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特許7451674洋上風力タービンのための浮体基礎、風からエネルギーを抽出するためのシステム、および風力タービンを取り付ける方法
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  • 特許-洋上風力タービンのための浮体基礎、風からエネルギーを抽出するためのシステム、および風力タービンを取り付ける方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】洋上風力タービンのための浮体基礎、風からエネルギーを抽出するためのシステム、および風力タービンを取り付ける方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/42 20060101AFI20240311BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20240311BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20240311BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
E02D27/52 Z
E02D27/32 A
F03D13/25
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022500518
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 NO2020050184
(87)【国際公開番号】W WO2021002760
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】20190847
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】522004209
【氏名又は名称】ニューテック アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボロ イングバル
(72)【発明者】
【氏名】コレリア リカルド ヌーノ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン アリルド
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500929(JP,A)
【文献】国際公開第2011/057940(WO,A2)
【文献】特表2019-509217(JP,A)
【文献】国際公開第2014/062792(WO,A1)
【文献】特開平09-202291(JP,A)
【文献】特開2011-207446(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105216968(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/42
E02D 27/52
E02D 27/32
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央パイプと、浮力部と、重り部と、複数のワイヤロープと、を備える、洋上風力タービン用の浮体基礎であって、
前記浮体基礎に浮力をもたらして前記浮体基礎を浮いた状態に保つために、前記浮力部が前記中央パイプに連結され、
前記浮体基礎に安定性をもたらすために、前記重り部が前記中央パイプの下端部に連結され、
前記複数のワイヤロープが、前記浮力部と前記重り部との間に延びて接続され、張力を掛けられ、かつ張力が掛けられたときに前記浮体基礎に曲げ強度を加えるように構成され、
前記浮体基礎が、前記浮体基礎の前記中央パイプを下げるまたは上げるための複数の巻き上げ手段をさらに備え、前記複数の巻き上げ手段が、前記ワイヤロープを引き出しまたは引き込み、前記浮力部と前記重り部とを接続している前記複数のワイヤロープの各ワイヤロープの長さを増加または減少させて、前記浮体基礎の前記中央パイプを下げるまたは上げるための複数のウインチである、浮体基礎。
【請求項2】
張力が掛けられた前記複数のワイヤロープのうちの少なくとも1つまたは複数が、前記浮力部の外側部分から前記重り部まで延びている、請求項に記載の浮体基礎。
【請求項3】
前記浮力部が、前記中央パイプと同軸のリングを備える、請求項1または2のいずれか1項に記載の浮体基礎。
【請求項4】
前記中央パイプ内に水が入るように、前記中央パイプが下端部で開いている、請求項1~のいずれか1項に記載の浮体基礎。
【請求項5】
前記浮体基礎が、前記中央パイプをある位置にロックするための選択的に解放可能なロック機構を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の浮体基礎。
【請求項6】
前記浮体基礎が、アクティブヒーブ補正システムをさらに備え、
前記アクティブヒーブ補正システムは、少なくとも1つのセンサを含み、前記少なくとも1つのセンサによって取得された情報に応答して前記中央パイプに対する前記重り部の位置を変更するように構成され、
前記少なくとも1つのセンサは、水域内の前記浮体基礎の安定性に関連する情報を取得するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の浮体基礎。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の前記浮体基礎と、風力タービンと、を備える、風からエネルギーを抽出するためのシステム。
【請求項8】
風力タービンを取り付ける方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の前記浮体基礎を準備する工程と、
前記浮体基礎にマストを取り付けて、前記マストを前記中央パイプに連結する工程と、
前記マストの上部にナセルを取り付ける工程と、
前記ナセルに複数のロータブレードを装着する工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記浮体基礎に、前記中央パイプを上げ下げするための巻き上げ手段が設けられており、
前記マスト、前記ナセル、および前記複数のロータブレードを取り付ける前に、前記巻き上げ手段を使用して、前記中央パイプを下げて、結果的に前記マストも下げる工程と、
前記マスト、前記ナセル、および前記複数のロータブレードを取り付けた後に、前記巻き上げ手段を使用して前記中央パイプを上げることによって、前記風力タービンを上げる工程と、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
洋上風力タービン用の基礎の安定性を改善する方法であって、
前記基礎を準備する工程であって、前記基礎が、重り部と、風力タービン用のプラットフォームと、アクティブヒーブ補正システムと、を有し、前記アクティブヒーブ補正システムは、少なくとも1つのワイヤロープと、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つの巻き上げ手段と、少なくとも1つの制御装置と、を備え、前記アクティブヒーブ補正システムは、前記風力タービン用の前記プラットフォ-ムに対する前記重り部の位置を変更するように構成され、前記少なくとも1つの巻き上げ手段が、前記少なくとも1つのワイヤロープに接続され、前記制御装置が、前記少なくとも1つのセンサからデータを受信するために前記少なくとも1つのセンサに接続され、かつ信号を通信して前記少なくとも1つの巻き上げ手段を操作してワイヤロープをある長さだけ引き出すまたは引き込むために前記少なくとも1つの巻き上げ手段に接続される、工程と、
前記少なくとも1つの巻き上げ手段を使用して前記少なくとも1つのワイヤロープをある長さだけ引き出すまたは引き込むことによって前記重り部に接続された前記少なくとも1つのワイヤロープに掛かる張力を変更することによって前記重り部の前記位置を変更する工程であって、前記重り部の前記位置を変更する工程が、前記制御装置が、前記少なくとも1つのセンサによって取得されたデータを処理し、応答として信号を送信して前記少なくとも1つの巻き上げ手段を操作した結果として実行される、工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記基礎が、請求項に記載の前記浮体基礎である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設用の基礎の分野、特に洋上風力タービンの基礎の分野に関する。本発明は、浮体式洋上風力タービンを支持するための装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーに向けた継続的な取り組みが行われている。この継続的な取り組みの一環として、洋上風力エネルギー抽出の技術分野でかなりの投資および技術的進歩がなされている。
【0003】
洋上風力からエネルギーを収穫するためには、深水に風力タービンを直立させることが望ましい場合がある。このような目的のためには、浮体基礎が非常に望ましい場合がある。
【0004】
浮体式洋上風力タービンの基礎の例はすでに数多く存在している。一例が、国際公開第2004/061302(A2)号から知られており、風力タービン用の浮体基礎が開示され、その基礎は、風力タービンの下端に連結された少なくとも3つの水中浮力体を本質的に備える。
【0005】
Hywindは、浮体基礎の別の例であり、風力タービンのベース部としてスパーブイを備える。Hywindスパーブイは、重くて可撓性がないため、取り付けが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2004/061302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの欠点を改善または低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、中央パイプと、浮力部と、重り部と、複数のワイヤロープと、を備える、洋上風力タービン用の浮体基礎が提供され、この浮体基礎において、
- 浮体基礎に浮力をもたらして浮体基礎を浮いた状態に保つために、浮力部が中央パイプに連結され、
- 浮体基礎に安定性をもたらすために、重り部が中央パイプの下端部に連結され、
- 複数のワイヤロープが、浮力部と重り部との間に延びて接続され、張力を掛けられ、かつ張力が掛けられたときに浮体基礎に曲げ強度を加えるように構成され、浮体基礎が、浮体基礎の中央パイプを下げるまたは上げるための複数の巻き上げ手段をさらに備え、複数の巻き上げ手段が、ワイヤロープを引き出しまたは引き込み、浮力部と重り部とを接続している複数のワイヤロープの各ワイヤロープの長さを増加または減少させて、浮体基礎の中央パイプを上げるまたは下げるための複数のウインチである。
【0009】
ワイヤロープは、張力を掛けられたワイヤロープであり得る。
【0010】
浮力部は、中央パイプに固定されてもよい。浮力部は、中央パイプの上端部に固定されてもよい。浮力部は、浮力部に対する中央パイプの移動を可能にすることができるようなやり方で、中央パイプに可動的に連結されてもよい。浮力部は、中央パイプに対する中央パイプの移動を防止するために、中央パイプにロック可能であってもよい。浮力部は、中央パイプに解放可能にロック可能であってもよい。
【0011】
中央パイプの下端部は、中央パイプの上端部に対する中央パイプの反対側の部分であり得る。浮力部は、中央パイプの下端部に固定されてもよい。
【0012】
ワイヤロープは、繊維ロープ、スチールワイヤロープ、チェーン、スチールと繊維との混合物を含むロープなどのハイブリッドロープ、または目的に適した他のタイプのロープであり得る。張力を掛けられた上記複数のワイヤロープの使用を通して曲げ強度を加えることにより、風力タービンを支持するための十分な構造強度、特に曲げ力に対抗する十分な支持を有する比較的軽量の設計が可能になる。
【0013】
複数のワイヤロープのうちの少なくとも1つまたは複数が、浮力部の外側部分から重り部の一部まで延びていてもよい。複数のワイヤロープのうちの全てが、浮力部の外側部分から重り部まで延びていてもよい。ワイヤロープの1つもしくは複数または全てが、例えば、重り部の上部、下部、外側部、中間部、および/または内側部まで延びていてもよい。
【0014】
ワイヤロープは、典型的なワイヤソケットまたは目的に適した他の任意のタイプの接続装置を使用するなど、当業者に知られている手段および方法を使用して、浮力部および重り部に接続され得る。ワイヤは、ROVによって操作され得る手段を使用して(例えば、フォーク取り付けまたは目的に適した他の任意のタイプの接続機器、器具、またはガジェットを使用して)重り部に接続され得る。
【0015】
中央パイプは、中央パイプ内に水が入ることを可能にするために、その下端部が開いていてもよい。底部が閉じているパイプは水圧に抵抗する必要があり、水圧はパイプの底部からパイプに上向きの力を加えることがあり、これは望ましくない場合がある。基礎の安定性に関する目的のためには、中央パイプの底部から中央パイプに浮力が加わることを回避することが、好都合であり得る。中央パイプをその下端部で開放することは、好都合には、少なくとも部分的に中空の中央パイプを可能にし得るもので、これは、端部が閉鎖している場合に必要となるよりも軽量の基礎を可能にし得る。
【0016】
浮力部は、比較的低い比重を有する部分であり得、その比重は、水の比重よりも著しく低くすることができるため、基礎に浮力をもたらし、基礎を浮いた状態に保つ。浮力部は、例えば、水の密度の0.9倍、水の密度の0.8倍、水の密度の0.7倍、または水の密度の0.5倍の密度を有し得る。浮力部のサイズと比重との組み合わせを通して浮力部から基礎に加えられる浮力は、風力タービンを基礎に搭載している間でも基礎が浮くことができるのを確実にするのに十分である必要がある。浮力部以外の部分が浮力を加えて基礎を浮いた状態に保ってもよいことに留意されたい。
【0017】
浮力部は、中央パイプと同軸であるリングを備えてもよい。リングは、加圧された複合材料および/または鋼もしくは別の適切なタイプの金属、または加圧されたRIB材料から作製され得るかまたはそれらを含み得る。浮力部は、例えば、実質的にトロイド形、円錐形、円筒形、もしくは円環形、または目的に適した他の任意の形状であり得る。浮力部は、中央パイプを中心として構成されてもよい。浮力部は、中心穴を有してもよく、中心穴は、その中心穴を中央パイプが通って延びることを可能にするために、実質的に円形の形状を有し得る。中心穴は、円形ではなく別の形状を有してもよい。
【0018】
重り部は、比較的高い比重を有する部分であり得、その比重は、水の比重よりも著しく高くすることができる。重り部は、水の密度の2倍、水の密度の4倍、または水の密度の10倍の密度を有し得る。重り部は、面積および体積が比較的小さくてもよいが、それでもかなりの質量になり得る。重り部は、浮力部よりも大幅に小さい直径を有し得る。重り部は、重り部を引っ張り、したがって中央パイプの下端部を下向きに引っ張る重力により、水域に配置されたときに基礎の安定性を向上させることができる。
【0019】
重り部は、例えば、海および港における取り付け時に中央パイプの下部に連結することができる複数の組み立て式要素を備えてもよい。重り部は、例えば、鉄鉱石または重いコンクリートなどの高比重の材料で満たされ得る1つまたは複数のタンクを備えてもよい。
【0020】
基礎は、プラットフォームを備えてもよい。プラットフォームは、接近用プラットフォームおよび/または作業デッキであってもよい。プラットフォームは、基礎に連結されてもよい。浮力部が、プラットフォームを備えてもよい。
【0021】
き上げ手段は、浮力部から重り部の距離を変更し、したがって中央パイプを上げ下げするために使用可能であり得る。巻き上げ手段/ウインチは、典型的には、浮力部上に配置され得るものであり、典型的には、浮力部を重り部に接続しているワイヤロープを引き込むかまたは引き出すように構成され得る。これは、例えば、基礎の組み立て、完全に下げられた中央パイプには水深が不十分なドック内での基礎の進水、基礎上への風力タービンの取り付け、風力タービンの保守などにとって好都合であり得る。基礎は、中央パイプをある位置(例えば、浮力部に対するある位置)に解放可能にかつ選択的にロックするためのロック機構をさらに備え得る。巻き上げ手段は、巻き上げ装置と呼ぶこともある。
【0022】
巻き上げ手段を使用して浮力部と重り部と間の距離を変えることで、基礎の重心を変更することができる。これは、基礎の輸送および/または進水、風力タービンの取り付け、および/または基礎もしくは基礎上に取り付けられた風力タービンの保守などを含む多くの様々理由により、好都合であり得る。
【0023】
1つまたは複数の巻き上げ手段は、1つまたは複数のワイヤロープに張力を掛けるように構成され得、かつ/またはそれに適してもよい。
【0024】
1つまたは複数の巻き上げ手段は、1つまたは複数のアンカーワイヤロープを引き込むかまたは解くように構成され得る。
【0025】
基礎は、1つまたは複数のワイヤを引き込むまたは引き出すためにその1つまたは複数のワイヤに関連して構成され得る1つまたは複数のアクチュエータを備え得る。1つまたは複数の巻き上げ手段が、1つまたは複数のアクチュエータを備え得る。アクチュエータは、コントローラまたは制御装置から信号を受信すると、解かれたワイヤロープの長さを調節するように構成され得る。コントローラは、アクチュエータにリモート接続されたオペレータであってもよい。基礎は、オペレータとのリモート通信のためにオペレータへのリモート接続のための通信装置を備えてもよい。オペレータは、マニュアルオペレータであってもよく、および/または通信装置と通信するように構成されたコンピュータデバイスまたはオペレーティングシステムであってもよい。
【0026】
基礎は、例えば、基礎のまたは基礎の一部の設定、状態、位置を調節するように構成され得る制御装置を備え得る。制御装置は、例えば、水域での重り部の深さ、巻き上げ手段のアクティブ化もしくは非アクティブ化、ワイヤロープの解放もしくは張力印加、または1つもしくは複数の電気信号を使用することによって操作可能となり得る基礎の他の任意の機器を、調節するように構成され得る。制御装置は、通信装置と接続されるように構成され得る。
【0027】
基礎は、例えば、風速、風向、波高、気温または水温、基礎の向き、重り部の位置などに関する情報を取得するために、1つまたは複数のセンサを備え得る。制御装置は、1つまたは複数のセンサを備え得るか、またはそれに接続され得る。制御装置は、1つまたは複数のセンサからの情報を受信するように構成され得、および/または、例えば、1つまたは複数のセンサからの情報に応じてアクチュエータなどの機器を操作することによって、その1つまたは複数のセンサからの情報に従って作動するように構成され得る。
【0028】
重り部は、中央パイプに可動的に連結されてもよい。重り部は、水平方向および/または垂直方向に移動可能であってもよい。重り部は、例えば、巻き上げ手段を使用することによって移動され得る。重り部を移動することで、重り部から中央パイプに加えられる力成分が調節され得、それにより、重り部による基礎の安定化への効果が調節され得る。重り部を中央パイプに対して移動させて力成分を調節することは、例えば、風または波から基礎に作用する力または基礎上の風力タービンに作用する力に対抗して、例えば、基礎の安定性を改善するのに役立ち得る。
【0029】
制御装置は、例えば、重り部を、1つまたは複数のセンサによって収集された情報に対する応答として、またはローカルまたはリモートのオペレータによる操作への応答として、自動的に、中央パイプに対しておよび/または浮力部に対して移動させるように構成され得る。
【0030】
制御装置は、いわゆるMRU(Motion Reference Unit、モーションリファレンスユニット)などのヒーブ補正システムで一般的に使用される計装を含み得る。MRUは、上記1つまたは複数のセンサのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0031】
制御装置は、MRUから、および/または1つもしくは複数のセンサから、および/またはオペレータから受信した通信から、情報を読み取り、処理し、保存し、分析し、および/または応答するための、コンピュータデバイス、中央処理装置(CPU)、他のコンピュータ関連ハードウェア、コードおよび/または1つもしくは複数のアルゴリズムを含むソフトウェアをさらに含み得る。制御装置は、アクティブヒーブ補正システム(AHC)の一部であってもよいし、またはAHCを含んでもよい。
【0032】
AHCには、例えば、1つまたは複数のワイヤ、1つまたは複数の巻き上げ手段、1つまたは複数のアクチュエータ、1つまたは複数のコンピュータデバイス、1つまたは複数のセンサ、および/または1つまたは複数のソフトウェアが含まれ得る。AHCは、水域内の風、波、および/または水流の状態に応じて、例えば、重り部、中央パイプ、基礎上に配置された風力タービンなどの位置をずらすように構成され得る。
【0033】
基礎は、重り部を中央パイプに解放可能かつ選択的にロックするためのロック装置をさらに含み得る。
【0034】
さらに、浮力部および/または重り部および/またはタワーは、タワーが浮力部または重り部に対して移動されるときのタワーおよび/または浮力部および/または重り部に引き起こされる損傷のリスクまたは重大度を低減するために、かつ/または移動の容易さを促進するために、1つまたは複数の誘導装置および/またはクッション装置を備え得る。
【0035】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様による基礎を含むシステムが提供され、このシステムは、基礎上に立つ、風からエネルギーを抽出するための風力タービンをさらに備える。
【0036】
このシステムは、基礎を海底に繋留するための手段をさらに備え得る。基礎を海底に繋留するための手段は、1つまたは複数のアンカーと、基礎をアンカーに接続する1つまたは複数のアンカーワイヤロープ(繊維、ワイヤ、もしくはチェーンなど、または異なるタイプのアンカーワイヤロープの組み合わせ)と、を含み得る。1つまたは複数のアンカーは、1つまたは複数のワイヤロープを使用して、基礎の重り部、浮力部、および/または中央パイプに接続され得る。基礎を繋留するための手段は、繋留装置と呼ぶこともある。
【0037】
中央パイプの上端、または中央パイプから延びている別個の管状部材が、浮力部より上に延び、風力タービンのマストを基礎に連結するために使用され得る。マストは、当業者に知られている任意の手段/装置および/または方法を使用して連結され得る。
【0038】
本発明の第3の態様では、風力タービンを取り付ける方法が提供される。この方法は、
- 本発明の第1の態様に記載の浮体基礎を準備する工程と、
- 浮体基礎にマストを取り付けて、マストを中央パイプに連結する工程と、
- マストの上部にナセルを取り付ける工程と、
- ナセルに複数のロータブレードを装着する工程と、を含み得る。
【0039】
各実施形態において、浮体基礎は、中央パイプを上げ下げするための巻き上げ手段を備えており、この方法は、
- マスト、ナセル、および複数のロータブラストを取り付ける前に、中央パイプを下げ、結果的にマストも下げる工程と、
- マスト、ナセル、および複数のロータブラストを取り付けた後に、中央パイプを上げることによって、風力タービンを上げる工程と、をさらに含み得る。
【0040】
また、風力タービンの保守を実行する方法も説明されており、この方法は、
- 中央パイプを下げ、結果的に風力タービンも下げる工程と、
- 風力タービンの保守を実行する工程と、
- 中央パイプを上げることによって、風力タービンを上げる工程と、を含む。
【0041】
中央パイプの下げ上げは、巻き上げ手段を使用して実行することができる。下げ上げは、浮力部と重り部との間の距離を伸ばすために、複数のウインチのそれぞれから解かれるワイヤロープの長さを、それぞれ増加および減少させることによって実行され得る。
【0042】
風力タービン用の浮体基礎を進水する方法がさらに説明されており、この方法は、
- 本発明の第1の態様による、巻き上げ手段を備える基礎を準備する工程と、
- 重り部を上がった位置に保つ工程と、
- 基礎を海に進水する工程と、を含む。
【0043】
風力タービン用の浮体基礎を輸送する方法がさらに説明されており、この方法は、
- 巻き上げ手段を備える、本発明の第1の態様による基礎を準備する工程と、
- 重り部を上がった位置に保つ工程と、
- 基礎を輸送する工程と、を含む。
【0044】
基礎の輸送は、海上、陸上、または空中での輸送であり得る。上がった位置とは、風力タービンの取り付け前または取り付け後に、重り部が海で取り付けられたときに重り部が典型的に位置する位置よりも、重り部が浮力部に近い位置である。
【0045】
基礎は、巻き上げ手段を使用して、中央パイプを上げることによって、重り部をその上がった位置まで上げることができる。その後、巻き上げ手段を使用して、中央パイプを下げることにより、重り部を操作位置まで下げることができる。
【0046】
重り部を浮力部の近くに保つことは、例えば、輸送中のバランスおよび/または安定性に関連した理由により好都合であり得、および/または重り部がその操作位置にある基礎を受け入れるのに十分な水深がない港で、基礎を海に進水することができるようにするのに好都合であり得る。
【0047】
中央パイプを上げ下げする間、ワイヤを張力が掛かった状態/プレストレスが加えられた状態に保って、揺れ動きを避けること、および/または構造を安定して保つことは、好都合であり得る。
【0048】
基礎は、中央パイプの上げ下げ中にワイヤを張力が掛かった状態に保つためのジャッキを含み得る。上記方法は、中央パイプの上げ下げ中にワイヤロープを張力が掛かった状態に保つためにジャッキを使用する工程を含み得る。上記方法は、ワイヤロープに張力を掛ける工程を含み得る。ワイヤロープに張力を掛ける工程は、巻き上げ手段を利用してワイヤロープに張力を掛ける工程を含み得る。
【0049】
マストは、複数の部分から構成され得る。マストの各部分は次々に取り付けられることができ、典型的には、底部分が最初に取り付けられ、頂部分が最後に取り付けられる。ナセルは、典型的には、マストの他の部分の上に頂部分を取り付けた後に、頂部分に取り付けられ得る。
【0050】
中央パイプは、取り付け中に複数回下げられてもよく、および/または上げられてもよい。中央パイプは、複数の異なる位置に保持/ロックすることができる。そのような位置の1つは、可能な限り低い位置であり得る。別の位置としては、可能な限り高い位置があり得る。その他の位置としては、それらの2つの極端な位置の間の中間位置があり得る。
【0051】
この取り付け手順は、例えば、ナセルおよびブレードを、完全に直立したマストの高さよりも低い高さに取り付けることを可能にし得るため、非常に好都合な取り付け手順であり得る。その結果、取り付け中にマストを下げることができなかった場合と比較して、取り付けにおいて、例えば、機器を持ち上げることに関する要求が緩和され得る。
【0052】
ワイヤロープに張力が掛かることにより、中央パイプに圧縮が加えられ、それにより、曲げ強度が増加し、かつ/またはそうでなければ、基礎の安定性が向上し得る。張力が掛けられたワイヤロープは、プレストレスを加えられていてもよい。ワイヤロープに十分な張力が掛かると、ワイヤロープによって重り部が中央パイプに押し付けられ、中央パイプがロック機構に押し付けられ得る。これは、中央パイプ、ロック機構、および/または重り部のプレテンションにつながり得るものであり、基礎の曲げ荷重に耐える能力にとって、および/または基礎の剛性および安定性を確保するために、非常に有益であり得る。
【0053】
洋上風力タービン用の基礎に安定性をもたらす方法が説明されており、この方法は、
- 重り部と、浮力部と、中央パイプと、ロック機構と、1つまたは複数の巻き上げ手段と、複数のワイヤロープと、を有する基礎を準備する工程であって、重り部および浮力部が中央パイプに連結されており、ロック機構が浮力部を中央パイプにロックしており、ワイヤロープが重り部と浮力部との間に延びて接続されており、複数のワイヤロープがそれぞれ、巻き上げ手段がワイヤロープを引き込むまたは引き出すために、1つまたは複数の巻き上げ手段のうちの少なくとも1つに接続されている、工程と、
- 巻き上げ手段を使用してワイヤロープをプレテンションする工程であって、重り部を中央パイプに押し付け、中央パイプをロック機構に押し付け、それによって中央パイプを圧縮する、工程と、を含む。
【0054】
この方法は、曲げ荷重および剛性に耐える優れた能力を基礎に好都合にもたらすことができ、これは、基礎の安定性に好都合であり得る。
【0055】
第4の態様では、洋上風力タービン用の基礎の安定性を改善する方法が提供されており、この方法は、
- 基礎を準備する工程であって、基礎は、重り部と、風力タービン用のプラットフォームと、アクティブヒーブ補正システムと、を有し、アクティブヒーブ補正システムは、少なくとも1つのワイヤロープと、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つの巻き上げ手段と、少なくとも1つの制御装置と、を備え、アクティブヒーブ補正システムは、風力タービン用のプラットフォ-ムに対する重り部の位置を変更するように構成され、少なくとも1つの巻き上げ手段が、少なくとも1つのワイヤロープに接続され、制御装置が、少なくとも1つのセンサからデータを受信するために少なくとも1つのセンサに接続され、かつ信号を通信して少なくとも1つの巻き上げ手段を操作してワイヤロープを引き出すまたは引き込むために少なくとも1つの巻き上げ手段に接続される、工程と、
- 少なくとも1つの巻き上げ手段を使用して少なくとも1つのワイヤロープをある長さだけ引き出すまたは引き込むことによって重り部に接続された少なくとも1つのワイヤロープに掛かる張力を変更することによって重り部の位置を変更する工程であって、重り部の位置を変更する工程が、少なくとも1つのセンサによって取得されたデータを制御装置が処理し、応答として信号を送信して、少なくとも1つの巻き上げ手段を操作した結果として実行される、工程と、を含む。
【0056】
上記基礎は、本発明の第1の態様による基礎の一実施形態であり得る。風力タービンのプラットフォームは、例えば、基礎の中央パイプの上端部であってよい。重り部の位置の変更は、基礎の中央パイプに対する位置の変更であり得る。基礎のワイヤロープのうち、1より大きい数かまたは全部のうちの1つが、AHCシステムの一部であり、少なくとも1つのセンサによって取得されたデータに応じて重り部の位置を自動的に変更するように構成され得る。
【0057】
アクティブヒーブ補正システムおよび本方法は、タワーを実質的に垂直な位置に能動的に保持することによって、および/または、例えば、ピッチおよびロールを低減することによって、基礎の安定性を改善するために適用され得る。
【0058】
中央パイプは、不均一な外径を有してもよいが、その長さに沿って均一な外径を有することができると都合がよい。中央パイプは、均一な内径を有してもよいが、その長さに沿って不均一な内径を有することができると都合がよい。中央パイプは、その長さに沿って不均一な厚さを有することが好都合であり得る。例えば、中央パイプが、例えば、パイプの垂直方向中間部分において、例えば、最下部または最上部よりも厚いと好都合であり得る。ただし、中央パイプは、最上部または最下部でより厚くなっていてもよい。厚さは、腰折れに耐えるために、例えば中間部分でより大きくなり得ると都合がよい。
【0059】
本発明による基礎は、典型的には、従来技術から知られている他の基礎よりも長さがあり、より深い水深に到達する中央パイプを有することができるため、重り部を比較的深い深さで保持することができる。これにより、重力点を下向きに移動させて、従来技術で知られている設計よりも軽量な設計で、風力タービンを支持するために必要な安定性をもたらすことができる。
【0060】
関連する先行技術文献およびその関連する内容
【0061】
以下に、添付の図面に示される好ましい実施形態の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の第1の態様による基礎の一実施形態の側面図である。
図2】本発明の第2の態様によるシステムの側面図である。
図3】巻き上げ手段を使用して中央パイプを下げた、本発明の第2の態様によるシステムの側面図である。
図4】基礎の一実施形態の上部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
各図に示される実施形態は、本発明の単なる例であり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことに留意されたい。各図に示される実施形態とは異なる構成の他の実施形態は、特許請求の範囲による本発明の範囲内であり得る。
【0064】
図1は、中央パイプ110と、浮力部120と、重り部130と、浮力部120を重り部130に接続する、張力が掛けられた複数のワイヤロープ140とを有する、本発明の第1の態様による基礎1を示す。浮力部120および重り部130は両方とも、中央パイプ110と同軸である。
【0065】
浮力部120は、上部121および下部122を有し、上部121の直径は、下部122の直径よりも大きい。複数のワイヤロープ140は、浮力部120の上部121に締結されており、上部121から重り部130の中間部131まで延びている。
【0066】
浮力部120は、基礎1に浮力を加え、基礎1が風力タービン(図示せず)を支持している間、浮いたままであることを可能にする。重り部130は、中央パイプ110の底部に重量を加えることによって、基礎1の安定性を改善する重心をもたらす。
【0067】
力が、基礎1を傾斜させるようにして基礎1に影響を及ぼしている場合、重力の助けを借りた重り部130が、傾斜を打ち消すことによって安定性をもたらすことになる。傾斜は、中央パイプ110の底部を上向きに揺り動かすことになる。しかしながら、重力が、重り部130に作用して、重り部130を下向きに引っ張ることによりその上向きの動きを打ち消すことによって、傾斜を打ち消すことになる。
【0068】
さらに、傾斜した基礎1の場合、基礎を傾斜させる力は、主に、典型的には、基礎1に取り付けられた風力タービンから、基礎1の水上部分に作用する力である可能性が高い。その力は基礎1を傾斜させ、次に、力は、基礎1の水上部分から中央パイプ110を介して伝達され、重り部130に作用して、重り部130を持ち上げることになる。中央パイプ110は、重り部130を下向きに引っ張る重力に逆らって作用し、重り部130を持ち上げるように作用することになる。これにより、中央パイプ110に曲げ荷重がかかることになる。複数のワイヤロープ140は、基礎1に構造的強度をもたらし、特に、基礎1に、曲げ荷重に耐えるための曲げ強度をもたらすことになる。上記複数のワイヤロープ140を設けることにより、曲げ荷重による何らかの歪みが、中央パイプ110の脆弱な部分から複数のワイヤロープ140のうちの1つまたは複数に移動されることになる。
【0069】
図2は、マスト201および3つのブレード202を含む風力タービン2を支持する基礎1を示す。基礎1は、従来技術と比較して、比較的軽量かつコンパクトであり、これは、構造に曲げ強度を加える複数のワイヤロープ140の創意工夫のある使用によって可能になる。
【0070】
図2および図3は、複数のワイヤロープ140をある長さだけ引き出すまたは引き込むことによって中央パイプを下げ上げさせるための複数のウインチ150を備える基礎1の実施形態を示す。これらの図は、マスト201、ナセル203、およびブレード202が基礎1に取り付けられた風力タービン200を示す。図2では、風力タービン200は、完全に上がった位置にある。図3では、ウインチ150が、ワイヤロープ140をある長さだけ引き出しているため、中央パイプ110および風力タービン200が下がっている。
【0071】
ワイヤロープ140は、これらの図において、浮力部120への接続から重り部130への接続へと中央パイプ110に向かって内側向きに延びて示されているが、それらは逆方向に接続されてもよく、浮力部120への接続から重り部130への接続と中央パイプ110に向かって外側向きに延びてもよい。
【0072】
図2の実施形態は、基礎1の安定性に関連する条件についての情報を収集するための2つのセンサ601に接続された制御装置602を含むアクティブヒーブ補正システムをさらに備える。制御装置602はさらに、ウインチ150に接続されており、センサ601によって収集されたデータに応答してウインチを操作し、1つのウインチ150によって操作される1つのワイヤであるワイヤロープ140を、ある長さだけ引き出すかまたは引き込む。
【0073】
図4は、本発明の第1の態様による基礎1の上部分の断面図を示す。基礎1は、中間タワー部111を介してマスト201に連結された中央パイプ110を含む。さらに、図4は浮力部120を示す。第1のロック機構161および第2のロック機構162を備える浮力部120が示されており、第1のロック機構161は、浮力部120を中間タワー部111に解放可能にロックし、第2のロック機構162は、浮力部120を中央パイプ110に解放可能にロックする。
【0074】
さらに、浮力部120は、中央パイプ110、中間タワー部111、および/またはマスト201に対する浮力部120の移動を可能にするための上部および下部ガイド装置171を備える。
【0075】
上記の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示し、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施形態を設計することができるであろうことに留意されたい。請求項において、括弧の間に配置された参照記号は、請求項を制限するものと解釈されないものとする。動詞「備える、含む(comprise)」とその活用形の使用は、請求項に記載されているもの以外の要素または工程の存在を排除するものではない。要素に先行する冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。
【0076】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを都合良く使用することができないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4