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特許7451823マルチキャリア位相ベース定位のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】マルチキャリア位相ベース定位のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/02 20100101AFI20240311BHJP
   G01S 13/84 20060101ALI20240311BHJP
   G01S 5/06 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01S11/02
G01S13/84
G01S5/06
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023503161
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021042253
(87)【国際公開番号】W WO2022016161
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】63/053,509
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/152,780
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518200503
【氏名又は名称】ザイナー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Zainar, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー,マイナク
(72)【発明者】
【氏名】クラッツ,フィリップ,エイ.
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513271(JP,A)
【文献】特開平10-239414(JP,A)
【文献】特表2019-523864(JP,A)
【文献】国際公開第2019/051040(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0293423(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0240396(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0253301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
G01S 11/00-11/04
G01S 13/84
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算する方法において、
マルチキャリア参照信号にアクセスするステップであって、前記マルチキャリア参照信号は、
一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む、
マルチキャリア参照信号にアクセスするステップと、
ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するステップであって、前記マルチキャリアアップリンク信号は、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む、
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するステップと、
サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す送受信機についての較正関数にアクセスするステップと、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号と前記サブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算するステップと、
前記サブキャリア周波数および前記送受信機の前記較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ前記位相差を調整して一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成するステップと、
前記一組の調整された位相差に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算するステップと、
前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間をリモートサーバへ送信するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算するステップは、
前記一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、
前記一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および
前記一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差
に基づいて一組の到達時間推定中の到達時間推定を計算するステップと、
前記一組の到達時間推定に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算するステップは、前記一組の到達時間推定の平均を計算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するステップは、無線周波数キャリア信号によってアップコンバートされ、無線チャンネルを介して前記ユーザデバイスによって送信された前記マルチキャリア参照信号のコピーを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するステップは、前記ユーザデバイスによって送信される無線電気通信プロトコルにおけるサウンディング参照信号を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を前記リモートサーバへ送信するステップは、前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を、マルチラテレーションによっておよび前記送受信機を含む一組の送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の一組の到達時間に基づいて前記ユーザデバイスの位置を計算するように構成されている位置管理サーバへ送信することを含み、前記一組の到達時間は、前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
マルチキャリア信号の到達時間を計算するための送受信機であって、
マルチキャリア参照信号であって、
一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む、
マルチキャリア参照信号にアクセスし、
ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号であって、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む
マルチキャリアアップリンク信号を受信し、
サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す前記送受信機についての較正関数にアクセスし、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号と前記サブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算し、
前記サブキャリア周波数および前記送受信機の前記較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ前記位相差を調整して一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成し、
前記一組の調整された位相差に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算し、
前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間をリモートサーバへ送信する
ように構成された送受信機。
【請求項8】
前記一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、
前記一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および
前記一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差
に基づいて一組の到達時間推定中の到達時間推定を計算すること、ならびに
前記一組の到達時間推定に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算すること
によって前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を推定するように構成されている、請求項7に記載の送受信機。
【請求項9】
前記一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、
におけるτについて解くことによって前記一組の到達時間推定中の前記到達時間推定を計算するように構成されており、τは、前記到達時間推定を表し、
は、前記第1のサブキャリア周波数についての前記第1の位相差を表し、
は、前記第2のサブキャリア周波数についての前記第2の位相差を表し、
は、前記第1のサブキャリア周波数を表し、
は、前記第2のサブキャリア周波数を表す、請求項8に記載の送受信機。
【請求項10】
前記一組の到達時間推定の平均を計算することによって前記一組の到達時間推定に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算するように構成されている、請求項8に記載の送受信機。
【請求項11】
前記一組の到達時間推定中の到達時間推定ごとに、
前記到達時間推定についての前記第1のサブキャリア周波数に関連した第1の位相歪み、および
前記到達時間推定についての前記第2のサブキャリア周波数に関連した第2の位相歪み
に基づいて前記一組の到達時間推定の重み付き平均を計算することによって前記一組の到達時間推定の前記平均を計算するように構成されている、請求項10に記載の送受信機。
【請求項12】
前記一組の到達時間推定を前記リモートサーバへ送信するようにさらに構成されている、請求項8に記載の送受信機。
【請求項13】
直交周波数分割多重化信号を含む前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するようにさらに構成されている、請求項7に記載の送受信機。
【請求項14】
前記サブキャリアアップリンク信号のシンボルごとに、前記シンボルのサイクリックプレフィックスの末端部分を含むとともに前記シンボルの末端領域を除外するサンプリングウィンドウに基づいて、前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号と前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリアアップリンク信号との間の前記位相差を計算することによって、前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号と前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリアアップリンク信号との間の前記位相差を計算するように構成されている、請求項13に記載の送受信機。
【請求項15】
受信された前記サブキャリア周波数の遅延スプレッドに基づいて前記サイクリックプレフィックスの前記末端部分の期間を計算し、
前記ユーザデバイスのロールオフファクタに基づいて前記シンボルの前記末端領域の期間を計算する
ようにさらに構成されている、請求項14に記載の送受信機。
【請求項16】
較正信号であって、
前記送受信機から既知の距離で較正デバイスから送信され、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに較正サブキャリア信号を含む
較正信号を受信し、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記既知の距離に基づいて前記サブキャリア周波数についての前記較正サブキャリア信号と前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号との間の予期される較正位相差を計算し、
前記サブキャリア周波数についての前記較正サブキャリア信号と前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号との間の実際の較正位相差を計算し、
前記予期される較正位相差と前記実際の較正位相差との間の差に基づいて一組の周波数依存性位相オフセット中の前記サブキャリア周波数についての周波数依存性位相オフセットを計算し、
前記一組の周波数依存性位相オフセットに基づいて前記較正関数を生成する
ようにさらに構成されている、請求項7に記載の送受信機。
【請求項17】
マルチキャリア参照信号であって、
一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む
マルチキャリア参照信号にアクセスし、
ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号であって、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む
マルチキャリアアップリンク信号を受信し、
サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す送受信機についての較正関数にアクセスし、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記サブキャリア周波数についての前記サブキャリア参照信号と前記サブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算し、
前記サブキャリア周波数および前記送受信機の前記較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ前記位相差を調整して前記マルチキャリアアップリンク信号についての一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成し、
前記マルチキャリアアップリンク信号についての前記一組の調整された位相差に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の到達時間を推定し、
前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間をリモートサーバへ送信する
ように構成された、無線ネットワーク内の基地局。
【請求項18】
前記無線ネットワーク内の前記基地局によって供される前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するように構成されている、請求項17に記載の基地局。
【請求項19】
前記無線ネットワーク内の第2の基地局によって供される前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号を受信するように構成されている、請求項17に記載の基地局。
【請求項20】
前記基地局は、電気通信ネットワーク内のノードであり、
前記ユーザデバイスは、前記電気通信ネットワーク内のユーザ機器である、
請求項17に記載の基地局。
【請求項21】
ユーザデバイスの位置を計算する方法であって、
一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における到達時間にアクセスするステップであって、前記到達時間は、
マルチキャリア参照信号にアクセスすることであって、前記マルチキャリア参照信号は、
一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに参照サブキャリア信号を含む
マルチキャリア参照信号にアクセスすること、
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信することであって、前記マルチキャリアアップリンク信号は、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信すること、
サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す前記送受信機についての較正関数にアクセスすること、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記サブキャリア周波数についての前記参照サブキャリア信号と前記サブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算し、
前記サブキャリア周波数および前記送受信機の前記較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ前記位相差を調整して前記マルチキャリアアップリンク信号についての一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成すること、
前記マルチキャリアアップリンク信号についての前記一組の調整された位相差に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算すること
によって計算される、到達時間にアクセスするステップと、
前記一組の送受信機中の送受信機ごとの前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間に基づいて一組の到達時間差を計算するステップと、
前記一組の到達時間差および前記一組の送受信機中の各送受信機の既知の位置に基づいてマルチラテレーションによって前記ユーザデバイスのアップリンク位置推定を計算するステップと、を含む方法。
【請求項22】
前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間にアクセスするステップは、前記送受信機から前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を受信することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間にアクセスするステップは、前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、各到達時間推定が前記一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数に基づく一組の到達時間推定にアクセスすることを含み、
前記方法は、前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記一組の到達時間推定に基づいて前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間を計算するステップをさらに含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記一組の到達時間推定に基づいて前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間を計算するステップは、前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比に基づいて前記一組の到達時間推定の重み付き平均を計算することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
一組の送受信機中の送受信機ごとに、ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における到達時間であって、
マルチキャリア参照信号にアクセスすることであって、前記マルチキャリア参照信号は、
一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに参照サブキャリア信号を含む、
マルチキャリア参照信号にアクセスすること、
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信することであって、前記マルチキャリアアップリンク信号は、
前記一組のサブキャリア周波数を定め、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む、
前記マルチキャリアアップリンク信号を受信すること、
サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す前記送受信機についての較正関数にアクセスすること、
前記一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、
前記サブキャリア周波数についての前記参照サブキャリア信号と前記サブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算し、
前記サブキャリア周波数および前記送受信機の前記較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ前記位相差を調整して前記マルチキャリアアップリンク信号についての一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成することと、ならびに
前記マルチキャリアアップリンク信号についての前記一組の調整された位相差に基づいて前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を計算すること
によって計算される、到達時間にアクセスし、
前記一組の送受信機中の送受信機ごとの前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間に基づいて一組の到達時間差を計算し、
前記一組の到達時間差、および前記一組の送受信機中の各送受信機の既知の位置に基づいてマルチラテレーションによって前記ユーザデバイスのアップリンク位置推定を計算する
ように構成されている、位置管理サーバ。
【請求項26】
前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間にアクセスするように構成され、前記到達時間は、前記送受信機によって計算される、請求項25に記載の位置管理サーバ。
【請求項27】
前記一組の送受信機は、電気通信ネットワーク内の一組の基地局であり、
前記ユーザデバイスは、前記電気通信ネットワーク内のユーザ機器である、
請求項25に記載の位置管理サーバ。
【請求項28】
前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記送受信機から前記マルチキャリアアップリンク信号の前記到達時間を受信することによって、前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間にアクセスするように構成されている、請求項25に記載の位置管理サーバ。
【請求項29】
前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、各到達時間推定が前記一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数に基づく一組の到達時間推定にアクセスすること、および
前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記一組の到達時間推定に基づいて前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間を計算すること
によって前記ユーザデバイスから送信される前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間にアクセスするように構成されている、請求項25に記載の位置管理サーバ。
【請求項30】
前記一組の送受信機中の送受信機ごとに、前記送受信機における前記マルチキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比に基づいて前記一組の到達時間推定の重み付き平均を計算することによって、前記一組の到達時間推定に基づいて前記マルチキャリアアップリンク信号の前記送受信機における前記到達時間を計算するように構成されている、請求項29に記載の位置管理サーバ。
【請求項31】
前記一組の送受信機から前記ユーザデバイスへ送信された一組のマルチキャリアダウンリンク信号に基づいて前記ユーザデバイスによって計算される、前記ユーザデバイスについてのダウンリンク位置推定に前記ユーザデバイスからアクセスし、
前記アップリンク位置推定および前記ダウンリンク位置推定に基づいてハイブリッド位置推定を計算する
ように構成されている、請求項25に記載の位置管理サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月23日に出願した米国仮出願第63/152,780号、および2020年7月17日に出願した米国仮出願第63/053,509号の利益を主張するものであり、各仮出願は、本参照により全体として組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、無線周波数定位の分野に関し、より具体的には、無線周波数定位の分野におけるマルチキャリア位相ベース定位のための新規の有用な方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、第1の方法のフローチャート図である。
図2図2は、第2の方法のフローチャート図である。
図3図3は、第3の方法のフローチャート図である。
図4図4は、ネットワークの概略図である。
図5図5は、第1の方法の一変形例のフローチャート図である。
図6図6は、第1の方法の一変形例のフローチャート図である。
図7A図7Aは、第1の方法および第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図7B図7Bは、第1の方法および第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図7C図7Cは、第1の方法および第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図7D図7Dは、第1の方法および第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図7E図7Eは、第1の方法および第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図8図8は、第2の方法の一変形例のフローチャート図である。
図9図9は、第2の方法および第3の方法の一変形例のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の実施形態の以下の説明は、これらの実施形態に本発明を限定するものではなく、むしろ、当業者が本発明を作製および使用することを可能にすることが意図される。本明細書中に記載された変形例、構成、実施、例示的実施、および実施例は、任意選択であり、それらが説明する変形例、構成、実施、例示的実施、および実施例に専用ではない。本明細書中に記載された本発明は、これらの変形例、構成、実施、例示的実施、および実施例のいずれかおよび全ての置換を含み得る。
【0005】
1. 送受信機における到達時間を計算する方法
図1に示されるように、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算する方法S100を実行するように構成されている。方法S100は、ブロックS110における、マルチキャリア参照信号にアクセスすることであって、マルチキャリア参照信号は、一組のサブキャリア周波数を定め、この一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む、マルチキャリア参照信号にアクセスすることと、ブロックS120における、ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号を受信することであって、このマルチキャリアアップリンク信号は、一組のサブキャリア周波数を定め、この一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む、マルチキャリアアップリンク信号を受信することと、ブロックS130における、サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す送受信機についての較正関数にアクセスすることと、を含む。方法S100は、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、ブロックS140における、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算することと、ブロックS150における、サブキャリア周波数および送受信機の較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ位相差を調整して一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成することと、も含む。さらに、方法S100は、ブロックS160における、一組の調整された位相差に基づいて送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算することと、ブロックS170における、マルチキャリアアップリンク信号の到達時間をリモートサーバへ送信することと、を含む。
【0006】
方法S100の一変形例は、ブロックS162における、一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差に基づいて一組の到達時間推定中の到達時間推定を計算することと、ブロックS164における、一組の到達時間推定に基づいて送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算することと、をさらに含む。
【0007】
2. ユーザデバイスの位置を計算するアップリンク方法
図2に示されるように、位置管理サーバは、ユーザデバイスの位置を計算する方法S200を実行するように構成されている。ブロックS210において、方法S200は、一組の送受信機中の送受信機ごとに、ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号の送受信機における到達時間にアクセスするステップを含む。方法S200について、一組の送受信機中の送受信機ごとのマルチキャリアアップリンク信号の到達時間は、マルチキャリア参照信号にアクセスすることであって、マルチキャリア参照信号は、一組のサブキャリア周波数を定め、この一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む、マルチキャリア参照信号にアクセスすることと、一組のサブキャリア周波数を定めるマルチキャリアアップリンク信号であって、この一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含むマルチキャリアアップリンク信号を受信することと、サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す送受信機についての較正関数にアクセスすることと、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算し、サブキャリア周波数および送受信機の較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットだけ位相差を調整してマルチキャリアアップリンク信号についての一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成することと、およびマルチキャリアアップリンク信号についての一組の調整された位相差に基づいて送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の到達時間を計算することと、によって計算される。方法S200は、ブロックS220における、一組の送受信機中の送受信機ごとのマルチキャリアアップリンク信号の到達時間に基づいて一組の到達時間差を計算することと、ブロックS230における、一組の到達時間差および一組の送受信機中の各送受信機の既知の位置に基づいてマルチラテレーションによってユーザデバイスのアップリンク位置推定を計算することと、も含む。
【0008】
3. ユーザデバイスの位置を計算するダウンリンク方法
図3に示されるように、ユーザデバイスは、一組の送受信機に対してユーザデバイスを定位する方法S300を実行するように構成されている。方法S300は、ブロックS310における、マルチキャリア参照信号にアクセスすることであって、このマルチキャリア参照信号は、一組のサブキャリア周波数を定め、この一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含む、マルチキャリア参照信号にアクセスすることと、ブロックS320における、一組のマルチキャリアダウンリンク信号を受信することであって、一組のマルチキャリアダウンリンク信号中の各マルチキャリアダウンリンク信号は、一組の送受信機中の送受信機によって送信され、一組のサブキャリア周波数を定め、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアダウンリンク信号を含む、一組のマルチキャリアダウンリンク信号を受信することと、を含む。方法S300は、一組のマルチキャリアダウンリンク信号中のマルチキャリアダウンリンク信号ごとに、ブロックS330における、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアダウンリンク信号との間の位相差を計算することと、ブロックS340における、一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差に基づいて一組の到達時間推定中の到達時間推定を計算することと、ブロックS350における、一組の到達時間推定に基づいて受信デバイスにおける受信されたマルチキャリア信号の到達時間を計算することと、も含む。方法S300は、ブロックS360における、一組の受信されたマルチキャリア信号中の各受信されたマルチキャリア信号の到達時間、および一組の送受信機の一組の既知の位置に基づいてユーザデバイスのダウンリンク位置推定を計算することをさらに含む。
【0009】
4. アプリケーション
概して、ネットワーク(例えば、電気通信ネットワーク、ローカルエリア無線ネットワーク)は、位置管理サーバと、一組の送受信機(例えば、基地局、無線ノード、セルサイト)と、少なくとも1つのユーザデバイス(例えば、IoTデバイス、ネットワーク対応スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータなどのユーザ機器)とを含み、高精度で(例えば、1メートル以内まで)ユーザデバイスについての位置推定を計算するために、一組の送受信機の各々における方法S100、および位置管理サーバにおける方法S200を協働して実行するように構成されている。さらにまたは代替として、ネットワーク内のユーザデバイスは、(同様の精度によって特徴付けられる)一組の送受信機に対してのそれ自体についての位置推定を計算するように方法S300を実行することができ、このダウンリンク位置推定を位置管理サーバへ報告することができる。
【0010】
ネットワークは、(方法S100およびS200については)ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号から抽出され、一組の送受信機によって受信されるマルチキャリア位相情報、および/または(方法S300については)一組の送受信機からのマルチキャリアダウンリンク信号送信機から抽出され、ユーザデバイスによって受信されるマルチキャリア位相情報に基づいてネットワーク上で動作する任意のユーザデバイスを定位するために、第4世代(以下、「4G」)、または第5世代(以下、5G」)移動体電気通信ネットワークに用いられているような直交周波数分割多重化(以下、「OFDM」)などのマルチキャリアベースの通信プロトコルを(方法S100、S200、およびS300によって)活用する。したがって、ネットワークは、無線周波数(以下、「RF」)キャリア周波数ホッピングによってさらなる帯域幅を占めることなく、送受信機またはユーザデバイスのハードウェアに対して修正することなく、およびネットワークの通信プロトコルに対する実質的な修正または追加を必要とすることなく、ネットワーク上で動作するユーザデバイスの位相ベース定位を実行することができる。
【0011】
詳細には、一組の送受信機中の各送受信機は、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の正確(例えば、10ナノ秒以内)な到達時間(以下、「TOA」)を推定するために、ユーザデバイスからマルチキャリアアップリンク信号を受信すると、方法S100を実行することができる。より具体的には、送受信機は、送受信機の受信チェーンにより生じる周波数依存性位相オフセットを考慮するために、マルチキャリアアップリンク信号のサブキャリア信号ごとに、同じサブキャリア周波数のサブキャリアアップリンク信号とサブキャリア参照信号との間のサブキャリア位相差を計算し、サブキャリア位相差を調整することができる。次いで、送受信機は、サブキャリア位相差の固有ペアごとに、ペアにおける両サブキャリア位相差に影響を与える一定の位相オフセットを相殺することによってTOA推定を計算することができる。送受信機はマルチキャリアアップリンク信号についての多くのTOA推定を生成することができるので、送受信機は、統計的な推定(例えば、回帰、平均化、重み付き平均化)によって、これらの推定から周波数選択性位相歪み(以下、「位相歪み」)を検出し、これをなくすことができ、それによって結果として得られるTOA推定の精度をさらに高める。したがって、方法S100のブロックを実行することによって、各送受信機は、TOA推定の精度を低下させるソース位相オフセットを相殺しまたは他の方法で緩和させることができる。
【0012】
各送受信機が、方法S100によってサブキャリアアップリンク信号のTOAを計算完了すると、位置管理サーバは、一組の送受信機中の各送受信機からTOAにアクセスし、送受信機間の一組の到達時間差(以下、「TDOA」)を計算する方法S200のブロックを実行することができ、それによって、例えば、ユーザデバイスと一組の送受信機とのサンプリング時間オフセットによって生じるさらなる位相オフセットを相殺する。マルチキャリアアップリンク信号についての一組のTDOA(例えば、3つまたは4つのTDOA)を計算すると、位置管理サーバは、送受信機の一組の既知の位置および一組のTDOAに基づいてTDOAマルチラテレーションによってユーザデバイスの(2次元または3次元空間内の)位置を計算することができる。
【0013】
各送受信機は、RFキャリア信号の代わりにマルチキャリア信号のベースバンドサブキャリア信号から位相情報を抽出することができるので、各送受信機は、単一のマルチキャリアアップリンク信号から大量の位相情報(例えば、マルチキャリア信号を含むサブキャリア信号の個数に比例する)を抽出することができ、これは、周波数ホッピング定位スキームにおいて、可変RFキャリア周波数によって特徴付けられる多数の連続信号を必要とする。したがって、方法S100は、短い時間フレーム(例えば、単一の信号持続時間プラス処理時間)および小さい帯域幅(例えば、単一のマルチキャリア信号によって占められる帯域幅)以内で実行することができる。
【0014】
さらに、上述されたように、マルチキャリア信号を含む一組のサブキャリア信号から様々な同時発生の(または数マイクロ秒以内の短く連続する)位相差を抽出することによって、各送受信機は、これらのサブキャリア信号における位相歪みのTOA推定に対する影響を緩和させることができる。例えば、5Gなどのネットワーク通信プロトコル内の単一のマルチキャリア信号は、単一のマルチキャリア信号内の1200個の上りのサブキャリア信号を含むことができ、一方、送受信機は、たった2つのサブキャリア位相差に基づいてマルチキャリア信号についてのTOAを計算することができる。したがって、システムは、下に横たわる位相差測定における位相歪みによってそれぞれ影響を受け得るマルチキャリア信号についての多数のTOA推定を計算し、送受信機ごとに、これらのTOAを単一のより正確なTOAにまとめることができる。
【0015】
さらに、ネットワークの通信プロトコルによって特定されるスケジュール設定されたマルチキャリア信号を活用することによって、ネットワークは、要求される通信プロトコルにおける何らかのさらなるオーバヘッドなしで、方法S100、S200、および/またはS300を実行することができる。例えば、ネットワークは、方法S200のブロックを組み込む位置管理機能(以下、「LMF」)を実行し、方法S100のブロックを実行するために一組の送受信機として動作する一組の5G基地局(すなわち、gNB、無線ノード)と接続する位置管理サーバを含む5G電気通信ネットワークであり得る。この例では、ネットワークは、マルチキャリアアップリンク信号として5G対応ユーザデバイスから一組の5G基地局へ送信されたサウンディング参照信号(以下、「SRS」)などの無線リソース制御(以下、「RRC」)シグナリングを活用することができ、マルチキャリア信号のTOAデータ(例えば、τ)、位相データ(例えば、θmeas,n,m)、および/または生の波形データを方法S200のブロックに従って処理するためのLMFへ通信するために、NRポジショニングプロトコルA(new radio positioning protocol A)(以下、「NRPPa」)を活用することができる。したがって、この例では、5Gネットワークは、5G基地局と位置管理サーバとの間で位相データおよび/または生の波形データを転送するためにNRPPaにおいてサポートされたTOAデータ要素を使用するまたはNRPPaを最小限で修正することによって、および方法S200を実行するためにLMFのソフトウェアを更新することによって、5Gネットワーク上のユーザデバイスのサブ1メートルの定位を可能にし得る。
【0016】
別の例では、ネットワークは、ユーザデバイスで方法S300のブロックを実行することによってダウンリンク信号に基づいてネットワーク内のユーザデバイスを定位するように構成されている。例えば、5G電気通信ネットワークにおいて、ユーザデバイスは、(異なる周波数時間リソース上で5Gネットワーク内の基地局からユーザデバイスへ送信される)位置決定参照信号(以下、「PRS」)などのダウンリンク信号を活用することができる。次いで、ユーザデバイスは、方法S300のブロックを実行して、基地局に対してのその位置を計算することができ、あるいは、方法S100のブロックによるさらなる処理のために、LTEポジショニングプロトコル(以下、「LPP」)またはLPP拡張(以下、「LPPe」)によって、(例えば、参照信号時間差(以下RSTD)によって)相対TDOAデータ、位相データ、および/または波形データをLMFへ送信することができる。
【0017】
さらに別の例では、ネットワークは、上述したアップリンク(S100およびS200)とダウンリンク(S300)との両方の変形例に従って動作することができる。次いで、ネットワークは、定位精度をさらに改善するために(アップリンク信号とダウンリンク信号との間の周波数分離に基づいて)超解像アルゴリズムを実行することができる。
【0018】
したがって、ネットワークは、方法S100、S200、およびS300のブロックに従って生成されるTOAデータ、位相データ、および/または波形データについてのさらなるデータフィールドをサポートするように既存のプロトコルを修正することによって、方法S100、S200、S300のブロックを実行するために、既存のモバイル通信プロトコルおよびネットワークインフラストラクチャを適合させることができる。
【0019】
概して、方法S100のブロックは、一組の送受信機中の送受信機によって実行されるものとして本明細書中に記載される。しかしながら、いくつかの変形例では、方法S100のブロックは、送受信機が一組の送受信機中の各送受信機へユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号を説明する予め必要なデータを送信する場合、ネットワーク(例えば、1つまたは複数のリモートサーバ)内の他の実体によって実行されてもよい。
【0020】
概して、方法S200のブロックは、リモートサーバまたは位置管理サーバによって実行されるものとして本明細書中に記載される。しかしながら、いくつかの変形例では、方法S200のブロックは、ネットワーク中で動作する多数のリモートサーバによってまたはリーダ送受信機によって実行され得る。
【0021】
概して、方法S300のブロックは、ネットワーク中で動作するユーザデバイスによって実行されるように本明細書中に記載されている。しかしながら、いくつかの変形例では、方法S300のブロックは、ユーザデバイスがマルチキャリアダウンリンク信号を説明する予め必要なデータをリモートサーバへ送信する場合、位置管理サーバまたはリーダ送受信機などのリモートサーバによって実行することができる。
【0022】
概して、方法S100、S200、およびS300のブロックは、様々なデバイスにおける様々な信号のTOAに関して本明細書中に記載されている。しかしながら、本明細書中で利用されるとき、TOAは、(例えば、一組の送受信機中の別個の送受信機によって送信されるダウンリンク信号間の)知られている、スケジュール設定された、または特徴付けられた伝送遅延を含むこともできる。したがって、一組のTOAに基づいてTDOAを計算することを含む方法S200およびS300のブロックにおいて、位置管理サーバおよびユーザデバイスは、それぞれ、TDOAを計算する前にTOAが計算された信号間の伝送時間の差を考慮することができる。
【0023】
5. ユーザデバイス
概して、送受信機は、ユーザデバイスについての位置推定を計算するために、方法S100のブロックを実行し、位置管理サーバは、方法S200のブロックを実行して、ユーザデバイスから送信されるおよび一組の送受信機で受信されるマルチキャリアアップリンク信号に基づいてネットワーク内で動作するユーザデバイスを定位する。より具体的には、ユーザデバイスは、ネットワークの通信プロトコルに従ってマルチキャリア信号を送信することができる送受信機を含む任意のコンピューティングデバイスであり得る。例えば、ネットワークは、IoT(モノのインターネット)デバイス、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ラップトップコンピュータ、または任意の他のネットワーク対応コンピューティングデバイスなどのユーザデバイスを定位することができる。
【0024】
一実施では、ユーザデバイスは、全球測位衛星システム(以下、GNSS)チップを含まないネットワーク対応送受信装置を含む。本実施では、ネットワークは、GNSSを利用することなく、ユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号に基づいて、ユーザデバイスを定位することができる。
【0025】
別の実施では、ユーザデバイスは、ネットワークの無線通信プロトコルに従ってネットワーク内で動作することができる任意の計算デバイスを含む。より具体的には、ユーザデバイスは、マルチラテレーションに必要なネットワーク内の最小数の基地局によって受信されるマルチキャリアアップリンク信号を送信することができる任意のユーザ機器(例えば、2次元定位のための3つの送受信機、3次元定位のための4つの送受信機)を含むことができる。
【0026】
一例では、ユーザデバイスは、5Gネットワーク内で動作し、少なくとも3つの基地局(すなわち、gNB)と通信する任意のクラスのユーザ機器(UE)を含む。
【0027】
6. 送受信機
図4に示されるように、ネットワークは、各送受信機において方法S100のブロックを実行することによって、および位置管理サーバにおいて方法S200のブロックを実行することによって、ネットワークがユーザデバイスを定位することができるように、ユーザデバイスから送信されたマルチキャリアアップリンク信号を説明する生のマルチキャリア波形データを取得するために特定のユーザデバイスと通信する一組の送受信機を含む。さらに、一組の送受信機中の各送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号に関連した計算されたTOA推定、位相情報、および/または生の波形データを(直接、または別のネットワークプロトコルを介して)位置管理サーバへ送信することができる。より具体的には、一組の送受信機中の各送受信機は、ネットワークの無線ノードまたは基地局を含むことができる。したがって、一組の送受信機は、本明細書中で参照されるように、方法S100のブロックを実行することに加えて、ユーザデバイスへの電気通信サービスを提供することができる。
【0028】
一実施では、方法S100のブロックに従ってユーザデバイスを定位するために、一組の送受信機は、(例えば、GPS時刻同期によって)10ナノ秒以内に時間同期されることもでき、この時刻同期レベルを維持することができる正確なクロックを含むことができる。
【0029】
別の実施では、一組の送受信機は、ネットワークによって供される一組のユーザデバイスを含むことができる。本実施では、一組の送受信機は、ネットワーク内の送信用ユーザデバイスからマルチキャリアサイドリンク信号を受信することができ、方法S100およびS200のブロックに従って位置管理サーバと通信することができ、それによってネットワーク内の送信用ユーザデバイスを定位する。本実施では、位置管理サーバは、ネットワーク内の送信用ユーザデバイスを有効に定位するために、方法S100のこのサイドリンク変形例を実行する各送受信機の位置を継続的に追跡することができる。
【0030】
6.1 時刻同期およびサンプリング時間オフセット
概して、マルチキャリアアップリンク信号を受信し、方法S100のブロックを実行する一組の送受信機中の各送受信機は、時刻同期クロックを含むことができる。より具体的には、一組の送受信機中の各送受信機は、(例えば、GPS時刻同期、双方向測距および時刻同期プロトコル、米国特許出願第10,833,840号に記載された時刻同期プロトコルによって)時刻同期プロトコルを実行することができる。さらに、一組の送受信機中の各送受信機は、基準時間に対して送受信機のサンプリング時間オフセットを特徴付ける較正されたサンプリング時間オフセットにアクセスすることができる。したがって、一組の送受信機中の各送受信機は、ネットワーク内の送受信機と他の送受信機との間のサンプリング時間差によって引き起こされる位相オフセットについてのマルチキャリア参照信号についての計算されたTOAを調整することができる。
【0031】
7. 位置管理サーバ
図4に示されるように、ネットワークは、多数の送受信機と通信し、方法S200のブロックを実行するように構成されている位置管理サーバを含む。より具体的には、位置管理サーバは、一組の送受信機によって計算されるマルチキャリアアップリンク信号のTOAに基づいて、ユーザデバイスについての位置推定を計算するように協働する多数のリモートサーバを含むことができる。したがって、位置管理サーバは、ユーザデバイスについての位置推定を生成し、および/またはユーザデバイスの位置を経時的に追跡するために、これらのTOAをまとめるように構成されている。
【0032】
一実施では、位置管理サーバは、5G電気通信ネットワーク内で動作し、5G規格に従って位置管理機能(以下、「LMF」)を実行する。LMFを実行することによって、位置管理サーバは、NRPPaプロトコルを介して一組の送受信機中の各送受信機からTOAデータ(例えば、TOA、一組のTOA推定、および/または生の波形データ)を受信することができる。したがって、各送受信機は、マルチラテレーションによって、および送受信機を含む一組の送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の一組のTOAに基づいて、マルチキャリアアップリンク信号に関連した送受信機によって計算されるTOAを、ユーザデバイスの位置を計算するように構成されている位置管理サーバへ送信することができ、一組の到達時間は、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号の到達時間を含む。
【0033】
8. アップリンクプロトコル
概して、ネットワークは、一組の送受信機中の各送受信機によって実行される方法S100のブロック、および以下にさらに説明される位置管理サーバによって実行される方法S200のブロックを含むアップリンク定位プロトコルを実行することができる。
【0034】
一実施では、位置管理サーバは、ユーザデバイスの事前位置推定にアクセスし、一組の送受信機中の各送受信機の既知の位置に基づく(例えば、ユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号の受容範囲に基づいて計算される)事前位置推定の閾値距離内で一組の送受信機を選択することによって、アップリンクプロトコルを起動することができる。次いで、位置管理サーバは、一組の選択された送受信機からマルチキャリアアップリンク信号に関連したTOAデータをリクエストすることができる。
【0035】
一組の送受信機を選択すると、一組の送受信機中の各送受信機は、ユーザデバイスからマルチキャリアアップリンク信号を受信する送受信機によって実行される無線プロトコルにおいてチャンネル(例えば、直交周波数分割多元接続(以下、OFDMA)リソース)を選択することができる。さらに、ネットワークは、選択されたチャンネル情報をユーザデバイスへ通信することができる。
【0036】
一実施では、位置管理サーバは、ユーザデバイスおよび一組の送受信機が定期的にまたは所定のスケジュールでアップリンクプロトコルを起動するように促すことができる。位置管理サーバが5G規格に従ってLMFを実行している一例では、位置管理サーバは、アクセスおよびモビリティ管理機能(以下、「AMF」)からの特定のユーザデバイスについての位置リクエストの受信に応答して、一組の送受信機(すなわち、gNB)から位置測定をリクエストすることができる。次いで、位置管理サーバは、ユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号に関連した一組の送受信機からTOA、TOA推定、および/または生の波形データを受信することができる。この例では、ユーザデバイスについての位置推定を計算すると、位置管理サーバは、AMFに応答して位置を送信することができる。
【0037】
概して、方法S100のブロックは、一組の送受信機中の単一の送受信機の観点から以下に説明される。しかしながら、マルチキャリアアップリンク信号を受信するように選択された各送受信機は、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号についてのTOAを計算するために、方法S100のブロックを独立して実行することができる。
【0038】
概して、方法S200のブロックは、一組の送受信機と(直接または間接的に)通信する位置管理サーバの観点から以下に説明される。しかしながら、一組の送受信機は、単一のクライアントデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号を受信したネットワーク内の送受信機のサブセットを指す場合もある。
【0039】
概して、方法S100およびS200のブロックは、それぞれ、送受信機および位置管理サーバによって実行されるものとして本明細書中に記載される。しかしながら、ブロックS120、S130、S140、S150、およびS160は、一組の送受信機中の各送受信機から生の波形データまたは部分的に処理された波形データを受信すると、位置管理サーバによって実行され得る。
【0040】
8.1 マルチキャリア参照信号
概して、送受信機は、ブロックS110において、一組のサブキャリア周波数を定め、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含むマルチキャリア参照信号にアクセスすることができる。より具体的には、送受信機は、一組のサブキャリア信号を含むマルチキャリア変調信号にアクセスすることができ、それぞれは、周波数間隔Δfだけスペクトル的に隣接したサブキャリア周波数から分離されたサブキャリア周波数によって特徴付けられる。さらに。送受信機は、ユーザデバイスの位置についての位置管理サーバによるリクエストに応答し、ユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号に適合するマルチキャリア参照信号にアクセスするために、ユーザデバイスを特定するデジタルシンボルのシーケンスを符号化するマルチキャリア参照信号にアクセスすることができ、それによって、送受信機が方法S100のブロックの実行によって定位されるユーザデバイスを特定することを可能にする。代替として、送受信機は、ユーザデバイス識別子を送受信機が各マルチキャリアアップリンク信号を受信する特定のチャンネルまたはスロットに関係付ける識別子テーブルを維持してもよい。本実施では、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号自体からのユーザデバイス識別子の解釈を必要とすることなく、対応するマルチキャリアアップリンク信号を受信する前にデバイス識別子に対応するマルチキャリア参照信号にアクセスすることができる。したがって、送受信機は、以下にさらに説明されるように、マルチキャリアアップリンク信号とマルチキャリア参照信号との間に一組の位相差を生成するために、多数のユーザデバイスから受信されるマルチキャリアアップリンク信号の曖昧さを解消し、各マルチキャリアアップリンク信号を対応するマルチキャリア参照信号に適合させることができる。
【0041】
一例では、送受信機は、ユーザデバイスから送信されるSRSなどの5G通信プロトコルにおけるRRC参照信号またはパイロット信号にアクセスする。この例では、信号は、15キロヘルツのΔfを有するOFDM参照信号である。しかしながら、送受信機は、通過帯域内の異なる周波数のものを含む任意の他のマルチキャリア参照信号にアクセスすることができる。
【0042】
概して、マルチキャリア参照信号は、デジタルシンボルのシーケンス内のシンボルごとにサブキャリア周波数fの複雑な正弦波を含むN個のサブキャリア参照信号nの合計
【0043】
としてモデル化することができ、ただし、Aは、振幅であり、θは、各サブキャリア参照信号の追加の位相である。したがって、本明細書中で利用されるとき、nは、一組のサブキャリア信号Nにおける特有のサブキャリア参照信号、サブキャリアアップリンク信号、またはサブキャリアダウンリンク信号を指す。
【0044】
8.2 マルチキャリアアップリンク信号
概して、送受信機は、ブロックS120において、ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号を受信することができ、マルチキャリアアップリンク信号は、一組のサブキャリア周波数を定め、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアアップリンク信号を含む。より具体的には、ブロックS120において、送受信機は、マルチキャリア参照信号と同じデジタルシンボルのシーケンスを含むとともに、一組の参照サブキャリア周波数と同じサブキャリア周波数によって特徴付けられる一組のサブキャリアアップリンク信号を含むマルチキャリアアップリンク信号を(例えば、ユーザデバイスからの送信によって)受信することができる。詳細には、マルチキャリアアップリンク信号は、RFキャリア周波数にアップコンバートされ、スケジュール設定された時間スロット中に無線チャンネルを介してユーザデバイスによって送信されるマルチキャリア参照信号のコピーである。したがって、送受信機は、以下にさらに説明されるように、マルチキャリアアップリンク信号の各サブキャリア位相をマルチキャリア参照信号の対応するサブキャリア位相と直接比較することができる。
【0045】
ユーザデバイスと一組の送受信機M中の送受信機mとの間の送信中、マルチキャリアアップリンク信号は、いくらかの伝搬時間(またはTOA)τにわたって遅延される。したがって、一組のサブキャリアアップリンク信号中の各サブキャリアアップリンク信号と一組のサブキャリア参照信号中の対応するサブキャリア参照信号との間の位相差θτ,n,mを抽出することによって、ネットワークは、τを計算することができ、ユーザデバイスからマルチキャリアアップリンク信号を受信した一組のM個の送受信機ごとにτを計算すると、続いて、(方法S200のブロックによって)ユーザデバイスを定位する。
【0046】
概して、送受信機mにおけるマルチキャリアアップリンク信号は、
【0047】
のようにモデル化することができる(Aは、説明を簡単にするために以下省略される)。さらに、マルチキャリアアップリンク信号r(t)は、マルチパス遅延による影響を受ける可能性があり、したがって、信号モデルは、
【0048】
のように表現することができ、ただし、Iは、経路の総数を表し、ρは、各マルチパス信号の振幅を表し、
【0049】
は、マルチパス信号の伝搬遅延により生じる位相遅延を表し、θは、伝搬遅延からではなく(例えば、反射および/または回折により)生じる追加の位相を表す。したがって、I=1、τ=τ、およびθ=0である理想的な条件では、τは、任意のサブキャリア信号nについて、
の式に従って計算することができる。しかしながら、前述した理想的な条件でも、測定された位相差θmeas,n,mは、θτ,n,mに等しくない。代わりに、θmeas,n,mが、
の式によってモデル化されてもよく、ただし、θfcは、RFキャリア位相オフセットを表し、θは、一定の周波数非依存性位相オフセットを表し、θd,mは、送受信機mのアナログハードウェア構成要素、ソフトウェア、および/またはファームウェア(例えば、デジタルフィルタ)によって生じる決定的な周波数依存性位相オフセットを表し、θu,mは、ユーザデバイスと送受信機mとの間のサンプリングオフセットにより生じる位相オフセットを表し、θD,nは、一組のサブキャリア周波数にわたってランダムおよび対称的に分布し得る、またはfに関して非線形であり得る周波数選択性位相歪みを表す。
【0050】
したがって、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号のTOAを正確に計算し、それによって、方法S200のブロックによりユーザデバイスの定位を可能にするために、送受信機は、方法S100のブロックに従ってこれらの位相オフセットの各々を特徴付けるまたはなくすことができる。
【0051】
一例では、マルチキャリアアップリンク信号は、5G電気通信プロトコルに従って送信されたサウンディング参照信号の受信されたベースバンド信号である。したがって、この例では、送受信機は、ユーザデバイスによって送信される無線電気通信プロトコルにおけるサウンディング参照信号を受信することができる。
【0052】
別の例では、マルチキャリアアップリンク信号は、OFDM信号の受信されたベースバンド信号である。より具体的には、この例では、送受信機は、OFDM信号を含むマルチキャリアアップリンク信号を受信することができる。したがって、この例では、マルチキャリアアップリンク信号は、互いに直交する一組のサブキャリア周波数を定める。
【0053】
さらに別の例では、マルチキャリアアップリンク信号は、多数のOFDMAサブスロットにわたって分割することができ、したがって、マルチキャリアアップリンク信号の異なるサブキャリアアップリンク信号は、サブキャリアアップリンク信号の各グループがユーザデバイスによって送信されたサブスロットに従って別々のグループで送受信機に到着することができる。本実施では、位置管理サーバは、マルチキャリアアップリンク信号が送信された時間期間の間、ユーザデバイスの速度がゼロであると仮定することができる。代替として、位置管理サーバは、マルチキャリアアップリンク信号のサブキャリアアップリンク信号が送信された期間中のユーザデバイスについてのモーションデータにアクセスし、TDOAマルチラテレーション中にこのモーションを補償することができる。
【0054】
送受信機が無線ネットワーク内の基地局である別の実施では、基地局は、マルチキャリアアップリンク信号を送信する無線チャンネルが十分な忠実度によって特徴付けられるように基地局によって供されているユーザデバイスからのマルチキャリアアップリンク信号を受信する。より具体的には、基地局は、無線ネットワーク内の基地局によって供されるユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号を受信するように構成されている。
【0055】
代替として、基地局は、無線ネットワーク内の他の基地局によって供されるユーザデバイスからのマルチキャリアアップリンク信号を受信することができる。より具体的には、基地局は、無線ネットワーク内の第2の基地局によって供されるユーザデバイスから送信されたマルチキャリアアップリンク信号を受信するように構成されている。したがって、無線ネットワーク内の基地局は、基地局と送信用ユーザデバイスとの間の次善の無線チャンネルにもかかわらず、マルチキャリアアップリンク信号をリッスンし、これらのマルチキャリアアップリンク信号についてのTOAを計算することができる。
【0056】
8.3 デバイス較正関数へのアクセス
概して、送受信機は、ブロックS130において、サブキャリア周波数と位相オフセットとの間の関係を表す較正関数にアクセスすることができる。より具体的には、送受信機は、入力サブキャリア周波数fを送受信機mについての出力位相オフセットθd,mに関係付ける送受信機に特有の較正関数にアクセスすることができる。したがって、送受信機は、(以下にさらに説明される較正手順に従って)各送受信機をまず較正することによって、送受信機の特有のアナログハードウェア構成要素、ソフトウェア、および/またはファームウェアによって引き起こされる決定的な周波数依存性位相オフセットを説明することができる。
【0057】
一実施では、一組の送受信機が一組の基地局を含む。各送受信機および/または位置管理サーバは、送受信機の固有識別子に基づいて一組の送受信機中の個々の送受信機に関連した較正関数にアクセスすることができる。代替として、各送受信機および/または位置管理サーバは、各基地局のメーカーおよびモデルに関連した較正関数にアクセスしてもよい。したがって、この代替的な実施では、各較正関数は、個々の基地局または送受信機に特有でないが、代わりに、基地局の各タイプまたはモデルを記述している。
【0058】
一組の送受信機が一組のユーザデバイスを含む別の実施では、各ユーザデバイスおよび/または位置管理サーバは、ユーザデバイスのメーカーおよびモデルに関連した較正関数にアクセスすることができる。代替として、ユーザデバイスおよび/または位置管理サーバは、ユーザデバイスの国際移動体装置識別番号に関連した較正関数にアクセスすることができる。
【0059】
8.4 位相差計算
概して、送受信機は、ブロックS140において、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算することができる。より具体的には、ユーザデバイスによって送信されるマルチキャリアアップリンク信号を受信すると、ブロックS140において、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号の各サブキャリアアップリンク信号nとサブキャリアアップリンク信号と同じサブキャリア周波数によって特徴付けられる対応するサブキャリア参照信号との間の測定された位相差θmeas,n,mを計算することができる。したがって、送受信機は、マルチキャリア信号に含まれるサブキャリア周波数ごとに位相差を計算することができ、方法S100の続くブロックにおいて、これらの位相差を洗練して、上述した様々な位相オフセットをなくすまたは補償するようになっている。
【0060】
より具体的には、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号のダウンコンバートされた波形を表す一組のデジタルサンプルを受信し、一組のデジタルサンプルに基づいて離散フーリエ変換(以下、「DFT」)を計算し、通過帯域フィルタまたは他のデジタルフィルタを一組のデジタルサンプルおよび/または他の歪み低減技法に適用し、マルチキャリアアップリンク信号に含まれる有効な(すなわち、十分に低い歪みによって特徴付けられる)サブキャリア信号ごとにマルチキャリアアップリンク信号とマルチキャリア参照信号との間の一組の位相差を計算することができる。代替として、送受信機は、方法S200のブロックに従ってさらに処理するために受信されたマルチキャリアアップリンク信号の波形表現を位置管理サーバへ送信する前に、前述のプロセスのいずれかを実行することができる。
【0061】
一実施では、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号およびマルチキャリア参照信号のサブキャリア周波数のサブセットについて位相差を計算することができる。より具体的には、送受信機は、2πラジアンよりも大きい位相差を示す可能性がないマルチキャリアアップリンク信号およびマルチキャリア参照信号によって定められるサブセットのサブキャリア周波数を選択することができる。本実施では、送受信機は、(例えば、ユーザデバイスについての事前位置推定に基づいて、またはユーザデバイスについてのGNSSベース位置推定に基づいて)送受信機に対してのユーザデバイスの距離を推定し、ユーザデバイスと送受信機との間の推定された距離にわたる伝搬中にマルチキャリアアップリンク信号の一組のサブキャリア信号中の各サブキャリア信号の位相シフトを推定し、推定された距離にわたって2πラジアンよりも大きい推定された位相シフトを示すそれらのサブキャリア信号を除外することができる。したがって、送受信機は、そのTOA推定から不正確な位相測定を除外することができる。
【0062】
8.4.1 サイクリックプレフィックスの使用法
ネットワークの通信プロトコルがOFDM通信スキームであるアプリケーションでは、送受信機は、上述したブロックS140において参照された位相差計算の精度をさらに高めるために、マルチキャリアアップリンク信号中の各シンボルのサイクリックプレフィックスの末端部分を利用することができる。図6に示されるように、本実施では、送受信機は、サブキャリアアップリンク信号のシンボルごとに、シンボルのサイクリックプレフィックスの末端部分を含むとともに、シンボルの末端領域を除外するサンプリングウィンドウに基づいて、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアアップリンク信号との間の位相差を計算するように構成されている。詳細には、送受信機は、受信されたサブキャリア周波数の遅延スプレッドに基づいてサイクリックプレフィックスの末端部分の期間を計算し、ユーザデバイスのロールオフファクタに基づいてシンボルの末端領域の期間を計算するように構成され得る。
【0063】
概して、マルチキャリアOFDM通信プロトコルは、(二乗余弦DAC再現フィルタのロールオフファクタにより)各シンボルの末端領域の方へ波形歪みを生じさせる。この末端の歪みは、受信機によるマルチキャリア信号の各シンボルの解釈に有意味に影響を与えないが、この末端の歪みは、ブロックS140の実行中にマルチキャリア信号の各サブキャリア信号の位相差計算へ非線形の周波数依存性誤差を導入する。しかしながら、代わりに、送受信機は、前述のシンボルの末端領域よりも少ない歪みによって特徴付けられるサイクリックプレフィックスの末端部分をサンプリングすることができる。したがって、送受信機は、サブキャリア信号のシンボルの末端領域内の歪みを回避するために、マルチキャリア信号のサブキャリア信号ごとにサイクリックプレフィックスの末端部分を含むようにシンボルごとのサンプリングウィンドウを前方にシフトおよび拡張することができる。
【0064】
さらに、送受信機は、(ユーザデバイスと送受信機との間の信号の予期した伝搬遅延および予期されるクロックバイアスに基づいて)チャンネルの現在の遅延スプレッドを特徴付け、遅延スプレッドプラスバッファ期間に等しい長さのサイクリックプレフィックスの最初の部分を除外することにより、先のシンボルのマルチパスフェージングによって引き起こされるサイクリックプレフィックス内の歪みを回避する。通信プロトコルについてのサイクリックプレフィックスの期間がサブキャリア信号について推定された最悪の場合の遅延スプレッドに基づいて設定されるので、マルチパスフェージングによって影響を受けないサイクリックプレフィックスのこの末端部分が存在する。したがって、ほとんどの場合、サイクリックプレフィックスのかなりの部分は、サブキャリアアップリンク信号とサブキャリア参照信号との間の位相差を計算するために利用され得る。例えば、通信プロトコルについてのサイクリックプレフィックスが4マイクロ秒であり、遅延スプレッドが1マイクロ秒に等しい場合、送受信機は、(伝搬遅延およびクロックバイアスを考慮してバッファをマイナスする)期間内に3マイクロ秒までサイクリックプレフィックスの末端部分を利用することができる。したがって、送受信機は、サイクリックプレフィックスの末端部分を含み、サブキャリア信号における各データシンボルの末端領域を除外するサンプリングウィンドウに基づいて、サブキャリア参照信号に対してのサブキャリアアップリンク信号の位相差を計算することができる。
【0065】
より具体的には、一組のサブキャリア信号中のサブキャリアアップリンク信号ごとに、送受信機は、サブキャリア信号の現在の遅延スプレッドを計算するために、即時のチャンネル推定、統計的なチャンネル推定、および/または超解像の方法(例えば、マルチプルシグナルクラシフィケーション(multiple signal classification)アルゴリズム)を実行し、現在の遅延スプレッドに基づいてサブキャリア信号のサイクリックプレフィックスの末端部分の使用可能期間を計算し、サブキャリア信号の各サイクリックプレフィックスの末端部分を含むとともに、サブキャリアアップリンク信号の各データシンボルの末端領域を除外するサンプリングウィンドウに基づいて、サブキャリアアップリンク信号nと同じサブキャリア周波数によって特徴付けられる対応するサブキャリア参照信号との間の位相差θmeas,n,mを計算することができる。
【0066】
一実施では、送受信機は、パイロットシーケンスに基づいてサブキャリア信号の遅延スプレッドを推定することができる。代替として、送受信機は、サイクリックプレフィックスの内容を利用してチャンネルの遅延スプレッドを推定することができる。これらの実施では、送受信機は、チャンネル推定ベースのアルゴリズムを実行して既知の参照信号および受信信号に基づいて電力遅延プロファイルを生成することができる。チャンネルについての電力遅延プロファイルの場合、送受信機は、チャンネルの遅延スプレッド(すなわち、二乗平均平方根遅延スプレッド)を計算することができる。
【0067】
一組のサブキャリア信号中の各サブキャリア信号についての遅延スプレッドを計算すると、送受信機は、サイクリックプレフィックスの末端部分の使用可能期間を計算するために、サイクリックプレフィックスから遅延スプレッド値(プラスバッファ期間)を減算することができる。例えば、4マイクロ秒の期間を有するサイクリックプレフィックス、2.5マイクロ秒の計算される遅延スプレッド、および0.5マイクロ秒のバッファ期間によって特徴付けられるチャンネルについては、送受信機は、1マイクロ秒のサイクリックプレフィックスの末端部分の使用可能期間を計算することができる。
【0068】
代替的な実施では、送受信機は、(米国仮出願第63/105,822号にさらに詳細に説明されるように)チャンネルについてのマルチパスプロファイル、およびこのマルチパスプロファイル中の各特定されたマルチパスコンポーネントの電力を生成するために、マルチプルシグナルクラシフィケーション(以下、「MUSIC」)などの超解像アルゴリズムを除外することができる。MUSICアルゴリズムを実行すると、送受信機は、LOS成分とMUSICパワースペクトルによって特定される最新の重要なマルチパスコンポーネントとの間の遅延として遅延スプレッドを計算することができる。
【0069】
位相差計算に利用するためにサイクリックプレフィックスの末端部分を特定することに加えて、送受信機は、DAC再現フィルタによる波形歪みによって影響を受けるサブキャリア信号の各シンボルの末端領域を除外することもできる。送受信機は、送信機(すなわち、アップリンク信号についてのユーザデバイス、およびダウンリンク信号についての無線ノードまたは基地局)によって利用される再構成フィルタのロールオフファクタβに基づいて、各シンボルのこの末端領域の除外された期間を計算することができる。一例では、送受信機は、除外された期間t=2T/βによって特徴付けられるシンボルの末端領域を除外することができ、ただし、Tは、送信機におけるDACのサンプリングレートである。したがって、(図6に示されるように)送受信機は、使用可能期間によって特徴付けられるサイクリックプレフィックスの末端部分を含むとともに、除外された期間によって特徴付けられるシンボルの末端領域を除外するマルチキャリア信号のシンボルおよびサイクリックプレフィックスの領域を特定することができる。
【0070】
本実施では、送受信機は、DAC遅延の合計の推定に基づくサイクリックプレフィックスの使用可能部分を計算するためのバッファ期間、および(例えば、ネットワーク中の送信機と受信機との間の推定されたLOS距離に基づく)信号の送信機と受信機との間の伝搬遅延の概算を設定することができる。一例では、バッファ期間は、送信機と受信機との間の推定タイムバイアスも説明する。
【0071】
本実施では、送受信機は、チャンネルの遅延スプレッドを周期的に再計算し、したがって、サイクリックプレフィックスの末端部分の使用可能期間を再計算することができる。かくして、送受信機は、チャンネルの遅延スプレッドが変化するときに経時的に位相差計算に利用される一組のサブキャリア信号中の各サブキャリア信号のサンプリングウィンドウを修正することができる。
【0072】
さらに、本実施では、送受信機は、マルチキャリア波形の末端部分にアクセスすることができ、さもなければ、マルチキャリア波形の末端部分は、通信プロトコルのガードインターバル除去ステップ前に物理層で破棄され得る。したがって、送受信機は、マルチキャリア信号のサイクリックプレフィックスからデジタルサンプルを取り出すことができる。
【0073】
8.5 周波数依存性位相調整
概して、送受信機は、ブロックS150において、一組の調整された位相差中に調整された位相差を生成するために、対応するサブキャリア周波数、および送受信機の較正関数に基づいて周波数依存性位相オフセットθd,m(f)によってサブキャリアアップリンク信号ごとに計算された位相差を調整することができる。より具体的には、送受信機は、サブキャリアアップリンク信号に関連したサブキャリア周波数を特定し、較正関数に従ってサブキャリア周波数に基づいて対応する周波数依存性位相オフセットを計算し、θmeas,n,mからこの周波数依存性位相オフセットを減算することができる。したがって、送受信機は、θmeas,n,mに対する送受信機のハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの影響をなくし、さらに、
のようにサブキャリアアップリンク信号nごとにθτ,n,mを切り離すことができる。
【0074】
一実施では、送受信機は、送受信機の線形較正関数にアクセスすることができ、この場合には、周波数依存性位相オフセットは、周波数依存性遅延τd,m(f)として現れる。しかしながら、送受信機は、周波数依存性位相オフセットとサブキャリア周波数との間の何らかの数学的関係を記述する較正関数にアクセスすることができる。
【0075】
8.6 到達時間推定
概して、送受信機は、ブロックS160において、一組のサブキャリア参照信号中のサブキャリア参照信号ごとに一組の調整された位相差に基づいて送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号のTOAを推定することができる。図5に示されるように、ブロックS162において、送受信機は、一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差に基づいて、一組のTOA推定中のTOA推定を計算することができる。詳細には、送受信機は、
【0076】
におけるτについて解くことによって一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに一組のTOA推定中のTOA推定を計算することができ、ただし、τは、TOA推定を表し、
【0077】
は、第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差を表し、
【0078】
は、第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差を表し、
【0079】
は、第1のサブキャリア周波数を表し、
【0080】
は、第2のサブキャリア周波数を表す。
【0081】
したがって、(例えば、式τ=-θτ,n,m/2πfによる)単一の位相測定によって送受信機mにおける受信されたマルチキャリアについてのTOAτを計算する代わりに、送受信機は、代わりに、TOA推定
【0082】
を、一組のサブキャリアアップリンク信号N中のサブキャリア周波数
【0083】
および
【0084】
に対応する任意の2つのサブキャリアアップリンク信号nおよびnからの任意の2つの調整された位相差に基づいて、以下の通り計算することができる。
【0085】
したがって、2つのサブキャリアアップリンク信号から抽出される2つの位相差に基づいて
【0086】
を計算することによって、送受信機は、(θ=0と仮定するときに)以下の展開
【0087】
に示されるように両サブキャリアアップリンク信号に影響を与える位相オフセットを相殺することができる。サブキャリア周波数ペア
【0088】
についての合わされた位相歪みを加える結果として、式
【0089】
に戻る。
【0090】
したがって、ブロックS160を実行し、
【0091】
およびθの項をなくすと、送受信機は、方法S100の続くブロックの実行によってτをさらに切り離すことができる。
【0092】
さらに、一組のサブキャリア周波数中の固有の一対のサブキャリア周波数ごとに上記の計算を実行することによって、送受信機は、以下にさらに説明されるように、TOA計算全体におけるノイズを減少させるために、送受信機または位置管理サーバがこの一組のTOA推定をまとめることができるように、位相歪みθによってそれぞれ影響を受ける一組のTOA推定
【0093】
を生成することができる。
【0094】
一実施では、送受信機は、サブキャリア周波数ペア間の最大周波数差
【0095】
を計算することができ、それを用いて送受信機は、一組のTOA推定を計算する。本実施では、送受信機は、(例えば、ユーザデバイスについての事前位置推定に基づく)ユーザデバイスからの近似距離に送受信機からアクセスし、位相差のひと回りの2πがユーザデバイスから送受信機へのマルチキャリアアップリンク信号の伝搬中にその距離にわたって生じないように閾値周波数差を計算する。
【0096】
8.7 TOA推定の位相歪み緩和
概して、送受信機は、ブロックS164において、TOA計算における位相歪みの影響を減少させるために、一組のTOA推定に基づいて送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号のTOAを計算することができる。より具体的には、送受信機は、
【0097】
の式に従うなどして、マルチキャリアアップリンク信号の一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数の様々な固有ペアに基づいて計算されるTOA推定を平均することによって、TOAの計算を位置管理サーバへ送信する前に、TOAの計算における位相歪みを緩和させることができ、ただし、τu,mは、送受信機mおよびユーザデバイスのサンプリング時間オフセットを表し、ただし、
【0098】
である。代替として、送受信機は、任意の一組のN-1個以下のTOA推定
【0099】
を平均してもよく、ただし、n、n∈N(例えば、一組の不連続のサブキャリア周波数ペアから計算されるTOA推定)であり、
【0100】
である。したがって、送受信機は、サンプリング時間オフセットτu,mだけまだオフセットされている送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号についての単一の歪み緩和TOA値を計算するために、一組のTOA推定の平均を計算することができる。しかしながら、サンプリング時間オフセットτu,mは、以下にさらに説明されるように、位置管理サーバによって実行されるブロックS220において相殺される。
【0101】
さらに、送受信機は、ブロックS160において送受信機によって計算される一組のあらゆる可能なTOA推定からのサブセットのTOA推定を平均することもできる。例えば、送受信機は、送受信機がTOA推定を計算するのに用いる位相差のひと回りの2πよって影響を受けている可能性のあるTOA推定を破棄することができる。
【0102】
一実施では、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号のTOAを計算するために、TOA推定の重み付き平均を計算することができる。より具体的には、送受信機は、TOA推定についての第1のサブキャリア周波数に関連した第1の位相歪み、およびTOA推定についての第2のサブキャリア周波数に関連した第2の位相歪みに基づいて、一組のTOA推定中のTOA推定ごとに、一組のTOA推定の重み付き平均を計算することができる。詳細には、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号によって定められるサブキャリア周波数ごとに位相歪み測定を実行し、続いて、平均して低い歪みのサブキャリアアップリンク信号から得られるTOA推定の重みを増加させることができる。例えば、送受信機は、
【0103】
の式に従って重み付き平均を計算することができ、ただし、wは、サブキャリア周波数fに対応する重みを表す。しかしながら、送受信機は、任意の重みスキームに従って、およびマルチキャリアアップリンク信号のサブキャリア周波数を特徴付ける任意の測定に基づいて、TOA推定の重み付き平均を計算してもよい。代替として、システムは、一組のP不連続TOA推定についての重み付き平均を計算してもよい。
【0104】
マルチキャリアアップリンク信号についてのTOAを計算し、TOAを位置管理サーバへ送信すると、次いで、位置管理サーバは、以下にさらに説明されるように、方法S200のブロックに従って、一組の送受信機Mにおける各一対の送受信機間の単一のTDOA
【0105】
を計算することができる。一組のサブキャリアアップリンク信号中のサブキャリアアップリンク信号の組合せごとのTOA推定とは対照的に、送受信機がネットワークを介して単一の値τを送信することができるので、したがって、位置管理サーバへ送信する前に平均されたTOAτを計算することによって、送受信機は、ネットワークを介して(例えば、NRPPaによって5Gプロトコルで)送信されるデータの量を減少させる。
【0106】
代替として、送受信機は、完全な一組のTOA推定を位置管理サーバへ送信することができ、位置管理サーバは、上述の位相歪み緩和を実行し、それによって送受信機の処理負担を減少させることができる。より具体的には、送受信機は、一組の到達時間推定をリモートサーバへ送信するように構成され得る。
【0107】
8.8 決定的な周波数依存性位相オフセット較正
一実施では、上述の方法S100のブロックを実行する前に、送受信機(またはネットワーク内の別の実体)は、送受信機mの決定的な周波数依存性位相オフセットθd,mを計算するように一組の較正を実行することができる。より具体的には、送受信機は、(定位精度にとって好ましくないマルチパスまたは他の環境的シナリオを回避するように選択された)既知のユーザデバイス位置を用いる上述したように方法S100を実行し、位置の不正確さを送受信機のθd,m(f)に帰することによって較正することができる。次いで、送受信機は、サブキャリア周波数に対する決定的な周波数依存性位相オフセットの依存性を特徴付けるベストフィット関数を計算することができる。
【0108】
一例では、送受信機は、2つ以上の送受信機へのLOSを有する既知の位置に位置するユーザデバイスとして働く較正デバイスを用いて方法S100を実行することができる。
【0109】
を計算すると、送受信機は、これを、これらのデバイス間で既知の距離に与えられる較正デバイスと送受信機mとの間の事前計算された理想的な
【0110】
と比較することができる。既知の
【0111】
と較正手順中に計算された
【0112】
との間のこの差は、次いで、周波数
【0113】
についてのθd,m(f)に等しく設定され得る。次いで、このプロセスは、サブキャリア周波数fに対してのθd,mの依存性をマップするために、多数の周波数fにわたって繰り返され得る。
【0114】
別の例では、送受信機は、ターゲットエリアを3次元ピクセルにラスタライズし、信号伝搬シミュレーションを実行して、信号がLOSであり、2つ以上の送受信機における閾値信号対ノイズ比よりも大きいことで特徴付けられる位置を表すサブセットのこれらの3次元ピクセルを検出し、ターゲットエリア内の密集した位置または空いた位置のラスタマスクを生成し、送受信機が較正プロセスを実行することができるラスタマスクと検出されたサブセットのこれらの3次元ピクセルとの間の重なりを検出することによって、較正点を選択することができる。
【0115】
8.9 TOA送信およびアクセス
図7Eに示されるように、マルチキャリアアップリンク信号のTOA(τ+τu,m)を計算すると、送受信機は、ブロックS170において、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号のTOAを位置管理サーバなどのリモートサーバへ(例えば、NRPPaによって5Gプロトコルで)送信することができる。代替として、送受信機は、送受信機におけるマルチキャリアアップリンク信号のTOAをネットワーク内の別のサーバへ送信することができ、位置管理サーバは、そこからマルチキャリアアップリンク信号のTOAに連続的にアクセスすることができる。したがって、マルチキャリアアップリンク信号を受信した一組の送受信機中の各送受信機が、マルチキャリアアップリンク信号のTOAを位置管理サーバへ送信した後に、位置管理サーバは、方法S200のブロックを実行して、一組のTOAに基づいてユーザデバイスを定位することができる。
【0116】
それに応じて、位置管理サーバは、ブロックS210において、一組の送受信機中の送受信機ごとに、ユーザデバイスから送信されるマルチキャリアアップリンク信号の送受信機におけるTOAにアクセスすることができる。一実施では、位置管理サーバは、一組の送受信機中の各送受信機から直にマルチキャリアアップリンク信号のTOAを(例えば、NRPPaによって)受信することができる。
【0117】
代替として、図7Cおよび図7Dに示されるように、一組の送受信機中の送受信機ごとのマルチキャリアアップリンク信号の単一のTOAにアクセスする代わりに、位置管理サーバは、代わりに、一組の送受信機中の送受信機ごとの一組のTOA推定にアクセスし、または受信することができ、次いで、送受信機ごとのマルチキャリアアップリンク信号のTOAの計算において位相歪みを緩和させるために、ブロックS164を実行することができる。より具体的には、位置管理サーバは、一組の送受信機中の送受信機ごとに、各TOA推定が一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数に基づいている一組のTOA推定にアクセスし、一組のTOA推定に基づいて、一組の送受信機中の送受信機ごとに、マルチキャリアアップリンク信号の送受信機におけるTOAを計算するように構成することができる。
【0118】
一実施では、図7Bに示されるように、位置管理サーバは、一組の送受信機中の送受信機ごとに、マルチキャリアアップリンク信号の一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとの位相差にアクセスすることができる。本実施では、位置管理サーバは、方法S100のブロックに加えて、方法S100のブロックS162およびS164を実行することができ、それによって、位置管理サーバについての計算のオーバヘッドを増大させつつ、一組の送受信機中の送受信機ごとの計算オーバヘッドをさらに減少させる。
【0119】
位置管理サーバが一組の送受信機中の送受信機ごとに一組のTOA推定にアクセスする別の実施では、図7Cに示されるように、位置管理サーバは、送受信機によって測定されるとき、マルチキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比に基づいて一組の送受信機中の送受信機ごとに一組の到達時間推定の重み付き平均を計算することができる。本実施では、位置管理サーバは、上述した重み付き平均の式を実行する。しかしながら、本実施では、
【0120】
は、サブキャリア周波数
【0121】
についての第1のサブキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比に基づく重みを表し、
【0122】
は、サブキャリア周波数
【0123】
についての第2のサブキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比に基づく重みを表す。
【0124】
図7Aに示されたさらに別の実施では、送受信機は、マルチキャリアアップリンク信号を記述する生の波形データを位置管理サーバへ送信することができ、位置管理サーバは、方法S100と方法S200の両方の全てのさらなるブロックを実行することができる。
【0125】
8.10 到達時間差の計算
概して、位置管理サーバは、ブロックS220において、一組の送受信機中の送受信機ごとに、マルチキャリアアップリンク信号のTOAに基づいて一組のTDOAを計算することができる。例えば、3つの送受信機のグループの場合、位置管理サーバは、一組の送受信機における相対的なTOA差を完全に定めるために、2つのTDOA(または冗長のために3つ)を計算することができる。TDOAを計算することによって、位置管理サーバは、送受信機とユーザデバイスとの間のサンプリング時間オフセットによる位相オフセット、および/またはユーザデバイスのアナログハードウェア構成要素、ソフトウェア、および/またはファームウェアによる位相オフセットから生じ得る各TOAに等しく影響を与える一定のおよび/または周波数依存性の時間オフセットをなくすことができる。より具体的には、以下に示すように、一組の送受信機にわたる十分な時刻同期(
【0126】
)、Mを仮定すると、位置管理サーバは、サンプリング時間オフセットτu,mをなくすために、2つのTOAに係るTDOAを計算することができる。
【0127】
ただし、mおよびmは、一組のM個の送受信機における個々の送受信機である。したがって、位置管理サーバは、TOA定位の代わりにTDOA定位を利用することによってτu,mの影響をなくすことができ、それによって、TDOAの計算によるさらなる周波数依存性位相オフセットをなくすとともに、ユーザデバイスと一組の送受信機との間の時刻同期不良の影響をなくす。
【0128】
一実施では、位置管理サーバは、一組のサブキャリア周波数中の各固有の一対のサブキャリア周波数に対応する一組の送受信機中の送受信機のペアごとに一組のTDOAを計算する。したがって、その一対のサブキャリア周波数に基づいて計算される一対のTOAに基づいてTDOAを計算することによって、位置管理サーバは、τu,mの寄与をより有効に除去することができる。しかしながら、本実施では、位置管理サーバは、TOAに関して上述した位相歪み緩和に類似する一組のTDOAに基づく位相緩和を実行する。
【0129】
8.10.1 TDOAの位相歪み緩和
ブロックS170における一組の送受信機が一組のTOA推定を位置管理サーバへそれぞれ送信する図7Cに示された一実施では、位置管理サーバは、ブロックS222において、位相歪み
【0130】
についての一対の送受信機についてのTDOAを補正することができる。より具体的には、位置管理サーバは、一組のサブキャリアアップリンク信号中のサブキャリアアップリンク信号の様々な組合せに基づいてブロックS150、S160、およびS220の複数回の反復を実行し、統計的なノイズ減少技法を実行して、位相歪みの影響を減少させることができる。例えば、OFDM 5G送信において、マルチキャリアアップリンク信号は、上りの1200個のサブキャリアアップリンク信号を含むことができる。したがって、位置管理サーバは、マルチキャリアアップリンク信号の固有のペアのサブキャリア周波数に基づいて一対の送受信機間のTDOAを繰り返して計算することによってTDOAの精度をさらに改善することができる。
【0131】
一実施では、位置管理サーバは、一組のTDOA推定を平均して、
【0132】
のように位相歪みをなくすことができ、ただし、Mにおける全てのmおよびmについて、およびNにおける全てのnについて、
【0133】
であり、ただし、
【0134】
である。
【0135】
代替として、位置管理サーバは、N-1個のサブキャリア周波数ペアからなるいくつかのサブセットについて上記の平均化の式を実行することができる。別の代替的な実施では、位置管理サーバは、各マルチキャリアアップリンク信号の信号対ノイズ比などの位相ノイズ関連ファクタに基づいてTDOAの重み付き平均を計算することができる。
【0136】
しかしながら、位置管理サーバは、それぞれの計算されたTDOAに影響を与える位相歪みを減少させるために、任意の他の統計的な分析および/または位相歪みの補正を実行することができる。
【0137】
8.11 到達時間差マルチラテレーション
概して、上述されたように、位相歪みについての一組のTDOA中の各TDOAを補正すると、位置管理サーバは、ブロックS230において、一組のTDOAおよび一組の送受信機中の各送受信機の既知の位置に基づいてマルチラテレーションによってユーザデバイスのアップリンク位置推定を計算する。より具体的には、一組のM個の送受信機における送受信機ごとにマルチキャリアアップリンク信号の相対的到達時間を表す送受信機およびTDOAごとの既知の位置が与えられる場合、位置管理サーバは、ユーザデバイスの位置を計算するために、TDOAマルチラテレーションアルゴリズムを実行することができる。例えば、3つの送受信機間に2つのTDOAが与えられる場合、位置管理サーバは、2次元のユーザデバイスの位置を計算することができる。別の例では、4つの送受信機間に3つのTDOAが与えられる場合、位置管理サーバは、3次元のユーザデバイスの位置を計算することができる。さらにまたは代替として、5つ以上の送受信機間の4つ以上のTDOAの過剰に決定されたシステムについて、位置管理サーバは、最小二乗法を実行して、3次元のユーザデバイスの位置を統計的に計算することができる。
【0138】
9. ダウンリンクプロトコル
図3に示されるように、ネットワークは、一組の送受信機(または一組の送受信機の全地球的に与えられる既知の位置)に対してそれ自体を定位するために、ユーザデバイスが以下にさらに説明される方法S300のブロックを含む方法S100およびS200のブロックに類似するステップを実行するダウンリンク定位プロトコルを実行するように構成されている。より具体的には、一組の送受信機は、ユーザデバイスによって受信されるマルチキャリアダウンリンクをそれぞれ送信することができる。次いで、ユーザデバイスは、マルチキャリア参照信号に対しての各マルチキャリアダウンリンク信号についてのサブキャリア位相差を計算することができる。
【0139】
したがって、この変形例では、ユーザデバイスは、位置管理サーバから独立してそれ自体を定位することができ、続いて、そのダウンリンク位置推定を位置管理サーバへ報告することができる。代替として、ユーザデバイスは、波形データ、サブキャリア位相データ、(例えば、サービス基地局によって送信されるマルチキャリアダウンリンク信号に関連したTOAなどのマスターTOAに対しての)TDOA推定、または中間データの任意の他の形態を位置管理サーバへ伝達することができ、次いで、これは、ユーザデバイスについてのダウンリンク位置推定の計算を完了することができる。
【0140】
方法S100のブロックS110に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS310において、一組のサブキャリア周波数を定め、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリア参照信号を含むマルチキャリア参照信号にアクセスすることができる。ユーザデバイスが5Gネットワーク内で動作している一実施では、ユーザデバイスは、5G規格によって特定されるPRSといったマルチキャリア参照信号にアクセスすることができる。したがって、ユーザデバイスは、ユーザデバイスの定位を意図してマルチキャリアダウンリンク信号を特定することができる。
【0141】
方法S100のブロックS120に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS320において、一組のマルチキャリアダウンリンク信号を受信することができ、一組のマルチキャリアダウンリンク信号中の各マルチキャリアダウンリンク信号は、一組の送受信機中の送受信機によって送信され、一組のサブキャリア周波数を定め、一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとにサブキャリアダウンリンク信号を含む。各マルチキャリアダウンリンク信号を受信している間にユーザデバイスがほぼ静止(例えば、数メートル以内)をとどめており、無視できる(例えば、10ナノ秒未満の)クロック変動がユーザデバイスに生じたと仮定すると、ユーザデバイスは、一組の送受信機に対してそれ自体を定位するために方法S300の続くブロックを実行することができる。
【0142】
方法S100のブロックS140に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS330において、一組のマルチキャリアダウンリンク信号中のマルチキャリアダウンリンク信号ごとに、および一組のサブキャリア周波数中のサブキャリア周波数ごとに、サブキャリア周波数についてのサブキャリア参照信号とサブキャリア周波数についてのサブキャリアダウンリンク信号との間の位相差を計算することができる。より具体的には、ユーザデバイスは、ブロックS140に関して上述したステップに従って一組のサブキャリア周波数についての一組の位相差を計算することができる。したがって、ユーザデバイスは、ユーザデバイスにおいて受信した各マルチキャリアダウンリンク信号について一組の位相差を生成することができる。
【0143】
方法S100のブロックS160およびS162に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS340において、一対のサブキャリア周波数中の第1のサブキャリア周波数についての第1の位相差、および一対のサブキャリア周波数中の第2のサブキャリア周波数についての第2の位相差に基づいて、ユーザデバイスで受信されるマルチキャリアダウンリンク信号ごとに、および一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとに、一組のTOA推定中のTOA推定を計算することができる。したがって、ブロックS162に関して後述されるように、ユーザデバイスは、一定の周波数非依存性位相オフセットθ、およびRFキャリア位相オフセット
【0144】
をTOA推定τの計算から相殺することができる。
【0145】
方法S100のブロックS164に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS350において、TOA推定の平均または重み付き平均を計算することなどによって各マルチキャリアダウンリンク信号に影響を与える位相歪みを緩和させるために、ユーザデバイスで受信されるマルチキャリアダウンリンク信号ごとに、一組のTOA推定に基づいて受信デバイスにおけるマルチキャリアダウンリンク信号のTOAを計算することができる。代替として、ブロックS222に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、一組のサブキャリア周波数中の一対のサブキャリア周波数ごとにTDOA推定を生成するために、同じ一対のサブキャリア周波数に関連したTOA推定に基づいてTDOAを計算することができる。この代替的な実施では、次いで、ユーザデバイスは、ユーザデバイスによって受信された一対のマルチキャリアダウンリンク信号間でTDOA推定を計算するために、この一組のTDOA推定の平均または重み付き平均を実行することができる。
【0146】
方法S200のブロックS220およびS230に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ブロックS360において、一組のマルチキャリアダウンリンク信号中の各マルチキャリアダウンリンク信号のTOAおよび一組の送受信機の一組の既知の位置に基づいて、ユーザデバイスのダウンリンク位置推定を計算することができる。一実施では、ブロックS220に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、ユーザデバイスによって受信される各マルチキャリアダウンリンク信号に対応する一組のTOAに基づいて一組のTDOAを生成する。続いて、ブロックS230に類似するステップにおいて、ユーザデバイスは、TDOAマルチラテレーションに基づいてダウンリンク位置推定を計算することができる。代替として、ユーザデバイスは、TOAマルチラテレーションを実行して、ダウンリンク位置推定を計算することができる。
【0147】
10. アップリンクダウンリンクハイブリッドの変形例
別の変形例では、位置管理サーバは、アップリンク信号およびダウンリンク信号の周波数ダイバーシティを活用することによってユーザのために定位計算の精度をさらに改善するためにハイブリッドアップリンクダウンリンクの変形例を実行することができる。いくつかのネットワークプロトコルでは、アップリンク信号およびダウンリンク信号は、周波数で(例えば、数百メガヘルツによって)分離され、したがって、これらの信号は、かなり異なるマルチパスおよびノイズ環境を経験する可能性がある。したがって、両タイプの信号を利用することによって、位置管理サーバは、ユーザデバイスについての位置推定の精度を高めることができる。
【0148】
この変形例では、一組の送受信機および位置管理サーバは、方法S100およびS200のブロックを実行して、それぞれ、ユーザデバイスについてのアップリンク位置推定を生成することができる。同時にまたは短期間内で(例えば、1つのTDMA時間スロット以内で)、ユーザデバイスは、方法S300のブロックを実行して、ダウンリンク位置推定を生成することができる。次いで、ユーザデバイスは、ダウンリンク位置推定を位置管理サーバへ送信することができ、次いで、これは、(超解像アルゴリズムによって)アップリンク位置推定とダウンリンク位置推定を平均化または他の方法で合成して、ユーザデバイスについてのハイブリッド位置推定にすることができる。より具体的には、位置管理サーバは、一組の送受信機からユーザデバイスへ送信された一組のマルチキャリアダウンリンク信号に基づいてユーザデバイスによって計算される、ユーザデバイスについてのダウンリンク位置推定にユーザデバイスからアクセスし、アップリンク位置推定およびダウンリンク位置推定に基づいてハイブリッド位置推定を計算することができる。
【0149】
図9に示されるように、位置管理サーバは、ユーザデバイスについてのダウンリンク位置推定にユーザデバイスからアクセスすることができ、ダウンリンク位置推定は、一組の送受信機からユーザデバイスへ送信された一組のマルチキャリアダウンリンク信号に基づいてユーザデバイスによって計算される。
【0150】
図8に示されるように、ユーザデバイスは(方法S300のブロックによってダウンリンク位置推定を計算するのに加えてまたは代えて)、ダウンリンク位置推定を生成するためにGNSS定位システムを利用することができる。したがって、位置管理サーバは、ユーザデバイスと通信する全球測位衛星システムに基づいてユーザデバイスによって計算されるダウンリンク位置推定にユーザデバイスからアクセスすることができる。
【0151】
本明細書中に記載されたシステムおよび方法は、コンピュータ可読命令を記憶するコンピュータ可読媒体を受け入れるように構成された機械として少なくとも一部具体化および/または実施することができる。命令は、アプリケーション、アプレット、ホスト、サーバ、ネットワーク、ウェブサイト、通信サービス、通信インタフェース、ユーザコンピュータまたはモバイル端末のハードウェア/ファームウェア/ソフトウェア要素、リストバンド、スマートフォン、あるいはそれらの任意の適切な組合せと統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行され得る。実施形態の他のシステムおよび方法は、コンピュータ可読命令を記憶するコンピュータ可読媒体を受信するように構成された機械として、少なくとも一部、具体化および/または実施されてもよい。命令は、上述したタイプの機器およびネットワークと統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントによって組み込まれたコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行することができる。コンピュータ可読媒体は、任意の適切なコンピュータ可読媒体、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM、光学デバイス(CDまたはDVD)、ハードドライブ、フロッピードライブ、または任意の適切なデバイスに記憶することができる。コンピュータ実行可能コンポーネントは、プロセッサであってもよいが、任意の適切な専用ハードウェアデバイスが、(代替としてまたはさらに)命令を実行してもよい。
【0152】
以下の特許請求の範囲に定められた本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に修正および変更がなされてもよいことが、先の詳細な説明からならびに図面および特許請求の範囲から当業者により認識されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9