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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】機器、および交換レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240311BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240311BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240311BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/04 D
G03B17/02
G02B7/02 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022124245
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2017241156の分割
【原出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2022140727
(43)【公開日】2022-09-27
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016252136
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017105087
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 健志
(72)【発明者】
【氏名】村尾 仁
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-167180(JP,A)
【文献】特開2015-093461(JP,A)
【文献】特開2012-167682(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083006(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の骨格構造部を有する第1部材と、前記第1部材に対して摺動する第2部材と、を備える機器であって、
前記骨格構造部は、円筒形状の少なくとも一部を構成する骨格部と、前記第2部材に当接する当接部と、を含み、
前記当接部が第1の金属材料から成る部位を含み、前記骨格部が第2の金属材料から成る部位を含み、
前記第1部材は、前記骨格構造部に結合した樹脂部を有し、
前記樹脂部は、前記骨格部の円筒内面を覆う、遮光性を有する樹脂材料からなる部位を含み、
前記骨格構造部は、前記樹脂材料よりも剛性及び耐摩耗性が高い材料から構成されている、機器
【請求項2】
前記第2の金属材料の比重が、前記第1の金属材料の比重よりも小さい、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記第1の金属材料はアルミニウム合金であり、前記第2の金属材料はマグネシウム合金またはリチウムマグネシウム合金である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
円筒状の骨格構造部を有する第1部材と、前記第1部材に対して摺動する第2部材と、を備える機器であって、
前記骨格構造部は、円筒形状の少なくとも一部を構成する金属製の骨格部と、前記第2部材に当接する当接部と、を含み、
前記第1部材は、前記骨格構造部に結合した樹脂部を有し、
前記樹脂部、前記骨格部の円筒内面を覆う、遮光性を有する樹脂材料からなる部位を含
前記骨格構造部は、前記樹脂材料よりも剛性及び耐摩耗性が高い材料から構成されている、機器。
【請求項5】
前記当接部がアルミニウム合金から成る部位を含む、請求項に記載の機器。
【請求項6】
前記骨格部がマグネシウム合金またはリチウムマグネシウム合金から成る部位を含む、請求項またはに記載の機器。
【請求項7】
前記骨格構造部には、前記当接部に面する溝が設けられている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記当接部の前記溝に面する面は、前記骨格構造部が形成する円筒面の軸芯に平行な直線に沿っている、請求項に記載の機器。
【請求項9】
前記第2部材はベアリングである、請求項1乃至のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記第2部材は円筒状であり、前記第2部材の内側に前記第1部材が配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の機器。
【請求項11】
前記第2部材は円筒状であり、前記第1部材の内側に前記第2部材が配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の機器。
【請求項12】
前記骨格部には、複数の開口部が設けられている、請求項1乃至1のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
前記骨格部のうちの、前記複数の開口部の間に位置する部位の前記複数の開口部の側の面は、前記骨格構造部が形成する円筒面の軸芯に平行な直線に対して傾斜している、請求項1に記載の機器。
【請求項14】
前記複数の開口部は、四辺形形状の開口部を含む、請求項1または1に記載の機器。
【請求項15】
前記複数の開口部は、三角形形状の開口部を含む、請求項1乃至1のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
前記第1部材を含む鏡筒と、前記鏡筒内に配置されたレンズと、を備える請求項1乃至1のいずれか1項に記載の機器。
【請求項17】
前記レンズを介した光像が結像される撮像素子を備える請求項1に記載の機器。
【請求項18】
カメラのボディに対して着脱可能な交換レンズであって、前記交換レンズが、請求項1に記載の機器である交換レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器、および交換レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの光学機器に用いられる光学製品(光学部品)、例えば特に焦点距離が長く大型の望遠レンズなどの光学製品では、その可搬性や撮影時の機動性から、レンズ鏡筒部の軽量化、あるいは小型化の要求が強くなっている。そのためレンズを保持する鏡筒部を構成する部品の樹脂化や薄肉化などが進められている。
【0003】
従来、各種工業製品を構成する部品の小型化軽量化のために、それまで金属製であった部品全体ないしその一部をより比重の軽い樹脂に変更する手法が知られている。また、その場合、同時に、金属部や樹脂部の寸法、特に厚みを薄肉化する配慮が取られることがある。例えば、下記の特許文献1には、歯車の強度を維持しつつ、軽量化、ないし低騒音化が可能な金属製ブッシュをインサートした樹脂製歯車が開示されている。
【0004】
また、光学鏡筒などでは、下記の特許文献2のように、外筒をアルミなどのプレス加工による金属鏡筒、内筒を樹脂材料による鏡筒とし、その中間にあるシール材を外筒と内筒とで接着やビスを用いて固定する防水レンズ鏡筒の水密構造が提案されている。また、下記の特許文献3では、鏡筒の剛性や強度と軽量化を考慮し、金属部材と樹脂部材を一体成形加工により一体化する構造を開示している。なお、特許文献3では、さらに、レンズ鏡筒を動かす機構部は樹脂によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-056923号公報
【文献】特開平11-202397号公報
【文献】特開2003-167180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば焦点距離が500mm~1000mmを超えるような長焦点距離かつ大口径のレンズを搭載する望遠レンズでは、総重量がKgオーダに及ぶ構成となることがある。このような光学製品は、例えばミラー式ないしミラーレスの一眼レフカメラの交換レンズなどとして存在する。このような光学製品では、軽量化によって、携行性、取り扱いを容易にするため、できるだけ軽量に構成できれば好適である。しかしながら、この種の交換レンズのような光学製品では、光学素子や機構部品それ自体が大型であり自重が大きいため、強度や摺動部の耐摩耗性の観点から、鏡筒部の筺体部品を単純に金属から樹脂に置き換えることが困難である場合がある。
【0007】
また、一般に、レンズ鏡筒では、迷光によるゴーストやフレアが発生する部位に、筺体部品の内面には遮光線と呼ばれるV字状の溝を形成する構造が用いられ、このような溝加工のために樹脂部分の薄肉化が難しい場合がある。また、レンズ鏡筒のような光学製品では、外乱光がレンズ内に照射されることを防ぐため、その筺体と、内部の光軸付近の空間との間には厳重な遮光性が必要であり、従って、レンズ鏡筒の筺体部品は必要な遮光性を有している必要がある。このため、軽量化のため、レンズ鏡筒を構成する光学部品では、例えば肉抜きのように内外を連通するような開口部を含む構造を採用することは事実上、不可能である。
【0008】
本発明の課題は、上記の問題点に鑑み、必要な強度や耐摩耗性を確保でき、しかも、遮光性や不要光の反射防止特性など、必要な光学特性を兼ね備えた小型軽量な光学部品ないし同光学部品を備えた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、円筒状の骨格構造部を有する第1部材と、前記第1部材に対して摺動する第2部材と、を備える機器であって、前記骨格構造部は、円筒形状の少なくとも一部を構成する骨格部と、前記第2部材に当接する当接部と、を含み、前記当接部が第1の金属材料から成る部位を含み、前記骨格部が第2の金属材料から成る部位を含み、前記第1部材は、前記骨格構造部に結合した樹脂部を有し、前記樹脂部は、前記骨格部の円筒内面を覆う、遮光性を有する樹脂材料からなる部位を含み、前記骨格構造部は、前記樹脂材料よりも剛性及び耐摩耗性が高い材料から構成されている、機器である。
本発明の態様は、円筒状の骨格構造部を有する第1部材と、前記第1部材に対して摺動する第2部材と、を備える機器であって、前記骨格構造部は、円筒形状の少なくとも一部を構成する金属製の骨格部と、前記第2部材に当接する当接部と、を含み、前記第1部材は、前記骨格構造部に結合した樹脂部を有し、前記樹脂部、前記骨格部の円筒内面を覆う、遮光性を有する樹脂材料からなる部位を含み、前記骨格構造部は、前記樹脂材料よりも剛性及び耐摩耗性が高い材料から構成されている、機器である。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成により、本発明によれば、必要な強度や耐摩耗性を確保でき、しかも、遮光性や不要光の反射防止特性など、必要な光学特性を兼ね備えた小型軽量な光学部品ないし同光学部品を備えた機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品の外観斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係るカメラの構成を示した説明図である。
図3】(A)は本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品、特にフォーカスユニットの構造を示す外観斜視図、(B)はフォーカスレンズを含むフォーカスユニットの構造を示す断面図である。
図4図3(B)のフォーカスユニットの構造を示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の金属部分を示す外観斜視図である。
図6】本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の金属部分の3Dプリンタを用いた製造手法を示した説明図である。
図7】本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の金属部分の鋳造を用いた製造手法を示し、(A)は鋳造物の斜視図、(B)は鋳造後の後処理を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態1に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の断面構造を示し、(A)はその全体の断面図、(B)はその一部を拡大して示した断面図である。
図9】本発明の実施形態2(または3)に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒を示す外観斜視図である。
図10】本発明の実施形態2(または3)に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の骨格部を示す外観斜視図である。
図11】本発明の実施形態2(または3)に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の当接部位としての直進カム板を示す外観斜視図である。
図12】本発明の実施形態4に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒のベース部と別体構造の骨格部を示す外観斜視図である。
図13図12の骨格部と共に用いられるベース部を示す外観斜視図である。
図14図12の骨格部と共に用いられるリング部を示す外観斜視図である。
図15】例えば本発明の実施形態4において用いられる鏡筒の筺体部品、特にプレス加工により成形された、案内筒の骨格部を示す外観斜視図である。
図16図15の状態から骨格部を円筒形に加工するための両端部の結合構造を示す外観斜視図である。
図17】本発明の実施形態5に係るカメラの構成を示した説明図である。
図18図9のカメラに用いられるミラーホルダの外観斜視図である。
図19図18のミラーホルダの骨格を構成する金属部の外観斜視図である。
図20】本発明の実施形態1によって製造された光学部品の材料、比重、体積、重量を示した表図である。
図21】本発明の実施形態2によって製造された光学部品の材料、比重、体積、重量を示した表図である。
図22】本発明の実施形態3によって製造された光学部品の材料、比重、体積、重量を示した表図である。
図23】本発明の実施形態4によって製造された光学部品の材料、比重、体積、重量を示した表図である。
図24】本発明の実施形態5によって製造された光学部品の材料、比重、体積、重量を示した表図である。
図25】本発明の実施形態6に係る鏡筒の筺体部品、特に案内筒の断面構造を示し、(A)はその全体の断面図、(B)は(A)の一部を拡大した図、(C)は(B)を拡大した図、(D)は(C)を図右側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に示す構成はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
【0013】
以下の実施形態では、骨格構造部と、この骨格構造部に対して結合され、樹脂材料から成り所定の光学特性を有する光学特性部と、を備えた光学部品とその製造方法を例示する。上記骨格構造部は、光学特性部にて用いられる樹脂材料よりも剛性及び耐摩耗性が高い、当該樹脂材料とは異なる材料(本実施の形態では金属材料)から構成されている。この光学部品の一例として、以下では鏡筒部品(実施形態1~4、6)、および光学素子ホルダ(実施形態5)としてのミラーホルダを示す。
【0014】
光学部品の骨格構造部は、3Dプリントまたは鋳造(例えばダイキャスト)、あるいはさらに鋳造後の切削などによって形成する。骨格構造部は、主に当該の光学部品の剛性ないし強度を維持する。また、この骨格構造部の一部は、他の部品に対する当接部または結合部として用いる部位として構成することができる。
【0015】
一方、光学特性部は、骨格構造部に対する樹脂材料のインサート成形によって形成する。この樹脂材料から成る光学特性部は、光学部品の剛性ないし強度を保つ機能の一部を構成するが、主には遮光性や反射防止特性などの光学特性を付与するための部位として機能する。このうち、遮光性は主に黒色などの不透明材料の樹脂を用いることにより光学特性部に付与される。反射防止特性は、インサート成形時の同時加工、または後加工によってマット面や遮光線(遮光溝)を必要な部位に形成することにより付与される。
【0016】
また、骨格構造部には、上記3Dプリントまたは鋳造(あるいはその後加工)などによって、規則的に配置された複数の開口部を設ける。この開口部に光学特性部の樹脂材料が進入するようにインサート成形することにより、開口部を介して骨格構造部と光学特性部とが堅固に結合される。
【0017】
<実施形態1>
本実施形態1では、上記の光学部品として、鏡筒部品(鏡筒筐体部品)を示す。本実施形態の鏡筒部品は、強度を保ちつつ軽量化するためビス締結部を含む剛性が必要な領域を残した骨格構造部を金属など高強度な物質で作製する。また、耐摩耗性が必要となる他部品との摺動部や結合部も、好ましくは骨格構造部と一体的に同じ金属など耐摩耗性の高い物質から製作する。本実施形態の製造方法の光学部品の第1の工程では、例えばこの骨格構造部を3Dプリントまたは鋳造(あるいはその後加工)などによって形成することができる。
【0018】
一方、この鏡筒部品の光学特性部は、遮光および反射防止特性を担当するとともに、軽量化の目的で、骨格構造部よりも比重が低く、光を透過しない黒色などの樹脂材料から構成する。本実施形態の製造方法の光学部品の第2の工程では、この光学特性部を、上記の骨格構造部を金型の内部に配置し、上記の樹脂材料を型内に射出ないし注型するインサート成形を行うことによって形成する。
【0019】
具体的には、本実施形態の鏡筒部品は鏡筒内で光学素子、特に合焦レンズを可動支持するフォーカスユニットの内筒であって、特に骨格構造部での反射防止のためその内面では、骨格構造部は樹脂の光学特性部の内側に埋設するようインサート成形する。また、本実施形態の鏡筒部品では、内面部で光が反射しゴーストやフレアが発生することを防止するため、好ましくは、樹脂の光学特性部の内面部には同時成形によって、マット処理による艶消しを施し、反射防止面とする。この艶消し形状は金型に作製し、それを転写することで安価に実施できる。また、この反射防止面はインサート成形後の後加工によって形成してもよく、また、艶消し効果を強めるなどの目的でさらに塗装のような後加工工程を実施してもよい。なお、本実施形態の鏡筒部品では、反射防止面として、V字の溝を周上に周期的に形成された反射防止パターン、いわゆる遮光線を用いることもできる。この遮光線も、インサート成形による同時成形、あるいはその後加工によって形成することができる。ただし、この遮光線よりも上記のマット処理の方が樹脂の厚みを薄くできる、と考えられ、鏡筒部品の厚みを薄くでき、より軽量化が図れる可能性がある。
【0020】
図2は、本実施形態の鏡筒部品を用いることができる光学機器として、一眼レフデジタルカメラの構成を示している。図2において、撮影レンズ1にカメラ本体2が接続されている。被写体からの光は撮影レンズ1に含まれるレンズ3などの光学レンズを介して撮影される。撮影前は主ミラー7により反射され、プリズム11を透過後、ファインダーレンズ12を通して撮影者に撮影画像が映し出される。また、主ミラー7はハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー8によりAF(オートフォーカス)ユニット13の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。
【0021】
撮影時には、不図示の駆動機構を介して、主ミラー7とサブミラー8を光路外に移動させ、シャッター9を開き、撮像素子10に撮影レンズ1から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り6は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。なお、図2の一眼レフカメラの撮像素子10に替えて銀塩フィルムに変更する場合でも、本実施形態の鏡筒部品に関しては、後述同様の構成を実施することができる。また、撮影レンズ1は、カメラ本体2に固定的に装着されていてもよいが、この種の光学機器では、多くの場合、撮影レンズ1はカメラ本体2のボディに対して着脱可能な交換レンズとして構成される。
【0022】
撮影レンズ1は、フォーカスユニット4の内部のフォーカスレンズ5の位置を光軸方向に可変移動させることで、合焦状態を調節することができるよう構成される。なお、本実施形態の鏡筒部品はこの焦点距離を調節するフォーカスユニット4を構成するものであるが、同様の鏡筒部品の構成を倍率を可変調節するズームユニットなどに適用することもできる。本実施形態のフォーカスユニット4の構成例をについて図3(A)、(B)、および図4に示す。
【0023】
図3図4に示すように本実施形態のフォーカスユニット4は、外筒であるカム筒14と、本実施形態の鏡筒部品に相当する内筒としての案内筒15を備える。カム筒14、案内筒15は傾斜カムおよび直進カムを備え、フォーカスレンズ5をユニット内の光軸上で前進または後退させることができるよう構成される。カム筒14は、撮影者によって回転操作可能な不図示の撮影レンズ1のフォーカスリングなどと結合される。これにより、撮影者は、例えばファインダーレンズ12(図2)を介して合焦状態を観察しながらフォーカスリングを操作してフォーカス調整を行うことができる。
【0024】
カム筒14には120°間隔で斜めカム17が形成されている。案内筒15にも120°間隔で直進カム18が形成されている。フォーカスレンズ5は、フォーカスレンズホルダ16に保持されている。フォーカスレンズホルダ16には120°間隔でベアリング19が取り付けられている。
【0025】
ベアリング19は斜めカム17と直進カム18に係合し位置が固定されている。カム筒14の内面は案内筒15の摺動面24、25(図5)と係合している。また、案内筒15にはベアリング22がビス締結穴23にビス締結されており、ベアリング22はカム筒14にも係合する。
【0026】
案内筒15に接触しているワッシャースプリング21によりチャージ筒20はカム筒14を光軸方向に押している。すなわちベアリング22とチャージ筒20によりカム筒14は図3における斜め右下方向に付勢された状態で、フォーカスレンズ5の光軸方向の位置が維持されることになる。案内筒15はビス締結部28にて駆動しないユニット外の鏡筒部品、例えば外装部にビス締結される。
【0027】
一方、カム筒14はキー溝26、27にて光軸を中心に回転駆動するフォーカスキー部品としてのフォーカスリングに係合して回転操作される。このカム筒14の回転動作により、直進カム18に係合しているベアリング19が斜めカム17に沿って光軸方向に移動することで、フォーカスレンズ5は光軸方向に移動し、これによりピント調整が行われる。
【0028】
本実施形態の鏡筒部品に相当する案内筒15は、円筒状、金属製の骨格構造部31に対して、上記のような遮光および反射防止特性を有する光学特性部51を樹脂材料のインサート成形によって作製する。
【0029】
ここで、本実施形態の鏡筒部品に相当する案内筒15について詳細に説明する。案内筒15は図5および図6に示す骨格構造部31に対して樹脂材料から成る光学特性部51をインサートし製作したもので、完成後は図1の状態になる。
【0030】
図5図6に示すように骨格構造部31は、案内筒15の剛性、強度を維持するための格子151による骨格構造を円筒面に備える。格子151は、骨格構造部31が形成する円筒面においてその軸芯1510(通常フォーカスレンズ5の光軸Oと同軸)と平行な直線に対して傾斜して複数、配置された金属材料から成る、斜交い状に傾斜した格子1512を含む。より詳しくは、この格子1512は、上記軸芯と平行な直線に対して案内筒15の周方向一方向側に向けて傾斜した格子1512aと、上記軸芯と平行な直線に対して案内筒15の周方向他方向側に向けて傾斜した格子1512bと、が交差するように複数並んで格子形状を形成している。また、本実施形態では、格子151は、さらに、骨格構造部31の円筒面においてその軸芯(通常フォーカスレンズ5の光軸と同軸)と平行に伸びる格子1511を含む。このような格子151の構造によって、案内筒15に、径方向、ないし軸芯(通常フォーカスレンズ5の光軸と同軸)と平行な方向に沿った圧縮や、直進カム18のカム溝を介して加わる捩れ方向の外力に関する剛性を付与することができる。また、図6に示すように、案内筒15の両端部にも、傾斜した格子1512の方向に整合するような四辺形形状を有する開口部1513を多数配置する。
【0031】
上記の格子1511、1512によって画成される部位はこれらの格子によって規則的に画成、配置された各々三角形または四辺形形状の開口部1514、1514…となる。これらの規則的に配置された開口部1514、1514…によって、骨格構造部31の円筒構造のほぼ全体が肉抜きされ、骨格構造部31を大きく軽量化することができる。
【0032】
さらに、骨格構造部31は、以下の部位を備える。これらは、ベアリング19と係合する直進カム18、カム筒14と係合する摺動面24、25に相当する。また、骨格構造部31は、ベアリング22がビス締結されるビス締結穴23と座面35、36、ユニット外の鏡筒部品とのビス締結部28の座面と逃げ、ワッシャースプリング21との当接面32、チャージ筒20との係合する摺動面33などを備える。
【0033】
図6程度の複雑さを有する形状の骨格構造部31は、例えば3Dプリンタ201を用いて好適に製作することができる。3Dプリンタ201によって骨格構造部31を造形する場合は、例えば、図6において、当接面32の裏面から造形を開始し、積層方向Lに沿って造形積層を繰り返す。積層方向Lは、上記の骨格構造部31の軸芯(通常フォーカスレンズ5の光軸と同軸)と平行な方向に一致する。造形時には、3Dプリンタ201には、骨格構造部31を造形するための3Dプリントデータ202を供給しておく。この3Dプリントデータ202は、例えば骨格構造部31の3DCADデータなどであり、その場合、3Dプリンタ201が、3DCADデータを積層方向Lで積層的に造形を行うための層(スライス)データに分解して用いる。直接このような層(スライス)データを3Dプリントデータ202として3Dプリンタ201に供給してもよい。なお、サーバやホスト装置(不図示)から3Dプリンタ201に3Dプリントデータ202を供給する場合、3Dプリントデータ202はネットワーク通信によって送信してもよい。あるいは、各種の光ディスクやフラッシュメモリデバイスのようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体に3Dプリントデータ202を格納して3Dプリンタ201に供給することもできる。その場合、これらのコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の記録媒体を構成する。
【0034】
図6の例では、積層方向L、即ち骨格構造部31の軸芯(通常フォーカスレンズ5の光軸と同軸)と平行な方向と、上記の傾斜した格子1512がなす角度は格子1512の傾斜角度(α)はほぼ45°に取られている。これにより、上記の各方向のどの外力に対しても良好な剛性維持が可能となる。なお、この傾斜した格子1512の傾斜角度(α)は、50°程度以下にすることが望ましい。格子1512の傾斜角度(α)が50°程度を超えて、図6の水平方向に寝た姿勢に近づくほど、安定した3D造形が困難になる可能性がある。これに対して、格子1512の傾斜角度(α)を50°程度以下、特に図6に示すように45°程度とすることにより、骨格構造部31安定した3Dプリントによる造形が可能となる。
【0035】
なお、骨格構造部31は3Dプリンタによって造形する他、図7(A)、(B)に示すように鋳造、あるいはさらに後加工によって作製してもよい。その場合には、図7(A)に示すように内径部に湯流れ代38を有する金属鋳造部品37を作製する。この鋳造直後の状態では、図7(B)に斜線で示すように、湯流れ代38が存在するため、上述同様の形状を有する格子151で構成される開口部の部位は内面まで貫通していない。この鋳造後、図7(B)の断面に示すように湯流れ代38を除去ライン39に沿って切削加工などを行って除去し、格子151の開口部を貫通させ、骨格構造部31を得る。
【0036】
図1に、以上のようにして作製した骨格構造部31に樹脂による光学特性部51をインサート成形することで作製した案内筒15を示す。
【0037】
案内筒15の外面部は、金型の形状を簡単にし、樹脂部の体積を減らし軽量化するため、骨格構造部31の骨格部外径と同径としている。特に、インサート成形後は、案内筒15は、外観上、骨格構造部31が樹脂による光学特性部51外周の表面に露出するような構造となっている。例えば、インサート成形のための金型は、光学特性部51の樹脂材料が骨格構造部31の格子151の開口部に、例えば骨格構造部31の外周と面一な深さまで進入、嵌合するような構成とする。その他、骨格構造部31の以下の部位、特に他の部材と当接ないし摺動する部位は、当接、摺動機能を確保するため、案内筒15の外面に骨格構造部31の金属部位を露出させた構造とする。これらの案内筒15の外面に露出させる骨格構造部31の当接、摺動部位には、ベアリング19と係合する直進カム18、カム筒14と係合する摺動面24、25ベアリング22がビス締結されるビス締結穴23と座面35、36が含まれる。さらに、これら案内筒15の外面に露出させる骨格構造部31の当接、摺動部位には、ユニット外の鏡筒部品とのビス締結部28の座面と逃げ、ワッシャースプリング21との当接面32、チャージ筒20と係合する摺動面24が含まれる。
【0038】
一方、案内筒15の円筒内面(29)においては、遮光を確実にするため、光学特性部51は金属の骨格構造部31が露出しないようインサート成形してある。また、不要な光が反射しゴーストやフレアが発生することを防止するため、案内筒15の内面部には好ましくはマット(艶消し)処理により反射防止面29を形成する。この反射防止面29は、光学特性部51のインサート成形のための金型に形成しておき、それを転写することで形成することができる。あるいは、反射防止面29は、上述のように適当な後加工や塗装によって形成してもよい。
【0039】
また、案内筒15の内面の一部、特に樹脂から成る光学特性部51の必要な部位には、図8(A)に示すように、反射防止のための周状のV字の溝が軸芯1510方向に複数並んで形成された、いわゆる遮光線30の部位を形成することができる。ここで、本実施形態の案内筒15では、骨格構造部31には、図8(B)の断面に示すように、樹脂の光学特性部51をインサート成形するための湯流れ代Bが必要となる。上述のマット処理による反射防止面(29)の場合は湯流れ代Bの分、案内筒15の肉厚が増すことになるが、遮光線30を形成する場合には更に湯流れ代Bに遮光線の分の肉厚が加算されるため、薄型、軽量化を図るにはマット処理の方が望ましいと考えられる。
【0040】
本実施形態1の光学部品、鏡筒部品において、金属製の骨格構造部31は、例えば、図20に示すように、比重が2.68のアルミニウム合金から、樹脂製の光学特性部51は比重が1.2のPC(ポリカーボネート)で形成することができる。この場合、同図のように本実施形態1の骨格構造部31(金属部)の体積は7.2cm^3(^はべき乗を示す)で、重量は19.3g、光学特性部51(樹脂部)の体積は14.6cm^3、重量が15.8gとなっている。よってこの例では、金属部と樹脂部を足した総重量は35.1gである。一方、比較例(1203)は、同図左側(本実施形態1)の骨格構造部31(金属部)および光学特性部51(樹脂部)に相当する同体積の形状を、アルミニウム合金のみで作製した場合の例である。この比較例(1203)の総重量は58.4gとなっており、本実施形態1の構造によると、総重量で約40%の軽量化を達成できている。
【0041】
なお、案内筒15の製作において、3Dプリンタや鋳造、インサート成形では精度が保証し難い部位はインサート成形後に機械加工による二次加工(後加工)を行い、必要な精度を実現するような製造方法を取ることもできる。その場合、3Dプリンタや鋳造、インサート成形の際に二次加工(後加工)を施す部位には余肉を付けておくことが望ましい。
【0042】
また、以上では金属製の骨格構造部31は、案内筒15の外周では樹脂の光学特性部51から露出する構造を例示した。しかしながら、この光学特性部51から露出した骨格構造部31の部位で光が反射しゴーストやフレアが発生する可能性がある。その場合、この骨格構造部31の露出部位に必要に応じて塗装やアルマイト処理により着色などを行い、骨格構造部31の露出部に反射防止特性を付与してもよい。
【0043】
また、以上では、骨格構造部31は直線的な格子構造によって画成され、規則的に配置された肉抜き部としての開口部を有するものとした。しかしながら、必要な軽量化を達成するための規則的に配置された肉抜き部としての肉抜き部としての開口部の形状として、位相最適化解析などによって求めた形状を採用してもよい。この種の位相最適化ソフトウェアにはAltair社のOptiStruct(商品名)などが知られており、この種の位相最適化ソフトウェアを用いることにより、強度的に必要な部位と不必要な部位を見分けることができる。
【0044】
なお、以上では鏡筒部品としてフォーカスユニット4の内筒の案内筒15の構造を例示したが、上記案内筒15の構造は、例えばフォーカスユニット4の外周であるカム筒14に実施してもよい。また、以上で例示したフォーカスユニット4の構造は、ズーム光学系を操作するためのズームユニットでも同様であり、本実施形態の鏡筒部品の構造は、ズームユニットを構成する鏡筒部品に実施してもよい。
【0045】
以上のようにして、本実施形態によれば、鏡筒部品の要求仕様を満たす強度や耐摩耗性を確保でき、しかも、遮光性や不要光の反射防止特性など、必要な光学特性を兼ね備えた小型軽量な鏡筒部品を実現できる。また、本実施形態の鏡筒部品を用いて、例えば要求仕様を満たす光学特性を兼ね備えた小型軽量なレンズユニット、さらにそのレンズユニットを含むデジタルないし銀塩カメラなどの光学機器を実現することができる。
【0046】
以下では、実施形態2~4として、鏡筒部品の骨格構造部31のうち、例えば比較的、強度や剛性を必要とする、他の部材と摺動、係合するために当接(接触)する当接部と、他の骨格部を別体とした構造を例示する。なお、以下の実施形態2~4では、図1ないし図2に基本構造を示しものと同様の鏡筒に実施可能な骨格構造部31の構成を例示するものとし、全体構造に係る以下では不図示の部材については、上述の実施形態1と同等の構造が用いられるものとする。以下の実施形態2~4では、上述と同一ないし相当する部材ないし部位には同一の参照符号を用い、特に必要がない限りそれらについての詳細な説明は省略するものとする。
【0047】
<実施形態2>
図9は、本実施形態2の鏡筒部品に相当する、骨格構造部31を備えた案内筒15を、図10図9の骨格構造部31の骨格部182を示している。また、図11は、図9の骨格構造部31を構成するとともに、図10の骨格部182とは別体部品で構成した当接部としての直進カム板181を示している。
【0048】
このように骨格構造部31を別体構造とすることにより、直進カム18を備えた他の部材に対する当接部としての直進カム板181と、それ以外の骨格部182に例えば異なる第1および第2の金属材料を用いることができる。これにより、骨格構造部31の各部の強度、剛性ないし耐摩耗性などを必要とする当接部(直進カム板181)と、それ以外の骨格部182で異なる特性(物性)を付与することができる。即ち、例えば、骨格構造部31の当接部(直進カム板181)で充分な強度、剛性ないし耐摩耗性などの特性を確保するとともに、骨格部182においては必要な軽量化を図ることができる。
【0049】
上述の、例えばベアリング19(図4)と係合ないし当接してフォーカス機構の一部を構成する2条の直進カム18は本実施形態2では、図11のように、直進カム板181に設けられている。
【0050】
一方、直進カム板181とともに骨格構造部31(図9)を構成する骨格部182は、図10に示すように、図5に示した骨格構造部31と同様、格子151による骨格構造を円筒面に備える円筒形の部材である。この骨格部182は、図6で説明したような3Dプリントによる手法や、図7で説明したような鋳造およびその後の内面の切削加工などによる手法によって形成することができる。さらに、骨格部182は、同図に示すように、3個所に直進カム板181を収容するための例えば切り欠き構造から成るカム板収容部181a、181a、181aを備えている。また、骨格部182には図5に示した骨格構造部31と同様、カム筒14と係合する摺動面24、25、ベアリング22がビス締結されるビス締結穴23、座面35、36が含まれる。さらに、これら案内筒15の外面に露出させる骨格構造部31の当接、摺動部位には、ユニット外の鏡筒部品とのビス締結部28の座面と逃げ、ワッシャースプリング21との当接面32、チャージ筒20と係合する摺動面33、24が含まれる。
【0051】
以上のように、本実施形態2の直進カム板181(図11)、および骨格部182(図10)は別体部材であり、インサート成形によって、図9のように光学特性部51によって結合される。このインサート成形は、直進カム板181(図11)、および骨格部182(図10)を不図示の適当な位置決め手段を介してインサート成形のための金型(不図示)内の所定位置にセットした後、樹脂材料を注型することによって行う。このインサート成形により、直進カム板181(図11)、および骨格部182(図10)が光学特性部51内の所定位置に固定される。
【0052】
なお、直進カム板181には、図11に示すように、金型内での位置決め、ないしは骨格部182のカム板収容部181aとの相互位置決めのために突起部181cや、突条部181dのような位置決め部を設けておくことができる。また、直進カム板181には、軽量化のための開口部181bをいくつか穿孔(肉抜き)しておくことができる。このような直進カム板181の製造手法は任意であり、直進カム板181は、例えばプレス加工、あるいは3Dプリントによって製造することができる。
【0053】
光学特性部51の内面には、反射防止面29を形成することができる。また、この反射防止面29は遮光線30によって構成されていてもよい。反射防止面29は、金型加工によって遮光線30を形成する他、別途のマット加工や塗装によって形成してもよい。以上のようにして図9のように構成された案内筒15は、上記実施形態1の例えば図4に示した案内筒15と同様に、鏡筒部品の一部として光学部品、例えば長焦点かつ大型の交換レンズ(あるいは固定式レンズ)の鏡筒内に配置できる。
【0054】
他の部材に対する当接部としての直進カム板181、それ以外の骨格部182には、それぞれ第1および第2の異なる金属材料を用いることができる。図21は、実施形態1の図20と同様の形式で、本実施形態2によって製造した案内筒15と、比較例における各部の材質、比重、体積、重量などを示している。
【0055】
図21の例では、骨格構造部31の直進カム板181には、充分な強度、剛性ないし耐摩耗性などの特性を確保できるよう、第1の金属材料として比重2.68のアルミニウム合金を用いている。また、それ以外の骨格部182には主に軽量化を考慮し、比重1.8のマグネシウム合金を用いている。また、樹脂製の光学特性部51は、比重が1.20のPC(ポリカーボネート)で形成することができる。一方、図21の比較例(1203)は、左側の骨格構造部31と同等、同体積の形状を、アルミニウム合金のみで作製した場合の例で、図20のものと同じである。
【0056】
そして、図21に示すように、総重量が58.4gの比較例(1203)の構造に対して、本実施形態2の構造は総重量が29.7gであり、本実施形態2の構造によると、総重量で約49%の軽量化を達成できている。この軽量化の効果は、骨格構造部31の全体にアルミニウム合金を適用した図20(実施形態1)の約40%の軽量化効果よりもさらに大きい。このように、アルミニウム合金の直進カム板181を除く、骨格構造部31の、より大きな部分を占める骨格部182に、さらに軽量なマグネシウム合金を採用することによって、著しい軽量化効果を期待することができる。
【0057】
<実施形態3>
本実施形態3では、上記実施形態2の別体部品によって構成された骨格構造部31の異なる構成例の1つを示す。以下では、骨格構造部31ないし案内筒15とこれらを含む鏡筒部品の全体構造など、不図示の部分については上述同様であるものとする。
【0058】
本実施形態3の構造は、骨格構造部31を、上述の直進カム板181(図11)、骨格部182(図12)とベース部183(図13)から成る別体構造としたものである。
【0059】
図13に示すように本実施形態3のベース部183は、例えば、実施形態2の骨格部182(図10)のベース部を別体に分離したものである。このため、ベース部183は、ユニット外の鏡筒部品とのビス締結部28の座面、ワッシャースプリング21との当接面32などを含む。ベース部183は、概略、短円筒形状の部分と、フランジ形状の部分から成り、短円筒形状の部分などには、肉抜きのための開口部などを配置することができる。直進カム板181(図11)は、上述の実施形態2と同様の構成を有する。
【0060】
上記のような別体化により、骨格構造部31は、比較的構造が単純な直進カム板181(図11)および骨格部182(図12)と、比較的構造が複雑なベース部183(図13)のように分割される。このような別体構造により、これら各部の製造がより容易になり、全体として例えば製造コストや製造時間を低減できる可能性がある。例えば、本実施形態3の構成よると、比較的構造が複雑なベース部183を図13のような小さな形状に分割される。図13のような小さなサイズ、形状であれば、特定の製造手法、例えば3Dプリントなどを利用する場合でもこの部分の製造が容易かつ低コストで行える可能性がある。
【0061】
また、図13のように構造が比較的複雑なベース部183が切り離されるため、骨格部182の形状は図12のように比較的単純な形状に整理される。このため、図12の骨格部182aは、例えば図15および図16により後述するような手法によって、極めた簡単安価かつ低コストで製造でき、全体として案内筒15の部分の製造コストを大きく低減できる可能性がある。
【0062】
インサート成形時には、金型中に直進カム板181(図11)、骨格部182(図12)とベース部183(図13)を適宜位置決めし、光学特性部51を構成する樹脂材料を注型することにより、例えば図9と同等の全体形状を有する案内筒15を製造できる。
【0063】
ここで、図22に、図20および図21と同様の形式で、本実施形態3によって製造した案内筒15と、比較例における各部の材質、比重、体積、重量などを示す。図22の案内筒15の骨格構造部31は、各々別体の直進カム板181(図11)、骨格部182(図12)とベース部183(図13)から成る別体構造とし光学特性部51にインサート成形したものである。
【0064】
図22に示すように、この例では直進カム板181には上記同様、第1の金属材料として比重2.68のアルミニウム合金を用いている。一方、骨格部182およびベース部183には、第2の金属材料として、マグネシウム合金よりもさらに軽量なリチウムマグネシウム合金(比重1.36)を用いている。比較例(1203)の構成は、図20および図21のものと同じである。
【0065】
図22に示すように、総重量が58.42gの比較例(1203)の構造に対して、本実施形態3の構造は総重量が28.56gであり、本実施形態3の構造によると、総重量で約51%の軽量化を達成できている。この軽量化の効果は、図21(実施形態2)の骨格部182全体にマグネシウム合金(比重1.8)を用いた構成よりもさらに大きい。本実施形態3のように、アルミニウム合金の直進カム板181を除き、骨格構造部31の、より大きな部分を占める骨格部182およびベース部183に、さらに軽量なリチウムマグネシウム合金を採用することによって、著しい軽量化効果を期待することができる。その場合でも、骨格部182およびベース部183を別体構造に整理しておくことによって、これら各部を容易に製造できる可能性があり、骨格構造部31ないしは案内筒15、ひいては鏡筒全体を低コストで製造することができる。
【0066】
<実施形態4>
上記実施形態3の骨格部182(図12)は、その外周にリング状の摺動面24、25を有している。これらの部分は、他の部材と摺動、即ち他の部材と当接する当接部を構成する。そこで、この部分を耐摩耗性や強度を考慮してアルミニウム合金(上記の第1の金属)から構成し、骨格部182(図12)の他の部分を軽量なリチウムマグネシウム合金(あるいはマグネシウム合金)から構成してもよい。
【0067】
図14は、アルミニウム合金(第1の金属)から構成したリング部64を示している。このリング部64は、例えば図12の骨格部182のベース部が配置される端部とは反対側のリング状の摺動面24と同じ形状、サイズで構成されている。図14のリング部64は、図12の摺動面24と同じ位置に配置した状態で(その場合、骨格部182には一体の摺動面24は設けない)、光学特性部51中にインサート成形する。これにより、リング部64によって上述の摺動面24と同等の部位を構成することができる。あるいは、同様にリング部64は摺動面25を構成すべく用いてもよい(その場合、骨格部182には一体の摺動面25は設けない)。
【0068】
ここで、図23に、図20図22と同様の形式で、本実施形態4によって製造した案内筒15と、比較例における各部の材質、比重、体積、重量などを示す。図23の案内筒15の骨格構造部31は、各々別体の直進カム板181(図11)、骨格部182(図12)とベース部183(図13)、およびリング部64から成る別体構造とし光学特性部51にインサート成形したものである。
【0069】
図23に示すように、この例では、他の部材との当接部を構成する直進カム板181およびリング部64に第1の金属材料として比重2.68のアルミニウム合金を用いている。一方、骨格部182およびベース部183には、第2の金属材料として、マグネシウム合金よりもさらに軽量なリチウムマグネシウム合金(比重1.36)を用いている。ただし、同図では、摺動面24に相当する量、骨格部182の体積が減少し、別部品のリング部64のアルミニウム合金の体積が増えている。比較例(1203)の構成は、図20および図21のものと同じである。
【0070】
図23に示すように、総重量が58.42gの比較例(1203)の構造に対して、本実施形態4の構造は総重量が29.02gであり、本実施形態3の構造によると、総重量で約50%の軽量化を達成できている。この軽量化の効果は、図22の場合より、別部品のリング部64のアルミニウム合金の体積が増えているため、1%程、軽量化の効果が小さい。しかし、それでも図21(実施形態2)の骨格部182全体にマグネシウム合金(比重1.8)を用いた構成よりも大きな軽量化の効果を得られている。製造容易性の効果については実施形態3とほぼ同様である。
【0071】
また、本実施形態4では、直進カム板181だけではなく、摺動面24として機能させるリング部64をアルミニウム合金で構成することにより、これらの他の部材との当接部を構成する部位に充分な強度、剛性ないし耐摩耗性などを付与することができる。
【0072】
なお、上記の実施形態3および4における骨格部182(図12)は、図15および図16に示すような手法によって、図12のような円筒形状に加工することができる。図15は、プレス加工(あるいはダイキャスト)などの手法によって、所定厚の平板状の金属材料、例えばリチウムマグネシウム合金に上記の格子151およびカム板収容部181aを構成する開口部などを形成した骨格部材料1821を示している。骨格部材料1821には上記の開口部の他その両端部1821a、1821bには、円筒形状に加工したときこれら両端部同士を位置決めする凹部1823、凸部1822の凹凸形状が設けられている。
【0073】
この骨格部材料1821を図12に示すような骨格部182の円筒形状に丸め、両端部1821a、1821bの凹、凸部(1823、1822)を係合させ、接着や溶接などの手法によって相互に固着させる。これにより、図12の円筒形状を有する骨格部182を得ることができる。図15図16に示したような手法によって、比較的低コストかつ容易に実施形態3および4における骨格部182(図12)を製造できる可能性がある。
【0074】
なお、上記実施形態2~4では、骨格構造部を他の部品に対する当接部、および、前記当接部を除く骨格構造部の骨格部を別体構造とする構成を示した。しかしながら、本発明の実施には、当接部が第1の金属材料から成る部位を含み、当接部を除く骨格構造部の骨格部が第2の金属材料から成る部位を含んでいれば足りる。即ち、上記実施形態において、別体の骨格構造部の当接部および骨格部は、必ずしもそれぞれ1種類の金属材料で構成されることが必須ではなく、例えば上記第1または第2の金属材料と異なる材質の部分が含まれていてもよい。例えば、上記の当接部の他の部品に対する当接面を構成する第1の金属材料として耐摩耗性の高い金属材料の薄膜などから構成し、他の部分がその第1の金属材料と異なる他の材料で構成されていてもよい。骨格部についても同様であり、例えば強度や剛性の必要な部位に、第2の金属材料として強度や剛性を考慮した金属材料を用い、他の部分がその第2の金属材料と異なる他の材料で構成されていてもよい。
【0075】
<実施形態5>
本実施形態では、本発明を採用した光学部品の一例として、光学素子ホルダ(実施形態5)としてのミラーホルダを示す。
【0076】
図17は、本実施形態のミラーホルダを用いることができる光学機器として、一眼レフデジタルカメラの構成を示している。撮影レンズ1にカメラ本体2が接続されている。被写体からの光は撮影レンズ1に含まれるレンズ3などの光学レンズを介して撮影される。撮影前は主ミラー7により反射され、プリズム11を透過後、ファインダーレンズ12を通して撮影者に撮影画像が映し出される。
【0077】
本実施形態でも、主ミラー7はハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー8によりAF(オートフォーカス)ユニット13の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー7とサブミラー8を光路外に移動させ、シャッター9を開き、撮像素子10に撮影レンズ1から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り6は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
【0078】
なお、図17の一眼レフカメラの撮像素子10に替えて銀塩フィルムに変更する可能性がある。その場合、本実施形態のミラーホルダは、後述同様の構成を実施することができる。また、撮影レンズ1は、カメラ本体2に固定的に装着されていてもよいが、この種の光学機器では、多くの場合、撮影レンズ1はカメラ本体2のボディに対して着脱可能な交換レンズとして構成される点は上記の実施形態1~4と同様である。
【0079】
主ミラー7は主ミラーホルダ40に接着などによって装着、支持されている。図17の主ミラー7および主ミラーホルダ40の揺動位置は、撮影時とは異なるファインダーレンズ12方向へ観察光を反射させる観察位置である。撮影時には、シャッター9の開放と同期的に、不図示の駆動機構を介して矢印で示すように、主ミラー7および主ミラーホルダ40を図の水平位置まで揺動させる。この際、同時にサブミラー8は、主ミラーホルダ40とほぼ面一になるよう同期して折り疊まれる。
【0080】
この主ミラーホルダ40を揺動させる目的は、主ミラーホルダ40は主ミラー7を撮影光路外に移動させること、また、ファインダーレンズ12を介して外部から入ってくる光によるゴーストを防止すべくファインダーレンズ12との間の光路を遮蔽することにある。撮影後、即ち、撮像素子10に必要な露光を行った後、シャッター9を閉成させるが、これに同期してファインダーに撮影画像を映すために図17に図示した位置に素早く戻る機構となっている。このため、主ミラーホルダ40を介して揺動される主ミラー7はクイックリターンミラーなどと呼ばれることがある。
【0081】
主ミラー7、サブミラー8を含む主ミラーホルダ40のユニットは、揺動速度や制止時間といった(クイックリターン)駆動特性を向上させるため軽量化が望まれている。一方で、従来構成では、駆動時の衝撃に対する強度や主ミラー7の確実な保持、撮影時とその前後での無駄な光の遮光性の観点から、主ミラーホルダ40に対して例えば大胆な肉抜きなどを行って軽量化を行うのが困難な可能性がある。
【0082】
本実施形態5の主ミラーホルダ40を図18に示す。図18は、主ミラーホルダ40の下面後方左側からの斜視図であり、特にサブミラー8を取り外した状態で主ミラーホルダ40を図示している。強度、剛性を保つための骨格構造部161と、この骨格構造部161に対して黒色などの樹脂材料をインサート成形して形成した、遮光性あるいはさらに反射防止特性を有する光学特性部52のコンポジット構造となっている。即ち、本実施形態の光学素子ホルダ、即ち、主ミラーホルダ40骨格構造部161と、光学特性部52とが結合されて成る構造体によって、主ミラー7、あるいはさらにサブミラー8を支持する。図18で平板状に図示されている主ミラーホルダ40のソリッドな形状は、以下で特記する以外の部分を除き、樹脂製の光学特性部52によって構成されている。
【0083】
図18において、主ミラーホルダ40は回転軸41を有し、この回転軸41廻りに上記の揺動駆動が行われる。回転軸41、41の根元には、カメラ本体2側の軸受(不図示)と当接、摺動し、図の左右方向の動きを規制する受け面42が設けられる。これらの他の部品に対する当接ないし摺動部を構成する回転軸41、受け面42は、骨格構造部161と一体に成形されており、樹脂から成る光学特性部52から露出させてある。
【0084】
上記のように、主ミラーホルダ40は、シャッター駆動時を除き、図17のように傾斜した姿勢でカメラの主光路中に挿入された姿勢を維持する。この時、主ミラーホルダ40の背面先端のカメラ本体2の位置決め部材(不図示)と当接する。この他の部品に対する当接ないし摺動部を構成する受け面43は骨格構造部161と一体に成形されており、樹脂から成る光学特性部52から露出させてある。
【0085】
サブミラー8も、主ミラー7と同様に、図17において水平姿勢を取るよう、主光路から退避させる必要がある。このため、主ミラーホルダ40には、サブミラー8を主ミラーと平行な姿勢になるよう揺動駆動するための回転軸44、44が設けられ、その根元にはサブミラー8を保持するホルダ(不図示)と当接、摺動する受け面45、45が配置されている。この他の部品に対する当接ないし摺動部を構成する受け面45は骨格構造部161と一体に成形されており、樹脂から成る光学特性部52から露出させてある。
【0086】
また、主ミラーホルダ40が光路外に移動した時に背面部に光が反射して発生するゴーストやフレアを防止する必要がある。このため、主ミラーホルダ40の背面の必要な部位に遮光線46から成る反射防止面を形成する。図18において遮光線46により構成した反射防止面は、光学特性部52のインサート成形時に同時成形によって形成することができる。また、遮光線46により構成した反射防止面の部位は、マット処理による艶消しや塗装などの後加工によって形成してもよい。なお、撮影時に図17の水平位置に移動した時、主光軸方向を向く姿勢となる受け面43、43にも、例えば塗装によって同様の反射防止面を形成しておくことができる。
【0087】
本実施形態5の光学部品としての主ミラーホルダ40でも、上記実施形態1(~4)と同様に強度、剛性を保つための骨格構造部161は金属により構成されている。ただし、図18に示したように、骨格構造部161の上記の当接、摺動部を構成する部位以外の大部分は光学特性部52の樹脂の表面より内側に埋設されて覆われ、外観上は見えない構成となっている。図18では、当接、摺動部を構成する部位以外の骨格構造部161の部位はほぼ主ミラーホルダ40の縁部のみに露出し、それ以外の部位は光学特性部52に内部に埋設されている。
【0088】
図19に、光学特性部52の樹脂をインサートする前の主ミラーホルダ40の骨格構造部161の構成例を示す。図19の骨格構造部161は、図18の主ミラーホルダ40と同様に下面後方左側から骨格構造部161を示している。
【0089】
本実施形態の主ミラーホルダ40の骨格構造部161は、実施形態1~4と同様に格子状であるが、本実施形態では主ミラーホルダ40の骨格としてある程度の厚みを得るために、図19のような立体格子構造とする。この種の立体格子構造は「ラティス構造」などと呼ばれることがある。この立体格子構造は、離間した多数の傾斜格子1611、1611…を適当な間隔で配置し、結合した形状となっている。また、骨格構造部161の上記の当接、摺動部を構成する部位(41、42、43、44、45など)は、図18と同一の形状で造形されている。骨格構造部161の中央の部位は、ハーフミラーの主ミラー7を介してサブミラー8方向に進む光を通過させる開口部81となっている。
【0090】
図19の骨格構造部161は、その立体格子構造において、傾斜格子1611によってそれぞれ規則的な配置をもって画成される開口部によって肉抜きされている。このため、骨格構造部161の大幅な軽量化が可能である。図19に示したような形状の立体格子構造ないしラティス構造は、特に3Dプリンタ201などによる造形に適している。
【0091】
即ち、図19の骨格構造部161は、上述同様に、3Dプリンタ201には、骨格構造部161を造形するための3Dプリントデータ202を供給して造形することができる。その場合、例えば、積層造形を繰り返す積層方向Lは、骨格構造部161の厚み方向に取る。この場合、上述の格子1512の場合と同様の理由で、骨格構造部161の傾斜格子1611または1613は、1層の3D造形層の含まれる平面と垂直な直線(法線)に対して傾斜する傾斜角度が50°以下となるような形状とするのが好ましい。この傾斜角度の基準となる1層の3D造形層の含まれる平面としては、例えば受け面43が考えられる。なお、ここで、1層の3D造形層の含まれる平面は、骨格構造部161が後に樹脂の光学特性部52と結合されて構成される構造体の1面(例えば受け面43や図18の遮光線46などが設けられる背面)に対して、とほぼ平行である場合を考えている。
【0092】
なお、主ミラーホルダ40の製作において、3Dプリンタ、インサート成形では精度が保証し難い部位はインサート成形後に機械加工による二次加工(後加工)を行い、必要な精度を実現するような製造方法を取ることもできる。その場合、3Dプリンタ、インサート成形の際に二次加工(後加工)を施す部位には余肉を付けておくことが望ましい。
【0093】
また、以上では金属製の骨格構造部161は、主ミラーホルダ40の側面部では樹脂の光学特性部52から露出する構造を例示した。しかしながら、この光学特性部52から露出した骨格構造部161の部位で光が反射しゴーストやフレアが発生する可能性がある。その場合、この骨格構造部161の露出部位に必要に応じて塗装やアルマイト処理により着色などを行い、骨格構造部161の露出部に反射防止特性を付与してもよい。
【0094】
なお、本実施形態の主ミラーホルダ40の骨格構造部161でも、上記実施形態と同様に骨格構造部161に規則的に配置する開口部(肉抜き部)の形状は、位相最適化解析などを用いて決定してもよい。
【0095】
本実施形態5の光学部品、主ミラーホルダ40において、金属製の骨格構造部161は、例えば、図24に示すように、比重が1.81のマグネシウム合金から形成することができる。樹脂製の光学特性部52は比重が1.20のABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)を発泡率=1割で発泡成形し、インサート成形後の比重は1.08である。図24に示すように、この例では、骨格構造部161(金属部)の体積は0.34cm^3で重量0.62gであり、光学特性部52(樹脂部)の体積は0.55cm^3で重量0.59g、金属部と樹脂部を足した総重量は1.21gである。
【0096】
一方、比較例(1204)は、同図左側(本実施形態5)の骨格構造部161(金属部)および光学特性部52(樹脂部)に相当する同体積の形状を、マグネシウム合金のみで作製した場合の例である。比較例(1204)の総重量は1.60gとなっており、本実施形態5の構造によると、総重量で約25%の軽量化を達成できている。
【0097】
以上のようにして、本実施形態によれば、要求仕様を満たす強度や耐摩耗性を確保でき、しかも、遮光性や不要光の反射防止特性など、必要な光学特性を兼ね備えた小型軽量な光学素子ホルダ、特に主ミラーホルダを実現できる。また、本実施形態の光学素子ホルダを用いて、高性能なデジタルないし銀塩カメラなどの光学機器を実現することができる。
【0098】
なお、本実施形態5のようなミラーホルダにも、上記実施形態2~4に示した、骨格構造部を他の部品に対する当接部、および、前記当接部を除く骨格構造部の骨格部が別体、ないしは異なる第1および第2の金属材料から成る構成を実施することができる。例えば、主ミラーホルダ40の骨格構造部161のうち、当接部、即ち、回転軸41、44、受け面42、43、45といった、他の部品に対して摺動したり当接したりする部位を第1の金属材料から構成する。そしてこれらと異なる他の部位は第2の金属材料から構成する。その場合、上述同様に、例えば第1の金属材料にはアルミニウム合金を用い、第2の金属材料にはマグネシウム合金やリチウムマグネシウム合金を用いる。このような構造および金属材料の選択によって、軽量化と剛性、強度ないし耐久性においてバランスの取れた良好な特性を有する主ミラーホルダを提供できる。
【0099】
<実施形態6>
本実施形態では骨格構造部のインサート成形時に光学特性部と接する面に微小なアンカー形状部を複数設け、アンカー効果によって骨格構造部と光学特性部の接合をより堅固に結合させている。収縮率が大きい樹脂材料を使用したり、光学特性部をより薄肉化する場合に、インサート成形後に光学特性部の剥離の発生が懸念される場合に本実施形態は有効である。
【0100】
図25は本発明の実施形態6に係るアンカー形状部63を形成した鏡筒の筐体部品、特に骨格構造部31の断面構造を示し、(A)は筐体部品としての案内筒15の断面図、(B)はその一部を拡大して示した断面図、(C)はさらにその一部を拡大した断面図、(D)は(C)を図右側から見た図である。
【0101】
図25に示すように骨格構造部31の光学特性部51と接する面31aに微小なアンカー形状部63を複数形成している。微小なアンカー形状部63は、上記骨格構造部31の表面31aに形成された微小な凹部であり、図25(B)において入口部63aの幅(寸法)Xが底辺部63b(奥側部)の幅Yより小さくなっている。即ち、アンカー形状部63は、入口部63aよりもその内部空間Sが大きくなるように形成されており、インサート成形時に、この内部空間Sに樹脂が流れ込み固化することで骨格構造部31と光学特性部51が強固に接合され、光学特性部51の割れや剥離を防止することが可能となる。
【0102】
微小なアンカー形状部63を有する骨格構造部31の製造は3Dプリンタを用いることが好適である。積層方向Lにそって造形積層を繰り返す場合、微小なアンカー形状部63の入口部63aの幅Xの大きさは使用する3Dプリンタの積層厚みの2倍以上となるように設定されることが望ましい。本実施の形態では、0.02mm以上0.3mm以下の範囲で設定される。小さいと穴がふさがってしまう可能性があり、大きいと肉厚が厚くなり、光学特性部にヒケやボイドが発生する可能性があるためである。
【0103】
また、一般的に樹脂が流動する最小の肉厚である0.02mm以上を確保する。寸法Yに関しては、入口部寸法Xより大きくし、アンカー形状部を構成する。例えば積層厚さが0.02mmの場合は、寸法Xを0.04mm、寸法Yを0.08mmとする。
【0104】
微小なアンカー形状部は、造形直後には粉末が封入されているため、造形終了後、または二次加工後に粉末の除去を行う。除去方法は、掃除機等による吸引、エアーガンによる吹き飛ばし、超音波洗浄など、アンカー形状部内の粉末を除去できるものであればよい。
【0105】
以上のようにして、本実施形態によれば、骨格構造部と光学特性部の接合をより堅固に結合させることが可能となり、樹脂材料、肉厚設定等の自由度が向上し、より軽量な部品構成を実現することができる。
【0106】
なお、上述で示した微小なアンカー形状の形態は、一例であり、骨格構造部と光学特性部がアンカー効果により強固に接続される構成であれば良く、上述の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0107】
1…撮影レンズ、2…カメラ本体、3…レンズ、4…フォーカスユニット、5…フォーカスレンズ、6…絞り、7…主ミラー、8…サブミラー、9…シャッター、10…撮像素子、11…プリズム、12…ファインダーレンズ、13…AFユニット、14…カム筒、15…案内筒、16…フォーカスレンズホルダ、17…斜めカム、18…直進カム、19…ベアリング、20…チャージ筒、21…ワッシャースプリング、22…ベアリング、23…ビス締結穴、24、25…摺動面、26、27…キー溝、28…ビス締結部、29…反射防止面、30…遮光線形成面、31、161…骨格構造部、32…当接面、35、36…ビス座面、37…鋳造部品、38…湯流れ代、39…除去ライン、40…主ミラーホルダ、41、44…回転軸、42、43、45…受け面、46…遮光線、51、52…光学特性部、201…3Dプリンタ、202…3Dプリントデータ、63…アンカー形状
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