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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】音響処理装置および音響処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20240312BHJP
   H04S 1/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04S7/00 310
H04S1/00 700
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019130884
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021016117
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】湯山 雄太
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106617(WO,A1)
【文献】特表2013-519253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00- 3/14
H04S 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を解析して、バーチャルサラウンドの第1音響効果、または、前記第1音響効果とは異なるバーチャルサラウンドの第2音響効果の付与を決定する解析部と、
前記入力信号に、前記第1音響効果または前記第2音響効果を、前記解析部による決定に応じて付与する音響効果付与部と、
を具備し、
前記入力信号は、複数のチャネルの音声信号であり、前記複数のチャネルは、前方左チャネル、前方右チャネル、後方左チャネルおよび後方右チャネルを含み、
前記解析部は、前記後方左チャネルの前記音声信号の特徴量および前記後方右チャネルの前記音声信号の特徴量の和と、前記前方左チャネルの前記音声信号の特徴量および前記前方右チャネルの前記音声信号の特徴量の和とに基づいて、前記第1音響効果または前記第2音響効果を前記音響効果付与部に対して選択させる、
音響処理装置。
【請求項2】
前記第1音響効果による定位領域は、前記第2音響効果による定位領域よりも広く、
前記第1音響効果による音像範囲は、前記第2音響効果による音像範囲よりも狭い、
請求項1に記載の音響処理装置。
【請求項3】
前記チャネルの特徴量は、チャネルの音量レベルである、
請求項2に記載の音響処理装置。
【請求項4】
解析部と音響効果付与部とを有する音響信号処理装置において
前記解析部が、入力信号を解析して、バーチャルサラウンドの第1音響効果、または、前記第1音響効果とは異なるバーチャルサラウンドの第2音響効果の付与を決定し、
前記入力信号に、前記第1音響効果または前記第2音響効果を、前記決定に応じて付与し、前記入力信号は、複数のチャネルの音声信号であり、前記複数のチャンネルは、前方左チャネル、前方右チャネル、後方左チャネルおよび後方右チャネルを含み、
前記解析部において、前記後方左チャネルの前記音声信号の特徴量および前記後方右チャネルの前記音声信号の特徴量の和と、前記前方左チャネルの前記音声信号の特徴量および前記前方右チャネルの前記音声信号の特徴量の和とに基づいて、前記第1音響効果または前記第2音響効果の付与が決定される、
音響処理方法。
【請求項5】
前記第1音響効果による定位領域は、前記第2音響効果による定位領域よりも広く、
前記第1音響効果による音像範囲は、前記第2音響効果による音像範囲よりも狭い、
請求項4に記載の音響処理方法。
【請求項6】
前記チャネルの特徴量は、チャネルの音量レベルである、
請求項5に記載の音響処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば音響処理装置および音響処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後方用チャネルの音響信号を前方のスピーカーから出力することによって、仮想的な後方のスピーカーからあたかも音が出力されているかのように音像を定位させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このように音像を定位する技術は、バーチャルサラウンドとも呼ばれ、例えばリスナーが映画を視聴していれば、後方の仮想的な音像の定位によって、スピーカーの個数が少なくても、リスナーに適切なサラウンド感を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-202139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、例えば映画の一場面、具体的には前方音場や、人物が台詞を喋るような場面では、音場の広がりによってリスナーに不自然な感じを与える、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る音響処理装置は、入力信号を解析して、バーチャルサラウンドの第1音響効果、または、前記第1音響効果とは異なるバーチャルサラウンドの第2音響効果の付与を決定する解析部と、前記入力信号に、前記第1音響効果または前記第2音響効果を、前記解析部による決定に応じて付与する音響効果付与部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る音響処理装置を含む音響付与システムを示す図である。
図2】第1音響効果による定位領域を示す図である。
図3】第2音響効果による定位領域を示す図である。
図4】第1音響効果による音像の広がりを示す図である。
図5】第2音響効果による音像の広がりを示す図である。
図6】音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
図7】解析部による音響効果の選択について例1を示す図である。
図8】解析部による音響効果の選択について例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態に係る音響処理装置について図面を参照して説明する。
図1は、音響処理装置を含む音響付与システムの構成を示す図である。
この図に示される音響付与システム10は、リスナーLsnの前方に配置された2つのスピーカー152および154によって、バーチャルサラウンド効果を付与する。
【0008】
音響付与システム10は、デコーダー100、音響処理装置200、DAC132、134、アンプ142、144、スピーカー152、154およびモニター160を含む。
デコーダー100は、図示省略された記録媒体を再生するプレイヤーから出力される信号のうち、音響信号Ainを入力する。なお、ここでいう記録媒体とは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc:登録商標)であり、映画やミュージックビデオなどのように映像信号と音響信号とが同期して記録されたものが好ましい。
なお、上記プレイヤーからの出力される信号のうち、映像信号に基づいた映像は、モニター160に表示される。
【0009】
デコーダー100は、音響信号Ainを入力してデコードし、例えば次のような5チャネルの音響信号を出力する。具体的には、デコーダー100は、前方左用のチャネルFL、前方中央用のチャネルFC、前方右用のチャネルFR、後方左用のチャネルSLおよび後方右用のチャネルSRの音響信号をそれぞれ出力する。
【0010】
音響処理装置200は、解析部210および音響効果付与部220を含む。解析部210は、デコーダー100から出力される各チャネルの音響信号を入力して解析し、音響信号に付与する効果として、第1音響効果または第2音響効果のいずれかの選択を示す信号Ctrを出力する。
【0011】
音響効果付与部220は、第1音響効果付与部221、第2音響効果付与部222および選択部224を含む。
第1音響効果付与部221は、5チャネルの音響信号を信号処理することによって、第1音響効果を付与した左用のチャネルL1および右用のチャネルR1の音響信号を出力する。第2音響効果付与部222は、5チャネルの音響信号を信号処理することによって、第1音響効果とは異なる第2音響効果を付与した左用のチャネルL2および右用のチャネルR2の音響信号を出力する。
【0012】
選択部224は、チャネルL1およびR1の組、または、チャネルL2およびR2の組を信号Ctrにしたがって選択し、選択した組のチャネルのうち、左方のチャネルの音響信号をDAC132に、右方のチャネルの音響信号をDAC134に、それぞれ供給する。
なお、図1の実線は、選択部224が信号CtrによってチャネルL1およびR1を選択した状態を示し、破線は、チャネルL2およびR2を選択した状態を示している。
【0013】
DAC(Digital to Analog Converter)132は、選択部224によって選択された左用のチャネルの音響信号をアナログに変換し、アンプ142は、DAC132により変換された信号を増幅する。スピーカー152は、アンプ142により増幅された信号を空気の振動、すなわち音に変換して出力する。
同様にDAC134は、選択部224によって選択された右用のチャネルの音響信号をアナログに変換し、アンプ144は、DAC134により変換された信号を増幅し、スピーカー154は、アンプ142により増幅された信号を音に変換して出力する。
【0014】
第1音響効果付与部221により付与される第1音響効果とは、例えば、フィードバッククロスディレイにより付与される効果である。
フィードバッククロスディレイでは、左のディレイが右の入力に、右のディレイが左の入力に、それぞれフィードバックされて加算される。このため、第1音響効果では、一般的には音が立体的に聴こえる、という効果が得られる。
【0015】
第2音響効果付与部222により付与される第2音響効果とは、例えば、トランスオーラル処理により付与される効果である。
トランスオーラルとは、例えばバイノーラル録音された音を、ヘッドフォンではなく、ステレオスピーカーで再現する技術である。ただし、ヘッドフォンではなく、単純にスピーカーで再現する場合、クロストークが発生するので、トランスオーラルでは、クロストークをキャンセルするための処理も含まれる。
【0016】
図2は、第1音響効果において音像の定位感が得られる定位領域の範囲を示す図であり、図3は、第2音響効果による定位領域の範囲を示す図である。いずれも、スピーカー152、154およびリスナーLsnの位置を平面視で示している。これらの図の比較で判るように、定位領域は、スピーカー152、154が放音する方向の前方において、第1音響効果の方が、第2音響効果よりも広い。換言すれば、定位領域は、第2音響効果ではピンポイント的に狭い。
なお、この定位領域は、リスナーLsnの頭部がスピーカー152および154を結ぶ仮想線M1の垂直二等分線M2に位置し、かつ、リスナーLsnの顔が、垂直二等分線M2に沿った方向で、スピーカー152および154に向いた場合の例である。
【0017】
図4は、第1音響効果によってリスナーLsnから見て、音像を定位させることができる範囲(音像範囲)を示す図であり、図5は、第2音響効果による音像範囲を示す図である。いずれも、スピーカー152、154およびリスナーLsnの位置を平面視で示している。第1音響効果による音像範囲は、図4に示されるように、リスナーLsnからみてスピーカー152、154の前方に向かって広がる。これに対し、第2音響効果による音像範囲は、図5に示されるように、リスナーLsnからみてほぼ360度の全域にわたって広がる。
【0018】
ここで、前方の音場が重要である場面などでは、第1音響効果の適用が有効である。この場面の例としては、前方のチャネルFLおよびFRのレベルが、後方のチャネルSLおよびSRのレベルと比較して相対的に大きい状態などが挙げられる。
【0019】
一方、音源の定位が重要となる場面や、前方以外の音場が重要である場面などでは、第2音響効果の適用が有効である。この場面の例としては、効果音などがチャネルFLおよびSL、または、チャネルFRおよびSRに振り分けられている状態や、チャネルSLおよびSRに物音や効果音などが振り分けられている状態などが挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る音響付与システム10では、音響処理装置200が、次のような動作によって、デコーダー100から出力される各チャネルの音響信号を解析し、該解析結果に応じて、第1音響効果または第2音響効果のいずれかを選択して、音響効果を付与することとしている。
【0021】
図6は、音響処理装置200の動作を示すフローチャートである。
はじめに、解析部210は、電源が投入された場合や、デコーダー100によりデコードされた各チャネルの音響信号が入力された場合などを契機として、この動作を開始する。
まず、解析部210は、初期設定処理を実行する(ステップS10)。初期設定処理としては、例えば選択部224における初期選択状態としてチャネルL1およびR1の組を選択させる処理などが挙げられる。
次に、解析部210は、デコーダー100によりデコードされた各チャネルの音響信号の特徴量を求める(ステップS12)。本実施形態では、特徴量の例として音量レベルを用いる。
【0022】
続いて、解析部210は、求めた特徴量に基づいて、新たに選択すべき第1音響効果または第2音響効果を決定する(ステップS14)。具体的には、本実施形態において解析部210は、第1に、チャネルFLの音量レベルおよびチャネルFRの音量レベルの和と、チャネルSLの音量レベルおよびチャネルSRの音量レベルの和との比率を求める。すなわち、解析部210は、後方チャネルの音量レベルに対する前方チャネルの音量レベルの比率を求める。解析部210は、第2に、求めた比率が予め設定された閾値以上であれば、新たに第1音響効果を選択する旨を決定し、当該比率が閾値未満であれば、第2音響効果を選択する旨を決定する。
【0023】
ここで、上記比率が閾値以上である場合、前方の音場が重要である場面と考えられるので、解析部210は、第1音響効果の選択を決定する。一方、上記比率が閾値未満である場合、音源の定位が重要となる場面や、前方以外の音場が重要である場面と考えられるので、解析部210は、第2音響効果の選択を決定する。
なお、ここでは、比率が閾値以上であるか否かによって、第1音響効果または第2音響効果を選択する構成としているが、例えば、求めた特徴量を用いて、学習モデルを構築し、機械学習によって分類し、その結果に応じて第1音響効果または第2音響効果を選択する構成としてもよい。
【0024】
解析部210は、新たに選択すべきと決定した音響効果と、現時点で実際に選択している音響効果とが相違しているか否かを、すなわち、選択部224で選択している音響効果を切り替える必要があるか否かを判別する(ステップS16)。
例えば、解析部210は、新たに第1音響効果を選択すべきと決定した場合に、現時点で実際に選択部224が第2音響効果を選択していれば、音響効果を切り替える必要があると判別する。また例えば、解析部210は、新たに第2音響効果を選択すべきと決定した場合に、現時点で既に選択部224が第2音響効果を選択していれば、音響効果を切り替える必要がないと判別する。
【0025】
解析部210は、音響効果を切り替える必要があると判別すれば(ステップS16の判別結果が「Yes」であれば)、信号Ctrにより選択部224に対して選択を切り替える旨を指示する(ステップS18)。この指示により、実際に選択部224は、第1音響効果付与部221または第2音響効果付与部222の一方から他方へと、選択を切り替える。
この後、解析部210は、処理の手順をステップS12に戻す。
一方、解析部210は、音響効果を切り替える必要がないと判別すれば(ステップS16の判別結果が「No」であれば)、処理の手順をステップS12に戻す。
【0026】
処理の手順がステップS12に戻ると、再び各チャネルの音量レベルが求められ、該音量レベルに基づいて、新たに選択すべき音響効果が決定される。このため、本実施形態では、各チャネルの解析、音響効果の決定・選択が所定の時間毎に実行される。なお、この動作は、電源の遮断や音響信号の入力停止等するまで、繰り返し実行される。
このように、本実施形態では、音響信号で再現すべき音場や定位感に応じて、適切な音響効果が所定の時間毎に決定・選択されるので、リスナーに不自然な感じを与えることを抑制することができる。
【0027】
上述した実施形態において、チャネルFCの音量レベルを解析に用いても良い。具体的には、チャネルFCの音量レベルが他のチャネルの音量レベルと比較して相対的に大きいのであれば、前方で人物が台詞を語る場面などのように、前方の音場が重要である場面であると考えられる。このため、解析部210は、他のチャネルFL、FR、SR、SLの音量レベルに対するチャネルFCの音量レベルの比率が閾値以上であれば、第1音響効果を選択する旨を決定し、そうでなければ、第2音響効果を選択する旨を決定しても良い。
【0028】
また、チャネルFCの音量レベルが大きくなっている状態が、台詞などの音声以外の音の成分で発生している可能性がある。このため、解析部210は、チャネルFCの音響信号を周波数解析して、音声帯域である例えば300~3400Hzに限った音量レベルと、他のチャネルの音量レベルとの比率で判定しても良い。
音声については、単純な周波数解析ではなく、音声の特徴量であるメル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)を用いても良い。
【0029】
上述した実施形態では、解析部210が、チャネルの特徴量の一例として音量レベルを用いたが、音量レベル以外を用いて、音響効果を決定・選択する構成としても良い。そこで、チャネルの特徴量の他の例について説明する。
【0030】
図7は、チャネルの特徴量について相関度(または類似度)を用いた例1を示す図である。この例1では、解析部210は、チャネルFL、FR、SLおよびSRの音響信号のうち、隣り合うチャネル同士の音響信号の相関度を算出し、当該相関度に基づいて適用する音響効果を決定・選択する。
なお、図において、チャネルFLおよびFRの相関度がFaであり、チャネルFRおよびSRの相関度がRaであり、チャネルSRおよびSLの相関度がSaであり、チャネルSLおよびFLの相関度がLaである。
【0031】
このような相関度を用いると、各チャネルの音響信号で再現される音像が特定の方向に向いているのか、周辺にまんべんなく広がっているのか、などを判別することができる。
例えば相関度Faが、他の相関度Ra、SaおよびLaよりも相対的に大きいのであれば、前方の音場に比重が置かれている場面であると考えられる。このため、解析部210は、例えば、相関度Ra、SaまたはLaに対する相関度Faの各比率が、それぞれ閾値以上であれば、第1音響効果を選択する旨を決定し、そうでなければ、第2音響効果を選択する旨を決定しても良い。
また、相関度Ra、SaまたはLaの相関度が他の相関度よりも相対的に大きいのであれば、前方以外の音場に比重が置かれている場面であると考えられる。このため、解析部210は、例えば、相関度Ra、SaまたはLaのうち、他の相関度に対する比率が閾値以上である相関度があれば、第2音響効果を選択する旨を決定し、そうでなければ、第1音響効果を選択する旨を決定しても良い。
なお、別例1の相関度については、チャネルFCを加えても良い。
【0032】
このような別例1においても、実施形態と同様に、音響信号で再現すべき音場や定位感に応じて、適切な音響効果が選択されるので、リスナーに不自然な感じを与えることを抑制することができる。
【0033】
次に、チャネルの特徴量として、レーダーチャート(パターンの形状)を用いた例2について説明する。ここでいうレーダーチャートとは、各チャネルにおける音量レベルと、方位方向とでグラフ化したものである。
【0034】
図8は、レーダーチャートの例を示す図である。なお、この例では、音量レベルが「大」、「中」、「小」および「ゼロ」の4つに分類されている。
図8におけるパターン1は、チャネルFL、FC、FR、SLおよびSRの音量レベルが、いずれも「大」である場合を示している。この場合、音像の定位方向が周辺にほぼまんべんなく広がっていると考えられる。このため、解析部210は、第2音響効果を選択する旨を決定する。
図8におけるパターン2は、チャネルFL、FC、FR、SLおよびSRの音量レベルが、いずれも「中」である場合を示している。この場合、パターン1と同様に、音像の定位方向が周辺に広がっていると考えられるので、解析部210は、第2音響効果を選択する旨を決定する。
なお、特に図示しないが、チャネルFL、FC、FR、SLおよびSRの音量レベルが、いずれも「小」であれば、パターン1、2と同様に、解析部210は、第2音響効果を選択する旨を決定する。
【0035】
図8におけるパターン4は、チャネルFL、FR、SLおよびSRの音量レベルがいずれも「小」であり、チャネルFCの音量レベルが「中」である場合を示している。この場合、前方の音場に比重が置かれている場面であると考えられるので、解析部210は、第1音響効果を選択する旨を決定する。
なお、特に図示しないが、チャネルFL、FR、SLおよびSRの音量レベルが「小」であり、チャネルFCの音量レベルが「大」である場合や、チャネルFL、FR、SLおよびSRの音量レベルが「中」であり、チャネルFCの音量レベルが「大」である場合なども同様である。
【0036】
図8におけるパターン3は、チャネルFLおよびFRの音量レベルが「中」であり、チャネルFCの音量レベルが「小」である場合を示している。この場合、後方の音場に比重が置かれている場面であると考えられるので、解析部210は、第2音響効果を選択する旨を決定する。
【0037】
ここでは、典型的なパターンについてのみ説明したが、前方の音場が重要である場面では、第1音響効果が選択され、音源の定位が重要となる場面や、前方以外の音場が重要である場面などでは、第2音響効果が選択される点については、実施形態と代わりはない。
【0038】
なお、上述した説明において、解析部210は、チャネルの特徴量に基づいて第1音響効果または第2音響効果のいずれかを選択する構成としたが、この選択は、必ずしもリスナーLsnの感覚と一致していない場合がある、と考えられる。そこで、リスナーLsnの感覚と一致しない場合には、その旨を解析部210に通知し、解析部210が、一致しない場合のチャネルの特徴量を複数記録して、選択の判断基準を学習(変更)する構成としても良い。
【0039】
また、記録媒体に対して映像信号および音響信号とともに、選択する音響効果を示す選択信号(メタデータ)を記録しておき、再生時に、この選択信号に応じて音響効果を選択する構成としても良い。すなわち、入力信号に含まれる選択信号に応じて、音響効果を選択して、選択した音響効果を、入力信号に含まれる音響信号に付与する構成としても良い。
【0040】
音響処理装置200の一部または全部については、マイクロコンピューターが所定のプログラムを実行することによるソフトウェア処理で実現しても良い。また、第1音響効果付与部221、第2音響効果付与部222および選択部224については、例えばDSP(Digital Signal Processor)による信号処理によって実現しても良い。
【0041】
<付記>
上述した実施形態等から、例えば以下のような態様が把握される。
【0042】
本発明の好適な態様1に係る音響処理装置は、入力信号を解析して、バーチャルサラウンドの第1音響効果、または、前記第1音響効果とは異なるバーチャルサラウンドの第2音響効果の付与を決定する解析部と、前記入力信号に、前記第1音響効果または前記第2音響効果を、前記解析部による決定に応じて付与する音響効果付与部と、を具備する。
態様1によれば、前方音場や、人物が台詞を喋るような場面において、リスナーに不自然な感じを与えることを抑制することができる。
【0043】
態様2に係る音響処理装置は、上記態様1に係る音響処理装置において、前記第1音響効果による定位領域は、前記第2音響効果による定位領域よりも広く、前記第1音響効果による音像範囲は、前記第2音響効果による音像範囲よりも狭い。
態様2によれば、効果の異なる第1音響効果または第2音響効果を適切に付与することができる。
【0044】
態様3に係る音響処理装置は、上記態様2に係る音響処理装置において、前記入力信号は、前方左チャネル、前方右チャネル、後方左チャネルおよび後方右チャネルを含み、前記解析部は、チャネルの特徴量に基づいて、前記第1音響効果または第2音響効果を前記音響効果付与部に対して選択させる。
態様3によれば、入力信号の特徴量に基づいて第1音響効果または第2音響効果が選択されるので、音響効果を適切に付与することができる。
【0045】
態様4に係る音響処理装置は、上記態様3に係る音響処理装置において、チャネルの特徴量は、チャネルの音量レベルである。
態様4によれば、チャネルの音量レベルに基づいて第1音響効果または第2音響効果が選択されるので、音響効果を適切に付与することができる。
【0046】
態様5に係る音響処理装置は、上記態様4に係る音響処理装置において、前記後方左チャネルの音量レベルおよび前記後方右チャネルの音量レベルと、前記前方左チャネルの音量レベルおよび前記前方右チャネルの音量レベルとに基づいて、前記第1音響効果または第2音響効果を前記音響効果付与部に対して選択させる。
態様5によれば、前方チャネルの音量レベルが後方チャネルの音量レベルよりも相対的に大きい場合等、第1音響効果を選択することができる。逆の場合には、第2音響効果を選択することができる。
【0047】
以上に例示した各態様の音響処理装置は、音響処理方法としても、また、該演奏解析方法をコンピュータに実行させるプログラムとしても、実現され得る。
【符号の説明】
【0048】
10…音響付与システム、100…デコーダー、200…音響処理装置、210…解析部、220…音響効果付与部、221…第1音響効果付与部、222…第2音響効果付与部、224…選択部、152、154…スピーカー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8