(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】流量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/696 20060101AFI20240312BHJP
G01F 1/684 20060101ALI20240312BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240312BHJP
G01N 27/18 20060101ALI20240312BHJP
G01N 25/56 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01F1/696 Z
G01F1/684 A
G01N27/04 B
G01N27/18
G01N25/56 B
(21)【出願番号】P 2019047533
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-01-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】桝井 保幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 克行
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151307(JP,A)
【文献】特開2018-124225(JP,A)
【文献】特開2018-091726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68- 1/699
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象流体の流量と相関する値を測定する第1センサと、
2つの測温部と前記2つの測温部の中央に配置された加熱部とを備えた第2センサであって、前記測定対象流体が第2所定方向に流れる位置に、前記2つの測温部と前記加熱部の並び方向が前記第2所定方向と直交する姿勢で配置された第2センサと、
前記第1センサにより測定された値に基づき前記測定対象流体の流量を算出する流量算出処理と、前記第2センサの前記加熱部の温度を上昇させて前記第2センサの前記2つの測温部による測温結果を取得し、取得した測温結果のそれぞれが
、前記2つの測温部に対して別に設けられた所定の閾値以下であるか否かにより前記測定対象流体の湿度が所定湿度以上であるか否かを判定する判定処理とを実行可能に構成された制御部と、
を備え
、
所定の間隔をもって併設された2つの電極パターンからなる結露センサを、さらに、備え、
前記制御部は、前記結露センサの抵抗値に基づき、結露が発生しているか否かを判定する第2判定処理を実行し、
前記制御部は、前記結露センサの抵抗値が抵抗閾値以下の場合に、前記第2判定処理において結露が発生していると判定し、
前記結露センサの抵抗値が抵抗閾値より大きい場合に、前記判定処理を実行することを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱部の温度を第1温度まで上昇させて取得した前記2つの測温部の中の一方の測温部による測温結果と前記加熱部の温度を前記第1温度とは異なる第2温度まで上昇させて取得した前記一方の測温部による測温結果とから、前記流量算出処理における流量の算出時に使用される補正係数を算出する補正係数算出処理を実行可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記第2センサの各測温部が、サーモパイルである、
ことを特徴とする
請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記第1センサと前記第2センサとが、同構成のセンサである、
ことを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の流量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路内を流れる流体の流量を、ヒータと2つの測温センサとを備えた熱式のフローセンサを用いて測定する流量測定装置(例えば、特許文献1、2参照)が知られている。また、そのような流量測定装置として、結露の発生を検出可能とするために、所定の間隔をもって併設された2つの電極パターンからなる結露センサを設けたもの(例えば、特許文献3参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3658321号公報
【文献】特許第5652315号公報
【文献】特開2018-151307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結露センサを設けておけば、結露の発生を検出可能となる。ただし、結露センサにより検出可能な結露は、結露センサを構成している2つの電極パターンの間隔よりも大きなサイズの結露だけである。そして、湿度が高くなって(湿度が100%となって)最初に発生するのは、結露センサでは検出できない微小な結露である。
【0005】
本発明は、上記現状を鑑みてなされたものであり、高湿度になったことを検出可能な流量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る流量測定装置は、測定対象流体の流量と相関する値を測定する第1センサと、2つの測温部と前記2つの測温部の中央に配置された加熱部とを備えた第2センサであって、前記測定対象流体が第2所定方向に流れる位置に、前記2つの測温部と前記加熱部の並び方向が前記第2所定方向と直交する姿勢で配置された第2センサと、前記第1センサにより測定された値に基づき前記測定対象流体の流量を算出する流量算出処理と、前記第2センサの前記加熱部の温度を上昇させて前記第2センサの前記2つの測温部による測温結果を取得し、取得した測温結果のそれぞれが所定の閾値以下であるか否かにより前記測定対象流体の湿度が所定湿度以上であるか否かを判定する判定処理とを実行可能に構成された制御部と、を備える。
【0007】
すなわち、流量測定装置は、各測温部による測温結果が測定対象流体の流量(流速)の影響を受けないように配置された第2センサを備える。そして、第2センサの加熱部の温度を上昇させて第2センサの2つの測温部による測温結果を取得し、取得した測温結果のそれぞれを閾値と比較すれば、測定対象流体の湿度が当該閾値に応じた湿度であるか否かを判定できることが各種実験より確認されている。従って、流量測定装置によれば、高湿度(所定の閾値に応じた湿度)となったことを検出することが出来る。
【0008】
流量測定装置の第2センサは、湿度が所定湿度以上となったか否かの判定のみに用いられるセンサであっても良い。また、制御部を、前記加熱部の温度を第1温度まで上昇させて取得した前記2つの測温部の中の一方の測温部による測温結果と前記加熱部の温度を前
記第1温度とは異なる第2温度まで上昇させて取得した前記一方の測温部による測温結果とから、前記流量算出処理における流量の算出時に使用される補正係数を算出する補正係数算出処理を実行可能に構成することで、第2センサを、補正係数の算出にも用いても良い。
【0009】
流量測定装置に、所定の間隔をもって併設された2つの電極パターンからなる結露センサを付加すると共に、制御部を、前記結露センサの抵抗値に基づき、結露が発生しているか否かを判定する第2判定処理を実行可能に構成しておいても良い。
【0010】
第2センサの各測温部は、抵抗温度センサやサーモカップルであっても良いが、各測温部を、出力電圧が大きなサーモパイルとしておけば、ノイズの影響を受けにくい流量測定装置を得ることが出来る。また、第1センサ、第2センサのそれぞれとして、同構成のセンサを用いておけば、第1センサと第2センサとを別構成のセンサとした場合に比して流量測定装置の製造コストを低減することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高湿度になったことを検出可能な流量測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る流量測定装置1の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、流量測定装置が備える副流路部の平面図である。
【
図4】
図4は、流量検出用センサ及び物性検出用センサとして使用されているセンサの平面図である。
【
図6】
図6は、流量測定装置における流量測定原理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、流量測定装置の制御部が実行する状態検出処理の流れ図である。
【
図8】
図8は、流量測定装置の回路基板における制御部と各センサとの間の接続形態の説明図である。
【
図9】
図9は、流量測定装置を開発するために行われた実験結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る流量測定装置1の分解斜視図を示し、
図2に、流量測定装置1の断面図を示す。
【0015】
本実施形態に係る流量測定装置1は、流体の流量の監視や調整が必要とされる装置(ガスメータ、燃料電池等)に組み込まれて使用される装置である。
図1に示してあるように、流量測定装置1は、主流路部2、副流路部3、シール4、回路基板5及びカバー6を備える。
【0016】
主流路部2は、流量を測定すべき流体(以下、測定対象流体と表記する)が流れる管状部材である。
図2に示してあるように、主流路部2の内周面の、測定対象流体の流れ方向における上流側には、流入口34Aが設けられている。また、主流路部2の内周面の、測定対象流体の流れ方向における下流側には、流出口35Aが設けられている。さらに、主流路部2の流入口34Aと流出口35Aとの間には、副流路部3(詳細は後述)を流れる流体の量を調整するためのオリフィス21が設けられている。
【0017】
回路基板5(
図1)は、流量検出用センサ11、物性値検出用センサ12、制御部13、結露センサ14(
図3参照)をプリント配線板に取り付けたユニット(プリント回路板)である。流量検出用センサ11、物性値検出用センサ12及び結露センサ14は、回路基板5の表面(副流路部3と対向する側の面;
図1における下側の面)に設けられており、制御部13は、回路基板5の裏面に設けられている。センサ11、12及び14と制御部13の詳細については後述する。
【0018】
副流路部3(
図1,
図2)は、流量等の測定のために設けられた、測定対象流体のバイパス流路である。副流路部3は、回路基板5がシール4を挟んだ状態で固定されることにより封止されている。
【0019】
図3に、副流路部3の平面図を示す。この平面図には、回路基板5が副流路部3に対して固定されている状態でのセンサ11,12及び14の位置も点線枠で示してある。
【0020】
図3及び
図2に示してあるように、副流路部3は、流入口34Aに通じた流入用流路34と、流出口35Aに通じた流出用流路35と、いずれも、流入用流路34と流出用流路35との間を接続する流路である物性値検出用流路32及び流量検出用流路33とを備えている。
図3に示してあるように、副流路部3の各流路の形状、回路基板5の各センサの位置等は、回路基板5が副流路部3に対して固定されると、流量検出用センサ11が流量検出用流路33を流れる流体と接し、物性値検出用センサ12が物性値検出用流路32を流れる流体と接し、結露センサ14が物性値検出用流路32及び流量検出用流路33を流れる流体と接するように定められている。
【0021】
また、物性値検出用流路32は、流量検出用流路33よりも断面積が小さな流路となっている。そのため、矢印P及びQの大きさで模式的に示してあるように、物性値検出用流路32を流れる流体の量の方が流量検出用流路33を流れる流体の量よりも少なくなっている。流量検出用流路33を流れる流体の量を少なくしている理由については後述する。
【0022】
カバー6(
図1)は、副流路部3に固定された回路基板5を保護するための部材である。
【0023】
以下、回路基板5の各構成要素について説明する。
結露センサ14(
図3参照)は、各部の間隔が所定間隔となるように形成された2つの電極パターン(本実施形態では、櫛歯状電極パターン)により構成されたセンサである。
【0024】
流量検出用センサ11、物性値検出用センサ12は、いずれも、
図4に示した構成を有するセンサ100である。なお、このセンサ100は、マイクロヒータ103と、マイクロヒータ103を挟んで対称に設けられたサーモパイル101及び102とを備えた絶縁膜をシリコン基台上に形成した、いわゆるMEMSフローセンサである。センサ100の絶縁膜には、基準温度を測定するための温度センサ104も設けられている。また、センサ100のシリコン基台の中央部分には、絶縁膜の対向する部分(マイクロヒータ103が設けられている部分等)の熱容量を小さくするために、キャビティ(空洞)が設けられている(
図6参照)。
【0025】
上記のように、流量検出用センサ11及び物性値検出用センサ12は、同構成のセンサ100である。ただし、流量検出用センサ11として使用されているセンサ100は、
図5Bに示した状態、すなわち、測定対象流体(
矢印Q)がマイクロヒータ103の長さ方向
と直交する方向に流れる状態を形成できる姿勢で回路基板5に取り付けられている。また、物性値検出用センサ12として使用されているセンサ100は、
図5Aに示した状態、すなわち、測定対象流体(
矢印P)がマイクロヒータ103の
長さ方向に流れる状態を形成できる姿勢で回路基板5に取り付けられている。以下、流量検出用センサ11として使用されているセンサ100のサーモパイル101、サーモパイル102、マイクロヒータ103のことを、
図5Bに示してあるように、それぞれ、サーモパイル111、サーモパイル112、マイクロヒータ113と表記する。また、物性値検出用センサ12として使用されているセンサ100のサーモパイル101、サーモパイル102、マイクロヒータ103のことを、
図5Aに示してあるように、それぞれ、サーモパイル121、サーモパイル122、マイクロヒータ123と表記する。
【0026】
制御部13は、外部装置と通信を行うための通信インターフェース回路を備えた、流量算出処理と感度補正係数算出処理と状態検出処理とを実行するユニット(本実施形態では、ASIC)である。本実施形態に係る制御部13は、各処理を周期的に行うものであるが、制御部13は、外部装置から各処理の実行指示が与えられたときに各処理を実行するものであっても良い。
【0027】
以下、制御部13が実行する各処理の内容を説明する。
【0028】
《流量算出処理》
流量算出処理は、流量検出用センサ11のマイクロヒータ113の温度を上昇させて流量検出用センサ11のサーモパイル111、112の出力電圧の差ΔV(以下、センサ出力値ΔVと表記する)を測定し、測定したセンサ出力値ΔVに基づき測定対象流体の流量を算出する処理である。
【0029】
すなわち、気体が流れていない状態で、流量検出用センサ11のマイクロヒータ113の温度を上昇させると、
図6(A)に示したように、気体の温度分布は、マイクロヒータ113の上流側と下流側とで対象なものとなる。一方、気体が流れている状態で、マイクロヒータ113の温度を上昇させると、
図6(B)に示したように、マイクロヒータ113の下流側の気体の温度の方が高くなる。そして、気体が流れている状態での上流側と下流側の温度差は、自然対流の影響が大きい等の特殊な事情がない場合には、気体の流速の平方根と比例する。また、主流路部2における測定対象流体の流量は、流量検出用流路33における測定対象流体の流速と比例する。
【0030】
従って、主流路部2における測定対象流体の流量を、センサ出力値(サーモパイル111,112の出力電圧の差)ΔVから求めることが出来る。ただし、測定対象流体の流量や温度が変わらなくても、測定対象流体の、熱伝導率、密度、比熱容量等の物性値が変化すると、センサ出力値ΔVも変化する。そのため、流量算出処理は、感度補正係数を乗ずることで、センサ出力値ΔVを、測定対象流体の各種物性値が基準値である場合におけるセンサ出力値ΔVに変換してから、流量を算出する処理となっている。
【0031】
《感度補正係数算出処理》
感度補正係数算出処理は、流量算出処理時に使用される感度補正係数を算出される処理である。この感度補正係数算出処理時、制御部13は、以下のように動作する。
【0032】
感度補正係数算出処理を開始した制御部13は、まず、第1所定電圧を印加することで物性値検出用センサ12のマイクロヒータ123の温度を上昇させてから物性値検出用センサ12のサーモカップル121の出力電圧V1を取得する。次いで、制御部13は、第2所定電圧(>第1所定電圧)を印加することでマイクロヒータ123の温度を上昇させてからサーモカップル121の出力電圧V2を取得する。
【0033】
その後、制御部13は、電圧差“V2-V1”に予め定められている係数を乗ずること
により感度補正係数を算出する。そして、制御部13は、算出した感度補正係数を、以降の流量算出処理で使用する感度補正係数として記憶してから、感度補正係数算出処理を終了する。
【0034】
なお、既に説明したように(
図5B参照)、流量測定装置1は、測定対象流体が、物性値検出用センサ12のマイクロヒータ123の長さ方向(換言すれば、サーモパイル121及び122とマイクロヒータ123の並び方向に直交する方向)に流れるように、且つ、物性値検出用流路32を流れる流体の量の方が流量検出用流路33を流れる流体の量よりも少なくなるように構成されている。流量測定装置1をそのような装置として構成している理由は、サーモカップル121の出力電圧V1、V2を、測定対象流体の流速の影響を受けない値(測定対象流体の、流速以外の物性値を示す値)とするためである。
【0035】
《状態検出処理》
以下、
図7及び
図8を用いて、制御部13が実行する状態検出処理の内容を説明する。
図7は、状態検出処理の流れ図である。
図8は、回路基板5における制御部13と各センサ間の接続形態の説明図である。この
図8では、マイクロヒータ111及び121の図示、並びに、外部装置と通信を行うための信号線の図示は省略してある。
【0036】
状態検出処理は、測定対象流体の湿度に関する状態を検出するための処理である。
図7に示してあるように、状態検出処理を開始した制御部13は、まず、結露センサ14の抵抗を測定する(ステップS101)。次いで、制御部13は、抵抗の測定結果が予め定められている抵抗閾値以下となっているか否かを判断する(ステップS102)。測定結果が抵抗閾値以下となっていた場合(ステップS102;YES)、制御部13は、結露センサ14で検知可能なサイズの結露が発生していると判定して、判定結果を外部装置に通知する(ステップS107)。このステップS107の処理は、要求時に外部装置に判定結果を通知するために、判定結果を記憶しておく処理であっても良い。そして、ステップS107の処理を終えた制御部13は、状態検出処理を終了する。
【0037】
なお、入力端子数を増やさなくても良いようにするために、制御部13と各センサ間は、
図8に示したように接続されている。そのため、ステップS101で実際に測定される抵抗は、結露センサ14の抵抗ではなく、結露センサ14とサーモカップル122を並列接続した回路の抵抗となっている。ただし、結露が生じているか否かにより結露センサ14の抵抗は大きく変化するので、抵抗閾値を適切に定めておけば、上記内容の処理で結露センサ14で検知可能なサイズの結露が発生しているか否かを判定できる。
【0038】
制御部13は、測定結果が抵抗閾値以下ではなかった場合(ステップS102;YES)には、物性値検出用センサ12のマイクロヒータ123に所定電圧を印加することでマイクロヒータ123の温度を上昇させる(ステップS103)。次いで、制御部13は、物性値検出用センサ12のサーモパイル121の出力電圧TA1と物性値検出用センサ12のサーモパイル122の出力電圧TB2とを取得する(ステップS104)。このステップS104の処理は、サーモパイル121、122の出力電圧の一回の検出結果を、TA2、TB2として取得する処理であっても、サーモパイル121、122の出力電圧の複数回の検出結果の平均値又は積算値を、TA2、TB2として取得する処理であっても良い。
【0039】
ステップS104の処理を終えた制御部13は、TA2が、予め定められている閾値A以下であり、且つ、TB2が、予め定められている閾値B以下であるという条件が満たされているか否かを判断する(ステップS104)。
【0040】
制御部13は、上記条件が満たされていなかった場合(ステップS104;NO)には
、特に処理を行うことなく、状態検出処理を終了する。一方、上記条件が満たされていた場合(ステップS104;YES)、制御部13は、湿度が100%である(結露センサ14では検知できない微小結露が発生している)と判定して、判定結果を外部装置に通知する(ステップS105)。このステップS105の処理も、要求時に外部装置に判定結果を通知するために、判定結果を記憶しておく処理であっても良い。
【0041】
そして、ステップS105の処理を終えた制御部13は、状態検出処理を終了する。
【0042】
状態検出処理のステップS103~S105の処理は、以下の知見に基づき想到されたものである。
【0043】
流量測定装置1には、結露センサ14では検知できないサイズの結露も検知できることが望まれる。そのため、流量測定装置1に各種湿度の測定対象流体を導入した場合におけるTA2及びTB2を測定した所、
図9に示したように、湿度が100%の測定対象流体の導入時におけるTA1及びTA2と、乾燥した測定対象流体の導入時におけるTA2及びTB2とが大きく異なることが確認された。また、測定対象流体の湿度が100%でなくても、外乱(流量測定装置1の外力による振動等)があると、TA2及びTB2の一方が小さくなる場合があることも確認された。そして、実験結果に基づき適切な閾値A、Bを定めた上で、TA2≦閾値A、且つ、TB2≦閾値Bという条件を用いれば、湿度が100%近傍でもないにも拘わらず、湿度が100%であると判定されることを防止できることが分かったため、状態検出処理のステップS103~S105の処理を、上記手順の処理としているのである。
【0044】
なお、状態検出処理のステップS103~S105の処理は、上記知見に基づき想到されたものである。従って、ステップS103~S105の処理で実際に判定できることは、湿度が、閾値A、Bに応じた湿度以上となったか否かである。また、TA2についての閾値(“閾値A”)とTB2についての閾値(“閾値B”)とを別に設けているのは、製造誤差があるため、温接点、冷接点間の温度差が同一であっても、通常(
図9参照)、サーモパイル121の出力電圧とサーモパイル122の出力電圧とが異なるためである。従って、サーモパイル121とサーモパイル122とが同性能のものである場合や同性能とみなせるものである場合には、閾値A及び閾値Bとして同じ値を用いることが出来る。
【0045】
以上、説明したように、本実施形態に係る流量測定装置1は、サーモパイル121,122による測温結果が測定対象流体の流速の影響を受けないように配置された物性値検出用センサ12を備える。そして、物性値検出用センサ12のマイクロヒータ121の温度を上昇させたときのサーモパイル121,122の出力電圧のそれぞれが所定の閾値以下であるか否かを判断すれば、測定対象流体の湿度がほぼ100%となっているか否かを判定できることが各種実験より確認されている。従って、本実施形態に係る流量測定装置1によれば、湿度が、高湿度(閾値A、Bに応じた湿度以上の湿度)となったことを検出することが出来る。
【0046】
また、流量測定装置1は、結露センサ14を備えている。流量測定装置1によれば、大きな結露が発生しているか否か(早急な対策が必要であるか否か)も判定することが出来る。
【0047】
さらに、流量測定装置1には、流量検出用センサ11及び物性値検出用センサ12のそれぞれとして、同構成のセンサ100が使用されている。従って、流量測定装置1は、流量検出用センサ11と物性値検出用センサ12として別構成のセンサを使用した場合に比して低コストで製造できる装置となっていることになる。
【0048】
《変形例》
上記した流量測定装置1は、各種の変形が可能なものである。例えば、感度補正係数による補正が不要な場合には、流量測定装置1を、感度補正係数算出処理を行えない制御部13を備えた装置に変形しても良い。また、流量測定装置1を、結露センサ14を備えない装置に変形しても良い。
【0049】
状態検出処理を、ステップS104及びS105の処理を複数回繰り返し、“TA2≦閾値Aand TB2≦閾値B”という条件が連続的に満たされたときに、湿度が100%となったと判定する処理に変形しても良い。
【0050】
また、流量検出用センサ11及び物性値検出用センサ12の位置は上記したものに限られない。例えば、流量検出用センサ11及び物性値検出用センサ12を、主流路2の内面に配置しても良い。
【0051】
流量検出用センサ11と物性値検出用センサ12とを別構成のセンサとしておいても良い。流量検出用センサ11及び/又は物性値検出用センサ12の代わりに、サーモパイル以外の測温センサ(抵抗温度センサ、サーモカップル等)を備えたセンサを用いても良い。
【0052】
《付記》
測定対象流体の流量と相関する値を測定する第1センサ(11)と、
2つの測温部(121、122)と前記2つの測温部(121、122)の中央に配置された加熱部(123)とを備えた第2センサ(12)であって、前記測定対象流体が第2所定方向に流れる位置に、前記2つの測温部(121、122)と前記加熱部(123)の並び方向が前記第2所定方向と直交する姿勢で配置された第2センサ(12)と、
前記第1センサ(11)により測定された値に基づき前記測定対象流体の流量を算出する流量算出処理と、前記第2センサ(12)の前記加熱部(123)の温度を上昇させて前記第2センサの前記2つの測温部(121、122)による測温結果を取得し、取得した測温結果のそれぞれが所定の閾値以下であるか否かにより前記測定対象流体の湿度が所定湿度以上であるか否かを判定する判定処理とを実行可能に構成された制御部(13)と、
を備えることを特徴とする流量測定装置(1)。
【符号の説明】
【0053】
1 流量測定装置
2 主流路部
3 副流路部
4 シール
5 回路基板
11 流量検出用センサ
12 物性値検出用センサ
13 制御部
14 結露センサ
21 オリフィス
32 物性値検出用流路
33 流量検出用流路
34 流入用流路
34A 流入口
35 流出用流路
35A 流出口
100 センサ
101,102,111,112,121,122 サーモパイル
103,113,123 マイクロヒータ
104 温度センサ