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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】燃料ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20240311BHJP
   F17C 13/12 20060101ALI20240311BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/12 301Z
F17C13/02 301A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022553775
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2021033563
(87)【国際公開番号】W WO2022070866
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020163691
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 恒治
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-019794(JP,A)
【文献】特開昭62-220500(JP,A)
【文献】特開2001-227200(JP,A)
【文献】特開2005-240921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/12
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板、後面板、一端面板、他端面板、上面板を備えたボックス体として形成されたディスペンサ筐体と、
前記ディスペンサ筐体の内部に配設され、空気よりも軽い燃料ガスが加圧された状態でガス蓄圧器から供給されるガス供給管路と、
前記ディスペンサ筐体から延設され、基端側が前記ガス供給管路に連通された充填ホースと、
前記充填ホースの先端側に備えられ、充填対象の燃料タンクの接続口と接続する充填カップリングと、
前記ガス供給管路に設けられ、前記充填カップリングが前記接続口に接続された状態で前記燃料タンクへの燃料ガスの供給、遮断を行う遮断弁と、
前記ディスペンサ筐体内にて前記遮断弁よりも上側に配置され、前記遮断弁の制御を行う制御装置を含む電気機器と、
を備えた燃料ガス充填装置において、
前記ディスペンサ筐体の内部には、前記遮断弁と前記電気機器との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられ、
前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の一端側には、前記一端面板と前記電気機器と遮蔽する縦板との間に位置して上下方向に延びて形成され前記ガス供給管路から漏れ出た燃料ガスを前記ディスペンサ筐体の上側に流通させる垂直流路が設けられ、
前記ディスペンサ筐体の上側には、前記垂直流路の上側に流れた燃料ガスを外部に排出する排出口が設けられ
前記排出口は、前記ディスペンサ筐体の前記一端面板と前記上面板との間に位置して、前記ディスペンサ筐体の前記一端面板の上部に設けられていることを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料ガス充填装置であって、
前記遮蔽部材は、前記ディスペンサ筐体の内部を下側空間と上側空間とに気密状態で分画しており、
前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の他端側であって前記ディスペンサ筐体の前記他端面板には、当該遮蔽部材の他端よりも下側に位置して外部から空気を前記下側空間に流入させる流入口が設けられ
前記遮蔽部材の長さ方向の一端側であって前記縦板には、前記流入口よりも上側に位置して前記垂直流路と前記下側空間とを連通させる連通口が設けられていることを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項3】
ディスペンサ筐体と、
前記ディスペンサ筐体の内部に配設され、空気よりも軽い燃料ガスが加圧された状態でガス蓄圧器から供給されるガス供給管路と、
前記ディスペンサ筐体から延設され、基端側が前記ガス供給管路に連通された充填ホースと、
前記充填ホースの先端側に備えられ、充填対象の燃料タンクの接続口と接続する充填カップリングと、
前記ガス供給管路に設けられ、前記充填カップリングが前記接続口に接続された状態で前記燃料タンクへの燃料ガスの供給、遮断を行う遮断弁と、
前記ディスペンサ筐体内にて前記遮断弁よりも上側に配置され、前記遮断弁の制御を行う制御装置を含む電気機器と、
を備えた燃料ガス充填装置において、
前記ディスペンサ筐体の内部には、前記遮断弁と前記電気機器との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられ、
前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の一端側には、前記電気機器と遮蔽された状態で前記ガス供給管路から漏れ出た燃料ガスを前記ディスペンサ筐体の上側に流通させる垂直流路が設けられ、
前記ディスペンサ筐体の上側には、前記垂直流路の上側に流れた燃料ガスを外部に排出する排出口が設けられ、
前記遮蔽部材は、水平方向に対し、前記垂直流路側となる一端の位置が他端の位置よりも高くなるように傾斜していることを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の燃料ガス充填装置であって、
前記垂直流路の上側には、漏れ出た燃料ガスを検知するガスセンサが設けられていることを特徴とする燃料ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、車両の燃料タンクに水素ガス等の燃料ガスを充填するのに好適に用いられる燃料ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧状態の水素ガス等の燃料ガスを、車両に搭載した燃料タンクに供給して充填するようにした燃料ガス充填装置は知られている。この燃料ガス充填装置は、ディスペンサ筐体と、ディスペンサ筐体の内部に配設され、加圧された燃料ガスがガス蓄圧器から供給されるガス供給管路と、ディスペンサ筐体から延設され、基端側がガス供給管路に連通された充填ホースと、充填ホースの先端側に備えられ、充填対象となる車両の燃料タンクの接続口と接続する充填カップリングと、ガス供給管路に設けられ、充填カップリングが接続口に接続された状態で燃料タンクへの燃料ガスの供給、遮断を行う遮断弁と、ディスペンサ筐体内にて遮断弁よりも上側に配置され、遮断弁の制御を行う制御装置を含む電気機器と、を備えている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180747号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、燃料ガスは、可燃性である。このために、燃料ガスがガス供給管路から漏れ出た場合を想定し、電気機器は、防爆仕様のケース内に収容する必要がある。この防爆仕様のケースには、内部で爆発が発生しても爆発による火炎が外部に噴出しない耐圧防爆構造や、内部の圧力を外部よりも常に高く保つことにより燃料ガスの侵入を防止する内圧防爆構造が採用されている。しかし、電気機器のケースに耐圧防爆構造を用いた場合には、高い剛性、密閉性等を必要とするためにイニシャルコストが嵩んでしまう。また、内圧防爆構造では、内圧を維持するためにケース内に不活性ガス等を常に供給しなくてはならないから、ランニングコストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、ディスペンサ筐体内にて漏れ出た燃料ガスが電気機器に接触するのを防止することにより、コストを低減できるようにした燃料ガス充填装置を提供することにある。
【0006】
本発明の一実施形態は、前面板、後面板、一端面板、他端面板、上面板を備えたボックス体として形成されたディスペンサ筐体と、前記ディスペンサ筐体の内部に配設され、空気よりも軽い燃料ガスが加圧された状態でガス蓄圧器から供給されるガス供給管路と、前記ディスペンサ筐体から延設され、基端側が前記ガス供給管路に連通された充填ホースと、前記充填ホースの先端側に備えられ、充填対象の燃料タンクの接続口と接続する充填カップリングと、前記ガス供給管路に設けられ、前記充填カップリングが前記接続口に接続された状態で前記燃料タンクへの燃料ガスの供給、遮断を行う遮断弁と、前記ディスペンサ筐体内にて前記遮断弁よりも上側に配置され、前記遮断弁の制御を行う制御装置を含む電気機器と、を備えた燃料ガス充填装置において、前記ディスペンサ筐体の内部には、前記遮断弁と前記電気機器との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられ、前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の一端側には、前記一端面板と前記電気機器と遮蔽する縦板との間に位置して上下方向に延びて形成され前記ガス供給管路から漏れ出た燃料ガスを前記ディスペンサ筐体の上側に流通させる垂直流路が設けられ、前記ディスペンサ筐体の上側には、前記垂直流路の上側に流れた燃料ガスを外部に排出する排出口が設けられ、前記排出口は、前記ディスペンサ筐体の前記一端面板と前記上面板との間に位置して、前記ディスペンサ筐体の前記一端面板の上部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ディスペンサ筐体内にて漏れ出た燃料ガスが電気機器に接触するのを防止することができ、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態による燃料ガス充填装置を示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による燃料ガス充填装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る燃料ガス充填装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
まず、図1は本発明の第1の実施形態を示している。本実施形態に係る燃料ガス充填装置1は、例えば、後述する車両19の燃料タンク20に圧縮した燃料ガス(本実施形態では、水素ガス)を供給して充填するため、一般にガス供給ステーションと呼ばれる設備(燃料供給所)等に設置されている。なお、燃料ガスとしては、水素ガス以外にも、天然ガス等が用いられる。
【0011】
燃料ガス充填装置1は、後述のディスペンサ筐体2、ガス供給管路3、充填ホース4、充填カップリング5、遮断弁7、電気機器10、垂直流路11、遮蔽部材13、流入口16、排出口17、ガスセンサ18を含んで構成されている。
【0012】
ディスペンサ筐体2は、例えば、上下方向および左右方向(幅方向)に長尺で、前後方向に短尺な直方体状の建屋として形成されている。ディスペンサ筐体2は、操作パネル、モニタ等が配置される前面板(いずれも図示せず)と、前面板と対面する後面板2Aと、前面板の左辺と後面板2Aの左辺との間の一端面板としての左面板2Bと、前面板の右辺と後面板2Aの右辺との間の他端面板としての右面板2Cと、前面板の上辺と後面板2Aの上辺との間の上面板2Dと、前面板の下辺と後面板2Aの下辺との間の下面板2Eとを備えたボックス体として形成されている。

【0013】
ディスペンサ筐体2は、充填ホース4が配設される左側に位置して縦板2Fを有している。この縦板2Fは、左面板2Bと同等の縦長な長方形状の板体として形成されている。これにより、縦板2Fは、左面板2Bとの間に後述の垂直流路11を形成している。
【0014】
ガス供給管路3は、ディスペンサ筐体2の内部に配設されている。このガス供給管路3には、加圧された燃料ガスがガス蓄圧器21から供給される。加圧された燃料ガスには、空気よりも軽い水素ガスが用いられている。ガス供給管路3のうち、燃料ガスの流れ方向の上流側は、ディスペンサ筐体2の下側に位置する後述の下側空間14に配置されている。一方、ガス供給管路3の下流側は、垂直流路11を上側に延びている。そして、ガス供給管路3の上流端は、ガス蓄圧器21に接続され、下流端は、充填ホース4に接続されている。
【0015】
充填ホース4は、ディスペンサ筐体2の左面板2B側に設けられている。充填ホース4は、可撓性を有する耐圧ホースにより形成されている。充填ホース4は、上流端がガス供給管路3の下流端に接続されている。また、充填ホース4の下流端には、燃料タンク20の接続口20Aに連結される充填カップリング5が設けられている。
【0016】
充填カップリング5は、充填ホース4の下流端に設けられている。充填カップリング5は、車両19の燃料タンク20に設けられた後述の接続口20Aに着脱可能に接続される。充填カップリング5は、接続口20Aに対してロック可能なロック機構(図示せず)を備えている。このロック機構は、燃料ガスを充填しているときに、燃料ガスの圧力によって充填カップリング5が接続口20Aから外れることがないようにロックする。そして、充填カップリング5が燃料タンク20の接続口20Aに接続された状態では、ガス蓄圧器21内の高圧な燃料ガス(水素ガス)は、ガス供給管路3、充填ホース4および充填カップリング5を通じて車両19の燃料タンク20に充填することができる。
【0017】
入口弁6は、ディスペンサ筐体2内に位置してガス供給管路3の途中に設けられている。詳しくは、入口弁6は、ディスペンサ筐体2の下側空間14内に配置されている。入口弁6は、例えば、手動操作により開弁または閉弁することができる。なお、入口弁6は、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。
【0018】
遮断弁7は、ディスペンサ筐体2内に位置してガス供給管路3に設けられている。遮断弁7は、ディスペンサ筐体2の下側空間14内に位置して、入口弁6よりも下流側に設けられた弁装置である。遮断弁7は、充填カップリング5が燃料タンク20の接続口20Aに接続された状態で、燃料タンク20への燃料ガスの供給、遮断を行う。即ち、遮断弁7は、制御装置(図示せず)によって制御されることにより、充填カップリング5を介して車両19の燃料タンク20に燃料ガスを充填するときに開弁される。一方、遮断弁7は、燃料ガスの充填を停止(終了)するときに閉弁される。
【0019】
流量調整弁8は、ディスペンサ筐体2内に位置してガス供給管路3に設けられている。流量調整弁8は、ディスペンサ筐体2の下側空間14内に位置して、例えば、入口弁6と遮断弁7との間に設けられた弁装置である。流量調整弁8は、ガス供給管路3、充填ホース4を通じて供給される燃料ガスの流量を調整するものである。流量調整弁8は、制御装置の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御される。これにより、流量調整弁8は、ガス供給管路3内を流れる燃料ガスの流量、ガス圧を可変に制御する。
【0020】
流量計9は、入口弁6、遮断弁7、流量調整弁8と一緒にディスペンサ筐体2内に位置してガス供給管路3に設けられている。流量計9は、ディスペンサ筐体2の下側空間14内に位置して、流量調整弁8と遮断弁7との間に設けられている。流量計9は、例えば、被測定流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計測器として形成されている。流量計9は、ガス供給管路3内を流れる燃料ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果を制御装置へと出力する。これによって、制御装置は、車両19の燃料タンク20に対する燃料ガスの充填量を演算により求め、車両19に対する燃料の払出し量(給油量に相当)をモニタ等で表示し、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0021】
なお、図1に示すように、ガス供給管路3には、燃料ガスの流れ方向の上流側から順番に、流量調整弁8、流量計9、遮断弁7が配置されている。しかし、これら流量調整弁8、流量計9、遮断弁7の配置順は、図1に示した順番に限定されるものではない。
【0022】
電気機器10は、ディスペンサ筐体2内にて遮断弁7よりも上側に配置されている。電気機器10は、ディスペンサ筐体2の内部の上側に位置する後述の上側空間15に配置されている。電気機器10は、電源のオンオフ切換え、遮断弁7や流量調整弁8の制御等を行う制御装置と、作業手順、各種の経過状況、結果等の情報を報知するモニタ等の報知装置(いずれも図示せず)と、を含んで構成されている。制御装置は、遮断弁7、流量調整弁8等の制御を行うことにより充填対象となる燃料タンク20への燃料供給を制御する。制御装置は、マイクロコンピュータ等の制御ユニットとして構成されている。
【0023】
電気機器10は、ボックス状のケース10Aに収容されている。この電気機器10のケース10Aは、電気部品を塵埃や雨水から保護するだけの容器として形成されている。即ち、ケース10Aは、耐圧防爆構造や内圧防爆構造のケースに比較して安価なものである。
【0024】
垂直流路11は、充填ホース4側となるディスペンサ筐体2の左側に設けられている。垂直流路11は、前面板、後面板2A、左面板2Bおよび縦板2Fによって囲まれることによって上下方向に延びている。垂直流路11は、縦板2Fによって電気機器10と遮蔽されている。垂直流路11は、後述する遮蔽部材13の左端13B(一端)側に配置されている。また、垂直流路11は、上下方向の中間部が連通口12を介して下側空間14に連通し、上部が後述の排出口17に連通している。これにより、垂直流路11には、ガス供給管路3から下側空間14に漏れ出た燃料ガスが連通口12から流入する。垂直流路11は、連通口12から流入したガスを、ディスペンサ筐体2の上側に流通させることにより、排出口17から外部に排出させる。
【0025】
この場合、燃料ガスである水素ガスあるいは天然ガスは空気より軽いため、垂直流路11では上昇気流が発生する。これにより、垂直流路11は、この上昇気流を利用して下側空間14から空気や漏れ出た燃料ガスを積極的に吸引することができる。また、連通口12は、ディスペンサ筐体2の縦板2Fを部分的に切り欠いて形成されている。さらに、連通口12は、遮蔽部材13より下流側に設けられるから、下側空間14内に漏れ出た燃料ガスを垂直流路11に流入させることができる。なお、連通口12は、遮蔽部材13の左端13Bとディスペンサ筐体2の下面板2Eとに亘って大きく開口させることもできる。
【0026】
遮蔽部材13は、ディスペンサ筐体2の内部に設けられている。遮蔽部材13は、左右方向に長尺な長方形状の板体からなる。遮蔽部材13は、前辺が前面板に、後辺が後面板2Aに、左辺が縦板2Fに、右辺が右面板2Cにそれぞれ気密状態で取付けられている。従って、遮蔽部材13は、ディスペンサ筐体2の内部を、下側空間14と上側空間15とに気密状態で分画している。
【0027】
そして、下側空間14には、ガス供給管路3、入口弁6、遮断弁7、流量調整弁8、流量計9等が配設されている。一方、上側空間15には、電気機器10等が配設されている。これにより、上側空間15の電気機器10は、燃料ガスの供給経路から分離されている。この結果、周囲を覆うケース10Aは、電気部品を塵埃や雨水から保護するだけの安価な容器として形成できる。
【0028】
ここで、遮蔽部材13は、長さ方向(水平方向)の垂直流路11側が一端としての左端13Bとなり、ディスペンサ筐体2の右面板2C側が他端としての右端13Aとなっている。また、遮蔽部材13の左端13Bは、垂直流路11の右内面を形成するディスペンサ筐体2の縦板2Fとの接続部分がL字状に形成されている。従って、連通口12の上端角部に段差部が形成されない構造とすることができる。これにより、遮蔽部材13に沿って流れる燃料ガスは、滞留することなく垂直流路11に流通することができる。なお、遮蔽部材の左端の形状は、L字状の角ではなくR状の円弧で形成されてもよい。
【0029】
流入口16は、ディスペンサ筐体2の右面板2Cに設けられている。この右面板2Cは、充填ホース4が設けられている左面板2Bに対向する遮蔽部材13の右端13A(他端)側に位置している。また、流入口16は、遮蔽部材13の右端13Aよりも下側かつ下側空間14の下部に位置した開口として形成されている。流入口16は、外部から下側空間14に空気を流入させる。ここで、空気より軽い燃料ガスが下側空間14に漏れ出た際は、漏洩燃料ガスは、遮蔽部材13および垂直流路11を通って積極的に上側に向けて流通する。従って、下側空間14内および垂直流路11内では、上昇気流が発生し、下側空間14および垂直流路11では、所謂煙突効果が発生する。これにより、下側空間14の流入口16付近内部は、外気よりも若干負圧になる。その結果、流入口16から下側空間14に外部空気をより積極的に流入させることができる。これにより、流入口16は、下側空間14に漏れ出た燃料ガスを排出側となる左側および上方に円滑に流通させることができる。
【0030】
また、ディスペンサ筐体2の垂直方向において連通口12の下端の位置は、流入口16の上端の位置よりも高い位置に設けている。これにより、流入口16から連通口12へ流れる燃料ガスは、積極的に上側に流通させることができる。さらに、流入口16は、充填ホース4、充填カップリング5が設けられている左面板2Bと反対側の右面板2Cに設けられている。従って、例えば、車両19の燃料タンク20の接続口20Aから充填カップリング5を着脱する際には、充填カップリング5と接続口20Aとの間に存在する燃料ガスが外部に放出されても、この燃料ガスが流入口16よりディスペンサ筐体2内に流入することがない。
【0031】
排出口17は、ディスペンサ筐体2の左面板2Bの上部に設けられている。排出口17は、ガス供給管路3から漏れ出た燃料ガスをディスペンサ筐体2の外部に排出する。具体的には、排出口17は、遮蔽部材13の傾斜に沿って左端13B側に流れ、連通口12から垂直流路11に流入し、この垂直流路11を上方に流れた燃料ガスを外部に排出する。なお、排出口17は、ディスペンサ筐体2の左側に配置されればよいから、前面板や後面板2Aの左側に形成してもよい。
【0032】
ガスセンサ18は、垂直流路11の上側、例えば、ディスペンサ筐体2の左面板2Bの上側に取付けられている。ガスセンサ18は、漏れ出た燃料ガスを検知する。ここで、ガスセンサ18は、検知対象となるガス(燃料ガス)の濃度が一定以上となったときに、制御装置に検知信号を出力する。この場合、垂直流路11の上部は、漏れ出た燃料ガスが収束された状態で流通する通路であるから、燃料ガスの濃度が高まり易い。従って、垂直流路11の上部に配置したガスセンサ18は、早期にガス漏れを検知することができる。そして、ガス漏れを検知した場合には、制御装置は、遮断弁7を閉弁させることにより、車両19への燃料ガス充填を中断、停止、禁止させることができる。
【0033】
水素ガス等の燃料ガスを使用して走行する車両19は、一例として図1に示すような4輪自動車(後部のみ図示)により構成されている。車両19には、例えば燃料電池と電動モータ等の駆動装置(いずれも図示せず)と、図1中に点線で示す燃料タンク20等とが設けられている。この燃料タンク20は、例えば車両19の後部側に搭載されている。燃料タンク20は、燃料ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成されている。なお、燃料タンク20は、車両19の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
【0034】
燃料タンク20には、充填カップリング5が着脱可能に取付けられる接続口20A(レセプタクル)が設けられている。そして、車両19の燃料タンク20内には、充填カップリング5が接続口20Aに気密に連結(接続)された状態で燃料ガスの充填が行われる。この間、充填カップリング5は、ロック機構により接続口20Aに対して不用意に外れることがないようにロックされている。
【0035】
ガス蓄圧器21は、高圧に圧縮された燃料ガス(水素ガス)を貯蔵する燃料ガスの供給源として構成されている。このガス蓄圧器21には、ガス供給管路3の上流端が接続されている。
【0036】
本実施形態による燃料ガス充填装置1は、上述の如き構成を有する。次に、燃料ガス充填装置1による燃料ガスの充填作業の一例について説明する。
【0037】
まず、車両19の燃料タンク20に燃料を充填するときには、充填カップリング5を燃料タンク20の接続口20Aに接続してロックする。充填カップリング5を燃料タンク20の接続口20Aに接続したら、電気機器10のモニタ等に設けられた充填開始スイッチをオン側に操作する。これにより、ガス蓄圧器21内の燃料ガス(水素ガス)は、ガス供給管路3、充填ホース4および充填カップリング5等を通じて車両19の燃料タンク20に充填される。
【0038】
ここで、燃料ガス充填装置1では、可燃性の燃料ガスが漏れ出すことが想定される。そこで、ガス供給管路3と遮断弁7との間から燃料ガスが漏れ出た場合を例に挙げて、このときの燃料ガスの流れについて説明する。この説明では、燃料ガスの流れを実線矢印で示し、空気の流れを点線矢印で示している。
【0039】
ガス供給管路3と遮断弁7との間から漏れ出た燃料ガスは、空気よりも軽いから、下側空間14内を周囲に拡散しつつ上側に流れる。下側空間14を上側に流れた燃料ガスは、遮蔽部材13により上側空間15へ侵入することなく、垂直流路11へと流れ込む(上昇する)。そして、下側空間14内および垂直流路11内では、上昇気流が発生し、それによる所謂煙突効果が発生する。従って、下側空間14の流入口16付近内部は、外気よりも若干負圧になる。これにより、下側空間14および垂直流路11では、流入口16から外部空気をより積極的に流入させることができる。
【0040】
このときに、垂直流路11の上側には、漏れ出た燃料ガスを検知するガスセンサ18が設けられているから、このガスセンサ18によって漏れ出た燃料ガスを検知することができる。そして、ガスセンサ18からの検知信号が入力された電気機器10の制御装置は、ガス漏れを報知することができる。
【0041】
かくして、第1の実施形態によれば、ディスペンサ筐体2の内部には、遮断弁7と電気機器10との間を遮蔽する遮蔽部材13と、ガス供給管路3から燃料ガスが漏れ出たときに、垂直流路11を介して燃料ガスを外部に排出する排出口17と、が設けられている。
【0042】
従って、遮蔽部材13は、ガス供給管路3、入口弁6、遮断弁7、流量調整弁8、流量計9等が配設された下側空間14と、電気機器10等が配設された上側空間15との間を遮蔽することができる。これにより、燃料ガスと電気機器10とを分離することができるから、電気機器10のケース10Aは、イニシャルコストやランニングコストを要する防爆仕様ではなく、電気機器10を塵埃や雨水から保護するだけの安価な容器として形成することができる。この結果、漏れ出た燃料ガスが電気機器10に接触するのを簡単な構成で防止することができ、燃料ガス充填装置1のコストを低く抑えることができる。
【0043】
また、ディスペンサ筐体2の遮蔽部材13の左端13B側には、電気機器10と遮蔽された状態でガス供給管路3から漏れ出た燃料ガスをディスペンサ筐体2の上側に流通させる垂直流路11が設けられている。この上で、排出口17は、垂直流路11の上部に連通して設けられている。従って、空気より軽い燃料ガスが下側空間14に漏れ出た際は、漏洩燃料ガスが遮蔽部材13および垂直流路11を通って積極的に上側へ流れる。このため、下側空間14および垂直流路11では、上昇気流が発生し、下側空間14および垂直流路11では所謂煙突効果が発生する。これにより、下側空間14の流入口16付近内部は、外気よりも若干負圧になる。その結果、積極的に流入口16から空気を流入させることができ、漏れ出た燃料ガスを積極的に排出することができる。
【0044】
一方、ディスペンサ筐体2のうち、遮蔽部材13の右端13A側、即ち、右面板2Cには、右端13Aよりも下側に位置して外部から空気を流入させる流入口16が設けられている。従って、流入口16は、遮蔽部材13の傾斜に沿って燃料ガスや空気が右側から左側に向けて流れたときに、外部から下側空間14に空気を流入させる。これにより、流入口16は、下側空間14に漏れ出た燃料ガスを円滑に排出することができる。
【0045】
さらに、垂直流路11の上側には、漏れ出た燃料ガスを検知するガスセンサ18が設けられている。従って、ガスセンサ18は、ディスペンサ筐体2内に漏れ出た燃料ガスを検知することができる。しかも、ガスセンサ18は、垂直流路11の上側に配置しているから、ガスセンサ18の周囲では、漏れ出た燃料ガスが収束された状態で流通する。これにより、ガスセンサ18は、早期にガス漏れを検知することができる。
【0046】
次に、図2は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、遮蔽部材をディスペンサ筐体内にて傾斜させて設けたことにより、遮蔽部材に沿って燃料ガスを垂直流路へ誘導させる構成としたことにある。なお、本実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0047】
図2において、第2の実施形態に係る燃料ガス充填装置31は、第1の実施形態によるディスペンサ筐体2、ガス供給管路3、充填ホース4、充填カップリング5、遮断弁7、電気機器10、流入口16、排出口17と、後述の遮蔽部材32を含んで構成されている。
【0048】
第2の実施形態による遮蔽部材32は、ディスペンサ筐体2の水平方向に対し、垂直流路11側の一端となる左端32Bの位置が他端となる右端32Aよりもが高くなるよう(左上がり)に傾斜している点で、第1の実施形態による遮蔽部材32と相違している。
【0049】
ここで、遮蔽部材32は、水平方向に対し、右面板2C側の端部(右端32A)よりも垂直流路11側の端部(左端32B)の方が高くなるよう傾斜して設けられている。これにより、燃料ガスとしての水素ガスは、空気よりも軽い気体であるため、下側空間14に漏れ出すと、高い方へと流れることになる。即ち、下側空間14を上側に流れて遮蔽部材32に達した燃料ガスは、遮蔽部材32の左上がりの傾斜に沿って左端32B側に案内される。そして、左端32B側に位置する縦板2Fには、垂直流路11に連通する連通口12が形成されているから、遮蔽部材32に沿って案内された燃料ガスを、下側空間14から垂直流路11側に排出することができる。つまり、遮蔽部材32は、垂直流路11へ燃料ガスを案内するガイド部材としての機能を有する。
【0050】
また、遮蔽部材32は、右端32Aが低く、垂直流路11側の左端32Bが高くなるように傾斜している。このため、水素ガスのように空気よりも軽い燃料ガスは、遮蔽部材32の左上がりの傾斜に沿って低い方から排出口17が設けられた左側(垂直流路11)に向けて積極的に流すことができる。これにより、漏れ出た燃料ガスを、垂直流路11を介し排出口17から排出することができる。
【0051】
なお、各実施形態では、車両19の燃料タンク20に圧縮された燃料ガス(水素ガス)を充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両以外のタンクや容器等に圧縮された燃料ガスを充填する際にも適用することができる。また、車両19の燃料タンク20に圧縮された燃料ガスを充填する形態に限らず、他の被充填タンク(容器を含む)に圧縮された燃料ガスを充填する際にも適用することができる。
【0052】
次に、上記実施形態に含まれる燃料ガス充填装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0053】
燃料ガス充填装置の第1の態様としては、ディスペンサ筐体と、前記ディスペンサ筐体の内部に配設され、空気よりも軽い燃料ガスが加圧された状態でガス蓄圧器から供給されるガス供給管路と、前記ディスペンサ筐体から延設され、基端側が前記ガス供給管路に連通された充填ホースと、前記充填ホースの先端側に備えられ、充填対象の燃料タンクの接続口と接続する充填カップリングと、前記ガス供給管路に設けられ、前記充填カップリングが前記接続口に接続された状態で前記燃料タンクへの燃料ガスの供給、遮断を行う遮断弁と、前記ディスペンサ筐体内にて前記遮断弁よりも上側に配置され、前記遮断弁の制御を行う制御装置を含む電気機器と、を備えた燃料ガス充填装置において、前記ディスペンサ筐体の内部には、前記遮断弁と前記電気機器との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられ、前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の一端側には、前記電気機器と遮蔽された状態で前記ガス供給管路から漏れ出た燃料ガスを前記ディスペンサ筐体の上側に流通させる垂直流路が設けられ、前記ディスペンサ筐体の上側には、前記垂直流路の上側に流れた燃料ガスを外部に排出する排出口が設けられていることを特徴としている。
【0054】
燃料ガス充填装置の第2の態様としては、前記第1の態様において、前記ディスペンサ筐体のうち、前記遮蔽部材の長さ方向の他端側には、当該遮蔽部材の他端よりも下側に位置して外部から空気を流入させる流入口が設けられていることを特徴としている。
【0055】
燃料ガス充填装置の第3の態様としては、前記第1の態様において、前記遮蔽部材は、水平方向に対し、前記垂直流路側となる一端の位置が他端の位置よりも高くなるように傾斜していることを特徴としている。
【0056】
燃料ガス充填装置の第4の態様としては、前記第1の態様において、前記垂直流路の上側には、漏れ出た燃料ガスを検知するガスセンサが設けられていることを特徴としている。
【符号の説明】
【0057】
1,31 燃料ガス充填装置
2 ディスペンサ筐体
3 ガス供給管路
4 充填ホース
5 充填カップリング
7 遮断弁
10 電気機器
11 垂直流路
13,32 遮蔽部材
13A,32A 右端(他端)
13B,32B 左端(一端)
16 流入口
17 排出口
18 ガスセンサ
19 車両(充填対象) 20 燃料タンク
20A 接続口
21 ガス蓄圧器
図1
図2