性の構造層により、重量を節約する特有の幾何形状のクラブヘッド設計を提供するが、複合材の弾性層により、剛性強度を有する層を併合する製造能力も提供する。全体として、これらの混合材料のリア構成を、金属製の打撃面及びフロントフレーム構造と一体化することは、動的なインパクト負荷を、ウェイト/重み付け部分からクラブヘッドの金属製の前部へと伝達することを容易にする。
【0008】
さらに熱可塑性樹脂を使用することは、他のポリマーでは可能ではないいくつかの音響的利点を提供することができる。本構成の熱可塑性ポリマーを使用することは、組み立てられたゴルフクラブヘッドが、音響的にオールメタルの設計のものにより近い反応を行うことを可能にする。
【0009】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び、「1つ以上の」は、少なくとも1つの項目が存在することを示すために相互に交換可能に使用され、文脈がその他の形を明確に示していない限り、複数のこのような項目が存在し得る。添付の特許請求の範囲を含む本明細書における(例えば、量または条件の)パラメータの全ての値は、値の前に「約」が実際にあるかどうかにかかわらず、全ての場合において、「約」という用語により修飾されるものと理解されたい。「約」は、述べられた値が、何らかのわずかな不正確さ(値の正確さに対する何らかの近接性、値に対して、およそ、又は、合理的に近い、略)を許容することを示す。「約」によって提供される不正確さが、そうではなくて、この通常の意味で当技術分野において理解されない場合、本明細書で使用される場合、「約」は、このようなパラメータを測定し、かつ使用する通常の方法から生じ得る少なくとも変動を示す。加えて範囲の開示は、全ての値、及び、範囲全体に含まれるさらに分割された範囲の開示を含む。範囲内の各値、及び、範囲の端点は、本明細書では、すべて、別個の実施形態として開示される。「含む/備える(comprises)」、「含む/備える(comprising)」、「含む(including)」、及び、「有する」という用語は、包含的なものである。従って、述べられた項目の存在を指定するが、他の項目の存在を排除するものではない。本明細書で使用される場合、「または」という用語は、列挙された項目の1つ以上のものの任意の、かつ、すべての組合せを含む。第1、第2、第3などの用語が、様々な項目を互いに区別するために使用されるとき、これらの指定は、単に便宜上のものに過ぎず、項目を限定するものではない。
【0010】
ゴルフクラブの「ロフト」又は「ロフト角」という用語は、本明細書で説明されているように、任意の適切なロフトアンドライマシン(loft and lie machine)によって測定されるような、クラブフェースとシャフトとの間に形成される角度を表している。
【0011】
詳細な説明及び特許請求の範囲の中の「第1の」、「第2の」、「第3の」、及び「第4の」などの用語は、それがある場合には、同様のエレメント同士の間を区別するために使用されており、必ずしも、特定のシーケンシャルな又は時系列の順序を説明するために使用されているわけではない。そのように使用されている用語は、適当な状況下で入れ替え可能であり、本明細書で説明されている実施形態が、例えば、本明細書で図示されているか又はそうでなければ説明されているもの以外のシーケンスの動作が可能であるようになっているということが理解されるべきである。そのうえ、「備える」及び「有する」という用語、ならびに、任意のそれらの変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図されており、エレメントのリストを含むプロセス、方法、システム、物品、デバイス、又は、装置が、必ずしもそれらのエレメントに限定されないが、明示的に列挙されていないか、又は、そのようなプロセス、方法、システム、物品、デバイス、もしくは装置に本来備わっている他のエレメントを含むことが可能であるようになっている。
【0012】
本記述及び特許請求の範囲において、「左」、「右」、「前」、「後」、「上部」、「底部」、「上」、「下」、及び、同様の用語は、もしある場合、水平な地上面でアドレスし、所定のロフト及びライ角で保持されたゴルフクラブを一般的に参照する説明目的で使用されるが、必ずしも恒久的な相対位置を記述するようには意図されていない。そのように使用される用語は、適切な状況下では相互に交換可能である。従って、本明細書で述べられる装置、方法、及び/又は、製品の実施形態は、例えば、本明細書で示された、または、その他の形で述べられたものとは異なる配向で動作できることを理解されたい。
【0013】
「連結する」、「連結されている」、「連結」、及び「連結している」などの用語は、幅広く理解されるべきであり、機械的に又は別の方法で、2つ以上のエレメントを接続することを表している。連結(機械的でも、別の方法でも)は、例えば、恒久的又は半恒久的に、又は、瞬間のみなど、任意の時間の長さに関するものであることが可能である。
【0014】
他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を考慮することによって、明らかになることとなる。本開示の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本開示は、その適用において、以下の説明に述べられているような、又は、図面に図示されているような、コンポーネントの詳細又は構築及び配置に限定されないということが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態をサポートすることが可能であり、さまざまな方式で実践又は実施され得る。特定の実施形態の説明は、本開示の要旨及び範囲の中に入るすべての修正例、均等物、及び代替例をカバーすることから、本開示を限定することを意図していないということが理解されるべきである。また、本明細書で使用されている表現法及び専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものとして見なされるべきではないということが理解されるべきである。
【0015】
様々な図において同様の参照数字が同様の、又は、同一の構成要素を識別するために使用される。図面を参照すると、
図1は、ゴルフクラブヘッド10の斜視図を概略的に示している。特に、本技術は、ドライバー、フェアウェイウッド、又は、ハイブリッドアイアン等、ウッドスタイルのヘッド設計に関する。
【0016】
ゴルフクラブヘッド10は、共に固定されて実質的に閉じた/中空の内部容積を画定するフロント本体部分14(フロント本体14)、及び、リア本体部分16(リア本体16)を備える。ウッドスタイルのヘッドでは従来通りであるように、ゴルフクラブヘッド10は、クラウン18及びソール20を備え、一般に、ヒール部分22と、トウ部分24と、ヒール部分22とトウ部分24の間に位置する中心部分26と、に分割されてもよい。
【0017】
フロント本体14は、一般に、ゴルフボールをインパクトするように意図されたストライクフェイス30と、ストライクフェイス30の周囲34を囲み、そこから後方に延びて、フロント本体14にカップ形状の概観を提供するフレーム32と、ゴルフクラブシャフト又はシャフトアダプタを受容するためのホーゼル36と、を備える。フロント本体14は、クラブヘッド10がゴルフボールを打ったときに生ずる衝撃応力に耐えるために、金属又は金属合金から、好ましくは、例えば、ステンレス鋼または合金鋼(例えば、C300、C350、Ni(ニッケル)-Co(コバルト)-Cr(クロム)-合金鋼、565鋼、AISIタイプ304もしくはAISIタイプ630ステンレス鋼)、チタン合金(例えば、Ti-6-4、Ti-3-8-6-4-4、Ti-10-2-3、Ti15-3-3-3、Ti15-5-3、Ti185、Ti6-6-2、Ti-7s、Ti-92、またはTi-8-1-1チタン合金)、非晶質金属合金、又は、他の同様の材料など、軽量の金属合金から形成される。
【0018】
従来の金属形成技法で可能なものを超えてクラブヘッドの構造的質量を低減するために、リア本体16は、実質的に、1つ以上のポリマー材料、及び/又は、繊維強化ポリマー複合材から形成されてもよい。この設計により達成される構造的な重量の低減は、クラブヘッド10の全体重量を低減させるため(それは、より高速なクラブヘッド速度、及び/又は、より長い飛距離を提供できる)、又は、クラブヘッド10への配置に利用できる裁量質量の量を増加させるため(すなわち、一定のクラブヘッド重量のため)に使用し得る。好ましい実施形態では、ソール20、及び/又は、クラブヘッド10の最も後方の部分と結合される1つ以上の金属製のウェイト40により、付加的な裁量質量が最終的なクラブヘッドの設計に含まれる。
【0019】
図3を参照すると、リア本体16は、概して、クラウン部材50をソール部材52に接合することにより形成し得る。好ましい実施形態では、クラウン部材50は、クラウン18の一部を形成し、ソール部材52は、ソール20の一部を形成し、それらは、概して、クラブヘッド表面の接線が垂直平面に存在する所に(即ち、クラブヘッド10が、所定のロフト及びライ角に従って中立の打撃位置に保持されたとき)、又は、そのわずかに下にある外側の接合線で合わさる。
【0020】
本設計では、リア本体16は、成形される熱可塑性材料(例えば、射出成形される熱可塑性材料)と、繊維強化熱可塑性の複合材料と、の混合物を備え得る。本明細書で使用される場合、成形される熱可塑性材料は、ポリマーそれ自体に依存し、最終的な構成要素に構造及び剛性を提供するものである。成形される熱可塑性材料は、射出成形などの成形技法に容易に適合されるものであり、それにより、ポリマーの融点を超える温度に加熱されたとき、材料は自由に流れる。混合される充填材料を用いた成形用熱可塑性材料は、充填材入り熱可塑性(FT)材料と呼ばれる。充填材入り熱可塑性材料は、加熱/溶融状態にあるとき自由に流動可能である。流動可能な特性を容易にするために、充填材料は、概して、約25mm未満の、または、より一般的に約12mm未満の最大寸法を有する別個の微粒子を含む。例えば、充填材料は、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または、10mmの最大寸法を有する別個の微粒子を備え得る。本設計に有用な充填材料は、例えば、ガラスビーズ、又は、カーボン、ガラス、もしくはアラミド・ポリマーから形成される不連続な強化繊維を備えてもよい。
【0021】
成形用の充填材入り熱可塑性材料とは対照的に、繊維強化複合(FRC)材料は、一般に、ポリマーのより大きな部分にわたって延びる単方向もしくは多方向繊維織布の1つ以上の層を備える。FT材料で使用できる強化繊維とは異なり、FRC材料で使用される繊維の最大寸法は、FT材料で使用されるものよりも実質的に大きく/長くなり、ポリマーとは別の連続した織布として提供され得るような十分なサイズ及び特性を有し得る。熱可塑性ポリマーで形成された場合、溶融時にポリマーが自由に流動可能であっても、一般に、含まれる連続的な繊維は流れない。
【0022】
FRC材料は、一般に、繊維を望ましい構成に配置し、次いで、剛性を提供するために、繊維材料に十分な量のポリマー材料を含浸させることにより形成される。このように、FT材料は、容積で約45%を超える、又は、より好ましくは、容積で約55%を超える樹脂含有量を有し得るが、FRC材料は、容積で約45%未満、又は、より好ましくは、容積で約35%未満の樹脂含有量を有することが望ましい。FRC材料は、従来、ポリマー母材として二液性熱硬化エポキシを使用するが、母材として熱可塑性ポリマーを使用することも可能である。多くの場合、FRC材料は、最終的な製造の前に前処理されるが、このような中間材料は、プリプレグと呼ばれることが多い。熱硬化ポリマーが使用される場合、プリプレグは中間形態で部分的に硬化され、最終的な硬化は、プリプレグが最終的な形状に形成された後に行われる。熱可塑性ポリマーが使用される場合、プリプレグは、冷却された熱可塑性母材を備えることができ、それは、その後に加熱され、最終的な形状へと成形することができる。
【0023】
引き続き
図3を参照すると、実施形態では、クラウン部材50は、ポリマー母材に埋め込まれた、織られたガラス又はカーボン繊維強化層を備える形成された繊維強化複合材料から実質的に形成し得る。このような実施形態では、ポリマー母材は、例えば、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、又は、PA6もしくはPA66等のポリアミド等、熱可塑性材料であることが好ましい。他の実施形態では、クラウン部材50は、そうではなくて、例えば、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、又は、ポリアミド等、熱可塑性材料の全体に埋め込まれたガラスビーズ、又は、不連続なガラス、カーボン、もしくは、アラミド・ポリマー繊維充填材を含む充填材入り熱可塑性材料から形成し得る。さらに、他の実施形態では、クラウン部材50は、
図9及び
図10に関して以下で述べるものなど、充填材入り熱可塑性材料と形成された繊維強化複合材料との両方を含む混合材料構成を有することができる。
【0024】
図3で示された実施形態では、ソール部材52は、繊維強化熱可塑性複合材の弾性層54と、成形された熱可塑性の構造層56と、の両方を含む混合材料構成を備える。好ましい実施形態では、成形された熱可塑性の構造層56は、例えば、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、又は、PA6もしくはPA66等のポリアミド等熱可塑性材料の全体にわたって埋め込まれたガラスビーズ、又は、不連続なガラス、カーボン、もしくはアラミド・ポリマー繊維充填材を備える充填材入り熱可塑性材料から形成し得る。弾性層54は、その場合、例えば、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、またはPA6もしくはPA66などのポリアミドを含む熱可塑性ポリマー母材に埋め込まれた織られたガラス、カーボン繊維、又は、アラミド・ポリマー繊維強化層を含み得る。特定の一実施形態では、クラウン部材50及び弾性層54は、それぞれ、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)に埋め込まれた織られたカーボン繊維織布を備え、構造層56は、充填材入りポリフェニレン・サルファイド(PPS)ポリマーを含んでもよい。
【0025】
クラウン部材50とソール部材52との両方のポリマー構成に関して、いずれの充填材入り熱可塑性樹脂及び繊維強化熱可塑性複合材のいずれのも、好ましくは、典型的な使用に耐えるとともに、重量を節約する利益を設計に提供する十分に高い材料強度、及び/又は、強度/重量比特性を有する、1つ以上のエンジニアリング・ポリマーを組み込むべきである。具体的には、ストライクフェイス30とゴルフボールの間のインパクト中に付与される応力に効率よく耐えるが、ゴルフクラブヘッド10の合計重量には実質的に寄与しないことが、設計及び材料にとって重要である。一般に、好ましいポリマーは、降伏時に約60MPa(正味)を超える引張強度により特徴付けることができる。また、充填材入りの場合、降伏時に約110MPaを超える引張強度を、又は、より好ましくは、約180MPaを超える、さらにより好ましくは、約220MPaを超える引張強度を有するとよい。いくつかの実施形態では、適切な充填材入り熱可塑性ポリマーは、降伏時に約60MPaから約350MPaの引張強度を有してもよい。いくつかの実施形態では、これらのポリマーは、充填された状態又は未充填状態のいずれかにおいて、約1.15~約2.02の範囲の密度を有することができる。また、好ましくは、約210℃を超える、又は、より好ましくは約250℃を越える溶融温度を有することができる。
【0026】
PPS及びPEEKは、本設計の強度及び重量要件を満たす2つの例示的な熱可塑性ポリマーである。しかしながら、多くの他のポリマーとは異なり、PPSまたはPEEKの使用は、それらに特有の音響特性のため、さらに有利である。具体的には、多くの状況において、PPS及びPEEKは、一般に、インパクト時に、金属的な音の音響応答を発する。従って、本設計は、PPSまたはPEEKポリマーを使用することにより、ポリマーの強度/重量の利益を利用でき、インパクト時の望ましい金属製クラブヘッド音を損なうことはない。
【0027】
図3を引き続き参照すると、本設計は、混合材料のソール構成を使用して、FRCの強度重量比の利益を利用し、また、FTによって提供される設計の柔軟性、及び、寸法安定性/一貫性を利用する。より具体的には、FRCは、通常、同じポリマーのFTよりも強度があり、かつ低密度であるが、その強度は通常、滑らかでかつ連続的な幾何形状に依存している。反対にFTは、FRCよりもわずかに高密度であるが、非常により複雑な幾何形状を形成することができ、かつ込み入った、または不連続な設計では、一般に、FRCよりもより強度がある。これらの差は、FRCが強度を提供するために連続的な繊維に大きく依存しているが、FTは、ポリマーそれ自体の構造により大きく依存していることが大きいと考えられる。
【0028】
従って、本設計は、可能な限り低い構造重量で本設計の強度を最大化するために、FT材料を用いて、設計の柔軟性及び/又は強度を局所的に高める、FRC材料を利用して、ソール20の弾性のある外殻の大部分を形成する。より具体的には、FT材料は、最適化された選択的な構造強化を提供するため(即ち、空隙/開口部は、そうでなければFRCの強度を損なう)、1つ以上の金属製のスイングウェイト40を加えるため(即ち、FTは、複雑な受入れキャビティを成形すること、又は、重りのオーバモールドすることより、裁量の金属製スイングウェイトの取付けをより容易にする)、及び/又は、クラウン部材50とソール部材52の間の構造的な取付けを容易にする寸法的に一貫した接合構造を提供しながら、連続するクラブヘッド外側面を提供するために、利用される。
【0029】
図4は、FRC弾性層54が、FT構造層56に接合された状態のソール部材52の実施形態をより明確に示している。図示のように、構造層56は、概して、前方部分60と、ソール部材52の外側周囲部64を画定する後方周辺部分62と、を備え得る。組み立てられたクラブヘッド10において、前方部分60は、金属製のフロント本体14に接合され、後方周辺部分62は、クラウン部材50に接合される。構造層56は、それぞれが、層56の厚みを通って延びる、周囲部64の内側に位置する複数の開口部66を画定する。最後に、構造層56は、前方部分60から複数の開口部66の少なくとも2つの間に延びる1つ以上の構造部材68を備えてもよい。
【0030】
図4で示されるように、また
図5~
図7でより明確に示されるように、弾性層54は、構造層56の外側面70に接合してもよい。従って、それは、前方部分60、後方の周辺部分62、及び、1つ以上の構造部材68の少なくとも一部に直接当接する、及び/又は、重なるようになる。そのようにしたとき、弾性層54は、クラブヘッド10の外側から見たとき、複数の開口部66のそれぞれを完全に覆うことができる。同様に、1つ以上の構造部材68は、補強リブ又はガセットに類似する弾性層54の内側部分への選択的な補強として作用し得る。
【0031】
図2~
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、構造層56は、成形された空洞部の中にウェイトを直接接着させる、又は、組み込むことにより、又は取外し可能な金属製質量を受け入れるように働くことのできる凹部74を提供することにより、1つ以上の複数の金属製のウェイト40(例えば、タングステンベースのスイングウェイトなど)を受け入れるように適合された加重部分72を備え得る。加重部分72は、概して、クラブヘッド10上の最も後方の点に向かって位置している。従って、加重部分72は、構造層56の後方周辺部分62と一体に、及び/又は、直接結合され、前方部分60から離間され得る。上記で述べたように、構造層56の充填材入り熱可塑性構成は、構造的に安定した方法で、複雑な幾何形状を形成する能力のため、1つ以上のウェイト40を受け入れるのに特に適している。より具体的には、構造層56の充填材入り熱可塑性構成は、全てがFRCの構成では一般的に可能ではない(即ち、FRCの強度の利益は、通常、連続する表面の幾何形状にわたって利用可能であるに過ぎないため)1つ以上の寸法的な(dimensional)凹部を設計に含めることを可能にする。例えば、
図3で示すように、また
図11の横断面図でより明確に示すように、加重部分72は、非一様な厚さを有し、コーナの周りに延び、及び/又は、鋭角で他の表面と接合される1つ以上のウェイトを受け入れる溝または凹部を画定するように成形することができる。これらすべては、繊維強化複合材を用いて厳密に形成することは困難、又は、不可能である。
【0032】
クラブヘッド10の後方部分において、1つ以上のウェイト40を構造層56に取り付けることは、望ましくは、クラブヘッド10の重心を後方かつ下方にシフトし、さらにクラブヘッドの回転モーメントを増加させながら、より構造的な金属製のフロント本体14から離間された片持(cantilevered)マスを生成し得る。従って、いくつかの実施形態では、1つ以上の構造部材68は、1つ以上のウェイト40と金属製のフロント本体14の間に、強化された負荷経路を提供するために、加重部分72と前方部分60の間に及んでいてもよい。このように、1つ以上の補強部材68は、ストライクフェイス30とゴルフボールの間のインパクト中に、加重部分72とフロント本体14の間で動的な負荷を伝達するのを助けるように作用し得る。同時に、これらの同じリブ状の補強部材68は、弾性層54を強化し、かつ、インパクト時に、クラブヘッドのモード周波数を増加するように作用し得る。従って、固有振動数は、インパクト時に約3500Hzを超え、ポリマーによる実質的な減衰を受けることなく存在する。この表面強化が、PPSまたはPEEKなどのポリマーの望ましい金属状の音響インパクト特性と結合されたとき、ユーザは、クラブヘッド10が、オールメタルのクラブヘッドと聴覚的に類似していることが分かり、本設計は、大幅に向上させた質量特性(CG位置及び/又は慣性モーメント)を提供し得る。
【0033】
好ましい実施形態では、弾性層54及び構造層56は、中間的な接着材を使用せずに、互いに一体に接合させてもよい。このような構成は、製造を簡単化し、構成要素の許容差に関する問題を低減し、接着材または他の接合方法により達成できるものよりも、優れた構成層間の接合を提供し得る。一体化接合を達成するために、弾性層54及び構造層56のそれぞれは、嵌め合わさる層のポリマーに熱的に接合され得る相溶性の熱可塑性ポリマーを備えてもよい。
【0034】
図8は、ソール部材52の一体に接合された弾性層54及び構造層56を有するゴルフクラブヘッド10を製造する方法80の実施形態を示す。方法80は、ステップ82で、繊維強化熱可塑性複合材を、クラブヘッド10の外殻部分に熱成形するステップを備える。熱成形プロセスは、例えば、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度を少なくとも超える成形温度へと熱可塑性プリプレグに予熱を加え、プリプレグを、外殻部分の形状へと成形し、次いで、成形された部分を寸法に合わせてトリミングすることを備えてもよい。
【0035】
ステップ84で、複合外殻部分が適正な形状になった後、充填材入りポリマー支持構造を、外殻と直接接触するように射出成形されてもよい。このようなプロセスは、一般に、インサート成形と呼ばれる。このプロセスで、外殻は、外殻の一部分に露出されたゲート付きキャビティを有する加熱された型の中に直接配置される。溶融したポリマーは、キャビティ内に強制的に射出され、その後、加熱された複合外殻の溶融ポリマーと直接混合されるか、又は、軟化した外殻と局所的に接合される。金型が冷却されると、複合外殻のポリマー及び支持構造は、融合された関係で共に硬化する。外殻部分のポリマー及び支持構造のポリマーが相溶性のものである場合、接合が向上され、2つの構成要素が共通の熱可塑性樹脂成分を備える場合は、さらに向上される。インサート成形は、構造を形成するために好ましい技法であるが、圧縮成形などの他の成形技法を使用してもよい。
【0036】
図8の参照を続けると、ステップ82及びステップ84を通して、ソール部材52が形成されると、FRCクラウン部材50をソール部材52に接合して、リア本体16の構造を実質的に完了させる(ステップ86)。好ましい実施形態では、クラウン部材50は、ステップ82に関して述べたものと同様の熱形成技法を用いた形状へと形成される熱可塑性のFRC材料から形成されてもよい。熱可塑性複合材料からクラウン部材50を形成することは、局所化された溶接技法を用いて、クラウン部材50をソール部材52に接合できるようにする。このような溶接技法は、例えば、レーザ溶接、超音波溶接、又は、ポリマーに導電性がある場合、潜在的に電気抵抗溶接を含むことができる。クラウン部材50が、熱硬化性ポリマーを用いて形成される場合、クラウン部材50は、例えば、接着材、又は、機械的な固定技法(スタッド、ねじ、ポスト、機械的な締り嵌め係合など)を用いて、ソール部材52に接合されてもよい。
【0037】
図6は、クラウン部材50及びソール部材52を結合するように作用する接合部90の実施形態を概略的に示す。図示のように、構造層56は、弾性層54及びクラウン部材50を別々に受容し、連続する外側面92を形成する(即ち、リア本体16の外側面92は、クラウン部材50の外側面94、構造層56の外側面70、及び、弾性層54の外側面96を備える)。
【0038】
図8を再度参照すると、ステップ88で、固定されたクラウン部材50及びソール部材52を備えるリア本体16は、その後に、金属製のフロント本体構造14に接着材で接合し得る。接着剤は大部分の金属に容易に付着するが、ポリマーを接着するプロセスは、接着剤とリア本体16のポリマーの間の接合を高めるために、1つ以上の接着促進剤、又は、表面処理の使用が必要になり得る。
【0039】
図7は、ソール部材52と、フロント本体14のフレーム32との間の接合インターフェース100の例を概略的に示す。図示のように、接合インターフェース100は、構造層56及び/又は弾性層54は、フレーム32の外側面104から内側に窪んだ接合フランジ102に重なっている重ね接合と類似している。例示された実施形態では、構造層56は、中間的に配置された接着剤106を介して、接合フランジ102に直接、接着材で接合されてもよい。また、弾性層54は、弾性層54の外側面96がフレーム32の外側面104と面一になるように、構造層56の前方部分60の全体にわたって広がってもよい。接合フランジ102を図示のように窪ませることにより、構造層56及び/又は弾性層54は、フレーム32及びフランジ102を接合する延長壁108と直接当接し、動的なインパクト負荷を、ウェイト40/加重部分72からフレーム32に伝達することをさらに容易にし得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、弾性層54は、約0.5mm~約0.7mm、約0.5mm~約1.0mm、約0.6mm~約0.9mm、又は、約0.7mm~約0.8mmの範囲の実質的に一様な厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、弾性層54は、0.5mm、0.55mm、0.60mm、0.65mm、又は、0.70mmの非一様な厚さを有してもよい。構造層56の弾性層54に直接的に当接する領域(即ち、弾性層54が構造層56の外側に位置する領域)において、いくつかの実施形態の構造層56は、約0.5mm~約0.7mm、約0.5mm~約1.0mm、約0.6mm~約0.9mm、又は、約0.7mm~約0.8mmの実質的に一様な厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、構造層56は、0.5mm、0.55mm、0.60mm、0.65mm、又は、0.70mmの非一様な厚さを有してもよい。弾性層54及び構造層56の両方の実質的に一様な構造が
図4-7、11に示されている。これらの実施形態において、弾性層54及び構造層56の合計の厚さは、例えば、約1.0mm~約1.5mm、約1.0mm~約2.0mm、約1.25mm~約1.75mm、又は、約1.4mm~約1.6mmであってもよい。いくつかの実施形態では、弾性層54及び構造層56の合計の厚さは、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、又は、1.5mm.であってもよい。
【0041】
図3及び
図6を再度参照すると、実施形態では、窪んだ接合フランジ102は、ストライクフェイス30を完全に囲んでもよいし、及び/又は、クラウン18及びソール20のすべての部分にわたってフレーム32から延びてもよい。この方法では、
図6に示すように、クラウン部材50を接合フランジ102に接着することによって、リア本体16をさらにフロント本体14に接着結合させ得る。
【0042】
図8で説明した方法80は、
図3で示されたものと同様のクラブヘッドを形成することに主に焦点を合わせているが(即ち、ステップ82は、ソール部材52の弾性層54を形成し、ステップ84は、ソール部材52の構造層56を形成する)、ステップ82及びステップ84に関して述べられたプロセスは代替的に、クラウン部材50を形成するために使用することもできる。例えば、
図9及び
図10で示すように、クラウン部材50は、熱可塑性FRC弾性クラウン層114に接合される外側構造層110及び内側構造層112の一方又は両方を備えてもよい。内側構造層112は、概して、ソール部材52の構造層56と同様に機能することができ、外側構造層110は、最も構造的な利益を提供する領域に強化構造を集中させることにより、さらに重量を節約する利益を提供することができ、格子間の空間において、より薄い構成要素厚さも可能にする。構造的なリブの本概念は、一般に、リブ間の重量低減ゾーンを生成することになる。これらの重量低減ゾーンは、ソール又はクラウンに存在することができ、また米国特許第7,361,100号、及び米国特許第7,686,708号でさらに述べられており、その全体が参照により組み込まれる。
【0043】
混合材料クラウン部材50の構成に特有であり、ソール部材52に関して上記で述べたものと同様の形成を、繊維強化熱可塑性複合材をクラブヘッド10の外殻部分へと熱形成することによって形成を開始することができる。熱成形プロセスは、例えば、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度を少なくとも超える成形温度へと熱可塑性プリプレグに予熱を加え、プリプレグを、外殻部分の形状へと成形し、次いで、成形された部分を寸法に合わせてトリミングすることを備えてもよい。
【0044】
複合外殻部分が適正な形状になった後、次に、充填ポリマー支持構造(即ち、内側構造層112及び外側構造層110の一方又は両方)を外殻と直接接触するように射出成形してもよい(例えば、前述のようにインサート成形による)。
【0045】
図1で示された、タービュレータなどのさらなる空気力学的機構116は、クラブヘッドの空気抵抗を低減し、クラブの速度を増加するために使用し得る。これらの空気力学的機構116は、米国特許第9,555,294号(「294」特許)でさらに述べられており、その全体が参照により組み込まれる。
【0046】
図2を参照すると、フレーム32は、ストライクフェイス30に直接当接する前方ソール部分120を画定してもよい。前方ソール部分120は、リア本体16と嵌合する後方縁部122で終わってもよい。いくつかの実施形態では、この後方縁部122は、中心領域26内で後方に突出するセクション124を画定してもよく、それは、全体的に凸形状を有し、後方縁部122とトウ領域24におけるストライクフェイス30との間の第1の平均距離d1、及び後方縁部122とヒール領域22におけるストライクフェイス30との間の第2の平均距離d2の両方を超える、ストライクフェイス30からの平均距離Dだけ延びる。いくつかの構成では、凸形状は、約25mm~約125mmの範囲の曲率半径、及び、約12mm~約50mmの範囲の弧長により画定されてもよい。後方に突出するセクション124は、一般に、最大応力下にあり、例示の実施形態と比較して同一の寸法及び形状のオールメタルクラブヘッド(図示省略)における最大の撓みを示すソール20の領域の境界を画定する。突出するセクション124の後方縁部122は、本質的に、クラブヘッドソール20の第1の振動モードにおける節線に相当し、従って、インパクト中にほとんど、又は、全く撓みを受けることはない。
【0047】
示された幾何形状を有する前方ソール部分120の構成は、最も高い応力集中を有するソール20の部分が確実に金属から形成されるようにする。これは、構造的な強化をあまり必要としないため、より薄く、より軽量なリア本体16のソール部材52を可能にする実際的な効果を有し、ポリマーによる実質的な減衰もなく、インパクト時に、少なくとも3500Hの望ましい主要な固有振動数をさらに維持する。同様の幾何形状は、米国特許第7,601,078号で述べられるクラブヘッド10のクラウン18で提供することができ、その全体が参照により組み込まれる。
【0048】
混合材料のリア本体構成を利用することは、構造重量の大幅な低減を提供でき、何らかの設計柔軟性を犠牲にすることなく、裁量質量を再導入するためのロバストな手段を提供する。このような設計は、前に議論したように、完全にポリフェニレン・サルファイド(PPS)などの充填材入り熱可塑性樹脂から形成し得るが、繊維強化複合材の使用は、連続する外側面にわたって、より強度があり、より軽量な構成を提供する。反対にすべてがFRCの設計は、ウェイトを受容する構造を容易に組み込めないはずであり、従って、増加した裁量質量を容易に利用することができなくなる。
【0049】
表1は、上記で述べた、すべてが充填材入りPPSの構成と、混合材料設計との間の、
図3で示すリア本体16設計に対する比較に基づく質量推定を提供する。図示のように、混合材料設計は、全てが充填材入りPPS構成に対して、大幅な重量節約に寄与しており、それは、加重部分72に再導入されて、質量中心を下げ、かつ、後方へとさらに移動させて、復元許容性及び動的なロフトを高めることができる。
【0050】
【0051】
すべての復元された質量が、ソール部材52の後方の加重部分へと再配置された場合、混合材料設計は、全てが充填材入りPPSの構成と比較したとき、(205gの合計質量を有するクラブヘッドに関して)、約0.008mm低く、0.058mm後方に、重心の正味の移動を生ずることができる。
【0052】
表2は、この混合材料構成が、205gの合計質量を有するクラブヘッドに関して、クラブヘッドの慣性モーメントに対する効果を示している。具体的には、表2は、同様の外側形状を有する金属参照設計に対して、全てが充填材入りPPSのソール部材構成を備えるクラブヘッドに対して、上記で述べた混合材料のソール部材構成を備えるクラブヘッドに対して、垂直軸(IYY)周りの、ヒールからトウに延びる水平軸(IXX)周りのクラブヘッド慣性モーメントを比較する。
【0053】
【0054】
表2で示すように、この混合材料設計は、全てが充填材入りPPSのソール部材クラブヘッドに対して、IXXにおいて約6.3%の増加、また、参照金属設計に対して、IXXにおいて約31.8%の増加をもたらすことができる。同様に、この混合材料設計は、全てが充填材入りPPSのソール部材クラブヘッドに対して、IYYにおいて約3.3%の増加、また、参照金属設計に対して、IYYにおいて約6.6%の増加をもたらすことができる。このように、本混合材料構成は、全てが充填材入りPPSのソール部材構成、又は、参照金属設計のどちらよりも、中心からずれたインパクにおいて、大幅にさらに安定したクラブヘッドをもたらす。さらに混合材料設計は、全てが充填材入りPPSの構成と比較したとき、ソール強度/弾力性における2.5~3.0倍の増加をもたらし、オールメタルの参照設計の強度/弾力性の約90%~98%を提示する。
【0055】
再度、上記で述べたように、これらの安定性の利益は、インパクトの音品質を犠牲にすることなく生成される。特に、PPS又はPEEK熱可塑性樹脂を使用することは、他のポリマーでは可能ではない一定の音響的利点を提供することができる。特に、PPS又はPEEKは、インパクトを受けたとき、特に金属的な音響特性を有する。従って、本構成でこれらのポリマーを使用することは、組み立てられたゴルフクラブヘッド10が、オールメタルの設計のものにより近い音響的な反応を行うことが可能になる。ポリアミド及びいくつかの熱可塑性ポリウレタン材料は、現在の設計に適した十分な強度を有することができるが、それらを使用することは、実質的に異なる音響反応を提供することになり得る。
【0056】
図11~
図13は、本ゴルフクラブヘッド構成で同様に使用され得る代替のソール部材設計を示す。例えば、
図11は、複数の補強部材68の少なくとも1つが、加重部分72から離れた後方周辺部分62へと延びる実施形態を示している。この実施形態では、補強部材68は、前方部分60、加重部分72、及び、加重部分72から離れた後方周辺部分62の間で延びる「Y」に類似し得る。この設計は、ソールを動作可能に補強し、加重部分72からのさらなる負荷経路を提供する補強された「スカート」(即ち、クラウン18がソール20に合わさる材料の強化された帯)をさらに利用し得る。
【0057】
図12は、複数の補強部材68が、加重部分72から離れて、構造層56の前方部分60から、後方周辺部分62へと直接延びるソール部材52の実施形態を示す。しかしながら、1つの補強部材68が、加重部分72と前方部分の間で直接延びたままである。さらに
図12は、構造層56が、非一様な/非シート状の幾何形状を有することのできる実施形態を概略的に示している。少なくとも補強部材68に対するこのような構成は、前に示した実施形態のいずれでも同様に使用することができる。
図12で概略的に示されたものなど、非一様な構造層を有する実施形態において、いくつかの構成は、繊維強化複合材の性質に帰する実質的に一様な厚さを備えた弾性層54を提供することができる。この厚さは、例えば、約0.5mm~約1.0mm、約0.6mm~約0.9mm、又は、約0.7mm~約0.8mmの範囲とすることができる。最後に、
図13は、加重部分72が、後方周辺部分62によってのみ支持され、構造部材68がそれに接続されていない実施形態を示す。
【0058】
1つ又は複数の請求要素の置換は、再構成を構成し、補綴ではない。更に、問題に対する利点、他の有利な点及び解決を、特別な実施形態に関連して説明してきた。しかしながら、問題に対する利点、他の有利な点及び解決、並びに、任意の利点、有利な点又は解決を発生させ又は明らかとさせる任意の1つ又は複数の要素は、このような利点、有利な点、解決又は要素がこのような請求の範囲に明示的に述べられていない限り、請求の範囲の任意又はすべての要素の重大な、必須の、又は、本質的な特徴若しくは要素を構成するものではない。
【0059】
ゴルフに対する規則は、時々変更される(例えば、全米ゴルフ協会(USGA)、英国ゴルフ協会(R&A)等のゴルフ標準組織及び/又は管理機関によって、新しい規則が適用されることがあり、又は、古いルールが撤廃若しくは変更されることがある)ため、本明細書に記載の装置、方法及び製品に関するゴルフ用品は、任意の特定時におけるゴルフのルールに適合し又は適合しないことがある。従って、本明細書に記載の装置、方法及び製品に関するゴルフ用品は、適合又は非適合ゴルフ用品として、公表され、売り出され、及び/又は、売却されることがある。本明細書に記載の装置、方法及び製品は、この点について制限されない。
【0060】
上記実施例は、アイアンタイプのゴルフクラブとの関連で記載されているが、本明細書に記載の装置、方法及び製品は、ドライバタイプのゴルフクラブ、フェアウッドタイプのゴルフクラブ、ハイブリッドタイプのゴルフクラブ、アイアンタイプのゴルフクラブ、ウェッジタイプのゴルフクラブ、又は、パタータイプのゴルフクラブ等の他のタイプのゴルフクラブに適用してもよい。一方、本明細書に記載の装置、方法及び製品は、ホッケー用スティック、テニスラケット、釣り竿、スキーのストック等の他のタイプのスポーツ用品に適用可能としてもよい。
【0061】
更に、本明細書に記載の実施形態及び制限は、実施形態及び/又は制限が、(1)請求の範囲に明示的に主張されていない、及び、(2)均等論の下で、請求の範囲における表現要素及び/又は制限と等価又は潜在的に等価である場合、公開主義の下で公衆に提供するものではない。
【0062】
本開示の様々な特徴及び利点が、以下の条項において述べられている。
【0063】
(条項1)ゴルフクラブヘッドであって、ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、前記リア本体は、クラウン部材、及び、前記クラウン部材に結合されるソール部材を備え、前記ソール部材は、充填材入り熱可塑性材料から形成され、前記クラウン部材に接合される構造層であって、前記構造層の厚みを通って延びる複数の開口部を備える前記構造層と、前記複数の開口部のそれぞれを横切って延びるように、前記構造層の外側面に接合される弾性層であって、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される前記弾性層と、を備え、前記構造層及び前記弾性層は、それぞれ、共通の熱可塑性樹脂成分を備え、前記構造層は、中間的な接着材を使用することなく、前記弾性層に直接接合される、ゴルフクラブヘッド。
【0064】
(条項2)前記構造層は、さらに、前記金属製のフロント本体に接触しており、接合される前方部分と、前記前方部分から離間している加重部分と、前記前方部分から、前記加重部分及び前記複数の開口部のうちの少なくとも2つの開口部の間に延びる構造部材であって、前記前方部分と前記加重部分の両方と一体に成形される前記構造部材と、を備え、前記ソール部材は、さらに、前記構造層の前記加重部分に少なくとも部分的に埋め込まれる、又は、接着材で接合される金属製のウェイトを備える、条項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【0065】
(条項3)前記リア本体の外側面は、前記クラウン部材の外側面、前記弾性層の外側面、及び、前記構造層の前記外側面の一部を備える、条項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【0066】
(条項4)前記金属製のフロント本体は、さらに、前記フレームの外側面から内側方向に窪んだ接合フランジを備え、前記構造層は、前記接合フランジに接着的に接合されており、前記弾性層の外側面は、前記フレームの外側面と面一である、条項1~3のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0067】
(条項5)前記金属製のフロント本体は、さらに、前記フレームを前記接合フランジに結合する延長壁を備え、前記構造層及び前記弾性層は、それぞれ、前記延長壁に当接し、前記補強部材は、前記ストライクフェイスとゴルフボールとの間のインパクト中において、前記加重部分と前記延長壁の間に動的な負荷を伝達するように作用する、条項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【0068】
(条項6)前記共通の熱可塑性樹脂成分は、ポリフェニレン・サルファイド、又は、ポリエーテル・エーテル・ケトンを含む、条項1~5のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0069】
(条項7)前記フレームは、クラウン部分及びソール部分を備え、前記ゴルフクラブヘッドは、ヒール領域、トウ領域、及び、前記ヒール領域と前記トウ領域の間に配置された中心領域を備え、前記フレームの前記ソール部分は、前記ヒール領域内で前記ストライクフェイスから第1の平均距離、前記トウ領域内で前記ストライクフェイスから第2の平均距離、及び、前記中心領域内で前記ストライクフェイスから第3の平均距離を延びる後方縁部を画定し、前記第3の平均距離は、前記第1の平均距離及び前記第2の平均距離の両方よりも大きい、条項1~6のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0070】
(条項8)ゴルフクラブヘッドであって、ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、前記リア本体は、ソール部材に結合されたクラウン部材を備え、前記ソール部材は、構造層であって、前記金属製のフロント本体に接触しており、接合される前方部分と、前記前方部分から離間している加重部分と、前記構造層の厚みを通って延びる複数の開口部であって、前記前方部分及び加重部分は、前記複数の開口部の少なくとも1つの反対側に配置される、前記複数の開口部と、複数の補強部材であって、前記複数の補強部材のそれぞれは、前記前方部分から前記加重部分まで延び、かつ、前記複数の開口部の少なくとも2つの間で延びる、前記複数の補強部材と、を備える前記構造層と、 前記金属製のフロント本体に当接し、前記複数の開口部のそれぞれを横切って延びるように、前記構造層の外側面に接合される弾性層と、前記構造層の前記加重部分に少なくとも部分的に埋め込まれる、又は、接着剤で接合される金属製のウェイトと、を備え、前記構造層は、充填材入り熱可塑性材料から形成され、前記弾性層は、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される、ゴルフクラブヘッド。
【0071】
(条項9)前記弾性層は、中間的な接着材を使用することなく、前記構造層に直接接合される、条項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【0072】
(条項10)前記構造層は、さらに、前記加重部分と前記前方部分の間で延びる後方周辺部分を備え、前記後方周辺部分は、前記クラウン部材に接合される、条項8又は9に記載のゴルフクラブヘッド。
【0073】
(条項11)前記複数の補強部材のうちの少なくとも1つは、前記加重部分から離れた前記後方周辺部分へと延びる、条項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【0074】
(条項12)前記リア本体の外側面は、前記クラウン部材の外側面、前記弾性層の外側面、及び、前記構造層の前記外側面の一部を備える、条項8~11のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0075】
(条項13)前記金属製のフロント本体は、さらに、前記フレームの外側面から内側方向に窪んだ接合フランジを備え、前記構造層は、前記接合フランジに接着的に接合されており、前記弾性層の外側面は、前記フレームの外側面と面一である、条項8~12のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0076】
(条項14)前記金属製のフロント本体は、さらに、前記フレームを前記接合フランジに結合する延長壁を備え、前記構造層及び前記弾性層のそれぞれは、前記延長壁に当接し、前記複数の補強部材は、前記ストライクフェイスとゴルフボールとの間のインパクト中において、前記加重部分と前記延長壁に動的な負荷を伝達するように作用する、条項13に記載のゴルフクラブヘッド。
【0077】
(条項15)前記フレームは、クラウン部分及びソール部分を備え、前記ゴルフクラブヘッドは、ヒール領域、トウ領域、及び、前記ヒール領域と前記トウ領域の間に配置された中心領域を備え、前記フレームの前記ソール部分は、前記ヒール領域内で前記ストライクフェイスから第1の平均距離、前記トウ領域内で前記ストライクフェイスから第2の平均距離、及び、前記中心領域内で前記ストライクフェイスから第3の平均距離を延びる後方縁部を画定し、前記第3の平均距離は、前記第1の平均距離及び前記第2の平均距離の両方よりも大きい、条項8~14のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0078】
(条項16)前記加重部分、及び、前記ストライクフェイスの幾何学的中心は、前記中心領域内に位置する、条項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【0079】
(条項17)前記充填材入り熱可塑性材料及び前記繊維強化熱可塑性複合材料のそれぞれは、共通の樹脂成分を含み、前記共通の樹脂成分は、前記充填材入り熱可塑性材料中に第1の量で存在し、前記繊維強化熱可塑性複合材料中に前記第1の量未満の第2の量で存在する、条項8~16のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【0080】
(条項18)前記共通の樹脂成分は、ポリフェニレン・サルファイド、又はポリエーテル・エーテル・ケトンを含む、条項17に記載のゴルフクラブヘッド。
【0081】
(条項19)前記第1の量は、容積で約55%を超え、前記第2の量は、容積で約35%未満である、条項17又は18に記載のゴルフクラブヘッド。
【0082】
(条項20)多材料のゴルフクラブヘッドを製造する方法であって、熱可塑性樹脂母材及び織られた繊維強化層を備える繊維強化複合材から、第1のソール層を熱成形するステップと、前記熱成形された第1のソール層に直接接触させて第2のソール層を射出成形するステップであって、前記第2のソール層は、充填材入り熱可塑性樹脂を含み、前記熱可塑性樹脂母材及び前記充填材入り熱可塑性樹脂は、それぞれ、共通の熱可塑性ポリマーを含む、ステップと、クラウン部材を前記第2のソール層に接合するステップと、実質的に中空の構造を画定するために、前記第1のソール層及び前記クラウン部材を金属製の前方本体に接合するステップであって、前記金属製の前方本体は、ストライクフェイス及びホーゼルを備える、ステップと、を備える方法。
【0083】
(条項21)クラウン部材を第2のソール層に接合するステップは、レーザ溶接、超音波溶接、又は、電気抵抗溶接の少なくとも1つにより、クラウン部材を第2のソール層に溶接するステップを備える、条項21に記載の方法。
【0084】
(条項22)方法は、さらに、熱可塑性樹脂母材及び織られた繊維強化層を含む繊維強化複合材から第1のクラウン層を熱成形し、熱成形された第1のクラウン層と直接接触させて第2のクラウン層を射出成形することによって、クラウン部材を形成するステップを備え、第2のクラウン層は、充填材入り熱可塑性樹脂を含み、熱可塑性樹脂母材、及び充填材入り熱可塑性樹脂は、それぞれ、共通の熱可塑性ポリマーを含む、条項20又は21に記載の方法。
【0085】
(条項23)ゴルフクラブヘッドであって、ストライクフェイス、及び、前記ストライクフェイスの周囲から後方に延びる周囲フレームを備える金属製のフロント本体と、前記金属製のフロント本体に結合されて、実質的に中空の構造を画定するリア本体と、を備え、前記リア本体は、クラウン部材、及び、前記クラウン部材に結合されるソール部材を備え、前記クラウン部材は、充填材入り熱可塑性材料から形成され、前記ソール部材に接合される構造層であって、前記構造層の厚みを通って延びる複数の開口部を備える前記構造層と、前記複数の開口部のそれぞれを横切って延びるように、前記構造層に接合される弾性層であって、繊維強化熱可塑性複合材料から形成される前記弾性層と、を備え、前記構造層及び前記弾性層は、それぞれ、共通の熱可塑性樹脂成分を備え、前記構造層は、中間的な接着材を使用することなく、前記弾性層に直接接合される、ゴルフクラブヘッド。