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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】眼内レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240312BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20240312BHJP
   B29C 39/30 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61F2/16
B29C39/02
B29C39/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019093263
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020185290
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】長坂 信司
(72)【発明者】
【氏名】夛田 隆廣
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 響子
(72)【発明者】
【氏名】菱田 貴宏
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-124727(JP,A)
【文献】米国特許第05620720(US,A)
【文献】特開2013-052538(JP,A)
【文献】特表平09-507183(JP,A)
【文献】特開平06-106552(JP,A)
【文献】特開平04-290706(JP,A)
【文献】特開平03-284258(JP,A)
【文献】米国特許第04197266(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00;2/02-2/80;3/00-4/00
B29C 39/02
B29C 33/00-33/76;39/26-39/36;41/38-41/44;43/36-43/42;43/50;45/26-45/44;45/64-45/68;45/73;49/48-49/56;49/70;51/30-51/40;51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの表裏面を構成する前方光学面と後方光学面とを有する光学部と、該光学部を支持するために該光学部の外周部に設けられた支持部とを一体的に所定の軟性材料によって形成する眼内レンズの製造方法であって、
第1型と第2型とを含む成形型であって、前記光学部になる部分を形成するための光学部形成部と、前記支持部になる部分を成形するための支持部形成部と、前記光学部形成部および/または前記支持部形成部の少なくとも一部に隣接して配置される刃部と、前記第1型と前記第2型との距離を係止させる係止部と、を有する前記成形型内に前記レンズの原料を注入後、前記第1型と前記第2型を前記係止部にて係止させ、前記レンズの原料を重合もしくは硬化させることで、前記光学部になる部分と前記支持部になる部分とを一体的に形成し、
前記レンズの原料の重合完結後もしくは硬化完結後に、前記レンズの原料が前記第1型と前記第2型に挟み込まれた状態のまま、前記第1型の少なくとも一部と前記第2型の少なくとも一部との距離を前記係止部にて係止された重合中もしくは硬化中の距離よりも近づける、または前記第1型と前記第2型の少なくとも一方を水平方向に変位させることで、前記光学部形成部および/または前記支持部形成部から飛び出した不要箇所を、前記重合完結後もしくは前記硬化完結後に、前記刃部により切断することを特徴とする眼内レンズの製造方法。
【請求項2】
前記重合中もしくは前記硬化中には前記第1型と前記第2型との間に隙間を形成し、前記重合完結後もしくは前記硬化完結後に前記近づけるまたは前記水平方向に変位させることで前記光学部形成部および/または前記支持部形成部から飛び出した不要箇所を、前記重合完結後もしくは前記硬化完結後に、前記刃部により切断することを特徴とする請求項1に記載の眼内レンズの製造方法。
【請求項3】
前記第1型は前記前方光学面を形成し、前記第2型は前記後方光学面を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の眼内レンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の支持部一体型レンズの製造方法であって、前記成形型が樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の眼内レンズの製造方法。
【請求項5】
前記眼内レンズを構成する材料がアクリル系モノマーの重合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の眼内レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズの製造方法として、ディスク状重合物を成形型から取り出さず、成形型と一緒に機械的切削加工を行いレンズ形状に加工する製造方法が知られている(例えば特許文献1)。また、上型と下型とを用いてバルク眼内レンズを形成した後、上型を取り外し、剥き出しになったバルク眼内レンズを専用刃型で眼内レンズの輪郭形状に打抜く製造方法が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-196136号公報
【文献】特開2013-52538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法の場合、機械的切削加工でレンズ形状に加工された成形型(加工切片)を、眼内レンズから引き剥がす作業が必要だった。この引き剥がす作業には熟練が必要になり易く、また、引き剥がす際に眼内レンズを傷付ける恐れもあった。特許文献2の製造方法の場合、重合後に上型を取り外す作業と、専用刃型をバルク眼内レンズへと精密に位置合わせする必要とがあった。特許文献2の製造方法では例えば、剥き出しになったバルク眼内レンズに意図せず傷付けてしまう恐れや、専用刃型をバルク眼内レンズへと精密に位置合わせするための複雑な製造設備が必要になり易かった。
【0005】
そこで本開示は、眼内レンズの好適な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1)眼内レンズの製造方法は、レンズの表裏面を構成する前方光学面と後方光学面とを有する光学部と、該光学部を支持するために該光学部の外周部に設けられた支持部とを一体的に所定の軟性材料によって形成する眼内レンズの製造方法であって、第1型と第2型とを含む成形型であって、前記光学部になる部分を形成するための光学部形成部と、前記支持部になる部分を成形するための支持部形成部と、前記光学部形成部および/または前記支持部形成部の少なくとも一部に隣接して配置される刃部と、前記第1型と前記第2型との距離を係止させる係止部と、を有する前記成形型内に前記レンズの原料を注入後、前記第1型と前記第2型を前記係止部にて係止させ、前記レンズの原料を重合もしくは硬化させることで、前記光学部になる部分と前記支持部になる部分とを一体的に形成し、前記レンズの原料の重合完結後もしくは硬化完結後に、前記レンズの原料が前記第1型と前記第2型に挟み込まれた状態のまま、前記第1型の少なくとも一部と前記第2型の少なくとも一部との距離を前記係止部にて係止された重合中もしくは硬化中の距離よりも近づける、または前記第1型と前記第2型の少なくとも一方を水平方向に変位させることで、前記光学部形成部および/または前記支持部形成部から飛び出した不要箇所を、前記重合完結後もしくは前記硬化完結後に、前記刃部により切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示よれば、眼内レンズの好適な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の製造方法によって製造される眼内レンズの図であり、(a)平面図であり、及び(b)側面図である。
図2】本実施形態の製造方法に用いる成形型の図であり、(a)上型と下型とが分離した状態の断面図であり、(b)上型と下型とが合体した状態の断面図である。
図3】上型の図であり、(a)上型の底面図であり、(b)A-A断面図である。
図4】下型の図であり、(a)上型の平面図であり、(b)B-B断面図であり、(c)刃部の説明図である。
図5】本実施形態の製造方法のフローチャートである。
図6】成形型に原料を注入して形成を行う様子を示す図である。
図7】上型を押圧した後、眼内レンズを取り出す図である。
図8】上型を下方に押圧し、不要な輪郭形状箇所を切断する図である。
図9】変容例であり、不要な輪郭形状箇所の切断方法を示す図である。
図10】変容例であり、不要な輪郭形状箇所の切断方法を示す図である。
図11】比較用の眼内レンズの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<眼内レンズ>
先ず図1を用いて、本実施形態の製造方法(換言するなら眼内レンズのモールド製法)によって製造される眼内レンズ1を説明する。本実施形態の眼内レンズ1は、眼球内で水晶体の代わりとして機能する光学部2と、光学部2を眼球内で支持するために光学部2の外周部に形成された2本の支持部3とを有する。本実施形態の眼内レンズ1を、支持部一体型レンズ、1ピース眼内レンズ等と呼んでもよい。本実施形態の眼内レンズ1は、光学部2と一対の支持部3とが一体的に形成されている。本実施形態の眼内レンズ1は可撓性を有する軟性材料で形成されている。眼内レンズ1を形成するための所定の軟性材料として、一般に眼内レンズに用いられるものでよい。本実施形態では眼内レンズ1を構成する材料としてアクリル系モノマーを用いている。光学部2はレンズの表裏面を構成する前方光学面2aと、後方光学面2cとを有する。光学部2の中心を光軸Mが通る。なお眼内レンズ1の形状は一例に過ぎない。
【0010】
<成形型>
次いで図2~4を用いて、本実施形態の眼内レンズ1の製造方法に用いる成形型10を説明する。なお図2~4では、成形型10の基準軸を軸Uとして示している。また図4(c)は形状特徴を強調した説明用の図である。本実施形態の成形型10は、光学部2になる部分を形成するための光学部形成部11と、支持部3になる部分を形成するための支持部形成部12と、光学部形成部11および/または支持部形成部12の少なくとも一部に隣接して配置される刃部32とを備える。本実施形態の刃部32は、眼内レンズ1の輪郭形状を整形するために用いられる。本実施形態の成形型10は更に、光学部形成部11および/または支持部形成部12から溢れ出た原料モノマー100を溜めるための貯留部31を備える。
【0011】
本実施形態の成形型10は上型20(第1型)と下型30(第2型)とを含む。上型20は原料モノマー100の重合中(後述するステップS103)、原料モノマー100よりも上方に配置される。下型30は原料モノマー100の重合中、原料モノマー100よりも下方に配置される。本実施形態では成形型10としてプラスチック樹脂製成形型を用いる。つまり、成形型10が樹脂材料を用いて構成されている。成形型10の材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いてもよい。樹脂材料を用いた成形型10とすることで、例えば、成形型10を安価に製造し易い。
【0012】
本実施形態の上型20は、上面と下面を有する略円盤形状の部材であって、中央に取手部が設けられている。本実施形態の下型30は、上面と下面を有する略円盤形状の部材であって、縁の部分が上方に折り曲げられている。上型20と下型30を合体させた場合、上方に突出した下型30の縁の内側に上型20が配置される。
【0013】
上型20の下面には、前方光学面2aを形成するための第1光学形成部21、及び支持部3の前方面(前方光学面2aと同じ方向を向く前面)を形成するための第1支持部形成部22が形成されている(図3参照)。下型30の上面には、後方光学面2cと光学部2の側面(前方光学面2aと後方光学面2cとを繋ぐ面)とを形成するための第2光学形成部33、及び支持部3の後方面(後方光学面2cと同じ方向を向く後面)と支持部3の側面(支持部3の前方面と後方面とを繋ぐ面)とを形成するための第2支持部形成部34が形成されている(図4参照)。本実施形態の下型30は、下型30と合体した上型20を係止するための係止部37を備える。本実施形態では、下型30と上型20の摩擦により上型20が係止される。
【0014】
本実施形態の下型30の上面には、眼内レンズ1の輪郭形状を整形するための刃部32が形成されている。刃部32は凸形状で形成されている。本実施形態の刃部32は、光学部形成部11と支持部形成部12の一部である。つまり、刃部32の内側に、光学部形成部11と支持部形成部12が設けられている。なお、光学部形成部11又は支持部形成部12と離間して、刃部32が設けられていてもよい。刃部32を軸Uの軸方向から見た場合、刃部32の形状と、光軸Mの軸方向から見た眼内レンズ1の輪郭形状とが一致する。
【0015】
本実施形態の刃部32は、光学部2の輪郭形状を整形するための刃部35と、支持部3の輪郭形状を整形するための刃部36とを含む。なお、軸Uの軸方向から見た刃部35の形状は、光軸Mの軸方向から見た光学部2の輪郭形状に対応し、軸Uの軸方向から見た刃部36の形状は、光軸Mの軸方向から見た支持部3の輪郭形状に対応する。本実施形態の下型30は更に、第2光学形成部33又は第2支持部形成部34から溢れ出た原料モノマー100を溜めるための貯留部31を備える。貯留部31は刃部32の周囲(換言するなら光学部形成部11と支持部形成部12の周囲)に設けられている。
【0016】
本実施形態では上型20と下型30を合体可能である。つまり図2(a)は成形型10の分離状態であり、図2(b)は成形型10の合体状態である。上型20と下型30が合体された状態では、第1光学形成部21と第2光学形成部33とにより光学部2を形成するための隙間が形成され、この隙間は前述した光学部形成部11に対応する。また、上型20と下型30とが合体された状態では、第1支持部形成部22と第2支持部形成部34とにより支持部3を形成するための隙間が形成され、この隙間は前述した支持部形成部12に対応する。つまり、上型20と下型30を合体することで眼内レンズ1の形状に対応した隙間が設けられ、この隙間を用いて眼内レンズ1が形成される。
【0017】
本実施形態の刃部32(刃部35,刃部36)は、下型30の上面から上方に突出する突出形状で形成されている。突出形状は水平方向に連続されている。本実施形態では、刃部35は光学部形成部11と貯留部31とを分離し、刃部36は支持部形成部12と貯留部31とを分離する。本実施形態では、光学部2と支持部3とを一体的に形成するため、光学部形成部11と支持部形成部12が繋がっている。本実施形態では、上型20と下型30が合体された状態では、刃部32と上型20の間に僅かな隙間が形成されている。この隙間は例えば、原料モノマー100を熱重合する際の、原料モノマー100の体積変化(膨張/収縮)を吸収するために利用できる。なお、刃部32と上型20との隙間を、より大きく設けてもよい。刃部32を用いて、例えば、眼内レンズ1の不要な輪郭形状部分(例えばバリBR)を切断(換言するなら引き千切る)できればよい。
【0018】
図4(c)を用いて本実施形態の刃部36の形状を説明する。本実施形態の刃部36は、支持部形成部12(換言するなら第2支持部形成部34)の周囲に配置されている。刃部36は下型30の上面から上方に突出した突出形状で形成されている。本実施形態の刃部36は、内面36aと、上面36bと、外面36cとを含む。本実施形態の内面36aは、下型30の上面から上方に伸び、第2光学形成部33の一部を成す。本実施形態の外面36cは、下型30の上面から上方に伸び、貯留部31の一部を成す。上面36bは刃部36の上部に設けられ、内面36aと外面36cを繋ぐ。本実施形態の上面36bは水平面に対して傾斜しており、刃部36の上端は、内面36aと上面36bとにより断面V字形状で形成されている。内面36aの高さは外面36cの高さよりも高い。本実施形態の刃部35は、支持部3の周囲に形成された不要な輪郭形状箇所を切断できる。
【0019】
なお以上の説明では刃部36に対して説明したが、刃部35についても同様である。本実施形態の刃部35は光学部形成部11(換言するなら第2光学形成部33)の周囲に配置されており、刃部35は下型30の上面から上方に突出した突出形状で形成されている。刃部35は、内面と、上面と、外面とを含み、上面は水平面に対して傾斜している。刃部35の上端は、内面と下面とにより断面V字形状で形成されている。本実施形態の刃部36は、光学部2の周囲に形成された不要な輪郭形状箇所を切断できる。なお、刃部32(刃部35,刃部36)の形状はこれに限るものではない。眼内レンズ1の周囲に形成された不要な輪郭形状箇所を切断できればよい。
【0020】
<製造方法>
図5~8を用いて、本実施形態の眼内レンズ1の製造方法を説明する。なお以降で説明するステップS101~106の作業が、機械によって行われてもよい。ステップS101にて作業者は、原料注入器101を用いて下型30に原料モノマー100を注入する(図6(a)参照)。本実施形態では、第2光学形成部33と第2支持部形成部34とを満たすように原料モノマー100が注入される。なお、第2光学形成部33又は第2支持部形成部34に注入された原料モノマー100が、貯留部31に溢れ出てもよい。
【0021】
次いでステップS102にて作業者は、上型20と下型30とを合体する(図6(b)参照)。例えば、下型30を若干傾斜させた状態で上型20を下型30に合体させると、第1光学形成部21に空気が溜まり難い。なお上型20と下型30とを合体する際、第2光学形成部33又は第2支持部形成部34に注入されている原料モノマー100が、貯留部31に溢れ出てもよい。上型20と下型30を合体させた状態で、光学部形成部11と支持部形成部12とに原料モノマー100が満たされればよい。本実施形態の下型30は係止部37を有し、上型20を所定の押圧で下型30の方向に押し付け、その状態で上型20を係止させる。なお、この所定の圧力は、重合後に上型20に掛ける押圧よりも小さい。本実施形態では一例として、上型20を下方へと10~20Nの圧力で押圧して上型20を下型30に係止させる。
【0022】
次いでステップS103にて作業者は、原料モノマー100を成形型10内で重合させる。重合方法として、例えば、加熱重合、光重合等を用いてもよい。加熱重合の一例として、原料モノマー100を25~120℃の温度範囲で昇温し、数時間~数十時間で重合を完結させてもよい。また、光重合の一例として、紫外線又は可視光線などの光開始剤の活性化の吸収に応じた波長の光線を、原料モノマー100に照射させてもよい。例えば、加熱重合と光重合を組み合わせてもよい。なお本実施形態では、ステップS102での上型20と下型30との合体状態(係止部37で上型20を係止)が維持されたまま、重合が行われる。本実施形態では上型20と下型30との間(つまり刃部32と上型20との間)に隙間が形成され易く、この隙間は例えば、原料モノマー100が重合中に体積変化(膨張/収縮)したとしても、原料モノマー100の体積変化を吸収し易い。したがって、例えば、光学部2の形成精度を得やすい。つまり本実施形態では、成形型10内に眼内レンズ1の原料を注入後、重合もしくは硬化させることで光学部2になる部分と支持部3になる部分とを一体的に形成する。
【0023】
次いでステップS104にて作業者は、第2光学形成部33と第2支持部形成部34とにより略眼内レンズの形状に形成された重合物102を成形型10から取り出さず、上型20及び下型30に挟み込まれた状態のまま、上型20を下方(下型30の方向)に押圧する(図7(a)参照)。つまり、上型20と下型30との距離を、重合中の距離よりも更に狭める。本実施形態ではプラスチック樹脂製成形型の成形型10を用いているため、上型20を押圧することで上型20又は下型30が僅かに変形し、上型20と下型30の距離が近づく。本実施形態では一例として、上型20を下方へと30~40Nの圧力で押圧する。
【0024】
図8はステップS104を説明するための説明図である。図8(a)は上型20を下方に押圧する前の状態であり、図8(a)は上型20を下方に押圧した後の状態(押圧中)である。なお図8は、形状特徴を強調した説明用の図である。上型20が下方に押されると、上型20と刃部36との隙間が狭まり、刃部36の上端によって重合物102が切断される。図11図1に対応する比較用の図であり、ステップS104による上型20の押圧を行わず成形型10から場合の眼内レンズの図である。なお図11では眼内レンズの一部のみを示している。刃部36を用いた重合物102の切断が行われない場合、例えば、光学部2又は支持部3の周囲には、第2光学形成部33又は第2支持部形成部34から溢れ出た原料モノマー100による不要な輪郭形状箇所(バリBR)が形成され易い。本実施形態では重合後に上型20と下型30との少なくとも一部の距離を近づけ、眼内レンズの輪郭形状を整形する。次いでステップS105にて作業者は、上型20を取り外し、その後ステップS106にて、成形型10内から眼内レンズ1を取り出す(図7(b)参照)。以上のようにして眼内レンズ1の製造が行われる。
【0025】
つまり本実施形態においては、重合もしくは硬化させた眼内レンズ1の原料を成形型10内に配置させたまま上型20の少なくとも一部と下型30の少なくとも一部との距離を近づける。これにより光学部形成部11および/または支持部形成部12から飛び出した不要箇所を、刃部32により切断する。本実施形態では眼内レンズ1を形成するための成形型10を用いて、重合後に眼内レンズ1の輪郭形状を整形できる。よって、例えば、光学面を露出させることなく眼内レンズ1の輪郭形状を整形できる。また例えば、眼内レンズ1の支持部3の形状を形成するための製造設備(打抜き設備,機械的切削加工設備等)が不要になり、眼内レンズ1を安価に製造し易い。なお後述するように、上型20と下型30の少なくとも一方を水平方向に変位させてもよい。
【0026】
なお本実施形態では、原料モノマー100の重合後に上型20を押圧して、上型20と下型30の少なくとも一部の距離を近づけて眼内レンズ1の輪郭形状を整形するが、眼内レンズの輪郭形状の整形方法はこれに限るものではない。例えば、重合時の上型20と下型30の距離を維持したまま、上型20を下型30に対して所定方向に回動させてもよい(図9参照)。また上型20の下方への押圧と上型20の回動とを組み合わせてもよい。
【0027】
なお刃部32(刃部35,36)に対向する上型20の形状を、軸Uの軸方向から見た刃部32の形状に対応する形状としてもよい。図10は変容例であり、刃部36と対向する上型120の形状として、上型120と接触した刃部36の上端(先端)を、重合物102を引きちぎる方向に変位させる陥没形状で形成している。つまり面122の両側を、傾斜面124を有する陥没形状箇所としている。上型120と接した刃部36の先端は、傾斜面124により刃部36の先端同士が遠ざかる方向に開く。これにより、例えば、重合物102を切断し易くなる。
【0028】
なお重合後に上型20と下型30の位置関係を逆転し、下型30を下方に押圧してもよい。また光学部2と支持部3のいずれか1方に対し、本開示の技術を用いた輪郭形状の整形が行われてもよい。また本開示の技術を用いた輪郭形状の整形が、支持部3を有さないレンズ(例えばコンタクトレンズ)に対して行われてもよい。
【0029】
本開示は一例にすぎず、原料モノマーの重合後(又は硬化後)、眼内レンズを形成するための第1成形型と第2成形型との距離を狭めて眼内レンズの輪郭形状を整形すればよい。または、第1成形型又は第2成形型の一部箇所が変形し、第1成形型と第2成形型との少なくとも一部の距離が狭まり眼内レンズの不要な輪郭形状箇所を整形できればよい。
【0030】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
1 眼内レンズ
2a 前方光学面
2b 後方光学面
2 光学部
3 支持部
10 成形型
11 光学部形成部
12 支持部形成部
20 上型
30 下型
32 刃部
100 原料モノマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11