(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240312BHJP
H05B 6/68 20060101ALI20240312BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G06K19/077 160
G06K19/077 280
H05B6/68 330Z
F24C7/02 301G
(21)【出願番号】P 2020017227
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】201910698898.7
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520043109
【氏名又は名称】アライゾン アールエフアイディー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リー、ツンティン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、テイエイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ムン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ガン
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163643(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194173(WO,A1)
【文献】米国特許第06480699(US,B1)
【文献】特開2019-083411(JP,A)
【文献】特開2007-089054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/00-7/06
G06K 7/00-7/14
17/00-19/18
H05B 6/48-6/50
6/66-6/68
11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDアンテナ導体とRFIDチップとを含む電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造であって、
前記RFIDチップの近傍の前記RFIDアンテナ導体の一部に対して間隔をあけて設けられる犠牲導体を有し、
前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間の間隔内に誘電材料が設けられ、
前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間に追加の容量が形成さ
れ、
前記誘電材料は、基材自体であり、追加のペースト材料、インク、又は保湿剤も含むことを特徴とする電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項2】
前記RFIDチップの近傍の前記RFIDアンテナ導体の一部に高誘電率と低絶縁耐力を有する誘電体層が印刷されており、前記犠牲導体は、前記誘電体層の上、かつ前記RFIDチップの近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項3】
前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間隔が2um~200umであることを特徴とする請求項2に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項4】
前記犠牲導体と同一平面にある前記RFIDアンテナ導体との間のギャップに高誘電率と低絶縁耐力を有する材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項5】
前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間隔が30um~200umであることを特徴とする請求項4に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項6】
前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間隔が30um~200umであることを特徴とする請求項
1に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【請求項7】
前記誘電材料の誘電率が3.0~50であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数タグの技術分野に属し、RFIDタグ構造に関し、特に、電子レンジで食品を加熱又は加工するためのRFIDタグ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のRFIDタグは、
図1に示すように、アンテナが2つの接点電極を有し、
図1及び
図2に示すように、2つの電極間にギャップ(Gap)がある。
図3に示すように、チップ上の2つの電気接点が導電ペースト、金線又はアルミニウム線を介してアンテナの対応する接点電極に接続されて、電気的機能を備えたタグ本体が形成される。その後、表面材料とペーストに覆われてタグが形成される。この構造のRFIDタグは、食品、医薬品、化学品の包装に貼り付けられ、電子レンジに入れて2.45GHzの高出力マイクロ波で加熱すると、導体アンテナに交流の高電圧電流が発生し、アンテナの細い部分又は高インピーダンス箇所でアーク放電又は高熱による爆発的燃焼(爆燃)が発生してしまう。チップとアンテナとの間の接点は、アンテナ線全体のうち線幅が細くインピーダンスが高い場所であるため、爆燃チップとアンテナの接点で爆燃が発生しやすく、深刻な安全問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を解消し、物品に貼り付けられたRFIDタグが、電子レンジで爆燃を起こさずに、より長い加熱時間又はより強力な出力に耐えることができ、安全性の高い電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造は、RFIDアンテナ導体とRFIDチップとを含み、前記RFIDチップの近傍の前記RFIDアンテナ導体の一部に対して間隔をあけて設けられる犠牲導体を有し、前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間の間隔内に誘電材料が設けられ、前記犠牲導体と前記RFIDアンテナ導体との間に追加の容量が形成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造は、本発明は、従来のRFIDタグ構造と比較して、電子レンジの2.45GHzの周波数による高出力でアンテナに作用する交流電圧・電流を分散させることにより、RFIDタグが電子レンジで加熱される時に爆燃を起こさずに、より長い加熱時間に耐えることができる。その結果、RFIDチップとアンテナを保護する機能を実現し、食品、医薬品、化学品などの分野に用いられるRFIDタグの電子レンジでの安全な加熱又は解凍が可能となり、使用上の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】従来のRFIDタグにおけるアンテナ構造を示す図である。
【
図2】従来のRFIDタグのアンテナギャップを示す概略図である。
【
図3】従来のRFIDタグ全体を示す概略図である。
【
図5】電子レンジの電源が入っていないとき(マイクロ波を照射する前)の本発明のRFIDタグの等価回路図である。
【
図6】電子レンジの電源が入って加熱されているときの本発明のRFIDタグの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0008】
図8に示すように、電子レンジで加熱又は加工するためのRFIDタグ構造は、RFIDアンテナ導体と、RFIDチップとを含む。RFIDチップの近傍のRFIDアンテナ導体の一部に高誘電率と低絶縁耐力を有する材料層
(誘電材料)が印刷
又は塗布されている。犠牲導体は、材料層の上、かつRFIDチップの近傍に配置されている。犠牲導体とRFIDアンテナ導体との間に間隔を有し、犠牲導体とRFIDアンテナ導体との間隔内に誘電体材料層が設けられ、犠牲導体とRFIDアンテナ導体との間に比較的大きな容量が一対形成されている。
【0009】
犠牲導体とRFIDアンテナ導体との間隔は2um~200umであり、誘電体材料層の誘電率は3.0~50である。
【0010】
図8に示すように、チップの近傍のアンテナ導体と犠牲導体との間隔が非常に小さく、アンテナ導体と犠牲導体との間には、印刷
又は塗布された誘電材料を挟む一対の容量が形成され、容量値C=K・ε
0・A/dとなる。式では、Cは容量であり、Aは2層の導体材料間の重複領域であり、dは2層の導体材料間の間隔であり、ε
0は真空の誘電率=8.85×10
-12F/mであり、Kは真空での材料の比誘電率(単位なし)である。
【0011】
図5の等価回路に示すように、R1とC1はチップを表しており、電子レンジ内の2.45GHzの高出力マイクロ波とRFIDタグの導体アンテナの交流高電圧の作用により、2つの容量C2とC3の誘電体層が破壊され、
図6に示すように、元の容量C2とC3が経路R2とR3になる。
【0012】
図6に示すように、チップを流れるはずの大電流は犠牲導体に分流してアンテナ導体に戻るため、チップの接点及びその近傍のアンテナ導体の電流値が低下し、爆燃が避けられる。
【0013】
(第1の実施形態)
図7に示すように
、犠牲導体と同一平面にあるアンテナ導体との間のギャップに高誘電率と低絶縁耐力を有する材料
(誘電材料)、例えばペースト材料、インク、又は保湿剤が塗布されている。これにより、C2とC3の容量値を高めるとともに、誘電体層の破壊閾値を下げるため、高電圧下で破壊して犠牲導体に電流を分流させることができ、チップ及びその周辺のアンテナ導体を爆燃から効果的に保護することができる。本実施形態では、高誘電率材料の誘電率が3.0~50であり、犠牲導体とアンテナ導体との間のギャップが30um~200umであり、印刷
又は塗布された高誘電材料の誘電率が3.0~50である。
【0014】
(第2の実施形態)
図8に示すように、RFIDチップの近傍のアンテナ導体の一部の上に高誘電率と低絶縁耐力を備えた材料層
(誘電材料)が印刷
又は塗布され、この誘電体層
(誘電材料)の上、アンテナ導体側に犠牲導体が印刷
又は塗布されている。犠牲導体がアンテナ導体に近接するようにし、犠牲導体とアンテナ導体との間のギャップを極力小さくする必要がある。これにより、
図5に示すC2とC3の容量値を高めるとともに、誘電体層の破壊閾値を下げるため、高電圧下で破壊して分流する効果がより良くなり、チップ及びその周辺のアンテナ導体を爆燃からより効果的に保護することができる。本実施形態では、犠牲導体とアンテナ導体との間のギャップが2um~200umに小さくされ
、誘
電材料の誘電率が3.0~50である。
【0015】
(第3の実施形態)
図4に示すように、これは本発明の最も単純な実施形態である
。本実施形態において、誘電体層(誘電材料)は2つの導体間の基材とその後作成されるタグに付着したペースト材料で構成され、RFIDチップの近傍のアンテナ導体のすぐ横にアンテナ導体と同一平面にある犠牲導体が配置され、犠牲導体とアンテナ導体との間のギャップを極力小さくする必要がある。これにより、
図5に示すC2とC3の容量値を高めるとともに、誘電体層
(誘電材料)の破壊閾値を下げるため、誘電体層
(誘電材料)が高電圧下で破壊されて導通して電流が分流することで、チップ及びその周辺のアンテナ導体を爆燃からより効果的に保護することができる
。犠牲導体とアンテナ導体との間のギャップが30um~200umで
ある。本実施形態では、前述の2つの実施形態と比較して
、実装工程は最も簡単である。
【0016】
(第4の実施形態)
図9に示すように、本実施形態では、前述の3つの実施形態と比較して、犠牲導体を配置せず、チップパッケージング領域の両端のアンテナ電極
(アンテナ導体)の幅を拡大する点で異なる
。ここで、アンテナ電極のギャップ(Gap)は非常に
細く形成されている。
図10に示すように、R1とC1はチップを表している。式C=K・ε
0・A/dによると、小さなギャップは小さなd値を意味し、長いギャップ(同一導体の厚さに乗算)は大きなAを意味するため、容量C2とC3が大きくなり、交流高電圧の作用により誘電材料が破壊され、元の容量C2とC3は、
図6に示すR2とR3とからなる経路になり、チップを通過する電流は、その隣に補強されたアンテナ導体に分流することになる。これにより、チップ及びその周辺のアンテナ導体の接点は爆燃を回避できる。
【0017】
アンテナ導体の微細ギャップは30um~140umであり、従来のボンディング領域は600um~1100umであるが、本発明では、線幅を1400um~9000umに大きくする。また、式C=K・ε0・A/dによればdを小さくして容量を大きくすることに加えて、金属層(アンテナ導体)の厚さを増やして電極間の面積を増やすことにより、容量を増やすという目的を達成することもできる。従来のアンテナ金属層の厚さは10umであり、本発明では金属層の厚さを25um~50umに増やすことを提案する。