(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】カメラ、レンズ装置、制御方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240311BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20240311BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240311BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/14
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2023006707
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2019029042の分割
【原出願日】2019-02-21
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2018046566
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瑠美
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141391(JP,A)
【文献】特開2009-265182(JP,A)
【文献】特開2017-21253(JP,A)
【文献】特開2017-152995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段を有するカメラと、
該カメラに対して着脱可能であり、像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段と、設定手段とを有するレンズ装置と、を備えるカメラシステムであって、
記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において前記第1の補正手段と前記第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、前記記録用撮像中の像振れ補正において前記第1の補正手段および前記第2の補正手段を移動させ、
前記設定手段は、前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置に基づいて、前記一方の補正手段の移動方向ごとに、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
前記設定手段は、前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置である第1位置に対する方向ごとの前記一方の補正手段の補正可能量と、前記他方の補正手段の位置である第2位置に対する方向ごとの前記他方の補正手段の補正可能量とに基づいて、前記情報を設定することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
第1方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量が、前記第1方向と反対側である第2方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量よりも小さい場合に、
前記設定手段は、前記第1方向に対する前記一方の補正手段の補正割合を、前記第2方向に対する前記一方の補正手段の補正割合よりも小さくするように前記情報を設定することを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
第1方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量が、前記第1方向と反対側である第2方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量よりも小さい場合に、
前記設定手段は、前記第1方向に対する前記他方の補正手段の補正割合を、前記第2方向に対する前記他方の補正手段の補正割合よりも大きくするように前記情報を設定することを特徴とする請求項2又は3に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記カメラシステムは、像振れ補正として前記カメラシステムの角度ぶれによって生じる像振れを低減し、
前記設定手段は、前記情報として、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段のそれぞれの像振れ補正量の角度換算値の比率を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記一方の補正手段が前記第2の補正手段であり、前記他方の補正手段が前記第1の補正手段である場合に、
前記設定手段は、前記カメラから、前記第1の補正手段の位置に対する方向ごとの前記第1の補正手段の補正可能量を、角度換算されていない値で受信することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記レンズ装置は、送信手段をさらに有し、
前記送信手段は、前記設定手段が設定した前記情報を前記カメラに送信することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項8】
前記レンズ装置は、制御手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記設定手段が設定した前記情報に基づいて前記第2の補正手段の移動を制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項9】
前記カメラシステムにおいて、前記記録用撮像中に、前記第1の補正手段と前記第2の補正手段は同じ方向成分の像振れを補正することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項10】
前記カメラは、カメラ受信手段と、カメラ送信手段と、カメラ制御手段をさらに有し、
前記カメラ送信手段は、前記第1の補正手段の補正可能量を示す情報を前記レンズ装置に送信し、
前記カメラ受信手段は、前記レンズ装置から、前記第1の補正手段の補正可能量と前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置とに基づいて前記一方の補正手段の移動方向ごとに設定された、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を受信し、
前記カメラ制御手段は、前記カメラ受信手段が受信した前記情報に基づいて、前記第1の補正手段の移動を制御することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項11】
像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段と、設定手段とを有するカメラと、
該カメラに対して着脱可能であり、像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段を有するレンズ装置と、を備えるカメラシステムであって、
記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において前記第1の補正手段と前記第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、前記記録用撮像中の像振れ補正において前記第1の補正手段および前記第2の補正手段を移動させ、
前記設定手段は、前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置に基づいて、前記一方の補正手段の移動方向ごとに、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とするカメラシステム。
【請求項12】
前記設定手段は、前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置である第1位置に対する方向ごとの前記一方の補正手段の補正可能量と、前記他方の補正手段の位置である第2位置に対する方向ごとの前記他方の補正手段の補正可能量とに基づいて、前記情報を設定することを特徴とする請求項11に記載のカメラシステム。
【請求項13】
第1方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量が、前記第1方向と反対側である第2方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量よりも小さい場合に、
前記設定手段は、前記第1方向に対する前記一方の補正手段の補正割合を、前記第2方向に対する前記一方の補正手段の補正割合よりも小さくするように前記情報を設定することを特徴とする請求項12に記載のカメラシステム。
【請求項14】
第1方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量が、前記第1方向と反対側である第2方向側の前記一方の補正手段の前記第1位置からの補正可能量よりも小さい場合に、
前記設定手段は、前記第1方向に対する前記他方の補正手段の補正割合を、前記第2方向に対する前記他方の補正手段の補正割合よりも大きくするように前記情報を設定することを特徴とする請求項12又は13に記載のカメラシステム。
【請求項15】
前記カメラシステムは、像振れ補正として前記カメラシステムの角度ぶれによって生じる像振れを低減し、
前記設定手段は、前記情報として、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段のそれぞれの像振れ補正量の角度換算値の比率を設定することを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項16】
前記一方の補正手段が前記第2の補正手段であり、前記他方の補正手段が前記第1の補正手段である場合に、
前記設定手段は、前記レンズ装置から、前記第2の補正手段の位置に対する方向ごとの前記第2の補正手段の補正可能量の角度換算値を受信することを特徴とする請求項15に記載のカメラシステム。
【請求項17】
前記カメラは、送信手段をさらに有し、
前記送信手段は、前記設定手段が設定した前記情報を前記レンズ装置に送信することを特徴とする請求項11から16のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項18】
前記カメラは、制御手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記設定手段が設定した前記情報に基づいて前記第1の補正手段の移動を制御することを特徴とする請求項11から17のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項19】
前記カメラシステムにおいて、前記記録用撮像中に、前記第1の補正手段と前記第2の補正手段は同じ方向成分の像振れを補正することを特徴とする請求項11から18のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項20】
前記レンズ装置は、レンズ受信手段と、レンズ送信手段と、レンズ制御手段をさらに有し、
前記レンズ送信手段は、前記第2の補正手段の補正可能量を示す情報を前記カメラに送信し、
前記レンズ受信手段は、前記カメラから、前記第2の補正手段の補正可能量と前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置とに基づいて前記一方の補正手段の移動方向ごとに設定された、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を受信し、
前記レンズ制御手段は、前記レンズ受信手段が受信した前記情報に基づいて、前記第2の補正手段の移動を制御することを特徴とする請求項11から19のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項21】
像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段を有するカメラと、該カメラに対して着脱可能なレンズ装置とを有するカメラシステムに用いられる前記レンズ装置であって、
像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段と、設定手段を有し、
前記カメラシステムは、記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において前記第1の補正手段と前記第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、前記記録用撮像中の像振れ補正において前記第1の補正手段および前記第2の補正手段を移動させ、
前記設定手段は、前記記録用撮像の開始が指示された後における前記一方の補正手段の位置に基づいて、前記一方の補正手段の移動方向ごとに、前記第1の補正手段および前記第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とするレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れ補正機能を有するカメラシステムに用いられるレンズ装置やカメラ等に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に像振れを低減(補正)する像振れ補正機能を有するレンズ交換型撮像システムには、交換レンズに設けられた補正レンズを光軸に対して移動させるとともに、カメラに設けられた撮像素子を光軸に対して移動させるものがある。ただし、補正レンズや撮像素子の移動可能量には機械的および電気的な制限があり、いずれかが移動可能量の最大値に達すると、それ以上の像振れ補正に支障が生じる。
【0003】
特許文献1には、像振れ補正量に応じて、カメラ側での撮像素子の移動による補正量と交換レンズ側での補正レンズの移動による補正量との比率(補正比率)を変更する撮像システムが開示されている。具体的には、撮像(露光)開始前に補正レンズのみの移動により像振れ補正を行い、撮像中は補正レンズと撮像素子の双方の移動により像振れ補正を行う。このとき、カメラは、撮像開始時における補正レンズの位置に応じて撮像素子を移動させてから該撮像素子の像振れ補正のための移動制御を開始する。
【0004】
また、特許文献2には、撮像開始時に補正レンズをその移動中心に移動させてから該補正レンズの像振れ補正のための移動制御を開始する撮像システムが開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-265182号公報
【文献】特開2015-194712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示されているように補正レンズの位置に応じて撮像素子を移動させてから像振れ補正のための移動制御を開始するのでは、撮像素子の移動可能範囲を最大限に活用することができない。すなわち、撮像素子の移動制御は、その移動中心から開始することが望ましい。しかも、特許文献1にて開示された撮像システムでは、像振れ補正量に応じて補正比率を制御するために、カメラと交換レンズ間で絶えず通信が必要となり、通信量の増加や像振れ補正の遅延が生じたりする。
【0007】
また、特許文献2にて開示されたように撮像開始時に補正レンズを移動中心に移動させると、不自然な画角変化が発生する。
【0008】
本発明は、カメラと交換レンズ間での通信量の増加を抑え、不自然な画角変化を生じさせることなく補正レンズと撮像素子の移動による像振れ補正を行えるようにしたレンズ装置やカメラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのカメラシステムは、像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段を有するカメラと、該カメラに対して着脱可能であり、像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段と、設定手段とを有するレンズ装置と、を備えるカメラシステムであって、記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において第1の補正手段と第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、記録用撮像中の像振れ補正において第1の補正手段および第2の補正手段を移動させ、設定手段は、記録用撮像の開始が指示された後における一方の補正手段の位置に基づいて、一方の補正手段の移動方向ごとに、第1の補正手段および第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面としてのカメラは、像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段と、設定手段とを有するカメラと、該カメラに対して着脱可能であり、像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段を有するレンズ装置と、を備えるカメラシステムであって、記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において第1の補正手段と第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、記録用撮像中の像振れ補正において第1の補正手段および第2の補正手段を移動させ、設定手段は、記録用撮像の開始が指示された後における一方の補正手段の位置に基づいて、一方の補正手段の移動方向ごとに、第1の補正手段および第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一側面としてのレンズ装置は、像振れ補正のために移動可能な第1の補正手段を有するカメラと、該カメラに対して着脱可能なレンズ装置とを有するカメラシステムに用いられるレンズ装置であって、像振れ補正のために移動可能な第2の補正手段と、設定手段を有し、カメラシステムは、記録用撮像の開始が指示される前の像振れ補正において第1の補正手段と第2の補正手段とのうち一方の補正手段を移動させて他方の補正手段を移動させず、記録用撮像中の像振れ補正において第1の補正手段および第2の補正手段を移動させ、設定手段は、記録用撮像の開始が指示された後における一方の補正手段の位置に基づいて、一方の補正手段の移動方向ごとに、第1の補正手段および第2の補正手段の間の補正比率を示す情報を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カメラおよびレンズ装置間での通信量の増加を抑え、不自然な画角変化を生じさせることなく第1の補正素子と第2の補正素子の移動による像振れ補正を行えるカメラシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1である撮像システムの構成を示すブロック図。
【
図2】実施例1における像振れ補正処理を示すフローチャート。
【
図3】実施例2における補正レンズと撮像素子の移動による像振れ補正の例を示す図。
【
図4】実施例1における補正比率の設定例を示す図。
【
図5】本発明の実施例2における像振れ補正処理を示すフローチャート。
【
図6】本発明の実施例3における像振れ補正処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例である撮像システム10の構成を説明する。撮像システム10は、第1の光学機器としての交換レンズ101と、該交換レンズ101が着脱可能および通信可能に接続される第2の光学機器としてのカメラ本体100とにより構成される。カメラ本体100は、カメラMPU102、操作部103、撮像素子104、カメラ側接点端子105、カメラ側ジャイロセンサ106および背面ディスプレイ120を有する。
【0018】
カメラMPU102は、カメラ本体100および交換レンズ101の制御全体を司るコントローラであり、後述する操作部103からの入力に応じて、AE、AFおよび撮像等の様々な動作を制御する。カメラMPU102は、カメラ側接点端子105および交換レンズ101に設けられたレンズ側接点端子111を通じてレンズMPU109との間で各種命令や情報を通信する。カメラ側接点端子105およびレンズ側接点端子111には、カメラ本体100から交換レンズ101に対して電源を供給するための電源端子も含まれている。
【0019】
操作部103は、各種撮像モードの設定を行うモードダイヤルや、撮像準備動作や撮像の開始を指示するためのレリーズボタン等を有する。レリーズボタンの半押し操作によって第1スイッチ(SW1)がオンになり、全押し操作により第2スイッチ(SW2)がオンになる。SW1のオンに応じて撮像準備動作としてのAEおよびAFが行われ、SW2のオンに応じて撮像(露光)の開始が指示され、該指示から所定時間後に撮像が開始される。SW1およびSW2のオフ/オンは、通信によりカメラMPU102からレンズMPU109に通知される。
【0020】
撮像素子104は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成され、後述する撮像光学系により形成される被写体像を光電変換して撮像信号を生成する。カメラMPU102は、撮像素子104からの撮像信号を用いて映像信号を生成する。
【0021】
カメラ側ジャイロセンサ106は、手振れ等によるカメラ本体100の角度振れ(カメラ振れ)を検出して角速度信号としてのカメラ振れ検出信号を出力する振れセンサである。カメラMPU102は、カメラ振れ検出信号と交換レンズ101から受信するIIS補正比率(これについては後述する)に基づいて撮像素子アクチュエータ107を駆動して、撮像素子104を後述する撮像光学系の光軸に直交する方向に移動させる。これにより、カメラ振れに伴う像振れを低減(補正)する。この際、カメラMPU102は、撮像素子位置センサ108により検出される撮像素子104の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくように撮像素子アクチュエータ107のフィードバック制御を行う。これにより、撮像素子104の移動による像振れ補正(以下、IISという)を行う。なお、IISは、上下方向(ピッチ方向)のカメラ振れおよび左右方向(ヨー方向)のカメラ振れに対して行われる。
【0022】
表示手段としての背面ディスプレイ120は、カメラMPU102が撮像素子104からの撮像信号を用いて生成した映像信号に対応する映像を表示する。撮像前においては、ユーザは表示される映像をファインダ映像(ライブビュー映像)として観察することができる。また、撮像後には、背面ディスプレイ120に撮像により生成された記録用の静止画または動画を表示することができる。本実施例にいう「撮像」とは、記録用撮像を意味する。
【0023】
交換レンズ101は、不図示の撮像光学系と、前述したレンズMPU109およびレンズ側接点端子111と、レンズ側ジャイロセンサ110とを有する。レンズ側ジャイロセンサ110は、交換レンズ101の角度振れ(レンズ振れ)を検出して角速度信号としてのレンズ振れ検出信号を出力する振れセンサである。
【0024】
レンズMPU109は、レンズ振れ検出信号と後述するOIS補正比率とに基づいてレンズアクチュエータ112を駆動して、撮像光学系の一部である補正レンズ113を撮像光学系の光軸に直交する方向に移動させる。これにより、レンズ振れに伴う像振れを低減(補正)する。この際、レンズMPU109は、レンズ位置センサ114により検出される補正レンズ113の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくようにレンズアクチュエータ112のフィードバック制御を行う。これにより、補正レンズ113の移動による像振れ補正(以下、OISという)を行う。
【0025】
レンズMPU109は、後述の補正比率を示す情報を設定する設定手段としての機能を有する。また、当該情報の設定に必要な情報をカメラMPUから受信する受信手段としての機能を有する。さらに設定した補正比率を示す情報をカメラMPU102に送信する送信手段としての機能を有する。
【0026】
なお、OISも、IISと同様に、ピッチ方向のレンズ振れおよびヨー方向のレンズ振れに対して行われる。また、補正レンズ113は、光軸に直交する方向に移動すればよく、光軸に直交する平面内で平行移動してもよいし、光軸上の点を中心に回動しながら該方向に移動してもよい。
【0027】
次に、
図2のフローチャートを用いて、本実施例の撮像システム10における像振れ補正処理(制御方法)について説明する。
図2の左側にカメラ本体100(カメラMPU102)が行う処理を示し、右側に交換レンズ101(レンズMPU109)が行う処理を示している。カメラMPU102およびレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従って像振れ補正処理を実行する。カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109間での通信が開始されると、ステップS101にて本処理が開始される。
【0028】
ステップS101では、カメラMPU102は、IISにおける撮像素子104の移動による像振れ補正が可能な最大移動量としてのIIS補正可能量をレンズMPU109に対して通知(送信)する。IIS補正可能量は、撮像素子104がその移動中心から機械的または電気的な可動端まで移動することで得られる最大の像振れ補正量であり、単位は長さ(mm)である。
【0029】
次にステップS102では、レンズMPU109は、カメラMPU102から通知されたIIS補正可能量をその角度換算値であるIIS補正可能角度(deg)に変換する。なお、レンズMPU109は、OISにおける補正レンズ113の移動による像振れ補正が可能な最大角度(deg)としてのOIS補正可能角度を不図示のメモリに保持している。OIS補正可能角度(IIS補正可能量の角度換算値)は、補正レンズ113がその移動中心から機械的または電気的な可動端まで移動することで得られる最大の像振れ補正量(角度)である。
【0030】
なお、本実施例では、カメラMPU102は、IIS補正可能量を角度換算することなくレンズMPU109に通知する。これは、カメラMPU102がIIS補正可能量の角度換算値を算出するためには、その前にレンズMPU109から撮像光学系の焦点距離の情報を通信により取得する必要が生じるためである。ただし、レンズMPU109から撮像開始時の撮像光学系の焦点距離の情報を取得した場合は、IIS補正可能量を角度換算した値でレンズMPU109に通知してもよい。
【0031】
次にステップS103では、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離を示す情報をカメラMPU102に通知する。焦点距離の情報は、IIS制御時に撮像素子104の移動による像振れ補正角度を撮像素子104の移動量に変換するために必要となる。
【0032】
本実施例では、IIS制御を露光中(記録用撮像中)のみ行うため、ステップS101から後述するS109(IIS制御開始)までのいずれかで焦点距離の情報がカメラMPU102に通知されればよい。
【0033】
次にステップS104では、カメラMPU102は、SW1がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はレンズMPU109に対してSW1のオンを通知する。
【0034】
SW1オンの通知を受けたレンズMPU109は、ステップS105において、レンズ側ジャイロセンサ110により検出されたレンズ振れに応じたOISの制御を開始する。すなわち、撮像開始前においてライブビュー映像が表示されているファインダ観察状態においては第1の補正手段である補正レンズ113のみによる像振れ補正が行われ、第2の補正手段である撮像素子104による像振れ補正は行われない。
【0035】
次にステップS106では、カメラMPU102は、SW2がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はレンズMPU109に対してSW2のオンを通知する。
【0036】
ステップS107において、SW2オンの通知を受けた設定手段であるレンズMPU109は、レンズ位置センサ114から撮像開始時の補正レンズ113の位置(第1位置)を取得する。
【0037】
そして、レンズMPU109は、撮像開始時の補正レンズ113の位置に対する、補正レンズ113の方向ごとに、補正レンズ113および撮像素子104による補正比率を示す情報を設定する。当該補正比率を示す情報は、「補正レンズ113の補正量(シフト量):撮像素子104の補正量(シフト量)」でもよいし、「補正レンズ113の補正量(シフト量)の角度換算値:撮像素子104の補正量(シフト量)の角度換算値」でもよい。または、これらを用いて算出可能な、「全像振れ補正量に対する補正レンズ113の補正量の割合を示す量、および、全像振れ補正量に対する撮像素子104の補正量の割合を示す量」でもよい。「全像振れ補正量の角度換算値に対する補正レンズ113の補正量の角度換算値、および、全像振れ補正量の角度換算値に対する撮像素子104の補正量の角度換算値」でもよい。または、これらの情報を導き出すことが可能なその他の情報であってもよい。
【0038】
本実施例では、補正レンズ113の単位移動量[mm]あたりの像振れ補正量が、撮像素子104の単位移動量[mm]あたりの像振れ補正量と異なる。このため、これらの次元を合わせるために、OIS補正可能量の角度換算値とIIS補正可能量の角度換算値を用いて前述の補正比率を示す情報を算出する。
【0039】
撮像開始時の補正レンズ113の位置に応じた角度換算値ΔθOISと、OIS補正可能角度θOISと、IIS補正可能角度θIISとを用いて、撮像中の、OISとIISの補正比率を示す情報を設定する。
【0040】
撮像開始時において撮像素子104はその移動中心である光軸上(第2位置)に位置するので、IIS補正可能角度θIISは撮像素子104が光軸に対して+側(IIS+領域)に移動する場合とその反対側の-側(IIS-領域)に移動する場合とで同じである。ただし、以下では、撮像素子104が+側に移動する場合のIIS補正可能角度θIISをIIS+補正可能角度θIIS
+と表し、-側に移動する場合のIIS補正可能角度θIISをIIS-補正可能角度θIIS
-と表す。
【0041】
一方、撮像開始時において補正レンズ113はその移動中心である光軸上から+側(OIS+領域)に位置する場合とその反対側の-側(OIS-領域)に位置する場合とがある。そして補正レンズ113の位置ΔθOISが+側か-側かによって、補正レンズ113を+側(第1方向側)に移動させる場合のOIS補正可能角度(OIS+補正可能角度)θOIS
+と-側(第2方向側)に移動させる場合のOIS補正可能角度(OIS-補正可能角度)θOIS
-とが異なる。すなわち、
IIS+補正可能角度θIIS
+:θIIS
IIS-補正可能角度θIIS
-:θIIS
OIS+補正可能角度θOIS
+:θOIS-ΔθOIS
OIS-補正可能角度θOIS
-:θOIS+ΔθOIS
となる。
【0042】
本実施例では、OIS補正比率は、OISとIISの双方を行う際の補正レンズ113の移動と撮像素子104の移動による合計の像振れ補正量(角度deg)に占める補正レンズ113の移動による像振れ補正量(以下、OIS補正量という)の割合を示す。また、IIS補正比率は、上記合計の像振れ補正量に占める撮像素子104の移動による像振れ補正量(以下、IIS補正量という)の割合を示す。
【0043】
そして、撮像開始時の補正レンズ113の位置に対して補正レンズ113が+側にあるときの補正レンズ113の補正比率であるOIS+補正比率とOIS-補正比率、および撮像素子104の移動方向(+側と-側)に応じたIIS補正比率であるIIS+補正比率とIIS-補正比率は以下のように計算される。
OIS+補正比率:θOIS
+/(θIIS
++θOIS
+)
OIS-補正比率:θOIS
-/(θIIS
-+θOIS
-)
IIS+補正比率:θIIS
+/(θIIS
++θOIS
+)
IIS-補正比率:θIIS
-/(θIIS
-+θOIS
-)
次にステップS108では、レンズMPU109は、ステップS107で設定したIIS補正比率(IIS+およびIIS-補正比率)をカメラMPU102に通知する。
【0044】
そしてステップS109では、カメラMPU102は、レンズMPU109から受信したIIS補正比率を用いたIISの制御を開始する。具体的には、カメラMPU102は、カメラ側ジャイロセンサ106により検出されたカメラ振れとIIS補正比率に応じて撮像素子104の移動量であるIIS補正量を算出する。そして、該IIS補正量に対応する目標位置に撮像素子104を移動させるように撮像素子アクチュエータ107を制御する。
【0045】
同時にステップS110では、レンズMPU109は、ステップS107で設定したOIS補正比率(OIS+補正比率およびOIS-補正比率)を用いたOISの制御を開始する。具体的には、レンズ側ジャイロセンサ110により検出されたレンズ振れとOIS補正比率とに応じて補正レンズ113の移動量(シフト量)であるOIS補正量を算出する。そして、該OIS補正量に対応する目標位置に補正レンズ113を移動させるようにレンズアクチュエータ112を制御する。
【0046】
さらに、カメラMPU102は、ステップS111において撮像(露光)を開始する。これにより、撮像中は、OISとIIS、すなわち補正レンズ113と撮像素子104の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0047】
なお、本明細書において、撮像開始時は、ステップS106でのSW2のオンにより撮像の指示がなされた時であってもよいし、SW2のオンにより撮像の開始が指示されてからS111での撮像開始までの期間内のタイミングであってもよい。S106でのSW2のオンにより撮像の指示がなされた時である場合は、補正レンズ113の位置がS111での撮像開始までの間、定位置にあることが好ましい。このことは後述する他の実施例でも同じである。
【0048】
次に、
図3を用いて、OISとIISによる協調像振れ補正について説明する。
図3の中段には、撮像開始前後でのOIS補正量の変化を実線で示している。また、
図3の下段には、撮像開始前後でのIIS補正量の変化を実線で示している。さらに
図3の上段には、中段に示したOIS補正量と下段に示したIIS補正量の合計である合計補正量を示しており、中段および下段には該合計補正量を点線で示している。これら各図において、0は補正レンズ113および撮像素子104の移動可能範囲の中心位置(光軸上の位置)を示す。なお、
図3はピッチ方向またはヨー方向でのOIS補正量およびIIS補正量の変化を示している。
【0049】
前述したように、撮像開始前はOISのみが行われ、補正レンズ113は検出されるレンズ振れに応じてその移動可能範囲内で移動される。このとき、IISは行われず、撮像素子104はその中心位置に保持される。SW2のオンに応じた撮像開始時において、補正レンズ113はその中心位置から位置aに移動している。
【0050】
撮像開始後(撮像中)は、補正レンズ113は位置aを基準としたOIS+領域とOIS-領域とでレンズ振れに応じて移動される。一方、撮像開始に応じて開始されたIISでは、撮像素子104は中心位置を基準とするIIS+領域とIIS-領域とでカメラ振れに応じて移動される。ここで、補正レンズ113がOIS+領域で移動する際のOIS補正比率であるOIS+補正比率と、補正レンズ113がOIS-領域で移動する際のOIS-補正比率とは互いに異なる。
【0051】
すなわち、本実施例では、レンズMPU109は、撮像開始時の位置aから補正レンズ113が移動する方向に応じてOIS補正比率を異ならせる。OIS+補正比率とOIS-補正比率OISとが異なることで、撮像素子104がIIS+領域で移動する際のIIS補正比率であるIIS+補正比率と、撮像素子104がIIS-領域で移動する際のIIS補正比率であるIIS-補正比率も互いに異なる。
【0052】
図4は、撮像開始時の補正レンズ113の位置aに応じたOIS+およびOIS-補正比率とIIS+およびIIS-補正比率を示している。撮像開始時の補正レンズ113の位置aが中心位置0から+方向に離れるほど、OIS+補正比率がより小さく、IIS+補正比率がより大きく、OIS-補正比率がより大きく、IIS-補正比率がより小さく設定される。一方、位置aが中心位置0から-方向に離れるほど、OIS-補正比率がより小さく、IIS-補正比率がより大きく、OIS+補正比率がより大きく、IIS+補正比率がより小さく設定される。+方向および-方向のうち一方が第1の方向に相当し、他方が第1の方向とは反対の第2の方向に相当する。
【0053】
例えば、
図3中に示すように、撮像開始時での補正レンズ113の位置aが中心位置0から+方向に離れている場合において、+方向に像振れ補正を行うときのOIS+補正比率b:IIS+補正比率cは、b<c(例えば1:2)となる。また、-方向に像振れ補正を行うときのOIS-補正比率c:IIS-補正比率dは、c>d(例えば2:1)となる。
【0054】
以上説明したように、本実施例では、撮像開始時での補正レンズ113の位置からの該補正レンズ113の移動方向(すなわち、補正レンズ113の位置に対する、補正レンズ113が移動している領域の方向)に応じて撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率とが設定される。これにより、撮像開始時に画角が不自然に変化することなく、撮像中に補正レンズ113と撮像素子104の移動可能範囲を活用した像振れ補正を行うことができる。しかも、撮像開始前の像振れ補正を行う交換レンズ101においてOIS補正比率とIIS補正比率を設定することで、撮像開始時に交換レンズ101からカメラ本体100に対して補正レンズ113の位置を通信する必要がなくなる。このため、通信量の増加を抑えることができる。
【0055】
また本実施例では、撮像開始前の像振れ補正を交換レンズ101で行う。カメラMPU102は撮像システム全体を制御するための様々な処理や演算を行うため、撮像開始前にカメラ本体100で撮像素子104を移動させて像振れ補正を行うと、これを制御するカメラMPU102の負担が増加するため、好ましくない。
【0056】
なお、撮像中において撮像光学系のフォーカスやズーム(焦点距離)等の状態が変化した場合は、IIS補正量およびOIS補正量は再度計算される。このことは、他の実施例でも同様である。
【0057】
また、レンズMPU109がOIS補正比率とIIS補正比率を変更し、カメラMPU102に対して変更したISS補正比率を送信してカメラMPU102に変更後のIIS補正比率に応じてIISを行わせてもよい。
【実施例2】
【0058】
本発明の実施例2では、第1の光学機器としてのカメラ本体100が第2の光学機器としての交換レンズ101から受信したOIS補正可能角度と補正レンズ113の位置とIIS補正可能角度とを用いてOIS補正比率およびIIS補正比率を設定する。そして、交換レンズが、カメラ本体から受信したOIS補正比率に応じたOISを行う。実施例2の撮像システムの構成は実施例1と同じであり、共通する構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0059】
すなわち、カメラMPU102は、補正比率を示す情報を設定する設定手段としての機能を有する。当該情報の設定に必要な情報をレンズMPU109から受信する受信手段としての機能を有する。さらに設定した補正比率を示す情報を、レンズMPU109に送信する送信手段としての機能を有する。
【0060】
図5のフローチャートを用いて、実施例2の撮像システム10における像振れ補正処理(制御方法)について説明する。
図5の左側にカメラ本体100(カメラMPU102)が行う処理を示し、右側に交換レンズ101(レンズMPU109)が行う処理を示している。カメラMPU102およびレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従って像振れ補正処理を実行する。カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109間での通信が開始されると、ステップS201にて本処理が開始される。
【0061】
ステップS201では、レンズMPU109は、OIS補正可能角度をカメラMPU102に対して通知(送信)する。
【0062】
次にステップS202では、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離を示す情報をカメラMPU102に通知する。この理由は実施例1のステップS103で説明した通りである。また本実施例でも、IIS制御を露光中のみ行うため、ステップS201から、後述するS207(補正比率決定)までのいずれかで焦点距離の情報がカメラMPU102に通知されればよい。
【0063】
次にステップS203では、カメラMPU102は、SW1がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はレンズMPU109に対してSW1のオンを通知する。
【0064】
SW1オンの通知を受けたレンズMPU109は、ステップS204において、レンズ側ジャイロセンサ110により検出されたレンズ振れに応じたOISの制御を開始する。すなわち、撮像開始前においてライブビュー映像が表示されているファインダ観察状態においては第1の補正手段である補正レンズ113のみによる像振れ補正が行われ、第2の補正手段である撮像素子104による像振れ補正は行われない。
【0065】
次にステップS205では、カメラMPU102は、SW2がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はレンズMPU109に対してSW2のオンを通知する。
【0066】
次にステップS206において、SW2オンの通知を受けたレンズMPU109は、レンズ位置センサ114から撮像開始時の補正レンズ113の位置を取得し、該補正レンズ113の位置の角度換算値ΔθOISをカメラMPU102に通知する。
【0067】
次にステップS207では、設定手段としてのカメラMPU102は、補正レンズ113の位置の角度換算値ΔθOISと、ステップS201で得られたOIS補正可能角度θOISと、IIS補正可能角度θIISとを用いて撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率を設定する。カメラMPU102は、IIS補正可能角度を焦点距離から演算する。撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率の設定(算出)は、実施例1のステップS107で説明したように行われる。
【0068】
次にステップS208では、カメラMPU102は、ステップS207で設定したOIS補正比率(OIS+補正比率およびOIS-補正比率)をレンズMPU109に通知する。
【0069】
そしてステップS209では、カメラMPU102は、実施例1のステップS109と同様に、IIS補正比率(IIS+補正比率およびIIS-補正比率)を用いたIISの制御を開始する。
【0070】
また同時にステップS210では、レンズMPU109は、実施例1のステップS110と同様にして、カメラMPU102から受信したOIS補正比率を用いたOISの制御を開始する。
【0071】
さらに、カメラMPU102は、ステップS211において撮像(露光)を開始する。これにより、撮像中は、OISとIIS、すなわち補正レンズ113と撮像素子104の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0072】
以上説明した本実施例では、撮像開始時での補正レンズ113の位置からの該補正レンズ113の移動方向に応じて撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率とが設定される。これにより、撮像開始時に画角が不自然に変化することなく、撮像中に補正レンズ113と撮像素子104の移動可能範囲を活用した像振れ補正を行うことができる。
【0073】
また本実施例では、交換レンズ101からカメラ本体100にOIS補正可能角度としての角度換算値を通知する。交換レンズ101が補正レンズ113の最大移動量[mm]をカメラ本体100に通知するようにすると、防振敏感度(補正レンズの移動量[mm]を角度[deg]に変換するための敏感度)の情報を別途、カメラ本体100に通知する必要が生じる。したがって、通信回数を減らすためにも、交換レンズ101においてOIS補正可能角度をカメラ本体100に通知することが好ましい。
【実施例3】
【0074】
本発明の実施例3では、実施例2と同様に、第1の光学機器としてのカメラ本体100が第2の光学機器としての交換レンズ101から受信したOIS補正可能角度と補正レンズ113の位置とIIS補正可能角度とを用いてOISおよびIIS補正比率を設定する。そして交換レンズが、カメラ本体から受信したOIS補正比率に応じたOISを行う。ただし、実施例3では、撮像開始前において第1の補正手段である撮像素子104のみによる像振れ補正が行われ、第2の補正手段である補正レンズ113による像振れ補正は行われない。実施例3の撮像システムの構成は実施例1と同じであり、共通する構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0075】
図6のフローチャートを用いて、実施例3の撮像システム10における像振れ補正処理(制御方法)について説明する。
図6の左側にカメラ本体100(カメラMPU102)が行う処理を示し、右側に交換レンズ101(レンズMPU109)が行う処理を示している。カメラMPU102およびレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従って像振れ補正処理を実行する。カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109間での通信が開始されると、ステップS301にて本処理が開始される。
【0076】
ステップS301では、レンズMPU109は、OIS補正可能角度をカメラMPU102に対して通知(送信)する。
【0077】
次にステップS302では、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離を示す情報をカメラMPU102に通知する。この理由は実施例1のステップS102で説明した通りである。
【0078】
次にS303では、カメラMPU102は、SW1がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はステップS304に進む。
【0079】
ステップS304では、カメラMPU102は、IISの制御を開始する。この際、OISの制御は行わない。すなわち、補正レンズ113はその中心が光軸上(第2位置)に位置する。
【0080】
次にステップS305では、カメラMPU102は、SW2がオンされたか否かを判定し、オンされた場合はステップS306に進む。
【0081】
ステップS306では、設定手段であるカメラMPU102は、撮像素子位置センサ108から撮像開始時の撮像素子104の位置(第1位置)を取得する。そして、撮像開始時の撮像素子104の位置の角度換算値ΔθIISと、IIS補正可能角度θIIS(θIIS
+,θIIS
-)と、OIS補正可能角度θOIS(θOIS
+,θOIS
-)とを用いて、撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率を以下のように設定する。本実施例では、
IIS+補正可能角度θIIS
+:θIIS-ΔθIIS
IIS-補正可能角度θIIS
-:θIIS+ΔθIIS
OIS+補正可能角度θOIS
+:θOIS
OIS-補正可能角度θOIS
-:θOIS
とする。そして、
IIS+補正比率:θIIS
+/(θIIS
++θOIS
+)
IIS-補正比率:θIIS
-/(θIIS
-+θOIS
-)
OIS+補正比率:θOIS
+/(θIIS
++θOIS
+)
OIS-補正比率:θOIS
-/(θIIS
-+θOIS
-)
とする。
【0082】
次にステップS307では、カメラMPU102は、ステップS306で設定したOIS補正比率(OIS+補正比率およびOIS-補正比率)をレンズMPU109に通知する。
【0083】
次にステップS308では、カメラMPU102は、実施例1のステップS109と同様に、IIS補正比率(IIS+補正比率およびIIS-補正比率)を用いたIISの制御を開始する。
【0084】
また同時にステップS309では、レンズMPU109は、実施例1のステップS110と同様にして、カメラMPU102から受信したOIS補正比率を用いたOISの制御を開始する。
【0085】
次にステップS310では、カメラMPU102は、撮像(露光)を開始する。これにより、撮像中は、IISとOIS、すなわち撮像素子104s補正レンズ113の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0086】
以上説明した本実施例では、撮像開始時での撮像素子104の位置からの該撮像素子104の移動方向に応じて、撮像中のOIS補正比率とIIS補正比率とが設定される。これにより、撮像開始時に画角が不自然に変化することなく、撮像中に補正レンズ113と撮像素子104の移動可能範囲を活用した像振れ補正を行うことができる。しかも、撮像開始前の像振れ補正を行うカメラ本体100においてOIS補正比率とIIS補正比率を設定することで、撮像開始時にカメラ本体100から交換レンズ101に対して撮像素子104の位置を通信する必要がなくなる。このため、通信量の増加を抑えることができる。
【0087】
上記各実施例では、交換レンズ101とカメラ本体100がそれぞれジャイロセンサ110,106を有し、それぞれ自身が有するジャイロセンサからの出力を用いて像振れ補正を行う場合について説明した。しかし、交換レンズおよびカメラ本体のうち一方がジャイロセンサを有し、該ジャイロセンサからの出力を用いて交換レンズおよびカメラ本体の双方が像振れ補正を行うようにしてもよい。
【0088】
各実施例では、ある方向成分の像振れ補正のために、撮像開始前に補正レンズ113および撮像素子104のうち、一方を移動させ他方を移動させず、撮像中は補正レンズ113および撮像素子104を移動させた。なお、他の方向成分の像振れについては、撮像開始前に補正レンズ113および撮像素子104を移動させて補正しても構わない。例えば、撮像素子104について、撮像開始前はピッチ又はヨー方向は移動を制限しつつ、ロール方向の像振れ補正のために回転させても構わない。
【0089】
実施例1では、設定手段であるレンズMPU109は、撮像開始時の位置に対して第1方向側の撮像素子104の補正可能量が、該第1方向と反対側である第2方向側の撮像素子104の補正可能量よりも小さい場合に、第1方向側にあるときのほうが第2方向側にあるときよりも全像振れ補正に対する撮像素子104の補正の割合が小さくなるように補正比率を示す情報を設定した。このとき、撮像素子104が第1方向側にあるときのほうが第2方向側にあるときよりも、全像振れ補正に対する補正レンズ113の補正の割合が大きくなるように補正比率を示す情報を設定した。なお、ここでいう補正の割合は、シフト量であっても良いし、当該シフト量に対応する角度換算値でもよい。
【0090】
実施例2では、設定手段であるカメラMPU102が、実施例1と同様に補正比率を示す情報を設定した。
【0091】
実施例3では、設定手段であるカメラMPU102は、撮像開始時の位置に対して補正レンズ113の第1方向側の補正可能量が、該第1方向と反対側である第2方向側の補正レンズ113の補正可能量よりも小さい場合に、第1方向側にあるときのほうが第2方向側にあるときよりも全像振れ補正に対する補正レンズ113の補正の割合が小さくなるように補正比率を示す情報を設定した。このとき、補正レンズ113が第1方向側にあるときのほうが第2方向側にあるときよりも、全像振れ補正に対する撮像素子104の補正の割合が大きくなるように補正比率を示す情報を設定した。
【0092】
なお、撮像開始前において、第1の補正手段および第2の補正手段のうち一方を移動させない場合を例に説明したが、本発明の他の実施例はこれに限られない。撮像開始前において少なくとも一方の補正手段が補正可能範囲の端に到達しないように移動を制限するのであれば、撮像開始前に移動させても構わない。すなわち、撮像開始前において像振れ補正のために主に移動させる補正手段が、撮像中のほうが撮像開始前に比べて、全像振れ補正に対する当該補正手段による補正の割合が小さくなるように制御されればよい。
【0093】
OIS補正比率およびIIS補正比率の求め方は、前述した実施例で説明した設定方法に限られない。角度換算値を用いずに補正比率を示す情報を算出する場合は、焦点距離に応じてOISとIISの補正比率を変えてもよい。例えば望遠側(超焦点距離側)では広角側(短焦点距離側)に比べてOISの負担をIISよりも大きくなるようにしてもよい。 これらの各実施例によれば、第1および第2の光学機器間での通信量の増加を抑え、不自然な画角変化を生じさせることなく第1の補正手段と第2の補正手段の移動による像振れ補正を行える撮像システムを実現することができる。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
100 カメラ本体
101 交換レンズ
104 撮像素子
109 レンズMPU
113 補正レンズ