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特許7451677二成分毒素を担った抗体薬物複合体及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】二成分毒素を担った抗体薬物複合体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240311BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240311BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240311BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240311BHJP
   C07K 5/00 20060101ALN20240311BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240311BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/05
A61K45/00
A61K31/454
A61K31/4745
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/02
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K47/64
A61K47/55
A61P43/00 121
A61K47/65
A61K31/506
C07K5/00
C07K16/46
C07K16/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022503434
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2021107079
(87)【国際公開番号】W WO2023000131
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519463064
【氏名又は名称】煙台邁百瑞国際生物医薬股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MabPlex International Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.60, Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong) Pilot Free Trade Zone Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 長江
(72)【発明者】
【氏名】孫 友祥
(72)【発明者】
【氏名】熊 就凱
(72)【発明者】
【氏名】孔 娜娜
(72)【発明者】
【氏名】閻 新新
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523469(JP,A)
【文献】国際公開第2015/057876(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108743966(CN,A)
【文献】特開2018-118953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式を有する抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、Abは、抗体またはその抗原結合フラグメントであり、
Sは、前記Abでの鎖間ジスルフィド結合が開いた後に形成されるスルフヒドリル残基の硫黄原子であり、
Aaは、1つまたは複数のアミノ酸を含むアミノ酸ユニットであり、
Gは、選択的な分解ユニットであり、
1は、MMAFであり、
2は、PARP阻害剤、Dxd、SN38、エキサテカン又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる、MMAFとは異なる第2の有効薬剤ユニットであり、
pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれた整数である。)
【請求項2】
前記Abは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体の全体又は抗原結合フラグメントである、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2を含み、前記抗体は、二重特異性抗体又は多重特異性抗体を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記Abは、ヒトIgG1又はヒトIgG4の抗体のFcドメイン及び/又はヒンジ領域ドメイン、又はその一部のアミノ酸が変異、置換、欠失された形を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記第1の有効薬剤ユニットD1は、下記の構造、又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、又はそれらの薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
【請求項6】
前記PARP阻害剤はMK4827である、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記アミノ酸ユニットAaは、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-リジン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リジン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、-イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記分解ユニットGは、存在しないか、又は下記の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
(式中、R1、R2は任意の置換基であり、好ましくは、R1及びR2は、独立してH又はC1~C10アルキル基から選ばれ、又は
【化4】
である。)
【請求項9】
前記抗体薬物複合体は、下記の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化5】
(式中、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれた整数である。)
【請求項10】
がん、感染性疾患、又は自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
構造が下記の式で示される中間体化合物。
【化6】
(式中、Aaは、1つ又は複数のアミノ酸を含むアミノ酸ユニットであり、
Gは、選択的な分解ユニットであり、
1は、MMAFであり、
2は、PARP阻害剤、Dxd、SN38、エキサテカン又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物からなる群より選択される、MMAFとは異なる第2の有効薬剤ユニットである。)
【請求項12】
前記第1の有効薬剤ユニットD1は、下記の構造、又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる、ことを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【化7】
【請求項13】
前記PARP阻害剤は、MK4827である請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
前記アミノ酸ユニットAaは、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-リジン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リジン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、-ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、-イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記分解ユニットGは、存在しないか、又は下記の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項11~14のいずれか一項に記載の化合物。
【化8】
(ここで、R1、R2は任意的な置換基であり、好ましくは、R1及びR2は、独立してH又はC1~C10アルキル基から選ばれ、又は
【化9】
である。)
【請求項16】
前記化合物は、下記の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【化10】
【請求項17】
がん、感染性疾患、又は自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、請求項11~16のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
請求項11に記載の化合物を合成する方法であって、前記方法の合成ルートは、以下のとおりの、
【化11】
化合物Fmoc-Aa-G、第2の有効薬剤ユニットD2、有機塩基1を適量の有機溶剤1に溶解し、それらを接触させて反応させ、化合物Fmoc-Aa-G-D2を得るステップ1と、
化合物Fmoc-Aa-G-D2から保護基であるFmocを脱離させ、化合物Aa-G-D2を得るステップ2と、
化合物Aa-G-D2、化合物Mc-D1、縮合剤1を適量の有機溶剤2に溶解し、それらを接触させて反応させ、化合物Mc-D1-Aa-G-D2を得るステップ3と、を含む方法において、
前記有機塩基1は、N,Nジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンから選ばれる一種又は複数種であり、前記有機溶剤1及び有機溶剤2は、それぞれ独立して、DMF及びDMAから選択される一種又は二種であり、前記縮合剤1は、TSTU、HATU、HBTU、HCTU、PyBop、CDMT、T3Pから選ばれる一種又は複数種であり、Aa、G、D1、D2は請求項11に記載の通りである、ことを特徴とする合成方法。
【請求項19】
前記化合物は、請求項16に示される構造から選ばれ、前記合成ルートは、以下から選ばれる、ことを特徴とする請求項18に記載の合成方法。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体薬物複合体の分野に関し、具体的には、1つの抗体を介して二成分毒素を担った抗体薬物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)とは、化学的なリンカー(Linker)を介して生物学的活性を持つ薬物(Drug)と抗体(Antibody)を連結した生物学的薬物である。ADCは、精密誘導兵器システムのようなものであり、生物学的活性を持つ薬物が抗体の誘導の下で病気の細胞を正確に攻撃する致死の弾薬として働く。したがって、ADCは、細胞毒性薬分子の高効率と抗体の高ターゲティングという2つの利点を兼ね備えている。
【0003】
2021年3月現在、世界で承認されている抗体結合薬は11種類(表1を参照)だけであり、それらは、すべて一つの標的抗体が1つの毒素分子と複合化したADC分子である。腫瘍細胞の表面での抗原の数が限られているため、効果的なADC活性に必要な抗原発現のレベルは、さまざまな抗原の特性によって異なってくる。ADCは、致死量の細胞毒性薬の送達を確保するために、少なくとも104個の抗原/cellを必要とする。理想的な場合には、ADCの抗体部分が標的とする抗原は、腫瘍細胞の表面で均一に発現し、かつ、高コピー数(>105/cell)を持つ必要がある。実際には、腫瘍細胞の表面に通常限られた数の抗原しかなく(約5000から106個の抗原/cell)、ADCの理想的な平均DAR値が3.5~4(例えば、Brentuximab vedotinの平均DAR値は4、Trastuzumab emtansineの平均DAR値は3.5)であり、腫瘍細胞に送達される薬剤の量が非常に少ないために、腫瘍細胞への薬効が低い。これもADCが臨床的に失敗した主な理由の1つであると考えられている。
【0004】
【表1】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明は、二成分毒素を担う可能な抗体薬物複合体を提供する。具体的には、本発明は、下記の構造を含む抗体薬物複合体を提供する。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、
Abは、抗体又は抗原結合フラグメントであり、
Sは、前記Abでの鎖間ジスルフィド結合が開いた後に形成されるスルフヒドリル残基の硫黄原子であり、
Aaは、1つ又は複数のアミノ酸を含むアミノ酸ユニットであり、
Gは、選択的な分解ユニットであり、
1は、MMAFであり、
2は、MMAFとは異なる第2の有効薬剤ユニットであり、
pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれた整数である。
【0008】
抗体又はその抗原結合フラグメントAbは、がん、感染性疾患、又は自己免疫疾患に関連する抗原又は前記抗原のエピトープとの反応性を有する。任意選択的に、Abは、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類動物化抗体、ヒト化抗体、又はヒトモノクローナル抗体の完全、断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2など)又はサブ断片(例えば、一本鎖コンストラクトなど)の形であり、前記抗体には、二重特異性抗体又は多重特異性抗体が含まれる。任意選択的に、Abは、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類動物化抗体、ヒト化抗体、又はヒトモノクローナル抗体の完全な形態であり、また、前記Abは、ヒトIgG1又はヒトIgG4抗体のFcドメイン及びヒンジドメイン或いはその一部のアミノ酸が変異、置換、又は欠損した形である。
【0009】
第1の有効薬剤ユニットD1は、アウリスタチン(auristatin)類の細胞毒性剤から選ばれる。好ましくは、前記第1の有効薬剤ユニットD1は、遊離カルボキシルを含む。
【0010】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1は、下記の構造又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる。
【0011】
【化2】
【0012】
第2の有効薬剤ユニットD2は、細胞毒性分子、免疫増強剤、及び放射性同位体から選ばれる。前記細胞毒性分子は、チューブリン阻害剤、DNA損傷剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ALK阻害剤、PARP阻害剤を含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、前記チューブリン阻害剤は、ドラスタチン(dolastatin)やアウリスタチン(auristatin)類の細胞毒性分子、マイタンシン(maytansine)類の細胞毒性分子を含むが、これらに限定されない。前記DNA損傷剤は、カリケアマイシン(calicheamicin)類、デュオカルマイシン(duocarmycin)類、アントラマイシン類誘導体PBDを含む。前記トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプトテシン(camptothecins)、及びカンプトテシン類誘導体を含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、前記アウリスタチン(auristatin)類の細胞素分子は、MMAE、又はMMAF又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。前記マイタンシン類の細胞毒性分子は、DM1、DM4又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0013】
幾つかの好適な実施形態においては、第2の有効薬剤ユニットD2は、ALK阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤から選ばれる。
【0014】
幾つかのより好適な実施形態においては、第2の有効薬剤ユニットD2は、下記の構造又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる。
【0015】
【化3】
【0016】
幾つかの好適な実施形態においては、第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとSN38である。
【0017】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとMK4827である。
【0018】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとセリチニブ(Ceritinib)である。
【0019】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとDxdである。
【0020】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとエキサテカン(Exatecan)である。
【0021】
アミノ酸ユニットAaは、1つのアミノ酸を含むことができ、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選ばれることができ、好ましくは、前記AAは、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。
【0022】
アミノ酸ユニットAaは、2つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選択される。
【0023】
アミノ酸ユニットAaは、3つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。
【0024】
アミノ酸ユニットAaは、4つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。ここで、nは、0及び1から選ばれる整数であり、nは0である場合、AA4とD2とは直接に共有結合している。
【0025】
幾つかの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-リジン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リジン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、-ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、-イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれる。
【0026】
別の幾つかの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)である。
【0027】
別の幾つかの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる。
【0028】
任意選択的に、前記アミノ酸ユニットAaの構造は、下記の構造から選ばれることができる。
【0029】
【化4】
【0030】
幾つかの具体的な実施形態においては、前記自己分解ユニットGは、存在しないか、又は下記の構造から選ばれる。
【0031】
【化5】
【0032】
(ここで、R1、R2は、任意的な置換基であり、好ましくは、R1及びR2は、独立してH又はC1~C10アルキル基から選ばれ、又は
【0033】
【化6】
【0034】
である。)
【0035】
自己分解ユニットGが存在しない場合、アミノ酸ユニットAaにおける最後のその1つのアミノ酸基と第2の有効薬剤ユニットD2とは共有結合している。
【0036】
任意選択的に、前記自己分解ユニットGは、下記の構造から選ばれる。
【化7】
【0037】
幾つかの具体的な実施形態においては、前記抗体薬物複合体は、下記の構造から選ばれる。
【0038】
【化8】
【0039】
(ここで、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれた整数である。)
【0040】
さらに、本発明は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、上記のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体の使用に関する。
【0041】
前記がんとは、血腫瘍、癌、肉腫、黒色腫、又はグリア腫瘍を指し、例えば、乳がん、卵巣がん、子宮頸かん、子宮かん、前立腺がん、腎がん、尿道がん、膀胱かん、肝臓かん、胃かん、子宮内膜かん、唾液腺かん、食道かん、肺かん、結腸かん、直腸かん、結腸・直腸かん、骨がん、皮膚かん、甲状腺がん、膵臓がん、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、多形膠芽腫、肉腫、リンパ腫、及び白血病などの固形腫瘍又は血液腫瘍から非限定的に選ばれる。
【0042】
前記自己免疫疾患とは、身体の組織に対する体の免疫反応によって引き起こされる病気を指す。例えば、免疫介在性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、関節リウマチ、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェーライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アディソン病、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発筋痛症、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、肺線維症、及び若年性糖尿病、並びに新たに発生した疾患を含むが、これらに限定されない。
【0043】
前記感染性疾患とは、主に病原性の生物学的感染症を指し、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核菌、ストレプトコッカス・アガラクティアエ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿性レンサ球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、ウエストナイルウイルス、緑膿菌、らい菌、バチルス・アボートス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウィルス、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、ヒトパルボウイルス、レスピラトリーシンシチアルウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、いぼウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳房腫瘍ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ、トリパノソーマ原虫、クルーズトリパノソーマ、ローデシアのトリパノソーマ、ブルーストリパノソーマ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、牛バベシア、ニワトリ盲腸コクシジウム、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア虫、タエニアヒダチゲラ(Taenia hydatigera)、拡張条虫、ビーフサナダムシ、エキノコックスグラニュロサス、Mesocestoidescorti、関節炎マイコプラズマ、マイコプラズマ・ハイオリニス、口腔マイコプラズマ、アルギニンマイコプラズマ、アコレプラズマ・ライドラウィー、唾液マイコプラズマ、及び肺炎マイコプラズマ、並びに新たに発生した疾患を含むが、これらに限定されない。
【0044】
さらに、本発明は、下記の式で示される構造を有する中間体化合物を提供する。
【0045】
【化9】
【0046】
ただし、Aaは、1つまたは複数のアミノ酸を含むアミノ酸ユニットであり、
Gは、選択的な分解ユニットであり、
1は、MMAFであり、
2は、MMAFとは異なる第2の有効薬剤ユニットである。
【0047】
第1の有効薬剤ユニットD1は、アウリスタチン(auristatin)類細胞毒性剤から選ばれる。好ましくは、前記第1の有効薬剤ユニットD1は、遊離カルボキシルを含む。
【0048】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1は、下記の構造又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる。
【0049】
【化10】
【0050】
第2の有効薬剤ユニットD2は、細胞毒性分子、免疫増強剤、及び放射性同位体から選ばれる。前記細胞毒性分子は、チューブリン阻害剤、DNA損傷剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ALK阻害剤、PARP阻害剤を含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、前記チューブリン阻害剤は、ドラスタチン(dolastatin)やアウリスタチン(auristatin)類の細胞毒性分子、マイタンシン(maytansine)類の細胞毒性分子を含むが、これらに限定されない。前記DNA損傷剤は、カリケアマイシン(calicheamicin)類、デュオカルマイシン(duocarmycin)類、アントラマイシン類誘導体PBDを含むが、これらに限定されない。前記トポイソメラーゼ阻害剤には、カンプトテシン(camptothecins)、及びカンプトテシン類誘導体を含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、前記アウリスタチン(auristatin)類の細胞素分子は、MMAE、又はMMAF又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。前記マイタンシン類の細胞毒性分子は、DM1、DM4又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0051】
幾つかの好適な実施形態においては、第2の有効薬剤ユニットD2は、ALK阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤から選ばれる。
【0052】
幾つかのより好適な実施形態においては、第2の有効薬剤ユニットD2は、下記の構造又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物から選ばれる。
【0053】
【化11】
【0054】
幾つかの好適な実施形態においては、第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとSN38である。
【0055】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとMK4827である。
【0056】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとセリチニブ(Ceritinib)である。
【0057】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとDxdである。
【0058】
幾つかの好適な実施形態においては、前記第1の有効薬剤ユニットD1と第2の有効薬剤ユニットD2は、それぞれMMAFとエキサテカン(Exatecan)である。
【0059】
アミノ酸ユニットAaは、1つのアミノ酸を含むことができ、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選ばれてもよい。好ましくは、前記AAは、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。
【0060】
アミノ酸ユニットAaは、2つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。
【0061】
アミノ酸ユニットAaは、3つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。
【0062】
アミノ酸ユニットAaは、4つのアミノ酸を含むことができ、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立して、-グリシン-、-アラニン-、-バリン-、-ロイシン-、-イソロイシン-、-プロリン-、-フェニルアラニン-、-トリプトファン-、-メチオニン-、-チロシン-、-セリン-、-スレオニン-、-システイン-、-アスパラギン-、-グルタミン-、-アスパラギン酸-、-グルタミン酸-、-リジン-、-アルギニン-、-ヒスチジン-、-シトルリン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-から選択される。好ましくは、上記のアミノ酸は、-バリン-、-シトルリン-、-アラニン-、-リジン-、-リジン(トリチル)-、-リジン(モノメトキシトリチル)-、-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-、-アルギニン-、-フェニルアラニン-、-グリシン-、-ロイシン-、-イソロイシン-から選ばれる。nは、0及び1から選ばれる整数であり、nは0である場合、AA4とD2とは、直接に共有結合している。
【0063】
幾つの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-リジン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リジン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リジン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リジン(フルオレニルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、-ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、-イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれる。
【0064】
別の幾つかの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)である。
【0065】
別の幾つかの好適な実施形態においては、前記アミノ酸ユニットAaは、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-),-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる。
【0066】
任意選択的に、前記アミノ酸ユニットAaの構造は、以下の構造から選ばれることができる。
【0067】
【化12】
【0068】
幾つかの具体的な実施形態においては、前記自己分解ユニットGが、存在しないか、又は下記の構造から選ばれる。
【0069】
【化13】
【0070】
(ここで、R1、R2は任意的な置換基であり、好ましくは、R1及びR2は、独立してH又はC1~C10アルキル基から選ばれ、又は
【0071】
【化14】
【0072】
である。)
【0073】
自己分解ユニットGが存在しない場合、アミノ酸ユニットAaにおける最後のその1つのアミノ酸基と第2の有効薬剤ユニットD2とは共有結合している。
【0074】
任意選択的に、前記自己分解ユニットGは、下記の構造から選ばれる。
【0075】
【化15】
【0076】
幾つかの具体的な実施形態においては、前記化合物は、下記の構造から選ばれる。
【0077】
【化16】
【0078】
さらに、本発明は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における上記のいずれか一項に記載の化合物の使用を提供する。
【0079】
さらに、本発明は、前記中間体化合物の合成方法であって、前記方法の合成ルートは、以下の通りであり、
【0080】
【化17】
【0081】
化合物Fmoc-Aa-G、第2の有効薬剤ユニットD2、有機塩基1を適量の有機溶剤1に溶解し、それらを接触させて反応させ、化合物Fmoc-Aa-G-D2を得るステップ1と、
化合物Fmoc-Aa-G-D2から保護基であるFmocを脱離させ、化合物Aa-G-D2を得るステップ2と、
化合物Aa-G-D2、化合物Mc-D1、縮合剤1を適量の有機溶剤2に溶解し、それらを接触させて反応させ、化合物Mc-D1-Aa-G-D2を得るステップ3とを含む方法において、
前記有機塩基1は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンから選ばれる一種又は複数種であり、前記有機溶剤1と有機溶剤2は、それぞれ独立して、DMF、DMAから選択される一種又は二種であり、前記縮合剤1は、TSTU、HATU、HBTU、HCTU、PyBop、CDMT、T3Pから選ばれる一種又は複数種であることを特徴とする方法を提供する。
【0082】
幾つかの具体的な実施形態においては、さらに、本発明は、上記の合成方法により、特定の中間体化合物を製造する合成ルートを提供し、上記合成ルートが以下から選ばれることを特徴とする。
【0083】
【化18】
【0084】
【化19】
【0085】
【化20】
【0086】
【化21】
【0087】
【化22】
【0088】
本発明者は、驚くべきことに、抗体の一つのシステイン結合部位でMMAFをリンカーを介して別の薬剤ユニットと直列に連結すると、両者は顕著な相乗効果を発揮することができ、それによって腫瘍細胞を殺す効果を効果的に向上させる、ことを発見した。これは、高効率で低毒性のADCを開発するための新しい手段を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
[定義]
【0090】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者の一般的な理解と一致している。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が本明細書に記載されている。本発明を説明するか又はその保護を請求する場合、以下の用語は以下の定義に従って使用される。
【0091】
本発明において商品名が使用される場合、出願人は、該商品名を付けた製品の製剤、該商品名を付けた製品のジェネリック医薬品及びその有効部分を含めることを意図している。
【0092】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語は、以下と同じ意味を有する。
【0093】
本発明で使用される「抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate、ADC)」という用語は、抗体又は抗原結合フラグメントと、連結ユニットと、有効薬剤ユニットとを化学反応によって結合した化合物を指し、通常、その構造は、抗体または抗体類リガンド、薬剤部分(即ち、有効薬剤ユニット)、及び抗体又は抗体類リガンドと薬剤部分とを複合化させる連結ユニット(リンカー)の3つの部分で構成される。
【0094】
本発明で使用される「抗体」という用語は、標的細胞に関連する抗原又は受容体を認識して結合できる高分子化合物を指す。抗体は、薬を抗体と結合する標的細胞群に提示する機能として働く。これらの抗体は、タンパク質型ホルモン、レクチン、成長因子、抗体及び細胞と結合できる他の分子を含むが、これらに限定されない。幾つかの特定の実施形態においては、前記抗体と結合する抗原は、炭酸脱水酵素IX、B7、CCCL19、CCCL21、CSAp、HER2/neu、BrE3、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、CEACAM6、アルファ・フェトプロテイン(AFP)、VEGF、EDBフィブロネクチン、EGP1、EGP2、EGF受容体(ErbB1)、ErbB2、ErbB3、因子H、FHL1、Flt3、葉酸受容体、Ga733、GROB、HMGB1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、HER2/neu、インスリン様成長因子(ILGF)、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL2R、IL4R、IL6R、IL13R、IL15R、IL17R、IL18R、IL2、IL6、IL8、IL12、IL15、IL17、IL18、IL25、IP10、IGF1R、Ia、HM1.24、ガングリオシド、HCG、HLADR、CD66ad、MAGE、McRP、McP1、MIP1A、MIP1B、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、胎盤成長因子(PlGF)、PSA(前立腺特異抗原)、PSMA、PSMA二量体、PAM4抗原、NCA95、NCA90、A3、A33、EpCAM、KS1、Le(y)、メソテリン、S100、テネイシン、TAC、Tn抗原、ThomasFriedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管新生抗原、TNFα、TRAIL受容体(R1和R2)、VEGFR、RANTES、T101、がん幹細胞抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、及びオンコジーンの産物からなる抗原に結合するが、これらに限定されない。
幾つかの具体的な実施形態においては、前記抗体は、抗EGFRvIII抗体、抗DLL-3抗体、抗PSMA抗体、抗CD70抗体、抗MUC16抗体、抗ENPP3抗体、抗TDGF1抗体、抗ETBR抗体、抗MSLN抗体、抗TIM-1抗体、抗LRRC15抗体、抗LIV-1抗体、抗CanAg/AFP抗体、抗cladin18.2抗体、抗Mesothelin抗体、抗HER2(ErbB2)抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体、抗SLITRK6抗体、抗KIT/CD117抗体、抗STEAP1抗体、抗SLAMF7/CS1抗体、抗NaPi2B/SLC34A2抗体、抗GPNMB抗体、抗HER3(ErbB3)抗体、抗MUC1/CD227抗体、抗AXL抗体、抗CD166抗体、抗B7-H3(CD276)抗体、抗PTK7/CCK4抗体、抗PRLR抗体、抗EFNA4抗体、抗5T4抗体、抗NOTCH3抗体、抗Nectin4抗体、抗TROP-2抗体、抗CD142抗体、抗CA6抗体、抗GPR20抗体、抗CD174抗体、抗CD71抗体、抗EphA2抗体、抗LYPD3抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR3抗体、抗FRα抗体、抗CEACAMs抗体、抗GCC抗体、抗Integrin Av抗体、抗CAIX抗体、抗P-cadherin抗体、抗GD3抗体、抗Cadherin6抗体、抗LAMP1抗体、抗FLT3抗体、抗BCMA抗体、抗CD79b抗体、抗CD19抗体、抗CD33抗体、抗CD56抗体、抗CD74抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD37抗体、抗CD138抗体、抗CD352抗体、抗CD25抗体、または抗CD123抗体、及び新たに発見された標的抗体を含むが、これらに限定されない。
【0095】
本発明に係る抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類動物化、ヒト化抗体(即ち、ヒト化)、及び完全ヒト化抗体(即ち、ヒト)が含まれ、好ましくはヒト化抗体、及び完全ヒト化抗体が含まれる。
【0096】
「マウス抗体」という用語は、本明細書において、当技術分野の知識及び技能に基づくマウスを用いて調製した抗体を指す。調製中、特定の抗原を試験対象へ注射した後、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現するハイブリッドを単離する。
【0097】
「キメラ抗体(chimeric antibody」という用語は、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域とを融合することによって形成される抗体であり、マウス抗体によって誘導される免疫応答を低下させることができる。キメラ抗体を構築するには、まずマウス由来の特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを構築し、その後、マウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローン化し、次に必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローン化し、マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子を連結してキメラ遺伝子を形成し、発現ベクターに挿入し、最終的に真核生物系または原核細胞系でキメラ抗体分子を発現させる。
【0098】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域フレームワーク、即ち、さまざまな種類のヒト生殖細胞系列抗体フレームワーク配列に移植して産生される抗体である。キメラ抗体が持つ多量のマウスタンパク質成分によって誘発されるアロ(alloreactivity)反応を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列型抗体遺伝子を含む公開DNAデータベース又は公開された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(www.mrccpe.com/ac.uk/vbaseから取得可能)、及び「Kabat,E.A.ら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版」から取得できる。また、免疫原性の低下につれて引き起こされる活性の低下を回避するために、前記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列は最小限の逆突然変異又は復帰突然変異を行うことで、その活性を維持することができる。さらに、本発明のヒト化抗体は、ファージディスプレイによってCDRに対して親和性成熟を行ったヒト化抗体も含む。また、マウス抗体を使用できるヒト化に使用できる方法をさらに説明する文献には、例えば、「Queenら,Proc.,Natl.Acad.Sci.USA,88,2869,1991」及びWinterと同僚の方法「Jones.,Nature,321,522,(1986)」、Riechmannら「Nature,332,323-327,1988」,Verhoeyenら,「Science,239,1534(1988)」が含まれる。
【0099】
「完全ヒト化抗体」、「完全ヒト抗体」、又は「完全ヒト型抗体」、「ヒト抗体」という用語は、「完全ヒトモノクローナル抗体」とも呼ばれ、その抗体の可変領域と定常領域ともヒトのものであり、免疫原性と有害・副作用が除去される。モノクローナル抗体の開発は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、及び完全ヒトモノクローナル抗体の4つの段階を経てきた。本発明は、完全ヒトモノクローナル抗体である。完全ヒト抗体の調製に関する技術には、主にヒトハイブリドーマ技術、EBV形質転換Bリンパ球技術、ファージディスプレイ技術(phage display)、トランスジェニックマウス抗体調製技術(transgenic mouse)、及び単一B細胞抗体調製技術などがある。
【0100】
本発明で使用される「抗原結合フラグメント」という用語は、特異的に抗原に結合する能力を維持する抗体の1つ又は複数の断片を指す。「抗原結合フラグメント」に含まれる結合断片の実例には、(i)Fab断片:VL、VH、CL、及びCH1ドメインで構成される一価断片、(ii)F(ab’)2断片:ヒンジ領域でのジスルフィド架橋を介し
て連結されている2つのFab断片を含む2価の断片、(iii)VHとCH1ドメインで構成されるFd断片、(iv)抗体の片方のアームのVH及びVLドメインで構成されるFv断片、(v)単一ドメイン又はdAb断片(Wardら,(1989)Nature341:544~546):VHドメインで構成されるもの、及び(vi)孤立した相補性決定領域(CDR)、又は(vii)任意選択的に合成リンカーを介して連結されている2つ又はそれ以上の単離CDRの組み合わせ、が含まれる。なお、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされたが、組換え手法で合成リンカーを介して連結することができ、それによってその中のVLとVH領域がペアになって一価分子を形成する単一のタンバク質鎖として生産されることが可能となる(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、「Birdら,(1988)Science242:423~426」及び「Hustonら,(1988)Proc.NatL.Acad.Sci.USA85:5879~5883」に参照)。このような単鎖抗体も抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることを意図している。そのような抗体断片は、当業者に知られている従来の技術により得られ、また、その断片は、インタクト抗体に対する方法と同一の方法で、機能性に基づいてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術又はインタクト免疫グロブリンの酵素的切断又は化学的切断によって生産することができる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はlgM抗体であることができる。
【0101】
Fabという用語は、プロテアーゼパパイン(H鎖の224番目のアミノ酸残基を切断)を用いてIgG抗体分子を処理して得られた断片のうちの約50,000の分子量を有し、かつ、抗原結合活性を有する抗体断片であり、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体とはジスルフィド結合によって結合されている。
【0102】
F(ab’)2という用語は、IgGヒンジ領域にある2つのジスルフィド結合の下部
をペプシン酵素で消化して得られた、分子量が約100,000であり、抗原結合活性を有し、ヒンジ位置で連接されている2つのFab領域を含む抗体断片である。
【0103】
Fab’という用語は、上記のF(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断
することによって得られた分子量が約50,000であり、抗原結合活性を有する抗体断片である。また、Fab’は、抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物発現ベ
クター又は真核生物発現ベクターに挿入し、ベクターを原核生物又は真核生物に導入してFab’を発現させることにより、産生することができる。
【0104】
「単鎖構築体」という用語は、「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」を含むが、これらに限定されず、リンカーによって接続された抗体重鎖可変ドメイン又は領域(即ち、VH)と抗体軽鎖鎖可変ドメイン又は領域(即ち、VL)とを含む分子を意味している。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH、又は、NH2-VH-リンカー-VL-COOHのような一般構造を有することができる。適切な従来技術のリンカーは、重複しているGGGGSアミノ酸配列又はその変異体で構成され、例えば、1~4個の重複している変異体(Holligerら,1993),proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448)を使用する。本発明に用いられる他のリンカーは、例えば、Alfthanら(1995),Protein Eng.8:725~731,Choiら,(2001),Eur.J.Immuno 1.31:94~106,Huら(1996),Cancer Res.56:3055~3061,Kipriyanovら(1999),J.Mol.Biol.293:41~56、及びRooversら(2001),Cancer Immunol.に記載されている。
【0105】
実際の任意の標的抗原に対する抗体又はその抗原結合フラグメントを調製するための技術は、当分野において知られている。例えば、「KohlerとMilstein,Nature 256:495(1975)」、及び「Coliganら(著),CURRENTPROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(免疫学最新実験方案),第1巻,第2.5.12.6.7頁(John Wiley&Sons,1991)」を参照する。要するに、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射し、脾臓を除去してBリンパ球を取得し、該Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成し、該ハイブリドーマをクローニングし、該抗原に対する抗体を生産する陽性クローンを選び、該抗原に対する抗体を生産する該クローンを培養し、該ハイブリドーマ培養物から抗体を単離することにより得られる。抗体は、十分に構築された多くの技術によってハイブリドーマ培養物から単離及び精製することができる。このような分離技術には、プロテインA又はプロテインGのアガロースアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。例えば、「Coligan,第2.7.1~2.7.12頁及び第2.9.1~2.9.3頁」を参考されたい。また、「Bainesら,Purification of Immunoglobulin G(IgG)(免疫グロブリンG(IgG)の精製)」、「METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(分子生物方法),第10巻,第79104頁(The Humana Press,Inc.1992)」を参照する。免疫原に対する抗体は、最初に誘発された後に、該抗体が配列決定され、そして組換え技術によって調製することが可能である。マウス抗体及び抗体断片のヒト化及びキメラ化は、当業者によく知られている。
【0106】
「連結ユニット」という用語は、一端が抗体/抗原結合フラグメントに連結し、他端が薬に連結する化学構造断片又は結合を指し、従って、「ブリッジ」として抗体/抗原結合フラグメントと薬分子とを一緒に連結する。「連結ユニット」は、連結ヘッド、スペーサー、及びアミノ酸ユニットを含むことができ、例えば、US2005-0238649A1に記載されたような当分野の周知の方法により合成することができる。本明細書で使用されるように、「連結ユニット」は、切断不可能なリンカーと切断可能なリンカーとに分けることができる。
【0107】
切断不可能なリンカーは、比較的安定したリンカーであり、その構造は体内環境で分解及び切断しにくいである。切断不可能なリンカーを含む抗体薬物複合体は、その薬剤放出メカニズムは、結合体が抗原に結合して細胞によってエンドサイトーシスされた後、抗体がリソソームで酵素加水分解を受け、薬とリンカーと抗体アミノ酸残基と一緒に構成した有効分子が放出される。これによる薬分子の構造の変化は、それらの細胞毒性を低下させないが、有効分子が帯電しているため(アミノ酸残基)、隣接する細胞に浸透することはできない。従って、このような有効薬剤は、標的抗原を発現しない(抗原陰性細胞)隣接する腫瘍細胞(傍観者効果、bystander effect)「Bioconjugate Chem.2010,21,5-13」を殺すことはできない。例えば、Mcリンカー、及びMccリンカーなどのよく見られるリンカーは、下記の構造で示される。
【0108】
【化23】
【0109】
切断可能なリンカーは、名称から分かるように、標的細胞内で切断して有効薬剤(小分子医薬品本身)を放出することができる。切断可能なリンカーは、化学的に不安定なリンカーと酵素に不安定なリンカーの2つの種類に分類することができる。
【0110】
化学的に不安定なリンカーは、血漿と細胞質の特性の違いによって選択的に切断されることがある。このような性質には、pH値、グルタチオンの濃度などが含まれる。
【0111】
pH値に敏感なリンカーは、通常、酸切断リンカーとも呼ばれる。このようなリンカーは、血液の中性環境(pH7.3~7.5)下で比較的安定しているが、弱酸性エンドソーム(pH5.0~6.5)及びリソソーム(pH4.5~5.0)で加水分解される。第一世代の抗体薬物複合体のほとんどは、例えば、ヒドラゾン、炭酸塩、アセタール、ケタールといったリンカーを使用する。酸切断リンカーは血漿安定性が限られているため、このようなリンカーに基づく抗体薬物複合体は、通常、半減期が短い(2~3日)ことが多い。このような短い半減期は、新世代の抗体薬物複合体におけるpH敏感リンカーの適用をある程度制限する。
【0112】
グルタチオンに敏感なリンカーは、ジスルフィド結合リンカーとも呼ばれる。薬剤放出は、細胞内でのグルタチオンの高濃度(ミリモル範囲)と血中での比較的低濃度のグルタチオン(マイクロモル範囲)との違いに基づいて引き起こされる。特に腫瘍細胞にとっては、その酸素含有量が低いと還元酵素の活性を増加させるため、グルタチオン濃度がより高くなる。ジスルフィド結合は、熱力学的に安定しているため、プラズマ中で良い安定性を持つ。
【0113】
例えばペプチドリンカーなどの酵素に不安定なリンカーは、薬剤放出をよりよく制御することができる。ペプチドリンカーは、例えばカテプシン(Cathepsin B)又はプラスミン(一部の腫瘍組織では、このような酵素の含有量が増加する)のリソソーム内のプロテアーゼによって効果的に切断させることができる。このペプチド結合は、血漿循環において非常に安定していると考えられ、これは、細胞外の不適切なpH値と血清プロテアーゼ抑制剤によって、通常、プロテアーゼが細胞外で不活性になるためである。高い血漿安定性、良好な細胞内の切断選択性および有効性の点から、酵素に不安定なリンカーは、抗体薬物複合体の切断可能なリンカーとしてよく用いられている。
【0114】
自殺型リンカーは、一般に、切断可能なリンカーと有効薬剤との間に組み込んでいるか、又はその自体が切断可能なリンカーの一部である。自殺型リンカーの作用機序は、切断可能なリンカーが適切な条件下で切断されると、自殺型リンカーが自発的に構造を再配列でき、ひいてはそれに連結された有効薬物を放出することにある。よく見られる自殺型リンカーとしては、p-アミノベンジルアルコール類(PAB)が挙げられる。
【0115】
本発明で使用される「毒素」、「薬物」及び「薬剤部分」、「薬剤ユニット」という用語は、一般に同じ構造を指し、本発明では任意の名称で使用することができる。所望の生物学的活性を持ち、かつ、本発明の複合化物を製造するための反応性官能基を有するすべての化合物を指す。所望の生物学的活性には、ヒト又は他の動物の疾患を診断、治癒、緩和、治療、予防することが含まれる。新形の薬剤の継続的な発見と開発に伴い、これらの新薬も本発明に記載されている薬に含まれるべきである。それは、細胞の成長又は増殖に有害な影響を与える可能な全ての物質であってもよく、細菌、真菌、植物、又は動物に由来の小分子毒素及びその誘導体であってもよい。例えば、イキサテカンといったカンプトテシン類誘導体、DM1、DM3、DM4(CN101573384)といったマイタンシノイド及びその誘導体、MMAF、MMAE、3024(WO2016/127790A1)といったauristatin F(AF)及びその誘導体、ジフテリア毒素、外毒素、リシン(ricin)A鎖、アブリン(abrin)A鎖、modeccin、α-サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(Aleutites fordii)毒素タンパク質、カーネーション(dianthin)毒素タンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)毒素タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシ(Momordica charantia)阻害剤、ジャトロファ毒素タンパク質(curcin)、クロトニン(crotin)、サポナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトジェン(mitogellin)レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノキソマイシン(enomycin)、並びにトリコテセン(trichothecenes)が含まれる。
【0116】
「アミノ酸」という用語は、その3文字のコード及び1文字のコードがJ.biol.Chem,1968,243,3558.に記載されており、「酸性アミノ酸」、「天然アミノ酸」、「非天然アミノ酸」が含まれるが、これらに限られない。「酸性アミノ酸」とは、等電点が7未満のアミノ酸を指し、酸性アミノ酸分子は、1つ以上のカルボキシ基などの酸性基を持つことが多く、構造内で効果的にイオン化されて負イオンになり親水性が増加する。酸性アミノ酸は、天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。「天然アミノ酸」とは、生物学によって合成されたアミノ酸を指す。天然アミノ酸は、L型となっていることが一般であるが、自然や生合成のグリシンなどのいくつかの例外もある。「非天然アミノ酸」とは、合成手段によって得られるアミノ酸を指す。
【0117】
最も重要なことは、当業者は、本発明で保護請求される化合物及び方法が当分野で知られている様々な抗体のいずれかを利用できることを認識すべきである。使用される抗体は、様々な既知のメーカーから購入するか、又は当業者に知られている技術によって調製することができる。また、本発明で保護請求される化合物及び方法は当分野で知られている様々な連結ユニットを利用することができる。使用される連結ユニットは、様々な既知のメーカーから購入するか、又は当業者に知られている技術によって調製することができる。従って、抗体及び連結単位の選択は、本発明で保護請求される化合物及び方法の制限と見なされるべきではない。
【実施例
【0118】
実施例1 化合物L-D(即ち、連結基-二重毒素基化合物)の調製
(1)化合物LD-1(即ち、Mc-MMAF-VC-PAB-セリチニブ)の調製
【0119】
【化24】
【0120】
Fmoc-VC-PAB-PNP 75.6mg及びセリチニブ(Ceritinib)50.0mgを取り、5mLのN,N-ジメチルホルムアミド及び49μLのN,N-ジイソプロピルエチルアミンに添加し、反応終了まで室温で反応させ、溶媒をスピン乾燥し、Flash法で精製した後、Fmoc-VC-PAB-セリチニブ粗生成物80.0mgを得た。LC-MS:[M+H]+:1185.2;[M-H]-:1183.7。
【0121】
Fmoc-VC-PAB-セリチニブ粗生成物に8mLのN,N-ジメチルホルムアミド及び2mLのN,N-ジイソプロピルエチルアミンを添加し、反応終了まで室温で反応させ、溶媒をスピン乾燥し、分取液相法で精製した後、VC-PAB-セリチニブを純製品として50.0mg得た。LC-MS:[M+H]+:963.4、[M-H]-:961.6。
【0122】
Mc-MMAF 20.0mg及びTSTU 9.8mgを取り、14.2μLのN,N-ジイソプロピルエチルアミン及び18.8mgのVC-PAB-セリチニブに添加し、反応終了まで室温で反応させ、溶媒をスピン乾燥し、分取液相法で精製し、Mc-MMAF-VC-PAB-セリチニブを純製品として12.0mg得た。LC-MS:[M+H]+:=1869.8、[M-H]-:=1868.2。
(2)化合物LD-2(Mc-MMAF-VC-PAB-MK4827)の調製
【0123】
【化25】
【0124】
Fmoc-VC-PAB-PNP 131.7mg及びMK4827(Niraparib) 50.0mgを取り、5mLのN,N-ジメチルホルムアミド及び78μL N,N-ジイソプロピルエチルアミンに添加し、反応終了まで室温で反応させ、溶媒をスピン乾燥し、Flash法で精製した後、Fmoc-VC-PAB-MK4827粗生成物98.0mgを得た。LC-MS:[M+H]+:947.5、[M-H+HCOOH]-:992.4。
【0125】
上記のFmoc-VC-PAB-MK4827粗生成物に8mLのN,N-ジメチルホルムアミド及び2mLのN,N-ジイソプロピルエチルアミンを添加し、反応終了まで室温で反応させ、溶媒をスピン乾燥し、分取液相法で精製し、VC-PAB-MK4827を純製品として60.0mgを得た。LC-MS:[M+H]+:725.4、[M-H+HCOOH]-:770.0。
【0126】
Mc-MMAF 20.0mg及びTSTU 9.8mgを取り、14.2μLのN,N-ジイソプロピルエチルアミン及びVC-PAB-MK4827 18.8mgに添加し、反応終了まで室温で16時間反応させ、溶媒をスピン乾燥し、分取液相法で精製し、Mc-MMAF-VC-PAB-MK4827を純製品として7.0mg得た。LC-MS:[M+H]+:m/z =1632.6、[M-H+HCOOH]-:m/z =1677.5。
(3)他の化合物の製造
【0127】
化合物1及び化合物2の製造方法を参照しながら、化合物LD-3(Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38)、化合物LD-4(Mc-MMAF-VC-PAB-エキサテカン)、及び化合物LD-5(Mc-MMAF-GGFG-Dxd)を調製した。
【0128】
【化26】
【0129】
実施例2 抗体薬物複合体の調製
抗体薬物複合体(ADC)の製造には、一般的な複合化方法を採用した。還元剤と保護剤はそれぞれ精製水を使用して次のように調製した。1~20mM TCEP(Tris-2-carboxyethyl-phosphine)と1~20 mM DTPA(Diethylene triamine pentacetate acid)の母液、還元剤を所望の複合化率によって一定の濃度範囲で添加し、一定の濃度のモノクローナル抗体(例えば、5~30mg/mL)と一定の体積比(1:1)で混合し、TCEPと抗体の最終濃度モル比は0.5~6.0:1であり、25℃で撹拌しながら1時間反応させた。TCEPによる還元後の抗体は、直接に複合化することができる。
【0130】
25%のDMSO(dimethyl sulfoxide、ジメチルスルホキシド)に溶解した一定の濃度(5mM)のリンカー-有効薬剤ユニット化合物をとして調製し、薬剤とチオール基とのモル比を0.3~2.8:1として薬剤をゆっくりと添加し、25℃で撹拌しながら1~4時間反応させた。反応終了後、PBS緩衝液を使用して遠心分離・限外濾過を3回行い、残留した未反応の薬剤及びDMSOなどの遊離の小分子を精製して除去し、そしてSDS-PAGE電気泳動及び疎水性高速液体相(HIC-HPLC)法を使用して複合化の状況を検出した。
【0131】
本実施例で提供される方法によって、ADC1(Ab-Mc-MMAF-VC-PAB-セリチニブ)、ADC2(Ab-Mc-MMAF-VC-PAB-MK4827)、ADC3(Ab-Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38)、ADC4(Ab-Mc-MMAF-VC-PAB-エキサテカン)、ADC5(Ab-Mc-MMAF-GGFG-Dxd)をそれぞれ製造した。ここで、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれた任意の整数であり、使用されたAbは、HER2抗体であった。
【0132】
【化27】
【0133】
実施例3 インビトロでの細胞生存率の評価
(1)乳がん細胞SK-BR-3の活性の評価
【0134】
本実施例では、細胞増殖抑制法を使用し、乳がん細胞SK-BR-3の細胞生存率に対するHer2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-MK4827、及びHer2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38の影響を評価した。
【0135】
SK-BR-3細胞をトリプシンで消化した後、細胞密度を50000細胞/mlに調整し、100μL/ウェルで細胞培養プレートに添加し、37℃、5%CO2インキュベーターで14~20時間インキュベートした。基本培地で試験品(サンプル群及び対照群を表2に示した)を段階希釈し、100μl/ウェルの細胞で覆われた細胞培養プレートに移し、37℃、5%CO2インキュベーターで70~74時間インキュベートした。培地でCCK-8を10倍に希釈し、96ウェルプレートから古い培地を吸い出し、各ウェルに希釈したCCK-8溶液100μLを添加し、5%CO2条件下で2~4時間発色させ、遠心分離して泡を除去した後、マイクロプレートリーダーで測定波長450nm/655nmを選択してデータを読み取った。
【0136】
【表2】
【0137】
表3の結果により、HER2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-MK4827は、SK-BR-3細胞に対する阻害効果がHER2モノクローナル抗体-Mc-MMAF、HER2モノクローナル抗体-Mc-VC-PAB-MK4827、HER2モノクローナル抗体-Mc-MMAFとHER2モノクローナル抗体-Mc-VC-PAB-MK4827との混合物、HER2抗体そのままより優れ、HER2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38は、SK-BR-3細胞に対する阻害効果がHER2モノクローナル抗体-Mc-MMAF、HER2モノクローナル抗体-Mc-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38、HER2モノクローナル抗体-Mc-MMAFとHER2モノクローナル抗体-Mc-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38との混合物、HER2抗体そのままよりも優れた、ことが示される。また、二成分毒素連結群における2つの群の毒素が相乗効果を生じた。
【0138】
【表3】
【0139】
(2)胃がん細胞NCI-N87の活性の評価
本実施例では、細胞増殖阻害法を使用し、胃がん細胞NCI-N87に対するHer2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38の細胞生存率を評価した。
【0140】
NCI-N87細胞をトリプシンで消化した後、細胞密度を50000細胞/mlに調整し、100μL/ウェルで細胞培養プレートに添加し、37℃、5%CO2インキュベーターで14~20時間インキュベートした。基本培地で試験品(サンプル群及び対照群を表4に示した)を段階希釈し、100μL/ウェルとして細胞で覆われた細胞培養プレートに移し、37℃、5%CO2インキュベーターで70~74時間インキュベートした。培地でCCK-8を10倍に希釈し、96ウェルプレートから旧培地を吸い出し、各ウェルに希釈したCCK-8溶液100μLを添加し、5%CO2条件下で2~4時間発色させ、遠心分離して泡を除去した後、マイクロプレートリーダーで測定波長450nm/655nmを選択してデータを読み取った。
【0141】
【表4】
【0142】
表5の結果により、HER2モノクローナル抗体-Mc-MMAF-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38は、NCI-N87細胞に対する阻害効果がHER2モノクローナル抗体-Mc-MMAFとHER2モノクローナル抗体-Mc-VC-PAB-DMEDA-PEG(N3)-SN38との混合物、HER2抗体そのままよりも優れたことが示される。また、二成分毒素連結群における2つの毒素が相乗効果を生じた。
【0143】
【表5】
【0144】
本発明については、様々な具体例を挙げながら説明したが、本発明は諸具体例に限定されず、通常の技術者が本発明の範囲内で様々な変更または修正を行うことができ、また、本明細書に言及された各技術的特徴は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせる可能性があり、そのような変更や修正も本発明の範囲内のものであることは、当業者であれば理解される。