(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用の改善された多層微多孔性セパレータおよび関連方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/457 20210101AFI20240311BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/403 20210101ALN20240311BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/403 B
(21)【出願番号】P 2022167933
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2020200321の分割
【原出願日】2015-11-24
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】シー,リイ
(72)【発明者】
【氏名】パウルス,ウィリアム ジョン
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527260(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090632(WO,A1)
【文献】特開平08-244152(JP,A)
【文献】特開2007-311332(JP,A)
【文献】特表2012-508795(JP,A)
【文献】特表2012-508946(JP,A)
【文献】国際公開第2014/047126(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外層、第2の外層、及び内側層が積層されてなる、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)構成の微多孔性セパレータを有するリチウムイオン二次電池セパレータであって、
前記微多孔性セパレータは、前記第1の外層、前記第2の外層、及び前記内側層の積層体である非多孔性セパレータ前駆体をドライ延伸により形成されてなるセパレータであり、
前記微多孔性セパレータは、厚さが12~
16μmであり、気孔率35~65%及び電気抵抗(ER)値1.5オームcm
2以下であり、
少なくとも12μmの厚さを有する前記微多孔性セパレータは、少なくとも280gfの突刺強度(PS)を示し、
前記微多孔性セパレータの前記内側層は、前記微多孔性セパレータの前記第1及び前記第2の外層よりも大きな細孔を有し、
前記第1の外層は、0.8グラム/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記第2の外層は、0.8グラム/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記内側層は、第1と第2の外層との間に配置され、ポリエチレン(PE)を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ。
【請求項2】
前記微多孔性セパレータが少なくとも14μmの厚さを有する場合、前記微多孔性セパレータが少なくとも330gfの突刺強度(PS)を示す、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記微多孔性セパレータが少なくとも16μmの厚さを有する場合、前記微多孔性セパレータが少なくとも350gfの突刺強度(PS)を示す、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記微多孔性セパレータが37%を超える気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記微多孔性セパレータが少なくとも39%の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記微多孔性セパレータが35%~65%の範囲の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記微多孔性セパレータが39%~53%の範囲の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
請求項1に記載のセパレータを含む動力電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、同時係属中の2014年11月26日出願された米国特許仮出願第62/084,655号の優先権および利益を主張する。この出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
少なくとも選択実施形態では、本発明または本出願は、新規のまたは改善された電池用セパレータ、ベースフィルムまたは膜、および/またはこのようなセパレータ、フィルムまたは膜の製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明または本出願は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層または多層の共押出または積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。好ましい可能性のある本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する12μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池用の微多孔性セパレータ膜の機械的強度を高めるための種々の方法が存在する。ドライプロセス微多孔性電池セパレータ膜の機械的強度を向上させる1つのこのような方法は、米国特許第6,602,593号で考察されている。この方法は、インフレート法実施中の、少なくとも1.5のブローアップ比(BUR)の使用に基づいている。当業者には知られているように、ブローアップ比法は、環状ダイからのインフレートフィルムの半径方向伸長を伴う。1.5以上のブローアップ比を使って、押出成形膜の横方向(TD)での結晶構造配向レベルの増加が達成された。
【0004】
米国特許第8,795,565号は、制御された縦方向(MD)緩和プロセスステップによるドライプロセス前駆体膜のMDおよびTDの両方の延伸を伴う2軸延伸技術について記載している。2軸延伸膜は、縦方向(MD)およびTD方向に改善された機械的強度を有し、リチウムイオン電池の電池セパレータ膜として使用される場合、優れた強度性能が予測され得る。
【0005】
米国特許第8,486,556号は、混合貫通強度試験方法で定義される強度が向上した多層電池セパレータを開示している。この強度は、セパレータ膜を通して短絡を形成するのに必要な力の尺度である。PP/PE/PP三層構造の多層セパレータ膜のポリプロピレン層で測定して、1.2グラム/10分以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン樹脂を使って、21~24.5μmの範囲の厚さ、35%~37%の範囲の気孔率、18~19秒のASTMガーレイ(JISガーレイ=450~475秒と同じ)、および2.1~2.3オーム-cm2の範囲の電気抵抗(ER)(用語のイオン抵抗、IRに同じ)を有する多層セパレータを製造した。
【0006】
同様に、通常2軸延伸され、ほぼ均等のMDおよびTD強度特性を有し得るウエットプロセス微多孔性電池セパレータも知られている。ウエットプロセスを使って製造された微多孔性膜の例は、米国特許第5,051,183号、同第6,096,213号、同第6,153,133号、および同第6,666,969号のものであってよい。
【0007】
ウエットプロセス電池セパレータ膜は、通常、500,000を超える分子量、より好ましくは1,000,000を超える分子量を有する極めて高分子量のポリマー樹脂を使って製造され、溶融押出を可能とするために可塑剤(単一または複数)の使用が必要となる。さらに、可塑剤(単一または複数)として知られる成分は、典型的には油であるが、極めて高分子量の樹脂で溶融押出をするためには使用する必要がある。可塑剤は、製造プロセスの一部として、溶媒を使って抽出する必要がある。製造プロセスの抽出ステップ由来の油可塑剤混入溶媒は、抽出溶媒および油を使用可能な純度品質にするために、再生する必要がある。これは追加の高価なエネルギーコストとなる。したがって、ウエットプロセスは、無溶媒で「環境に優しい」、影響の少ない、安価なドライプロセス法に比べて、場合によっては環境上の課題のあるプロセスであり、高価な溶媒取り扱いおよび廃棄問題を有する。
【0008】
BURインフレートフィルム法、ドライプロセス膜のTD延伸およびウエットプロセス2軸延伸多孔膜の既知の方法は、さらに、低電気抵抗(ER)、2オーム-cm2未満のER範囲のみでなく、1.3オーム-cm2以下の遥かに低くより好ましいER範囲においても、優れた強度性能特性を達成する必要がある。
【0009】
したがって、リチウムイオン電池において優れたサイクル性能および安全性を有する微多孔性電池セパレータまたは膜を製造するドライプロセスで、無溶媒かつ環境上影響が低いプロセスに対する必要性が存在する。高出力用途、例えば、電動駆動車(EDV)産業の電池製造者は、好ましくは14~30μmの範囲の厚さ、微多孔を有し、最適高エネルギー性能のための高い充電レート(Cレート)を有する微多孔性電池セパレータを要望または要求している。さらに、これらのEDVおよびハイブリッド電気自動車(HEV)電池システムの要件に適合するドライプロセス微多孔性電池セパレータまたは膜に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明は、上記必要性に対処し、および/または新規のまたは改善された電池用セパレータ、ベースフィルムまたは膜、および/またはこのようなセパレータ、フィルムまたは膜の製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層または多層の共押出または積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、リチウム電池、二次または充電式リチウム電池、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。好ましい可能性のある本発明のドライプロセスセパレータは、リチウム電池の改善されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途(例えば、EDVまたはHEV)用リチウム電池の優れた充電レート(Cレート)性能を与える。
【0011】
新規微多孔性電池セパレータはリチウムイオン蓄電池での使用のために開発された。好ましい可能性のある本発明のセパレータ膜、セパレータ、ベースフィルムまたは膜は、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)三層構造を含むドライプロセス多層積層微多孔性電池セパレータまたは膜である。多層PP/PE/PPは、内側のPE層から提供される熱シャットダウン機能を含む。さらに、外側PP層は、サイクル性能およびトリクル充電性能の改善のための優れた酸化抵抗を提供する。好ましいポリプロピレン層は、押出成形により、可塑剤の使用を必要とせずに、高レベルの結晶質ラメラ配向を有する内部微細構造を備えた前駆体膜を生成する、高分子量で低メルトフローインデックスポリプロピレン樹脂または高分子量、低メルトフローインデックスポリプロピレン樹脂のブレンドを使って製造される。PP層の前駆体膜中のこの高レベルの結晶質ラメラ配向は、本発明のセパレータ多孔膜の改善された機械的強度性能において重要な役割を果たし得る。さらに、ラメラ構造中の結晶化度は、微多孔性セパレータ膜の製造プロセスの延伸ステップ中の微細孔の形成において重要な役割を果たし得て、PP/PE/PPセパレータまたは膜における多孔質層の全体微細構造を構成する細孔径および気孔率パーセントに対し大きな影響を与える。
【0012】
本発明の多層セパレータ、ベースフィルム(その他の層によりコートまたは積層されるように構成されている)または膜は、ドライ延伸プロセス(CELGARD(登録商標)ドライプロセス)により調製でき、このプロセスは、一般に、PPおよびPE非多孔性前駆体を別々に押出成形すること、非多孔性前駆体をPP/PE/PP積層構造に一緒に接合して接合非多孔性PP/PE/PP前駆体を形成すること、および延伸して微多孔性多層膜を形成することを含み、細孔形成は、非多孔性、半結晶性の押出成形されたポリマー前駆体を縦(MD)方向に延伸することによりもたらされる。
【0013】
低ER、高気孔率、低ガーレイおよび高突刺強度を備えた好ましい本発明の膜は、高出力最終用途で使用するためのリチウムまたはリチウムイオン蓄電池において改善されたサイクル寿命性能および/またはより高水準の安全性を有する。
【0014】
インフレート押出前駆体フィルムの半径方向への伸長により達成された横方向(TD)の向上した結晶構造配向が、機械的強度、特にTD引張強度およびTD伸びを改善し、延伸微多孔膜の縦方向(MD)での剥離の減少が生じることが明らかになった。
【0015】
約12~30μmの範囲の好ましい厚さを有する代表的な本発明の多層膜は、38%以上の高気孔率、1.5オーム-cm2以下の低電気抵抗および320秒/100cc以下の低JISガーレイに起因して、先行技術電池セパレータ膜に比べて、高充電レート性能を有する。電池セパレータのERおよび高気孔率は、電解質の高レベルのイオン導電率に繋がり、および/またはリチウムイオン二次電池の長いサイクル寿命を促進する。
【0016】
低ERおよび高気孔率を達成するために、本発明の多層セパレータ膜は、高分子量、低メルトフローインデックスポリプロピレンポリマー樹脂を使用して製造されるのが好ましい。この樹脂は、溶媒および抽出ステップを使用しないでドライプロセスを使って溶融押出された場合、前駆体膜中に高レベルの結晶質ラメラ含量をもたらす。この高レベルの結晶質ラメラを有する前駆体膜が延伸されて細孔が形成されると、得られた微多孔膜は、突刺強度の増加、低ERおよび高気孔率を示す。セパレータは、電池の寿命全体を通して、過酷なセルアセンブリおよび充放電サイクルに耐える大きな機械的強度を有する必要がある。本発明のセパレータは、14μmの厚さでの330gfから30μmの厚さでの549gfまでの範囲の突刺強度を有するのが好ましい。本発明のドライプロセス微多孔性電池セパレータ膜は、リチウムイオン二次電池の電池サイクル寿命および安全性能の観点から、ドライプロセスとウエットプロセス電池セパレータ微多孔性膜との間で等しいかまたはより良好なセパレータ性能特性を有するのが好ましい。
【0017】
ドライプロセスでは、延伸ステップでの細孔形成方式は、縦方向延伸を含み、これは、積層結晶質ラメラプレートを引き離し、ポリマーフィブリルを伸長させ、長方形の細孔を形成する。前駆体膜の非多孔性PP層のラメラ構造中の結晶化度の量は、ドライプロセス延伸微多孔膜の内部多孔質微細構造の形成に重要な因子であり得る。X.M.Zhang、らの“Oriented Structure and Anisotropy Properties of Polymer Blown Films HDPE,LLDPE and LDPE”,POLYMER 45(2004)217-229中、およびS.Tabatabaei、らの“Microporous Membranes Obtained from PP/HDPE Multilayer Films by Stretching”,JMS 345(2009)148-159中で、結晶相の構造が、フィルムの機械的性質に強く影響を与えることが言及されている。本発明のより高い結晶質ラメラ含量の前駆体膜が延伸されて細孔が形成されると、得られた微多孔膜は、突刺強度の増加、低ERならびに高レベルの気孔率を示す。これらの因子のそれぞれが、リチウムイオン二次電池の電池サイクル寿命および安全性の観点から、セパレータ膜の高レベル性能に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】均一で秩序化積層ラメラ構造を示すエッチングしたPP膜の表面SEM顕微鏡写真である。
【
図2】PPおよびHDPE膜の応力-歪みプロットである。
【
図3】CE6微多孔性フィルムの表面の20,000x倍率のSEM顕微鏡写真である。
【
図4】CE5微多孔性フィルムの表面の20,000x倍率のSEM顕微鏡写真である。
【
図5】ポリプロピレン中の鎖折りたたみおよび折りたたみ中の分子レベルポリマー構造の模式図である(“The Theory of Birefringence”,Cambridge Polymer Group,2004,CPGAN # 014,www.campoly.com、を参照されたい)。
【
図6】本発明実施Ex.2の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
【
図7】Ex.2の膜の断面のSEM顕微鏡写真である。
【
図8】Ex.3の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
【
図9】Ex.4の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
【
図10】Ex.5の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
【
図12】本発明実施例Ex.2、3、4および5の膜の表面SEM顕微鏡写真を並べて比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
代表的新規または改善された微多孔性電池セパレータは、リチウムイオン蓄電池などのリチウム電池での使用のために開発された。好ましい可能性のある本発明のセパレータ膜は、押出成形により(後で抽出する必要のある可塑剤を必要とすることなく)、高レベルの結晶質ラメラ配向を有する内部微細構造を備えた前駆体膜を生成する、高分子量で低メルトフローインデックスポリプロピレン樹脂または高分子量および低メルトフローインデックスポリプロピレン樹脂のブレンド(少なくとも外層のために)を使って製造されたドライプロセスPP/PE/PP多層微多孔性電池セパレータ膜である。さらに、内部微細構造は、高レベルの均一性の結晶質ラメラ構造を有し、これは、ドライプロセスの延伸ステップでの微細孔形成に影響を与える。
【0020】
図1は、エッチングしたPP非多孔性膜のSEM顕微鏡写真である。この膜は、MDまたはTD延伸をまだ受けていない、均一で秩序化積層結晶質ラメラ構造を有する。エッチングプロセスは、全ての非晶質部分を除去し、結晶質ラメラ構造のより良好な可視化を可能とするために行われた。膜中の細孔形成のよく知られた方式は、既知で、X.M.Zhang、らの“Oriented Structure and Anisotropy Properties of Polymer Blown Films HDPE,LLDPE and LDPE”,POLYMER 45(2004)217-229、およびS.Tabatabaei、らの“Microporous Membranes Obtained from PP/HDPE Multilayer Films by Stretching”,JMS 345(2009)148-159、で発表されている。
図2は、典型的な応力/歪みプロットで、非多孔性膜の印加応力に対する応答を示し、応力の初期印加による積層結晶質ラメラプレートの引き離しが示されている。このラメラプレートの初期分離に続けて、ポリマー鎖のラメラ積層からのさらなる引抜きにより、フィブリルとして知られる伸ばされたポリマー鎖構造が形成される。
図2は、印加応力に伴いポリマーフィブリルがさらに伸長し、微細構造中に多孔質領域が生成されることを示す。
【0021】
図3および4は、SEM顕微鏡写真で、微多孔性セパレータ膜CE6およびCE5の表面の微小スケールでの外観を示す。結晶質ラメラおよびフィブリル構造を、20,000x倍率で明瞭に見ることができる。CE6およびCE5膜の結晶質ラメラ領域の比較では、CE5よりCE6の方がより肉厚の結晶質ラメラ領域を有することが示される。
【0022】
図5は、ポリプロピレン結晶質ラメラ中の鎖折りたたみ、ならびにラメラ構造内の分子レベルポリプロピレンポリマー鎖の図を示す(“The Theory of Birefringence”,Cambridge Polymer Group,2004,CPGAN # 014,www.campoly.com、を参照されたい)。メルトフローインデックス(mfiまたはMFI)(2.16kgの荷重下、230℃での10分間のポリプロピレンポリマー流出質量を秤量することにより測定される)は、ポリマー樹脂の固有の性質であり、メルトフロー押出プロセスで使用され、樹脂の分子量に関係する。高分子量PPは、より低いmfi値を有する。
【0023】
表1は、CE6およびCE5微多孔性膜のメルトフローインデックス値、ならびに示したmfi値を有する樹脂から得られた微多孔膜の細孔径のリストである。
【表1】
【0024】
CE6およびCE5は、異なる分子量およびメルトフローインデックス(mfi)のポリプロピレン樹脂を使って製造される。これらの特性は、ドライプロセスの前駆体膜の溶融押出中に形成される結晶質ラメラ領域の発生に重要な因子であり得る。
【0025】
CE6ポリプロピレン樹脂は、5.0g/10分のmfiを有し、この値は、CE5の製造に使用した樹脂の3xを超える高いメルトフローインデックス(mfi)であり、mfiの変化が、多孔質セパレータ膜の微細構造中の結晶質ラメラ領域の発生およびこれらの結晶質ラメラ領域の均一性に大きな影響を与える可能性があることを示す。
【0026】
実施例
表2は、12種の本発明実施例Ex.1~Ex.12(および4種の比較例CE1~CE4)のセパレータ性能特性を記載している。本発明実施例の厚さは、14μm~30μmの範囲であり、これは、EDV用途のための好ましい目標厚さの範囲である。
【表2】
【0027】
本発明のセパレータ膜は、高分子量ポリプロピレン樹脂を使って製造される。このより高い結晶質樹脂が溶融押出される場合、得られた非多孔性前駆体膜は、高レベルの結晶質ラメラ配向を有する。高分子量非多孔性前駆体膜のアニーリングおよび延伸により、より高い多孔度およびより低いERで、改善された突刺強度を有する微多孔性膜が製造される。
図6に示される本発明実施例Ex.2のPP表面のSEM顕微鏡写真は、より肉厚のラメラ領域によりわかるように、
図3(CE6)および
図4(CE5)に比べて、より高いレベルの結晶質ラメラ含量を示す。より厚いラメラは、機械的に強度のより高い微多孔膜を生成し得る。
【0028】
Ex.3、Ex.4およびEx.5のSEM顕微鏡写真は、
図8、9および10に示されている。本明細書で記載の本発明実施例は、PE層を含む熱シャットダウン微多孔性膜である。
図11は、断面のSEM顕微鏡写真で、本発明実施のEx.2の三層PP/PE/PP構成を示し、この場合のそれぞれPPおよびPE層の厚さは、マイクロメートル単位で標識されている。約135℃で熱シャットダウンを可能とする内側のPE層は通常、外側のPP層より大きい細孔を有する。
図12は、本発明実施例Ex.2、Ex.3、Ex.4およびEx.5の表面のSEM顕微鏡写真を並べて比較したもので、膜の内部微細構造中のより高い含量の結晶質を示している。本発明実施例のより高いレベルの結晶質ラメラおよび結晶質ラメラの均一性が、
図12のSEM顕微鏡写真により示されている。
図13は、比較例1の表面のSEM顕微鏡写真で、均一結晶質ラメラがより少ない。
【0029】
本発明の非多孔性前駆体膜中の結晶質ラメラの量および均一性は、微多孔性セパレータ膜の細孔径および%気孔率と共に、電気抵抗、ガーレイ、および突刺強度などのセパレータ性能特性に重要な役割を果たし得る。本発明の膜Ex.1~Ex.12は、12~30μmの範囲の厚さに対し、0.9~1.4の範囲の電気抵抗(ER)値を有し、EDV用途のための高性能微多孔膜を提供する。好ましい本発明の微多孔性膜は、先行技術電池セパレータ膜に比べて、低ERおよび低ガーレイを有する。この特性は、EDVおよびその他の高出力用途向けリチウム電池の優れたハイレート特性の達成に重要である。
【0030】
図14は、本発明の膜Ex.1~Ex.12の膜厚(μm)の関数としてのERのオーム-cm
2単位のプロットである。本発明実施例は、比較例CE1、2、3および4より有意に低いERを有する。さらに、本発明実施例の厚さが12から30μmに増加しても、ERは1.5オーム-cm
2以下にとどまる。低ERセパレータ膜は、リチウムイオン電池の充放電の間の改善されたレベルのリチウムイオン導電率を与え、電池の全体性能をさらに向上させる。
【0031】
図15は、本発明のセパレータ膜Ex.1~Ex.12の膜厚の関数としての突刺強度のプロットである。本発明の膜は、比較例CE1~CE4より高い突刺強度を有する。12μmの厚さに過ぎないEx.7が、16μm厚さのCE4より高い突刺強度を有する。本発明の膜は、電池アセンブリの過酷な巻き上げプロセスに対し、よりよく耐える可能性があり、このことは、電池サイクル中のデンドライト貫通に対する保護のための機械的強度の改善に繋がる。12μm~30μmの厚さの範囲を通して、
図15に示す本発明の膜は、より高い突刺強度の観点で、比較技術より性能が優れている。
【0032】
図16は、本発明の膜Ex.1~Ex.12の厚さの関数としての%気孔率のプロットである。本発明の膜は、比較例CE1~CE4と比べて、12~30μmの厚さの範囲を通して、より高い気孔率パーセントを有し、電解質導電率および電解質保持の観点から、リチウムイオン電池においてより良好な性能を発揮するであろう。
【0033】
より高い突刺強度,高気孔率パーセントおよび低ERは、特に高出力用途のリチウムイオン電池において、より良好なサイクル寿命および/または安全性能に寄与する。
【0034】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、本明細書で示されまたは記載されている改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムに関し、および/またはセパレータは多層セパレータ、膜またはベースフィルムであり、セパレータは三層セパレータ、膜またはベースフィルムであり、セパレータはドライ延伸プロセスにより作製され、セパレータは積層形成プロセスにより作製され、セパレータは少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、セパレータは少なくとも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、セパレータは少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、セパレータは少なくとも35%の気孔率を有し、セパレータは37%を超える気孔率を有し、セパレータは少なくとも39%の気孔率を有し、セパレータは約35%~65%の範囲の気孔率を有し、セパレータは約39%~53%の範囲の気孔率を有し、セパレータは電気自動車に使われるような動力電池に特に好適であり、セパレータは1.5オーム-cm2以下のER、少なくとも35%の気孔率を有し、高Cレート充放電に適合し、セパレータはドライプロセスにより製造された少なくとも1種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて、前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する、改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムに関する。
【0035】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、改善された多層セパレータ、膜またはベースフィルムであって、
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜を含み、該ドライ延伸プロセスでは、ポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、
前記セパレータが、約14μm以上の厚さ、約35%~約65%の気孔率、および約1.5オーム-cm2以下の電気抵抗(ER)値を有し、および
必要に応じて、セパレータが、三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車に使われるような動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm2以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスにより製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少なくとも2種のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに優る改善された突刺強度を有する、などの多層セパレータ、膜またはベースフィルムに関する。
【0036】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、以前の同一厚さの多層セパレータに優る改善された突刺強度を有する本明細書で示し記載した多層セパレータに関する。
【0037】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、以前の同じ厚さの三層セパレータに優る改善された突刺強度を有する本明細書で示し記載した三層セパレータに関する。
【0038】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、新規のまたは改善された電池用セパレータ、ベースフィルムまたは膜、および/またはこのようなセパレータ、フィルムまたは膜の製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層または多層の共押出または積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。好ましい可能性のある本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【0039】
リチウムイオン二次電池用の改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方法または使用方法が提供される。好ましい本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【0040】
試験方法
厚さ
厚さは、試験手順ASTMD374に従い、Emveco Microgage 210-A精密マイクロメーター厚さ試験機を使用して測定される。厚みの値は、マイクロメートル、μmの単位で報告される。
【0041】
突刺強度
試験試料は最初に73.4℃、相対湿度50%で最短でも20分間、事前処理される。Instron Model 4442を使用して試験試料の突刺強度が測定される。1.25”x40”の連続的試験片の対角方向に端から端まで30点の測定を行い、平均した。ニードルは0.5mm半径である。下降速度は、25mm/分である。フィルムは、試験試料を所定位置に確実に保持するためにOリングを利用したクランプ装置にしっかり固定して保持される。この固定領域の直径は25mmである。ニードルにより孔が開いたフィルムの変位(mm単位)が試験フィルムから生じた抵抗力(グラム力単位)に対して記録される。最大の抵抗力がグラム力(gf)単位の突刺強度である。この試験方法により荷重対変位プロットが生成される。
【0042】
細孔径
細孔径は、Porous Materials,Inc.(PMI)から入手可能なAquaporeを用いて測定される。孔径は、μm単位で表される。
【0043】
気孔率
微多孔性フィルム試料の気孔率は、ASTM法D-2873を使って測定され、微多孔膜中の空隙パーセントとして定義される。
【0044】
TDおよびMD引張り強度
MDおよびTDに沿った引張強さは、ASTM-882法に従って、Instron Model 4201を使用して測定される。
【0045】
メルトフローインデックス(mfi)
ポリマー樹脂のメルトフローインデックスは、ASTM DS1238を使って測定される。ポリエチレンのMFI測定に対しては、温度=190℃、荷重=2.16kg。ポリプロピレンに対しては、温度=230℃、荷重=2.16kg。MFIは、g/10分として測定される。
【0046】
電気抵抗(ER)(イオン抵抗、IRとしても知られる)
電気抵抗は、電解質を満たしたセパレータのオーム-cm2単位の抵抗値として定義される。電気抵抗の単位は、オーム-cm2である。セパレータの抵抗は、完成材料からセパレータの小片を切り出し、それらを二つのブロッキング電極の間に置くことによって特性解析される。セパレータを、3:7の容積比率のEC/EMC溶媒中に1.0MのLiPF6塩を含む電池電解液で飽和させる。セパレータのオーム(Ω)単位の抵抗値、Rが、4プローブACインピーダンス法により測定される。電極/セパレータ界面での測定誤差を減らすために、さらにセパレータ層を追加して複数測定をする必要がある。複数層の測定値に基づいて、電解質で飽和したセパレータの電気(イオン)抵抗、RS(Ω)は、式RS=pSl/Aにより計算される。式中、pSはセパレータのイオン抵抗率(単位、Ω-cm)であり、Aは電極面積(単位、cm2)、lは、セパレータの厚み(単位、cm)である。pS/Aの比率は、複数層(Δδ)によるセパレータの抵抗値の変動(ΔR)に対して計算した勾配であって、勾配=pS/A=ΔR/Δδで与えられる。
【0047】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物において、リチウムイオン二次電池用の新規または改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方法および/または使用方法が提供される。好ましい本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能およびトリクル充電性能または充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力のEDVまたはHEV用途用のリチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【0048】
本発明は、本発明の精神および本質的な属性から外れることなくその他の形態において実施することも可能であり、従って、本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書よりも、添付の請求項を参照するべきである。さらに、本明細書で適切に開示される本発明は、本明細書で具体的に開示されていないいずれかの要素がなくても実施し得る。
【0049】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムであって、ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜を含み、前記ドライ延伸プロセスによりポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、
前記セパレータが、約12μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、および約1.5オーム-cm2以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、多層もしくは三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車に使われるような動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm2以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスにより製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少なくとも2種のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに優る改善された突刺強度を有し、およびこれらの組み合わせを有し、これらの内の少なくとも1つを有する新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。
[2]
多層セパレータ、膜またはベースフィルムである、[1]に記載のセパレータ。
[3]
三層セパレータ、膜またはベースフィルムである、[1]に記載のセパレータ。
[4]
ドライ延伸プロセスにより作製される、[1]に記載のセパレータ。
[5]
積層形成プロセスにより作製される、[1]に記載のセパレータ。
[6]
少なくとも330gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも14μmの厚さを有する、[1]に記載のセパレータ。
[7]
少なくとも350gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも16μmの厚さを有する、[1]に記載のセパレータ。
[8]
少なくとも35%の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[9]
37%を超える気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[10]
少なくとも39%の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[11]
約35%~65%の範囲の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[12]
約39%~53%の範囲の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[13]
電気自動車に使われるなどの、特に動力電池に好適している、[1]に記載のセパレータ。
[14]
1.5オーム-cm2以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適している、[1]に記載のセパレータ。
[15]
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ延伸プロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する微多孔膜を含む、[1]に記載のセパレータ。
[16]
新規または改善された多層セパレータ、膜またはベースフィルムであって、
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ延伸プロセスによりポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する微多孔膜を有し、ならびに
前記セパレータが、約14μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、および約1.5オーム-cm2以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車に使われるような動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm2以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスにより製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少なくとも2種のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに優る改善された突刺強度を有する、新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。
[17]
以前の同じ厚さの多層セパレータに優る改善された突刺強度を有する、[16]に記載のセパレータ。
[18]
以前の同じ厚さの三層セパレータに優る改善された突刺強度を有する三層セパレータである、[16]に記載のセパレータ。
【0050】
本出願は、以下の発明を含み得る。
[1]
第1の外層、第2の外層、及び内側層が積層されてなる、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)構成の微多孔性セパレータを有するリチウムイオン二次電池セパレータであって、
前記微多孔性セパレータは、前記第1の外層、前記第2の外層、及び前記内側層の積層体である非多孔性セパレータ前駆体をドライ延伸により形成されてなるセパレータであり、
前記微多孔性セパレータは、厚さが少なくとも17μmであり、気孔率41%以上及び電気抵抗(ER)値1.5オームcm2以下であり、
前記微多孔性セパレータは、少なくとも350gfの突刺強度(PS)を示し、
前記微多孔性セパレータの前記内側層は、前記微多孔性セパレータの前記第1及び前記第2の外層よりも大きな細孔を有し、
前記第1の外層は、0.8グラム/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記第2の外層は、0.8グラム/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記内側層は、第1と第2の外層との間に配置され、ポリエチレン(PE)を含み、
前記リチウムイオン二次電池セパレータは、マイクロメートル単位で12~16のラメラを有する、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ。
[2]
前記リチウムイオン二次電池セパレータは、少なくとも290秒/100ccのJISガーレイを示す、[1]に記載のリチウムイオン二次電池セパレータ。
[3]
[1]に記載のリチウムイオン二次電池セパレータを含む動力電池。