IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイテン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-健康器具 図1
  • 特許-健康器具 図2
  • 特許-健康器具 図3
  • 特許-健康器具 図4
  • 特許-健康器具 図5
  • 特許-健康器具 図6
  • 特許-健康器具 図7
  • 特許-健康器具 図8
  • 特許-健康器具 図9
  • 特許-健康器具 図10
  • 特許-健康器具 図11
  • 特許-健康器具 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】健康器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61H23/02 332
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021562625
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044338
(87)【国際公開番号】W WO2021112018
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019219334
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509149530
【氏名又は名称】ファイテン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】平田 好宏
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204932218(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0274914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、前記筐体内に収容される振動モジュール、及び、前記振動モジュールと連結するとともに前記筐体から突出する振動伝達部材、とを備え、前記振動モジュールは、前記振動伝達部材のみに取り付けられている、健康器具であって、
前記振動伝達部材は、筐体長手方向に沿って筐体に設けられた開口部から線状に突出しており、
前記振動伝達部材は、ブレード台、ブレード台に着脱可能に取り付けられるブレード、ブレード台の周りを取り囲むとともにその外周が筐体に設けられた開口部の内周と接するブレード台パッキン、より少なくとも構成されており、
前記振動モジュールは、モーター、前記振動伝達部材のブレード台と結合している第1モーターカバー、第1モーターカバーと結合しモーターを設置する空間を形成する第2モーターカバー、より少なくとも構成されている、
前記健康器具
【請求項2】
前記振動モジュールは、前記筐体と接していない、請求項1に記載の健康器具。
【請求項3】
前記振動伝達部材は、前記振動モジュールで発生した振動を人体の肌まで伝達させるものである、請求項1又は2に記載の健康器具。
【請求項4】
前記振動伝達部材の先端部は、エラストマーで構成されるブレード部材が着脱可能に取り付けられて形成されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の健康器具。
【請求項5】
筐体内に、振動モジュールのための充電可能な電池が収容される、請求項1~4のいずれかに記載の健康器具。
【請求項6】
前記ブレード台パッキンと、筐体部材の接合部に設けられるパッキン又はOリングとにより、防水及び/又は防塵機能を有する、請求項1~5のいずれかに記載の健康器具。
【請求項7】
筋膜スクレイパー用である、請求項1~6のいずれかに記載の健康器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康器具に関する。より詳しくは、筋膜スクレイパーやマッサージ器具として使用することができる健康器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、健康器具として、クッション部材等の筐体内に振動モジュールが収容されている種々の振動マッサージ器具が広く用いられている。
このような健康器具は、人体の腰、首、足等の被マッサージ面に密着させ、振動モジュールで発生させた振動を人体に伝播することで、マッサージ効果を付与するものである。そのマッサージ効果により、被マッサージ面の筋肉を部分的にほぐすことで、コリ、ハリ、痛み等の症状を緩和又は解消することができる。
近年、コリ、ハリ、痛み等の症状、姿勢、体のゆがみ等を根本的に改善するために、マッサージだけでなく、筋膜を適正な状態にする手法が注目されている。
【0003】
筋膜は、筋肉や筋群等の筋繊維を包んで仕切りと結びつけを行う、コラーゲンと水分を構成成分として含む弾性をもった膜である。筋膜は、体の姿勢を保ち、筋繊維の動きを支え力の伝達を行うとともに、筋肉、血管、神経、リンパ管等の保護、筋繊維同士の摩擦の保護、筋収縮時の潤滑作用等の機能を有し、全身に張り巡らされている。
ストレス、怪我、偏った姿勢・動作等により身体の少なくとも一部に負担がかかると、筋膜の動きや滑りが悪くなり、よじれ、委縮、癒着等が生じ柔軟性が低下する。筋膜に異常が発生すると、血管、神経、リンパ管等が圧迫されて循環障害等が起こったり、他の筋肉等にも悪影響を与えパフォーマンス(筋力、柔軟性、運動、日常生活等)の低下、筋肉の機能不全、バランスの悪化、コリ、ハリ、痛みの発生等の悪影響が発生したりする恐れがある。
【0004】
近年、パフォーマンス、可動域、代謝、セルフコンディショニング等の総体的な健康状態の改善を目的としたボディケア施術として、筋肉と筋膜に圧力・刺激を与え、筋膜のよじれ、委縮、癒着等を改善する筋膜スクレイパーが注目されている。筋膜スクレイパーを持続的に行うことで、筋膜の動き、滑り、柔軟性が、適正な状態に改善されることとなる。
特に、ボディケア業界、スポーツ業界、美容業界等において、場所を選ばず、自分のペースで、体調や状態に応じて、簡単かつ柔軟に、筋膜スクレイパーを行い、筋膜をセルフケアすることができる器具のニーズが高まってきている。特に、アスリートやトレーナーの間では、体の温め、怪我予防、パフォーマンス向上等を目的としたトレーニングや試合の前のウォーミングアップや、疲労回復等を目的としたトレーニングや試合の後のクールダウンの際に、筋膜スクレイパーを実施することが注目されている。
これまで、筋膜スクレイパーは、主として専門家による施術により行われていたが、最近は、手軽に筋膜スクレイパーが実施できるように、各種の器具が開発されている。
【0005】
特許文献1には、振動するフォームローラー型の健康器具が開示されている。この健康器具は、リハビリやケアに、リラクゼーションに、セルフケアやウォーミングアップに、トレーニング後の疲労回復に用いられ、アスリートの間でも広く使用されている。しかし、ローラー全体が振動することから、所望の施術部位に振動を効率的に伝えることが困難である。
【0006】
特許文献2には、熱可塑性エラストマー製のチップを備え、チップが振動する筋膜リリースツールが開示されている。しかし、チップは円筒型のものであり、任意の施術箇所に振動を効果的に伝えることが困難である。
【0007】
特許文献3には、携帯型電気式パーカッシブマッサージアプリケーターが開示されている。これは、往復運動アセンブリにより動かされるピストンにより、パーカッシブマッサージ(打診)を行うものであるが、振動が本体にも伝わることで、任意の施術箇所に振動を効率的に伝えることが困難である。
【0008】
特許文献4には、片手で持って施術することができる筋膜リリース用具が開示されている。しかし、施術は人力によるものであり、施術者が疲労するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第9968513号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0304144号明細書
【文献】国際公開第2019/164555号
【文献】特許第6046850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、健康器具の筐体内に設置された振動モジュールからの振動を、無駄なく所望の施術部位に伝達することができ、施術部位に応じて効果的なマッサージや筋膜スクレイパーを実施することができる健康器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、以下のような構成とすることで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下のとおりである。
[1]筐体、前記筐体内に収容される振動モジュール、及び、前記振動モジュールと連結するとともに前記筐体から突出する振動伝達部材、とを備え、前記振動モジュールは、前記振動伝達部材のみに取り付けられている、健康器具。
[2]前記振動モジュールは、前記筐体と接していない、[1]に記載の健康器具。
[3]前記振動伝達部材は、前記振動モジュールで発生した振動を人体の肌まで伝達させるものである、[1]又は[2]に記載の健康器具。
[4]前記振動伝達部材の先端部は、エラストマーで構成されるブレード部材が着脱可能に取り付けられて形成されたものである、[1]~[3]のいずれかに記載の健康器具。
[5]前記振動伝達部材は、筐体長手方向に沿って筐体から線状に突出する、[1]~[4]のいずれかに記載の健康器具。
[6]筐体内に、振動モジュールのための充電可能な電池が収容される、[1]~[5]のいずれかに記載の健康器具。
[7]防水及び/又は防塵機能を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の健康器具。
[8]筋膜スクレイパー用である、[1]~[7]のいずれかに記載の健康器具。
[9][1]~[8]のいずれかに記載された健康器具を用いる、ボディケア方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、健康器具の筐体内に設置された振動モジュールからの振動を、無駄なく所望の施術部位(人体の肌)に伝達することで、施術部位に応じて効果的なマッサージや筋膜スクレイパーを実施することができる健康器具が提供される。そして、専門家(施術者)による施術を受ける場合と比較して、時間、手間及び金銭的に有利であり、コストパフォーマンスに優れる健康器具が提供される。また、専門家(施術者)による施術前に、本発明の健康器具を用いてマッサージや筋膜スクレイパーを行うことにより、専門家(施術者)の施術時の負担を軽減することができ、専門家(施術者)の疲労等の軽減やパフォーマンス向上を行うことができる。
本発明の健康器具は、施術部位に応じて効果的なマッサージや筋膜スクレイパーを実施することが可能であり、これを用いたボディケア方法は、リンパの流れや血流量の向上、筋肉や関節可動域の向上、姿勢の矯正、パフォーマンスの向上、トレーニング効果の向上、疲労回復、睡眠の質の向上、怪我の防止、コリ、ハリ、痛みの改善効果等、総体的な健康状態の向上に寄与できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施態様である健康器具が電源モジュールにおける充電スタンドにセットされた状態を示す正面斜め上方からの斜視図。
図2】本発明の一実施態様である健康器具が充電スタンドから離れた状態を示す正面斜め上方からの斜視図。
図3】本発明の一実施態様である健康器具が充電スタンドから離れた状態を示す背面斜め下方からの斜視図。
図4】本発明の一実施態様である健康器具の分解斜視図。
図5】本発明の一実施態様である健康器具であって、筺体第1部材及び筺体第2部材を取り外した状態の側面斜視図。
図6図5におけるA-A断面図。
図7図5におけるB-B断面図。
図8】本発明の一実施態様である健康器具が別形状のブレードを装着した状態を示す正面斜め上方からの斜視図。
図9】本発明の一実施態様である健康器具がさらに別形状のブレードを装着した状態を示す正面斜め上方からの斜視図。
図10】本発明の一実施態様である図2にある健康器具の6面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図)。
図11】本発明の一実施態様である図8にある健康器具の6面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図)。
図12】本発明の一実施態様である図9にある健康器具の6面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図)。
【符号の説明】
【0014】
A 健康器具

B 筐体
1 筺体第1部材
11 開口部
2 筺体第2部材
21 筐体パッキン
3 第1側面カバー
31スイッチ
32報知部材
33制御盤
34第1Oリング
4 第2側面カバー
41 充電端子
42 第2Oリング

C 振動伝達部材
5(5a、5b、5c) ブレード
6 ブレード台
61 ブレード固定部
62ブレード台パッキン

D 振動モジュール
7 モーター
71 第1モーターカバー
72 第2モーターカバー
73 偏芯錘

E 電源モジュール
8 電池
81 電池カバー
9 充電スタンド
91 給電端子
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る健康器具の好適な一実施態様について説明するが、本発明は、以下の一実施態様に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲において適宜変更することが可能である。なお、異なる図面における同じ参照番号の使用は、類似または同一の項目または特徴を示す。
【0016】
図1は、本発明の一実施態様である健康器具が電源モジュールにおける充電スタンドにセットされた状態を示す正面斜め上方からの斜視図、図2は、本発明の一実施態様である健康器具が充電スタンドから離れた状態を示す正面斜め上方からの斜視図、図3は、本発明の一実施態様である健康器具が充電スタンドから離れた状態を示す背面斜め下方からの斜視図である。
図1図4に示されるように、本発明の一実施態様の健康器具Aは、筺体第1部材1、筺体第2部材2、第1側面カバー3及び第2側面カバー4とで構成される筐体Bと、筐体Bから突出する(少なくとも、ブレード5、ブレード台6、ブレード台パッキン62から構成される)振動伝達部材Cと、筐体B内に収容されており振動伝達部材Cと連結する振動モジュールD(不図示)を備えている。また、本発明の一実施態様において、健康器具Aは、電源モジュールEにおける充電スタンド9に差し込むことで、筐体B内に収容されている電源モジュールEにおける電池8(不図示)を充電することができるように構成されている。
【0017】
図4は、本発明の一実施態様である健康器具Aの分解斜視図である。
図4に示されるように、本発明の一実施態様の健康器具Aを構成する振動伝達部材Cは、ブレード5、ブレード台6及びブレード台パッキン62により構成されており、ブレード台6に設けられるブレード固定部61とブレード5とが嵌合するとともに、ブレード5がブレード台6の上部に被さるよう構成されている。また、振動モジュールDは、ブレード台6と結合している第1モーターカバー71と、第1モーターカバー71と連結している第2モーターカバー72と、第1モーターカバー71と第2モーターカバー72の間に形成される空間に設置されるモーター7により構成されている。さらに、電源モジュールEの一部である電池8が電池カバー81により筐体B内部に設置されており、電池8は、導線(不図示)により、モーター7と制御盤33を介して連結されるとともに、第2側面カバーに設けられた充電端子41とも連結されている。
【0018】
図5は、本発明の一実施態様である健康器具Aにおいて、筺体第1部材1及び筺体第2部材2を取り外した状態の側面斜視図であり、図6は、図5におけるA-A断面図、図7は、図5におけるB-B断面図である。
図5及び図6に示されるように、本発明の健康器具Aにおいて、振動モジュールは、筐体B(筺体第1部材1及び筺体第2部材2)とは接しておらず、結合もされていない。
図5図7に示されるように、筺体第1部材1と筺体第2部材2との結合部には、エラストマー材料からなる筐体パッキン21を収容するパッキン収容部が、筺体第1部材1及び筺体第2部材2と第1側面カバー3との結合部、及び、筺体第1部材1及び筺体第2部材2と第2側面カバー4との結合部には、それぞれエラストマー材料からなる第1Oリング34及び第2Oリング42を収容するOリング収容部が設けられている。これにより、筐体Bに防水及び/又は防塵機能が付与されることとなる。
以下、筐体、振動伝達部材、振動モジュール、電源モジュールについて、詳細に説明する。
【0019】
[筐体]
図2及び図5に示されるように、筐体Bは、筺体第1部材1、筺体第2部材2、第1側面カバー3及び第2側面カバー4が、筐体パッキン21、第1Oリング34及び第2Oリング42を介在して結合して一体化されて形成されている。筐体Bの内部には、少なくとも振動モジュールD及び電源モジュールのうちの電池8を収容する空間が形成されている。
筐体Bの形状としては、特に限定されないが、例えば、片手で容易に把持できる大きさで、円柱、多角柱、円錐、円錐台、多角錐、多角錐台等の形状であって内部に空間を有するものとすることができる。図2に示される一実施態様として、筐体Bは、例えば、直径約50mm、長さ約150mmの円柱とすることができる。
【0020】
筐体Bを形成する筺体第1部材1及び筺体第2部材2の外周には、適当な高さ及び幅を有するリブや溝を適当な間隔で有していてもよい。また、手で持つための凹部や凸部等を設けることもできる。
筺体第1部材1、筺体第2部材2、第1側面カバー3及び第2側面カバー4は、それぞれ独立に、例えば、ABS樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)等のプラスチック材料、チタン、アルミニウム等の金属材料、木材、セラミックから選ばれる1種以上から構成することができる。
【0021】
本発明において、筺体第1部材1は、振動伝達部材Cを突出させるための開口部11を有する。開口部11は、筐体Bの長手方向に沿って形成することができ、その形状は、特に限定されない。例えば、図2に示される一実施態様では、筺体第1部材1の中央の頂部を中心として、長手方向に約120mm程度、幅方向に10mm程度のスリット状の開口部11が設けられている。なお、場合により、筺体第1部材1に1つ以上の開口部11や筺体第2部材2に1つ以上の開口部を設けるとともに振動伝達部材Cを突出させることにより、筐体Bから2つ以上の振動伝達部材Cが突出した構成としてもよい。
【0022】
筐体Bと振動伝達部材Cとは、振動伝達部材Cを構成するブレード台6の周囲に設けられたブレード台パッキン62の外周が、開口部11の内周と密着している。これにより、防水及び/又は防塵機能を発揮させることが可能であり、筺体第1部材1の開口部11とブレード台6との間から、水、ローション、粉塵等が筐体の内部空間に入り込むことが防止される。また、ブレード台パッキン62により、ブレード台6から筐体Bに振動モジュールDの振動が伝わることを抑制することができるため、振動伝達部材Cに振動を効果的に付与することができる。
【0023】
さらに、筺体第1部材1と筺体第2部材2との結合部には、エラストマー材料からなる筐体パッキン21を収容するパッキン収容部が、筺体第1部材1及び筺体第2部材2と第1側面カバー3との結合部、及び、筺体第1部材1及び筺体第2部材2と第2側面カバー4との結合部には、それぞれエラストマー材料からなる第1Oリング34及び第2Oリング42を収容するOリング収容部が設けられている。これにより、筐体Bに防水及び/又は防塵機能が付与されることとなる。
【0024】
筺体第1部材1、筺体第2部材2、第1側面カバー3及び第2側面カバー4を結合する手段としては、嵌合、ネジ止め、リベット止め、接着等の任意の1つ以上の結合手段が用いられる。
また、筐体Bの内部において、筺体第1部材1と電池カバー81とは、嵌合、ネジ止め、リベット止め、接着等の任意の1つ以上の結合手段により結合されていてもよい。
これらの結合に際しては、メンテナンス等を考慮して、分解可能である結合手段、例えば、嵌合、ネジ止め等の結合手段を用いることが好ましい。
【0025】
第1側面カバー3には、起動、振動調節等を行うスイッチ31、LED、ディスプレイ、スピーカー等の報知部材32等を設けることができる。例えば、スイッチ31を複数回押圧することで、起動、振動調節、終了の操作を行うように構成することができる。例えば、LED、ディスプレイやスピーカー等から選ばれる1つ以上の報知部材32により、健康器具Aや振動モジュールDの動作状態、電池残量等の各種の情報を報知するようにしてもよい。本発明の一実施態様では、報知部材32としてLEDが組み込まれたエラストマー部材を用いることが好ましい。スイッチ31、報知部材32等は、筐体Bの内部に収容されている制御盤33と導線(不図示)等により接続されている。制御盤33は、さらに電池8、モーター7等と導線(不図示)等により接続されている。制御盤33は、振動モジュールDの駆動時間の自動調整や、振動強度の自動制御等を、場合によってはプログラムに基づいて行うことができる。
【0026】
第2側面カバー4には、筐体Bの内部に収容された電池8を充電するための充電端子41が設けられていてもよい。例えば、金属製の充電端子41が第2側面カバー4を水密となるように貫通して設け、電源モジュールEの充電スタンド9に置くだけで充電可能となるように構成することができる。電池8としては、リチウムイオン電池等の公知の充電可能な電池を用いることができる。充電端子41は、導線(不図示)により電池8と接続して充電電流を供給する。その際、必要に応じて、充電制御回路(不図示)を介してもよい。
また、筐体Bの内部にコイル等のワイヤレス充電設備(不図示)を設けることで、充電端子41を用いることなく電池8の充電をワイヤレスで行うようにすることもできる。ワイヤレス充電の方式としては、電磁誘導方式、磁界共振方式、電波受信方式、電界結合方式等の任意の方式とすることができる。
【0027】
筐体Bの内部の振動モジュールDや充電可能な電池8に電流を供給するため、第2側面カバー4に充電端子41を設けたり、筐体Bの内部にワイヤレス充電設備を設けたりする代わりに、市販の乾電池を筐体Bの内部に容易に組み込めるように構成してもよい。例えば、第2側面カバー4を筺体第1部材1及び筺体第2部材2に設けられたネジ溝と嵌合させる方式とすることで、容易に取り外し可能とすることができる。
【0028】
[振動伝達部材]
筐体B(筺体第1部材1の開口部11)から突出する振動伝達部材Cは、振動モジュールDで発生させた振動を、施術部位(人体の肌)に伝達するための部材であって、少なくとも、ブレード台6に着脱可能に取付けられる各種の形状のブレード5(5a、5b又は5c)、ブレード5が着脱可能に取付けられるブレード台6、及び、ブレード台6の周りを取り囲むとともに、その外周が筺体第1部材1に設けられた開口部11の内周と接するブレード台パッキン62とにより構成されている。
【0029】
ブレード5を構成する材料は、特に限定されないが、それぞれ独立に、例えば、シリコン系エラストマー、天然ゴム、ブタジエン系ゴム、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等のエラストマー材料の1種以上から構成することができる。また、ブレード5のショア硬度は、それぞれ独立に5A~70Aとすることができる。
ブレード台6を構成する材料は、必要な強度等を有するものであれば、特に限定されないが、ABS樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)等のプラスチック材料、チタン、アルミニウム等の金属材料、木材、セラミックから選ばれる1種以上から構成することができる。
ブレード台パッキン62を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコン系エラストマー、天然ゴム、ブタジエン系ゴム、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等のエラストマー材料の1種以上から構成することができる。
【0030】
振動伝達部材Cの突出形態は、特に限定されないが、例えば、図1で示される一実施態様のように、筐体Bの長手方向に沿って線状に突出する形状とすることが好ましい。
さらに、振動伝達部材Cの先端部に取り付けられるブレード5としては、適用部位や症状等に応じて、図1~5で示される形状に限定されず種々の形状のものを交換して用いることができる。図1図8又は図9に示される一実施態様では、3種類の形状のものを交換可能に取り付けることが可能とされており、施術部位等に応じてカスタマイズすることができる。例えば、図1~7は中央部が凸である円弧状のブレード5aを、図8は中央部が凹となる円弧状のブレード5bを、図9は波型を有するブレード5cを、それぞれ装着した例である。
【0031】
振動伝達部材Cの先端部に取り付けられるブレード5の硬度は、被験者の身体の所望の位置に治療効果を提供するのに十分な硬度とすることができる。硬度は、治療場所、治療効果、施術者の施術方法等に応じて変化させることができる。
【0032】
本発明の振動伝達部材Cは、ブレード5とブレード台6とが、ブレード台6に設けられたブレード固定部61による嵌合と、ブレード5がブレード台6を包み込む(ブレードがブレード台に被せられる)ような嵌合とにより一体化される。また、ブレード台6を取り囲むように設けられているブレード台パッキン62の外周と、筺体第1部材1に設けられている開口部11の内周とが密着している。これにより、防水及び/又は防塵効果を発揮させることもできる。
【0033】
[振動モジュール]
筐体Bの内部に収容される振動モジュールDは、例えば、回転軸に偏芯錘73が設けられているモーター7を用いて構成することができる。図5に示されるように、振動モジュールDは、さらに、振動伝達部材Cのブレード台6と結合している第1モーターカバー71、第1モーターカバー71と結合しモーター7を設置する空間を形成する第2モーターカバー72、より少なくとも構成される。
第1モーターカバー71及び第2モーターカバー72は、健康器具Aが落下した際や、衝撃等の応力が加えられた際に、モーター7を保護するための役割をも果たしている。
【0034】
振動モジュールDは、振動を発生させて、ブレード台6及び先端部のブレード5に振動を直接伝達する。振動としては、例えば2,000~9,000RPM、好ましくは3,000~8,000RPM、より好ましくは4,000~6,500RPMとすることができる。振動は、数段階に調整することが可能であり、各段階において振幅と周波数を固有のものとしてもよく、任意の組み合わせに調整できるようにしてもよい。また、振動モジュールDが発生させる振動は、振動、往復動及び揺動から選ばれる1つ以上の運動とすることができ、直線運動、回転運動、掃引運動、円運動から選ばれる1つ以上とすることができる。
【0035】
図5に示されるように、モーター7は、振動伝達部材Cに対して平行に伸びる回転軸を有し、偏芯錘73が回転軸に固定されている。モーター7は、振動モジュールDの重心が筐体Bの内部の略中央部となるように設けることができる。モーター7は、導線(不図示)により制御盤33を介して電池8と接続されており、電池8からの電流により振動を発生する。制御盤33は、電池8から電力を受け取り、第1側面カバー3に設けられたスイッチ31の操作に対応して、モーター7への供給電力を制御する。モーター7と電池8とは、健康器具Aを持った際に重心が偏らないように、筐体Bの内部に配置されることが好ましい。
【0036】
モーター7は、振動伝達部材Cのブレード台6と結合している第1モーターカバー71と、第1モーターカバー71と結合した第2モーターカバー72とにより形成される空間に収容される。モーター7の回転軸に固定される偏芯錘73は、第1モーターカバー71及び第2モーターカバー72により形成される空間内に収容してもよく、空間内に収容しなくてもよい。
本発明の一実施態様では、第1モーターカバー71及び第2モーターカバー72は、モーター7の本体部分のみをカバーするものとされている。ブレード台6と第1モーターカバー71、第1モーターカバー71と第2モーターカバー72とは、それぞれ、嵌合、ネジ止め、リベット止め、接着等の任意の1つ以上の結合手段により結合されている。なお、本発明においては、図6に示されるように、第1モーターカバー71及び第2モーターカバー72は、筺体第1部材1及び筺体第2部材2のいずれにも接触していないし結合もされていないことが好ましい。
【0037】
モーター7に電力が供給されると、回転軸が回転し、偏芯錘73が回転することで振動が発生する。発生した振動は、第1モーターカバー71に連結している振動伝達部材Cに直接伝達されることとなる。これにより、ブレード5を含む振動伝達部材C全体が効果的に振動する。偏芯錘73がブレード5の長手方向中央付近となるように設けることにより、ブレード5の中央における振動の振幅を大きくすることができる。
【0038】
振動モジュールDは、振動伝達部材Cに結合されており、好ましくは筐体Bとは接触していない。また、振動伝達部材Cと筐体Bとは、エラストマー材料で構成されているブレード台パッキン62を介して接触している。これらにより、振動モジュールDで発生した振動は、振動伝達部材Cに効率的に伝わり、ブレード5から施術部位に効果的に伝わることとなる。さらに、エラストマー材料で構成されているブレード台パッキン62が、健康器具A全体に振動が拡散することを抑制することから、振動モジュールDで発生した振動を、より一層、ブレード5から施術部位に効果的に伝えることができる。
【0039】
[電源モジュール]
電源モジュールEは、モーター7に電力を供給し得るものであれば、特に限定されない。例えば、筐体Bの内部に設けられた充電可能な電池8や市販の乾電池を使用することで構成することができ、導線(不図示)をコンセントにつなぐことにより構成してもよい。また、例えば、第2側面カバー4に、電源と接続する導体(いずれも不図示)を接続する端子(電源コードやUSB端子等。いずれも不図示)を設けたり、第2側面カバー4を介して電源と筐体Bの内部とを接続する導体を連結したりすることで、電源モジュールEを構成してもよい。本発明の一実施態様においては、電源モジュールEは、筐体Bの内部に設けられた充電可能な電池8及び電池カバー81と、電池8を充電するための充電スタンド9から構成することが好ましい。
【0040】
本発明においては、図4に示すように、筐体Bの内部に充電可能な電池8、例えばリチウムイオン電池を設けることが好ましい。これにより、使用する場所を選ばず、持ち運びに便利なコードレス式とすることができ、さらに、容量の大きいリチウムイオン電池を用いることで、1回の充電で長時間の連続使用を可能にすることができ、ランニングコストの点でも有利となる。
筐体Bの内部には、1つ以上の電池を設けることができ、電池の形状としては、円筒型、箱型等の任意の形状のものにできる。
【0041】
本発明の一実施態様では、充電可能な電池は、第2側面カバー4に設けられている充電端子41を介して、充電することができる。図1に示すように、本発明における一実施態様では、円筒型の健康器具Aが電源モジュールEの充電スタンド9に挿入され、充電端子41と給電端子91とが接触することで、充電を開始することができる。
【0042】
充電スタンド9は、底面部と底面部の周縁から上方に突出された側壁とで形成された、上方に開口された箱状とすることができる。充電スタンド9には、従来公知の充電制御盤(不図示)と、電源と接続する導線(電源コード)又は導線と接続するための端子を任意の部分に設けることができる。本発明の一実施態様では、充電制御盤は、充電スタンド9の底面部に設けられ、外部電源と接続する導線又は導線と接続する端子(いずれも不図示)は、充電スタンド9の側壁に設けられる。外部電源としては、家庭用電源又はモバイルバッテリでもよく、外部電源と接続する導線と接続する端子は、例えば、USB端子とすることができる。
【0043】
充電スタンド9の底面部には、充電端子41と接触する給電端子91が設けられる。給電端子91は、例えば、板バネ等で構成され、これにより、充電端子41との接触を確実にすることができる。また、充電スタンド9の側壁には、充電状態又は通電状態を報知するLED等の報知部材を設けることもできる。
充電スタンド9には、健康器具Aが所定の状態で挿入されるように、係止部(例えば、溝等の凹部、不図示)を設けることができ、筐体B(筺体第1部材1又は筺体第2部材2の外周面)に設けられた対応する係止部(充電スタンドに設けられた凹部と嵌合する凸部、不図示)を設けることが好ましい。これにより、充電スタンド9内に健康器具Aが固定されるとともに、所定の状態に挿入されることで逆装着されることなく充電を可能とすることができる。
【0044】
[ボディケア方法]
本発明のボディケア方法は、本発明の健康器具Aの筐体Bを手で把持し、マッサージや筋膜スクレイパー等の施術を行いたい部位に適度な力によってブレード5を押し当て、必要に応じて往復動することにより、上記目的を達成するものである。また、施術部位や症状に応じた使い分けをすることができる。
本発明のボディケア方法は、例えば、骨格筋、筋膜、腱、靭帯、および骨と任意の他の結合組織との間の連結部を含む、身体の様々な部分に適用することができる。
【0045】
例えば、図1~5に示す中央部が凸のブレード5aは、胸骨間や背中等に押し当てることで、図8に示す中央部が凹となっているブレード5bは、足や腕等の円カーブと凹部の円カーブを合わせて押し当てることで、筋繊維の方向に沿って移動させたり、筋繊維の方向と垂直な方向に移動させたりして、マッサージや筋膜スクレイパーを行うことができる。
【0046】
本発明のボディケア方法には、例えば、リラクゼーション、物理療法、マッサージ療法、カイロプラクティックケア、トレーナーによるケア、セルフボディケア等が含まれる。
また、トレーニング前のウォーミングアップ、トレーニング後のクールダウン、疲労回復、筋肉ほぐし、筋膜スクレイパー等を目的としたものとすることができる。
本発明のボディケア方法は、振動効果により、可動域の改善、柔軟性の改善、血流の改善、疲労回復等の効果を得ることができる。
さらに、本発明のボディケア方法においては、健康器具Aがコンパクトで、コストパフォーマンスに優れることから、予算やスペースを気にすることなく行うことが可能である。
【実施例
【0047】
本発明の健康器具Aを用いてボディケアを行い、筋膜リリース効果を以下のとおり確認した。
対象者は、体幹・下肢に整形外科的既往がない成人5名とした。対象者は、それぞれカーフレイズ(「Caff(ふくらはぎ)」+「Raise(持ち上げる)」)を自分ができる最大の回数まで実施した。なお、カーフレイズは、以下に示す運動である。
(i)壁の前に立ち、両足を肩幅程度に開く。
(ii)壁に軽く手を添えて体を支えながら、かかとをゆっくりと上げる。
(iii)かかとが上がりきったら、かかとをゆっくりと床面スレスレまで下げる。
(iv)前記(ii)と(iii)を繰り返す。
【0048】
対象者の詳細及びカーフレイズを自分ができる最大の回数に要する時間(カーフレイズ All Out時間)は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0049】
カーフレイズ後、右足のふくらはぎに対して、本発明の健康器具Aを用いて筋膜スクレイパーを1分間施術した。また、左足のふくらはぎは、施術することなく安静にした。
施術又は安静後に、本人が感じている疲労感を数値化した。疲労感の数値化は、NRS(Numeric Rating Scale)により行い、想像できる最大の疲労感を10、疲労感がない状態を0として、対象者が左右のふくらはぎについてそれぞれ評価し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【表2】
【0050】
表2中、
右足ふくらはぎの(NRS変化値)=(カーフレイズ後のNRS値)-(筋膜スクレイパー1分間施術後のNRS値)
右足ふくらはぎの(NRS変化率)=(NRS変化値)÷(カーフレイズ後のNRS値)
左足ふくらはぎの(NRS変化値)=(カーフレイズ後のNRS値)-(1分間安静後のNRS値)
左足ふくらはぎの(NRS変化率)=(NRS変化値)÷(カーフレイズ後のNRS値)
である。
【0051】
表2から以下のことがわかる。
本発明の健康器具Aを用いて筋膜スクレイパーを1分間施術すると、筋膜スクレイパーを1分間施術していない場合と比較して、NRS変化値及びNRS変化率の両者が大きくなっており、カーフレイズ後のふくらはぎ(下肢)の疲労改善傾向があると推察できる。
【0052】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上記の構成において、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。したがって、上記の説明に含まれるか又は添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12