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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】繊維製布団篭
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/08 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
E02B3/08 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024008017
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】田中 紘一朗
(72)【発明者】
【氏名】坪田 憲紀
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-6522(JP,A)
【文献】特開2022-187699(JP,A)
【文献】特開2005-163271(JP,A)
【文献】特開2003-184048(JP,A)
【文献】特開2002-69969(JP,A)
【文献】特開2001-64937(JP,A)
【文献】特開平11-241325(JP,A)
【文献】登録実用新案第3040337(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地からなる略箱型の篭本体と、
前記篭本体内に上下に積み重ねて収容した複数の拘束体と、を備え、
前記拘束体が略箱型の内袋内に中詰材を充填してなり、
前記拘束体の幅及び長さが、前記篭本体の幅及び長さに略等しく、
前記複数の拘束体を積み重ねた高さが、前記篭本体の高さに略等しいことを特徴とする、
布団篭。
【請求項2】
前記篭本体の対向する2つの側面の間を連結した拘束ロープを備え、
前記拘束ロープを、上下に隣接する2つの前記拘束体の間に挟んだことを特徴とする、
請求項1に記載の布団篭。
【請求項3】
2つの前記拘束体を前記篭本体内に上下に積み重ねて収容し、
前記拘束ロープを、上下に積み重ねた前記2つの拘束体の間に挟んだことを特徴とする、
請求項2に記載の繊維製布団篭。
【請求項4】
前記拘束ロープの両端が複数の連結線材に分岐し、
前記複数の連結線材の先端を前記篭本体の側面に連結したことを特徴とする、
請求項2又は3に記載の繊維製布団篭。
【請求項5】
複数の前記拘束ロープによって、前記篭本体の4つの側面をそれぞれ対向する側面と連結し、交差した2本の前記拘束ロープを交点で結合したことを特徴とする、
請求項2又は3に記載の繊維製布団篭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製布団篭に関し、特に中詰材の側圧による側面のはらみ出しを抑制し整った直方形の出来形を確保可能な繊維製布団篭に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海岸における護岸工事や斜面の補強工事等において、籠体の内部に砕石等の中詰材を詰めた布団篭が使用されている。
近年では、腐食防止や軽量化等の目的のため、従来の鉄線製布団篭に替わり、編地で構成した繊維製布団篭が普及している。特許文献1には、篭本体内に配した拘束ロープによって対向する側面を相互に拘束することで、中詰材の内圧による側面のはらみ出しを抑止する繊維製布団篭が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-006522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の繊維製布団篭は、全体が柔軟な編地からなるため、中詰材を充填すると、中詰材の内圧により側面がはらみ出して変形しやすい。特に、拘束ロープを用いない場合、変形が顕著になるおそれがある。また、施工位置に配置する前に吊り上げと転置を繰り返すことで、変形が蓄積され、最終設置時に形体が大きく崩れることがある。
布団篭の形状が大きく変形することで、出来形が悪くなる他、積み上げが困難になり施工精度が低下する。
【0005】
また、篭本体の目合いは、砕石のサイズに合わせて数十mm程度に設計されていることが多いため、中詰材として現地発生土を使用する場合には、篭本体の内部に目合いの小さい内袋を配置し、現地発生土を内袋に充填する必要がある。
篭本体内に内袋を配置する場合、内袋が邪魔になり拘束ロープを展張することができない。このため、拘束ロープによる拘束効果が働かないことで側面にはらみ出しが発生し、繊維製布団篭の出来形が悪くなる。特に土砂は砕石と比べて流動性が高いため側圧が大きく、はらみ出しが顕著になるおそれがある。
一方、内袋と拘束ロープを兼用するには、内袋に切り込みを入れて拘束ロープを切込みに通して展張する必要があるが、切込み部付近から土砂が零れ出すおそれがある。また、作業員が現場で内袋に切込みを入れることになるので、製品の品質にばらつきが生じる。
【0006】
本発明は、上記のような課題の内少なくとも1つを解決するための繊維製布団篭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の繊維製布団篭は、編地からなる略箱型の篭本体と、篭本体内に上下に積み重ねて収容した複数の拘束体と、を備え、拘束体が略箱型の内袋内に中詰材を充填してなり、拘束体の幅及び長さが、篭本体の幅及び長さに略等しく、複数の拘束体を積み重ねた高さが、篭本体の高さに略等しいことを特徴とする。
【0008】
本発明の繊維製布団篭は、篭本体の対向する2つの側面の間を連結した拘束ロープを備え、拘束ロープを、上下に隣接する2つの拘束体の間に挟んでもよい。
【0009】
本発明の繊維製布団篭は、2つの拘束体を篭本体内に上下に積み重ねて収容し、拘束ロープを、上下に積み重ねた2つの拘束体の間に挟んでもよい。
【0010】
本発明の繊維製布団篭は、拘束ロープの両端が複数の連結線材に分岐し、複数の連結線材の先端を篭本体の側面に連結してもよい。
【0011】
本発明の繊維製布団篭は、複数の拘束ロープによって、篭本体の4つの側面をそれぞれ対向する側面と連結し、交差した2本の拘束ロープを交点で結合してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維製布団篭は、積み重ねた複数の内袋によって中詰材を分断して拘束することで、篭本体の側面に係る内圧を分散させ、拘束ロープを用いることなく整った直方形の出来形を確保することができる。
これによって、拘束ロープを展張する手間を省き、作業効率を向上させることができる。
【0013】
また、更に出来形を向上させたい場合には拘束ロープを用いることもでき、この場合、中詰材を複数段の拘束体内に分割し、上下の拘束体の間に拘束ロープを挟むことで、内袋に切り込み加工を施すことなく拘束ロープを展張することができる。
これによって、内袋による中詰材の拘束と拘束ロープによる篭本体の対向する側面の拘束との協働により、側面のはらみ出しを抑制し、更に出来形を向上させることができる。
更に、現場での内袋への切削加工が不要となるため、作業効率が向上する上、製品の品質の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る繊維製布団篭の説明図
図2】篭本体の説明図
図3】拘束体の説明図
図4】拘束ロープの説明図
図5】実施例1と比較例との出来形の対比を表す図面代用写真
図6】実施例3の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の繊維製布団篭について詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
[繊維製布団篭]
<1>全体の構成(図1
繊維製布団篭1は、主として土木用途に用いる構造体である。
繊維製布団篭1は、篭本体10と、篭本体10内に上下に積み重ねて収容した複数の拘束体20と、を少なくとも備える。本例では更に篭本体10の対向する2つの側面13の間を連結した拘束ロープ30を備え、繊維製布団篭1を、1つの篭本体10と、2つの拘束体20と、1本の拘束ロープ30と、の組み合わせから構成する。なお図1では、説明の便宜上、篭本体10の蓋面11と上部の拘束体20を半分に切断した状態で表示している。
拘束体20の幅及び長さは、篭本体10の幅及び長さと略等しい。
拘束体20を積み重ねた高さは、篭本体10の高さに略等しい。本例では各拘束体20の高さを篭本体10の高さの半分とする。
拘束ロープ30は、上下に積み重ねた2つの拘束体20の間に配置する。本例では拘束ロープ30を篭本体10の高さの半分の位置に展張する。
繊維製布団篭1は、中詰材22の荷重による側圧を、篭本体10と拘束体20で協働して拘束可能な構造に1つの特徴を備える。
【0017】
<2>篭本体(図2
篭本体10は、編地からなる箱状体である。
篭本体10は、それぞれ繊維製の編地で構成した、蓋面11、底面12、及び4つの側面13からなる略箱型の形状を呈する。
詳細には、例えばループ状に編んだ太径のストランドを上下に配してこれを側面13の上辺及び下辺とし、上辺と下辺の間を細径のストランドからなるラッセル編地で連結して側面13を構成し、上辺のループ内に矩形の編地を連結して蓋面11を構成し、下辺のループ内に矩形の編地を連結して底面12を構成する。
本例では、篭本体10を構成する編地としてポリエステル繊維網を採用する。ただし編地はポリエステル繊維網に限らず、ポリエチレン繊維網や他の素材であってもよい。
【0018】
<3>拘束体(図3
拘束体20は、内部に中詰材22を拘束してなる構造体である。
拘束体20は、内袋21と、内袋21内に充填した中詰材22と、を少なくとも備える。
内袋21は、篭本体10の外形に対応した略箱型の外形を呈し、上部に開閉可能な蓋片21aを備える。蓋片21aには封止用の紐(不図示)を付設する。
本例では内袋21として、上部を幅方向に展開可能なポリプロピレン製の袋体を採用する。ただし内袋21の素材はポリプロピレンに限らず、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、アラミド繊維等を採用してもよい。また、繊維はマルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーン等を採用することができる。生地は織物、不織布、編物等を採用することができる。
本例では中詰材22として、土砂(現地発生土)を採用する。ただし中詰材22は土砂に限らず、砕石、自然石、コンクリートガラ、アスファルトガラ等を採用することができる。
【0019】
<4>拘束ロープ(図4
拘束ロープ30は、篭本体10の対向する二側面間を連結して、相互に拘束する構成要素である。
本例では拘束ロープ30として、ポリエステル繊維製ロープを採用する。ただしこれに限られず、側面13の拘束に十分な引張強度を備えていれば、その他いかなる素材であってもよい。
本例では拘束ロープ30が、1本の拘束線材31と、拘束線材31の両端から分岐した複数本の連結線材32からなる。ここで、拘束線材31は、連続した1本の線材の他、2本の線材を中央で結び合わせて1本の線材に構成したものであってもよい。
本例では、連結線材32の本数は拘束線材31の両端に各3本であり、拘束ロープ30の両端が平面視で三又状に分岐する。なお、連結線材32の本数は各3本に限らず、各2本又は各4本以上であってもよい。または連結線材32を設けず拘束線材31のみであってもよい。
各連結線材32の先端は、篭本体10の側面13のストランドに結び付けて連結する。
【0020】
<5>繊維製布団籠の製作
繊維製布団篭1は、例えば以下の方法で製作する。
蓋面11を開いた状態の篭本体10を、繊維製布団篭1の外形に対応した型枠内に配置する。型枠は鋼製型枠であってもよいし、簡易的に地盤を繊維製布団篭1の外形に掘削し、その内部に篭本体10を配置することで型枠を兼ねてもよい。 篭本体10内に内袋21を配置し、内袋21の内部に中詰材22を充填して蓋片21aを閉じ、封止紐で蓋片21aを封止する(下段の拘束体20の製作)。拘束体20はランマ―等を用いて上部から転圧する。転圧によって中詰材22が側方にはらみ出そうとするが、篭本体10の半分の高さの内袋21が中詰材22を側方から拘束することで、篭本体10の高さ中央部のはらみ出しが抑制される。
続いて、篭本体10内に拘束ロープ30を展張する。詳細には、拘束ロープ30を篭本体10の長手方向に向けて拘束体20上に配置し、各連結線材32の先端を対向する2つの側面13のストランドに結び付けて連結する。拘束ロープ30は、やや緊張気味に連結することが望ましい。
下段の拘束体20及び拘束ロープ30の上に、上段の拘束体20の内袋21を配置し、内袋21内に中詰材22を充填する。蓋片21aを閉じて封止紐で封止し(上段の拘束体20の製作)、上部から転圧する。
転圧後、上段の拘束体20の上に蓋面11を載せ、蓋面11の側辺と側面13の上辺とを蓋閉じロープで編み込んで封鎖する。以上で繊維製布団篭1が完成する。
【0021】
<6>従来技術との比較(図5
本発明の繊維製布団篭1と(実施例)、従来技術の繊維製布団篭(比較例)の出来形を比較した。
[実施例]
篭本体:幅1,000mm×長さ2,000mm×高さ500mm
内 袋:幅1,000mm×長さ2,000mm×高さ250mm×2袋
出来形:幅1,050mm×長さ2,030mm×高さ555mm
[比較例]
篭本体:幅1,000mm×長さ2,000mm×高さ500mm
内 袋:幅1,000mm×長さ2,000mm×高さ500mm
出来形:幅1,110mm×長さ2,080mm×高さ520mm
[出来形の比較]
比較例の繊維製布団篭は、中詰材の充填及び転圧により篭本体の側面がはらみ出し、これに伴って蓋面の中央が陥没して形状が大きく崩れている。
これに対し実施例の繊維製布団篭は、中詰材の充填及び転圧にかかわらず、整った直方形状を維持している。これは、篭本体の側面の内、従来最も変形量が大きくなる中間部を拘束ロープによって相互に拘束した側面拘束効果と、上段の内袋と下段の内袋によって中詰材を分断して拘束する中詰材拘束効果の組合せにより、側面のはらみ出しを効果的に抑制したものと考えられる。
【実施例2】
【0022】
[拘束ロープを備えない例]
実施例1では篭本体10の対向する側面13間を拘束ロープ30で拘束したが、拘束ロープ30は必須の構成要素ではない。
本例では拘束ロープ30による側面拘束効果は備えないものの、積み重ねた内袋21で中詰材22を分断して拘束することで、篭本体10の側面13に係る内圧を分散して、整った直方形の出来形を確保することができる。
【実施例3】
【0023】
[拘束ロープを交差した例]
実施例1では繊維製布団篭1の対向する2つの側面13の内、短辺側の2側面間のみに拘束ロープ30を配置したが、本例では、2本の拘束ロープ30を交差させて、短辺側の2側面間および長辺側の2側面間を二方向に連結する(図6)。
拘束ロープ30の本数に限定はなく、例えば短辺側の側面13間を1本の拘束ロープ30で連結し、長辺側の側面13間を2本の拘束ロープ30で連結する。
また、拘束ロープ30の交点には結び目を設けて相互に連結する。これによって、交差する複数の拘束ロープ30が相互に直交方向に拘束しあうことで、繊維製布団篭1全体の形状保持機能が向上する。
【実施例4】
【0024】
[拘束体が3段以上の例]
実施例1では拘束体20を上下2段としたが、これに限らない。
例えば拘束体20を上下3段として、各段の間に拘束ロープ30を展張してもよい。または拘束体20を上下4段として、2段目と3段目の間にのみ拘束ロープを展張してもよい。すなわち上下に積み重ねた全ての拘束体20の間に拘束ロープ30を展張する必要はなく、上下に隣接する少なくとも2つの拘束体20の間に拘束ロープ30を展張していればよい。
【符号の説明】
【0025】
1 繊維製布団篭
10 篭本体
11 蓋面
12 底面
13 側面
20 拘束体
21 内袋
21a 蓋片
22 中詰材
30 拘束ロープ
31 拘束線材
32 連結線材
【要約】
【課題】中詰材の側圧による側面のはらみ出しを抑制し整った直方形の出来形を確保可能な繊維製布団篭を提供すること。
【解決手段】本発明の繊維製布団篭1は、編地からなる略箱型の篭本体10と、篭本体10内に上下に積み重ねて収容した複数の拘束体20と、を備え、拘束体20が略箱型の内袋21内に中詰材22を充填してなり、拘束体20の幅及び長さが、篭本体10の幅及び長さに略等しく、複数の拘束体20を積み重ねた高さが、篭本10体の高さに略等しいことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6