(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240311BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20240311BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240311BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20240311BHJP
C09J 7/50 20180101ALI20240311BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240311BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240311BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/21
C09J7/29
C09J7/24
C09J7/50
B32B27/00 M
B32B27/12
D04B21/00 A
(21)【出願番号】P 2023506710
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016843
(87)【国際公開番号】W WO2022195899
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2021041476
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 晋二
(72)【発明者】
【氏名】檜森 宗
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210998(JP,A)
【文献】特開2009-138031(JP,A)
【文献】特開2000-314062(JP,A)
【文献】特開2003-253543(JP,A)
【文献】特開平11-335942(JP,A)
【文献】特開平07-247466(JP,A)
【文献】特開2012-036516(JP,A)
【文献】特開2012-017415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/12
D04B 21/00
C09J 7/21
C09J 7/24
C09J 7/29
C09J 7/38
C09J 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸により構成される基布と、前記基布の第一の面に形成される第一ラミネート層と、前記基布の第二の面に形成される第二ラミネート層と、を有する基材と、
前記基材の第一ラミネート層が形成された面側の最外層として形成される粘着剤層と、を有する粘着テープであって、
前記第一ラミネート層の前記基布とは反対側の面には、前記経糸および前記緯糸により生じる凹凸が形成され
、前記凹凸の凹部の平均深さが10μm以上、20μm以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記第二ラミネート層の前記基布とは反対側の面は平滑面である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記第一ラミネート層と前記粘着剤層との間に下塗剤層が形成されている、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記第一ラミネート層の表面はコロナ処理が施されており、前記下塗剤層が該コロナ処理面に形成されている、請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記基布の前記第一及び第二の面がコロナ処理面である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記第二ラミネート層の前記基布とは反対側の面に背面剤層が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着テープ
【請求項7】
前記経糸がマルチフィラメントであり、
前記緯糸がフラットヤーンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記経糸がポリエステル製のマルチフィラメントである、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記第一ラミネート層と前記第二ラミネート層がポリエチレンを含む熱可塑性樹脂から構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記緯糸がポリエチレン製のフラットヤーンである、請求項9に記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記基布は、前記経糸により形成されたループ構造に前記緯糸が挿入されたタテ編地である、請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記ループ構造が独立鎖編みである、請求項11に記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記第一ラミネート層が、前記基布の前記緯糸の表面に前記経糸が1本現れる第一の面に形成され、
前記第二ラミネート層が、前記基布の前記緯糸の表面に前記経糸が2本現れる第二の面に形成される、請求項11又は12に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包用資材、養生用資材として好適に使用される粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
農業、土木、建築、運搬などの広い分野における資材の固定用、結束用、或いは塗装マスキング用として、高粘着力タイプの粘着テープが広く使われてきている。また、そのような粘着テープには、その作業上の利便性から適度な基材強度や手切れ性を備えることが求められている。このような手切れ性を改良した粘着テープが特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1ではマルチフィラメントを独立編みしたタテ糸に、熱可塑性樹脂を主材とするフラットヤーンをヨコ糸として挿入して形成した編布の片面又は表裏面に化学的又は物理的なアンカー処理層が形成され、該アンカー処理層上に熱可塑性樹脂が溶融状態又はドライフィルム状態で片面もしくは両面ラミネートされている編布基材の片面又は両面に感圧性粘着剤が塗布されている粘着テープであり、タテ・ヨコ方向引張り強度、タテ・ヨコ方向の引き裂き強度、タテ方向の伸びを特定の値に規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の粘着テープは、上記のような基布の表面を熱可塑性樹脂のラミネート層で覆い、下塗り剤層を介して粘着剤層が形成される構造が一般的である。このような粘着テープは、粘着テープを被着体に貼り付けた後、引き剥がしを行うと、粘着テープの粘着剤がラミネート層から剥がれて被着体に残ってしまうことがある(以下、この現象を「粘着剤残り」という)。
【0006】
粘着剤残りが生じると、被着体の表面が粘着剤により汚染され、又、被着体の表面に残った粘着剤をふき取る作業が生じて梱包や養生の作業効率が低下するという問題が生じる。
また、粘着テープは通常捲回したロール状で供給されるが、その場合、粘着剤層の形成される基材の反対面に倦回された粘着剤層が接触することになる。この反対面に粘着剤残りが発生すると、被着体の表面への粘着剤が不足し、隙間を生じたり、粘着力が低下したりする場合がある。また、粘着テープの粘着剤層の反対表面に粘着剤が残留することで、テープロールとしての取扱性が損なわれ、被着体に貼り付けた場合は粘着テープの使用目的を損なう場合がある。
【0007】
従って、本発明はこのような粘着剤残りを抑制した粘着テープを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、粘着テープにおいて、粘着剤層が固定されるラミネート層の表面に凹凸を形成することにより、粘着剤残りを抑制することが可能であることを見出した。
すなわち、本発明は以下の態様を含むものである。
【0009】
[1] 経糸及び緯糸により構成される基布と、前記基布の第一の面に形成される第一ラミネート層と、前記基布の第二の面に形成される第二ラミネート層と、とを有する基材と、
前記基材の第一ラミネート層が形成された面側の最外層として形成される粘着剤層と、を有する粘着テープであって、
前記第一ラミネート層の前記基布とは反対側の面には、前記経糸および前記緯糸により生じる凹凸が形成されている、粘着テープ。
【0010】
[2] 前記第二ラミネート層の前記基布とは反対側の面は平滑面である、[1]に記載の粘着テープ。
[3] 前記第一ラミネート層と前記粘着剤層との間に下塗剤層が形成されている、[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4] 前記第一ラミネート層の表面はコロナ処理が施されており、前記下塗剤層が該コロナ処理面に形成されている、[3]に記載の粘着テープ。
[5] 前記基布の前記第一及び第二の面がコロナ処理面である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[6] 前記第二ラミネート層の前記基布とは反対側の面に背面剤層が設けられている、[1]~[5]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[7] 前記経糸がマルチフィラメントであり、
前記緯糸がフラットヤーンである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[8] 前記経糸がポリエステル製のマルチフィラメントである、[1]~[7]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[9] 前記第一ラミネート層と前記第二ラミネート層がポリエチレンを含む熱可塑性樹脂から構成される、[1]~[8]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[10] 前記緯糸がポリエチレン製のフラットヤーンである、[9]に記載の粘着テープ。
[11] 前記基布は、前記経糸により形成されたループ構造に前記緯糸が挿入されたタテ編地である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[12] 前記ループ構造が独立鎖編みである、[11]に記載の粘着テープ。
「13」 前記第一ラミネート層が、前記基布の前記緯糸の表面に前記経糸が1本現れる第一の面に形成され、
前記第二ラミネート層が、前記基布の前記緯糸の表面に前記経糸が2本現れる第二の面に形成される、[11]又は[12]に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着テープは、第一ラミネート層の表面に凹凸を設けることにより、第一ラミネート層と粘着剤層との接触面積が増加する。これにより、第一ラミネート層と粘着剤層との接合力が向上し、粘着剤残りを抑制することができる。又、第二ラミネート層の表面に平滑加工が施されていることにより、粘着テープを巻回した際、粘着剤層が接触する第二ラミネート層の表面と、粘着剤層が接合している第一ラミネート層との接合力の差から、第二ラミネート層の表面への粘着剤残りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】基布の例を示す図であり、(a)は平織基布、(b)はタテ編地基布の一例を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係るラミネート工程を説明する概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る粘着テープの製造工程を説明する工程断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る粘着テープの断面構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<基布>
本発明の粘着テープに用いる基布には、長繊維の経糸および緯糸により構成される織布もしくは編布を用いることができる。織布の織組織は、平織、綾織、朱子織などから切断方向や強度など目的とする諸特性に応じて選択することができる。又、本発明の粘着テープに用いられる編布は経糸および緯糸の一方で連続したループを形成し、他方をこのループに挿通した組織を有する布であることが好ましい。経糸・緯糸のいずれにループを形成するかは、目的とする粘着テープの手切りによる切断方向に基づき決定すればよく、ループを形成する糸と垂直な方向を手切りの方向とすればよい。尚、以下で説明する経糸は、その伸長方向が粘着テープの長さ方向と略平行に配置される糸であり、緯糸は、伸長方向が粘着テープの長さ方向と略垂直に配置される糸をいう。
図1には、基布1の例として平織基布(a)とタテ編地基布(b)を示す。このような構造を有することで、経糸11と緯糸12の交差、絡み合いにより表面に凹凸が形成される。尚、
図1(b)では経糸11によるループ構造として独立鎖編み構造を示しているが、これに限定されず、例えば特開2014-210998号公報に示されるようなデンビー編み構造でもよい。その他公知のループ構造も同様に使用することができる。
このような基布を経糸により形成されたループ構造に緯糸が挿入されたタテ編地を用い、該ループ構造を独立鎖編みとし、緯糸の表面に経糸が1本現れる第一の面に第一ラミネート層を形成し、緯糸の表面に経糸が2本現れる第二の面に第二ラミネート層を形成することにより、該第一の面において緯糸とラミネート層の接触面積を多くとることができ、ラミ剥がれを抑制することができる。
【0014】
(経糸)
経糸としては、当該分野において使用される材料であれば特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂や銅アンモニアレーヨンやビスコースレーヨン等の再生繊維、アセテートやトリアセテート等の半合成繊維が使用できる。これらの内、ポリエステル製繊維は、ポリプロピレンやナイロンなど他の熱可塑性合成繊維と比較して糸の伸度が低いため、粘着テープの幅方向に手切りする際、経糸の伸びを抑えて切断面の毛羽立ちやほつれを抑えることができる。
これらの繊維を経糸として用いる場合、繊維形態としてはマルチフィラメントを用いることが好ましい。粘着テープの縦方向の強度を維持しながら、適度な手切り性を確保することができる。繊度としては10~1000デニール、好ましくは20~500デニール、経糸の打ち込み本数としては1インチ当たり10~50本のものが、基布強度、手切り性、伸びのバランスにおいて良好である。
【0015】
(緯糸)
緯糸としては、当該分野において使用される材料であれば特に限定されず、上記経糸と同様の材質が使用できる。繊維形態としては、手切り性を確保し、且つ、切断面での毛羽立ちを抑えるためにフラットヤーンを用いることが好ましい。フラットヤーンは、熱可塑性樹脂をTダイスや円形ダイスから溶融押出ししたフィルムを細幅に加工することにより得ることができる。繊度としては30~1000デニール、好ましくは50~500デニール、緯糸の打ち込み本数としては1インチ当たり5~40本、好ましくは8~30本のものが、基材強度や手切り性、ラミネート時の熱劣化とのバランスが良好である。
【0016】
この基布に対して、後述する第一ラミネート層を形成する面を第一の面、この第一の面と反対の面であって、後述する第二ラミネート層を形成する面を第二の面と称する。
基布の第一の面及び第二の面には、ラミネート層との接合力を向上させてラミネート層の剥がれ(「ラミ剥がれ」という)を抑制するため、アンカー処理とも呼ばれる物理的または化学的な表面処理を施すことができる。物理的処理としてはコロナ処理、UV処理、スパッタリング処理等が挙げられ、化学的処理としては有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などか選んだ樹脂を塗布する処理が挙げられる。
【0017】
<ラミネート層>
ラミネート層は、樹脂材料を基布の両面に延展することにより形成する。経糸や緯糸の材質として熱可塑性樹脂を選択する場合、ラミネート層と同種の樹脂材料を選択することがラミ剥がれを抑制する点で好ましい。例えばポリエチレン製の緯糸を用いる場合、ラミネート層にもポリエチレンを含む熱可塑性樹脂を用いることにより、ラミネート層と基布の接合力が安定して得られる。ラミネート層の厚みは5~300μmの範囲から選択することができる。特に、基布の凹凸が反映される第一ラミネート層は、基布の種類に応じて適宜最適の厚みとなるように、また、平坦化される第二ラミネート層は基布の凹凸を相殺できる厚み以上に形成される。
【0018】
ラミネート層の形成方法を
図2および
図3を用いて説明する。なお、
図3では、第一ラミネート層2が、基布1の緯糸12の表面に経糸11が1本現れる第一の面1Aに形成され、第二ラミネート層3が、基布1の緯糸12の表面に経糸11が2本現れる第二の面1Bに形成される場合を示している。
まず、経糸11および緯糸12からなる基布1の第一の面1Aに、
図2に示すように押出ラミネータ20を用い、押出機21からTダイ22を介して樹脂材料24を供給し、この樹脂材料24をゴム製のプレスロール25により基布1と共に冷却ロール26に押し当てながら基布1と貼り合わせる。ここで、第一の面1Aに樹脂材料24を貼り合わせる際、冷却ロール26として表面に凹凸加工が施されたマットロール27を用いることにより、
図3(a)に示すように、編地の場合には、マット面2Aを有する第一ラミネート層2が基布1の緯糸12の表面に経糸11が1本現れる第一の面1Aに形成することが後述の工程で基布の凹凸を反映しやすいことから好ましい。
【0019】
次に、表裏を逆転して基布1の第二の面1Bに、第一の面1Aと同様の方法で樹脂材料24の貼り合わせを行う。この場合の冷却ロール26として、表面を鏡面加工したいわゆるミラーロール28を用いることにより、
図3(b)に示すように平滑面3Aを有する第二ラミネート層3が形成することができる。第二ラミネート層3の外表面は平滑面3Aに限定されず、さらに平滑面とする材料層を形成したり、マット面に離型処理を施して、離型性を向上させたりしても良い。
【0020】
ここで、基布1の第二の面1Bに貼り合わせた樹脂材料がゴム製のプレスロール25によりミラーロール28に押し付けられる際、プレスロール25と接触したマット面2Aは、経糸12および緯糸11の凹凸を反映した凹凸面2Bを有する第一ラミネート層2となる。このように、第一ラミネート層2の表面が凹凸面2Bとなることで、
図4に表す粘着剤層6を形成する際、第一ラミネート層2と粘着剤層6との接合面積が増大し、粘着剤残りを効果的に抑制することができる。
【0021】
第一ラミネート層2に上記の様にして凹凸を形成させた場合、凹凸面2Bには、マットロール27に由来する凹凸と、経糸12および緯糸11に由来する凹凸が形成される。マットロールに由来する凹凸の凹部の平均深さは、粘着剤層6の被着体との接合面に影響を及ぼさないために、1μm以上、10μm未満とすることが好ましい。又、経糸12および緯糸11に由来する凹凸の凹部の平均深さは、粘着剤層6との接合面積を増大させ、且つ、粘着剤層6の被着体との接合面に影響を及ぼさないために、10μm以上、20μm以下とすることが好ましい。
【0022】
上記の製造方法において、基布1の第一の面1Aや第二の面1Bに物理的または化学的な表面処理(アンカー処理)を施すことができる。物理的処理としては、コロナ処理、UV処理、スパッタリング処理等が挙げられ、化学的処理としては、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などから選択した樹脂を塗布する方法などが挙げられる。
図2には、コロナ処理装置23で処理する態様を示す。
【0023】
本発明の一実施形態に係る粘着テープの構造を
図4の概略断面図として示す。
図4に示す構造では、基布1の両面にラミネート層(第一ラミネート層2及び第二ラミネート層3)が形成された基材10に対して、第一ラミネート層側に下塗剤層4、粘着剤層6が形成され、また第二ラミネート層3側に背面剤層5が形成された例を示している。
【0024】
<下塗剤層>
上記のように形成した第一ラミネート層2の表面には、粘着剤層との密着性を改善するために、
図4に示すような下塗剤層4を形成することができる。下塗剤としては、各種エラストマー(例えば、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、塩素化ポリプロピレン、スチレン・ブタジエン共重合体とフェノール樹脂の反応物、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸アミド、天然ゴムまたは合成ゴムの反応物等)の塗布、各種プライマーの塗布などが挙げられる。また、第一ラミネート層2の表面をコロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等で改質することにより下塗剤層4を形成してもよいし、第一ラミネート層2の表面をコロナ処理等で改質した後、下塗剤層を形成してもよい。下塗剤層の厚みは、第一ラミネート層2における凹凸が下塗剤層の外表面に反映され、該凹凸による粘着剤残り抑制効果を損なわない範囲の膜厚とする。
【0025】
<粘着剤層>
このように、凹凸の形成された第一ラミネート層2に直接又は下塗剤層4を介して粘着剤層6が基材10の第一ラミネート層の形成される面側の最外層として形成される。粘着剤としては、公知の粘着剤組成物から所望の粘着力になるように適宜選択して使用すればよい。粘着剤層6は、粘着剤成分としてのベースポリマー(粘着剤ベースポリマーという)を含む。前記粘着剤ベースポリマーは特に限定されないが、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を用いることができる。前記アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とし、これに(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸等の官能基を含むモノマーや酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-メチロールエチルアクリルアミド等を必要に応じて共重合させることにより得られるアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0026】
ゴム系粘着剤としては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンブロックコポリマー等のエラストマー成分の1種又は2種以上の組み合わせに対して、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ピュア・モノマー系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等を混合して得られるゴム系粘着剤が挙げられる。
【0027】
粘着剤層6には、粘着剤ベースポリマー以外に、当該分野において公知の各種添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、架橋剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、軟化剤、安定剤、充填剤、増量剤、補強剤等の各種添加剤を1種又は2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0028】
粘着剤層6の厚みは、目的や使用する粘着剤各成分に応じて適宜設定できるが、例えば、5~200μmの範囲に形成することができる。粘着剤層6の形成は、第一ラミネート層2上に直接または下塗剤層4を形成または表面処理を施した後、各種塗布装置により塗布して形成される。塗布装置としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター、マイヤーバーコーター、グラビアコーター等を挙げることができる。
【0029】
<背面剤層>
テープとして巻き回しする際に、粘着剤層6と接する第二ラミネート層側表面は、背面剤層5として各種離型剤を塗布することができる。離型剤としては、長鎖アルキル系離型剤(ステアリルアクリレートとアクリル酸、酢酸ビニルまたはアクリロニトリルとの共重合物、ステアリルアクリルアミドとアクリロニトリルやアクリル酸との共重合物、ステアリルビニルエーテルとアクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリルとの共重合物)や、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型のシリコーン系離型剤等が挙げられる。
これらの離型剤も、上記の各種塗布装置により塗布形成することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例で更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
経糸として30デニールのポリエステルマルチフィラメント(打ち込み本数24本/インチ)、緯糸として300デニールの高密度ポリエチレンフラットヤーン(打ち込み本数17本/インチ)を用い、
図1(b)に示すような、経糸が独立鎖編み構造となるタテ編地を編成し、基布として使用した。
次に、基布の裏表面にポリエチレン樹脂のラミネート層を形成した。まず、2つのゴムロール間に張架された基布の第一の面1A(緯糸12の表面に経糸11が1本現れる面
)にコロナ処理を施した後、Tダイからポリエチレン樹脂を溶融押し出しし、ゴムロールによりマットロール
27に押し付けて、マット面2Aを有する第一ラミネート層2を形成した。次に、表裏を反転させた後、第二の面1Bにもコロナ処理を施した後、第一の面と同様の方法でTダイからポリエチレン樹脂を溶融押し出しし、ゴムロールによりミラーロール
28に押し付けて平滑面3Aを有する第二ラミネート層3を形成した。第一ラミネート層2には、経糸および緯糸による凹凸を反映した凹凸面2Bが形成されていた。第一ラミネート層の厚みは37μm、第二ラミネート層の厚みは40μmであった。第一ラミネート層の表面に形成された凹凸のうち、マットロールに由来する凹凸の凹部の平均深さは3.0μm、経糸および緯糸に由来する凹凸の凹部の平均深さは12.4μmであった(共に10点計測の算術平均値。白色干渉顕微鏡を用いて測定した)。次に、第一ラミネート層2の凹凸面2Bに、ロールコーターを用いてアクリル系粘着剤を塗布し、厚さ35μmの粘着剤層6を形成することにより、実施例1の粘着テープを作製した。
【0032】
(実施例2)
第一ラミネート層2の凹凸面2Bにコロナ処理を施した後、ロールコーターを用いてアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層6を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着テープを作製した。
【0033】
(実施例3)。
第一ラミネート層2の凹凸面2Bにコロナ処理を施した後、コロナ処理面にエチレン-酢酸ビニル共重合体の下塗剤層4を形成し、その後ロールコーターを用いてアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層6を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着テープを作製した。
【0034】
(実施例4)
経糸として30デニールのポリエステルマルチフィラメント(打ち込み本数78本/インチ)を、緯糸として100デニールのポリエステルマルチフィラメント(打ち込み本数18本/インチ)を用いて
図1(a)に示す様な平織地を織成し、これを基布として使用したこと以外は実施例3と同様にして、実施例4の粘着テープを作製した。第一ラミネート層の表面に形成された凹凸のうち、マットロールに由来する凹凸の凹部の平均深さは1.9μm、経糸および緯糸に由来する凹凸の凹部の平均深さは13.5μmであった(共に10点計測の算術平均値。白色干渉顕微鏡を用いて測定した)。
【0035】
(比較例1)
実施例1の第二ラミネート層3の平滑面3A側にアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、第一ラミネート層側にはアクリル系粘着剤を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の粘着テープを作製した。
【0036】
(比較例2)
実施例4の第二ラミネート層3の平滑面3A側にアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、第一ラミネート層側にはアクリル系粘着剤を塗布しなかったこと以外は実施例4と同様にして、比較例2の粘着テープを作製した。
【0037】
《評価方法》
<被着体への糊残り>
経糸の延伸方向の長さ300mm、緯糸の延伸方向の長さ24mmにカットした粘着テープを用い、JIS Z 0237の粘着力測定に使用する試験板(SUS304鋼板)に同規格に記載の方法で張り付けた後、温度23±1℃、相対湿度50±5%の環境下に20分間程度静置した。その後、同規格の粘着力測定方法に基づいて粘着テープを試験板から引き剥がし、その際、粘着剤残り(又はラミネート層と粘着剤層境界面の破壊による
粘着剤残り)の面積を測定し、引き剥がした粘着テープの面積中の割合を算出した。又、同様に製作したサンプルを温度23±1℃、相対湿度50±5%の環境下に3日間および1週間静置した場合についても粘着剤残りを測定した。結果を表1及び2に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
本発明に係る粘着テープは、基布表面の凹凸を反映した凹凸を粘着剤塗布面に有することで、粘着剤残りを効果的に抑制できる。特に粘着剤塗布面の第一ラミネート層に表面処理を施すことで、ほぼ粘着剤残りのない粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 基布
11 経糸
12 緯糸
1A 第一の面
1B 第二の面
2 第一ラミネート層
2A マット面
2B 凹凸面
3 第二ラミネート層
3A 平滑面
4 下塗り剤層
5 背面剤層
6 粘着剤層
10 基材
20 押出ラミネータ
21 押出機
22 Tダイ
23 コロナ処理装置
24 樹脂材料
25 プレスロール(ゴム製)
26 冷却ロール
27 マットロール
28 平滑ロール