(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】二軸丸鋸盤における製材方法
(51)【国際特許分類】
B27B 5/00 20060101AFI20240312BHJP
B27B 33/08 20060101ALI20240312BHJP
B23D 45/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B27B5/00 A
B27B33/08 A
B23D45/10
(21)【出願番号】P 2022130945
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2018194787の分割
【原出願日】2018-10-16
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591030385
【氏名又は名称】株式会社共和キカイ
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【氏名又は名称】松田 忠秋
(74)【代理人】
【識別番号】100176359
【氏名又は名称】松田 光代
(72)【発明者】
【氏名】今村 博史
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-193301(JP,A)
【文献】特開平07-117001(JP,A)
【文献】特開平08-207002(JP,A)
【文献】実開昭48-018783(JP,U)
【文献】特許第2991966(JP,B2)
【文献】実開昭59-183726(JP,U)
【文献】特開昭51-130994(JP,A)
【文献】特開平7-176452(JP,A)
【文献】特開2013-18086(JP,A)
【文献】特開平9-323301(JP,A)
【文献】特許第2717527(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3010998(JP,U)
【文献】特許第3312262(JP,B2)
【文献】実開平2-56597(JP,U)
【文献】特公平5-79442(JP,B2)
【文献】特開昭58-202715(JP,A)
【文献】特開昭54-157367(JP,A)
【文献】実開昭53-19898(JP,U)
【文献】特許第165694(JP,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 5/00
B27B 33/08
B23D 45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の第1鋸刃が下流側の第2鋸刃に対して前後方向、上下方向に平行移動し、上下方向から用材の同一垂直面を切断する垂直配置、用材の2箇所を同時に切断する並列配置が可能な二軸丸鋸盤における製材方法であって、
余裕寸法δ1 、δ2 として、第1鋸刃は、搬送面上の用材の厚さ
Dの半分を超える範囲を挽割可能な有効半径
R1 =D/2+δ1 >D/2のチップソーにし、第2鋸刃は、搬送面上の用材の厚さ
Dの全部を挽割可能な有効半径
R2 =D+δ2 >Dのチップソーにするとともに刃厚を第1鋸刃の刃厚より大きくし、第1鋸刃を第2鋸刃と同一垂直面内にセットして第1鋸刃、第2鋸刃により用材を挽き割る
一方、第2鋸刃は、第1鋸刃と同径、同刃厚の同一仕様に変更可能であることを特徴とする二軸丸鋸盤における製材方法。
【請求項2】
第2鋸刃
は、有効半径R2 相当を搬送面上に突出させて配置することを特徴とする請求項1記載の二軸丸鋸盤における製材方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用材の挽割面の段差をなくして製材工程の合理化を図ることができる二軸丸鋸盤における製材方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な二軸丸鋸盤が開発され、広く実用されている(特許文献1、2)。
【0003】
二軸丸鋸盤は、用材の搬送面の上下にそれぞれ第1鋸刃、第2鋸刃を配設し、第1鋸刃は、第2鋸刃に対して前後方向、上下方向に平行移動可能である。第1鋸刃は、第2鋸刃と同一垂直面内にセットして第2鋸刃に対して重なり代を有する垂直配置と、下側の有効半径部分が第2鋸刃の上側の有効半径部分と水平方向に重なるとともに、用材の搬送面に対して重なり代を有する並列配置とをとることができる。すなわち、第1鋸刃、第2鋸刃は、垂直配置をとることにより、上下方向から用材の同一垂直面を切断し、第1鋸刃、第2鋸刃の各有効半径の2倍近くの厚さの用材を一挙に挽き割ることができ、並列配置をとることにより、それぞれの各有効半径以下の厚さの用材の2箇所を同時に切断して挽き割ることができる。なお、第1鋸刃、第2鋸刃は、同径、同刃厚の同一仕様のチップソーまたは普通の丸鋸刃を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2597641号公報
【文献】特許第3312262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、第1鋸刃、第2鋸刃を垂直配置にして用材を挽き割ると、用材の挽割面に対し、第1鋸刃または第2鋸刃の刃先相当の位置に微小な段差を生じることがあるという問題があった。なお、このような挽割面の段差は、必要に応じて、製材後の仕上げ用の切削工程によって除去することができる。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、第2鋸刃の有効半径を十分大きくするとともに刃厚を適切に設定することによって、用材の挽割面に段差を生じることがなく、仕上げ用の切削工程を不要にすることができる二軸丸鋸盤における製材方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、上流側の第1鋸刃が下流側の第2鋸刃に対して前後方向、上下方向に平行移動し、上下方向から用材の同一垂直面を切断する垂直配置、用材の2箇所を同時に切断する並列配置が可能な二軸丸鋸盤における製材方法であって、余裕寸法δ1 、δ2 として、第1鋸刃は、搬送面上の用材の厚さDの半分を超える範囲を挽割可能な有効半径R1 =D/2+δ1 >D/2のチップソーにし、第2鋸刃は、搬送面上の用材の厚さDの全部を挽割可能な有効半径R2 =D+δ2 >Dのチップソーにするとともに刃厚を第1鋸刃の刃厚より大きくし、第1鋸刃を第2鋸刃と同一垂直面内にセットして第1鋸刃、第2鋸刃により用材を挽き割る一方、第2鋸刃は、第1鋸刃と同径、同刃厚の同一仕様に変更可能であることをその要旨とする。
【0008】
なお、第2鋸刃は、有効半径R2 相当を搬送面上に突出させて配置することができる。
【0009】
かかる発明の構成によるときは、第1鋸刃、第2鋸刃は、それぞれ搬送面上の用材の同一垂直面を切断して用材を一挙に挽き割ることができる。また、このとき、下流側の第2鋸刃は、第1鋸刃より刃厚が大きく、搬送面上の用材の厚さの全部を挽割可能であるため、挽割面の全面を平滑に仕上げ、挽割面に段差を生じるおそれがない。なお、第2鋸刃は、第1鋸刃と同一垂直面を挽き割るため、第1鋸刃を使用しない場合に比して、本体厚を薄くして全体剛性を小さくすることができ、耐久性を向上させることができる。
【0010】
第2鋸刃の刃厚T2 は、第1鋸刃の刃厚T1 に対し、(T2 -T1 )/2=0.2~0.3mmとすることにより、用材の歩留りを過度に損うことがなく、用材の挽割面の全面を良好に仕上げることができる。すなわち、(T2 -T1 )/2が0.2mm未満では、第2鋸刃による挽割面の仕上げが不十分になる可能性があり、0.3mm超では、歩留りの低下が過大になるおそれがある。
【0011】
第1鋸刃は、搬送面上の用材の厚さの半分以上、より好ましくは、半分を多少超える範囲を挽割可能な有効半径に設定することにより、同径、同刃厚の同一仕様の第2鋸刃と組み合わせて、従来の二軸丸鋸盤における垂直配置の場合と同様の挽割動作を円滑に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
二軸丸鋸盤における製材方法は、上流側の第1鋸刃S1 、下流側の第2鋸刃S2 を備える二軸丸鋸盤において実施する(
図1、
図2)。なお、第1鋸刃S1 は、第2鋸刃S2 に対し、前後方向(
図1の紙面に垂直方向)、上下方向に平行移動可能である。ただし、
図2(A)は、
図1のX矢視相当模式図、
図2(B)は、同図(A)の要部模式拡大図である。
【0015】
第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 は、用材Wの搬送面Wa の上下に配設する水平の駆動軸S1a、S2aに対し、それぞれフランジS1b、S1b、S2b、S2bを介して着脱可能に装着されている。なお、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 は、それぞれ外周に刃先用のチップS1c、S1c…、S2c、S2c…を設けるチップソーである。第1鋸刃S1 の刃厚T1 に対し、第2鋸刃S2 の刃厚T2 >T1 は、(T2 -T1 )/2=0.2~0.3mmに設定されている。また、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 の有効半径R1 、R2 は、それぞれ搬送面Wa 上の用材Wの厚さDの半分以上、全部を用材Wの上方向、下方向から切断して挽割可能に設定されている。すなわち、
図1において、第1鋸刃S1 の有効半径R1 =D/2+δ1 >D/2であり、第2鋸刃S2 の有効半径R2 =D+δ2 >Dである。ただし、余裕寸法δ1 、δ2 は、それぞれ数mm以上数10mm以下程度に設定するとよい。
【0016】
第1鋸刃S1 を第2鋸刃S2 と同一垂直面内にセットし、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 に向けて搬送面Wa 上に用材Wを送材すると(
図1の矢印W1 方向)、上流側の第1鋸刃S1 は、用材Wの上半部を上方向から切断し、下流側の第2鋸刃S2 は、用材Wの残りの下半部を切断して、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 により用材Wを挽き割ることができる。また、第2鋸刃S2 は、同時に挽割面の全面を切削して仕上げることにより、挽割面に段差が生じることを防止する。
【0017】
ただし、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 は、それぞれ
図1の矢印Y1 、Y2 方向に回転駆動するとともに、それぞれ下側、上側の有効半径部分のほぼ全部を用材Wの挽割動作に使用する。また、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 の垂直方向、水平方向の軸間距離a、bは、それぞれ第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 が干渉することなく動作し得る最小距離に設定すればよい。なお、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 は、チップソーでない普通の丸鋸刃であってもよい。
【0018】
一方、第2鋸刃S2 を第1鋸刃S1 と同一仕様に変更すると、従来の二軸丸鋸盤におけると同様にして、第1鋸刃S1 、第2鋸刃S2 を垂直配置、並列配置して用材Wの1箇所または2箇所を挽き割ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、有効半径が十分大きく、刃厚が大きな第2鋸刃を使用することにより、挽割面に段差を生じることがなく、たとえば紙材、布材などのシート材を扱う使い捨てのパレット材などのように、表面の段差を嫌う部材を効率よく製材して製作する用途に対し、殊に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
W…用材
Wa …搬送面
D…厚さ
S1 …第1鋸刃
S2 …第2鋸刃
R1 、R2 …有効半径
T1 、T2 …刃厚
特許出願人 株式会社 共和キカイ