(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】洋上風力基礎
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20240311BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20240311BHJP
E02D 27/14 20060101ALI20240311BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
E02D27/52 A
E02D27/32 A
E02D27/14
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2023119008
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 星太朗
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 暢一
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 友輔
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特許第7223181(JP,B1)
【文献】特開平11-194003(JP,A)
【文献】特開平03-239887(JP,A)
【文献】特開2017-115368(JP,A)
【文献】特許第7098079(JP,B1)
【文献】特開2003-001554(JP,A)
【文献】特開昭63-120992(JP,A)
【文献】特開2023-097363(JP,A)
【文献】特許第7253657(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
E02D 27/32
E02D 27/14
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風車を支持する洋上風力基礎であって、
円筒状の第1鋼管と、
前記第1鋼管と当接部材を介し接続される、円筒状の第2鋼管と、
を備え、
前記第1鋼管の中心軸と前記第2鋼管の中心軸とは、前記第1鋼管及び前記第2鋼管それぞれの長手方向に沿って見て略一致し、
前記当接部材は、前記第1鋼管の端部と、前記第2鋼管の端部と、の間に挟まれ、
前記第1鋼管の端部であって、前記当接部材と接する端部のストレートシーム及びスパイラルシームのいずれかである溶接シームと、前記第2鋼管の端部であって、前記当接部材と接する端部の前記溶接シームとは、前記第1鋼管又は前記第2鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされて
おらず、
円筒状の第3鋼管と、
前記第3鋼管と接続される、円筒状の第4鋼管と、
を更に備え、
前記第3鋼管の中心軸と前記第4鋼管の中心軸とは、前記第3鋼管及び前記第4鋼管の長手方向に沿って見て略一致し、
前記第3鋼管の端部と前記第4鋼管の端部とは、部材を介することなく接続され、
前記第3鋼管の前記溶接シームと、前記第4鋼管の前記溶接シームとは、前記第3鋼管又は前記第4鋼管の周方向において、前記所定距離以上、ずらされている、
ことを特徴とする洋上風力基礎。
【請求項2】
前記当接部材は、トランジションピースである、
ことを特徴とする請求項
1に記載の洋上風力基礎。
【請求項3】
前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、
前記洋上風力基礎は、第1レグを更に備え、
前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第1レグの少なくとも一部であり、
前記当接部材は、前記トランジションピースのフランジである、
ことを特徴とする請求項
2に記載の洋上風力基礎。
【請求項4】
前記洋上風力基礎は、モノパイル式基礎であり、
前記第1鋼管は、前記洋上風車のタワーであり、
前記第2鋼管は、前記モノパイル式基礎の鋼管杭である、
ことを特徴とする請求項
2に記載の洋上風力基礎。
【請求項5】
前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、
前記洋上風力基礎は、第2レグ、又は、第1ブレースを更に備え、
前記第3鋼管及び前記第4鋼管は、前記第2レグ又は前記第1ブレースの少なくとも一部である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の洋上風力基礎。
【請求項6】
前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、
前記洋上風力基礎は、第3レグと、海底地盤に打設される鋼管杭と前記第3レグとを接続する接続部材と、を更に備え、
前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第3レグの少なくとも一部であり、
前記当接部材は、前記接続部材のフランジである、
ことを特徴とする請求項
1に記載の洋上風力基礎。
【請求項7】
前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、
前記洋上風力基礎は、第1ブレースと、第2ブレースと、を更に備え、
前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第1ブレースの少なくとも一部であり、
前記当接部材は、前記第2ブレースである、
ことを特徴とする請求項
1に記載の洋上風力基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風車を海上に設置するための構造として、洋上風力基礎がある。
例えば、特許文献1では、海底地盤に打設される鋼管杭や、鋼管杭に取り付けられる鋼管柱に、既製鋼管あるいは鋼板を管状に曲げ加工し、その継目を溶接した加工鋼管が用いられた海洋構造が開示されている。
特許文献2では、海底地盤に打設するモノパイルとして、湾曲した半円筒鋼材を接合して構成された鋼管が用いられた洋上風力発電塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-77533号公報
【文献】特開2011-115829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接シームを有する鋼管を、軸方向に複数接続する場合において、複数の鋼管のうちの1つの溶接シームに亀裂が生じた時、前記1つに接続された鋼管の溶接シームに亀裂が伝播することがある。なお、本明細書において、溶接シームは、ストレートシーム及びスパイラルシームのいずれかである。
これを抑える為に、鋼管の周方向において、互いに接続された鋼管の溶接シームをずらす方法が執られる。しかしながら、洋上風力基礎を設計する際、溶接シームの位置を考慮することで、設計の負担が増加する課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、設計が容易な洋上風力基礎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る洋上風力基礎は、洋上風車を支持する洋上風力基礎であって、円筒状の第1鋼管と、前記第1鋼管と当接部材を介し接続される、円筒状の第2鋼管と、を備え、前記第1鋼管の中心軸と前記第2鋼管の中心軸とは、前記第1鋼管及び前記第2鋼管それぞれの長手方向に沿って見て略一致し、前記当接部材は、前記第1鋼管の端部と、前記第2鋼管の端部と、の間に挟まれ、前記第1鋼管の端部であって、前記当接部材と接する端部のストレートシーム及びスパイラルシームのいずれかである溶接シームと、前記第2鋼管の端部であって、前記当接部材と接する端部の前記溶接シームとは、前記第1鋼管又は前記第2鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされていないことを特徴とする。
【0007】
態様1によれば、当接部材は、第1鋼管の端部と、第2鋼管の端部と、の間に挟まれる。これにより、第1鋼管又は第2鋼管のストレートシーム及びスパイラルシームのいずれかである溶接シームに亀裂が生じた場合であっても、亀裂が第2鋼管又は第1鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。よって、洋上風力基礎において、第1鋼管の溶接シームと第2鋼管の溶接シームとの位置関係を、溶接シームの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。そして、第1鋼管の端部であって、当接部材と接する端部の溶接シームの溶接シームと、第2鋼管の端部であって、当接部材と接する端部の溶接シームの溶接シームとは、第1鋼管又は第2鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされていない。よって、溶接シームの配置を考慮することで洋上風力基礎の設計の負担が増加することを抑えることができる。換言すれば、洋上風力基礎の設計を容易にすることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る洋上風力基礎は、態様1に係る洋上風力基礎において、円筒状の第3鋼管と、前記第3鋼管と接続される、円筒状の第4鋼管と、を更に備え、前記第3鋼管の中心軸と前記第4鋼管の中心軸とは、前記第3鋼管及び前記第4鋼管の長手方向に沿って見て略一致し、前記第3鋼管の端部と前記第4鋼管の端部とは、部材を介することなく接続され、前記第3鋼管の前記溶接シームと、前記第4鋼管の前記溶接シームとは、前記第3鋼管又は前記第4鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされていることを特徴とする。
【0009】
態様2によれば、第3鋼管の端部と第4鋼管の端部とは、部材を介することなく接続される。このため、例えば、第3鋼管の溶接シームと第4鋼管の溶接シームとが、第3鋼管又は第4鋼管の周方向において所定距離未満の位置(例えば、同じ位置)にあると、第3鋼管又は第4鋼管の溶接シームに亀裂が生じた場合に、亀裂が第4鋼管又は第3鋼管の溶接シームに伝播することがある。そこで、第3鋼管の溶接シームと、第4鋼管の溶接シームとは、第3鋼管又は第4鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされている。これにより、第3鋼管の端部と第4鋼管の端部とが部材を介することなく接続されていても、第3鋼管又は第4鋼管の溶接シームに生じた亀裂が、第4鋼管又は第3鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る洋上風力基礎は、態様1又は態様2に係る洋上風力基礎において、前記当接部材は、トランジションピースであることを特徴とする。
【0011】
態様3によれば、当接部材は、トランジションピースである。換言すれば、第1鋼管と第2鋼管との間には、トランジションピースが配置される。したがって、第1鋼管又は第2鋼管の溶接シームに亀裂が生じた場合であっても、トランジションピースによって、亀裂が第2鋼管又は第1鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る洋上風力基礎は、態様3に係る洋上風力基礎において、前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、前記洋上風力基礎は、第1レグを更に備え、前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第1レグの少なくとも一部であり、前記当接部材は、前記トランジションピースのフランジであることを特徴とする。
【0013】
態様4によれば、第1鋼管及び第2鋼管は、第1レグの少なくとも一部である。当接部材は、トランジションピースのフランジである。換言すれば、第1レグは、トランジションピースのフランジを境に、第1鋼管と第2鋼管とに分けられる。これにより、第1レグにおいて、第1鋼管及び第2鋼管の溶接シームの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管又は第2鋼管の溶接シームに生じた亀裂が、第2鋼管又は第1鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。よって、第1レグにおいて、第1鋼管の溶接シームと第2鋼管の溶接シームとの位置関係を、溶接シームの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、トランジションピースのフランジの付近における、第1レグの設計を容易にすることができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る洋上風力基礎は、態様1から態様4のいずれか1つに係る洋上風力基礎において、前記洋上風力基礎は、モノパイル式基礎であり、前記第1鋼管は、前記洋上風車のタワーであり、前記第2鋼管は、前記モノパイル式基礎の鋼管杭であることを特徴とする。
【0015】
態様5によれば、第1鋼管は、洋上風車のタワーである。第2鋼管は、モノパイル式基礎の鋼管杭である。換言すれば、洋上風車のタワーとモノパイル式基礎の鋼管杭とは、トランジションピースを介して接続される。ここで、モノパイル式基礎の鋼管杭とトランジションピースとは、グラウトにより接合される。このため、モノパイル式基礎において、洋上風車のタワー及び鋼管杭の溶接シームの位置が所定距離以上ずらされていなくても、洋上風車のタワー又は鋼管杭の溶接シームに生じた亀裂は、鋼管杭又は洋上風車のタワーの溶接シームには伝播しない。よって、モノパイル式基礎において、洋上風車のタワーの溶接シームと鋼管杭の溶接シームとの位置関係を、溶接シームの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、トランジションピース付近における、モノパイル式基礎の設計を容易にすることができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る洋上風力基礎は、態様2から態様5のいずれか1つに係る洋上風力基礎において、前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、前記洋上風力基礎は、第2レグ、又は、第1ブレースを更に備え、前記第3鋼管及び前記第4鋼管は、前記第2レグ又は前記第1ブレースの少なくとも一部であることを特徴とする。
【0017】
態様6によれば、第3鋼管及び第4鋼管は、第2レグ又は第1ブレースの少なくとも一部である。すなわち、例えば、第3鋼管及び第4鋼管が第2レグの一部である場合、第2レグにおいて、第3鋼管と第4鋼管とが部材を介することなく接続される。第3鋼管及び第4鋼管が第1ブレースの一部である場合、第1ブレースにおいて、第3鋼管と第4鋼管とが部材を介することなく接続される。そして、第3鋼管の溶接シームと、第4鋼管の溶接シームとは、上述のように、第3鋼管又は第4鋼管の周方向において所定距離以上ずらされている。これにより、第2レグ又は第1ブレースにおいて、第3鋼管の端部と第4鋼管の端部とが部材を介することなく接続されていても、第3鋼管又は第4鋼管の溶接シームに生じた亀裂が、第4鋼管又は第3鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る洋上風力基礎は、態様1から態様6のいずれか1つに係る洋上風力基礎において、前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、前記洋上風力基礎は、第3レグと、海底地盤に打設される鋼管杭と前記第3レグとを接続する接続部材と、を更に備え、前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第3レグの少なくとも一部であり、前記当接部材は、前記接続部材のフランジであることを特徴とする。
【0019】
態様7によれば、第1鋼管及び第2鋼管は、第3レグの少なくとも一部である。当接部材は、接続部材のフランジである。換言すれば、第3レグは、接続部材のフランジを境に、第1鋼管と第2鋼管とに分けられる。これにより、第3レグにおいて、第1鋼管及び第2鋼管の溶接シームの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管又は第2鋼管の溶接シームに生じた亀裂が、第2鋼管又は第1鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。よって、第3レグにおいて、第1鋼管の溶接シームと第2鋼管の溶接シームとの位置関係を、溶接シームの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、接続部材のフランジの付近における、第3レグの設計を容易にすることができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る洋上風力基礎は、態様1から態様7のいずれか1つに係る洋上風力基礎において、前記洋上風力基礎は、ジャケット構造体であり、前記洋上風力基礎は、第1ブレースと、第2ブレースと、を更に備え、前記第1鋼管及び前記第2鋼管は、前記第1ブレースの少なくとも一部であり、前記当接部材は、前記第2ブレースであることを特徴とする。
【0021】
態様8によれば、第1鋼管及び第2鋼管は、第1ブレースの少なくとも一部である。当接部材は、第2ブレースである。換言すれば、第1ブレースは、第2ブレースを境に、第1鋼管と第2鋼管とに分けられる。これにより、第1ブレースにおいて、第1鋼管及び第2鋼管の溶接シームの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管又は第2鋼管の溶接シームに生じた亀裂が、第2鋼管又は第1鋼管の溶接シームに伝播することを抑えることができる。よって、第1ブレースにおいて、第1鋼管の溶接シームと第2鋼管の溶接シームとの位置関係を、溶接シームの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、第2ブレースの付近における、第1ブレースの設計を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設計が容易な洋上風力基礎を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る洋上風力基礎の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る洋上風力基礎の正面図である。
【
図3】実施形態に係る第1鋼管と第2鋼管との接続部の模式図である。
【
図4】実施形態に係る第3鋼管と第4鋼管との接続部の模式図である。
【
図5】第2実施形態に係る洋上風力基礎の斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る洋上風力基礎の正面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る洋上風力基礎100を説明する。本実施形態に係る洋上風力基礎100は、海上に配置され、洋上風車WMを支持する。
図1は、第1実施形態に係る洋上風力基礎100の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る洋上風力基礎100の正面図である。
図1及び
図2に示す洋上風力基礎100は、トランジションピース10と、第1鋼管P1と、第2鋼管P2と、第3鋼管P3と、第4鋼管P4と、を備える。
【0025】
トランジションピース10は、洋上風車WMに接続される。洋上風車WMは、タワーTの下端が、トランジションピース10に含まれるセンターパイプ11に接続されることで、トランジションピース10に接続される。なお、センターパイプ11は、例えば、トランジションピース10に更に含まれる上側板12(フランジ)と下側板13(フランジ)とによって支持される。また、センターパイプ11と、上側板12と、下側板13と、の接続を補強するための補強板14を更に備えてもよい。
【0026】
ここで、洋上風車WMのタワーT及びセンターパイプ11は、いずれも円筒状の部材である。また、洋上風車WMのタワーT及びセンターパイプ11の前記円筒状は、円弧状に曲げ加工された1つ又は複数の鋼板の端部同士を、前記円筒状の長手方向に沿って溶接することにより形成される。このため、
図2に示すように、洋上風車WMのタワーT及びセンターパイプ11には、それぞれ溶接シームSが形成されている。
本実施形態において、ストレートシームとは、洋上風力基礎100における管状の各部材に形成される、管軸の方向に沿った溶接シームをいう。
本実施形態において、スパイラルシームとは、洋上風力基礎100における管状の各部材に形成される、管軸まわりに螺旋状に形成された溶接シームをいう。
互いに端部同士が接続される2つの鋼管における溶接シームSは、例えば、両方がストレートシームであってもよい。又は、互いに端部同士が接続される2つの溶接シームSは、両方がスパイラルシームであってもよい。あるいは、互いに端部同士が接続される2つの溶接シームSは、一方がストレートシームであって、他方がスパイラルシームであってもよい。
以下、本実施形態では、溶接シームSは全てストレートシームであるとして説明する。
【0027】
(第1鋼管P1及び第2鋼管P2について)
図3は、実施形態に係る第1鋼管と第2鋼管との接続部の模式図である。
図3に示すように、第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、円筒状の鋼管である。第1鋼管P1及び第2鋼管P2の前記円筒状は、円弧状に曲げ加工された1つ又は複数の鋼板の端部同士を、前記円筒状の長手方向に沿って溶接することにより形成される。このため、第1鋼管P1及び第2鋼管P2には、それぞれ、長手方向に沿った溶接シームSが形成されている。
【0028】
第1鋼管P1と第2鋼管P2とは、互いに接続される。第1鋼管P1の中心軸と第2鋼管P2の中心軸とは、第1鋼管P1及び第2鋼管P2それぞれの長手方向に沿って見て略一致する。なお、略一致するとは、第1鋼管P1の中心軸と第2鋼管P2の中心軸との最短距離が、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の外径の10%以内であることをいう。
【0029】
ここで、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSのいずれかに亀裂が生じると、亀裂が第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することがある。これを抑える為に、例えば、第1鋼管P1の溶接シームSと第2鋼管P2の溶接シームSとを、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において、所定距離以上ずらされた位置に配置する対策が挙げられる。なお、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向における所定距離とは、例えば、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において、45°に相当する距離である。
しかしながら、溶接シームSの配置を考慮して設計することは、洋上風力基礎100の設計の負担が増大する原因となる。
なお、本実施形態において、溶接シームSと溶接シームSとがずらされているとは、特に溶接シームSの端部同士が一連に繋がっておらず、互いに離れていることをいう。
【0030】
これを抑える為に、本実施形態において、第2鋼管P2は、
図3に示すように、第1鋼管P1と当接部材Cを介し接続される。換言すれば、当接部材Cは、第1鋼管P1の端部と、第2鋼管P2の端部と、の間に挟まれるように配置される。そして、第1鋼管P1の端部であって、当接部材Cと接する端部の溶接シームSと、第2鋼管P2の端部であって、当接部材Cと接する端部の溶接シームSとは、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において、所定距離以上、ずらされていない。あるいは、前述の溶接シームS同士は、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において一致していてもよい。すなわち、前述の溶接シームSの端部同士が一連に繋がっていてもよい。このことで、第1鋼管P1と第2鋼管P2との接続部の周辺の設計を容易にする。
本実施形態において、当接部材Cは、例えば、トランジションピース10等である(詳細は後述する)。
【0031】
(第3鋼管P3及び第4鋼管P4について)
図4は、実施形態に係る第3鋼管と第4鋼管との接続部の模式図である。
図4に示すように、第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、円筒状の鋼管である。第3鋼管P3及び第4鋼管P4の前記円筒状は、円弧状に曲げ加工された1つ又は複数の鋼板の端部同士を、前記円筒状の長手方向に沿って溶接することにより形成される。このため、第3鋼管P3及び第4鋼管P4には、それぞれ、長手方向に沿った溶接シームSが形成されている。
【0032】
第3鋼管P3と第4鋼管P4とは、互いに接続される。第3鋼管P3の中心軸と第4鋼管P4の中心軸とは、第3鋼管P3及び第4鋼管P4それぞれの長手方向に沿って見て略一致する。なお、略一致するとは、第3鋼管P3の中心軸と第4鋼管P4の中心軸との最短距離が、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の外径の10%以内であることをいう。
【0033】
ここで、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSのいずれかに亀裂が生じると、亀裂が第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することがある。これを抑える為に、例えば、上述した第1鋼管P1と第2鋼管P2との接続部のように、第3鋼管P3と第4鋼管P4との間に当接部材Cを配置する対策が挙げられる。しかしながら、例えば、洋上風力基礎100におけるその他の各構成の接続部に対して当接部材Cを配置することによって、費用が増大する課題が生じることがある。
【0034】
このような場合に対応するため、第3鋼管P3の端部と第4鋼管P4の端部とは、
図4に示すように、部材を介することなく接続される。そして、第3鋼管P3の溶接シームSと、第4鋼管P4の溶接シームSとは、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向において、所定距離以上、ずらされている。なお、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向における所定距離とは、例えば、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向において、45°に相当する距離である。このことで、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSに生じた亀裂が、第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することを抑える。
【0035】
(洋上風力基礎100について)
次に、本実施形態に係る洋上風力基礎100について説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る洋上風力基礎100は、ジャケット構造体である。ジャケット構造体である洋上風力基礎100は、トランジションピース10と、レグ20と、杭30(鋼管杭)と、接続部材40と、ブレース50と、を備える。
【0036】
レグ20は、ジャケット構造体である洋上風力基礎100において複数設けられる。本実施形態に係る洋上風力基礎100において、レグ20は、
図1に示すように4つ設けられる。以下、複数のレグ20のそれぞれを、第1レグ21、第2レグ22、第3レグ23、第4レグ24ということがある。
複数設けられたレグ20のそれぞれの上端は、トランジションピース10に接続される。レグ20のそれぞれの下端は、海底地盤に打設される杭30の上端に接続される。このことで、複数のレグ20は、海上においてトランジションピース10を支持する。
【0037】
杭30は、例えば、1つのレグ20に対して2つ設けられる。したがって、ジャケット構造体である洋上風力基礎100において、杭30は8つ設けられる。
上述のように複数設けられた杭30のそれぞれは、下端が海底地盤に打設される。杭30のそれぞれの上端は、レグ20に接続される。このことで、杭30は、海上においてレグ20を支持する。
【0038】
接続部材40は、杭30とレグ20とを接続する。接続部材40は、いわゆるスカートスリーブである。スカートスリーブである接続部材40は、
図1に示すように、スリーブ41と、上フランジ42(フランジ)と、下フランジ43(フランジ)と、ウェブ44と、を備える。なお、前記各構成はスカートスリーブの一例であり、他の任意の構造を適宜用いてもよい。
スリーブ41は、円筒状の部材である。スリーブ41の内部には、杭30の上端が挿入される。上述のように、杭30は1つのレグ20に対して2つ設けられる。したがって、スリーブ41は、1つのレグ20に対して2つ設けられる。
【0039】
上フランジ42は、スリーブ41の上部とレグ20とを接続する板状の部材である。上フランジ42と、スリーブ41及びレグ20とは、例えば、溶接により接続される。
下フランジ43は、スリーブ41の下部とレグ20とを接続する板状の部材である。下フランジ43と、スリーブ41及びレグ20とは、例えば、溶接により接続される。
ウェブ44は、レグ20、スリーブ41、上フランジ42、及び下フランジ43の接続を補強する板状の部材である。すなわち、ウェブ44は、例えば、上端が上フランジ42、下端が下フランジ43に接続される。ウェブ44は、水平方向の両端部が、スリーブ41又はレグ20にそれぞれ接続される。ウェブ44は、例えば、上述の各部材に対して、溶接により接続される。
【0040】
ブレース50は、洋上風力基礎100の周方向において隣り合う複数のレグ20同士を接続する。ブレース50は、例えば、
図1及び
図2に示すように、X字状に配置される。以下、前記X字状の一方を第1ブレース51、他方を第2ブレース52ということがある。すなわち、ブレース50は、第1ブレース51と、第2ブレース52と、を含む。
【0041】
(第1鋼管P1及び第2鋼管P2の配置例について)
次に、洋上風力基礎100における、第1鋼管P1及び第2鋼管P2の配置例について説明する。
第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、例えば、第1レグ21の少なくとも一部であり、当接部材Cは、トランジションピース10の下側板13である。すなわち、
図2に示すように、第1レグ21は、トランジションピース10の下側板13を境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。換言すれば、トランジションピース10の下側板13が通し部材である。このような配置とすることで、第1レグ21におけるトランジションピース10の下側板13の周辺の部分において、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑える。
なお、第1レグ21に限らず、第2レグ22、第3レグ23、第4レグ24において同様の構成を適用してもよい。
【0042】
第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、例えば、第1レグ21の少なくとも一部であり、当接部材Cは、接続部材40の上フランジ42である。すなわち、
図2に示すように、第1レグ21は、接続部材40の上フランジ42を境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。換言すれば、接続部材40の上フランジ42が通し部材である。このような配置とすることで、第1レグ21における接続部材40の上フランジ42の周辺の部分において、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑える。
なお、上述の構成は、第1レグ21に限らず、第2レグ22、第3レグ23、第4レグ24に適用してもよい。
【0043】
第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、例えば、第1ブレース51の少なくとも一部であり、当接部材Cは、第2ブレース52である。すなわち、
図2に示す洋上風力基礎100において上下に2段設けられたブレース50のうち、上側に位置するブレース50のように、第1ブレース51は、第2ブレース52を境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。この場合、X字状を形成するブレース50のうち、第2ブレース52が通し部材である。このような配置とすることで、第1ブレース51において、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑える。
【0044】
(第3鋼管P3及び第4鋼管P4の配置例について)
次に、洋上風力基礎100における、第3鋼管P3及び第4鋼管P4の配置例について説明する。
第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、例えば、第1レグ21の少なくとも一部である。具体的には、第3鋼管P3と第4鋼管P4との接続部は、第1レグ21のうち、当接部材Cが配置されない部分に位置する。
すなわち、例えば、
図2に示すように、第3鋼管P3は、第1レグ21のうち、ブレース50が接続される部分であるレグキャン以外の部分である。第4鋼管P4は、第1レグ21のレグキャンである。換言すれば、第1レグ21において、レグキャン以外の部分の溶接シームSと、レグキャンの溶接シームSとは、第1レグ21の周方向において、所定距離以上、ずらされている。
このような配置とすることで、第1レグ21においてレグキャン以外の部分とレグキャンとが部材が介することなく接続されていても、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSに生じた亀裂が、第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することを抑える。
ここで、第1レグ21の長さが、第1レグ21を形成する鋼管の製造可能な長さを超える場合、複数の前記鋼管同士を繋ぎ合わせることで第1レグ21を形成する。第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、それぞれ、前述の場合における複数の鋼管であってもよい。
なお、上述の構成は、第1レグ21に限らず、第2レグ22、第3レグ23、第4レグ24に適用してもよい。
【0045】
第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、例えば、第1ブレース51の少なくとも一部である。具体的には、第3鋼管P3と第4鋼管P4との接続部は、第1ブレース51のうち、当接部材Cが配置されない部分に位置する。
すなわち、例えば、第3鋼管P3は、下側に位置する第1ブレース51のうち、第2ブレース52が接続される部分であるブレースキャン以外の部分である。第4鋼管P4は、下側に位置する第1ブレース51のブレースキャンである。換言すれば、第1ブレース51において、ブレースキャン以外の部分の溶接シームSと、ブレースキャンの溶接シームSとは、第1ブレース51の周方向において、所定距離以上、ずらされている。
このような配置は、例えば、
図2に示す洋上風力基礎100において上下に2段設けられたブレース50のうち、上側に位置するブレース50の備える第1ブレース51のように、第1ブレース51が第2ブレース52によって第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる場合に用いられてもよい。あるいは、洋上風力基礎100のうち、下側に位置するブレース50の備える第1ブレース51のように、第1ブレース51が通し部材であって、第2ブレース52が第1ブレース51を境に第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる場合に用いられてもよい。
【0046】
ここで、第1ブレース51の長さが、第1ブレース51を形成する鋼管の製造可能な長さを超える場合、複数の前記鋼管同士を繋ぎ合わせることで第1ブレース51を形成する。第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、例えば、それぞれ、前述の場合における複数の鋼管であってもよい。このような配置は、例えば、洋上風力基礎100のうち、下側に位置するブレース50の備える第1ブレース51のように、第1ブレース51が通し部材である場合に好適に用いられる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る洋上風力基礎100によれば、当接部材Cは、第1鋼管P1の端部と、第2鋼管P2の端部と、の間に挟まれる。これにより、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シーム及びスパイラルシームのいずれかである溶接シームSに亀裂が生じた場合であっても、亀裂が第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。よって、洋上風力基礎100において、第1鋼管P1の溶接シームSと第2鋼管P2の溶接シームSとの位置関係を、溶接シームSの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。そして、第1鋼管P1の端部であって、当接部材Cと接する端部の溶接シームSと、第2鋼管P2の端部であって、当接部材Cと接する端部の溶接シームSとは、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において、所定距離以上、ずらされていない。よって、溶接シームSの配置を考慮することで洋上風力基礎100の設計の負担が増加することを抑えることができる。換言すれば、洋上風力基礎100の設計を容易にすることができる。
【0048】
また、第3鋼管P3の端部と第4鋼管P4の端部とは、部材を介することなく接続される。このため、例えば、第3鋼管P3の溶接シームSと第4鋼管P4の溶接シームSとが、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向において所定距離未満の位置(例えば、同じ位置)にあると、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSに亀裂が生じた場合に、亀裂が第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することがある。そこで、第3鋼管P3の溶接シームSと、第4鋼管P4の溶接シームSとは、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向において、所定距離以上、ずらされている。これにより、第3鋼管P3の端部と第4鋼管P4の端部とが部材を介することなく接続されていても、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSに生じた亀裂が、第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。
【0049】
また、当接部材Cは、トランジションピース10である。換言すれば、第1鋼管P1と第2鋼管P2との間には、トランジションピース10が配置される。したがって、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに亀裂が生じた場合であっても、トランジションピース10によって、亀裂が第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。
【0050】
また、第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、第1レグ21の少なくとも一部である。当接部材Cは、トランジションピース10のフランジである。換言すれば、第1レグ21は、トランジションピース10のフランジを境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。これにより、第1レグ21において、第1鋼管P1及び第2鋼管P2の溶接シームSの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。よって、第1レグ21において、第1鋼管P1の溶接シームSと第2鋼管P2の溶接シームSとの位置関係を、溶接シームSの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、トランジションピース10のフランジの付近における、第1レグ21の設計を容易にすることができる。
【0051】
また、第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、第2レグ22又は第1ブレース51の少なくとも一部である。すなわち、例えば、第3鋼管P3及び第4鋼管P4が第2レグ22の一部である場合、第2レグ22において、第3鋼管P3と第4鋼管P4とが部材を介することなく接続される。第3鋼管P3及び第4鋼管P4が第1ブレース51の一部である場合、第1ブレース51において、第3鋼管P3と第4鋼管P4とが部材を介することなく接続される。そして、第3鋼管P3の溶接シームSと、第4鋼管P4の溶接シームSとは、上述のように、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の周方向において所定距離以上ずらされている。これにより、第2レグ22又は第1ブレース51において、第3鋼管P3の端部と第4鋼管P4の端部とが部材を介することなく接続されていても、第3鋼管P3又は第4鋼管P4の溶接シームSに生じた亀裂が、第4鋼管P4又は第3鋼管P3の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。
【0052】
また、第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、第3レグ23の少なくとも一部である。当接部材Cは、接続部材40のフランジである。換言すれば、第3レグ23は、接続部材40のフランジを境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。これにより、第3レグ23において、第1鋼管P1及び第2鋼管P2の溶接シームSの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。よって、第3レグ23において、第1鋼管P1の溶接シームSと第2鋼管P2の溶接シームSとの位置関係を、溶接シームSの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、接続部材40のフランジの付近における、第3レグ23の設計を容易にすることができる。
【0053】
また、第1鋼管P1及び第2鋼管P2は、第1ブレース51の少なくとも一部である。当接部材Cは、第2ブレース52である。換言すれば、第1ブレース51は、第2ブレース52を境に、第1鋼管P1と第2鋼管P2とに分けられる。これにより、第1ブレース51において、第1鋼管P1及び第2鋼管P2の溶接シームSの位置が所定距離以上ずらされていなくても、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の溶接シームSに生じた亀裂が、第2鋼管P2又は第1鋼管P1の溶接シームSに伝播することを抑えることができる。よって、第1ブレース51において、第1鋼管P1の溶接シームSと第2鋼管P2の溶接シームSとの位置関係を、溶接シームSの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、第2ブレース52の付近における、第1ブレース51の設計を容易にすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の第2洋上風力基礎200(洋上風力基礎)を、
図5及び
図6を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図5は、第2実施形態に係る洋上風力基礎の斜視図である。
図6は、第2実施形態に係る洋上風力基礎の正面視の断面図である。
第2洋上風力基礎200は、
図5及び
図6に示すように、モノパイル式基礎である。モノパイル式基礎である第2洋上風力基礎200は、モノパイル210(鋼管杭)と、第2トランジションピース220と、を備える。
【0055】
モノパイル210は、下端が海底地盤に打設され、上端が第2トランジションピース220に接続される。このことで、モノパイル210は、海上において第2トランジションピース220を支持する。
モノパイル210は、上部がテーパー状の円筒状の部材である。すなわち、
図6に示すように、モノパイル210の下部は円筒状であり、モノパイル210上部は、管軸方向における任意の位置から上端に向かうにつれて縮径している。
モノパイル210は、円弧状に曲げ加工された1つ又は複数の鋼板の端部同士を、前記円筒状の長手方向に沿って溶接することにより形成される。このため、モノパイル210には、長手方向に沿った溶接シームSが形成されている。
【0056】
ここで、モノパイル210の長さが、モノパイル210を形成する鋼管の製造可能な長さを超える場合、
図6に示すように、複数の前記鋼管同士を繋ぎ合わせることでモノパイル210を形成する。この場合、第1実施形態において説明した第3鋼管P3及び第4鋼管P4は、それぞれ、前述の場合における複数の鋼管であってもよい。また、この場合、第3鋼管P3を下端から上端に向けて縮径した形状とすることで、モノパイル210の上部をテーパー状としてもよい。
【0057】
第2トランジションピース220は、モノパイル210と洋上風車WMのタワーTとを接続する。第2トランジションピース220は、本体部221と、第2上側板222と、を備える。
本体部221は、下部がテーパー状の円筒状の部材である。すなわち、
図6に示すように、本体部221の上部は円筒状であり、本体部221の下部は、下端から上方に向かうにつれて縮径している。
本体部221の内部には、モノパイル210が挿入される。このことで、第2トランジションピース220とモノパイル210とが接続される。また、本体部221とモノパイル210とは、不図示のグラウトにより固定される。このため、本体部221のテーパー状の部分とモノパイル210のテーパー状の部分とは、同じテーパー角であることが好ましい。
第2上側板222は、本体部221の上端に設けられる。第2上側板222の上面には、洋上風車WMのタワーTが当接する。
【0058】
(第1鋼管P1及び第2鋼管P2の配置例について)
次に、第2洋上風力基礎200における、第1鋼管P1及び第2鋼管P2の配置例について説明する。
図6に示すように、第2洋上風力基礎200において、第1鋼管P1は、洋上風車WMのタワーTであり、第2鋼管P2は、モノパイル式基礎のモノパイル210である。第2洋上風力基礎200において、当接部材Cは、第2トランジションピース220の第2上側板222である。すなわち、洋上風車WMのタワーTとモノパイル210との間に、トランジションピース10が配置される。そして、洋上風車WMのタワーTの溶接シームSと、モノパイル210との溶接シームSとは、洋上風車WMのタワーT又はモノパイル210の周方向において、所定距離以上、ずらされていない。このような配置とすることで、洋上風車WMのタワーT又はモノパイル210の溶接シームSに生じた亀裂が、モノパイル210又は洋上風車WMのタワーTの溶接シームSに伝播することを抑える。
【0059】
以上説明したように、第2実施形態に係る第2洋上風力基礎200によれば、第1鋼管P1は、洋上風車WMのタワーTである。第2鋼管P2は、モノパイル式基礎のモノパイル210である。換言すれば、洋上風車WMのタワーTとモノパイル式基礎のモノパイル210とは、トランジションピース10を介して接続される。ここで、モノパイル式基礎の鋼管杭とトランジションピースとは、グラウトにより接合される。このため、モノパイル式基礎において、洋上風車WMのタワーT及びモノパイル210の溶接シームSの位置が所定距離以上ずらされていなくても、洋上風車WMのタワーT又はモノパイル210の溶接シームSに生じた亀裂は、モノパイル210又は洋上風車WMのタワーTの溶接シームSには伝播しない。よって、モノパイル式基礎において、洋上風車WMのタワーTの溶接シームSとモノパイル210の溶接シームSとの位置関係を、溶接シームSの亀裂が伝播することを考慮することなく決定することができる。よって、トランジションピース10付近における、モノパイル式基礎の設計を容易にすることができる。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1鋼管P1又は第2鋼管P2が、第1鋼管P1又は第2鋼管P2を形成する鋼管の製造可能な長さを超える場合、複数の前記鋼管同士を繋ぎ合わせることで第1鋼管P1又は第2鋼管P2を形成してもよい。この場合、前記複数の鋼管の溶接シームS同士は、前記複数の鋼管の周方向において、所定距離以上、ずらされていることが好ましい。換言すれば、第1鋼管P1又は第2鋼管P2が、第3鋼管P3及び第4鋼管P4を含んでいてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 トランジションピース
11 センターパイプ
12 上側板
13 下側板
14 補強板
20 レグ
21 第1レグ
22 第2レグ
23 第3レグ
24 第4レグ
30 杭
40 接続部材
41 スリーブ
42 上フランジ
43 下フランジ
44 ウェブ
50 ブレース
51 第1ブレース
52 第2ブレース
100 洋上風力基礎
200 第2洋上風力基礎
210 モノパイル
220 第2トランジションピース
221 本体部
222 第2上側板
C 当接部材
P1 第1鋼管
P2 第2鋼管
P3 第3鋼管
P4 第4鋼管
S 溶接シーム
T タワー
WM 洋上風車
【要約】
【課題】設計が容易な洋上風力基礎を提供することを目的とする。
【解決手段】洋上風車を支持する洋上風力基礎であって、円筒状の第1鋼管P1と、第1鋼管P1と当接部材Cを介し接続される、円筒状の第2鋼管P2と、を備え、第1鋼管P1の中心軸と第2鋼管P2の中心軸とは、第1鋼管P1及び第2鋼管P2それぞれの長手方向に沿って見て略一致し、当接部材Cは、第1鋼管P1の端部と、第2鋼管P2の端部と、の間に挟まれ、第1鋼管P1の溶接シームSと、第2鋼管P2の溶接シームSとは、第1鋼管P1又は第2鋼管P2の周方向において、所定距離以上、ずらされていないことを特徴とする。
【選択図】
図3