(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】リチウム補充セパレータ及びリチウム補充セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20240311BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240311BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/411
H01M50/491
H01M50/426
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/403 Z
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2022534673
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2021099482
(87)【国際公開番号】W WO2022041929
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】202010885087.0
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522118469
【氏名又は名称】重慶金美新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING JIMAT NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.12,Jinfu 2nd Road,Qiaohe Industrial Park,Gunan Street,Qijiang District,Chongqing 401421,China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】臧 世偉
(72)【発明者】
【氏名】劉 文卿
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165574(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103178226(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0127265(US,A1)
【文献】中国実用新案第209515825(CN,U)
【文献】特開2008-084842(JP,A)
【文献】中国実用新案第200972879(CN,Y)
【文献】特開平07-272762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料は、ハロゲン含有ポリマー基材と、強化剤と、難燃剤と、リチウム塩とを含み、
前記強化剤はエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーとを含み、
前記難燃剤はデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとを含み、
ハロゲン含有ポリマー基材は50~60質量%であり、強化剤は5~10質量%であり、難燃剤は5~10質量%であり、リチウム塩は20~40質量%であることを特徴とするリチウム補充セパレータ。
【請求項2】
電解液に浸漬されている際、孔隙率が80~90%であり、各孔の平均直径が30~60nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム補充セパレータ。
【請求項3】
前記ハロゲン含有ポリマー基材は塩素含有ポリマー、臭素含有ポリマー、フッ素含有ポリマーの1種または2種以上を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム補充セパレータ。
【請求項4】
前記リチウム塩は過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする請求項
1に記載のリチウム補充セパレータ。
【請求項5】
配合比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法でフィルムを形成し、フィルムをオーブンで乾燥した後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる、ことを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載のリチウム補充セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記インフレーションフィルム成形機の窒素流速は20~23m/minである、ことを特徴とする請求項
5に記載のリチウム補充セパレータの製造方法。
【請求項7】
フィルムを60~70℃のオーブンに入れて1~2h乾燥させる、ことを特徴とする請求項
5に記載のリチウム補充セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム電池の技術分野に関し、具体的には、リチウム補充セパレータ及びリチウム補充セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギーの消費量の増加により、汚染問題が次第に注目されるようになっており、そのため、よりクリーンなエネルギーへの関心もますます高まっている。その中で、リチウム電池は高いエネルギー密度と高い出力電圧などの優れた特性を持っているため、急速に世界中でブームになった。しかしながら、リチウム電池に上記の大きなメリットがあるが、技術の進歩に伴い、例えば、高いエネルギー密度や安全性能だけでなく、経済性や実用性も兼ね備えるなどのような、リチウム電池に対する要求もだんだん高くなっている。
【0003】
リチウムイオン電池は、最初の充放電の過程において、負極の表面にSEI膜が形成され、それによって一定量のリチウムイオンが消費されるため、リチウムイオン電池のエネルギー密度は理論値より低くなる。この問題を解決するために、リチウム補充技術が生まれた。
【0004】
現在、リチウムイオン電池にリチウムを補充するには、リチウムイオン電池のセパレータにリチウム補充層を塗布するのが一般的だが、セパレータにリチウム補充層を塗布する方法には多くの欠陥が存在している。一方で、リチウム補充層に粘着剤などの不必要な物質を添加する必要があり、製品の厚さが増え、不必要な原料汚染がもたらされる。他方で、リチウム補充層を載せるための多孔質セパレータは上流企業から購入する必要があり、そのコストも高く、得られたセパレータの耐熱性と引張強度も好ましくないため、電池の安全性能も高くない。上記欠陥により、リチウムイオン電池の開発は大きく制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は従来技術におけるリチウム補充セパレータの高いコスト、低い耐熱性、劣った引張強度という欠陥を補うために、リチウム補充セパレータ及びリチウム補充セパレータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的解決手段は以下の通りである。
【0007】
リチウム補充セパレータであって、原料は、ハロゲン含有ポリマー基材と、強化剤と、難燃剤と、リチウム塩とを含み、ここで、
ハロゲン含有ポリマー基材は50~60%であり、強化剤は5~10%であり、難燃剤は5~10%であり、リチウム塩は20~40%である、ことを特徴とする。
【0008】
上記による本発明は、前記リチウム補充セパレータの厚さが16~23μmである、ことを特徴とする。
【0009】
上記による本発明は、前記リチウム補充セパレータが電解液に浸漬されている際、その孔隙率が80~90%であり、各孔の平均直径が30~60nmである、ことを特徴とする。
【0010】
上記による本発明は、前記ハロゲン含有ポリマー基材は塩素含有ポリマー、臭素含有ポリマー、フッ素含有ポリマーの1種または2種以上を含む、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記塩素含有ポリマーはポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンの1種または2種以上である。
【0012】
さらに、前記臭素含有ポリマーは臭素化ブタジエンコポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、臭素化ポリスチレンコポリマーの1種または2種以上である。
【0013】
さらに、前記フッ素含有ポリマーはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニルの1種または2種以上である。
【0014】
上記による本発明は、前記強化剤がエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーとを含む、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、前記エチレン-酢酸ビニルコポリマーと前記アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーの質量比は4:6である。
【0016】
上記による本発明は、前記難燃剤がデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとを含む、ことを特徴とする。
【0017】
さらに、前記デカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルの質量比は3:7である。
【0018】
上記による本発明は、前記リチウム塩の質量がすべての原料の総質量の10~20%を占める、ことを特徴とする。
【0019】
上記による本発明は、前記リチウム塩の粒径が1.5~2μmである、ことを特徴とする。
【0020】
前記リチウム塩は過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩、及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの1種又は複数種を含む。
【0021】
リチウム補充セパレータの製造方法であって、配合比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ16~23μmのフィルムを形成し、フィルムをオーブンで乾燥した後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる、ことを特徴とする。
【0022】
上記による本発明は、前記インフレーションフィルム成形機の窒素流速が20~23m/minである、ことを特徴とする。
【0023】
上記による本発明は、フィルムを60~70℃のオーブンで1~2h乾燥させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記による本発明の有益な効果は次の通りである。
【0025】
(1)本発明のリチウム補充セパレータはリチウム電池に組み立てられている際、リチウム塩が電解質に溶解できるため、最初の充放電に消費されるリチウムイオンを提供できるだけでなく、リチウム電池の複数回の充放電において徐々に消費されるリチウムイオンを補充するようにリチウムイオンを提供し続け、それによってリチウムイオンのエネルギー密度を高いレベルに維持することができる。
【0026】
(2)本発明は起泡剤や、粘着剤などの成分を添加する必要もなく、上流企業から多孔質セパレータを購入する必要もないため、コストが大幅に削減される。
【0027】
(3)本発明はハロゲン含有ポリマー基材などの使用によって、リチウム補充セパレータの熱安定性が向上し、また、製品の靭性も大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態とともに本発明をさらに説明する。
【0029】
リチウム補充セパレータであって、その原料は、ハロゲン含有ポリマー基材と、強化剤と、難燃剤と、リチウム塩とを含み、各原料の質量比はハロゲン含有ポリマー基材50~60%、強化剤5~10%、難燃剤5~10%、リチウム塩20~40%である。
【0030】
本発明において、リチウム塩の粒径は1.5~2μmである。具体的に、リチウム塩は過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから1種又は複数種を選ぶことができる。
【0031】
本発明において、ハロゲン含有ポリマー自体は、ハロゲン原子を含有しており、その熱安定性が高く、耐熱性が大幅に向上している。具体的に、ハロゲン含有ポリマー基材は塩素含有ポリマー、臭素含有ポリマー、フッ素含有ポリマーの1種または2種以上を含む。
【0032】
ここで、塩素含有ポリマーはポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンの1種または2種以上である。臭素含有ポリマーは臭素化ブタジエンコポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、臭素化ポリスチレンコポリマーの1種または2種以上である。フッ素含有ポリマーはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニルの1種または2種以上である。
【0033】
本発明において、強化剤はエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーとを含む。本発明において、エチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーの質量比は4:6である。
【0034】
本発明において、難燃剤はデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとを含む。本発明において、デカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルの質量比は3:7である。
【0035】
本発明におけるリチウム補充セパレータの厚さは16~23μmであり、リチウム補充セパレータの過大な体積による製品の高い質量をもたらすことも、製品の引張強度に影響を与えることもない。本発明がこの厚さのリチウム補充セパレータを使用することで、厚さや質量と引張強度との間のバランスをとることができる。
【0036】
本発明のリチウム補充セパレータは電解液に浸漬されている際、その孔隙率が70~80%であり、各孔の平均直径が30~60nmである。リチウム塩が電解液に溶解した後に形成した細孔はリチウムイオンの通過に役立ち、一方で、長期間の使用においてセパレータの孔隙が電解液中に起こった副反応によって生成される不純物に塞がれ、電池の内部抵抗が増加することを回避でき、他方で、生産過程において細孔を発生させるための起泡剤を添加したり、多孔質フィルムにリチウム補充層を塗布したりするなど、複雑な工程も必要とせず、上流企業から高価な多孔質セパレータを購入する必要もなく、製品コストは大幅に削減される。
【0037】
該リチウム補充セパレータの製造方法であって、質量比にしたがって、50~60%のハロゲン含有ポリマー基材、5~10%の強化剤、5~10の%難燃剤、及び20~40%のリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ16~23μmのフィルムを形成し、フィルムをオーブンで乾燥した後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【0038】
好ましくは、インフレーションフィルム成形機の窒素流速は20~23m/minである。
【0039】
好ましくは、フィルムを60~70℃のオーブンで1~2h乾燥させる。
【0040】
上記工程及び原料によって製造されたリチウム補充セパレータをリチウムイオン電池に適用すると、最初の充放電過程で消費されるリチウムイオンを補充できるだけでなく、ハロゲン含有ポリマー基材を使用したため、熱安定性がより高く、強化剤によってリチウム補充セパレータの靭性が向上した。さらに、本発明はより少ない原料とより少ないリチウム補充セパレータの製造工程のため、コストが大幅に削減され、リチウムイオン電池の開発に有益である。
【製造実施例1】
【0041】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材56%、強化剤8%、難燃剤8%、リチウム塩28%。
【0042】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリ塩化ビニル、臭素化ブタジエンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレンの混合物であり、質量比は1:1:3である。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0043】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ23μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は20m/minである)、フィルムを70℃のオーブンで1h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例2】
【0044】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材51%、強化剤9%、難燃剤7%、リチウム塩33%。
【0045】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材は塩素化ポリエチレンである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0046】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ16μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は23m/minである)、フィルムを60℃のオーブンで2h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例3】
【0047】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材60%、強化剤7%、難燃剤8%、リチウム塩25%。
【0048】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリ塩化ビニリデンである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0049】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ18μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は21m/minである)、フィルムを65℃のオーブンで1.5h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例4】
【0050】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材53%、強化剤7%、難燃剤5%、リチウム塩35%。
【0051】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材は臭素化ブタジエンポリマー、ポリフッ化ビニリデンの混合物であり、質量比は2:3である。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0052】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ22μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は22m/minである)、フィルムを68℃のオーブンで1.5h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例5】
【0053】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材58%、強化剤6%、難燃剤6%、リチウム塩30%。
【0054】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリ塩化ビニルである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0055】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ17μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は21m/minである)、フィルムを60℃のオーブンで2h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例6】
【0056】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材50%、強化剤5%、難燃剤5%、リチウム塩40%。
【0057】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材は臭素化ポリスチレンコポリマーである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0058】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ20μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は23m/minである)、フィルムを70℃のオーブンで1h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例7】
【0059】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材60%、強化剤10%、難燃剤10%、リチウム塩20%。
【0060】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はフッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニルの混合物であり、質量比は3:5である。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0061】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ22μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は20m/minである)、フィルムを60℃のオーブンで1.5h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例8】
【0062】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材60%、強化剤6%、難燃剤9%、リチウム塩25%。
【0063】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリテトラフルオロエチレンである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0064】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ19μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は21m/minである)、フィルムを70℃のオーブンで1h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例9】
【0065】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材50%、強化剤10%、難燃剤10%、リチウム塩30%。
【0066】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマーの混合物であり、質量比は1:2である。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0067】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ20μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は20m/minである)、フィルムを68℃のオーブンで1.5h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【製造実施例10】
【0068】
(1)以下の質量比の原料を選んでリチウム補充セパレータを製造する。
ハロゲン含有ポリマー基材55、強化剤5%、難燃剤5%、リチウム塩35%。
【0069】
本実施例におけるハロゲン含有ポリマー基材はポリフッ化ビニルである。強化剤は質量比4:6のエチレン-酢酸ビニルコポリマーとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。難燃剤は質量比3:7のデカブロモジフェニルエタンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルである。
【0070】
(2)製造プロセス。
上記質量比にしたがって、ハロゲン含有ポリマー基材、強化剤、難燃剤、及びリチウム塩を均一に混合し、インフレーションフィルム成形機の供給装置に入れ、インフレーション法で厚さ20μmのフィルムを形成し(ここで、窒素流速は20m/minである)、フィルムを64℃のオーブンで1.5h乾燥させた後に巻き上げ、最後にリチウム補充セパレータが得られる。
【0071】
比較実験1:耐熱性試験
上記方法及び原料でリチウム補充セパレータを製造し、10本の長さ20cm、幅2cmの短冊状のリチウム補充セパレータに切断し、サンプル1からサンプル10にする。従来技術で製造したリチウム補充セパレータ(本発明では特許番号CN201920394809.5の特許技術で製造したリチウム補充セパレータを用いる)、同じ大きさに切断し、比較サンプル1から比較サンプル10にする。
【0072】
上記すべてのサンプルを130℃のオーブンで1h乾燥させ、取り出した後に室温で冷却し、各サンプルの長さと幅を測定し、伸縮率を記録し、伸縮率で製品の耐熱性を評価する。伸縮率=(初期長さ-オーブン実験後の長さ)/初期長さ×100%。得られた実験結果は下記表1、表2に示される。
【0073】
【0074】
【0075】
上記比較実験からわかるように、本発明のリチウム補充セパレータの伸縮率はいずれも0.23%以下であり、比較サンプルの伸縮率はいずれも12.4%以上であり、本発明のリチウム補充セパレータは加熱された場合伸縮が発生しにくく、その耐熱性は従来のセパレータ製品より明らかに優れている。
【0076】
比較実験2:引張強度試験
上記方法及び原料でリチウム補充セパレータを製造し、10本の長さ20cm、幅2cmの短冊状のリチウム補充セパレータに切断し、サンプル1からサンプル10にする。従来技術で製造したリチウム補充セパレータ(本発明では特許番号CN201920394809.5の特許技術で製造したリチウム補充セパレータを用いる)、同じ大きさに切断し、比較サンプル1から比較サンプル10にする。
【0077】
上記すべてのサンプルの両端をそれぞれ引張強度測定器の上端と下端におけるクリップで固定し、100mm/minの速度で引張強度を測定する。具体的には、上下方向に沿って力を加え、試験片が断裂した際の強度を引張強度とし、単位はkgf/cm2とする。得られた実験結果は下記の表3、表4に示される。
【0078】
【0079】
【0080】
上記比較実験からわかるように、本発明のリチウム補充セパレータの引張強度はいずれも6.670 kgf/cm2以上であり、比較サンプルの引張強度はいずれも4.900 kgf/cm2以下であり、比較からすると、本発明のリチウム補充セパレータはより高い引張力に耐えることができ、製品の安定性がより高い。
【0081】
本発明のリチウム補充セパレータはリチウムイオンを供給し続けるため、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高いレベルに維持することができ、また、製品全体のコストが低く、高い熱安定性と靭性を有する。
【0082】
当業者であれば、上記説明に基づく改善または変更が可能であることは、当然理解されるものであり、すべての改善と変更は本発明に添付の特許請求の保護範囲に属する。
【0083】
以上は本発明を例示的に説明したが、本発明の実現は上記方式に限定されるものではないことは明らかであり、本発明の方法、構想、及び技術的解決手段を用いて行った様々な改良、または本発明の構想と技術的解決手段に改良を加えず直接他の場合に応用したものは、すべて本発明の保護範囲内である。
【0084】
本発明はリチウム電池にリチウム補充セパレータを組み立てており、リチウム電池の複数回の充放電において徐々に消費されるリチウムイオンを補充するようにリチウムイオンを提供し続け、それによってリチウムイオンのエネルギー密度を高いレベルに維持することができる。本発明は起泡剤や、粘着剤などの成分を添加する必要もなく、多孔質セパレータを購入する必要もないため、コストが大幅に削減される。本発明はハロゲン含有ポリマー基材などの使用によって、リチウム補充セパレータの熱安定性が向上し、また、製品の靭性も大幅に向上する。よって、本発明のリチウム補充セパレータ及びリチウム補充セパレータの製造方法は実用性を有する。