(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】セパレータ、それを含む二次電池および装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240311BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240311BHJP
H01M 50/494 20210101ALI20240311BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/443 C
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/443 E
H01M50/446
H01M50/463 A
H01M50/494
(21)【出願番号】P 2022552622
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132951
(87)【国際公開番号】W WO2022110223
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲叢▼
(72)【発明者】
【氏名】洪 ▲海▼▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 建瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ 媛媛
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲海▼族
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238448(JP,A)
【文献】特開2013-008481(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175079(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/142702(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/034094(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/164130(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040562(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109037555(CN,A)
【文献】国際公開第2020/175292(WO,A1)
【文献】特開2018-053043(JP,A)
【文献】特開2018-050833(JP,A)
【文献】特開2018-147578(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111244365(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105958000(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0118979(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第111668427(CN,A)
【文献】国際公開第2019/089492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングとを含み、前記コーティングは無機粒子と第1の有機粒子とを含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成しており
前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、
前記コーティングは第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成し、前記第2の有機粒子は二次粒子形状であ
り、
前記第1の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むセパレータ。
【請求項2】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径は2μm~10μmである請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1
又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第1の有機粒子のうちの少なくとも一部は、コア構造とシェル構造を含む請求項1~
3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記コア構造とシェル構造には、いずれもアクリレート系モノマー単位のコポリマーが含まれる請求項
4に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記シェル構造のガラス転移温度が前記コア構造のガラス転移温度より高温である請求項
4又は5に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記コア構造のガラス転移温度は-30℃~20℃であり、
前記シェル構造のガラス転移温度が50℃~70℃である請求項
4又は5に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧10%である請求項1~
7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧12μmである請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合以下である請求項1~
9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第2の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、オレフィンモノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~
10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第2の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とビニル基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~
10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記第2の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~
12のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO
2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)のうちの1種または複数種を含む請求項1~
13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記無機粒子の体積平均粒子径≦2.5μmである請求項1~
14のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項16】
単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量≦3.0g/m
2である請求項1~
15のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項17】
前記セパレータは、
(1)前記セパレータの透気度が100s/100mL~300s/100mLであることと、
(2)前記セパレータの横方向破断伸びが50%~200%であることと、
(3)前記セパレータの縦方向破断伸びが50%~200%であることと、
(4)前記セパレータの横方向引張強度(MD)が1000kgf/cm
2~3500kgf/cm
2であることと、
(5)前記セパレータの縦方向引張強度(TD)が1000kgf/cm
2~3500kgf/cm
2であることとのうちの1つまたは複数をさらに満たす請求項1~
16のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項18】
任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である請求項1~
17のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)とを含み、
前記セパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングと、を含み、前記コーティングは無機粒子と第1の有機粒子とを含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成しており、前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、
前記ステップ(2)において、前記有機粒子は第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は二次粒子形状である製造方法。
【請求項20】
前記第2の有機粒子の添加質量は前記第1の有機粒子の添加質量以下であり、
前記第2の有機粒子の添加質量は前記成分材料の乾物重量の合計の1%~10%である請求項
19に記載の製造方法。
【請求項21】
(1)前記ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の10%以上であることと、
(2)前記ステップ(2)において、前記コーティングスラリーの固形分含有率は28%~45%であることと、
(3)前記ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を利用し、前記塗布機はグラビアロールを備え、前記グラビアロールの線数は100LPI~300LPIであることと、
(4)前記ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minであることと、
(5)前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5であることと、
(6)前記ステップ(3)において、前記乾燥の温度は40℃~70℃であることと、
(7)前記ステップ(3)において、前記乾燥の時間は10s~120sであることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項
19又は20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~
18のいずれか一項に記載のセパレータを備える二次電池。
【請求項23】
請求項
22に記載の二次電池を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池技術分野に属し、具体的にセパレータ、それを含む二次電池、それに関連する電池モジュール、電池パックおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は軽量で、汚染がなく、記憶効果がないなどの突出した特徴を有するため、各種の消費類電子製品や電動車両に広く適用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、ユーザは二次電池に対してより高い使用要求を提出している。例えば、二次電池のエネルギー密度は益々高く設計されているが、電池のエネルギー密度の向上は動力学的性能、電気化学的性能または安全性能などのバランスに不利である傾向にある。
【0004】
したがって、どのように電池にサイクル性能と安全性能を両立させるかは電池設計分野の重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、背景技術にある技術的課題に鑑みて、セパレータを含む二次電池に良好なサイクル特性および安全性能を備えさせるセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するために、本願の第1態様は、基材と前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは無機粒子と第1の有機粒子とを含む。前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成している。前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmである。
【0007】
従来技術に対して、本願は少なくとも以下のような有益な効果を備える。
【0008】
本願に係るセパレータは、同一のコーティングに、無機粒子および第1の有機粒子を含み、セパレータ全体の厚さを大幅に減少させ、電池のエネルギー密度を向上させ、また、第1の有機粒子の形状および数平均粒子径に対して特別な設計を行うことで、無機粒子と有機粒子との間に十分で且つ不均一に分布する隙間が形成され、セパレータの良好な通気性を保証するとともに、セパレータとタブとの間の接着性を補強することができ、二次電池に良好なサイクル性能および安全性能を備えさせることができる。本願に係る装置は、本願に係る二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同じ優位性を具備する。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は2μm~10μmであり、任意選択的には、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は3μm~8μmである。第1の有機粒子の数平均粒子径は所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および以上に記載の各ホモポリマーまたはコポリマーの改性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0011】
本出願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-オレフィンモノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および上記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子のうちの少なくとも一部はコア構造とシェル構造を含む。第1の有機粒子のうちの少なくとも一部はコア構造とシェル構造を有する場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度は前記コア構造のガラス転移温度より高温である。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記コア構造のガラス転移温度は-30℃~20℃であり、任意選択的には、-10℃~10℃である。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度は50℃~70℃であり、任意選択的には、55℃~65℃である。
【0017】
シェル構造およびコア構造のガラス転移温度は上記条件を満たしている場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記コア構造とシェル構造には、いずれもアクリレート系モノマー単位のコポリマーが含まれる。
【0019】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子におけるコア構造とシェル構造には、いずれもアクリレート系モノマー単位-スチレン基モノマー単位のコポリマーが含まれる。
【0020】
第2の有機粒子におけるコア構造とシェル構造にはいずれも前記コポリマーが含まれる場合、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0021】
本願の任意の実施形態において、コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧10%であり、任意選択的には、10%~30%である。第1の有機粒子の含有量が所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0022】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングは第2の有機粒子をさらに含むことができ、前記第2の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成し、前記第2の有機粒子は二次粒子形状である。コーティングには前記形式の第2の有機粒子が含まれる場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0023】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧12μmであり、任意選択的には、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は15μm~25μmである。第2の有機粒子の数平均粒子径は所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合以下であり、任意選択的には、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は1%~10%であり、さらに任意選択的には、2%~8%である。第2の有機粒子と第1の有機粒子との質量割合は前記条件を満たしている場合、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、オレフィンモノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含み、
本願の任意の実施形態において、第2の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とビニル基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0026】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0028】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子の粒子径≦2.5μmであり、任意選択的には、前記無機粒子の粒子径は0.5μm~2.5μmである。無機粒子の粒子径が所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0029】
本願の任意の実施形態において、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量≦3.0g/m2であり、任意選択的には、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量は1.5g/m2~2.5g/m2である。コーティングの重量が前記範囲を満たしている場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0030】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの透気度は100s/100mL~300s/100mLであってもよく、任意選択的には、前記セパレータの透気度は150s/100mL~250s/100mLであってもよい。
【0031】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(TD)は1000kg/cm2~3500kg/cm2であってもよく、任意選択的には、前記セパレータの横方向引張強度は1200kg/cm2~3000kg/cm2であってもよい。
【0032】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(MD)は1000kg/cm2~3000kg/cm2であってもよく、任意選択的には、前記セパレータの縦方向引張強度は1000kg/cm2~2800kg/cm2であってもよい。
【0033】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよく、任意選択的には、前記セパレータの横方向破断伸びは80%~150%であってもよい。
【0034】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、任意選択的には、前記セパレータの縦方向破断伸びは80%~150%であってもよい。
【0035】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子と前記有機粒子はコーティングにおいて、不均一なトンネル構造を形成している。
【0036】
本願の任意の実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0037】
本願の第2態様は、
基材を提供するステップ(1)と、無機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、前記セパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングと、を含み、前記コーティングは無機粒子と第1の有機粒子とを含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成しており、前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであるセパレータの製造方法を提供する。
【0038】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は前記成分材料の乾物重量の合計の10%以上であり、任意選択的には、10%~30%である。
【0039】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記有機粒子は第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は二次粒子形状である。
【0040】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は前記第1の有機粒子の添加質量以下である。
【0041】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は前記成分材料の乾物重量の合計の1%~10%であり、さらに任意選択的には、2%~8%である。
【0042】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、コーティングスラリーの重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有率は28%~45%であり、任意選択的には、30%~38%である。
【0043】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を利用し、前記塗布機はグラビアロールを備え、前記グラビアロールの線数は100LPI~300LPIであり、任意選択的には、125LPI~190LPIである。
【0044】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minであり、任意選択的には、50m/min~70m/minである。
【0045】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5であり、任意選択的には、0.8~1.5である。
【0046】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は40℃~70℃であり、任意選択的には、50℃~60℃である。
【0047】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は10s~120sであり、任意選択的には、20s~80sである。本願の第3態様は、本願の第1態様によるセパレータを含みか、または本願の第2態様の方法によって製造されるセパレータを含む二次電池を提供する。
【0048】
本願の第4態様は、本願の第3態様による二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0049】
本願の第5態様は、本願の第4態様による電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0050】
本願の第6態様は、本願の第3態様による二次電池、本願の第4態様による電池モジュール、または本願の第5態様の電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。
【0051】
本願の技術案をより明確に説明するために、以下、本願に用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を費やさない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1-1】本願のセパレータの一実施形態に係るコーティングの構成を示す概略図である。
【
図1-2】本願のセパレータの別の実施形態のコーティングの構成を示す概略図である。
【
図2-1】本願のセパレータの一実施形態に係るイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
【
図2-2】本願のセパレータの別の実施形態に係るイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
【
図3-1】本願のセパレータの一実施形態に係る走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図3-2】本願のセパレータの別の実施形態の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図4-1】本願のセパレータの一実施形態の構成概略図である。
【
図4-2】本願のセパレータの別の実施形態の構成概略図である。
【
図7】電池モジュールの一実施形態を示す概略図である。
【
図8】電池パックの一実施形態を示す概略図である。
【
図10】二次電池を電源として用いる装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下では具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものにすぎず、本願の範囲を限定するものではないと理解されたい。
【0054】
簡潔にするために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、個別に開示された各点または単一の数値自体は、下限または上限として、任意の他の点または単一の数値と組み合わせて或いは他の下限または上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。
【0055】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種または複数種」のうちの「複数種」は2種および2種以上を意味する。
【0056】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、用語「または(or)」は包括的なものである。すなわち、[Aまたは(or)B]というフレーズは、「A、BまたはAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(または存在する)でありかつBが偽(または存在しない)である条件と、Aが偽(または存在しない)であり、Bが真(または存在する)である条件と、また、AとBが共に真(または存在する)である条件のいずれかも「AまたはB」を満たしている。特に説明しない限り、本願で使用される用語は、当業者に通常理解される公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願で言及された各パラメータの数値は、当分野でよく使われる各種の測定方法(例えば、本願の実施例に記載の方法)で測定することができる。
【0057】
二次電池
二次電池とは、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0058】
二次電池は、通常、正極板、負極板、セパレータおよび電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して挿入や脱離をする。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の役割を果たす。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0059】
[セパレータ]
本願に係るセパレータは、基材と前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングとを含む。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は第1の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成している。前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmである。
【0060】
なお、一次粒子は当分野で公知されている意味を有する。一次粒子とは、凝集状態になっていない粒子をいう。
【0061】
前記有機粒子の数平均粒子径とは、セパレータのコーティングにおいて、有機粒子数で統計される有機粒子の粒子径の平均値である。前記有機粒子の粒子径とは、有機粒子において最も離れた2点間の距離である。
【0062】
図1-1に示すように、前記セパレータは、基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は、第1の有機粒子(B1)と無機粒子(B2)とを含み、第1の有機粒子(B1)は一次粒子であり、第1の有機粒子は前記無機粒子(B2)に嵌めこまれ、前記コーティング(B)の表面に突起を形成している。
【0063】
いずれの理論に限定されることも望ましくないが、本願に係るセパレータは、同一のコーティングに、無機粒子および第1の有機粒子が含まれ、無機粒子層と有機粒子層との2つのコーティングを有するセパレータと比べると、セパレータ全体の厚さを大幅に減少させ、また、第1の有機粒子に対して特別な設計を行い、両者の相互作用で、電池は、さらに良好なサイクル性能および安全性能を両立させることができる。また、一次粒子形状の第1の有機粒子の比重が比較的小さいため、セパレータの製造過程において、第1の有機粒子がコーティングの表面に一層浮きやすくなるようにすることができ、セパレータを電池に用いた後、第1の有機粒子はセパレータと電極板との間の接着力を効果的に向上させ、電極板には、電池充放電過程においてシワが形成されにくく、これによって、電池のサイクル性能が改善され、一方、電池が定常な動作環境(例えば60℃以下)にある場合、本願の特定に設計された第1の有機粒子の電解液における膨潤率が低く、緻密で且つ大面積のゲル膜構造を形成する確率を効果的に低減することができ、セパレータが適度で不均一なトンネル構造を有することを保証し、イオンを伝送しやすく、電池のサイクル性能をさらに改善し、特に、電池が高温動作環境(例えば100℃以上)にある場合、特定に設計された第1の有機粒子は高温で大面積のゲル膜構造を形成し、イオン拡散通路を急速に減少し、電池の熱拡散時間を遅延し、電池の安全性能を効果的に改善する。
【0064】
本発明者らは、鋭意研究した結果、本願に係るセパレータが上記設計条件を満たしていることに加えて、任意選択可能には、以下の条件のうちの1つまたは複数を満たすことにより、二次電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は2μm~12μmであり、例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は2μm~10μm、2.5μm~10μm、2.8μm~10μm、3μm~8μm、2.5μm~6μm、4μm~8μmなどであってもよい。第1の有機粒子の数平均粒子径は所定の範囲にある場合、電解液において適切な膨潤率を有し、電池が定常に動作するとき、イオン伝送通路の滑らかさを確保することができる。また、適切な粒子径範囲は、さらに、セパレータと電極板との間の過度強固な接着による電解液の濡れ不良を回避し、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位‐アクリレート系モノマー単位‐スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位と不飽和ニトリル系モノマー単位とのコポリマー、スチレン系モノマー単位‐オレフィンモノマー単位‐不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記アクリレート系モノマー単位は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ソオクチルメタクリレートなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記アクリル酸系モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸などのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記スチレン系モノマー単位は、スチレン、メチルスチレンなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、アクリル酸ブチル‐スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、メタクリレート‐メタクリル酸‐スチレンコポリマー、アクリル酸メチル‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル‐イソオクチルアクリレート‐スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルアクリレート‐スチレンコポリマー、スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル‐スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート‐スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、スチレン‐酢酸ビニルコポリマー、スチレン‐酢酸ビニル‐ピロリドンコポリマー、および前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0073】
本願において、前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物とは、各ホモポリマーまたはコポリマーにおけるモノマー単位と、特定官能基含有モノマー単位とを共重合して得られる変性化合物を意味する。例えば、含フッ素アルキル基モノマー単位とカルボキシル基含有官能基の化合物とを共重合して変性化合物などを得ることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子のうちの少なくとも一部はコア構造とシェル構造を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記コア構造とシェル構造は同じモノマー単位のコポリマーを含む。コア構造およびシェル構造材料のガラス転移温度は、各モノマー単位の共重合比率や重合プロセスを調整することにより調整することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度は前記コア構造のガラス転移温度より高温である。シェル構造は高いガラス転移温度を有するため、セパレータの製造過程において有機粒子間に融合が発生して連続的なゲル膜を形成する確率を効果的に低減し、セパレータのイオン伝送通路を改善することができ、また電解液において、良好なシート接着力を保持し、電極板とセパレータをよりよく貼り合わせることができるので、電池のサイクル性能のさらなる改善に役立つ。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記コア構造のガラス転移温度は-30℃~20℃であってもよく、例えば、-10℃~10℃であってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度は50℃~70℃であってもよく、例えば、55℃~65℃であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、コア構造およびシェル構造には、いずれもアクリレート系モノマー単位のコポリマーが含まれ、例えば、前記コア構造およびシェル構造には、いずれもアクリレート系モノマー単位‐スチレン基モノマー単位のコポリマーが含まれ、第1の有機粒子の常温作動過程での電解液における膨潤率を低減することに役立ち、さらに大面積のゲル膜構造を形成する確率を低減し、電池のサイクル性能をさらに改善する。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧10%(前記コーティングの総質量を基準として)であり、例えば、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は10%~30%、15%~30%、10%~25%、10%~20%であってもよい。第1の有機粒子の質量割合は所定の範囲に制御される場合、セパレータのコーティングが接着性を確保する前提で、良好なトンネル構造を有することに役立ち、電池のサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50≦2.5μmであり、例えば、前記無機粒子の体積平均粒子径は、0.5μm~2.5μm、1.5μm~2.5μm、0.3μm~0.7μmなどであってもよい。無機粒子の粒子径は所定の範囲に制御される場合、電解液のセパレータへの濡れ性の向上に寄与し、電池のサイクル性能のさらなる改善が図れる。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記コーティングの総質量を基準として、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合≦90%であり、例えば、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は70%~90%、75%~85%などであってもよい。無機粒子の質量割合は所定の範囲に制御される場合、セパレータの安全性能を確保する前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記コーティングは第2の有機粒子をさらに含むことができ、前記第2の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成し、前記第2の有機粒子は二次粒子である。セパレータのコーティングに一定の含有量の二次粒子形状の第2の有機粒子が含まれる場合、均一なコーティング界面を形成することに役立ち、セパレータを電池に用いた後、電池製造過程におけるタブの位置ずれ問題を効果的に改善することができ、電池の安全性能のさらなる改善が図れる。
【0085】
なお、二次粒子は当分野で公知されている意味を有する。二次粒子とは、2つまたは2つ以上の一次粒子により凝集された凝集状態の粒子をいう。
【0086】
図1-2に示すように、前記セパレータは、基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は第1の有機粒子(B1)、無機粒子(B2)および第2の有機粒子(B3)を含み、第1の有機粒子(B1)は一次粒子であり、第2の有機粒子(B3)は二次粒子であり、第1の有機粒子および第2の有機粒子はいずれも前記無機粒子(B2)に嵌めこまれ、前記コーティング(B)の表面に突起を形成している。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、例えば、12μm~25μmであり、例えば、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は15μm~25μm、12μm~23μm、13μm~22μm、15μm~20μm、12μm~18μmなどであってもよい。第2の有機粒子の数平均粒子径は所定の範囲にある場合、有機粒子間に十分な隙間を存在させることができ、有機粒子が電解液において膨潤しても、十分なイオン伝送通路を形成することができ、電池のサイクル性能のさらなる改善が図れる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、オレフィンモノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記含フッ素アルキル基モノマー単位は、ビニリデンフルオライド、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記オレフィンモノマー単位は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記アルキレンオキサイド系モノマー単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とビニル基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0095】
本願の実施例において、前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物とは、各ホモポリマーまたはコポリマーにおけるモノマー単位と、特定官能基含有モノマー単位とを共重合して得られる変性化合物を意味する。アルキル基含フッ素モノマー単位とカルボキシル基含有官能基の化合物とを共重合して変性化合物などを得ることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、第1の有機粒子の数平均分子量は1万~10万であり、例えば、2万~8万などである。
【0097】
いくつかの実施形態において、第2の有機粒子の数平均分子量は30万~80万であり、例えば、40万~65万などである。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合以下である。任意選択的には、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は、1%~10%、1.5%~7.5%、2%~8%、2%~5%、3%~7%であってもよい。発明者らは、研究により、コーティングにおける第2の有機粒子の質量割合は所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができると分かった。
【0099】
いくつかの実施形態において、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量≦3.0g/m2であり、例えば、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量は1.5g/m2~3.0g/m2、1.5g/m2~2.5g/m2、1.8g/m2~2.3g/m2などであってもよい。単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量を所定の範囲に制御することで、電池サイクル性能および安全性能を確保した前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0100】
いくつかの実施例に基づき、前記コーティングは、その他の有機化合物をさらに含むことができ、例えば、耐熱性を改善するポリマー(単に「耐熱接着剤」ともいう)、分散剤、湿潤剤、その他の種類のバインダーなどを含んでいてもよい。上記の有機化合物は乾燥後のコーティングにおいて、いずれも非粒子状の物質である。本願は、前記の他の有機化合物の種類について特に限定せず、良好な改善性能を有する任意の公知材料を選んで用いることができる。
【0101】
本願は、前記基材の材質について、特に限定せず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及ポリビニリデンフルオライドのうちの1種または複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記基材の厚さ≦12μmであり、例えば、前記基材の厚さは5μm~10μm、5μm~9μm、7μm~12μmなどであってもよい。前記基材の厚さを所定の範囲に制御することで、電池サイクル性能および安全性能を確保した前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの透気度は100s/100mL~300s/100mLであってもよく、例えば、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mL、170s/100mL~220s/100mLなどであってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度は1000kgf/cm2-3500kgf/cm2であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向引張強度は、1200kgf/cm2~2800kgf/cm2、1200kgf/cm2~2000kgf/cm2、1500kgf/cm2~3000kgf/cm2であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向破断伸びは80%~150%などであってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度は1000kgf/cm2~3500kgf/cm2であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向引張強度は、1200kgf/cm2~3000kgf/cm2、1200kgf/cm2~2000kgf/cm2、1500kgf/cm2~3000kgf/cm2であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向破断伸びは80%~150%などであってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子と前記有機粒子は、前記コーティングにおいて、不均一なトンネル構造を形成している。
【0109】
いくつかの実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0110】
いくつかの実施例に基づき、有機粒子の粒子径と数平均粒子径は当分野で知られている機器および方法で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を用いて、例えばJY/T010-1996を参照し、セパレータのSEM画像を取得する。例として、以下のような方法によって測定することができる。セパレータから縦×横=50mm×100mmのサンプルを任意に取り、サンプルにおいて複数の測定領域(例えば5つ)をランダムに選択し、一定の拡大倍率(例えば第1の有機粒子を計測する場合に500倍であり、第2の有機粒子を計測する場合に1000倍である)で、各測定領域における各有機粒子の粒子径(なお、有機粒子が不規則な形状である場合、有機粒子における最も離れた2点間の距離を取ってこの有機粒子の粒子径とする)を読み取り、本願に記載の有機粒子の粒径である。各測定領域における有機粒子の数および粒子径の数値を統計し、各測定領域における有機粒子の粒子径の算術平均値を取り、このサンプルにおける有機粒子の数平均粒子径である。測定結果の正確性を確保するために、複数のサンプル(例えば10個)を取って上記測定を行い、各サンプルの平均値を取って最終的な測定結果とすることができる。
【0111】
いくつかの実施例に基づき、有機粒子の形状(例えば、一次粒子形状または二次粒子形状)は、当分野で知られている機器および方法を用いて測定することができる。走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を用いて測定することができる。例として、以下のようなステップによって、操作することができる。まずセパレータを一定のサイズの被測定サンプル(例えば、6mm×6mm)に裁断し、2枚の導電伝熱シート(例えば銅箔)で被測定サンプルを挟み、被測定サンプルとシートとの間に粘着剤(例えば両面テープ)で粘着して固定し、一定の質量(例えば400g程度)の歪取り鉄ブロックで一定の時間(例えば1h)押さえ、被測定サンプルと銅箔との間の隙間を小さくすればするほど好ましく、続いてはさみでエッジを切り揃え、導電性粘着剤を有するサンプル台に粘着し、サンプルがサンプル台のエッジから少し突出すればよい。次にサンプル台をサンプルホルダに入れてロックして固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えば、IB-19500CP)の電源を入れて真空引き(例、10Pa~4Pa)をし、アルゴンガスの流量(例えば、0.15MPa)、電圧(例えば、8KV)および研磨時間(例えば、2時間)を設定し、サンプル台を揺動モードに調整して、研磨を開始し、研磨終了後、走査型電子顕微鏡(例、ZEISS Sigma 300)を用いて測定サンプルのインオン研磨断面形状(CP)の写真を得る。
【0112】
図2-1と
図2-2は、本実施例のセパレータのイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
図2-1から分かるように、セパレータのコーティングに第1の有機粒子が含まれ、第1の有機粒子は非凝集体の一次粒子であり、中実球体の断面である。
図2-2からわかるように、セパレータのコーティングには、第1の有機粒子と第2の有機粒子の両方が含まれ、第2の有機粒子は複数の一次粒子で構成される二次粒子であり、中実球体以外の不規則な断面である。
【0113】
いくつかの実施形態に基づき、有機粒子の物質の種類は、当分野で知られている機器および方法を使用して測定することができる。例えば、材料の赤外線スペクトルを測定して、それに含まれる特徴的なピークを決定することによって、物質の種類を特定することができる。具体的には、当分野で公知されている器具および方法で有機粒子に対して、赤外分光分析を行い、例えば、GB/T6040-2002赤外線分光分析方法通則によって、米国ニコレット(nicolet)社のIS10フーリエ変換赤外線分光器などの赤外線分光器を用いて、測定することができる。
【0114】
いくつかの実施形態に基づき、無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、当分野で公知されている意味であり、当分野で知られている器具および方法を使用することによって測定することができる。例えば、GB/T19077-2016レーザー回折式粒度分布法を参照し、レーザー粒度分析計(たとえば、Master Size 3000)を使用して測定できる。
【0115】
いくつかの実施例に基づき、セパレータの透気度、横方向引張強度(TD)、縦方向引張強度(MD)、横方向破断伸び、縦方向破断伸びは、いずれも当分野で公知されている意味を有し、当分野で知られている方法で計測することができる。例えば、いずれもGB/T 36363-2018規格に基づき測定することができる。
【0116】
いくつかの実施例に基づき、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔については、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する2つの無機粒子(無機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して、外接円処理を行うことができる)を任意に取り、両無機粒子の中心間距離を、両無機粒子間の間隔として測定し、L1とする。
【0117】
いくつかの実施例に基づき、任意の隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子との間隔については、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に取り、この無機粒子とこの有機粒子との中心間距離を無機粒子と有機粒子との間隔として測定し、L2とする。上記有機粒子は、第1の有機粒子を取ってもよいし、第2の有機粒子を取ってもよい。
【0118】
上記間隔は当分野で知られている器具で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で測定することができる。例として、任意の隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子との間隔L2は以下の方法によって測定することができる。セパレータを縦×横=50mm×100mmのテストサンプルに製造し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma300)を用いて、セパレータを測定する。JY/T010-1996を参照して測定することができる。サンプルから領域をランダムに選択し、走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、3000倍)で、セパレータのSEM図像を取得し、SEM図像において、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子は不規則体である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に選択し、無機粒子(またはその外接円)の中心と有機粒子(またはその外接円)の中心との距離を計測し、本願に記載の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔であり、L2とする。測定結果の正確性を確保するために、サンプルにおいて複数組の隣接する粒子(例えば10組)を取って上記測定を繰り返し、各組の測定結果の平均値を最終的な結果とする。
【0119】
同様に、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔L1についても、上記方法で測定することができる。
【0120】
図3-1および3-2は本願の実施例のセパレータの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
図3-1から分かるように、セパレータのコーティングは、無機粒子および第1の有機粒子を含み、第1の有機粒子は一次粒子であり、第1の有機粒子は無機粒子に嵌めこまれ、コーティングの表面に突起を形成している。
図3-2から分かるように、セパレータのコーティングは、無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、第1の有機粒子は一次粒子であり、第2の有機粒子は二次粒子であり、第1の有機粒子および第2の有機粒子はいずれも無機粒子に嵌めこまれ、コーティングの表面に突起を形成している。上記に記載の方法で計測したところ、L1<L2と分かる。
【0121】
本願はさらに、
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、
前記セパレータは、基材と前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングと、を含み、前記コーティングは無機粒子と第1の有機粒子とを含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、前記コーティングの表面に突起を形成しており、前記第1の有機粒子は一次粒子形状であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであるセパレータの製造方法を提供する。
【0122】
前記コーティングは、前記基材の片面のみに設けてもよいし、前記基材の両面に設けてもよい。
【0123】
図4-1に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の片面のみに設けられている。
【0124】
図4-2に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の両面ともに設けられている。
【0125】
本願の実施例において、前記基材の材質について、特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種または複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記溶媒は水であってもよく、例えば、脱イオン水である。
【0127】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、本明細書に記載の第2の有機粒子をさらに含んでいてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、他の有機化合物をさらに含んでいてもよく、例えば、耐熱性を改善するポリマー(単に「耐熱接着剤」ともいう)、分散剤、湿潤剤、その他の種類のバインダーを含んでいてもよい。なお、上記有機化合物は、乾燥後のコーティングにおいて、いずれも非粒子状の物質である。本願は、上記の他の有機化合物の種類について、特に限定せず、良好な改善性能を有する任意の公知材料を選んで用いることができる。
【0129】
いくつかの実施形態においては、ステップ(2)において、溶媒に成分材料を加えて均一に撹拌してコーティングスラリーを得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の10%以上であり、例えば、10%~30%、15%~30%、10%~25%、10%~20%である。
【0131】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記第1の有機粒子の添加質量以下である。任意選択的には、前記第2の有機粒子の添加質量は前記成分材料の乾物重量の合計の1%~10%であり、例えば、1.5%~7.5%、2%~8%、2%~5%または3%~7%であってもよい。
【0132】
適切な含有量の有機粒子は電池製造過程においてセパレータと電池巻取工具(例えば、巻針)または積層工具との間に発生する静電気を減少することができ、正負極が短絡する確率を効果的に低減させ、電池の製造効率を向上させる。
【0133】
なお、成分材料が固形である場合、成分材料の乾物重量は、この成分材料の添加質量である。成分材料が懸濁液、エマルジョンまたは溶液である場合、成分材料の乾物重量は、この成分材料の添加質量とこの成分材料の固形分含有率との積である。前記成分材料の乾物重量の合計は、各成分材料の乾物重量の合計である。
【0134】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、コーティングスラリーの重量を基準として、コーティングスラリーの固形分含有率を28%~45%に制御することができ、例えば、30%~38%であってもよい。コーティングスラリーの固形分含有率が上記範囲にある場合、コーティングの膜面問題および塗布ムラの発生確率を効果的に低減することができ、電池のサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0135】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を用いて行われる。
【0136】
本願の実施例において、塗布機の型式は特に限定されず、市販の塗布機を用いることができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は転写塗布、回転スプレー、浸漬塗布などのプロセスを用いることができ、例えば、前記塗布には、転写塗布が用いられる。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記塗布機はグラビアロールを含み、前記グラビアロールは、一般に円柱状のスチールロールであり、そのロール表面には、コーティングスラリーを基材に転移させるための様々な形状のスラリー溝が刻まれている。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記グラビアロールの線数は、100LPI~300LPIであってもよく、例えば、125LPI~190LPI(LPIは線/インチである)であってもよい。ローラは、線数が高いほど、その伝搬するスラリー量が少なくなる。グラビアロールの線数が上記範囲にある場合、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数を制御することに寄与し、セパレータのサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0140】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minに、例えば、50m/min~70m/minに制御することができる。塗布の速度が上記範囲にある場合、コーティングの膜面問題を効果的に低減し、塗布ムラの発生確率を低減し、電池のサイクール性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5に制御することができ、例えば、0.8~1.5、1.0~1.5であってもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は、40℃~70℃であってもよく、例えば、50℃~60℃であってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は、10s~120sであってもよく、例えば、20s~80s、20s~40sであってもよい。
【0144】
上記の各プロセスパラメータを所定の範囲に制御することにより、本願に係るセパレータの使用性能をさらに改善することができる。当業者は実際の生産状況に基づき、上記1つまたは複数のプロセスパラメータを選択的に調節制御することができる。
【0145】
前記無機粒子および前記有機粒子は、二次電池の性能をさらに改善するために、選択可能には、さらに上記した各パラメータ条件のうちの1つまたは複数を満たす。ここでは説明を省略する。
【0146】
上記基材、第1の有機粒子および第2の有機粒子は、いずれも市販されるものである。
【0147】
本願に係るセパレスタットの製造方法は、一回の塗布によってコーティングを製造し、セパレータの生産プロセスフローを大幅に簡単化し、また、上記方法で製造されたセパレータを電池に適用して、電池のサイクル性能および安全性能を効果的に改善することができる。
【0148】
[正極板]
この二次電池では、前記正極板は、通常、正極集電体と、正極集電体に設けられ、正極活物質を含む正極膜層とを有している。
【0149】
前記正極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0150】
前記正極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の正極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。
【0151】
例として、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム含有リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。リチウム遷移金属酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、マンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン型リチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0152】
いくつかの実施形態において、前記各材料の変性化合物は、材料に対してドーピング変性および/または表面被覆変性を行ったものであってもよい。
【0153】
正極膜層は、一般には、選択可能には、バインダー、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0154】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であってもよい。
【0155】
例として、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0156】
[負極板]
この二次電池では、前記負極板は、通常、負極集電体と、負極集電体に設けられ負極活物質を含む負極膜層とを有している。
【0157】
前記負極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(例えば、金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、負極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0158】
前記負極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の負極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。例として、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料および錫系材料のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸化物(例えば、一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金のうちの1種または複数種から選択することができる。前記錫系材料は、単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種または複数種から選択することができる。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0159】
いくつかの実施形態において、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、前記負極活物質はケイ素系材料を含む。
【0160】
負極膜層は、一般には、選択可能には、バインダー、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0161】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であってもよい。
【0162】
例として、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0163】
例として、その他の選択可能な助剤としては、増粘・分散剤、(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などであってもよい。
【0164】
[電解液]
この二次電池は、正極と負極との間でイオンを伝導する役割を果たす電解液を含んでもよい。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含んでいてもよい。
【0165】
例として、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラトホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0166】
例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0167】
いくつかの実施形態において、電解液には添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、正極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでいてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、本願の二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
【0169】
二次電池は、当分野の通常方法に従って製造することができ、例えば、正極板、セパレータ、負極板を順に巻取(または積層)し、セパレータを正極板と負極板との間に介在させて隔離する役割を果たし、セルを得て、セルを外装に入れ、電解液を注入して封口して二次電池を得る。
【0170】
本願の実施例は、二次電池の形状について、特に限定せず、円筒形、角形、その他の任意の形状であってよい。
図5は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0171】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、正極板、負極板および電解液をパッケージするためのものである。
【0172】
いくつかの実施例において、
図6を参照し、外装はハウジング51および蓋板53を含むことができる。そのうち、ハウジング51は底板および底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設可能である。
【0173】
正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入されている。電解液は、電極アセンブリ52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極アクセス52の数は、1つであっても複数であってもよく、必要に応じて調節することができる。
【0174】
いくつかの実施例において、二次電池の外装はハードケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどである。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロプレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種または複数種を含むことができる。
【0175】
いくつかの実施例において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの適用および容量に基づいて調節することができる。
【0176】
図7は、一例としての電池モジュール4である。電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並設されていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0177】
選択可能には、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備えていてもよい。
【0178】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの適用および容量に基づいて調節することができる。
【0179】
図8および
図9は、一例としての電池パック1である。電池パック1は、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ケースに配列することができる。
【0180】
装置
本願は、前記装置は前記二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少ないとも1つを備える装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー蓄積手段として用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギ貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限定されない。
【0181】
前記装置は、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0182】
図10は一例としての装置である。この装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。この装置は二次電池に対する高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0183】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0184】
以下には、実施例を参照して本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0185】
実施例
本願が解決しようとする技術的課題、技術案および有益な効果をより明確にするために、以下には、実施例および図面を参照してさらに詳細に説明する。明らかに、説明された実施例は本出願のいくつかの実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての記載は、本質的に説明するためのものに過ぎず、決して本願およびその適用に対する如何なる限定でもない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0186】
本願の実施例で用いた材料はいずれも購入で入手することができ、例えば、
基材は上海恩捷新材料有限公司から購入することができる。
【0187】
無機粒子は、壹石通材料科技股分有限公司から購入することができる。
【0188】
第1の有機粒子は、阿科瑪(常熟)化学有限公司から購入することができる。
【0189】
第2の有機粒子は、四川茵地楽科技有限公司から購入することができる。
【0190】
湿潤剤は陶氏化学公司から購入することができる。
【0191】
分散剤は、常熟威怡科技有限公司から購入することができる。
【0192】
一、セパレータの製造
セパレータ1:
(1)PE基材を提供し、例えば、基材の厚さは7μmであり、空隙率が36%であり、
(2)コーティングスラリーを調製し、無機粒子であるアルミナ(Al2O3)と、第1の有機粒子であるブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマーと、分散剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)と、湿潤剤である有機ケイ素変性ポリエーテルとを質量比80:15:3:2で脱イオン水に均一に混合し、コーティングスラーリーの重量ベースの固形分含有率が35%であるコーティングスラーリーを得た。なお、無機粒子であるアルミナ(Al2O3)の体積平均粒子径Dv50が1μmであり、第1の有機粒子の数平均粒子径が2μmであり、第1の有機粒子の形状が一次粒子であり、第1の有機粒子のうち少なくも一部の粒子がコア構造とシェル構造とを含み、シェル構造のガラス転移温度が55℃であり、コア構造のガラス転移温度が20℃である。
【0193】
(3)ステップ(2)で調製したコーティングスラリーを、PE基材の2つの表面に塗布機を用いて塗布し、乾燥、スリット工程を経て、セルプレート1を得る。なお、塗布機のグランビロールの線数は190LPIであり、塗布の速度は70m/minであり、塗布の線速度比は1.3であり、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量は2.0g/m2である。前記セパレータにおいては、第1の有機粒子が無機粒子に嵌めこまれ、コーティングの表面に突起が形成されている。
【0194】
セパレータ2~18および比較用セパレータ1~4は、セパレータ1の製造方法と類似しており、相違点は、第1の有機粒子の数平均粒子径、質量割合、物質の種類はまた粒子形状を調整することであり、詳細は表1に示す。
【0195】
セパレータ19~35は、セパレータ1の製造方法と類似しており、相違点は、コーティングにさらに第2の有機粒子を加え、その数平均粒子径、質量割合、物質種を調整することであり、詳細は表2に示す。
【0196】
二、電池の製造
実施例1
1.正極板の製造
正極活物質であるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)と、導電剤であるカーボンブラック(SuperP)、バインダーであるポリビニリデンフルオライド(PVDF)とを、質量比96.2:2.7:1.1で、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)で均一に混合して正極スラリーを得、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布し、加熱乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断工程を経て正極板を得る。
【0197】
2.負極板の製造
負極活物質である人造黒鉛と、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)とを、質量比96.4:0.7:1.8:1.1で、溶媒である脱イオン水で均一に混合して負極スラリーを得、負極スラリーを負極集電体である銅箔に塗布し、加熱乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断工程を経て負極板を得る。
【0198】
3.セパレータ
セパレータは上記に製造されたセパレータ1を使用する。
【0199】
4.電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを質量比30:70で混合して有機溶媒を得て、十分に乾燥した電解質塩LiPF6を上記混合溶媒に溶解し、電解質塩の濃度を1.0mol/Lとして均一に混合して電解液を得る。
【0200】
5.二次電池の製造
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ね、セパレータを正、負極板の間に介在させて隔離の役割を果たし、続いて巻き取って電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装に入れ、上記で調製した電解液を乾燥後の二次電池アセンブリに注入し、真空封止、静置、化成、整形工程を経て二次電池を得る。
【0201】
実施例2~18、実施例19~35および比較例1~4の二次電池は、実施例1の二次電池と類似しており、相違点は異なるセパレータを用いることであり、詳細は表1に示す。
【0202】
三、電池性能測定
1.25℃サイクル性能
実施例および比較例で製造した二次電池を、25℃で、1Cレートで充電終止電圧4.2Vまで定電流充電し、その後電流≦0.05Cまで定電圧充電し、30min静置し、さらに0.33Cレートで放電終止電圧2.8Vまで定電流放電し、30min静置し、このときの電池容量C0を記録する。この方法で電池に対してサイクル充放電を1500回行い、1500回のサイクル後の電池容量をC1と記録する。
【0203】
電池の25℃でのサイクル容量維持率=C1/C0×100%である。
【0204】
2.熱拡散性能
25℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1Cレートで充電終止電圧4.2Vまで定電流充電し、その後電流≦0.05Cまで定電圧充電し、10min静置し、続いて電池の表面に一枚の金属加熱板を密着させ、治具で締め付け、治具と電池との間に3mmの断熱ガスケットを介在させ、200℃の定温で電池に熱暴走が発生するまで加熱し、電池に熱暴走が発生した時間を記録する。
【0205】
測定された各実施例および比較例の電池性能は、表1および表2に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0206】
表1から明らかなように、特定の数平均粒子径および粒子形状の第1の有機粒子を用いることにより、電池のサイクル性能および安全性能を著しく改善することができる。特に、第1の有機粒子の数平均粒子径、添加量または物質の種類をさらに最適化することにより、電池のサイクル性能および安全性能をさらに向上させることができる。これに対して、本願の数平均粒子径範囲外の第1の有機粒子を用いた比較例1、2は、いずれも本願実施例1~18よりも、サイクル性能および安全性能で劣っている。比較例4は、二次粒子形状の数平均粒子径が本願で限定される範囲にない第1の有機粒子を用いたものであり、その得られた電池性能が本願の実施例1~18よりも著しく劣っていた。比較例3は、本発明で限定される数平均粒子径範囲内の第1の有機粒子を用いているにもかかわらず、その粒子形状が二次粒子であるため、その得られた電池は、サイクル性能および安全性能で、比較例1、2および4よりも若干優れているものの、本願の実施例1~18と同程度の改善が図れない。
【0207】
表2から明らかなように、特定量、特定種類および特定の数平均粒子径範囲の第2の有機粒子をさらに加えることにより、得られる電池の安全性能およびサイクル性能をさらに改善することができる。
【0208】
発明者らは、さらに、本願の範囲内の無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子の他の使用量および材質、他の基材、他の塗布プロセスパラメータおよび他のプロセス条件を用いて実験を行ったところ、実施例1~35と類似した電池のサイクル性能および安全性能の改善効果を得た。
【0209】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0210】
1 電池パック
2 上ケース
3 下ケース
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
52 電極アクセス
53 蓋板