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特許7451771ジアルキルカーボネート類とジオール類を工業的に製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ジアルキルカーボネート類とジオール類を工業的に製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/065 20200101AFI20240311BHJP
   C07C 68/08 20060101ALI20240311BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20240311BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240311BHJP
   C07C 29/128 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 3/22 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C07C68/065
C07C68/08
C07C69/96 Z
C07C31/20 A
C07C29/128
B01D3/14 A
B01D3/22 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022573935
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2021042494
(87)【国際公開番号】W WO2022149357
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021002028
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 広宣
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/069514(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/060894(WO,A1)
【文献】特開2000-300903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 68/065
C07C 68/08
C07C 69/96
B01D 3/14
B01D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留とを同時に行い、生成するジアルキルカーボネートを含む低沸点反応混合物を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、ジオール類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出す反応蒸留方式によって、ジアルキルカーボネートとジオール類とを連続的に製造するにあたり、
(a)該連続多段蒸留塔が、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部を有し、内部にインターナルを有する構造をしており、該インターナルが複数の孔をもつトレイである棚段塔式蒸留塔であり、塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口を有し、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上であり、
(9)該均一系触媒が、アルカリ金属とエチレングリコールとの混合物からなり、該均一系触媒においてアルカリ金属とエチレングリコールとの質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)が0.05~0.5であり、蒸留塔に供給する環状カーボネートに対して触媒濃度(アルカリ金属濃度換算)が0.05~2.0質量%である、
ジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に製造する方法。
【請求項2】
上段において、ガス流量が5,000~45,000kg/時間であり、液流量が1,000~15,000kg/時間であり、
中段において、ガス流量が5,000~30,000kg/時間であり、液流量が1,000~15,000kg/時間であり、
下段において、ガス流量が5,000~20,000kg/時間であり、液流量が1,000~30,000kg/時間である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製造されるジアルキルカーボネートの量が1時間あたり、4.5トン以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
製造されるジオール類の量が1時間あたり、2.5トン以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとのエステル交換反応及び蒸留を行うための連続多段蒸留塔であって、
(a)長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部と、
該胴部の内部にインターナルとして配設される複数の孔をもつトレイと、
塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口と、
塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口と、
該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口と、
該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口と、
を備え、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上である、
連続多段蒸留塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルカーボネート類とジオール類を工業的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアルキルカーボネート類とジオール類を工業的に製造する方法として、例えば、特許文献1には、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行う反応蒸留方式によって、ジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に大量(例えば、ジアルキルカーボネートを1時間あたり2トン以上、ジオール類を1時間あたり1.3トン以上)に製造するにあたり、それらが高選択率及び高生産性で、長期間(例えば、5000時間以上)安定的に高収率で製造できる方法及び装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/069514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法及び装置は、装置の規模に対するジアルキルカーボネート及びジオール類の生産性が十分でない場合がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行う反応蒸留方式によって、ジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に大量に製造するにあたり、安定してさらに高い生産性(例えば、ジアルキルカーボネートを1時間あたり4.5トン以上、ジオール類を1時間あたり2.7トン以上)で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に高選択率及び高収率で製造できる具体的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、塔の長さ及び内径と、塔内の各段トレイのアクティブエリア率及びオープンエリア率とを特定の範囲にすることで、同じ塔の長さ及び内径でジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に大量に製造するにあたり、安定してさらに高い生産性(例えば、特許文献1に記載の目標値(ジアルキルカーボネートを1時間あたり2トン以上、ジオール類を1時間あたり1.3トン以上)の1.3倍以上(すなわち、ジアルキルカーボネートを1時間あたり4.5トン以上、ジオール類を1時間あたり2.7トン以上))で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に高選択率及び高収率で製造できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、下記のとおりである。
[1]
環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留とを同時に行い、生成するジアルキルカーボネートを含む低沸点反応混合物を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、ジオール類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出す反応蒸留方式によって、ジアルキルカーボネートとジオール類とを連続的に製造するにあたり、
(a)該連続多段蒸留塔が、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部を有し、内部にインターナルを有する構造をしており、該インターナルが複数の孔をもつトレイである棚段塔式蒸留塔であり、塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口を有し、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上であり、
(9)該均一系触媒が、アルカリ金属とエチレングリコールとの混合物からなり、該均一系触媒においてアルカリ金属とエチレングリコールとの質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)が0.05~0.5であり、蒸留塔に供給する環状カーボネートに対して触媒濃度(アルカリ金属濃度換算)が0.05~2.0質量%である、
ジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に製造する方法。
[2]
上段において、ガス流量が5,000~45,000kg/時間であり、液流量が1,000~15,000kg/時間であり、
中段において、ガス流量が5,000~30,000kg/時間であり、液流量が1,000~15,000kg/時間であり、
下段において、ガス流量が5,000~20,000kg/時間であり、液流量が1,000~30,000kg/時間である、
請求項1に記載の方法。
[3]
製造されるジアルキルカーボネートの量が1時間あたり、4.5トン以上である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
製造されるジオール類の量が1時間あたり、2.5トン以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとのエステル交換反応及び蒸留を行うための連続多段蒸留塔であって、
(a)長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部と、
該胴部の内部にインターナルとして配設される複数の孔をもつトレイと、
塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口と、
塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口と、
該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口と、
該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口と、
を備え、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上である、
連続多段蒸留塔。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、同じ塔の長さ及び内径でジアルキルカーボネート及びジオール類を工業的に大量に製造するにあたり、安定してさらに高い生産性(例えば、特許文献1に記載の目標値(ジアルキルカーボネートを1時間あたり2トン以上、ジオール類を1時間あたり1.3トン以上)の1.3倍以上(すなわち、ジアルキルカーボネートを1時間あたり4.5トン以上、ジオール類を1時間あたり2.7トン以上))で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に高選択率及び高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のジアルキルカーボネート及びジオール類の製造に用いられる製造装置の一例を示す図である。
図2】本発明に用いる連続多段蒸留塔内のトレイの構造の一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本実施形態のジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に製造する方法は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留とを同時に行い、生成するジアルキルカーボネートを含む低沸点反応混合物を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、ジオール類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出す反応蒸留方式によって、ジアルキルカーボネートとジオール類とを連続的に製造するにあたり、
(a)該連続多段蒸留塔が、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部を有し、内部にインターナルを有する構造をしており、該インターナルが複数の孔をもつトレイである棚段塔式蒸留塔であり、塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口を有し、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されており、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上であり
(9)該均一系触媒が、アルカリ金属とエチレングリコールとの混合物からなり、該均一系触媒においてアルカリ金属とエチレングリコールとの質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)が0.05~0.5であり、蒸留塔に供給する環状カーボネートに対して触媒濃度(アルカリ金属濃度換算)が0.05~2.0質量%である。
【0012】
本実施形態の製造方法は、上記構成とすることにより、ジアルキルカーボネートとジオール類とを工業的に製造するにあたり、安定してさらに高い生産性(例えば、ジアルキルカーボネートを1時間あたり4.5トン以上、ジオール類を1時間あたり2.7トン以上)で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に高選択率及び高収率で製造できる。
【0013】
本実施形態の製造方法に用いる反応は、環状カーボネート(A)と脂肪族1価アルコール類(B)とから、ジアルキルカーボネート(C)とジオール類(D)とが生成する下記式で表わされる可逆平衡なエステル交換反応である。
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、Rは2価の基-(CH)m-(mは2~6の整数)を表わし、その1個以上の水素は炭素数1~10のアルキル基やアリール基によって置換されていてもよい。また、Rは炭素数1~12の1価の脂肪族基を表わし、その1個以上の水素は炭素数1~10のアルキル基やアリール基で置換されていてもよい。)
【0016】
本実施形態の製造方法において、原料として用いられる環状カーボネートとは、上式において(A)で表される化合物である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネ-ト類や、1,3-ジオキサシクロヘキサー2-オン、1,3-ジオキサシクロヘプタ-2-オンなどが好ましく用いられ、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが入手の容易さなどの点から更に好ましく使用され、エチレンカーボネートが特に好ましく使用される。
【0017】
また、もう一方の原料である脂肪族1価アルコール類とは、上式において(B)で表わされる化合物である。脂肪族1価アルコール類としては、生成するジオール類より沸点が低いものが用いられることが好ましい。したがって、脂肪族1価アルコール類としては、使用する環状カーボネートの種類によっても変わり得るが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、アリルアルコール、ブタノール(各異性体)、3-ブテン-1-オール、アミルアルコール(各異性体)、-キシルアルコール(各異性体)、-ブチルアルコール(各異性体)、オクチルアルコール(各異性体)、ノニルアルコール(各異性体)、デシルアルコール(各異性体)、ウンデシルアルコール(各異性体)、ドデシルアルコール(各異性体)、シクロペンタノール、シクロ-キサノール、シクロ-ブタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール(各異性体)、エチルシクロペンタノール(各異性体)、メチルシクロ-キサノール(各異性体)、エチルシクロ-キサノール(各異性体)、ジメチルシクロ-キサノール(各異性体)、ジェチルシクロ-キサノール(各異性体)、フェニルシクロ-キサノール(各異性体)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール(各異性体)、フェニルプロパノール(各異性体)などが挙げられ、さらにこれらの脂肪族1価アルコール類において、ハロゲン、低級アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシロキシ基、ニトロ基等の置換基によって置換されていてもよい。
【0018】
このような脂肪族1価アルコール類の中で、好ましく用いられるのは炭素数1-6のアルコール類であり、さらに好ましいのはメタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)の炭素数1-4のアルコール類である。環状カーボネートとしてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネ-トを使用する場合に好ましいのはメタノール、エタノールであり、特に好ましいのはメタノールである。
【0019】
本実施形態の製造方法において、原料である環状カーボネートは、1つ以上の第1の導入口から連続多段蒸留塔に連続的に導入され、また、原料である脂肪族1価アルコールは、1つ以上の第2の導入口から連続多段蒸留塔に連続的に導入される。各原料をこのような位置から連続多段蒸留塔に連続的に導入することにより、最適なジアルキルカーボネートとジオール類との反応効率を達成し充分な生産量を確保でき、また最適な分離性能を達成しジアルキルカーボネートとジオール類とを充分に確保できる。
【0020】
本実施形態の製造方法においては、反応蒸留塔内に均一系触媒を存在させる。均一系触媒を存在させる方法はどのような方法であってもよいが、反応蒸留塔内に連続的に触媒を供給することにより、反応蒸留塔内の液相に触媒を存在させることが好ましい。
【0021】
均一系触媒を反応蒸留塔内に連続的に供給する場合には、環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールと同時に供給してもよいし、原料とは異なる位置に供給してもよい。該蒸留塔内で実際に反応が進行するのは触媒供給位置から下の領域であることから、塔頂から原料供給位置までの間の領域に該触媒を供給することが好ましい。そして該触媒が存在する段は5段以上あることが好ましく、より好ましくは7段以上であり、さらに好ましくは10段以上である。
【0022】
本実施形態の製造方法において用いられる触媒としてはアルカリ金属とエチレングリコールとの混合物からなる化合物である。また、該均一系触媒においてアルカリ金属とエチレングリコールとの質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)は、0.05~0.5であり、0.1~0.4であることが好ましく、0.2~0.3であることがより好ましい。アルカリ金属とエチレングリコールとの質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)が前記範囲であると、ジアルキルカーボネートとジオール類との生成を促進するとともに不純物の生成を抑制できる。また、蒸留塔に供給する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート(EC))に対して触媒濃度(アルカリ金属濃度換算)は、0.05~2.0質量%である。
【0023】
本実施形態の製造方法において用いられる触媒中のアルカリ金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウムが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウムである。
【0024】
本実施形態の製造方法で用いられる触媒の量(アルカリ金属濃度換算)は、供給原料である環状カーボネートの質量に対する割合で表わして、通常0.05~2.0質量%であり、好ましくは0.1~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0025】
触媒の量が前記下限値以上であると、反応及び収率が十分となり、生産量が向上する。また、触媒の量が前記上限値以下であると、不純物(高沸点成分)が抑制され、製品純度が向上する。また、不純物(高沸点成分)とともに触媒の一部が系外への抜出されることが抑制でき、触媒のロスが減少する。
【0026】
本実施形態の製造方法において反応蒸留塔である連続多段蒸留塔(例えば、段数n)に、環状カーボネートを連続的に供給する場合、特定の段に供給することが好ましい。例えば、原料である該環状カーボネートは、該連続多段蒸留塔の上から3段目以下であって、該連続多段蒸留塔の上から(n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入することが好ましい。環状カーボネート導入口から上の段は、該環状カーボネート、ジオール類などの高沸点化合物が塔頂成分中に含まれないようにすることが好ましい。この意味で、環状カーボネート導入口から上の段は3段以上あることが好ましく、より好ましくは4段~10段であり、さらに好ましくは5段~8段である。
【0027】
本実施形態の製造方法において、連続多段蒸留塔内のインターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなる。
【0028】
上段は、1つ以上の第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、中段は、1つ以上の第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、下段は、1つ以上の第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段である。
【0029】
本実施形態の製造方法において、上段、中段及び下段を合計した段数nは、好ましくは10~100段であり、より好ましくは30~100段、さらに好ましくは30~80段である。
【0030】
また、本実施形態の製造方法において、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、3~10%であることが好ましく、5~10%であることがより好ましい。また、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、40~45%であることが好ましく、40~43%であることがより好ましい。また、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、48~55%であることが好ましく、50~55%であることがより好ましい。上段、中段及び下段の割合を前記範囲とすると、最適なジアルキルカーボネートとジオール類との反応効率を達成し生産量を充分に確保でき、また最適な分離性能を達成しジアルキルカーボネートとジオール類とを充分に確保できる。
【0031】
本実施形態に用いられる好ましい環状カーボネートは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシドなどのアルキレンオキシドと二酸化炭素との反応によって製造されたハロゲンを含まない環状カーボネートである。したがって、これらの原料化合物や、ジオール類などを少量含む環状カーボネートを、本実施形態の原料として用いることもできる。環状カーボネートとしてはバイオマス由来のものであってもよい。例えばバイオエタノールを原料として得られる環状カーボネートが挙げられる。
【0032】
本実施形態において、原料である脂肪族1価アルコールは、純度の高い脂肪族1価アルコールであってもよいし、他の化合物を含む脂肪族1価アルコールであってもよい。具体的には、例えば、脂肪族1価アルコールとジアルキルカーボネ-トとの合計質量に対して、ジアルキルカーボネ-トが1~15質量%含有する脂肪族1価アルコールが好ましく用いられ、ジアルキルカーボネ-トが1.5~12質量%含有する脂肪族1価アルコールがより好ましく用いられ、さらに好ましくはジアルキルカーボネ-トが2~10質量%含有する脂肪族1価アルコールが用いられる。
【0033】
本反応を工業的に実施する場合、新規に反応系に導入される環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールに加え、この工程及び/又は他の工程で回収された、環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールを主成分とする物質が、これらの原料として使用できることは好ましいことである。本実施形態の製造方法はこのことを可能にし、これは本実施形態の製造方法の優れた特徴の一つである。他の工程とは、特に限定されないが、例えば、ジアルキルカーボネ-トと芳香族モノヒドロキシ化合物とからジアリールカーボネ-トを製造する工程が挙げられる。この工程では、脂肪族1価アルコールが副生し、回収される。この回収副生脂肪族1価アルコールには、通常ジアルキルカーボネ-トが含まれているが、その含有量が上記の範囲である場合、本実施形態の製造方法の優れた効果が一層発現することができる。さらには、この回収副生脂肪族1価アルコールには、芳香族モノヒドロキシ化合物、アルキルアリールエーテル、少量のアルキルアリールカーボネ-ト、ジアリールカーボネ-トなどが含まれる場合がある。本実施形態の製造方法では、この副生脂肪族1価アルコールをそのままで原料として用いることもできるし、蒸留等により該脂肪族1価アルコールよりも沸点の高い含有物質量を減少させた後に原料とすることもできる。
【0034】
本実施形態の製造方法において反応蒸留塔である連続多段蒸留塔(例えば、段数n)に、脂肪族1価アルコールを連続的に供給する場合、特定の段に供給することが好ましい。例えば、本実施形態の製造方法では、原料である脂肪族1価アルコールが、該連続多段蒸留塔の上から(n/3)段目から下であって、該連続多段蒸留塔の上から(2n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入されることが好ましい。本実施形態の製造方法で原料として用いられる脂肪族1価アルコールが特定量のジアルキルカーボネートを含有している場合、その導入口を特定の段にすることによって、本実施形態の製造方法の優れた効果が一層発現することができる。より好ましくは、脂肪族1価アルコールが、該連続多段蒸留塔の上から(2n/5)段目から下であって、該連続多段蒸留塔の上から(3n/5)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入される場合である。
【0035】
原料は液状、ガス状又は液とガスとの混合物として該蒸留塔に連続的に供給されることが好ましい。このようにして原料を該蒸留塔に供給する以外に、付加的にガス状の原料を該蒸留塔の中央部及び/又は下部から断続的又は連続的に供給することも好ましい方法である。また、環状カーボネートを触媒の存在する段よりも上部の段に液状又は気液混合状態で該蒸留塔に連続的に供給し、該蒸留塔の上記の段に設置された1つ以上の導入口から該脂肪族1価アルコールをガス状及び/又は液状で連続的に供給する方法も好ましい方法である。そしてこれらの原料が該蒸留塔の少なくとも5段以上、好ましくは7段以上、より好ましくは10段以上の領域において触媒と接触させるようにすることが好ましい。
【0036】
本実施形態の製造方法において、反応蒸留塔に供給する環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類との量比は、エステル交換触媒の種類や量及び反応条件によっても異なるが、好ましくは、供給される環状カーボネートに対して、脂肪族1価アルコール類はモル比で0.01~1,000倍の範囲で供給することができる。環状カーボネートの反応率を上げるためには脂肪族1価アルコール類を2倍モル以上の過剰量供給することが好ましいが、あまり大過剰に用いると装置を大きくすることが必要な場合がある。このような意味において、環状カーボネートに対する脂肪族1価アルコール類のモル比は、2~20が好ましく、さらに好ましくは3~15、さらにより好ましくは5~12である。なお、未反応環状カーボネートが多く残存していると、生成物であるジオール類と反応して2量体、3量体などの多量体を副生するので、工業的に実施する場合、未反応環状カーボネートの残存量をできるだけ減少させることが好ましい。本実施形態の製造方法では、このモル比が10以下であっても、環状カーボネートの反応率を98%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.9%以上にすることが可能である。このことも本実施形態の製造方法の特徴のひとつである。
【0037】
本実施形態の製造方法においては、好ましくは1時間あたり4.5トン以上のジアルキルカーボネートを連続的に製造することができるが、そのために連続的に供給される環状カーボネートの最低量は、製造すべきジアルキルカーボネ-トの量(pトン/時間)に対して、通常2.0pトン/時間、好ましくは、1.5pトン/時間、より好ましくは1.3pトン/時間である。さらに好ましい場合は、1.0pトン/時間よりも少なくできる。
【0038】
図1は、本実施形態に係る製造方法に用いる連続多段蒸留塔の一例を示す概略図である。ここで、本実施形態の製造方法において用いられる連続多段蒸留塔10とは、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部7の上下に鏡板部5を有し、内部に段数nをもつインターナルを有する構造をしており、該インターナルが複数の孔をもつトレイである棚段塔式蒸留塔であって、塔項部又はそれに近い塔の上部に内径d(cm)のガス抜出し口1と、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d(cm)の液抜出し口2と、該ガス抜出し口1より下部であって該連続多段蒸留塔の上から3段目以下であって、該連続多段蒸留塔の上から(n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口第1の導入口3(a、e)と、該液抜出し口2より上部であって、該連続多段蒸留塔の上から(n/3)段目から下であって、該連続多段蒸留塔の上から(2n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の第2の導入口3(b、c)、4(a、b)とを有するものであるが、蒸留だけでなく反応も同時に行って、1時間あたり好ましくは4.5トン以上のジアルキルカーボネ-ト及び/又は1時間あたり好ましくは2.5トン以上のジオール類を長期間安定的に製造できるものとするには種々の条件を満足させることが好ましい。なお、図1は、本実施形態に係る製造方法に用いる連続多段蒸留塔の一つの実施態様であるため、棚段の配置は、図1に示す構成に限定されるものではない。
【0039】
本実施形態に係る連続多段蒸留塔は、単なる蒸留機能からの条件だけではなく、安定的に高反応率でしかも高選択率で反応を進行させるために必要な条件を複合したものである。具体的には、本実施形態の連続多段蒸留塔は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとのエステル交換反応及び蒸留を行うための連続多段蒸留塔であって、
(a)長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部と、
該胴部の内部にインターナルとして配設される複数の孔をもつトレイと、
塔項部又はそれに近い塔の上部にガス抜出し口と、
塔底部又はそれに近い塔の下部に液抜出し口と、
該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口と、
該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口と、
を備え、
(1)塔の長さL(cm)が式(1)を満足するものであり、
1,500 ≦ L ≦ 12,000 式(1)
(2)塔の内径D(cm)が式(2)を満足するものであり、
120 ≦ D ≦ 3,000 式(2)
(3)該インターナルは、上段、中段及び下段の3種類のトレイからなり、
(4)原料である環状カーボネートが、1つ以上の該第1の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、上段は、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口の段より上部の段であり、上段のトレイの数の割合は、全段数のうち1~10%であり、
(5)原料である脂肪族1価アルコールが、1つ以上の該第2の導入口から該連続多段蒸留塔に連続的に導入され、中段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段から、1つ以上の該第1の導入口のうちの最上段の導入口までの段であり、中段のトレイの数の割合は、全段数のうち40~50%であり、
(6)下段は、1つ以上の該第2の導入口のうちの最上段の導入口の段より下部の段であり、下段のトレイの数の割合は、全段数のうち45~55%であり、
(7)下段の各段トレイにおいて、下記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、下記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は1.0~5.0%であり、
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
(8)上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合は40~80%であり、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合は下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上である。
【0040】
なお、本実施形態の連続多段蒸留塔における上記要件(1)~(8)については、本実施形態の製造方法における要件(1)~(8)と同様である。
【0041】
また、本実施形態の製造方法は、上段において、ガス流量が5,000~45,000kg/時間であることが好ましく、液流量が1,000~15,000kg/時間であることが好ましい。
【0042】
また、本実施形態の製造方法は、中段において、ガス流量が5,000~30,000kg/時間であることが好ましく、液流量が1,000~15,000kg/時間であることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態の製造方法は、下段において、ガス流量が5,000~20,000kg/時間であることが好ましく、液流量が1,000~30,000kg/時間であることが好ましい。
【0044】
また、本実施形態の製造方法において、製造されるジアルキルカーボネートが1時間あたり、4.5トン以上であることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態の製造方法において、製造されるジオール類が1時間あたり、2.5トン以上であることが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態で用いる用語「塔項部又はそれに近い塔の上部」とは、塔項部から下方に約0.25Lまでの部分を意味し、用語「塔底部又はそれに近い塔の下部」とは、塔底部から上方に約0.25Lまでの部分を意味する。また、「L」は、前述の定義とおりである。
【0047】
本実施形態の製造方法は、単なる蒸留だけではなく、反応も同時に行う反応蒸留法であって、しかも高反応率及び高選択率(高収率)を達成しているが、そのためには、上記式(1)~(2)に加えて、この各原料の導入口の段、及び各トレイのアクティブエリアとオープンエリアとを特定の範囲にすることが重要であることが見出されたのである。なお、各々の要因の好ましい範囲は下記に示される。
【0048】
L(cm)が1,500以上であると、反応率が向上するため目的とする生産量を達成でき、L(cm)が12,000以下であると、目的の生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させることができる。好ましいL(cm)の範囲は、2,000≦L≦10,000であり、より好ましくは、2,200≦L≦15,000であり、さらに好ましくは、2,500≦L≦5,000である。
【0049】
また、D(cm)が120以上であると、目的とする生産量を達成でき、D(cm)が3,000以下であると、目的の生産量を達成しつつ設備費を低下させることができる。好ましいD(cm)の範囲は、150≦D≦2,000であり、より好ましくは、180≦D≦1,200、さらに好ましくは、210≦D≦800である。
【0050】
本実施形態で用いられる連続多段蒸留塔は、インターナルとして複数の孔をもつトレイをn段有する棚段塔式蒸留塔であることが好ましい。本実施形態でいうインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行なわせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ、UFM(Sulzer社製)等のハイパフォーマンストレイ等が好ましい。この連続多段蒸留塔において触媒が存在せず、実質的に反応が起こらない段(たとえば、触媒導入段より上部の段)がある場合、この段に充填物を充填した蒸留塔、すなわち、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔とすることも好ましい。このような充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。なお、本実施形態でいう用語「段数n」とは、トレイの場合は、トレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔の場合の段数nは、トレイの数と理論段数の合計である。
【0051】
本実施形態の製造方法においては、n段の上記のトレイのいずれを用いても、高反応率、高選択率及び高生産性を達成することができるが、該トレイが多孔板部(トレイデッキ部分)とダウンカマ一部とを有する多孔板トレイが機能と設備費との関係で特に好ましい。また、該多孔板トレイは、該多孔板部の面積1mあたり100~1,000個の孔を有していることが好ましい。より好ましい孔数は該多孔板部の面積1mあたり120~900個であり、さらに好ましくは、150~800個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積は0.5~5cmであることが好ましい。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7~4cmであり、さらに好ましくは0.9~3cmである。さらには、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1mあたり100~1,000個の孔を有しており、かつ、孔1個あたりの断面積が0.5~5cmである場合、特に好ましい。また、該多孔板部の孔数は、上記(7)及び(8)の要件を満たしていれば、全ての多孔板において同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0052】
図2に本実施形態に用いる連続多段蒸留塔内のトレイの構造の一例の概念図を示す。図2に示すとおり、蒸留塔内のトレイは、ダウンカマー部分11及びトレイデッキ部分13を有し、トレイデッキ部分13のうち孔14(図2中、小丸で示される部分が各孔を示す)がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界15からさらに外側に4インチまでの範囲)がアクティブエリア12である。該アクティブエリア12で蒸留中、実際に液と蒸気とが接触し、また、該ダウンカマー部分13で、トレイデッキ部分13上で泡立った液を、液と蒸気とに分け、液だけを下の段に送る。
【0053】
本実施形態に用いる各段トレイにおけるアクティブエリアの割合は、下記式(i)で算出される。
【0054】
アクティブエリアの割合(%)=アクティブエリア面積(cm)/トレイ面積(cm)×100・・・(i)
(式(i)中、アクティブエリア面積とは、トレイデッキ部分のうち孔がある区画(全ての孔を含む最小の区域の境界からさらに外側に4インチまでの範囲)の面積であり、トレイ面積とは、トレイデッキ部分の面積であり、アクティブエリア面積を含み、ダウンカマー部分を含まない面積である。)
【0055】
また、本実施形態に用いる各段トレイにおけるオープンエリアの割合は、下記式(ii)で算出される。
【0056】
オープンエリアの割合(%)=オープンエリア面積(cm)/アクティブエリア面積(cm)×100・・・(ii)
(式(ii)中、オープンエリア面積とは、アクティブエリアにおける全ての孔の合計面積であり、アクティブエリア面積とは、式(i)と同義である。)
【0057】
また、本実施形態に用いる上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合(%)は、40~80%であり、好ましくは、40~70%であり、さらに好ましくは45~65%であり、特に好ましくは、45~55%である。また、本実施形態に用いる下段の各段トレイにおいて、上記式(i)で算出されるアクティブエリアの割合(%)は、40~80%であり、好ましくは、40~70%であり、さらに好ましくは45~65%、特に好ましくは、45~55%である。また、本実施形態に用いる下段の各段トレイにおいて、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合(%)は、1.0~5.0%であり、好ましくは、1.0~4.0%であり、さらに好ましくは2.0~3.5%である。また、本実施形態に用いる上段及び中段の各段トレイにおいて、上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合(%)は、下段の各段トレイにおける上記式(ii)で算出されるオープンエリアの割合の1.0倍以上であり、好ましくは1.0~6.0倍であり、より好ましくは、1.0~3.0倍、さらに好ましくは1.0~1.5倍である。
【0058】
上段、中段及び下段それぞれの各段トレイにおいて、アクティブエリア及びオープンエリアの割合を上記下限値以上とすることにより、塔内差圧が低下し、処理能力が向上し、反応が十分に進行し、収率が向上し、生産量が向上する。また、上段、中段及び下段それぞれの各段トレイにおいて、アクティブエリア及びオープンエリアの割合を上記上限値以下とすることにより、反応生成物の分離が十分となり、製品純度が向上し、反応が十分に進行し、収率が向上し、生産量が向上する。
【0059】
本実施形態の製造方法を実施する場合、上段、中段及び下段それぞれにおいて、ガス流量及び液流量を制御することが好ましい。
【0060】
本実施形態に用いる上段において、ガス流量(kg/時間)は、好ましくは、5,000~45,000kg/時間であり、より好ましくは、10,000~25,000kg/時間であり、さらに好ましくは15,000~25,000kg/時間である。
【0061】
本実施形態に用いる中段において、ガス流量(kg/時間)は、好ましくは、5,000~30,000kg/時間であり、より好ましくは、10,000~25,000kg/時間であり、さらに好ましくは10,000~20,000kg/時間である。
【0062】
本実施形態に用いる下段において、ガス流量(kg/時間)は、好ましくは、5,000~20,000kg/時間であり、より好ましくは、5,000~10,000kg/時間である。
【0063】
本実施形態に用いる上段において、液流量(kg/時間)は、好ましくは、1,000~15,000kg/時間であり、より好ましくは、3,000~10,000kg/時間であり、さらに好ましくは4,000~8,000kg/時間である。
【0064】
本実施形態に用いる中段において、液流量(kg/時間)は、好ましくは、1,000~15,000kg/時間であり、より好ましくは、3,000~10,000kg/時間であり、さらに好ましくは3,000~8,000kg/時間である。
【0065】
本実施形態に用いる下段において、液流量(kg/時間)は、好ましくは、1,000~30,000kg/時間であり、より好ましくは、5,000~20,000kg/時間であり、さらに好ましくは5,000~15,000kg/時間である。
【0066】
本実施形態に用いる上段、中段及び下段それぞれのガス流量及び液流量を上記下限値以上とすると、反応生成物の分離が十分となり、製品純度が向上し、反応が十分に進行し、収率が向上し、生産量が向上する。また、本実施形態に用いる上段、中段及び下段それぞれのガス流量及び液流量を上記上限値以下とすると、塔内差圧が低下し、処理能力が向上し、反応が十分に進行し、収率が向上し、生産量が向上する。
【0067】
連続多段蒸留塔に上記の条件を付加することによって、本発明の課題が、より容易に達成される。
【0068】
本実施形態の製造方法を実施する場合、原料である環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類とを触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するジアルキルカーボネ-トを含む低沸点反応混合物を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、ジオール類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出すことによりジアルキルカーボネ-トとジオール類とが連続的に製造される。
【0069】
本実施形態の製造方法で行われるエステル交換反応の反応時間は連続多段蒸留塔内での反応液の平均滞留時間に相当すると考えられるが、これは蒸留塔のインターナルの形状や、段数、原料供給量、触媒の種類や量、反応条件などによって異なるが、好ましくは0.1~20時間、より好ましくは0.5~15時間、さらに好ましくは1~10時間である。
【0070】
本実施形態の製造方法で行われるエステル交換反応の反応温度は、用いる原料化合物の種類や触媒の種類や量によって異なるが、好ましくは30~300℃である。反応速度を高めるためには反応温度を高くすることが好ましいが、反応温度が高いと副反応も起こりやすくなる。そのため、より好ましい反応温度は40~250℃、さらに好ましくは50~200℃、特に好ましくは、60~150℃の範囲である。本実施形態の製造方法においては、塔底温度として、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下、特により好ましくは100℃以下にして反応蒸留を実施することが可能である。このような低い塔底温度であっても高反応率、高選択率及び高生産性を達成できることは、本発明の優れた特徴のひとつである。また、本実施形態の製造方法で行われるエステル交換反応の反応圧力は、用いる原料化合物の種類や組成、反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは1Pa~2×10Paであり、より好ましくは、10Pa~10Paであり、さらに好ましくは10~5×10Paである。
【0071】
本実施形態で用いられる連続多段蒸留塔を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、主に炭素鋼、ステンレススチールなどの金属材料が挙げられ、製造するジアルキルカーボネートとジオール類との品質の面からは、ステンレススチールが好ましい。
【実施例
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
<連続多段蒸留塔>
図1に示されるような塔の長さL:3300cm、塔の内径D:300cm、L/D:11、段数n:60、塔の内径Dとガス抜出し口の内径dとの比(D/d):7.5、塔の内径Dと液抜出し口の内径dとの比(D/d):12である連続多段蒸留塔(棚段塔式蒸留塔)を用いた。この蒸留塔のトレイは複数の孔をもつ多孔板トレイであり、多孔板部の孔1個あたりの断面積は、約1.3cmであった。また、この蒸留塔のインターナル(トレイ)の構造は設置する箇所で異なり上段、中段及び下段の3種のトレイの構造があった。上段は環状カーボネート(エチレンカーボネート)の導入口(蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a))より上部の段であった。上段のトレイの数は、5であり、全段数60のうちの8.3%であった。また、上段の各段トレイのアクティブエリアの割合は45%であり、且つオープンエリアの割合は4.5%であった。また、中段は環状カーボネート(エチレンカーボネート)の導入口(蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a))の段及びそれより下部の段であって、脂肪族1価アルコール(メタノール)の導入口(蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)及び(3-c))の段及びそれより上部の段であった。中段のトレイの数は、24であり、全段数60のうちの40%であった。また、中段の各段トレイのアクティブエリアの割合は45%であり、且つオープンエリアの割合は3.5%であった。また、下段は脂肪族1価アルコール(メタノール)の導入口(蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)及び(3-c))の段より下部の段であった。下段のトレイの数は、31であり、全段数60のうちの51.7%であった。また、下段の各段トレイのアクティブエリアの割合は45%であり、且つオープンエリアの割合は3.0%であった。
【0074】
<反応蒸留>
図1に示される連続多段蒸留塔において、液状のエチレンカーボネートが4.7トン/時間の流量で、蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a)から蒸留塔に連続的に導入された。ガス状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを8.8質量%含む)が4.622トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)から蒸留塔に連続的に導入され、液状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを6.5質量%含む)が10.695トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-c)から蒸留塔に連続的に導入された。
触媒はアルカリ金属とエチレングリコールとの混合物からなり、当該触媒においてエチレングリコールに対するアルカリ金属の質量比(アルカリ金属/エチレングリコール)は0.2~0.3の範囲にあった。当該触媒は、アルカリ金属(カリウム)2.5トンにエチレングリコール4.8トンを加え、約130℃に加熱し約1300Paで約3時間加熱処理し均一溶液にすることにより合成した均一系触媒であった。この均一系触媒溶液を、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して1.0質量%)。塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.52の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔の上段では、ガス流量が19600~23000kg/時間、液流量が6000~7700kg/時間の範囲にあり、塔の中段では、ガス流量が9250~16000kg/時間、液流量が5800~6500kg/時間の範囲にあり、塔の下段ではガス流量が5280~10000kg/時間、液流量が7980~14900kg/時間の範囲にあった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から15.246トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は5.283トン/時間で、メタノールの割合は8.429トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から4.883トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、3.027トン/時間であり、メタノールの割合は1.303トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は7.6kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いた、ジメチルカーボネ-トの1時間あたりの実質生産量は4.651トンであり、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は2.955トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.7%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は99.99%以上であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後及び6000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に4.661トン、4.682トン、4.661トン、4.661トン及び4.692トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に2.982トン、2.955トン、2.9222トン、2.952トン及び2.996トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.89%、99.90%、99.90%、99.88%及び99.92%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であった。
【0075】
[実施例2]
<連続多段蒸留塔>
実施例1と同じ連続多段蒸留塔を用いて、トレイ構造を以下のとおり変更して反応蒸留を行った。上段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は60%であり、且つオープンエリアの割合は5.0%であった。また、中段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は60%であり、且つオープンエリアの割合は4.0%であった。また、下段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は45%あり、且つオープンエリアの割合は3.5%であった。
【0076】
<反応蒸留>
以下の記載条件以外は実施例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。
触媒は、実施例1と同様に合成し、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して0.5質量%)。塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.6の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔上段では、ガス流量が21200~24500kg/時間、液流量が4730~6250kg/時間の範囲にあり、中段では、ガス流量が10040~19200kg/時間、液流量が4630~6000kg/時間の範囲にあり、下段ではガス流量が6170~9490kg/時間、液流量が7200~14100kg/時間の範囲であった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から15.246トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は5.577トン/時間であり、メタノールの割合は8.898トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から4.639トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、3.200トン/時間であり、メタノールの割合は1.376トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は5.6kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いたジメチルカーボネ-トの1時間あたりの実質生産量は4.920トンであり、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は3.119トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.88%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は99.99%以上であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後及び6000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に4.630トン、4.828トン、4.639トン及び4.635トン、4.728トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に3.222トン、3.283トン、3.265トン、3.226トン及び3.232トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.99%、99.99%、99.99%、99.99%及び99.99%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であった。
【0077】
[実施例3]
<連続多段蒸留塔>
実施例1と同じ連続多段蒸留塔を用いて、トレイ構造を以下のとおり実施例1と同じ状態とし、蒸留塔に導入する原料の量を変更して反応蒸留を行った。
上段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は45%であり、且つオープンエリアの割合は4.5%であった。また、中段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は45%であり且つオープンエリアの割合は3.5%であった。また、下段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は45%あり且つオープンエリアの割合は3.0%であった。
図1に示される連続多段蒸留塔において、液状のエチレンカーボネートが8.68トン/時間の流量で、蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a)から蒸留塔に連続的に導入された。ガス状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを8.8質量%含む)が8.53トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)から蒸留塔に連続的に導入され、液状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを6.5質量%含む)が19.74トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-c)から蒸留塔に連続的に導入された。
【0078】
<反応蒸留>
以下の記載条件以外は実施例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。
触媒は、実施例1と同様に合成し、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して0.6質量%)。塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.45の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔上段では、ガス流量が36260~42550kg/時間、液流量が11100~14250kg/時間の範囲にあり、中段では、ガス流量が17110~29600kg/時間、液流量が10730~12030kg/時間の範囲にあり、下段ではガス流量が9770~18500kg/時間、液流量が14760~27570kg/時間の範囲であった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から28.205トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は9.774トン/時間であり、メタノールの割合は15.594トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から9.034トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、5.600トン/時間であり、メタノールの割合は2.411トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は14.06kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いたジメチルカーボネ-トの1時間あたりの実質生産量は8.604トン、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は5.467トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.88%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は99.99%以上であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後及び6000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に8.604トン、8.604トン、8.604トン、8.604トン及び8.604トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に5.467トン、5.467トン、5.467トン、5.467トン及び5.467トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.99%、99.99%、99.99%、99.99%及び99.99%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上、99.99%以上及び99.99%以上であった。
【0079】
[比較例1]
<連続多段蒸留塔>
実施例1と同じ連続多段蒸留塔を用いて、トレイ構造を以下のとおり変更して反応蒸留を行った。上段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は38%であり、且つオープンエリアの割合は4.5%であった。また、中段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は38%であり、且つオープンエリアの割合は4.5%であった。また、下段の各段トレイは、アクティブエリアの割合は38%あり、且つオープンエリアの割合は4.8%であった。
【0080】
<反応蒸留>
以下の記載条件以外は実施例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。
図1に示される連続多段蒸留塔において、液状のエチレンカーボネートが7.546トン/時間の流量で、蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a)から蒸留塔に連続的に導入された。ガス状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを8.8質量%含む)が7.742トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)から蒸留塔に連続的に導入され、液状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを6.5質量%含む)が17.282トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-c)から蒸留塔に連続的に導入された。
触媒は、実施例1と同様に合成し、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して0.6質量%)。
塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.45の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔上段では、ガス流量が31523~36991kg/時間、液流量が9906~12384kg/時間の範囲にあり、中段では、ガス流量が15272~25733kg/時間、液流量が9575~10454kg/時間の範囲にあり、下段ではガス流量が8717~16083kg/時間、液流量が13174~23964kg/時間の範囲であった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から24.642トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は4.109トン/時間であり、メタノールの割合は15.115トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から7.804トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、5.436トン/時間であり、メタノールの割合は2.34トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は14.122kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いたジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は7.708トンであり、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は5.310トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.7%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.99%以上であり、エチレングリコールの選択率は99.99%以上であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後及び6000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に7.708トン、7.708トン、7.706トン、7.706トン及び7.708トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に5.310トン、5.312トン、5.310トン、5.310トン及び5.310トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.7%、99.7%、99.7%、99.7%及び99.7%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.99%、99.99%、99.99%、99.99%及び99.99%であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.99%、99.99%、99.99%、99.99%及び99.99%であった。
【0081】
[比較例2]
<連続多段蒸留塔>
以下の記載条件以外は実施例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。蒸留塔には実施例3と同量の原料が連続的に導入された。
連続多段蒸留塔のトレイ構造は、上段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は82%であり、且つオープンエリアの割合は4.9%であった。また、中段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は82%であり、且つオープンエリアの割合は4.9%であった。また、下段の各段トレイは、アクティブエリアの割合は85%あり、且つオープンエリアの割合は3.3%であった。
図1に示される連続多段蒸留塔において、液状のエチレンカーボネートが8.68トン/時間の流量で、蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a)から蒸留塔に連続的に導入された。ガス状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを8.8質量%含む)が8.53トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)から蒸留塔に連続的に導入され、液状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを6.5質量%含む)が19.74トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-c)から蒸留塔に連続的に導入された。
【0082】
<反応蒸留>
実施例3と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。
触媒は、実施例1と同様に合成し、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して0.6質量%)。塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.45の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔上段では、ガス流量が33250~40200kg/時間、液流量が12520~40200kg/時間の範囲にあり、中段では、ガス流量が15420~25200kg/時間、液流量が12320~14250kg/時間の範囲にあり、下段ではガス流量が8270~14200kg/時間、液流量が13750~24450kg/時間の範囲であった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から28.036トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は9.715トン/時間であり、メタノールの割合は15.500トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から8.979トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、5.634トン/時間であり、メタノールの割合は2.396トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は14.153kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いたジメチルカーボネ-トの1時間あたりの実質生産量は8.543トン、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は5.431トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.33%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.33%であり、エチレングリコールの選択率は99.33%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、1000時間後、2000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に8.547トン、8.547トン、8.546トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に5.431トン、5.430トン、5.431トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.33%、99.33%、99.32%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.43%、99.43%、99.53%であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.43%、99.43%、99.43%であった。
【0083】
[比較例3]
<連続多段蒸留塔>
以下の記載条件以外は実施例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。蒸留塔には比較例1と同量の原料が連続的に導入された。
連続多段蒸留塔のトレイ構造は、上段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は82%であり、且つオープンエリアの割合は4.9%であった。また、中段の各段トレイでは、アクティブエリアの割合は82%であり、且つオープンエリアの割合は4.9%であった。また、下段の各段トレイは、アクティブエリアの割合は85%あり、且つオープンエリアの割合は3.3%であった。
図1に示される連続多段蒸留塔において、液状のエチレンカーボネートが7.546トン/時間の流量で、蒸留塔の上から5段目に設置された導入口(3-a)から蒸留塔に連続的に導入された。ガス状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを8.8質量%含む)7.742トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-b)から蒸留塔に連続的に導入され、液状のメタノール(ジメチルカーボネ-トを6.5質量%含む)が17.282トン/時間の流量で、蒸留塔の上から30段目に設置された導入口(3-c)から蒸留塔に連続的に導入された。
【0084】
<反応蒸留>
比較例1と同条件下で連続的に反応蒸留を行った。
触媒は、実施例1と同様に合成し、蒸留塔の下から54段目に設けられた導入口(3-e)から、蒸留塔に連続的に導入した(触媒濃度(アルカリ金属濃度換算):供給エチレンカーボネートに対して0.6質量%)。塔底部の温度が98℃で、塔項部の圧力が約1.118×10Pa、還流比が0.45の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。
反応蒸留が行われた際の塔上段では、ガス流量が31544~36975kg/時間、液流量が9912~12348kg/時間の範囲にあり、中段では、ガス流量が15274~25733kg/時間、液流量が9572~10448kg/時間の範囲にあり、下段ではガス流量が8720~16078kg/時間、液流量が13180~23928kg/時間の範囲であった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。塔項部のガス抜出し口1からガス状で抜き出された低沸点反応混合物は熱交換器で冷却され液体にされた。蒸留塔から26.669トン/時間で連続的に抜き出された液状の低沸点反応混合物中のジメチルカーボネートの割合は4.113トン/時間であり、メタノールの割合は15.130トン/時間であった。塔底部の液抜出し口2から7.796トン/時間で連続的に抜出された液中の、エチレングリコールの割合は、5.441トン/時間であり、メタノールの割合は2.338トン/時間であり、未反応エチレンカーボネートの割合は14.082kg/時間であった。原料に含まれるジメチルカーボネートを除いたジメチルカーボネ-トの1時間あたりの実質生産量は7.716トン、触媒溶液に含まれるエチレングリコールを除いた、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は5.315トンであった。エチレンカーボネートの反応率は99.80%であり、ジメチルカーボネートの選択率は99.89%であり、エチレングリコールの選択率は99.90%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。当該連続運転の500時間後、1000時間後、2000時間後において、ジメチルカーボネートの1時間あたりの実質生産量は、順に7.716トン、7.716トン、7.716トンであり、エチレングリコールの1時間あたりの実質生産量は、順に5.315トン、5.315トン、5.315トンであり、エチレンカーボネートの反応率は、順に99.80%、99.80%、99.80%であり、ジメチルカーボネートの選択率は、順に99.90%、99.90%、99.90%であり、エチレングリコールの選択率は、順に99.90%、99.89%、99.90%であった。
【0085】
本出願は、2021年1月8日出願の日本特許出願(特願2021-002028号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとから、ジアルキルカーボネートとジオール類とが、それぞれ97%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.99%以上の高選択率で、ジアルキルカーボネートを1時間あたり4.5トン以上、好ましくは1時間あたり5トン以上、さらに好ましくは1時間あたり5.2トン以上、ジオール類を1時間あたり2.5トン以上、好ましくは1時間あたり3.0トン以上、さらに好ましくは1時間あたり3.2トン以上の工業的規模で、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上の長期間、安定的に高収率で製造でき、産業上の利用可能性がある。なお、ジアルキルカーボネートの生産量の上限は特に限定されないが、例えば、1時間あたり12トン以下であり、ジオール類の生産量の上限は特に限定されないが、例えば、1時間あたり8トン以下である。
【符号の説明】
【0087】
1:ガス抜出し口、2:液抜出し口、3-aから3-e:導入口、4-aから4-b:導入口、5:鏡板部、6:インターナル、7:胴体部分、10:連続多段蒸留塔、L:胴部長さ(cm)、D:胴部内径(cm)、d:ガス抜出し口の内径(cm)、d:液抜出し口の内径(cm)、11:ダウンカマー部分、12:アクティブエリア、13:トレイデッキ部分、14:孔の一つ(小丸で示される部分が孔であり、孔の合計面積がオープンエリアである)、15:全ての孔を含む最小の区域の境界
図1
図2