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特許7451856固定部材付き樹脂管の製造方法及び固定部材付き樹脂管の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】固定部材付き樹脂管の製造方法及び固定部材付き樹脂管の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240312BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20240312BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B29C45/14
F16L3/00 C
B29D23/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019154743
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021030624
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】中本 優士
(72)【発明者】
【氏名】大場 史紀
(72)【発明者】
【氏名】森 優弥
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225629(JP,A)
【文献】特開2015-044310(JP,A)
【文献】特開平08-035458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材を成形するための金型内に前記金型内の熱により軟化し得る樹脂管の一部を配置する工程と、
前記樹脂管内への流体の供給によって前記樹脂管を内側から加圧した状態で前記金型内に溶融樹脂を流入させて前記固定部材を成形する工程と、
を有し、
前記加圧した状態は、前記金型内に前記溶融樹脂が流入した際に前記樹脂管の変形が抑制されるように前記樹脂管の内部に充填された前記流体によって前記樹脂管が内側から支持された状態であり、
前記樹脂管内への前記流体の供給によって前記金型内に前記溶融樹脂が流入した際に前記樹脂管の変形が抑制されるように前記樹脂管を内側から加圧すると共に前記樹脂管の前記金型内に配置された部分の軟化が抑制されるように冷却する、固定部材付き樹脂管の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂管を内側から加圧すると共に冷却した状態で前記金型内に前記樹脂管の一部を配置する、請求項1に記載の固定部材付き樹脂管の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂管には曲がり部が形成されており、
前記曲がり部に前記固定部材を成形する、請求項1又は請求項2に記載の固定部材付き樹脂管の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂管の前記固定部材が成形される部分には、前記樹脂管の外周から突出する突出部が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固定部材付き樹脂管の製造方法。
【請求項5】
前記突出部は、前記樹脂管の周方向に間隔をあけて複数形成されている、請求項4に記載の固定部材付き樹脂管の製造方法。
【請求項6】
金型内の熱により軟化し得る樹脂管の一部に固定部材を成形するための金型と、
前記樹脂管内に流体を供給することで前記金型内への前記固定部材となる溶融樹脂の流入圧力に対して前記樹脂管の変形が抑制されるように前記樹脂管を内側から加圧する加圧装置と、
を備え、
前記加圧装置は、前記樹脂管の一端部から前記樹脂管内に前記樹脂管の前記金型内に配置された部分の軟化が抑制される温度に設定された冷却用の前記流体を供給する供給部を備える、固定部材付き樹脂管の製造装置。
【請求項7】
前記加圧装置は、前記樹脂管の他端部から前記樹脂管内の前記流体を排出して前記樹脂管内の圧力を調整する調整部と、を備える、請求項6に記載の固定部材付き樹脂管の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材付き樹脂管の製造方法及び固定部材付き樹脂管の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管の一部をブラケット成形用金型内に配置し、この金型内に溶融樹脂を充填してブラケットを成形することで、樹脂管とブラケットを一体化させたブラケット付き樹脂管を製造する方法について従来から知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-77882号公報
【文献】実開平3-77884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂管の一部を金型内に配置すると、溶融樹脂流入前の金型の加熱(予加熱)により、樹脂管の金型内に配置された部分が加熱されて柔らかくなる(軟化する)ことがある。このように樹脂管の金型内に配置された部分が柔らかくなった状態で、溶融樹脂が金型内に流入されると、溶融樹脂の流入圧力によって樹脂管の当該部分に変形が生じる虞がある。このため、樹脂管の変形防止として、樹脂管の内側にマンドレル(芯金)を配置して、樹脂管にブラケットを設ける技術が知られている。しかしながら、樹脂管の内側にマンドレルを配置する場合、樹脂管内へのマンドレルの配置及び樹脂管内からのマンドレルの取り出し作業が必要となり、製造工程が煩雑化する。また、例えば蛇腹形状のように配管径が部分的に異なる部位を含む樹脂管においては、その形状にあったマンドレルを準備できずに当該部位の配管内径とマンドレルの外径とが合致しない。そのため、マンドレルによって当該部位の形状を保持できないという加工上の制約がある。
【0005】
本発明は、マンドレルを用いなくても、樹脂管にブラケットやクランプ等の固定部材を成形する際の樹脂管の変形を抑制できる固定部材付き樹脂管の製造方法及び固定部材付き樹脂管の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、固定部材を成形するための金型内に樹脂管の一部を配置する工程と、前記樹脂管内への流体の供給によって前記樹脂管を内側から加圧した状態で前記金型内に溶融樹脂を流入させて前記固定部材を成形する工程と、を有する。
なお、ここでいう「加圧した状態」とは、金型内に溶融樹脂が流入した際に樹脂管の変形が抑制されるように樹脂管の内部に充填された流体によって樹脂管が内側から支持された状態を意味する。その流体の圧力は流体の性状に合わせて設定される。
【0007】
第1態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、まず、固定部材を成形するための金型内に樹脂管の一部が配置される。次に、樹脂管内への流体の供給によって樹脂管を内側から加圧した状態で金型内に溶融樹脂が流入されて固定部材が成形される。そして、金型から樹脂管を取り出すことで、固定部材付きの樹脂管が製造される。
【0008】
ここで、上記製造方法では、樹脂管を内側から加圧した状態で金型内に溶融樹脂を流入させるため、例えば、両端が大気開放された樹脂管の一部を金型内に配置して金型内に溶融樹脂を流入する製造方法と比べて、金型内の熱によって金型内に配置された樹脂管の一部が軟化しても、溶融樹脂の流入圧力による樹脂管の一部の変形が抑制される。このように、上記製造方法では、マンドレルを用いなくても、樹脂管に固定部材を成形する際に樹脂管内への流体の供給によって樹脂管を内側から加圧することで樹脂管の変形を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、第1態様の固定部材付き樹脂管の製造方法において、前記樹脂管内への前記流体の供給によって前記樹脂管を内側から加圧すると共に冷却する。
【0010】
第2態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、樹脂管内への流体の供給によって樹脂管が内側から加圧されると共に冷却されるため、金型内の熱によって金型内に配置された樹脂管の一部が軟化するのが抑制される。これにより、樹脂管に固定部材を成形する際の樹脂管の変形を更に抑制することができる。
【0011】
本発明の第3態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、第2態様の固定部材付き樹脂管の製造方法において、前記樹脂管を内側から加圧すると共に冷却した状態で前記金型内に前記樹脂管の一部を配置する。
【0012】
第3態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、樹脂管内への流体の供給によって樹脂管が内側から加圧されると共に冷却された状態で樹脂管の一部が金型内に配置されるため、例えば、樹脂管の一部が金型内に配置された後で樹脂管が内側から加圧されると共に冷却される製造方法と比べて、金型内に配置される樹脂管の一部の軟化が配置初期から抑制される。これにより、樹脂管に固定部材を成形する際の樹脂管の変形を更に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、第1態様~第3態様のいずれか一態様の固定部材付き樹脂管の製造方法において、前記樹脂管には曲がり部が形成されており、前記曲がり部に前記固定部材を成形する。
【0014】
第4態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、樹脂管の曲がり部に固定部材が成形されるため、金型内から固定部材を取り外す際や固定部材を用いて取付対象に樹脂管を取り付けた後に樹脂管に対する固定部材の位置ずれ(樹脂管の軸方向及び周方向の位置ずれ)が抑制される。また、曲がり部に固定部材が設けられた固定部材付き樹脂管では、樹脂管に対する固定部材の位置ずれが抑制されるため、取付対象への取り付け作業が容易になる。
【0015】
本発明の第5態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、第1態様~第4態様のいずれか一態様の固定部材付き樹脂管の製造方法において、前記樹脂管の前記固定部材が成形される部分には、前記樹脂管の外周から突出する突出部が設けられている。
【0016】
第5態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、樹脂管の固定部材が成形される部分に樹脂管の外周から突出する突出部が設けられているため、金型内から固定部材を取り外す際や固定部材を用いて取付対象に樹脂管を取り付けた後に樹脂管に対する固定部材の位置ずれ(樹脂管の軸方向及び周方向の位置ずれ)が抑制される。また、樹脂管の固定部材が形成された部分に突出部が設けられた固定部材付き樹脂管では、樹脂管に対する固定部材の位置ずれが抑制されるため、取付対象への取り付け作業が容易になる。
【0017】
本発明の第6態様の固定部材付き樹脂管の製造方法は、第5態様の固定部材付き樹脂管の製造方法において、前記突出部は、前記樹脂管の周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0018】
第6態様の固定部材付き樹脂管の製造方法では、樹脂管の固定部材が成形される部分に樹脂管の周方向に間隔をあけて複数の突出部が設けられているため、金型内から固定部材を取り外す際や固定部材を用いて取付対象へ樹脂管を取り付けた後に樹脂管に対する固定部材の位置ずれ(樹脂管の軸方向及び周方向の位置ずれ)が更に抑制される。また、樹脂管の固定部材が形成された部分に複数の突出部が設けられた固定部材付き樹脂管では、樹脂管に対する固定部材の位置ずれが更に抑制される。
【0019】
本発明の第7態様の固定部材付き樹脂管の製造装置は、樹脂管の一部に固定部材を成形するための金型と、前記樹脂管内に流体を供給して前記樹脂管を内側から加圧する加圧装置と、を備える。
【0020】
第7態様の固定部材付き樹脂管の製造装置では、固定部材を成形するための金型内に樹脂管の一部を配置し、加圧装置によって樹脂管内に流体を供給して樹脂管を内側から加圧した状態で金型内に溶融樹脂を流入させることで、樹脂管に固定部材が成形される。そして、金型から樹脂管を取り出すことで、固定部材付きの樹脂管が製造される。
【0021】
ここで、上記製造装置では、加圧装置によって樹脂管を内側から加圧した状態で金型内に溶融樹脂を流入させることができるため、例えば、加圧装置を備えず、両端が大気開放された樹脂管の一部を金型内に配置した状態で金型内に溶融樹脂を流入させる製造装置と比べて、金型内の熱によって金型内に配置された樹脂管の一部が軟化しても、溶融樹脂の流入圧力による樹脂管の一部の変形が抑制される。このように、上記製造装置では、マンドレルを用いなくても、樹脂管に固定部材を成形する際に加圧装置によって樹脂管内に流体を供給して樹脂管を内側から加圧することで樹脂管の変形を抑制することができる。
【0022】
本発明の第8態様の固定部材付き樹脂管の製造装置は、第7態様の固定部材付き樹脂管の製造装置において、前記加圧装置は、前記樹脂管の一端部から前記樹脂管内に冷却用の前記流体を供給する供給部と、前記樹脂管の他端部から前記樹脂管内の前記流体を排出して前記樹脂管内の圧力を調整する調整部と、を備える。
【0023】
第8態様の固定部材付き樹脂管の製造装置では、加圧装置の供給部によって樹脂管の一端部から樹脂管内に冷却用の流体が供給され、調整部によって樹脂管の他端部から樹脂管内の流体が排出されて樹脂管内の圧力が調整される。ここで、上記製造装置では、加圧装置によって樹脂管内に冷却用の流体を供給して樹脂管を内側から加圧すると共に冷却した状態で金型内に溶融樹脂を流入させることができるため、金型内の熱によって金型内に配置された樹脂管の一部が軟化するのが抑制される。これにより、樹脂管に固定部材を成形する際の樹脂管の変形を更に抑制することができる。
【0024】
本発明の第9態様の固定部材付き樹脂管は、曲がり部が形成された樹脂管と、前記曲がり部に設けられた固定部材と、を備え、前記固定部材は、環状とされ、内周面が前記曲がり部の外周面に密着する環状部を有する。
【0025】
第9態様の固定部材付き樹脂管では、樹脂管の曲がり部に固定部材が設けられているため、例えば、直線部だけに固定部材が設けられている樹脂管と比べて、樹脂管を取り付ける取付対象を設計する際に樹脂管の固定位置を柔軟に決めることができ、樹脂管の取付対象の設計自由度が高まる。また、上記固定部材付き樹脂管では、樹脂管の曲がり部の外周面に固定部材の環状部の内周面が密着しているため、位置ずれ防止構造を設けなくても、樹脂管に対する固定部材の位置ずれ(樹脂管の軸方向及び周方向の位置ずれ)を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明は、マンドレルを用いなくても、樹脂管に固定部材を成形する際の金型内の熱や溶融樹脂の流入圧力による樹脂管の変形を抑制できる固定部材付き樹脂管の製造方法及び固定部材付き樹脂管の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るブラケット付き樹脂管の製造方法によって製造されるブラケット付き樹脂管の斜視図である。
図2図1で示すブラケット付き樹脂管の矢印2で指し示す部分の拡大斜視図である。
図3図2の矢印3-3線断面図である。
図4】樹脂管を押出機によって成形する工程を説明する説明図である。
図5】ブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図6】ブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図7図6の7-7線断面図である。
図8】ブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図9】ブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図10図9の10-10線断面図である。
図11】ブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図12】ブラケット付き樹脂管の変形例の断面図である。
図13図12の矢印13-13線断面図である。
図14】ブラケット付き樹脂管の他の変形例の斜視図(図2に対応する斜視図)である。
図15図14で示すブラケット付き樹脂管の製造工程を説明する説明図である。
図16】ブラケット付き樹脂管のさらに他の変形例のブラケット配置部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るブラケット付き樹脂管の製造方法について説明する。まず、本実施形態のブラケット付き樹脂管の製造方法で製造されるブラケット付き樹脂管について説明し、次に、ブラケット付き樹脂管の製造に用いる製造装置及びブラケット付き樹脂管の製造方法について説明する。なお、本実施形態におけるブラケット付き樹脂管は、本発明における固定部材付き樹脂管の一例である。また、本実施形態におけるブラケット付き樹脂管の製造装置及びブラケット付き樹脂管の製造方法は、それぞれ本発明における固定部材付き樹脂管の製造装置及び固定部材付き樹脂管の製造方法の一例である。
【0029】
(ブラケット付き樹脂管)
本実施形態のブラケット付き樹脂管20は、例えば、車両の燃料配管系や冷却配管系等に用いられる配管である。なお、本発明の製造方法で製造されるブラケット付き樹脂管の用途は上記用途に限定されず、樹脂管を用いる配管系であれば適用することが可能である。
【0030】
ブラケット付き樹脂管20は、図1に示されるように、樹脂管22と、ブラケット24とを備えている。本実施形態のブラケット24は、本発明における固定部材の一例である。
【0031】
樹脂管22は、図1に示されるように、直線部(直管部)22Aと、この直線部22Aに連なる曲がり部(曲管部)22Bと、を有している。本実施形態では、樹脂管22の軸方向の両端側に直線部22Aがそれぞれ形成されており、これらの直線部22Aにブラケット24が一体に形成されている。
【0032】
樹脂管22の両端部には、他の配管との接続用のコネクタ26が取り付けられている。
【0033】
また、樹脂管22の直線部22Aのブラケット24が形成されている部分には、図2に示されるように、直線部22Aの外周面から突出する突出部23が設けられている。この突出部23は、樹脂管22の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では周方向に3つ)設けられている。さらに、これらの突出部23は、図3に示されるように、樹脂管22の軸方向にも間隔をあけて複数(本実施形態では軸方向に3つ)設けられている。
【0034】
ブラケット24は、図1及び図2に示されるように、樹脂管22の軸方向両端側の直線部22Aにそれぞれ一体に形成されている。このブラケット24は、樹脂管22の直線部22Aを拘束する円環状の拘束部24Aと、拘束部24Aから接線方向に延出する板状の取付部24Bとを備えている。図3に示されるように、拘束部24Aの内周面は、樹脂管22の外周面に隙間なく密着している。また、拘束部24Aの内周面には、突出部23の形状に対応する凹状部25が形成されており、樹脂管22の突出部23が凹状部25に嵌り込んでいる。これにより、樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれ(樹脂管22の軸方向及び周方向の位置ずれ)が抑制されている。また、取付部24Bには、ブラケット24を図示しない取付対象に取り付けるための取付孔24Cが形成されている。
【0035】
(ブラケット付き樹脂管の製造装置)
次に、ブラケット付き樹脂管20の製造に用いる製造装置30について説明する。
【0036】
図9に示されるように、製造装置30は、金型32と、加圧装置34とを備えている。
【0037】
金型32は、樹脂管22の一部にブラケット24を成形するための金型である。この金型32は、上型32Aと、下型32Bとを備えている。これらの上型32Aと下型32Bには、図10及び図11に示されるように、樹脂管22の一部を内部に配置し、上型32Aと下型32Bとを型閉じした状態でブラケット24の形状となる空洞部33を構成する成形凹部がそれぞれ形成されている。また上型32Aには、溶融樹脂Rの流入口32Cが形成されている。この流入口32Cを通して空洞部33に溶融樹脂Rが流入するようになっている。
【0038】
加圧装置34は、樹脂管22内に流体Lを供給して樹脂管22を内側から加圧する装置である。この加圧装置34は、図9に示されるように、供給部36と、調整部38とを備えている。
【0039】
供給部36は、図9に示されるように、樹脂管22の軸方向の一端部22Cから樹脂管22内に冷却用流体Lを供給する機器である。具体的には、供給部36は、樹脂管22の一端部22Cに取り付けられたコネクタ26を介して接続された圧縮機によって構成されており、この圧縮機で圧縮された冷却用流体Lが樹脂管22内に供給されるようになっている。なお、ここでいう「冷却用流体」とは、溶融樹脂Rの流入前又は流入時における金型32の加熱温度よりも低い温度に設定された流体を指している。なお、冷却用流体Lの温度は、-30~20℃の範囲に設定することが後述する樹脂管22の金型32内に配置された部分の軟化を抑制する観点で好ましい。また、冷却用流体Lは、気体でも液体でも構わないが、本実施形態では、冷却用流体Lとして空気を用いている。なお、冷却用流体Lとしては、例えば、窒素ガス等を用いてもよい。
【0040】
調整部38は、図9に示されるように、樹脂管22の軸方向の他端部22Dから樹脂管22内の冷却用流体Lを排出して樹脂管22内の圧力を調整する機器である。具体的には、調整部38は、樹脂管22の他端部22Dに取り付けられたコネクタ26を介して接続された圧力調整バルブによって構成されている。
【0041】
また、製造装置30は、樹脂管22を成形するための押出機40と、樹脂管22に突出部23を成形するための金型42とを有している。金型42は、押出機40から押し出された直後で軟化状態の樹脂管22に真空成形によって突出部23を形成する真空成形用の金型である。具体的には、軟化状態の樹脂管22におけるブラケット24を成形する部分を金型42内に配置し、真空引きすることで金型42に設けられた突出部23を成形するための凹状部に軟化状態の樹脂管22が引き込まれ、樹脂管22に突出部23が形成(転写)される。
【0042】
(ブラケット付き樹脂管の製造方法)
次に、製造装置30を用いたブラケット付き樹脂管20の製造方法について説明する。
【0043】
ブラケット付き樹脂管20では、まず、図4に示されるように、押出機40を用いて直線状の樹脂管22を押し出して成形する。さらに、図5に示されるように、樹脂管22を所定の寸法に切断する。
【0044】
次に、図6に示されるように、樹脂管22のブラケット24を成形する部分(以下、適宜「成形予定部」)22Eに樹脂管22の外周面から突出する突出部23を形成する。具体的には、押出機40から押し出された直後で軟化状態の樹脂管22における成形予定部22Eを金型42内に配置し、真空引きすることで成形予定部22Eに突出部23を形成する(図7参照)。
【0045】
次に、図8に示されるように、樹脂管22を所定の位置で曲げて、樹脂管22に曲がり部22Bを形成する。
【0046】
次に、図9に示されるように、樹脂管22の軸方向の両端部にコネクタ26をそれぞれ圧入する。そして、樹脂管22の一端部22C側のコネクタ26に製造装置30の供給部36を接続し、樹脂管22の他端部22D側のコネクタ26に調整部38を接続する。その後、樹脂管22内に冷却用流体Lを供給して樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却する。なお、樹脂管22に対する加圧は、樹脂管22の耐最大内圧未満で且つ溶融樹脂Rの流入圧力に耐えられる圧力に設定することが好ましい。
【0047】
次に、樹脂管22内への冷却用流体Lの供給によって樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却した状態でブラケット24を成形するための金型32内に樹脂管22の成形予定部22Eを配置する(図9図11参照)。
【0048】
次に、樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却した状態で金型32の空洞部33に溶融樹脂Rを流入させてブラケット24を成形する。なお、金型32内に配置された樹脂管22の成形予定部22Eは、ブラケット24を成形する際にブラケット24の内周側を支える要素として機能する。
【0049】
空洞部33に充填された溶融樹脂Rが冷却固化した後は、上型32Aと下型32Bを型開きして、樹脂管22と共にブラケット24を脱型する。これにより、ブラケット付き樹脂管20の製造が完了する。
【0050】
なお、本実施形態では、樹脂管22の成形予定部22Eを金型32内に配置する前から樹脂管22とブラケット24が脱型されるまで樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却している。
【0051】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態のブラケット付き樹脂管20の製造方法では、樹脂管22内への冷却用流体Lの供給によって樹脂管22を内側から加圧した状態で金型32の空洞部33に溶融樹脂Rを流入させるため、例えば、両端が大気開放された樹脂管22の成形予定部22Eを金型32内に配置して金型32内に溶融樹脂Rを流入する製造方法と比べて、金型32内の熱(予加熱)によって樹脂管22の金型32内に配置された部分(成形予定部22Eを含む部分)が軟化しても、溶融樹脂Rの流入圧力による樹脂管22の変形が抑制される。このように、上記製造方法では、マンドレルを用いなくても、樹脂管22にブラケット24を成形する際に樹脂管22内への冷却用流体Lの供給によって樹脂管22を内側から加圧することで樹脂管22の変形を抑制することができる。
特に、本実施形態の製造方法では、樹脂管22内に冷却用流体Lが供給されて樹脂管22が内側から加圧されると共に冷却されるため、金型32内の熱によって樹脂管22が軟化するのが抑制される。これにより、樹脂管22にブラケット24を成形する際の樹脂管22の変形を更に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の製造方法では、樹脂管22が内側から加圧されると共に冷却された状態で樹脂管22の成形予定部22Eが金型32内に配置されるため、例えば、樹脂管22の成形予定部22Eが金型32内に配置された後で樹脂管22が内側から加圧されると共に冷却される製造方法と比べて、樹脂管22の金型32内に配置された部分の軟化が配置初期から抑制される。これにより、樹脂管22にブラケット24を成形する際の樹脂管22の変形を更に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の製造方法では、樹脂管22の成形予定部22Eに突出部23を設けるため、ブラケット24に突出部23に対応する凹状部25が形成され、この突出部23が凹状部25に嵌り合うことで、樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれが抑制される。これにより、金型32内からブラケット24を取り外す際(脱型時)やブラケット24を用いて取付対象に樹脂管22を取り付けた後に樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれ(樹脂管22の軸方向及び周方向の位置ずれ)が抑制される。また、ブラケット付き樹脂管20では、上記の通り、樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれが抑制されるため、取付対象への取り付け作業が容易になる。
特に、本実施形態の製造方法では、樹脂管22の成形予定部22Eに樹脂管22の周方向に間隔をあけて複数の突出部23を設けているため、金型32内からブラケット24を取り外す際(脱型時)やブラケット24を用いて取付対象に樹脂管22を取り付けた後に樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれ(樹脂管22の軸方向及び周方向の位置ずれ)が更に抑制される。
【0055】
前述の実施形態の製造方法では、樹脂管22を曲げる前に、樹脂管22に突出部23を形成しているが、本発明はこの構成に限定さない。軟化状態の樹脂管22を曲げて曲がり部22Bを形成した後に、軟化状態の樹脂管22に突出部23を形成してもよい。
【0056】
前述の実施形態の製造方法では、樹脂管22に真空成形で突出部23を形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、樹脂管22の外周面に樹脂突起を接合(溶着、接着含む)して樹脂管22に突出部23を形成してもよい。
【0057】
前述の実施形態の製造方法では、軟化状態の樹脂管22に真空成形で突出部23を形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、軟化状態の樹脂管22の外周面に真空成形で凹状部を形成してもよい。樹脂管22の外周面に凹状部を形成した場合、ブラケット成形時に凹状部に溶融樹脂が流れ込むため、成形されたブラケットに凹状部に嵌る突出部が形成される。このように樹脂管22に凹状部を形成した場合でも、突出部23を形成した場合と同様に、樹脂管22に対するブラケット24の位置ずれを抑制することができる。
【0058】
前述の実施形態の製造方法では、樹脂管22の成形予定部22Eに樹脂管22の周方向及び軸方向に複数の突出部23を形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図12及び図13に示されるように、樹脂管22の成形予定部22Eには、突出部23をひとつのみ形成してもよい。また、樹脂管22の外周面に設けられる突出部の形状は、前述の実施形態の突出部23の形状に限定されない。突出部の形状は、ブラケットの位置ずれを抑制できれば、円環状でも楕円環状であってもよいし、多角形環状であってもよい。
【0059】
前述の実施形態では、樹脂管22の成形予定部22Eを金型32内に配置する前から樹脂管22とブラケット24が脱型されるまで樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、樹脂管22の成形予定部22Eを金型32内に配置する前から金型32の空洞部33への溶融樹脂Rの充填完了後まで樹脂管22を内側から加圧すると共に冷却してもよい。
【0060】
前述の実施形態では、1本の樹脂管22にブラケット24を一体に形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図14に示されるブラケット付き樹脂管44のように、複数本(2本)の樹脂管22にブラケット46を一体に形成してもよい。このブラケット46は、2本の樹脂管22を拘束する拘束部46Aと、取付部46Bと、取付孔46Cとを備えている。また、このようなブラケット46は、図15に示される金型70によって形成される。この金型70は、上型70A、下側70B、溶融樹脂Rの流入口70C、及び、ブラケット46を成形するための空洞部71を有している。なお、ブラケット46の成形時には、2本の樹脂管22を冷却用流体Lの供給によってそれぞれ内側から加圧する共に冷却して、ブラケット46を成形する。
【0061】
前述の実施形態の製造方法では、ブラケット24を樹脂管22の直線部22Aに一体に形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図16に示されるように、ブラケット54を樹脂管52の緩やかに湾曲する曲がり部52Aに一体に形成してもよい。この場合には、樹脂管52の曲がり部52Aにブラケット54が成形されるため、前述の実施形態のように突出部23等の位置ずれ防止構造を設けなくても、樹脂管52の曲がり部52Aの外周面にブラケット54の環状部の一例である拘束部54Aの内周面が密着(好ましくは内周面全体が密着)して樹脂管52に対するブラケット54の位置ずれ(樹脂管22の軸方向及び周方向の位置ずれ)が抑制される。これにより、脱型時やブラケット54を用いて取付対象に樹脂管52を取り付けた後に樹脂管52に対するブラケット54の位置ずれが抑制される。また、曲がり部52Aにブラケット54が設けられたブラケット付き樹脂管50では、樹脂管52に対するブラケット54の位置ずれが抑制されるため、取付対象への取り付け作業が容易になる。さらに、ブラケット付き樹脂管50では、曲がり部52Aにブラケット54が設けられているため、例えば、直線部だけにブラケットが設けられている樹脂管と比べて、樹脂管52を取り付ける取付対象を設計する際に樹脂管52の固定位置を柔軟に決めることができ、樹脂管52の取付対象の設計自由度が高まる。
【0062】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
20 ブラケット付き樹脂管(固定部材付き樹脂管)
22 樹脂管
22A 直線部
22B 曲がり部
22C 一端部
22D 他端部
22E 成形予定部(樹脂管の固定部材が成形される部分)
23 突出部
24 ブラケット(固定部材)
30 ブラケット付き樹脂管の製造装置(固定部材付き樹脂管の製造装置)
32 金型
34 加圧装置
36 供給部
38 調整部
44 ブラケット付き樹脂管(固定部材付き樹脂管)
46 ブラケット(固定部材)
50 ブラケット付き樹脂管(固定部材付き樹脂管)
52 樹脂管
52A 曲がり部
54 ブラケット(固定部材)
54A 拘束部(環状部)
70 金型
L 冷却用流体
R 溶融樹脂
図1
図2
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