(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】リベット締めの方法
(51)【国際特許分類】
B21J 15/00 20060101AFI20240312BHJP
B21J 15/02 20060101ALI20240312BHJP
B21J 15/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B21J15/00 U
B21J15/02 F
B21J15/02 P
B21J15/10 C
(21)【出願番号】P 2021505677
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 GB2019052191
(87)【国際公開番号】W WO2020025981
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-24
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520190665
【氏名又は名称】アトラス コプコ アイエーエス ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO IAS UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, エリオット
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0175095(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013214331(DE,A1)
【文献】特開2002-364617(JP,A)
【文献】特開2013-068233(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102248112(CN,A)
【文献】特表2009-526179(JP,A)
【文献】特開2015-175459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/00
B21J 15/02
B21J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リベット締めの方法であって、
(i)頭部と、前記頭部から下方に垂下している軸部とを有するリベットを用意するステップであって、前記軸部が先端で終端し、リベット内部を画定するように中空である、ステップと、
(ii)前記リベット内部に少なくとも部分的にインサートを受け入れるステップと、
(iii)前記リベットおよび前記インサートを被加工物のダイと反対の側に配置するステップと、
(iv)前記リベットおよび前記インサートを、中心軸線に沿ってパンチを使用して力の作用下で前記ダイに向かって前記被加工物に打ち込むと同時に、前記ダイを使用して前記力に対して作用させて、前記リベットを外向きに広げ、前記被加工物と連結させるステップと
を含む、リベット締めの方法。
【請求項2】
前記インサートが、前記インサートの基部から延びるテーパ状のインサート表面を備え、前記テーパ状のインサート表面の直径がインサート軸線に対して変化し、
当該方法が、
前記リベットを前記テーパ状のインサート表面に押し付けて、前記リベットの先端を外向きに広げ、前記被加工物と連結させるステップ
を含み、
任意的に、前記リベットが、前記リベットの先端の方へ延びるテーパ状のリベット表面を有する軸部を備え、前記テーパ状のリベット表面の直径がリベット軸線に対して変化し、
当該方法が、
前記テーパ状のリベット表面を前記テーパ状のインサート表面に押し付けて、前記リベットの先端を外向きに広げ、前記被加工物と連結させるステップ
を含む、請求項1に記載のリベット締めの方法。
【請求項3】
前記インサートが、前記リベット内部に受け入れられるように構成されたインサート軸部を備え、
当該方法が、
前記リベットと前記インサート軸部の両方を介して前記パンチから前記被加工物に前記力を伝達するステップ
を含み、
任意的に、前記インサート軸部が、インサート空洞を画定するように中空であり、
当該方法が、
前記リベットの前記頭部が前記被加工物の上部と同一平面になるときに前記インサート空洞を潰させるステップ
を含む、請求項1または2に記載のリベット締めの方法。
【請求項4】
当該方法が、前記リベットおよび前記インサートを使用して前記被加工物の分離部分を形成するように前記被加工物を完全に貫通する穴を打ち抜き、前記穴内に前記リベットおよび前記インサートを受け入れるステップをさらに含み、
任意的に、前記ダイが、孔と、前記孔内に受け入れられるプッシュロッドとを備え、前記プッシュロッドが前記孔に対して移動可能であり、前記孔と前記プッシュロッドとが、前記ダイの前記パンチに面する側に開いた空洞を画定し、
当該方法が、
前記プッシュロッドおよび前記被加工物の前記分離部分を使用して前記力に対して作用させて、前記リベットを外向きに広げ、前記被加工物と連結させるステップ
をさらに含み、
任意的に、当該方法が、
(i)前記プッシュロッドを、前記被加工物の下面から前記被加工物の厚さと等しい量だけ間隔をおいて配置するステップを含み、または、
(ii)前記ダイが、前記プッシュロッドを取り囲むスリーブをさらに備え、前記スリーブが前記プッシュロッドに対して移動可能であり、
当該方法が、
前記リベットの先端が前記ダイの側の前記穴の底部を越えて配置されるように前記穴内に前記リベットを受け入れるステップと、
前記プッシュロッドに対して前記中心軸線に沿って前記スリーブを引っ込めて、前記リベットが広がり、前記被加工物と連結できるようにするための前記リベットの先端に隣接する環状の空洞を設けるステップと
をさらに含み、
任意的に、当該方法が、前記プッシュロッドを、前記被加工物の下面から前記被加工物の厚さより大きい量だけ間隔をおいて配置するステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリベット締めの方法。
【請求項5】
前記リベットが、前記リベット内部を画定する通り穴を備え、前記パンチが、前記中心軸線に沿って互いに対して移動可能な内側部分と外側部分とを備え、
当該方法が、前記リベットおよび前記インサートに対して前記力を、
前記パンチの前記外側部分を前記リベットの前記頭部に押し付け、
前記パンチの前記内側部分を前記リベットの前記通り穴に通し、
前記パンチの前記内側部分を前記インサートに押し付ける
ことによって加えるステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリベット締めの方法。
【請求項6】
前記被加工物が、接合されるべき少なくとも2つの別々の材料層を含み、
当該方法が、前記ステップ(iii)の前に、
前記被加工物の上層に穴を形成するステップ
を含み、
任意的に、(i)当該方法が、前記パンチを前記上層に押し付けて前記上層の分離部分を形成することによって前記上層に前記穴を形成するステップを含み、または、
(ii)前記パンチがテーパ状のノーズを備え、当該方法が、前記パンチの前記ノーズを前記被加工物の前記上層に押し付けて前記上層に前記穴を打ち抜くステップを含む、請求項1または2に記載のリベット締めの方法。
【請求項7】
当該方法が、前記ステップ(iv)の前に、
前記パンチを使用して前記被加工物から前記上層の前記分離部分を取り除くステップ
を含み、
任意的に、前記パンチが、電磁石を備え、当該方法が、前記電磁石を励磁して前記上層の前記分離部分を引き付けるステップをさらに含む、請求項6に記載のリベット締めの方法。
【請求項8】
当該方法が、前記ステップ(iv)の前に、
前記上層の前記分離部分をそのまま放置するステップ
を含み、または
当該方法が、前記パンチと前記ダイとは異なる打ち抜き装置を使用して前記上層に前記穴を形成するステップを含む、請求項6に記載のリベット締めの方法。
【請求項9】
前記被加工物が、先進高張力鋼または超高張力鋼を含み、および/または、
前記リベットが、最大510Hvまでの硬度を有する材料から形成されており、および/または、
当該方法が、セルフピアシングリベット締めの方法である、請求項1~8のいずれか一項に記載のリベット締めの方法。
【請求項10】
パンチと、
間にリベットアセンブリおよび被加工物が受け入れられ得るように中心軸線に沿って前記パンチから間隔を置いて配置されたダイと
を備え、
前記パンチが、リベットと前記リベット内に少なくとも部分的に受け入れられるインサートとを備える前記リベットアセンブリを前記被加工物に打ち込むと同時に、前記リベットが前記パンチからの力の作用下で打ち込まれて、前記ダイおよび前記インサートが前記力に対して作用させて前記リベットを外向きに広げ、被加工物と連結させるように構成されている、リベット締結装置。
【請求項11】
前記ダイが、孔と、前記孔内に受け入れられるプッシュロッドとを備え、前記プッシュロッドが前記孔に対して移動可能であり、前記孔と前記プッシュロッドとが、前記ダイの前記パンチに面する側で開いた空洞を画定し、前記プッシュロッドが、前記力に対して作用させて前記リベットを外向きに広げ、前記被加工物と連結させるように構成されており、
任意的に、前記ダイが、前記プッシュロッドを取り囲むスリーブをさらに備え、前記スリーブが前記ダイおよび前記プッシュロッドに対して移動可能であり、前記スリーブが、前記プッシュロッドに対して前記中心軸線に沿って引っ込んで、前記リベットが広がり、前記被加工物と連結できるようにするための前記リベットの先端に隣接する環状の空洞を設けるように構成されている、請求項10に記載のリベット締結装置。
【請求項12】
(i)前記パンチが、前記中心軸線に沿って互いに対して移動可能な内側部分と外側部分とを備え、前記パンチが、前記パンチの前記外側部分を前記リベットの頭部に押し付け、前記パンチの前記内側部分を前記リベットに形成された通り穴を介して前記インサートに対して押し付けることによって前記リベットに前記力を加えるように構成されており、または、
(ii)前記パンチが、前記被加工物の上層に穴を打ち抜いて前記上層の分離部分を残すように構成されたノーズを備え、
任意的に、(a)前記ノーズがテーパ状であり、
(b)前記パンチが、前記上層の前記分離部分を引き付けるように構成された電磁石を備え、
任意的に、前記電磁石が、前記パンチの前記ノーズに配置されている、請求項10に記載のリベット締結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リベット締めの方法に関し、特に、セルフピアシングリベット(self-piercing rivet:自己穿孔リベットとも称される)およびインサートを使用したリベット締めの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルフピアシングリベットは、機械的連結を形成することによって1つまたは複数の材料層を接合するために使用される。そのようなリベットは、通常、頭部と、部分的に中空の軸部とを備える。使用中に、接合されるべき材料層は互いに重ねられ、ダイの上に配置される。リベットは、リベットセッタなどの締結装置の作用下でダイの反対側から材料に打ち込まれる。多くの場合、ダイおよび締結装置は、C字形の枠を介して相互に接合され、単一のユニットとして提供される(ただしこれは必ずしも必要ではない)。ダイの形状は、リベット軸部の外向きの広がりを助長しながら、材料層に垂直な方向の締結装置の力に抵抗することができるようなものである。リベット軸部が広がるときに、リベットの先端は、リベットと材料層との分離を防ぐ機械的連結を形成するように、リベット頭部に対して材料層を圧縮するように作用する。好ましくは、接合部の形成は、リベット頭部が上部材料層と同一平面になったときに終了する。接合プロセスでセルフピアシングリベットを使用することにより、リベットが差し込まれる前にシート材料にまず穴を開け、次いでその突出する端部を据え込み加工する必要のある従来のリベット締めと比較して、製造ステップ数が減少する。
【0003】
セルフピアシングリベットは、様々な材料の接合に使用することができる例えば、セルフピアシングリベットは、多くの場合接着剤と組み合わせて使用されて、車体パネル用のアルミニウムなどの軽量で延性の高い材料を接合するために自動車産業で大きな商業的成功を収めてきた。最近では、そのようなパネルを鋼などのより強い材料から製造することが求められるようになった。リベットを、550MPaを超える引張強度を有し得る先進高張力鋼(advanced high strength steel)(AHSS)を含む被加工物に、および/または少なくとも800MPaの引張強度を有し得る超高張力鋼(ultra-high strength steel)(UHSS)を含む被加工物に差し込むことが望ましい場合がある。しかしながら、接合される材料の強度が増すため、リベットがAHSSまたはUHSSを貫通できるようにするためにより強いリベットを使用する必要がある。AHSSやUHSSを貫通するのに十分な強度のリベットを提供することは可能であるが、そのようなリベットと接合される材料との延性が低下すると、リベットの広がりが制限されることになる。リベットの広がりが制限された結果として、リベットと被加工物との間の強力な連結が達成されなくなる。加えて、リベットと接合される材料の両方で極めて高い応力が生成される可能性もある。そのような高い応力により、リベットまたは接合される材料の亀裂が生じる可能性がある。これにより、接合部の構造的安定性が弱まり、接合部が水の浸入による腐食に対して脆弱になる。したがって、AHSSやUHSSなどの高強度および低延性の材料の接合のための改善されたプロセスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、上記その他で特定されているかどうかにかかわらず、先行技術に存在する高強度材料のためのセルフピアシングリベット締めの問題点を除去または軽減することである。本発明のさらなる目的は、セルフピアシングリベット締めの代替プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、頭部と、頭部から下方に垂下している軸部とを有するリベットを用意するステップであって、軸部が先端で終端し、リベット内部を画定するように中空である、ステップと、インサートをリベット内部に少なくとも部分的に受け入れるステップと、リベットおよびインサートを被加工物のダイと反対の側に配置するステップと、リベットおよびインサートを、中心軸線に沿ってパンチを使用して力の作用下でダイに向かって被加工物に打ち込むステップと、ダイを使用して力に対して作用させて、リベットを外向きに広げ、被加工物と連結させるステップと、を含むリベット締めの方法が提供される。
【0006】
リベットおよびインサートがダイに対して被加工物に打ち込まれると、インサートはリベットに追加の強度をもたらす。これは、被加工物がUHSSなどの超高強度材料を含む用途では特に好適である。被加工物が超高強度材料で作られている場合、被加工物を穿孔および/または貫通するために、やはり超高強度材料からなるリベットが使用され得ることが理解されよう(ただしいくつかの実施形態では、インサートによってもたらされる追加の強度により、より軟らかいリベットの使用が可能になる)。しかしながら通常、そのような超高強度材料は、比較的低い延性を呈し、したがって、変形して堅固な接合部を作成することがより困難である。しかしながら、リベット内部に受け入れられるインサートの使用により、本発明の方法は、そのような超高強度材料を用いてもリベットの広がりを生じさせることができる。
【0007】
リベットが超高強度材料からなる場合、その変形に対する自然抵抗によりリベットは(例えば、それ自体の弾性のために)変形していない形状に戻ろうとする。この変形に対する自然抵抗が原因で、形成された接合部内のリベットおよび被加工物の材料に高い内部応力が残ることがよくあり、接合部を著しく構造的に弱くし、かつ/または接合部を腐食に対して脆弱にし得る亀裂の形成につながることが知られている。しかしながら、形成された接合部内のインサートの存在は、リベットの弾性圧縮の一部を吸収してリベットを内側から支持することができる。これにより、接合部が形成された後にリベットおよび被加工物に残る内部応力(すなわち、残留応力)が減少する。よって、亀裂形成の問題を回避することができる。
【0008】
本発明のさらなる利点は、インサートの存在によってリベットの広がりが発生または助長されるので、本方法を行うために特別に適合された工具が不要であり、したがって標準の工具が使用され得ることである。これによりセットアップコストが削減される。例えば、インサートによって広がりが発生するので、広がりを助長するように構成された中央突起を有するダイを設ける必要がなく、よって、より単純で安価なダイ形状を使用することができる。さらに、インサートによって広がりが助長されるので、浅いダイを使用して高強度材料や超高強度材料(UHSSなど)、低延性材料(鋳造アルミニウムなど)を接合し、または厚みのある材料を接合することが可能である。逆に、インサートの存在により、被加工物が非常に軟らかいために、被加工物が通常はリベットを広げるのに十分な抵抗を提供できないはずの場合に、リベットの広がりを助長することさえもできる。接合される材料の特性を考慮に入れて、十分な接合部が得られるようにインサートの形状を調整することによって(例えば、インサートの直径を変更すること、および/またはリベットの広がりを助長する角度の付いた表面を設けることによって)広がりの量を制御することができることが理解されよう。
【0009】
インサートは、インサートの基部から延びるテーパ状のインサート表面を備え得る。テーパ状のインサート表面は、インサート軸線に対して直径が変化し得る。本方法は、リベットをテーパ状のインサート表面に押し付けて、リベットの先端を外向きに広げ、被加工物と連結させるステップを含み得る。
【0010】
「インサート軸線」とは、インサートの長手方向に延びる中心軸線を意味することが理解されよう。特定の実施形態では、インサートは、インサート軸線に対して回転対称であり得る。さらに、「テーパ表面」は、その直径がインサート軸線の方向に変化する、インサート軸線を中心に回転されるインサートの外面であり得る。テーパ状のインサート表面は、インサートの外面であり得る。使用中に、インサート軸線は、中心軸線と同一線上にあり得る。
【0011】
リベットがテーパ状のインサート表面に押し付けられる際に、テーパ状のインサート表面は加えられた力の方向のリベットのさらなる移動に抵抗し、加えられた力の成分を半径方向外向きに偏向させることが理解されよう。しかしながら、テーパ状のインサート表面は外向きにテーパする(すなわち、その直径がインサート軸線に対して変化する)ので、テーパ状のインサート表面は、加えられた力の通常の反作用を、中心軸線に対して半径方向外向きの方向に向けることができる。これによりリベットが被加工物を広げ、被加工物と連結するよう助長される。これは特に、テーパ状のインサート表面の直径が被加工物に近いほど大きい場合に当てはまる。テーパ表面は凹面であり得る。
【0012】
リベットは、リベットの先端の方へ延びるテーパ状のリベット表面を有する軸部を備えてもよく、テーパ状のリベット表面の直径はリベット軸線に対して変化する。本方法は、テーパ状のリベット表面をテーパ状のインサート表面に押し付けて、リベットの先端を外向きに広げ、被加工物と連結させるステップを含み得る。
【0013】
「リベット軸線」という用語は、リベットの長手方向に延びる中心軸線を意味すると解釈され得る。特定の実施形態では、リベットは、リベット軸線に関して実質的に対称であり得る。
【0014】
テーパ状のインサート表面とテーパ状のリベット表面の両方の直径が変化するので、結果として得られるテーパ状のインサート表面とテーパ状のリベット表面との間の接触力を、中心軸線に対して外向きに角度が付くように制御することができることが理解されよう。すなわち、力の成分を、リベットの先端を半径方向外向きに押し出し、被加工物を貫通するように、リベットおよびインサートの相対的な形状に基づいて偏向させることができる。よって、テーパ状のリベット表面はテーパ状のインサート表面と連動してリベットの広がりを助長する。これは特に、テーパ状のリベット表面の直径が被加工物に近いほど大きい場合に当てはまる。さらに、リベットの先端の広がりにより、先端が被加工物に食い込んで、広がりの方向に被加工物を少なくとも部分的に貫通し得る。テーパ状のリベット表面は凸面であり得る。
【0015】
インサートは、リベット内部に受け入れられるように構成されたインサート軸部を備え得る。本方法は、リベットとインサート軸部の両方を介してパンチから被加工物に力を伝達するステップを含み得る。
【0016】
「インサート軸部」とは、基部からから上方に延びるインサートの実質的に円筒形または管状の部分を意味することが理解されよう。特定の実施形態では、インサート軸部は、テーパ状のインサート表面と接合し得る。インサート軸部が存在するために、リベットとインサートが被加工物に打ち込まれるときに、インサート軸部とリベット軸部の両方が被加工物に力を伝達するように作用する。すなわち、リベット内部のインサート軸部の存在は、特に、被加工物が超高強度材料で構成されている状況において、リベットが被加工物を貫通する前に座屈するのを防ぐのに役立つ。よって、リベットおよびインサートが受ける内部応力が減少し、したがって、リベットおよびインサートを、より強度が低くより延性のある材料で構成することができる。
【0017】
インサート軸部は、インサート空洞を画定するように中空であり得る。本方法は、リベットの頭部が被加工物の上部と同一平面になるときにインサート空洞を潰させるステップを含み得る。
【0018】
インサート空洞は、インサート空洞を画定するようにインサートがリベット内部に受け入れられるときにリベットの頭部に面するインサートの端部に開いていてもよい。インサート軸部が受ける内部応力がインサート材料の降伏強度を超えると、軸部(したがってインサート空洞)は潰れる。これによりリベットの広がりが促進され得る。
【0019】
本方法は、リベットおよびインサートを使用して被加工物の分離部分を形成するように被加工物を完全に貫通する穴を打ち抜いて、穴内にリベットおよびインサートを受け入れるステップをさらに含み得る。
【0020】
打ち抜かれた穴は、被加工物が含む材料層の数にかかわらず、被加工物の上面から被加工物の実質的に全厚を通って被加工物の下面まで延び得る。すなわち、打ち抜かれた穴は、被加工物のすべての層を通って延びる通り穴である。被加工物が複数の層を含む場合、被加工物の層に対応する複数の分離部分が形成され得る(そのような分離部分が被加工物から打ち抜かれている)ことが理解されよう。被加工物を通る穴は、外向きにテーパし得る。これにより、リベットの軸部を広がりやすくすることができる。
【0021】
ダイは、孔と、孔内に受け入れられるプッシュロッドとを備えてもよく、プッシュロッドは孔に対して移動可能であり、孔とプッシュロッドとは、ダイのパンチに面する側に開いた空洞を画定する。本方法は、プッシュロッドおよび被加工物の分離部分を使用して力に対して作用させて、リベットを外向きに広げ、被加工物と連結させるステップをさらに含み得る。
【0022】
被加工物の分離部分は、分離されると、ダイによって画定される孔内に落下し、プッシュロッド上に置かれることが理解されよう。力を加え続けると、インサートおよびリベットが分離部分の上面に押し付けられ、その力によって分離部分がプッシュロッドに押し付けられる。プッシュロッドは、力に抵抗するような位置に保持され、よってリベットが広がる。
【0023】
本方法は、プッシュロッドを、被加工物の下面から被加工物の厚さと等しい量だけ間隔をおいて配置するステップをさらに含み得る。
【0024】
プッシュロッドは被加工物から、被加工物の厚さと等しい量だけ間隔をおいて配置されるので、分離部分が被加工物から打ち抜かれると、分離部分の上面が被加工物の下面とほぼ同じ高さになることが理解されよう。よって、リベットの先端が穴から突出することが妨げられる。しかしながら、被加工物と連結するためには相対的にごくわずかな量の広がりがあればよく、したがって、被加工物は、たとえリベットの先端が被加工物の下に突出しなくても、圧縮状態に保持される。これは、被加工物に形成された穴がテーパ状である場合に特に有効である。
【0025】
ダイは、プッシュロッドを取り囲むスリーブをさらに備えてもよく、スリーブはプッシュロッドに対して移動可能である。本方法は、リベットの先端がダイの側の穴の底部を越えて配置されるように穴内にリベットを受け入れるステップと、プッシュロッドに対して中心軸線に沿ってスリーブを引っ込めて、リベットが広がり、被加工物と連結できるようにするためのリベットの先端に隣接する環状の空洞を設けるステップとをさらに含み得る。
【0026】
リベットとインサートが被加工物に打ち込まれると、スリーブは、ダイの上部と同一平面になるように配置され得る。よって、スリーブの内径は、好ましくは、(穴の底部で測定された)打ち抜かれる穴のサイズに対応するようなサイズとされる。スリーブは、被加工物に伝達された力に対して作用させて、穴の外周を定める。スリーブを引っ込めることにより環状の空洞が生じ、リベットの先端が広がるための空間が提供される。
【0027】
本方法は、プッシュロッドを、被加工物の下面から被加工物の厚さより大きい量だけ間隔をおいて配置するステップを含み得る。
【0028】
よって、リベットとインサートが穴に受け入れられると、リベットの先端は、被加工物の下側から突出することができる。先端が被加工物から突出するので、リベット先端の広がりにより被加工物全体を圧縮状態に保持することができ、連結を形成する広がりが比較的少なくて済む。
【0029】
リベットは、リベット内部を画定する通り穴を備えてもよく、パンチは、中心軸線に沿って互いに対して移動可能な内側部分と外側部分とを備え得る。本方法は、パンチの外側部分をリベットの頭部に押し付け、パンチの内側部分をリベットの通り穴に通し、パンチの内側部分をインサートに押し付けることによって、リベットおよびインサートに力を加えるステップを含み得る。
【0030】
通り穴とは、リベットがその両端で開いているように実質的に中空であることを意味することが理解されよう。よって、パンチの中央部分は通り穴に入り、インサートを支持することができ、パンチの外側部分はリベットの頭部部分に押し付けられる。したがって力は2つの成分として提供され、その一方はリベットに加えられ、その他方はインサートに加えられる。パンチの外側部分と内側部分とを介してリベットとインサートとに加えられる負荷を、材料の接合および形状を最適化するように、異なる駆動機構を使用して互いに独立して変化させることができることが理解されよう。
【0031】
さらに、インサートがインサート軸部を備える場合、軸部の上部はリベット内部でリベットの頭部から軸線方向に間隔を置いて配置され得ることが理解されよう。インサート軸部の上部とリベットの頭部との高さの違いは、リベットが被加工物に打ち込まれるとリベットの頭部がインサート軸部と同一平面になるようにリベットの先端の所望の量の広がりを生じるように選択され得る。
【0032】
被加工物は、接合されるべき少なくとも2つの別々の材料層を含んでいてもよく、本方法は、本方法の第3のステップの前に、被加工物の上層に穴を形成するステップ、を含む。
【0033】
リベットとインサートが被加工物に打ち込まれる前に上層に穴が形成されるので、リベットとインサートを被加工物に打ち込むのに必要な力が減少する。これは、上部材料層が超高強度材料であり、残りの層が比較的低強度である場合に特に有効である。そのような状況では、リベットとインサートとは被加工物を貫通するためにさほど高い負荷に耐える必要がなく、したがって、リベットおよび/またはインサートは、改善された延性を示す低強度の材料から作製され得る。よって、形成後に接合部に残る残留応力が低減され得るので、亀裂の問題が回避される。穴は、例えば、穴開け、打ち抜きなどといった、実質的に任意の適切な方法で形成され得ることが理解されよう。
【0034】
本方法は、パンチを上層に押し付けて上層の分離部分を形成することによって上層に穴を形成するステップを含み得る。
【0035】
上層穴の穴がパンチによって形成されるので、穴を形成するために追加の機械や工具は不要である。
【0036】
パンチはテーパ状のノーズを備え得る。本方法は、パンチのノーズを被加工物の上層に押し付けて上層に穴を打ち抜くステップを含み得る。
【0037】
被加工物の上層にパンチである作成される穴のサイズは、パンチのノーズのサイズに依存することが理解されよう。通常、パンチの直径は、穴の所望のサイズと比較して相対的に大きくなる。よって、パンチのノーズの直径は、パンチの残りの部分の直径よりも小さい。本発明の一実施形態では、これは、単に所望の直径を有するパンチ下側部分を提供することによって達成される。しかしながら、パンチの直径のそのような段階的変化は、パンチの疲労寿命を短くする可能性がある、パンチ自体の内部応力が比較的高い領域をもたらす可能性が高い。パンチにテーパ状のノーズを設けることによって、そのような応力集中が回避され、よってパンチの疲労寿命が向上する。さらに、テーパ状のノーズの形状は、パンチが形成された穴内で詰まるのを防ぐ。本発明のいくつかの実施形態では、ノーズは、正しい直径の代替ノーズを異なる用途に使用できるように交換可能であり得る。
【0038】
本方法は、第4のステップの前に、パンチを使用して被加工物から上層の分離部分を取り除くステップ、を含み得る。
【0039】
分離部分が取り除かれるので、比較的大量のリベットおよびインサートが接合部内で使用され得ることが理解されよう。リベットおよびインサートがより大きいので、それらはより高い力に耐えることができる。分離部分を取り除くステップは、多くの方法で例えば、電磁石、真空システムなどを使用して達成され得る。
【0040】
パンチは、電磁石を備え得る。本方法は、電磁石を励磁して上層の分離部分を引き付けるステップをさらに含み得る。
【0041】
そのような実施形態では、分離部分は、電磁石に引き付けられるように(ただし、分離部分が電磁石と相互作用する実施形態についてのみ)強磁性材料で構成されなければならないことが理解されよう。
【0042】
本方法は、第4のステップの前に、上層の分離部分をそのままにしておくステップ、を含み得る。
【0043】
「分離部分をそのままにしておくこと」とは、形成された後、分離部分が被加工物内の穴から取り除かれず、したがって形成された接合部内に存在することを意味する。これには、分離部分が接合プロセス中にパンチによって加えられた負荷を分散させて、形成された接合部に残る残留応力を低減させ、それによって亀裂の問題を回避するという効果がある。
【0044】
本方法は、パンチとダイとは異なる打ち抜き装置を使用して上層に穴を形成するステップを含み得る。
【0045】
よって、穴は、上層が生産ラインに到着する前に事前に打ち抜かれてもよく、よって生産ラインの時間が節約される。
【0046】
被加工物は、先進高張力鋼または超高張力鋼を含み得る。
【0047】
先進高張力鋼(AHSS)は、550MPaを超える引張強度を有し得る。超高張力鋼(UHSS)は、少なくとも800MPaの引張強度を有し得る。
【0048】
リベットは、最大510Hvまでの硬度を有する材料から形成され得る。
【0049】
このリベット締めの方法は、セルフピアシングリベット締めの方法であり得る。
【0050】
「セルフピアシングリベット締め」とは、リベットが被加工物を貫通するために被加工物に打ち込まれる実質的に任意のリベット締め操作を意味することが理解されよう。
【0051】
本発明の第2の態様によれば、頭部と、頭部から下方に垂下している軸部とを有するリベットであって、軸部が先端で終端し、リベット内部を画定するように中空である、リベットと、基部を有するインサートであって、インサートが、インサートの基部がリベットの先端に隣接して位置するようにリベット内部に少なくとも部分的に受け入れられる、インサートとを備えるリベットアセンブリが提供される。
【0052】
「リベットアセンブリ」とは、組み立てられると、構成要素が(特に被加工物に打ち込まれて接合部を形成するときに)あたかも単一のエンティティであるかのように扱われ得るような嵌合機構を備える個々の構成要素のグループを意味することが理解されよう。個々の構成要素は、組立てられた状態で一緒に供給され得るか、または部品のキットとして組み立てられずに供給され得る。
【0053】
本発明の第1の態様に関して述べたように、リベットおよびインサートが被加工物に打ち込まれるときに、インサートは、リベットのライプ(ripe)を中心軸線から離して偏向させるバリアとして働いて、リベットの先端を半径方向外向きに広げ、被加工物との強力な機械的連結を生じさせる。これは、超高強度材料を含む被加工物をリベット締めするのに特に有用であり、延性が改善されたリベットを使用することが可能になる。さらに、形成された接合のリベット内にインサートが存在することにより、リベットを変形していない状態に戻そうとするリベットの自然な弾性位置エネルギーの一部が吸収される。これらの影響の両方を考慮して、亀裂の問題が回避され、接合部の疲労寿命が改善される。
【0054】
インサートはインサート軸線を画定でき、インサートは、インサート軸線に対して直径が変化するテーパ状のインサート表面をさらに備える。
【0055】
テーパ状のインサート表面の利点は、使用中にリベットおよびインサートが被加工物に打ち込まれるときに、テーパ状のインサート表面がリベットの先端に対するインサートの反力を半径方向外向きに向け、よってリベットをより広がりやすくすることである。
【0056】
リベットはリベット軸線を画定でき、リベットは、リベット軸線に対して直径が変化するテーパ状のリベット表面をさらに備え得る。
【0057】
テーパ状のリベット表面の利点は、リベットとインサートとの間により大きな接触面積を提供して、リベットの先端の広がりを助長することである。
【0058】
インサート軸線とリベット軸線とは、テーパ状のリベット表面がテーパ状のインサート表面に対して押し付けられるように同軸であり得る。
【0059】
テーパ状のインサート表面はテーパ状のリベット表面と同軸であるので、インサートによってリベットに加えられる反力は、リベットの全周で均等である。よって、広がりがより容易で均一である。
【0060】
テーパ状のリベット表面とテーパ状のインサート表面とは、リベット軸線とインサート軸線との方向に対して湾曲していてもよい。
【0061】
「リベット軸線とインサート軸線との方向に対して湾曲している」とは、(リベット軸線とインサート軸線とを中心とするそれらの面の曲率に加えて)リベット軸線とインサート軸線とに沿って取られた断面として見られることを意味することが理解されよう。さらに、テーパ表面の形状は実質的に弓形であり得る。テーパ表面が湾曲しているので、リベットとインサートとの間の反力の方向を、リベットがリベット軸線とインサート軸線とに対して鋭角に広がるように制御することができることが理解されよう。よって、より多くの広がりが助長され、したがって形成される機械的連結がより強力である。
【0062】
リベットのテーパ表面とテーパ状のインサート表面とは、互いに共形であるように成形され得る。
【0063】
「共形」とは、インサートがリベット内に受け入れられるときに、テーパ状のリベット表面とテーパ状のインサート表面とが互いに同一平面になるように、テーパ表面同士が実質的に同一形状を有することを意味することが理解されよう。2つのテーパ表面が共形であるので、広がりを生じさせるために利用可能なリベットとインサートとの間の接触面積が増加し、よって、リベットの広がりがより効率的に促進され、リベットおよびインサートが受ける内部応力が減少する。
【0064】
インサートは、基部から延びるインサート軸部をさらに備えてもよく、インサート軸部はリベット内部に受け入れられる。
【0065】
そのような構成では、リベットの軸部とインサート軸部の両方がパンチから被加工物への力を伝達することができることが理解されよう。よって、より多くの断面積が力を伝達するために利用可能であり、したがって、リベット軸部が受ける内部応力が減少する。したがって、その場合リベットおよびインサートに、より強度が低く、より延性のある材料を使用することができる。
【0066】
インサート軸部は、リベットの頭部の下側を支持し得る。
【0067】
インサート軸部がリベットの頭部の下側を支持し得るので、リベットの頭部に加えられる力が軸部に伝達される。
【0068】
インサートの基部は、リベットの先端を越えて延び得る。
【0069】
リベットの基部は、リベットの先端を越えて軸線方向に延び得る。リベットの基部は、リベットの先端を越えて半径方向に延び得る。
【0070】
リベット内部は、リベットの頭部を通ってリベットの先端まで延びる通り穴であり得る。
【0071】
リベット内部は通り穴であるので、パンチがインサートに直接負荷をかけることができることが理解されよう。さらに、力は、リベットとインサートの両方に別々に加えられてもよく、リベットとインサートとに加えられる力の量は、接合プロセスを最適化するように調整され得る。
【0072】
本発明の第3の態様によれば、パンチと、間にリベットアセンブリおよび被加工物が受け入れられ得るように中心軸線に沿ってパンチから間隔をおいて配置されたダイとを備え、パンチが、リベットとリベット内に少なくとも部分的に受け入れられるインサートとを備えるリベットアセンブリを被加工物に打ち込み、リベットがパンチからの力の作用下で打ち込まれて、ダイおよびインサートが力に対して作用させてリベットを外向きに広げ、被加工物と連結させるように構成されている、リベット締結装置が提供される。
【0073】
リベットアセンブリは、本発明の第2の態様によるリベットアセンブリであり得ることが理解されよう。本発明の第1の態様および第2の態様に関して上記で述べたように、本リベット締結装置は、リベット内に受け入れられるインサートを備えるタイプのリベットアセンブリを被加工物に打ち込むように構成されているので、本リベット締結装置は、亀裂の問題を回避しながら超高強度材料を含む被加工物に接合部を作成することができる。
【0074】
ダイは、孔と、孔内に受け入れられるプッシュロッドとを備えてもよく、プッシュロッドは孔に対して移動可能であり、孔とプッシュロッドとは、ダイのパンチに面する側で開いた空洞を画定し、プッシュロッドは、力に対して作用させてリベットを外向きに広げ、被加工物と連結させるように構成されている。
【0075】
リベットを広げるために、被加工物は、力に対して力のエネルギーを半径方向外向きに向け直すように反作用する物体と接触しなければならないことが理解されよう。本リベット締め装置がプッシュロッドを備える場合、プッシュロッドは、被加工物と接触して力に対して作用させ、リベットを広げることができる。ダイに対するプッシュロッドの位置は、接合される被加工物の厚さおよび材料に応じて、所望の深さの空洞を提供するように制御され得る。
【0076】
ダイは、プッシュロッドを取り囲むスリーブをさらに備えてもよく、スリーブはダイおよびプッシュロッドに対して移動可能であり、スリーブは、プッシュロッドに対して中心軸線に沿って引っ込んで、リベットが広がり、被加工物と連結できるようにするためのリベットの先端に隣接する環状の空洞を提供するように構成されている。
【0077】
スリーブは、中空のスリーブ内部を画定するように、実質的に管状であり得る。特に、スリーブは、スリーブの内径がリベットの軸部の直径よりもわずかに大きくなるようなサイズとされ得る。リベット締めする操作は、リベットおよびインサートを被加工物に完全に打ち込んで、リベットの先端が被加工物の下から突出してスリーブによって囲まれた空間の領域に入るようにすることを含み得る。そのような実施形態では、スリーブの内径は、被加工物に打ち抜かれた穴のサイズを定義する。しかしながら、スリーブは、リベットの先端を拘束し、リベットが広がるのを妨げる。ダイおよびプッシュロッドに対して中心軸線に沿ってスリーブを引っ込めることによって、リベットの先端に隣接する環状領域が露出し、よって、リベットが広がり、被加工物と連結できるようになる。
【0078】
パンチは、中心軸線に沿って互いに対して移動可能な内側部分と外側部分とを備えてもよく、パンチは、パンチの外側部分をリベットの頭部に押し付け、パンチの内側部分をリベットに形成された通り穴を介してインサートに対して押し付けることによってリベットに力を加えるように構成されている。
【0079】
通り穴は、リベット内部を、リベット内部がリベットの両端で開いているように画定し得ることが理解されよう。パンチの内側部分は、リベット内部に入り、インサートと接触することができるようなサイズとされるべきであることが理解されよう。好ましくは、パンチの内側部分は、内側部分とインサートとの間の接触面積を可能な限り最大化すると同時に、リベットと内側部分との間の相対的移動を可能にするようなサイズとされる。
【0080】
パンチは、被加工物の上層に穴を打ち抜いて上層の分離部分を残すように構成されたノーズを備え得る。
【0081】
例えば、被加工物は、接合されるべき少なくとも2つの別々の材料層を含み得る。ノーズのサイズは被加工物に打ち抜かれた穴のサイズを決定し、したがって、ノーズのサイズは、打ち抜かれた穴がリベットの軸部を受け入れるのに十分な大きさになるようにするために、対応するリベット軸部のサイズよりもわずかに大きくなるように選択され得る。
【0082】
ノーズはテーパ状であり得る。
【0083】
ノーズがテーパ状なので、パンチの直径は、パンチがリベットと接触する点に向かって滑らかに減少することが理解されよう。よって、直径が段階的に変化することと関連付けられる望ましくない応力集中が回避される。
【0084】
パンチは、上層の分離部分を引き付けるように構成された電磁石を備え得る。
【0085】
あるいは、パンチは、上層の分離部分を引き付けるように構成された任意の他の適切な手段、例えば、真空システムなどを備えてもよい。パンチが分離部分を引き付けることができるので、分離部分を被加工物から取り除くことができ、したがって、リベットおよびインサートを完成した接合において被加工物の上層と同一平面に置くのに必要な力が少なくて済むことが理解されよう。
【0086】
電磁石は、パンチのノーズに配置され得る。
【0087】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様によるリベットアセンブリのためのインサートが提供される。
【0088】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様に従って形成されたリベット締めされた接合部を備える車両が提供される。
【0089】
本発明の態様の1つの特徴に関連して上記で述べた利点は、同じかまたは同等の特徴を有する本発明の他の態様にも等しく当てはまる。本発明のいずれか1つの態様に関連して上記で述べた任意選択の特徴は、本発明のその他の態様のいずれかと組み合わされ得る。
【0090】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、添付の概略図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1a】本発明の第1の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図1b】本発明の第1の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図1c】本発明の第1の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図2a】本発明の第2の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図2c】本発明の第2の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図3a】本発明の第3の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図3b】本発明の第3の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図3c】本発明の第3の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図4a】本発明の第4の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図4b】本発明の第4の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図4c】本発明の第4の実施形態によるリベット締めプロセスの3つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図5a】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの5つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図5b】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの5つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図5c】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの5つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図5d】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの5つの連続したステップの第4のステップの概略断面図である。
【
図5e】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの5つの連続したステップの第5のステップの概略断面図である。
【
図6a】本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの4つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図6b】本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの4つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図6c】本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの4つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図6d】本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの4つの連続したステップの第4のステップの概略断面図である。
【
図7a】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第1のステップの概略断面図である。
【
図7b】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第2のステップの概略断面図である。
【
図7c】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第3のステップの概略断面図である。
【
図7d】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第4のステップの概略断面図である。
【
図7e】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第5のステップの概略断面図である。
【
図7f】本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第6のステップの概略断面図である。
【
図7g】本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの7つの連続したステップの第7のステップの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下の本発明の特定の実施形態の説明では、すべての実施形態を通じて本発明の同じかまたは対応する特徴を指すのに同様の参照番号が使用される。1つまたは複数の利点がある特徴または特徴のグループに起因する場合、そのような利点は、その特徴または特徴のグループを有する本発明のすべての実施形態に等しく適用可能であることが理解されよう。同様に、特定の特徴または特徴のグループの適切な代替の特徴が実施形態のうちの1つに関連して与えられる場合、そのような代替の特徴は、その特徴または特徴のグループを有する本発明の他の実施形態にも等しく適用可能であることが理解されよう。
【0093】
図1aに、本発明の第1の実施形態によるリベット締めプロセスの第1のステップを示す。中心軸線18に沿って配置されたパンチ4とダイ12とを備えるリベット締結装置1が提供される。パンチ4と被加工物6との間にリベット2が提供される。被加工物6は、上層8と下層10とを備える。被加工物6はダイ12の上方に配置される。ダイ12は、パンチ4の方に面する方向に開いている空洞16を画定する凹面14を備える。空洞16は、リベット2の軸部22の直径と比較して大きい直径を画定している。リベット2、パンチ4、および空洞16は、中心軸線18に沿って軸線方向に整列している。リベット締結装置1は、パンチ4を取り囲むクランプノーズ27をさらに備える。クランプノーズ27は、被加工物6をダイ12に締め付けて、リベット締めプロセス全体を通して被加工物6を所定の位置に保持するように構成されている。
【0094】
リベット2は、実質的に円筒形であり、中空の、頭部20によって一端で閉じられているリベット内部を画定している。軸部22は、頭部20から下方に延びている。頭部20は、円周方向に延びるリップを形成するように中心軸線18に対して軸部22から半径方向外向きに延びている。軸部22は、実質的に中空のシリンダであり、リベット内部を画定している。頭部20の反対側の軸部22の遠端が、リベット2の先端23を画定している。先端23は、軸部22の残りの部分の厚さと比較して相対的に狭い。先端23に隣接する軸部22の半径方向の内面が、中心軸線18に対して直径が増加するテーパ状のリベット表面25を画定する。すなわち、テーパ状のリベット表面25の直径は、軸部22と接するところでは軸部22の内径と同じであり、先端23に最も近い位置ではより広い。本発明の文脈では、テーパ表面とは、中心軸線18に対して直径が変化する表面を意味し、その表面が平面または円錐形状である必要はないことが理解されよう。本実施形態では、テーパ状のリベット表面25は、軸部22と先端23との内筒壁間で中心軸線18に対して軸線方向に湾曲している。しかしながら、代替の実施形態では、テーパ状のリベット表面25は、中心軸線18に対して直径が変化する実質的に任意の形状を有してもよく、例えば円錐形であってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、リベット2の先端23は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/132194号で開示されているリベット構造のように、実質的に平面の環状面および/またはフィレット部分を画定し得る。
【0095】
リベット2の中空領域内に実質的に円筒形のインサート24が配置されている。インサート24は、基部26と、基部26から上方に延びる軸部28とを備える(これらを以後、インサート基部26およびインサート軸部28と呼ぶ)。インサート軸部28はインサート空洞29を画定する。インサート24は、リベット締結装置1の中心軸線18と実質的に同軸である軸を有する。インサート24の形状は、リベット2の軸部22の内部形状と実質的に一致するようなものである。よって、インサート軸部28の外径は、リベット2の軸部22の内径とほぼ同じ直径である(ただし、リベット2内のインサート24の差込みを可能にするようにわずかに狭い)。インサート基部26は、リベット2の軸部22の外径よりも大きい外径を有する。インサート基部26は、インサート基部26がリベット2の前に被加工物6と接触するように、軸線方向にリベット2の先端23を越えて延びる。
【0096】
インサート軸部28の上面は、リベット頭部20に作用する力がインサート軸部28に直接伝わるように、リベット2の頭部20を支持している。インサート軸部28とインサート基部26とは、リベット2のテーパ状のリベット表面25と形状が一致するテーパ状のインサート表面30で連結されている。すなわち、テーパ状のインサート表面30もまた中心軸線18の方向に湾曲しており、基部26でより広くなるように成形されている。特に、テーパ状のインサート表面30の曲率は、リベット2のテーパ状のリベット表面25の曲率と、2つが嵌合関係において互いに同一平面に適合するように実質的に一致する。代替の実施形態では、テーパ状のインサート表面30は、中心軸線18に対して直径が変化する実質的に任意の形状を有してもよく、例えば円錐形であってもよいことが理解されよう。
【0097】
いくつかの実施形態では、インサート24は、リベット2の内部の形状と一致するように(例えば、リベット2とインサート24とのテーパ表面が一致しているように)特に設計され得る。しかしながら、他の実施形態では、インサート24自体リベット2より小さいサイズの、単に、中心軸線18に沿って逆向きに(すなわち、「逆さま」になるように)リベット2の中空領域に差し込まれるセルフピアシングリベットであり得る。
【0098】
インサート24は、例えば、摩擦(すなわち、圧入)によってリベット2内に保持され得る。リベット2は、防食コーティングを施され得る。防食コーティングは、リベットとインサートとの間の接着力を提供するのに役立ち得る。インサート24も防食コーティングを施されてもよいが、
図1に示されている実施形態では、インサートは接合部が形成された後で完全に封入されることになるので、インサートに防食コーティングがなくてもよい。
【0099】
図1bに、本発明の第1の実施形態のリベット締めプロセスの第2のステップを示す。使用中に、パンチ4は、中心軸線18に沿ってリベット2に、リベット2およびインサート24を被加工物6に打ち込むのに十分な力を加える。これは、任意の適切な方法で達成されてもよい。1つの適切な構成では、締結装置1は、フライホイールと、フライホイールの回転移動に応答してパンチ4の直線移動を生じさせるように構成されたリンク機構とを備える。フライホイールは、フライホイールの回転エネルギーを中心軸線18に沿って向けられる力Fに伝達するように、クラッチを介して選択的に係合可能である。代替の配置では、電動機または油圧アクチュエータがパンチ4を被加工物に直接(すなわち、フライホイールおよびリンク機構を使用せずに)打ち込んでもよい。
【0100】
力Fは、リベット2およびインサート4をダイ12の方へ押して、上層8に穴を開けて下層10を降伏させる。特に、力Fの作用により、上層8内に上層穴31が形成され、上層8の分離部分32(別名スラグとして知られている)がインサート24と下層10との間に閉じ込められたままになる。力Fにより、被加工物の下層10がダイ12の凹面14と接触する。凹面14は、力Fに対して作用させ、中心軸線18の方向の下層10のさらなる移動を妨げる。これにより下層10が凹面14に対して圧縮され、下層10が中心軸線18に対して半径方向外向きに広がる。
【0101】
インサート基部26は、リベット2の軸部22が被加工物に差し込まれるときに軸部22を保護する。すなわち、被加工物の上層8に力を加え、上層8を切断するのは基部26である。従来の配置では、インサートが存在せず、リベット軸部22の下端は被加工物の上層に力を加え、上層に食い込む。しかしながら、被加工物がAHSSやUHSSなどの材料から形成されている場合には、リベット軸部に上層を貫通するのに十分な強度がなく、むしろ座屈する可能性がある。そのような座屈を回避するためにより厚いリベット軸部が使用される場合には、リベット軸部が厚すぎて十分に広がらず、よって被加工物において十分に強力な連結を形成できない可能性がある。これらの問題は、上記のように、インサートが上層を貫通し、リベット軸部を保護するので、本発明によって回避される。
【0102】
図1cに、本発明の第1の実施形態のリベット締めプロセスの第3のステップを示す。
図1bに示されている位置から、パンチ4はリベット2およびインサート24が
図1cに示されている位置に到達するまで、リベット2およびインサート24をダイ12に対して打ち込み続ける。インサート基部26は、下部被加工物層10および上部被加工物層8のスラグ32が存在するためにそれ以上ダイの方に移動できない。代わりに、インサート24に加えられた下向きの力の結果として、インサートは潰れる。リベット頭部20は、パンチ4によって加えられた力のために下方に移動し続ける。インサート24が潰れた結果として、リベット2の軸部22が外向きに広がる。すなわち、リベット2のテーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30とが互いに支持し合って、リベット2の先端23を外向きに広げる。この広がりにより、リベット軸部22が被加工物6の下層10を部分的に貫通し、リベット2と被加工物8、10との間の良好な連結が提供される。被加工物6の上層8および下層10は、リベット2の先端23と頭部20との間に圧縮されて保持される。リベット2によって形成された連結は耐食性であり得る。
【0103】
ダイ12の凹面14は、中心軸線18の方向の被加工物6の下層10のさらなる移動を妨げ続け、したがって、下層10は、空洞16の残りの部分に半径方向外向きに広がる。インサート頭部26は、スラグ32と組み合わさって、スラグの下方の下層10の部分が所望の厚さを有するようにするのに役立つ平面を提供する。例えば、スラグ32の下方への移動がインサート頭部26によって十分に制御されるので、下層10の偶発的な貫通が回避される。
【0104】
インサート軸部28の寸法、例えば、インサート空洞29の直径や深さは、特定の負荷がリベットに加えられたときにインサート軸部が潰れるように選択され得る。リベットを被加工物に差し込むのに必要な力は、リベットの差込みが進むにつれて増加する。よって、インサート24は、リベット差込みプロセスの初期部分に耐えるのに十分な強度を有し得るが、リベット差込みプロセスが進むにつれて潰れる。インサート24の潰れが望ましいのは、リベット軸部22の広がりを促進するからである。好ましくは、インサート24は、インサートが上部被加工物層8を貫通した後に潰れる。下部被加工物層10が薄くなってその最終位置まで達した後でインサート24が潰れることが望ましい場合もある。インサート24が早く潰れた場合には、材料を下部被加工物層10から外側に望ましくない状態で引きずる可能性がある。
【0105】
上記のリベット締め操作は、上層8が、AHSSやUHSSなどの高強度材料で構成されており、下層10がアルミニウムなどの軟らかい材料で構成されている被加工物を接合するのに特に適する。一例では、上層8は(例えば、厚さ1.5mmの)UHSSであり、下層10は(例えば、厚さ2mmの)5000または6000シリーズのアルミニウムであり得る。
【0106】
先行技術のリベット締め方法(例えば、インサート24を使用しない方法)では、力全体がリベットの軸部を介して被加工物に伝達される。この力は、上層がAHSSやUHSSなどの高強度材料で形成されている場合には大きくなければならない。軸部22はしたがって、きわめて高い内部応力を受けることが理解されよう。ゆえに、リベットは、座屈しないように硬化物で作られている。しかしながら、そのような硬度が高い材料を有するリベットは、通常、延性が乏しく、一度変形すると比較的高い内部応力を保持する。上記のように、リベット(および/または被加工物)2に内部応力が残る場合、これは、接合部を構造的に弱め、かつ/または接合部を腐食に対して脆弱にする亀裂の形成につながり得る。加えて、延性が乏しいリベットは、被加工物との強力な連結を提供するように十分に広がらない。
【0107】
本発明は、先行技術に優る様々な改善を提供する。リベット2のテーパ状のリベット表面25とインサート24のテーパ状のインサート表面30との相対的な形状は、リベット2の先端23の広がりを助長する。そのような広がりは、リベット2のテーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30とが湾曲している(またインサートが凹面を有する)場合に最も良く達成されることが分かっている。しかしながら、代替の実施形態では、テーパ表面25、30は、他の形状を画定していてもよい(例えば、テーパ表面25、30は、円錐台状などのような、平坦な面であってもよい)。インサート24がリベット2の広がりを促進するので、高強度だが低延性の金属がリベット2に使用されている場合、リベット締めプロセスはそれでもなお、機械的連結を作成するのに十分なリベット先端23の広がりを生じさせることができる。さらに、インサート24が完成した接合部内に残っているので、インサート24は、リベット先端23のその変形していない位置に戻ろうとする傾向(弾性跳ね返りとして知られている効果)に抵抗することができる。したがってリベット24は、リベット2が受ける内部圧縮応力の多くを吸収し、よって亀裂の問題を軽減する。
【0108】
加えて、インサート基部26は、リベット軸部22を保護し、ゆえにリベットは、リベット軸部の座屈なしでより延性のある材料から形成され得る。好ましくは、インサート24は、リベット2よりも硬い材料から形成され、よってリベットは被加工物を貫通し、リベットを変形させる。リベット2は比較的延性のある材料で作られ得るため、リベット2の外向きの広がりによって高い残留応力が生じなくなり、したがって、亀裂の問題が回避される。インサート24は、例えば、555Hv以上の硬度、または575Hv以上の硬度を有する材料から形成され得る。リベット2は、例えば、例えば400Hv~510Hvの硬度を有する材料から形成され得る。リベットを形成するために使用され得る材料の例が、35B2(ホウ素を用いた鋼)や36MnB4(マンガンおよびホウ素用いた鋼)である。他の材料も使用され得る。一般に、インサート24は金属から形成されてもよく、リベット2は金属から形成されてもよい。
【0109】
リベット2の広がりがインサート24の存在によって支援されるので、ダイは、リベット2の先端23の広がりを助長するように構成された特別な形状を備えなくてもよいことが理解されよう。よって、ダイは、凹面14のような単純な凹部分を備え得るか、または完全に平坦でさえあり得る。さらに、インサート24の存在によってリベットが広がるので、凹面14の深さを非常に浅くすることができる。例えば、ダイの凹部分は2mm以下であり得る。いくつかの実施形態では、ダイに凹部がない場合がある。ダイが浅いと、より延性の低い材料を接合するときに材料の流れが少なくて済むので有効である。
【0110】
リベット2は、例えば直径7.75mmの頭部と、例えば直径5.1、5.3または5.5mmの軸部とを有する従来のリベットであってもよい。軸部22内の空洞29は、例えば、直径3.5mmであり得る。インサート24は、例えば、3.5mmのインサート軸部28を有し得る。軸部22内の空洞29と同じ直径のインサート24を提供することにより、インサートが押込み嵌めと係合して空洞に入り、空洞内に保持され、リベットの被加工物への差込みの前に脱落しないようにすることができる。一般に、リベット軸部22内の空洞29と同じ直径のインサート軸部28を提供することにより、望ましくは、空洞内のインサートの押込み嵌めが可能になり得る。
【0111】
上層8は「超高強度」材料で構成され得るが、本発明の代替の実施形態では、上層8と下層10とは、セルフピアシングリベット締めプロセスを使用して接合することができる実質的に任意の適切な材料で構成され得る(上記の材料の例に限定されなくてもよい)ことが理解されよう。
【0112】
一般に、上記その他の実施形態では、インサートは、被加工物の上層の穿孔中にリベット脚部の最下端を保護する。加えて、インサートは、リベットの軸部を制御された方法で広げる(広がりはインサートの形状に従う)。本発明がないと、リベット軸部は、被加工物の上層を穿孔することなく折れたり、方へ曲がったりしがちになる。インサートを介して被加工物の上層に穿孔負荷が加えられる。好適には、本発明の実施形態は、(インサートによって提供される支持により)AHSSやUHSSの上部被加工物層を貫通するのに十分な強度を有し、所望の方法で広がるのに十分な延性がある(広がりがインサートによって制御される)リベットが使用されることを可能にする。
【0113】
本発明の実施形態の1つの利点は、従来のリベットが、AHSSやUHSSを含む被加工物において接合部を形成するために使用されることを可能にすることである。これにより、特殊なリベットを製作する必要が回避される。
【0114】
図1a~
図1cに示されている被加工物は2層からなるが、被加工物は3層以上の層からなっていてもよい。一般に、本発明の実施形態は、2つ以上の層を含む被加工物に接合部を形成するために使用され得る。
【0115】
図2aに、本発明によるリベット締めプロセスの第2の実施形態の第1のステップを示す。本発明の第2の実施形態は、ダイ12がスリーブ36とスリーブ36内に配置されたプッシュロッド38とを有する孔34を備えるという点で第1の実施形態と異なる。スリーブ36は実質的に中空のシリンダであり、プッシュロッド38は、スリーブ36の内側と同一平面に適合するように直径が増加した上部分を有する細長い中実のシリンダである(ただし、プッシュロッド38は実質的に一定の直径のものであり得ることが理解されよう)。スリーブ36の内径はリベット2の軸部22の外径よりも適切な隙間だけ大きい。孔34と、スリーブ36と、プッシュロッド38とは、中心軸線18に対して同心円状に整列している。スリーブ36とプッシュロッド38とは、互い同士と孔34とに対して別々に移動可能であるように構成されている。スリーブ36およびプッシュロッド38の位置を、例えば、油圧、空気圧、親ねじなどといった任意の適切な制御機構を使用して制御することができる。スリーブ36およびプッシュロッド38に適した制御機構は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/063022号および国際公開第2012/063023号に開示されているタイプのものであり得る。第2の実施形態の第1のステップでは、スリーブ36がダイ12の上部と同一平面になるように配置され、プッシュロッド34が空洞16を画定するようにダイ12の上部から軸線方向に間隔をおいて配置される。
【0116】
図1の実施形態と同様に、インサート24がリベット2内に設けられている。インサート24は、例えば、摩擦(すなわち、圧入)によってリベット2内に保持され得る。リベット2は、防食コーティングを施され得る。インサート24も防食コーティングを施され得る。これは、接合部が形成された後にインサートが露出されることになるので有効であり得る。防食コーティングは、リベットとインサートとの間の接着力を提供するのに役立ち得る。
【0117】
図2bに、本発明の第2の実施形態のリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ4が力Fの作用下でダイ12の方へ中心軸線18に沿って打ち込まれる。これにより、リベット2およびインサート24が被加工物6の上層8および下層10に穴を開けて、リベット2の先端23およびインサート24の基部26が下層10の底面の下方に突出する。特に、力Fにより、上層8と下層10の両方を貫通する通り穴40が形成され、上層8の分離部分32および下層10の分離部分42が残る。リベット2およびインサート24は、下層の分離部分42がプッシュロッド38と接触して空洞16を埋めるまで、中心軸線18に沿って打ち込まれる。
【0118】
図2cに、本発明の第2の実施形態のリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、スリーブ38の上部が上層8の分離部分32と同一平面(またはその下)になるように、スリーブ36が中心軸線18に沿って引っ込められる。これにより空洞16が再び開いて、孔34内でリベット2の先端23の周りに円周方向に延びる環状の形状になる。力Fはリベット2およびインサート24を中心軸線18に沿って押し続けるが、この方向のリベット2およびインサート24のさらなる移動は、上層8の分離部分32の存在によって妨げられる。よって、リベット2は、中心軸線18から空洞16内へ半径方向外向きに広がり始める。特に、第1の実施形態に関して上述したように、リベット2のテーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30とが互いに支持し合って、リベット2の先端23を外向きに、空洞16内へ広げる。外向きの広がりにより、被加工物6の上層8および下層10がリベット2の先端23と頭部20との間に圧縮状態で保持され、それによって被加工物6の上層8と下層10との分離を防ぐ機械的連結が形成される。力Fを加え続けることにより、(
図2cに示されるように)インサート軸部28が座屈する。
【0119】
通り穴40は被加工物6の上層8と下層10の両方を完全に貫通するので、リベット2は、(第1の実施形態の場合のような、下層10の一部のみとは対照的に)下層10の全厚を圧縮状態で保持することができることが理解されよう。よって、第2の実施形態のリベット2の先端23が受ける広がりの程度は、一度変形すると、先端23の外径が通り穴40の内径よりも少量だけ広くなって連結を形成するようにするのに十分でありさえすればよい。連結は、例えば、0.1mm~0.5mmであり得る。リベット2は連結を形成するために大きく変形される必要がないので、これは、変形後にリベット2および被加工物6に残る残留応力が低減され、したがって亀裂の問題が回避されることを意味する。
【0120】
図2cに示されるステップの後、パンチ4は引っ込められ、完全に接合された被加工物6を取り外すことができる。スリーブ36およびプッシュロッド38は次いで、上層8の分離部分32と下層10の分離部分42とを孔34から排出して次のリベット締め操作に備えるように、上方へ作動されてダイ12から出る。分離部分32、42は、(使用される材料に応じて)例えば、圧縮空気銃や電磁石を使用することによるなど、任意の適切な方法で取り除かれ得る。
【0121】
図3aに、本発明によるリベット締めプロセスの第3の実施形態の第1のステップを示す。第3の実施形態は、スリーブの使用を必要としないという点で第2の実施形態と異なる。よって、ダイ12は、その内部でプッシュロッド38が中心軸線18に沿って移動可能な孔34を備える。孔34は、適切な隙間だけ、例えば、少なくとも0.5mm、例えば、1mm以上、例えば、最大2mmまで、リベット2の軸部22の直径より大きい直径を有する。プッシュロッドは、孔34の壁と同一平面に適合するように直径が増加した上部分を有する細長い中実のシリンダである(ただし、代替の実施形態では、プッシュロッド38は実質的に一定の直径のものであってもよいことが理解されよう)。プッシュロッド38は、空洞16を画定するようにダイ12の上部から間隔をおいて配置されている。
【0122】
図2の実施形態と同様に、インサート24がリベット2内に設けられている。インサート24は、例えば、摩擦(すなわち、圧入)によってリベット2内に保持され得る。リベット2は、防食コーティングを施され得る。インサート24も防食コーティングを施され得る。これは、接合部が形成された後にインサートが露出されることになるので有効であり得る。防食コーティングは、リベットとインサートとの間の接着力を提供するのに役立ち得る。
【0123】
図3bに、本発明の第3の実施形態のリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ4が力Fの作用下でダイ12の方へ中心軸線18に沿って打ち込まれる。これにより、リベット2およびインサート24が被加工物6の上層8および下層10に穴を開けて、インサート24の基部26が下層10の底面と同じ高さになる。特に、力Fにより、上層8と下層10の両方を貫通する通り穴40が形成され、上層8の分離部分32および下層10の分離部分42が残る。孔34はリベット2の軸部22の外径よりも適切な隙間だけ大きいにすぎないので、インサート24の基部26を直接取り囲む領域における被加工物6の上下層8、10の材料の変形が制限される(隙間が大きすぎる場合には、下層は孔の内側に折れ、材料を孔に引きずり込むことになる)。
【0124】
下層10は、ダイ12および孔34に当たって底部で穿孔され、上部シートは、インサート24の基部26によって穿孔される。通り穴40は、ダイ12の孔34とインサート24の基部26との直径が異なるので、結果としてテーパ状になる。これは、リベット軸部に隣接する多少のスペースを残し、軸部が広がり、所望の連結を提供するのがずっと容易になるので、有益である。
【0125】
図3cに、本発明の第3の実施形態のリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、パンチ4は、リベット2およびインサート24を上層8の分離部分32に押し付け続ける。しかしながら、通り穴40のテーパ状の側面により、リベット2の先端23は、半径方向外向きに広がって、被加工物6との連結を形成することができる。特に、テーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30とは互いに支持しあって、先端23を中心軸線18に対して半径方向外向きに広げる。力Fを加え続けることにより、(
図3cに示されるように)インサート軸部28が座屈する。
【0126】
図3cに示されるステップの後、パンチ4は引っ込められて完全に接合された被加工物6から離れる。プッシュロッド38は次いで、上層8の分離部分32と下層10の分離部分42とを孔34から排出して次のリベット締め操作に備えるように作動される。分離部分32、42は、(使用される材料に応じて)例えば、圧縮空気銃や電磁石を使用することによるなど、任意の適切な方法で取り除かれ得る。
【0127】
図4aに、本発明によるリベット締めプロセスの第4の実施形態の第1のステップを示す。第4の実施形態は、リベット2を両端で開いたままにするように(リベットが実質的に管状になるように)、リベット2の中空領域がリベット2の頭部20を通って先端23まで延びる通り穴であるという点で第1の実施形態と異なる。さらに、第4の実施形態のパンチ4は、中心軸線18に対して同心円状に配置されている外側部分44と内側部分46とを備える。パンチ4の外側部分44と内側部分46とは、互いに対して中心軸線18に沿って独立して並進可能である。外側部分44は、内側部分46が受け入れられる実質的に中空のシリンダで形成されている。内側部分46は実質的に円筒形であり、外側部分44の内壁と同一平面に適合するサイズである。第1のステップでは、クランプノーズ27は被加工物6をダイ12に対して所定の位置に保持し、リベット2およびインサート24はクランプノーズ27内に収容される。クランプノーズ27の使用により、パンチ4の外側部分44と内側部分46とは、力Fが加えられる前にリベット2およびインサート24と接触する必要がない。いくつかの実施形態では、パンチ4の外側部分44は、リベット2、インサート24および被加工物6を、パンチ4とダイ12との間の位置に保持するように、リベット2の頭部部分20と接触する。
【0128】
図4bに、本発明の第4の実施形態のリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ4の内側部分46が、インサート24のインサート軸部28の上部と接触するように下方に移動している。よって、パンチ4の内側部分46の最下部点が外側部分44よりもダイ12に近い。これは、インサート24とリベット2との間の高さの違いを考慮に入れるためである。本発明の第4の実施形態は、したがって、インサート24の様々な異なる高さに耐えることができる(ただし、いくつかの実施形態では、インサート24とリベット2とは実質的に同一の高さを有し得ることが理解されよう)。パンチ4の外側部分44と内側部分46とは、その場合、力Fの作用下で中心軸線18に沿ってダイ12の方向に同時に押し付けられる。これにより、リベット2とインサート24とが被加工物6の上層8に穴を開けて、上層8内に上層穴31を形成する。これにより、下層10とインサート24との間で圧縮される上層8の分離部分32が形成される。下層10は、ダイ12の凹面14と接触するように変形される。
【0129】
図4cに、本発明の第4の実施形態のリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、リベット2およびインサート24は、力Fの作用下でダイ12の方へ打ち込まれ続ける。ダイ12の凹面14は、中心軸線18の方向の被加工物6の下層10のさらなる移動を妨げ、結果として下層10は、中心軸線18に対して半径方向外向きに、空洞16の残りの部分に広がるよう強いられる。インサート24の上部が上層10の上面と同一平面になると、パンチ4の内側部分46の移動が停止され、他方リベット2はダイ12の方へ押し付けられ続ける。テーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30とは互いに支持しあって先端23を中心軸線18に対して半径方向外向きに広げるので、リベット2は被加工物6の下層10を部分的に貫通する。リベット2の外向きの広がりにより、被加工物8の上層8と下層10との分離を防ぐ機械的連結が形成される。代替の実施形態では、パンチ4の外側部分44と内側部分46とは、
図4cに示されている位置に同時に到達するように(すなわち、内側部分に対して外側部分44が移動する前にリベット24が被加工物6の上層10と同一平面になるまで待つ必要がないように)構成され得るパンチ4の内側部分46と外側部分44とは一緒に下降する(すなわち、同じ速度で移動する)。パンチ4の内側部分46は、下降する際にパンチの外側部分44を越えて突出し得るので、パンチの内側部分は、パンチの外側部分がリベット2に入射する前にインサート24に入射する。結果として、被加工物6内へのインサート24の移動は、被加工物内へのリベット2の移動の前に開始することになる。
【0130】
パンチ4の外側部分44と内側部分46とは、それぞれ、リベット2とインサート24とに負荷を加えることができることが理解されよう。よって、リベット2とインサート24とに加えられる負荷は、リベット2またはインサート24のどちらかが受ける内部応力が臨界値未満に留まるように、異なるように選択され得る。これにより、リベット締めプロセス内で様々な材料を使用するためのより大きな可撓性が提供される。
【0131】
図5aに、本発明によるリベット締めプロセスの第5の実施形態の第1のステップを示す。第5の実施形態は、主に、リベット2およびインサート24が接合のために与えられる前に上層8に穴が事前に打ち抜かれるという点で、本発明の前の実施形態と異なる。第5の実施形態のパンチ4は、その端部に配置された電磁石50を有するテーパ状のノーズ48を備える。電磁石50は、ばね51によってパンチ4に連結されている。第1のステップでは、被加工物6がクランプノーズ27によってダイ12に締め付けられる。
【0132】
図5bに、本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ4が、打ち抜き力Pの作用下でダイ12に向かって被加工物6の上層8に押し付けられる。打ち抜き力Pは、例えば、フライホイールとクラッチの構成を使用するなど、その他の実施形態に関して説明された力Fと同じ方法で生成される。打ち抜き力Pは、通常、それが衝撃を生じるような短い持続時間を有する。衝撃は、パンチ4のノーズ48に、上層8に上層穴31を打ち抜いて分離部分32を残すように被加工物6の上層8に穴を開けさせるのに十分なものである。あるいは、打ち抜き力Pは、(衝撃ではないように)徐々に加えられてもよい。ノーズ48の終端の直径は、上層穴31が、一度形成されると、(後述する)リベットの軸部22を受け入れることができるのに十分な広さになるように選択される。同時に、被加工物6の下層10は、ダイ12の凹面14と接触するように変形される。パンチ48のテーパ形状は、形成された後にパンチ48が上層穴31に詰まるのを防ぐ。またパンチ48のテーパ形状により上層が下方に曲がる。これにより、上層に後でリベットを受け入れることができるリベット頭部形状が設けられる。これは、リベット頭部がその場合上層からの跳ね返り負荷を受けないので有効である(跳ね返り負荷は、上層がUHSSなどの低延性材料から形成されている場合、大きくなる可能性がある)。
【0133】
図5cに、本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、電磁石50が作動されて、上層8の分離部分32を電磁石50に磁気的に固定する。よって、上層8は、例えば鋼(マルテンサイト鋼、AHSS、UHSSなど)などの強磁性材料で構成されている。パンチ4は次いで、ノーズ48と分離部分32とが上層穴31から離れるように、中心軸線18に沿ってダイ12から移動される。電磁石は次いで、分離部分32を、例えば手で、ブロワ、機械的グリッパ、二次電磁石などを使用して取り外せるように電源を切られる。
【0134】
図5dに、本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの第4のステップを示す。第4のステップでは、分離部分がパンチ4から取り外され、リベット2およびインサート24で置き換えられる。リベット2は、電磁石50を再作動させてリベット2がパンチ4のノーズ48に機械的に固定されるようにすることによって所定の位置に保持される。インサート24は、単一のアセンブリとしてリベット2と共に供給され、インサート24はリベット2の先端23によって受け入れられている。前の実施形態のインサートとは異なり、
図5dに示されているインサート24は、インサート軸部を備えず、代わりに基部26およびテーパ状のインサート表面30のみを備える。テーパ状のインサート表面30は、テーパ状のリベット表面25と形状が一致するように成形されている。いくつかの実施形態では、電磁石は、磁力だけでリベット2とインサート24の両方を保持することができるほど十分に強力である。しかしながら、これは本発明の第5の実施形態の本質的な要件ではなく、他の実施形態では、インサートは摩擦(すなわち圧入)および/または接着剤の使用によって所定の位置に保持され得ることが理解されよう。さらに別の代替の実施形態では、リベット2およびインサート24は、単に上層穴31に別々に差し込まれるだけでもよく、最初にパンチ4に対して保持されない。リベット2および/またはインサート24は、防食コーティングを施され得る。防食コーティングは、リベットとインサートとの間の接着力を提供するのに役立ち得る。
【0135】
図5eに、本発明の第5の実施形態によるリベット締めプロセスの第5のステップを示す。第5のステップでは、リベット2およびインサート24が上層穴31に下ろされ、力Fの作用下で下層10に押し付けられる。上記のように、上層穴31の直径は、リベット2の軸部22を受け入れることができるのに十分な大きさである。ダイ12の凹面14は、ダイ12の方への中心軸線18に沿ったリベット2およびインサート24のさらなる移動を妨げる。力Fを加え続けることにより、テーパ状のリベット表面25およびテーパ状のインサート表面30が互いに支持し合う。テーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30との共形形状により、リベット2の先端23が中心軸線18に対して半径方向外向きに広がり、被加工物6の下層10を部分的に貫通する。先端23の半径方向の広がりは、上層8を部分的に削り落として、被加工物6の上層8と下層10との分離を防ぐ機械的連結が得られるように、上層穴31の直径よりも大きい。
【0136】
リベット2およびインサート24が接合するために与えられる前に上層8がパンチ4によって事前に打ち抜かれるので、リベット2自体とは対照的に、パンチ4のみが被加工物6の上層8に穴を開けるのに十分な力に耐えることができればよい。第5の実施形態の力Fは、より強力な上層8が打ち抜き力Pの印加下でドライバによってすでに打ち抜かれているので、したがって、前の実施形態の同等の力よりも小さくてもよい。リベット2およびインサート24は、打ち抜き力Pではなく、力Fに耐えられさえすればよい。したがって、リベット2またはインサート24が、上層8を打ち抜くことと関連付けられる高い内部応力に耐えるのに十分な強度の超高強度材料から作られる必要はない(上層8は、UHSSなどの超高強度材料から作られている)。よって、より強度が低くより延性のある材料をリベット2およびインサート24に使用することができ、よって導入部で述べた残留応力や亀裂の問題が回避される。
【0137】
さらに、上層8を事前に打ち抜くことは、リベット2がより低い内部応力を受け、したがって、潰れるのを防ぐためのインサート軸部の支持を必要としないことを意味する。インサート24は、したがって、リベット2の先端23の広がりを生じさせるテーパ状のインサート表面30のみを備えてもよい(軸部を備えなくてもよい)。上記にもかかわらず、本発明の代替の実施形態では、インサート24は、本発明の前の実施形態に関して上述したのと同様に働くインサート軸部を備えてもよいことが理解されよう。これは、軸部部分が下層10を貫通する際にリベット2を支持することになるため、下層10も超高強度材料で構成されている場合に特に有効であり得る。
【0138】
本発明の代替の実施形態では、上層8、リベット2および/またはインサート24は、非強磁性材料から作られていてもよいことが理解されよう。そのような実施形態では、電磁石50は、磁気に依拠しない、分離部分32および/またはリベット2をパンチ4のノーズ48に保持するように構成された同等のシステムで置き換えられてもよい。例えば、電磁石50を、真空ポートなどで置き換えることもできる。
【0139】
図6aに、本発明によるリベット締めプロセスの第6の実施形態の第1のステップを示す。本発明の第5の実施形態と共通して、第6の実施形態では上層8がパンチ4によって事前に打ち抜かれる。しかしながら、本発明の第6の実施形態は、分離部分32が完成した接合部に残っている点で第5の実施形態とは異なる。
図6aに示されているように、パンチ4は、テーパ状の前端48を備えるが、(第5の実施形態の電磁石のような)上層8の分離部分を引き付けるための手段を含まない。第1のステップでは、上層8と下層10とは、クランプノーズ27の作用下でダイ12に対して保持されている。パンチ4の前端48のテーパ形状は、形成された後にパンチが上層穴31に詰まるのを防ぐ。またパンチ48のテーパ形状により上層が下方に曲がる。これにより、上層に後でリベットを受け入れることができるリベット頭部形状が設けられる。これは、リベット頭部がその場合上層からの跳ね返り負荷を受けないので有効である(跳ね返り負荷は、上層がUHSSなどの低延性材料から形成されている場合、大きくなる可能性がある)。
【0140】
図6bに、本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ4が、打ち抜き力Pの作用下でダイ12に向かって被加工物6の上層8に押し付けられる。打ち抜き力Pは、本発明の第5の実施形態に関する上記の説明に従って生成されてもよく、被加工物6に衝撃を与え得る。打ち抜き力Pは、パンチ4の前端48に、上層8に上層穴31を形成して分離部分32を残すように被加工物6の上層8をせん断させるのに十分なものである。前端48の終端の直径は、上層穴31が、一度形成されると、(後述する)リベットの軸部22を受け入れることができるのに十分な広さになるように選択される。同時に、被加工物6の下層10は、ダイ12の凹面14と接触するように変形される。
【0141】
図6cに、本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、パンチ4がダイ12から離れるように中心軸線18に沿って引っ込められる。リベット2およびインサート24は、次いで、例えば、電磁石(図示されていない)、接着剤などを使用して、パンチ4の前端48に取り付けられ得る。あるいは、リベット2およびインサート24は、最初にパンチ4に対して保持されずに単に上層穴31に差し込まれるだけでもよい。
【0142】
図6dに、本発明の第6の実施形態によるリベット締めプロセスの第4のステップを示す。第4のステップでは、リベット2およびインサート24が上層穴31に下ろされ、力Fの作用下で下層10に押し付けられる。ダイ12の凹面14は、ダイ12の方への中心軸線18に沿ったリベット2およびインサート24の移動に対して作用する。力Fを加え続けることにより、テーパ状のリベット表面25およびテーパ状のインサート表面30が互いに支持し合い、リベット2の先端23が中心軸線18に対して半径方向外向きに広がって、被加工物6の下層10を部分的に貫通する。先端23の半径方向の広がりは、上層8を部分的に削り落として、被加工物6の上層8と下層10との分離を防ぐ機械的連結が得られるように、上層穴31の直径よりも大きい。
【0143】
上層8の分離部分32が接合部から取り除かれないので、本発明の第6の実施形態のリベット締めプロセスは、分離部分32を廃棄する必要がないという点で時間と費用を節約する。
【0144】
本発明の第6の実施形態は修正され得ることが理解されよう。例えば、必要に応じて、追加の強度を提供するために、
図6aから
図6dに示されるインサート24の代わりに軸部を含むインサートが使用されてもよい。
【0145】
図7aに、本発明によるリベット締めプロセスの第7の実施形態の第1のステップを示す。第7の実施形態は、リベット2およびインサート24が接合のために与えられる前に被加工物6の上層8に穴が打ち抜かれるという点で、本発明の第5の実施形態および第6の実施形態と類似している。ただし、前の実施形態とは対照的に、被加工物6の上層8に穴を打ち抜くステップは、専用の打ち抜き装置を使用して行われ、リベットおよびインサートを被加工物に打ち込むステップは、別個のリベット締結装置を使用して行われる。
【0146】
第1のステップでは、被加工物6の上層8が、打ち抜き装置56のパンチ52とパンチダイ54との間に配置される。パンチダイは、パンチ軸60に沿ってパンチ52と整列されたパンチ孔58を備える。パンチ52は、実質的に円筒形で、直径がパンチ孔58よりも適切な隙間だけ小さいパンチノーズ62を備える。パンチノーズ62の直径は、パンチの残りの部分の直径よりも狭く、テーパ部分64によってンチの残りの部分に接合されている。
【0147】
図7bに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第2のステップを示す。第2のステップでは、パンチ52が打ち抜き力Pの作用下で被加工物6の上層8に打ち込まれる。これにより、分離部分32および上層穴31が形成される。分離部分は取り除くためにパンチ孔58に落下する。加えて、パンチ52のテーパ部分64は、被加工物6の上層8と接触して、上層穴31とつながる上層8の縁部に皿穴または丸みを帯びた凹みを作り出す。
【0148】
図7cに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第3のステップを示す。第3のステップでは、パンチ52が、被加工物6の上層8から離れるように、リベット2およびインサート24がその間に受け入れられるのに十分な距離だけ引っ込められる。リベット2およびインサート24は、インサート24がリベット2の内部に部分的に受け入れられるような、単一のアセンブリとして提供される。リベットおよびインサート24は、パンチ軸60と整列しており、例えば、電磁石、真空などといった、任意の適切な手段によって所定の位置に保持される。
【0149】
図7dに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第4のステップを示す。第4のステップでは、リベット2およびインサート24が被加工物6の上層穴31に受け入れられるようにパンチ52が下ろされる。特に、リベット2およびインサート24は、インサート24の下面が被加工物6の上層8の下面と同一平面になるように整列される。上記にもかかわらず、本発明の代替の実施形態では、上記の第3のステップおよび第4のステップは、パンチ52の助けを借りずに手で(すなわち、単に、リベット2およびインサート24を上層穴31に差し込み、上層8をリベット締結装置1に移すだけで)完了されてもよいことが理解されよう。
【0150】
図7eに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第5のステップを示す。第5のステップでは、リベット2およびインサート24と共に組み立てられた上層8が、打ち抜き装置56から取り出され、リベット締結装置1に移される。リベット締結装置1は、例えば、本発明の第1の実施形態に関して上述したのと同じリベット締結装置であってもよい。被加工物6の上層8および下層10は一緒に配置され、ダイ12上に置かれる。好ましくは、リベット2およびインサート24は、中心軸線18と整列される。しかしながら、
図7eに示される実施形態では、リベット締結装置1のパンチ4は、リベット2の直径よりも大きい直径を有する。よって、パンチ4は、中心軸線18とリベット2とインサート24との比較的大きいずれに対応することができる。
【0151】
図7fに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第6のステップを示す。第6のステップでは、パンチ4が、リベット2およびインサート24を力Fの作用下で被加工物6の下層10に押し付ける。これにより、下層10が変形し、ダイ12の凹面14と接触する。
【0152】
図7gに、本発明の第7の実施形態によるリベット締めプロセスの第7のステップを示す。第7のステップでは、テーパ状のリベット表面25とテーパ状のインサート表面30との間の物理的な接触により、力Fが引き続き加えられた状態でリベット2の先端23が外向きに広がり、被加工物6と連結する。
【0153】
第7の実施形態では、上層8が下層10に接合するためにリベット締結装置1に与えられる前に上層穴31を打ち抜くステップが完了することは理解されよう。
【0154】
リベット2およびインサート24を、下層10と接合するためにリベット締結装置1に与えられる前に、上層8の上層穴31内に留めて保持することができることが理解されよう。よって、リベット2、インサート24および上層8は、単一の部品として生産ラインに搬送されてもよく、すでに部分的に処理されているので時間を節約できる。すなわち、上層穴31を打ち抜き、リベット2およびインサート24を穴内に受け入れる初期のステップを、生産ラインから離れて完了することができる。これは、上層が超高強度材料で作られているか、または比較的厚く、よって、穴を打ち抜くために、典型的な生産ライン上では通常利用できないより強力な機械を必要とする場合に特に有効である。
【0155】
代替の実施形態では、打ち抜き装置56は、リベット締結装置1と異なる装置でなくてもよく、実際には同じ装置であってもよいことが理解されよう。ただし、そのような実施形態では、被加工物6の上層8に上層穴31を打ち抜き、その中にリベット2およびインサート24を受け入れるステップは、上層8が下層10に接合される前に事前に完了され得る。例えば、上層8は、その各々がリベット2およびインサート24を受け入れる複数の上層穴31が形成されることを必要とする場合もある。同じかまたは異なる機械上で、上層8が下層10に接合される前に、中にリベット2およびインサート24を差し込まれた複数の上層穴31をバッチで完成させることができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、被加工物の下層は被加工物材料のスラグを収容する。他の実施形態では、穴が被加工物を完全に貫通して切り取られ、被加工物材料のスラグが最下層に収容されない。被加工物材料のスラグを収容しない実施形態は、最下層が薄い被加工物を有し得る。最下層は、例えば、少なくとも0.7mmの厚さを有し、最大2mmまでの厚さを有し得る。被加工物材料のスラグを収容する実施形態は、最下層が厚い被加工物を有し得る。最下層は、例えば、2mm以上の厚さを有し、例えば、最大5mmまでの厚さを有し得る。
【0157】
被加工物の最上層は、例えば、少なくとも0.7mmの厚さを有し得る。上層がAHSSやUHSSから形成されている場合、上層は、例えば、最大2mmまでの厚さを有し得る(これよりも薄い層を貫通して切断することは難しい可能性がある)。
【0158】
一般に、インサートは、摩擦によって、接着剤を使用して、または任意の他の適切な方法でリベット内に保持され得る。リベット2は、防食コーティングを施され得る。インサート24も防食コーティングを施され得る(接合部が形成された後にインサートが露出されることになる場合など)。インサートが接着剤を使用せずにリベット内に保持される場合には、防食コーティングは、リベットとインサートとの間の接着力を提供するのに役立ち得る。
【0159】
上記の最上層および最下層の厚さは、被加工物の底部により強力な層が設けられ得る実施形態(第3の実施形態など)では、交換され得る。