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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】圧力センサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01L9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019164000
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021043016
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(72)【発明者】
【氏名】海野 健
(72)【発明者】
【氏名】笹原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】縄岡 孝平
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-100694(JP,U)
【文献】特開平03-107736(JP,A)
【文献】特開2005-114494(JP,A)
【文献】特開平08-054304(JP,A)
【文献】実開平06-086046(JP,U)
【文献】実開平07-014345(JP,U)
【文献】特開2018-054531(JP,A)
【文献】特開平03-137531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0301210(US,A1)
【文献】特開平10-009982(JP,A)
【文献】特開平11-173930(JP,A)
【文献】特開2005-265784(JP,A)
【文献】特開2004-309474(JP,A)
【文献】米国特許第07647833(US,B1)
【文献】特開平11-094676(JP,A)
【文献】特許第2832894(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサ素子と、ハウジングを有する圧力センサユニットであり、
前記圧力センサ素子は、
金属板と、
前記金属板の一方の表面である第1表面に、前記第1表面が被覆される被覆領域と前記第1表面が露出する露出領域とを形成するように設けられる絶縁膜と、
前記絶縁膜によって前記第1表面に対して絶縁されるように、前記絶縁膜に形成される圧力検出回路と、を有し、
前記ハウジングは、
内部に形成された流体の流路と、
前記圧力センサ素子が固定されることにより前記流路が封止される端面と、を有し、
前記圧力センサ素子において、前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、中央側から外周側へ向かって前記第1表面側へ傾斜する傾斜面が形成されており、
前記傾斜面が、前記ハウジングの前記端面と前記流路とのコーナーに接触して溶接されていることを特徴とする圧力センサユニット。
【請求項2】
前記露出領域は、前記被覆領域において前記圧力検出回路が形成される部分を囲うように、周方向に連続していることを特徴とする請求項に記載の圧力センサユニット。
【請求項3】
前記露出領域は、前記第1表面の外周に沿って連続していることを特徴とする請求項に記載の圧力センサユニット。
【請求項4】
前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、前記第1表面側へ凹むくぼみ部が形成されている請求項から請求項までのいずれかに記載の圧力センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出回路を有する圧力センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサとして、ステムと呼ばれる有底筒状の金属部材の外底面に、絶縁膜を介して圧力検出回路を形成したものが知られている。このような圧力センサは、カシメ部材などを用いてステムを配管の端部に固定して使用され、高温高圧環境でも良好な耐久性を奏する(特許文献1等参照)。
【0003】
しかしながら、有底筒状のステムを用いる従来の圧力センサは、ステムを高精度に形成できる寸法には限界があり、また、カシメ部材などを用いて固定する必要があるため、小型化の観点で課題を有している。
【0004】
一方、ステムを用いない圧力センサ素子も提案されているが、このような圧力センサ素子も、外枠などの枠体を用いて金属基体を挟み込んで固定する必要があるため、固定部材を含めたセンサ全体のサイズについては、小型化の観点で課題を有している(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-324402号公報
【文献】特開平6-137979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、小型化に適したセンサ素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧力センサ素子は、
金属板と、
前記金属板の一方の表面である第1表面に、前記第1表面が被覆される被覆領域と前記第1表面が露出する露出領域とを形成するように設けられる絶縁膜と、
前記絶縁膜によって前記第1表面に対して絶縁されるように、前記絶縁膜に形成される圧力検出回路と、を有する。
【0008】
本発明に係る圧力センサ素子は、金属板に絶縁膜を形成し、その絶縁膜に圧力検出回路を形成するため、ステムを用いる場合に比べて、基材と検出回路とを含めた圧力センサ素子を小型化することができる。また、金属板の第1表面が露出する露出領域を設けることにより、このような圧力センサ素子では、金属板の第1表面から、金属板に対して、抵抗溶接などの通電加工を行うことが可能である。したがって、このような圧力センサ素子では、外枠などの枠体を用いなくても、溶接などにより容易にハウジングなどに固定することが可能であり、ユニット全体の形状を小型化することができる。
【0009】
また、たとえば、前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面は、ハウジングに溶接される溶接部を有してもよい。
【0010】
圧力センサは、溶接部によってハウジングに固定されるため、外枠などの部材により固定する従来の圧力センサ素子に比べて、小型化することができる。また、溶接による固定であるため、高温環境での耐久性も良好である。また、第2表面に溶接部があるため、金属板の外周に固定部材が配置されず、この点でも小型化に対して有利である。
【0011】
また、たとえば、前記第1表面に直交する方向からみて、前記溶接部の少なくとも一部は、前記露出領域に重なることを特徴とする。
【0012】
このような圧力センサ素子は、第2表面における溶接部の形成を、溶接部に近い第1表面に、通電加工のための電極を接触させて行うことができる。したがって、このような圧力センサ素子は、溶接部の形成精度が良好である。
【0013】
また、たとえば、前記露出領域は、前記被覆領域において前記圧力検出回路が形成される部分を囲うように、周方向に連続していてもよい。
【0014】
このような圧力センサ素子は、第2表面における溶接部の形成を、溶接部に近い第1表面に、通電加工のための電極を接触させて行うことができる。したがって、このような圧力センサ素子は、第2表面のうち、圧力検出回路が形成されている部分の第1表面の反対側に対応する受圧領域を囲うように、溶接部を精度よく形成することが可能である。
【0015】
また、たとえば、前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、前記第1表面側へ凹むくぼみ部が形成されていてもよい。
【0016】
このような圧力センサ素子は、センサの感度を高めることができる。
【0017】
また、たとえば、前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、前記第1表面側とは反対側に突出する凸部が形成されていてもよく、
前記溶接部は、前記凸部に形成されていてもよい。
【0018】
また、たとえば、前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、中央側から外周側へ向かって前記第1表面側へ傾斜する傾斜面が形成されていてもよく、
前記溶接部は、前記傾斜面に形成されていてもよい。
【0019】
また、たとえば、本発明に係る圧力センサ素子は、前記金属板は中央側に比べて厚みの薄い外周縁部を含んでいてもよく、
前記金属板における前記第1表面とは反対側の表面である第2表面には、中央側から前記外周縁部にかけて段差状になっている段差部が形成されていてもよく、
前記溶接部は、前記段差部に形成されていてもよい。
【0020】
このような圧力センサ素子は、溶接部を精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサ素子およびその周辺部分を表す概略断面図である。
図2図2は、図1に示す圧力センサ素子を上方から見た上面図である。
図3図3は、図2に示す圧力センサ素子の概略断面図である。
図4図4は、図2に示す圧力センサをハウジングに溶接する工程を表す概念図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る圧力センサ素子を上方から見た上面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る圧力センサ素子の概略断面図である。
図7図7は、本発明の第4実施形態に係る圧力センサ素子の概略断面図である。
図8図8は、本発明の第5実施形態に係る圧力センサ素子の概略断面図である。
図9図9は、本発明の第6実施形態に係る圧力センサ素子の概略断面図である。
図10図10は、圧力センサ素子の金属板に生じる最大応力の金属板形状依存性を表すグラフである。
図11図11は、圧力センサ素子のひずみゲージ抵抗変化量の金属板形状依存性を表すグラフである。
図12図12は、圧力センサ素子における絶縁膜の電気抵抗の膜厚依存性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0023】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサ素子10を含む圧力センサユニット60の概略断面図である。圧力センサユニット60は、圧力センサ素子10の他に、ハウジング50、プリント基板52、コネクタ54、カバー部材55などを有する。
【0024】
図1に示すように、圧力センサ素子10は、ハウジング50の端面に固定されている。ハウジング50は筒状であり、ハウジング50の内部には流路50aが形成されている。流路50aは、測定対象である流体で満たされる圧力室に対して、気密に連通する。
【0025】
ハウジング50の材料としては、たとえばステンレスなどの金属材料や、炭化ケイ素のようなセラミックス、シリコンなどの半導体材料などが挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
図1に示すように、圧力センサ素子10の金属板20は、ハウジング50の流路50aの端部を封止している。これにより、金属板20の下面である第2表面24には、流体からの圧力を受ける受圧領域24aが形成される。
【0027】
ハウジング50の端面には、プリント基板52が固定されている。プリント基板52は、圧力センサ素子10の外周側に配置されている。プリント基板52は、圧力センサ素子10の圧力検出回路40に対して、配線部51を介して電気的に接続される。配線部51は、ワイヤボンディング等により形成される。
【0028】
ハウジング50の端面には、圧力センサ素子10およびプリント基板52を覆うカバー部材55が設けられている。圧力センサ素子10は、ハウジング50とカバー部材55の間に形成された空間に収納される。
【0029】
カバー部材55には、圧力センサユニット60を外部の制御部や電源などに対して接続するコネクタ54が設けられている。圧力センサユニット60に含まれる圧力センサ素子10およびプリント基板52には、コネクタ54を介して電力や制御信号などが送られる。また、圧力センサ素子10で検出した検出信号や、検出信号を用いてプリント基板52で演算された信号は、コネクタ54を介して外部に送られる。
【0030】
なお、圧力センサユニット60に含まれるハウジング50、カバー部材55およびコネクタ54の形状は、図1に示すものには限定されず、圧力センサ素子10の測定対象に応じて、適宜変更することができる。たとえば、圧力センサユニット60に含まれるハウジング50は、配管の一部を兼ねていてもよい。また、圧力センサユニット60のプリント基板52に、外部に接続するコネクタ部が形成されていてもよく、カバー部材55が省略されていてもよい。
【0031】
図2は、図1に示す圧力センサユニット60に含まれる圧力センサ素子10を上方から見た上面図であり、図3は、圧力センサ素子10の概略断面図である。図3に示すように、圧力センサ素子10は、金属板20と、金属板20の一方の表面である第1表面22に設けられる絶縁膜30と、絶縁膜30の上に形成される圧力検出回路40とを有する。
【0032】
なお、圧力センサ素子10の説明では、金属板20、絶縁膜30、圧力検出回路の積層方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な方向であって、互いに垂直な方向をX軸方向およびY軸方向として説明を行う。金属板20の第1表面22は、金属板20の上面(Z軸正方向側の面)に相当する。
【0033】
図2および図3に示すように、金属板20は、円板状の外形状を有しているが、金属板20の形状はこれに限定されず、楕円板状、矩形板状その他の形状であってもよい。なお、金属板20の形状の詳細については、後程述べる。
【0034】
金属板20の材質は、圧力に応じて適度な弾性変形を生じる材料であれば特に限定されないが、Fe、ニッケル、アルミニウムなどの単体金属や、これらを含むステンレス鋼、クロム鋼や炭素鋼などの鋼材、インバーやコバールなどのニッケル合金、などの合金が挙げられる。また、金属板20は、好ましくは導電性材料で構成される。
【0035】
図3に示すように、金属板20の第1表面22形成される絶縁膜30は、第1表面22の一部のみを覆っており、第1表面22の全体を覆っていない。すなわち、金属板20の第1表面22には、絶縁膜30によって被覆される被覆領域22aと、第1表面22が露出する露出領域22bとが形成されている。
【0036】
図3に示すように、絶縁膜30は、第1表面22において中央20aに近い中央部分に設けられている。そのため、第1表面22のうち中央部分が、絶縁膜30の下にある被覆領域22aとなっている。
【0037】
これに対して、図2および図3に示すように、絶縁膜30から露出する露出領域22bは、第1表面22のうち、金属板20の外周20bに近い部分に形成されている。図2に示すように、圧力センサ素子10の露出領域22bは、被覆領域22aにおいて圧力検出回路40が形成される部分を囲うように、周方向に連続している。
【0038】
なお、露出領域22bは、第1表面22の外周20bに沿って連続しており、被覆領域22aの全体を囲んでいてもよいが、これとは異なり、被覆領域22aの一部が、露出領域22bの外に形成されていてもよい。また、露出領域22bは、周方向に断続的に形成されていてもよい。
【0039】
図3に示すように、圧力検出回路40は、絶縁膜30のZ軸正方向側の面に形成される。したがって、圧力検出回路40は、絶縁膜30によって、第1表面22に対して絶縁される。
【0040】
図2に示すように、圧力検出回路40は、金属板20のひずみを検出するひずみゲージ41や、図1に示すプリント基板52への配線部51が接続される電極部42などを有する。圧力検出回路40は、たとえば、金属板20のひずみを抵抗変化などによって検出するホイートストンブリッジ回路などを有していてもよいが、圧力検出回路40としては、これのみには限定されない。
【0041】
絶縁膜30の材質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどがあげられるが、特に限定されない。絶縁膜30は、たとえば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法などにより、金属板20の第1表面22に形成される。また、絶縁膜30を金属板20の第1表面22に形成する際に、露出領域22bにマスクを施したり、あるいは、絶縁膜30の形成後にその一部を除去したりすることにより、第1表面22に被覆領域22aと露出領域22bとを形成できる。
【0042】
圧力検出回路40は、たとえば、シリコンなどの半導体や、良導体の金属などによる機能膜に対して、レーザー加工や、スクリーン印刷のような半導体加工技術による微細加工を行うことにより形成される。検出回路を構成する機能膜は、第1表面22に形成された絶縁膜30の上に、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法などにより形成される。機能膜から圧力検出回路40を形成するパターニング法としては、半導体加工技術であるフォトパターニング法などを用いることができる。
【0043】
図2および図3に示す圧力センサ素子10は、図1に示すように、ハウジング50の上端面50bに固定される。図4は、圧力センサ素子10をハウジング50に固定する工程の一例を示したものである。図4に示すように、圧力センサ素子10は、ハウジング50に対して、抵抗溶接によって固定することができる。
【0044】
図4に示すように、圧力センサ素子10の第1表面22には、金属板20が露出する露出領域22bが形成されている。また、金属板20における第1表面22とは反対側の表面である第2表面24は、絶縁膜30が形成されておらず、金属の表面が露出している。
【0045】
圧力センサ素子10をハウジング50に固定する際、まず、圧力センサ素子10の第2表面24がハウジング50の上端面50bに接触するように、圧力センサ素子10をハウジング50に設置する。次に、圧力センサ素子10における第1表面22の露出領域22bに抵抗溶接のための電極を接触させ、第2表面24と上端面50bとの間を通電させることにより、図4に示すように、第2表面24と上端面50bとが溶接により固定される。これにより、金属板20の第2表面24には、ハウジングに溶接される溶接部が形成される。
【0046】
このように、圧力センサ素子10の第1表面22には、絶縁膜30から露出する露出領域22bが形成されているため、第1表面22から電極を金属板20に接触させることにより、第2表面24とハウジング50の上端面50bとを、容易に抵抗溶接により固定することができる。
【0047】
また、図4に示すように、第1表面22に直交する方向(Z軸正方向側)から見て、溶接部24bの少なくとも一部は、露出領域22bに重なっている。これにより、溶接部24bを形成する部分の直上の第1表面22に、電極70を接触させて通電加工を行うことが可能である。
【0048】
また、図2に示すように、露出領域22bが第1表面22において周方向に連続していることにより、第2表面24に形成される溶接部24bについても、第2表面24および上端面50bにおいて周方向に連続する形状に、容易に形成できる。すなわち、圧力センサ素子10では、図4に示すように、金属板20の第2表面24とハウジング50の上端面50bとの隙間は、精度よく形成された溶接部24bによって確実に封止される。
【0049】
図1および図4に示すように、第2表面24において溶接部24bに囲まれる部分には、流路50aに対向しており測定対象である流体の圧力を受ける受圧領域24aが形成される。
【0050】
上述したように、圧力センサ素子10は、たとえば図4に示すように、抵抗溶接により金属板20の第2表面24をハウジング50の上端面50bに固定できるため、溶接速度が速く、溶接工程の自動化が容易である。また、圧力センサ素子10は、固定のための治具を必要とせず、しかも、金属板20の形状が単純である。したがって、圧力センサ素子10は、小型化に適しており、かつ、生産性が良好である。
【0051】
また、圧力センサ素子10では、抵抗溶接を用いて金属板20を固定することにより、他の溶接によって金属板20を固定する場合に比べて、固定時の熱影響により金属板20などに生じるひずみを抑制できる。なお、金属板20とハウジング50の上端面50bとを固定する溶接部24bは、抵抗溶接によって形成されたものに限定されない。たとえば、金属板20は、電子ビーム溶接、超音波溶接、シーム溶接、摩擦溶接、レーザー溶接などにより形成された溶接部により、ハウジング50に固定されていてもよい。
【0052】
なお、溶接によって金属板20をハウジング50に対して固定する圧力センサ素子10は、溶接前において若干の隙間が第2表面24と上端面50bの間に形成されていたとしても、その隙間は溶接部24bによって封止される。したがって、このような観点からも、溶接部24bを有する圧力センサ素子10は、生産性が良好である。
【0053】
第2実施形態
図5は、第2実施形態に係る圧力センサ素子110を上方から見た平面図である。第2実施形態に係る圧力センサ素子110は、絶縁膜130の形状が異なることを除き、第1実施形態に係る圧力センサ素子10(図2参照)と同様である。圧力センサ素子110の説明では、圧力センサ素子10との相違点のみ説明し、圧力センサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、圧力センサ素子110の絶縁膜130は、十字形状を有している。このように、絶縁膜130は、圧力検出回路40を金属板20に対して絶縁できれば足り、絶縁膜130の形状は、図2に示す絶縁膜30のような円形形状に限定されない。
【0055】
絶縁膜130の形状に対応して、金属板20の第1表面122に形成される被覆領域122aおよび露出領域122bの形状も変化する。第2実施形態に係る圧力センサ素子110も、第1実施形態に係る圧力センサ素子10と同様の効果を奏する。
【0056】
第3実施形態
図6は、第3実施形態に係る圧力センサ素子210の概略断面図である。第3実施形態に係る圧力センサ素子210は、金属板220における第2表面224の形状が異なることを除き、第1実施形態に係る圧力センサ素子10(図2参照)と同様である。圧力センサ素子210の説明では、圧力センサ素子10との相違点のみ説明し、圧力センサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、圧力センサ素子210の金属板220における第2表面224には、第1表面22側へ凹むくぼみ部224cが形成されている。くぼみ部224cは、中央20aへ向かって金属板220の厚みが薄くなる曲面形状を有している。
【0058】
くぼみ部224cは、第2表面224のうちハウジング50の流路50aに対向する受圧部(図1参照)に形成される。第2表面224におけるくぼみ部224cの外周には、ハウジング50に溶接される溶接部を形成する平坦部分が形成されている。
【0059】
図6に示す圧力センサ素子210の第2表面224にはくぼみ部224cが形成されており、受圧部における金属板220の厚みが薄い。したがって、圧力センサ素子210は、単位圧力変化に伴う金属板220のひずみを大きくし、センサの感度を高めることができる。
【0060】
くぼみ部224cは、図6に示すような曲面で構成されていてもよいが、平坦な底面と、底面に対して傾斜する斜面もしくは底面に垂直な壁面とによって構成されていてもよい。そのほか、第3実施形態に係る圧力センサ素子210は、第1実施形態に係る圧力センサ素子10と同様の効果を奏する。
【0061】
第4実施形態
図7は、第4実施形態に係る圧力センサ素子310の概略断面図である。第4実施形態に係る圧力センサ素子310は、金属板320の形状が異なることを除き、第1実施形態に係る圧力センサ素子10(図2参照)と同様である。圧力センサ素子310の説明では、圧力センサ素子10との相違点のみ説明し、圧力センサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、圧力センサ素子310の金属板320は、中央20a側に比べて厚みの薄い外周縁部328を含む。金属板320の第2表面324には、中央20a側の受圧領域24aから外周縁部328にかけて段差状になっている段差部324fが形成されている。圧力センサ素子310において、金属板320をハウジング50に溶接する溶接部(図1参照)は、段差部324fに形成される。
【0063】
このような圧力センサ素子310は、段差部324fが係合する段差部(不図示)が上端面50bを有するハウジング50(図1参照)に溶接することにより、精度よく確実に溶接部を形成することができる。そのほか、第4実施形態に係る圧力センサ素子310は、第1実施形態に係る圧力センサ素子10と同様の効果を奏する。
【0064】
第5実施形態
図8は、第5実施形態に係る圧力センサ素子410の概略断面図である。第5実施形態に係る圧力センサ素子410は、金属板420における第2表面424の形状が異なることを除き、第1実施形態に係る圧力センサ素子10(図2参照)と同様である。圧力センサ素子410の説明では、圧力センサ素子10との相違点のみ説明し、圧力センサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、圧力センサ素子410の金属板420における第2表面424には、中央20a側から外周20bへ向かって、第1表面22側(Z軸正方向側)へ傾斜する傾斜面424eが形成されている。傾斜面424eは、第2表面424における中央20a部分に配置される平坦な受圧領域24aを囲むように形成されている。また、傾斜面424eは、第2表面424の外周に沿ってリング状に連続している。圧力センサ素子410において、金属板420をハウジング50に溶接する溶接部(図1参照)は、傾斜面424eに形成される。
【0066】
このような圧力センサ素子410は、傾斜面424eがハウジング50の上端面50aと流路50aとのコーナー(図1参照)に接触して溶接されることにより、精度よく確実に溶接部が形成される。そのほか、第5実施形態に係る圧力センサ素子410は、第1実施形態に係る圧力センサ素子10と同様の効果を奏する。
【0067】
第6実施形態
図9は、第6実施形態に係る圧力センサ素子510の概略断面図である。第6実施形態に係る圧力センサ素子510は、金属板520の形状が異なることを除き、第1実施形態に係る圧力センサ素子10(図2参照)と同様である。圧力センサ素子510の説明では、圧力センサ素子10との相違点のみ説明し、圧力センサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0068】
図9に示すように、圧力センサ素子510の金属板520における第2表面524には、第1表面522側とは反対側であるZ軸負方向側に突出する凸部524dが形成されている。凸部524dは、第2表面524における中央20a周辺に配置される平坦な受圧領域24aを囲むように形成されている。また、凸部524dは、第2表面524の外周20bに沿ってリング状に連続している。圧力センサ素子510において、金属板520をハウジング50に溶接する溶接部(図1参照)は、凸部524dに形成される。
【0069】
このような圧力センサ素子510は、凸部524dがハウジング50の上端面50b(図1参照)に接触して溶接されることにより、精度よく確実に溶接部が形成される。凸部524dは、たとえば、図3に示すような平板状の金属板20をプレス加工して形成することができ、その場合、第1表面522には、第2表面524の凸部524dに対応する凹部522dが形成される。このような凹部522dは図4に示すような溶接用の電極70を接触させるマーク又はガイドとして機能する。そのほか、第6実施形態に係る圧力センサ素子510は、第1実施形態に係る圧センサ素子10と同様の効果を奏する。
【0070】
実施例
以下、実施例を示して、本発明に係る圧力センサ素子についてさらに詳細に説明を行う。ただし、本発明はこれらの実施例のみには限定されない。
【0071】
図10は、図3に示すような圧力センサ素子10の金属板20における第2表面24対して、所定の圧力(30MPa)を作用させた場合において、金属板20に生じる最大応力の板厚T1依存性を計算したものである。
【0072】
実施例では、金属板20の直径D1(図3参照)は6mmとし、力学モデルとしては両端固定モデルを使用した。また、板厚T1(図3参照)は、3.6~10mmの間で変化させた。金属板20の材質としてはSUS316Lを想定している。
【0073】
計算結果である図10からは、金属板20の板厚を薄くするほど、金属板20に生じる最大応力が大きくなることが理解できる。また、図10からは、金属板20の板厚T1を1mm以上とすることにより、金属板20に生じる最大応力が、SUS316Lの耐力である175MPa以下となることが理解できる。
【0074】
図11は、図3に示すような圧力センサ素子10に対して所定の圧力を作用させた場合において、図2に示すひずみゲージ41に生じる抵抗変化量の板厚T1依存性を計算したものである。
【0075】
実施例に用いるひずみゲージ41による圧力検出回路40としては、初期抵抗1KΩのひずみゲージ41に、4Ω以上の抵抗変化が発生した場合に、その抵抗変化を適切な精度で検出できる回路を想定した。また、板厚T1(図3参照)は、3.6~10mmの間で変化させた。
【0076】
計算結果である図11からは、金属板20の板厚T1を厚くするほど、抵抗変化量が小さくなることが理解できる。また、図11からは、金属板20の板厚T1を2mm以下とすることにより、金属板20に生じた抵抗変化量が、想定した回路で適切に検出できる抵抗変化量である4Ω以上となることが理解できる。
【0077】
図10および図11からは、図1に示す金属板20の板厚T1を、1mm~2mmとすることにより、好適な耐久力および分解能を有する小型の圧力センサ素子10を実現できることを理解できる。また、金属板20をこのような厚みとすることにより、圧力センサ素子10全体の厚みを、たとえば6mmより薄くすることが可能である。このような圧力センサ素子10は、標準的な規格の半導体工場のプロセスで製造可能であるため、生産性が良好である。
【0078】
図12は、図3に示すような圧力センサ素子10に形成される絶縁膜30の電気抵抗の膜厚依存性を計算したものである。絶縁膜30の材質はSiO、成膜方法としては気相法を想定した。図12からは、絶縁膜30の膜厚を4000nmとすることにより、絶縁膜30の抵抗を、圧力検出回路40を金属板20に対して適切に絶縁することができる1GΩとすることができ、好ましい。なお、機能膜から形成される圧力検出回路40の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05~1μm程度である。
【符号の説明】
【0079】
10、110、210、310、410、510…圧力センサ素子
20、220、420、520…金属板
20a…中央
20b…外周
22、122、522…第1表面
22a、122a…被覆領域
22b、122b…露出領域
24、224、424、524…第2表面
24a…受圧領域
24b…溶接部
30、130…絶縁膜
40…圧力検出回路
41…ひずみゲージ
42…電極部
50…ハウジング
50a…流路
50b…上端面
51…配線部
52…プリント基板
54…コネクタ
55…カバー部材
60…圧力センサユニット
70…溶接用電極
224c…くぼみ部
324f…段差部
328…外周縁部
424e…傾斜面
522d…凹部
524d…凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12