(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】制御盤の固定装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20240311BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B66B1/34 C
B66B7/00 K
(21)【出願番号】P 2022131682
(22)【出願日】2022-08-22
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】朱 トウ
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231903(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室床面に設けられ、既設制御盤が取り外された状態では上面に開口部を有する既設プールボックスと、
エレベータを改修する際に、前記既設制御盤が取り外された後の前記既設プールボックス内の四隅に設置され、新規制御盤が取り付けられる架台と、
前記既設制御盤を取り外した後の前記既設プールボックスの上面を覆うように設置され、新規制御盤を固定する平板状のアダプターブラケットと、を備え、
前記アダプターブラケットは、前記機械室床面に打ち込まれたアンカーボルトの端部に固定されて
おり、
前記アダプターブラケットは前記既設プールボックスよりも大きい幅で構成され、
前記アンカーボルトとの取付穴は、既設プールボックスより外側に位置し、かつ、1本のアンカーボルトに少なくとも2つ備える、制御盤の固定装置。
【請求項2】
機械室床面に設けられ、既設制御盤が取り外された状態では上面に開口部を有する既設プールボックスと、
エレベータを改修する際に、前記既設制御盤が取り外された後の前記既設プールボックス内の四隅に設置され、新規制御盤が取り付けられる架台と、
前記既設制御盤を取り外した後の前記既設プールボックスの上面を覆うように設置され、新規制御盤を固定する平板状のアダプターブラケットと、を備え、
前記新規制御盤を固定するアダプターブラケットは、2つ以上の分割アダプターブラケットで構成され、
前記分割アダプターブラケットは、前記既設プールボックスの上面に設置される中央部アダプターブラケットと、該中央部アダプターブラケットの前後左右の少なくとも何れかの位置に設置されて前記機械室床面に打ち込まれたアンカーボルトと締結される周辺部アダプターブラケットとを備える、制御盤の固定装置。
【請求項3】
前記新規制御盤を固定するアダプターブラケットに設置され、前記アンカーボルトを覆うカバーを備える、請求項1または2に記載の制御盤の固定装置。
【請求項4】
前記新規制御盤を固定するアダプターブラケットは、既設プールボックスを覆う上面部と該上面部から下方にZ曲げされた端部とから構成され、前記既設プールボックスの上端部より下方位置で前記端部とアンカーボルトとが固定される、請求項1に記載の制御盤の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御盤の固定装置および固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータの機械室床面には、制御盤の配線接続部を収納するためのプールボックスが据え付けられ、その上に制御盤を設置して固定する。プールボックスはシンダーコンクリートに覆われて機械室床に固定される。
【0003】
従来、エレベータの改造時に、新設する制御盤などの機器を機械室床面に設置するには、前記シンダーコンクリートを一部除去し、前記既設プールボックスを撤去する。そして、既設プールボックスが撤去されたスペースに新規プールボックスを固定し、再度シンダーコンクリートを流し込む。この従来の工事では、機器の取付に手間を要するという課題がある。
【0004】
そこで、工事期間の短縮やコストの削減の面から、既設プールボックスやシンダーコンクリートを撤去しない施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-118797号公報
【文献】特開2000-203771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、エレベータ制御盤の改修工事において、既設プールボックスやシンダーコンクリートを撤去しないようになったものの、改修後の制御盤は充分な強度で固定されることができず、充分な耐震性能も得られないという課題が解決されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、改修後の新規制御盤を十分な強度で固定でき、改修工事期間の短縮やコストの低減を可能とする制御盤の固定装置および固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための実施形態は、機械室床面に設けられ、既設制御盤が取り外された状態では上面に開口部を有する既設プールボックスと、エレベータを改修する際に、前記既設制御盤が取り外された後の前記既設プールボックス内の四隅に設置され、新規制御盤が取り付けられる架台と、前記既設制御盤を取り外した後の前記既設プールボックスの上面を覆うように設置され、新規制御盤を固定する平板状のアダプターブラケットと、を備え、前記アダプターブラケットは、前記機械室床面に打ち込まれたアンカーボルトの端部に固定されている、制御盤の固定装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の制御盤の固定装置の構成を示す斜視図。
【
図5】既設プールボックスの構成を架台とともに示す斜視図。
【
図6】既設プールボックスにアダプターブラケットを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図7】アンカーボルトにアダプターブラケットを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図8】アダプターブラケットの周囲にカバーを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図9】第2実施形態に係るアダプターブラケットである分割アダプターブラケットの一例を示す斜視図。
【
図10】第2実施形態に係るアダプターブラケットである分割アダプターブラケットの他の例を示す斜視図。
【
図11】第2実施形態に係るアダプターブラケットである分割アダプターブラケットのさらに他の例を示す斜視図。
【
図12】第3実施形態の制御盤の固定装置の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は制御盤の固定装置の第1実施形態の全体構成を示す斜視図、
図2は
図1に示す制御盤の固定装置の正面図である。
【0011】
既設プールボックス1は、エレベータの機械室床2にシンダーコンクリート3を介して固定されている。既設プールボックス1から既設制御盤を取り外して新規制御盤4を取付けるために、既設プールボックス1の上面の開口部6を覆うようにアダプターブラケット5を設置し、このアダプターブラケット5上に新規制御盤4を取り付ける。
【0012】
アダプターブラケット5の設置に際しては既設プールボックス1内の四隅に架台7を設置し(
図5参照)、この架台7を四つ足として新規制御盤4を取り付ける。
【0013】
アダプターブラケット5は、
図2に示すように、シンダーコンクリート3を貫通し機械室床2まで打ち込まれた4本のアンカーボルト8に取付穴12(
図3参照)を挿入し、表面側および裏面側から平座ナット9によりアダプターブラケット5を挟み込むようにして固定することで取り付けられる。また、既設プールボックス1には、アンカーボルト8を覆うようにカバー10が設置されている。
【0014】
図3に示すように、アダプターブラケット5は、4.5~6mm程度のSS400平板鋼で構成されている。アダプターブラケット5の中央付近には、新規制御盤4の配線通路となる開口部11が形成されている。また、アダプターブラケット5の四隅には、既設プールボックス1より外側部分において、前述のアンカーボルト8の取付穴12が複数(実施形態では2つ)ずつ設けられている。取付穴12が複数あるのは、アンカーボルト8の立設位置にバラツキがあるので、バラツキに対応するために、2つの取付穴12の何れかを選択可能にしている。取付穴12の穿設位置としては、既設プールボックス1に対して、垂直、水平方向に対して所定角度(例えばY方向に対して45度)を有することが好適である。
【0015】
また、アダプターブラケット5の開口部11付近には、架台7と固定される架台取付穴13が穿設されている。
【0016】
架台7は、
図4に示すように、平板状の台座部14と、この台座部14に穿設され、新規制御盤4を固定する取付穴15と、台座部14と一体に形成された脚部16とを備える。
図5は、架台7を四隅に配置した際の既設プールボックス1の構成を示しており、新規制御盤4は既設プールボックス1上に設置されたアダプターブラケット5とともに、架台7に締結ボルトにより固定されるようになっている。
【0017】
<新規制御盤4の固定方法>
次に、
図5~
図8に基づいて、新規制御盤4の固定方法を説明する。
【0018】
既設プールボックス1から既設制御盤を取り外し、
図5に示すように、既設プールボックス1の四隅に架台7をネジ止めにより設置する。
【0019】
次いで、
図6に示すように、既設プールボックス1の上面にアダプターブラケット5を載置する。この場合、
図7に示すように、アダプターブラケット5の端部の取付穴12をアンカーボルト8の端部に嵌め込み、上下から平座ナット9で挟み込んで固定する。
【0020】
アダプターブラケット5がアンカーボルト8で固定されると、次に、アダプターブラケット5上に新規制御盤4が設置され、架台取付穴13から架台7に対して締結ボルトにより固定される。
【0021】
最後に、
図8に示すように、アダプターブラケット5の端面を覆うようにカバー10を取付ける。カバー10は、数mm程度の鋼板で構成され、アダプターブラケット5とそのアンカーボルト8との取付部分の美観を損なわないよう目隠しとして機能する。
【0022】
このように、第1実施形態によれば、新規制御盤4の重量は架台7に支えられ、アダプターブラケット5は上下の平座ナット9によってアンカーボルト8と一体的に固定され、アダプターブラケット5の上に乗せる新規制御盤4は強固に固定される。
【0023】
このため、地震などの際、新規制御盤4が転倒しないようにアダプターブラケット5とアンカーボルト8で保持することができ、改修後の新規制御盤4を十分な強度で固定することができる。
【0024】
また、シンダーコンクリート3を撤去する必要がなく、既設制御盤を取り外した後の既設プールボックス1を有効活用できるので、改修工事期間を短縮することができ、工事コストを低減することができる。
【0025】
さらに、アダプターブラケット5を採用することで、既設プールボックスの外側に位置するアンカーボルト8の間隔ピットも適宜広げることができ、新規制御盤4の設置強度はさらに向上し、地震時に制御盤が転倒しづらくなり、より良い耐震性能も得られる。
【0026】
さらに、新規制御盤4を据え付けた後に、アダプターブラケット5の周囲に設置されるカバー10により、設置部分の安全性を確保しつつ、工事全体の美観性を良くすることができる。
【0027】
<第2実施形態>
制御盤の固定装置の第2実施形態を
図9~
図11に基づいて説明する。
【0028】
第1実施形態では、1枚のアダプターブラケット5を既設プールボックス1上に設置する構成を採用した。しかし、機械室内の既設プールボックス1の設置場所の構造では、壁面とプールボックスとの間のスペースに余裕がない場合もある。
【0029】
そこで、第2実施形態では、アダプターブラケットを複数枚の分割されたアダプターブラケットで構成することにより、様々な設置場所の構造に柔軟に対応可能にする。
【0030】
具体的には、
図9に示すように、中央部アダプターブラケット31と、左側アダプターブラケット32と、右側アダプターブラケット33の3枚の分割アダプターブラケット(周辺部アダプターブラケット)で構成する。
【0031】
中央部アダプターブラケット31は、開口部を有する平板で構成されている。左側アダプターブラケット32および右側アダプターブラケット33は、周辺部アダプターブラケットを構成し、それぞれ、アンカーボルト8用の取付穴12が穿設されている。左側アダプターブラケット32と右側アダプターブラケット33は、同一形状、同一大きさの平板で構成することができる。
【0032】
中央部アダプターブラケット31は、既設プールボックス1の上面中央部に設置される。この中央部アダプターブラケット31と一部分で重なるように左側アダプターブラケット32と右側アダプターブラケット33が締結ボルト17を介して取り付けられる。
【0033】
また、
図10に示す例では、中央部アダプターブラケット31の前側に、周辺部アダプターブラケットを構成する前部アダプターブラケット34を締結ボルト17を介して設置している。また、中央部アダプターブラケット31の後側に、周辺部アダプターブラケットを構成する後部アダプターブラケット35を締結ボルト17を介して設置したものである。なお、前部アダプターブラケット34および後部アダプターブラケット36と、左側アダプターブラケット32または右側アダプターブラケット33とは、同一形状、同一大きさの平板で構成することができる。
【0034】
さらに、
図11に示す例では、中央部アダプターブラケット31の左側に左側アダプターブラケット32を締結ボルト17を介して設置し、中央部アダプターブラケット31の前側に前部アダプターブラケット34を締結ボルト17を介して設置したものである。
【0035】
このように、中央部アダプターブラケット31を中心にして、周辺部アダプターブラケットを構成する左側アダプターブラケット32と、右側アダプターブラケット33と、前部アダプターブラケット34と、後部アダプターブラケット35とを、適宜、組み合わせて使用することが可能である。
【0036】
このため、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、既設プールボックス1が機械室の壁などに近く、第1実施形態のアダプターブラケット5を設置できない場所にも対応でき、より一層、工事期間の短縮および工事コストの低減が可能になる。
【0037】
また、中央部アダプターブラケット31を除く4枚の分割アダプターブラケット32,33,34,35は同一形状、同一寸法のブラケットで構成できるので、制御盤の設置位置に応じて適宜、組み合わせを変更して利用することができる。
【0038】
<第3実施形態>
図12、
図13は本発明の第3実施形態の構成を示している。
【0039】
第3実施形態において、新規制御盤4を固定するアダプターブラケット40は、既設プールボックス1を覆う上面部41とこの上面部41から下方にZ曲げされた端部42とから構成されている。そして、既設プールボックス1の上端部より下方位置で端部42とアンカーボルト8と固定される。固定には、第1実施形態と同様、平座ナット9により端部を上下から挟み込むようにする。なお、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
このように第3実施形態によれば、新規制御盤4を固定するアダプターブラケット40の端部42を下方に折り曲げた形状(Z曲げ)とし、既設プールボックス1の上端部より、下方部の位置で2つの平座ナット9で挟み込むように構成した。このため、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、既設プールボックス1の上端をアダプターブラケット40のZ曲げ部分で挟み込むようにするので、地震時等で既設プールボックス1が左右に移動するような場合にもその移動を規制することができ、より強固に新規制御盤4を固定することができる。
【0041】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…既設プールボックス、2…機械室床、3…シンダーコンクリート、4…新規制御盤、5…アダプターブラケット、6…開口部、7…架台、8…アンカーボルト、9…平座ナット、10…カバー、11…開口部、12…取付穴、13…架台取付穴、14…台座部、15…取付穴、16…脚部、17…締結ボルト、31…中央部アダプターブラケット、32…左側アダプターブラケット、33…右側アダプターブラケット、34…前部アダプターブラケット、35…後部アダプターブラケット、40…アダプターブラケット、41…上面部、42…端部