IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

特許7451908無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム
<>
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図1
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図2
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図3
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図4
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図5
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図6
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図7
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図8
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図9
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図10
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図11
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図12
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図13
  • 特許-無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/26 20150101AFI20240312BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20240312BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20240312BHJP
【FI】
H04B17/26
H04B17/318
H04B1/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019168486
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021048447
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115417
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘一
(72)【発明者】
【氏名】井口 裕貴
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152978(JP,A)
【文献】特開2018-139395(JP,A)
【文献】特開2013-012890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0159843(US,A1)
【文献】特開2010-154129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/26
H04B 17/318
H04B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末であって、
前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信部と、
前記送受信部が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数部と、
前記送受信部が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出部と、
前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出部と、
前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶部と、
前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較部と、
前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較部と、
前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第三比較部と、
前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、
前記受信回数が前記第一指標値未満の場合、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、ことを特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記記憶部は、前記無線端末の端末識別子をさらに記憶し、
前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると前記判定部が判定すると、前記受信回数が前記第一指標値以上であり前記平均値が前記第二指標値未満であり前記散らばり度合値が前記第三指標値以下であることを示す第一識別子、または前記受信回数が前記第一指標値以上であり前記平均値が前記第二指標値以上であることを示す第二識別子の何れかが前記端末識別子に関連付けられた情報を、前記送受信部を制御して前記無線端末から前記基地局へ送信させる情報送信制御部をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末であって、
前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信部と、
前記送受信部が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数部と、
前記送受信部が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出部と、
前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出部と、
前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶部と、
前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較部と、
前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較部と、
前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第三比較部と、
前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記第一比較部の比較結果が、前記受信回数が前記第一指標以上であり、かつ前記第二比較部の比較結果が、前記平均値が第二指標未満であり、かつ前記第三比較部の比較結果が、散らばり度合値が前記第三指標値以下であると判定した場合、前記受信回数と前記平均値を前記記憶部に保持させる保持部と、
前記送受信部に新たな下り信号を受信させ、前記計数部に前記新たな下り信号の新たな受信回数を導出させ、前記第一比較部に前記新たな受信回数と、前記記憶部に保持された前記受信回数とを比較し、前記受信強度導出部に前記新たな下り信号の受信強度の新たな平均値を導出させ、前記第二比較部に前記新たな平均値と、前記記憶部に保持された前記平均値とを比較する制御部と、
を備え、
前記判定部は、
前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数以上であり、かつ前記第二比較部による比較結果が、前記新たな平均値が前記記憶部に記憶された前記平均値以上であると、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、
前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数未満である、もしくは前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数以上であり、かつ前記第二比較部による比較結果が、前記新たな平均値が前記記憶部に記憶された前記平均値未満であり、かつ前記第三比較部による比較結果が、前記散らばり度合値が前記記憶部に記憶された前記散らばり度合値より大きいと、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する
ことを特徴とする無線端末。
【請求項4】
接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末のコンピュータを
前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信手段、
前記送受信手段が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数手段、
前記送受信手段が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出手段、
前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出手段、
前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶手段、
前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較手段、
前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較手段、
前記散らばり度合値と前記第二指標値とを比較する第三比較手段、
前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定手段、
として機能させるとともに、
さらに、前記判定手段を、
前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、
前記受信回数が前記第一指標値未満であるか、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、
ように機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項5】
無線端末と、前記無線端末から上り信号を受信すると前記無線端末へ下り信号を送信する基地局とを含み、前記無線端末として請求項1の無線端末が適用された通信システム。
【請求項6】
接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末の制御方法であって、
前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する第一のステップと、
前記第一のステップで前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する第二のステップと、
前記第一のステップで前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する第三のステップと、
前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する第四のステップと、
前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する第五のステップと、
前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第六のステップと、
前記平均値と前記第二指標値とを比較する第七のステップと、
前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第八のステップと、
前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する第九のステップと、を備え、
前記第九のステップは、
前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、
前記受信回数が前記第一指標値未満である場合、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システムに関し、無線端末が中継装置を用いずに基地局へ向けて長距離通信を行う通信システムに適用しうる。
【背景技術】
【0002】
複数の無線端末のそれぞれが基地局へ情報を送信する通信システムがある。そのような通信システムを実現する手段として、消費電力の少ない無線端末で長距離通信を可能とする無線通信技術がある。これは一般にLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる。LPWAにおける無線端末は920MHz等1GHz以下のサブギガ帯の無線帯域を用い、数十mAの消費電力で、数Kmから十数Kmの電波伝播距離の通信を行う。LPWAにおける無線端末は長距離の通信が可能であるため、無線端末が広範囲に配置される場合でも、中継局を用いることなく無線端末から基地局へ通信を行うことができる。またLPWAにおける無線端末は通信に要する消費電力が小さいため、電池駆動であっても長期間に亘って運用することができる。LPWAはこのような利点があるため、広範囲に亘り設置される各種メータ等の計測機器からデータを収集する通信システムの構築に用いられる。当該通信システムの構築にLPWAを用いると、無線端末から基地局への通信に中継局が不要であること、無線端末を電池駆動で長期に亘り運用可能なことから、通信システムの経済コストが抑制される。
【0003】
ある範囲内に複数の無線端末が設置されて構築される通信システムの他の形態として、例えばマルチホップ無線システムがある(特許文献1)。上述のLPWAは中継局が不要であるのに対し、一般的にマルチホップ無線システムでは複数の無線端末でメッシュネットワークが形成され、無線端末間で情報が中継されて通信が行われるが、一つの無線端末(中継局)がカバーできる範囲が限られる。そのためマルチホップ無線システムは、末端の無線端末から最上位の無線端末までを繋いでメッシュネットワークを構築するために、多数の中継局が必要となる虞がある。従って、経済コストの面から、マルチホップ無線システムは広範囲を対象とした通信システムの構築に不向きである。一方でLPWAにおける無線端末を用いれば、上述のとおり中継局を用いることなく、広範囲を対象とした通信システムを低い経済コストで構築することができる。
【0004】
なお無線端末を用いて通信システムを構築する場合、無線端末と通信の相手先との通信が可能であるかを判定することが、一般的に要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-68138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、LPWAの無線端末は、メータ等の計測機器からデータを収集する用途の通信システムの構築に利用される。この場合、無線端末はメータ等の計測機器の近傍に設置される。しかしメータ等は建築物に設置されており、メータ等の設置場所は無線通信の適否を考慮して選定されていない。故に無線端末の周囲に建築物等が存在する可能性が高い。LPWAにおいては、上述のとおり無線端末と基地局との電波伝搬距離は数Kmから十数Kmと長距離であるので、無線端末の設置場所と基地局との間にも、多数の建築物等が存在する可能性が高い。そして、当該建築物等は無線端末と基地局との通信に影響を与え、無線端末と基地局とにおける通信品質は、理想的な通信品質ではない可能性がある。なお通信品質は、例えば無線端末が基地局から受信する信号の受信強度や、受信強度の散らばり度合など指標で表される。
【0007】
他方、通信システムの経済コストを低減するためには、基地局と理想的な通信品質で通信可能な無線端末を基地局に収容するとともに、理想的な通信品質ではないが実質的に基地局と通信が可能な無線端末も、基地局に収容し、通信システムの効率を高めることが求められる。従ってLPWAの無線端末は、無線端末と基地局とにおける通信品質が理想的ではないが実質的に通信可能である可能性を考慮して、基地局と通信可能であるかを判定することが要求される。
【0008】
特許文献1は、複数の無線端末と、当該無線端末を制御するゲートウェイ装置とを含むマルチホップ無線システムに関する技術が開示される。特許文献1では、ゲートウェイ装置が複数の無線端末から2台以上の無線端末を選択し、選択された無線端末間で通信試験に係る試験信号を送受させる。そしてゲートウェイ装置は選択された無線端末間で送受される試験信号に対する受信強度の測定結果を収集し、ゲートウェイ装置は当該測定結果を用いて、選択された無線端末間における通信品質を判定する。
【0009】
特許文献1に開示される技術は、マルチホップ無線システムにおいて、ゲートウェイ装置の制御のもとで無線端末の通信試験を実行する技術であり、ゲートウェイ装置は試験信号の受信強度を用いて通信品質を判定する。上述のとおり、マルチホップ無線システムでは複数の無線端末でメッシュネットワークが形成されるので、一方の無線端末と他方の無線端末との間における受信強度が低く通信が不可能なのであれば、受信強度の散らばり度合といった他の指標を考慮せずとも、受信強度が高く通信可能な他の無線端末を、送信先(中継先)として選択すればよい。しかし上述のとおり、LPWAでは、無線端末から基地局への通信を中継する中継局は存在しないので、特許文献1のように、無線端末間で授受される信号の受信強度が低いことをもって通信が不可能であると判断し、他の無線端末を送信先に選択することはできない。
【0010】
LPWAにおいては、無線端末が基地局から受信する信号の受信強度が理想的な指標値より低くても、受信強度の散らばり度合が小さく安定していれば、無線端末は基地局と通信が実質的に可能であると判定するのが妥当である。このように特許文献1に開示される技術は、上述のように試験信号の受信強度のみを通信品質の判定に用いており、通信品質の判定に受信強度以外の指標を用いる動機付けもないので、特許文献1に開示される技術は、LPWAの無線端末が、無線端末と基地局とにおける通信品質が理想的ではないが実質的に通信可能である可能性を考慮して基地局と通信可能であるかを判定することを実現するものではない。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、無線端末と基地局とにおける通信品質が理想的ではないが実質的に通信可能である可能性を考慮して、基地局と通信可能であるかを判定することが可能である無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の本発明は、接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末であって、前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信部と、前記送受信部が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数部と、前記送受信部が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出部と、前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出部と、
前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶部と、前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較部と、前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較部と、前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第三比較部と、前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、前記受信回数が前記第一指標値未満である場合、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、ことを特徴とする。
【0013】
第二の本発明は、接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末であって、前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信部と、前記送受信部が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数部と、前記送受信部が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出部と、前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出部と、前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶部と、前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較部と、前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較部と、前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第三比較部と、前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定部と、前記判定部は、前記第一比較部の比較結果が、前記受信回数が前記第一指標以上であり、かつ前記第二比較部の比較結果が、前記平均値が第二指標未満であり、かつ前記第三比較部の比較結果が、散らばり度合値が前記第三指標値以下であると判定した場合、前記受信回数と前記平均値を前記記憶部に保持させる保持部と、前記送受信部に新たな下り信号を受信させ、前記計数部に前記新たな下り信号の新たな受信回数を導出させ、前記第一比較部に前記新たな受信回数と、前記記憶部に保持された前記受信回数とを比較し、前記受信強度導出部に前記新たな下り信号の受信強度の新たな平均値を導出させ、前記第二比較部に前記新たな平均値と、前記記憶部に保持された前記平均値とを比較する制御部と、を備え、前記判定部は、前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数以上であり、かつ前記第二比較部による比較結果が、前記新たな平均値が前記記憶部に記憶された前記平均値以上であると、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数未満である、もしくは前記第一比較部による比較結果が、前記新たな受信回数が前記記憶部に記憶された前記受信回数以上であり、かつ前記第二比較部による比較結果が、前記新たな平均値が前記記憶部に記憶された前記平均値未満であり、かつ前記第三比較部による比較結果が、前記散らばり度合値が前記記憶部に記憶された前記散らばり度合値より大きいと、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する
ことを特徴とする。
【0014】
第三の本発明は、接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末のコンピュータを、前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する送受信手段、前記送受信手段が前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する計数手段、前記送受信手段が前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する受信強度導出手段、前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する散らばり度合導出手段、前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する記憶手段、前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第一比較手段、前記平均値と前記第二指標値とを比較する第二比較手段、前記散らばり度合値と前記第二指標値とを比較する第三比較手段、前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する判定手段、として機能させるとともに、さらに、前記判定手段を、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、前記受信回数が前記第一指標値未満であるか、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、ように機能させることを特徴とする制御プログラムである。
【0015】
第四の本発明は、無線端末と、前記無線端末から上り信号を受信すると前記無線端末へ下り信号を送信する基地局とを含み、前記無線端末として請求項1の無線端末が適用された通信システムである。
【0016】
第五の本発明は、接続された装置の情報を含むデータ信号を、無線通信を用いて基地局へ送信する無線端末の制御方法であって、前記無線端末から前記基地局への上り信号および前記基地局から前記無線端末への下り信号を送受する第一のステップと、前記第一のステップで前記基地局から受信した複数の前記下り信号の数を示す受信回数を計数する第二のステップと、前記第一のステップで前記基地局から受信した前記下り信号の受信強度と、前記受信強度の平均値とを導出する第三のステップと、前記受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出する第四のステップと、前記受信回数と比較される第一指標値と、前記平均値と比較される第二指標値と、前記散らばり度合値と比較される第三指標値とを予め記憶する第五のステップと、前記受信回数と前記第一指標値とを比較する第六のステップと、前記平均値と前記第二指標値とを比較する第七のステップと、前記散らばり度合値と前記第三指標値とを比較する第八のステップと、前記無線端末から前記基地局への前記データ信号の送信が可能か不可能かを判定する第九のステップと、を備え、前記第九のステップは、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値以下の場合、または、前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標以上である場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が可能であると判定し、前記受信回数が前記第一指標値未満である場合、または前記受信回数が前記第一指標以上であり、前記平均値が第二指標未満であり、散らばり度合値が前記第三指標値より大きい場合に、前記無線端末から前記基地局へ前記データ信号の送信が不可能であると判定する、ことを特徴とする。


【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線端末と基地局とにおける通信品質が理想的ではないが実質的に通信可能である可能性を考慮して、基地局と通信可能であるかを判定することが可能である無線端末、制御プログラム、制御方法および通信システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る通信システムの全体構成を示す構成図である。
図2】第一の実施形態における無線端末の内部構成を示す構成図である。
図3】無線端末の動作概要を示すフローチャートである。
図4】無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から下り信号を受信する動作を示すフローチャートである。
図5】無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から下り信号を受信する流れを示すシーケンス図である。
図6】無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関する値を指標値と比較する動作を示すフローチャートである。
図7】無線端末の試験動作において、無線端末が記憶する指標値と、無線端末が保持する測定値とを示す図である。
図8】無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関し導出された値を示す図である。
図9】受信回数比較部、受信強度比較部、および散らばり度合比較部のそれぞれの判定と、データ送信制御部の判定との関連を示す図である。
図10】第二の実施形態における無線端末の内部構成を示す構成図である。
図11】第二の実施形態における無線端末の試験動作において、第二フェーズで無線端末が行う再比較動作を示すフローチャートである。
図12】第二の実施形態における無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関し導出された値を示す図である。
図13】第一の変形例における通信システムの動作の流れを示すシーケンス図である。
図14】第一の変形例における無線端末が扱う識別子を示す図、および変形例におけるネットワークサーバが記憶する、無線端末のIDに紐づけられた当該識別子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(A)第一の実施形態
本発明の第一の実施形態を、図1から図9を参照して説明する。なお第一の実施形態では、LPWAの規格の一つであるLoRaWAN(LoRa Wide Area Network:LoRaは登録商標)に規定される方式を一部利用する例を説明する。
【0020】
(A-1)構成
第一の実施形態に係る通信システム1と無線端末10の構成を、図1および図2を参照して説明する。
【0021】
(A-1-1)通信システムの全体構成
図1は、実施形態に係る通信システムの全体構成を示す構成図である。図1に示す通信システム1は、無線端末10、基地局20、ネットワークサーバ30、アプリケーションサーバ40を含む。通信システム1の用途(通信システム1が目的とする役務)は限定されないが、通信システム1は例えばメータ等の計測機器(図示せず)で計測されたデータを収集する用途で使用される。
【0022】
図1において、アプリケーションサーバ40はネットワークサーバ30に有線で接続され、ネットワークサーバ30は基地局20に有線で接続される。ネットワークサーバ30は基地局20と無線で接続されてもよい。無線端末10と基地局20とは、互いに無線通信を行う。本実施形態では、無線端末10から基地局20(ネットワークサーバ30)へ送信される信号を上り信号と呼び、基地局20(ネットワークサーバ30)から無線端末10へ送信される信号を下り信号と呼ぶ。
【0023】
通信システム1に含まれる無線端末10および基地局20の数は図1に限定されない。図1では一つの無線端末10が基地局20と無線通信を行う形態を示しているが、無線端末10は複数であってよい。また図1ではネットワークサーバ30に一つの基地局20が接続される形態を示しているが、複数の基地局20がネットワークサーバ30に接続されていてもよい。
【0024】
無線端末10は、メータ等の計測機器(図示せず)に接続され、計測機器の近傍に設置される。無線端末10は上述したLoRaWANに準拠した無線通信動作を行い、計測機器で計測されたデータを含む上り信号を基地局20へ送信する。本実施形態において無線端末10は、LoRaWANに規定される無線通信動作のうちClassAと呼ばれる動作を行う。ClassAに従った無線端末10の動作については後述する。
【0025】
また無線端末10は、無線端末10が基地局20と通信可能であるかを判定する。無線端末10は基地局20から下り信号を受信し、受信した下り信号から判定に用いられるパラメータを導出し、当該パラメータを無線端末10に予め記憶される指標値と比較することで、基地局20と通信可能であるかを判定する。無線端末10の構成および判定動作の詳細は後述する。
【0026】
基地局20はLoRaWANに準拠した装置であり、無線端末10と無線通信を行う。本実施形態において基地局20は、無線端末10と同様にLoRaWANに規定されるClassAに従った動作を行う。基地局20はネットワークサーバ30と接続され、基地局20は無線端末10から受信した上り信号をネットワークサーバ30へ中継する。また基地局20は、送信先が無線端末10であるデータをネットワークサーバ30から受信すると、当該データを含む下り信号を無線端末10へ送信する。なお基地局20は、無線端末10とネットワークサーバ30との間で無線通信と有線通信を変換し、情報を中継する能力を備えていればよく、基地局20は汎用的な通信装置を用いて実現されてもよい。故に以後の説明では基地局20の内部構成は図示せず、説明を省略する。
【0027】
ネットワークサーバ30はLoRaWANに準拠したサーバ装置であり、無線端末10が通信システム1へ参加(アクティベーション)する制御や、通信システム1に参加する無線端末10の管理を行う。ネットワークサーバ30は基地局20を介して上り信号を受信し、当該上り信号に対する応答(ACK:Acknowledgment)を含む下り信号(以下、応答のための下り信号をACKと呼ぶことがある)を、基地局20を介して無線端末10へ送信する。なお上り信号に対する応答(ACK)は、通信システム1において様式が予め規定されており、ネットワークサーバ30は当該規定に沿った応答(ACK)を無線端末10へ送信する。またネットワークサーバ30はアプリケーションサーバ40と接続され、無線端末10から基地局20を介して上り信号を受信し、当該上り信号に含まれる通信システム1の用途(役務)に関するデータをアプリケーションサーバ40に送信する。ここでのデータとは、例えば上述のとおり計測機器で計測されたデータである。ネットワークサーバ30は汎用的なサーバ装置を用いて実現される。故に以後の説明においては、ネットワークサーバ30の内部構成は図示せず、説明を省略する。
【0028】
アプリケーションサーバ40は、通信システム1の用途(役務)に関するデータをネットワークサーバ30から受信し、当該データを蓄積し処理して通信システム1の用途(役務)を実現するサーバ装置である。アプリケーションサーバ40は通信システム1の利用者が所持する情報端末(図示せず)と接続され、当該情報端末を通じて通信システム1の利用者へ役務を提供する。アプリケーションサーバ40は汎用的なサーバ装置を用いて実現される。故に以後の説明においては、アプリケーションサーバ40の内部構成は図示せず、説明を省略する。
【0029】
(A-1-2)無線端末の構成
図2は、第一の実施形態における無線端末の内部構成を示す構成図である。図2に示す無線端末10は、主制御部11、送信部12、受信部13、アンテナ14、記憶部15、導出部16、比較部17、データ送信制御部18、外部インタフェース19を有する。
【0030】
(A-1-2-1)内部構成の概要
無線端末10の構成のそれぞれについて概要を説明する。なお主制御部11、導出部16、比較部17はさらに複数の構成を含むが、それら構成については後述する。
【0031】
主制御部11は、無線端末10を制御するものでありCPU(Central Processing Unit)等により実現される。主制御部11は記憶部15に接続され、記憶部15に記憶されるプログラムに従って無線端末10を制御する。また主制御部11は送信部12と受信部13とに接続され、送信部12と受信部13とを制御して無線端末10と基地局20との間の無線通信(上り信号の送信と下り信号の受信)を実行させ、下り信号を受信した回数をメインメモリ113に記憶する。なお本実施例において無線端末10(主制御部11)は、基地局20から受信した下り信号が、通信システム1において様式が予め規定されている応答(ACK)であると認識した場合に、下り信号を受信したと判断する。また主制御部11は導出部16と接続され、無線端末10が基地局20から受信した下り信号に対するパラメータ導出を導出部16に実行させる。また主制御部11は比較部17に接続され、導出部16により導出されたパラメータと、記憶部15に予め記憶される指標値との比較を比較部17に行わせる。また主制御部11はデータ送信制御部18に接続され、データ送信制御部18からデータ送信の指示を受けると、送信部12を制御してデータを含む上り信号を無線端末10から基地局20へ送信させる。
【0032】
送信部12は、無線端末10から基地局20へ送信される上り信号の送信処理を行う。送信部12が行う送信処理は、LoRaWANに規定されるLoRa変調方式に従った変調処理や暗号化処理を含む。送信部12はアンテナ14と接続され、送信部12で送信処理された上り信号は、アンテナ14から電波として送出される。
【0033】
受信部13は、基地局20からアンテナ14を介して受信した下り信号の受信処理を行う。受信部13が行う受信処理は、LoRaWANに規定されるLoRa変調方式に従った復調処理や復号処理を含む。受信部13はアンテナ14と接続され、アンテナ14で受信された下り信号が受信部13に入力され、受信部13で受信処理が行われる。
【0034】
アンテナ14は送信部12および受信部13と接続され、無線端末10と基地局20との間で電波の送受信を行う。
【0035】
記憶部15は、無線端末10を動作させるためのプログラムや、無線端末10が判定動作に用いる指標値を格納する主記憶装置である。記憶部15はEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発メモリで実現される。
【0036】
導出部16は、無線端末10が基地局20から受信した下り信号に対するパラメータ導出を行う。当該パラメータは、記憶部15に予め記憶される指標値と当該パラメータとを比較部17が比較するために用いられる。本実施形態において導出部16はさらに受信強度導出部161、平均値導出部162、散らばり度合導出部163を有し、これらはそれぞれ異なるパラメータを導出する。導出部16の細部および動作の詳細は後述する。
【0037】
比較部17は、導出部16で導出されたパラメータと記憶部15に予め記憶される指標値とを比較する。比較部17による比較動作の結果、無線端末10と基地局20との通信が可能であるかが判定される。本実施形態において比較部17はさらに受信回数比較部171、受信強度比較部172、散らばり度合比較部173を有し、これらはそれぞれ異なるパラメータと指標値とを比較する。比較部17の細部および動作の詳細は後述する。
【0038】
データ送信制御部18は、無線端末10に接続される計測機器(図示せず)で計測されたデータを無線端末10から基地局20へ送信するために、比較部17による比較動作の結果に応じて、当該データを含む上り信号の送信を主制御部11に指示する。データ送信制御部18は外部インタフェース19に接続され、外部インタフェース19を介して計測機器からデータを取得する。なお本実施形態では、データ送信制御部18は主制御部11と区別される機能部であるが、主制御部11が外部インタフェース19と接続され、主制御部11がデータ送信制御部18の機能を有していてもよい。
【0039】
外部インタフェース19は、無線端末10と計測機器(図示せず)とを接続するインタフェースである。ここで計測装置は上述のとおり例えば各種メータ等(電気、水道等)である。外部インタフェース19は既存の規格に従ったものでよく、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格や、Ethernet規格に従ったアダプタである。計測装置で計測されたデータは、外部インタフェース19を介してデータ送信制御部18に入力される。
【0040】
なお本実施形態において、無線端末10は計測装置で計測されたデータを、計測機器に能動的に働きかけて取得してもよいし、無線端末10は計測装置で計測されたデータを計測機器から受動的に与えられてもよい。また、無線端末10は、ネットワークサーバ30あるいはアプリケーションサーバ40から指示を受け、計測機器に能動的に働きかけて計測装置で計測されたデータを取得してもよい。
【0041】
(A-1-2-2)内部構成の細部
無線端末10の構成における主制御部11、導出部16、比較部17の細部について説明する。
【0042】
主制御部11は、タイマ111、カウンタ112、メインメモリ113、平均値保持部114を有する。
【0043】
タイマ111は、無線端末10の内部で時間を計る。主制御部11が送信部12および受信部13を制御し、LoRaWANに規定されるClassAに準拠した無線通信動作を行わせるにあたり、タイマ111は予め規定される時間を計る。具体的には、送信部12が上り信号を送信するとタイマ111は規定時間T1を計測し、主制御部11は規定時間T1の経過後に受信部13を受信可能状態とする。受信部13が受信可能状態となると、タイマ111は規定時間T2を計測し、主制御部11は規定時間T2の経過後に受信部13を受信可能状態からスリープ状態へ遷移させる。
【0044】
カウンタ112は、無線端末10が基地局20へ上り信号を送信した回数をカウントする。具体的には、カウンタ112は主制御部11が送信部12を制御して上り信号を送信する度に、送信回数を一つインクリメントする。
【0045】
メインメモリ113は、無線端末10の動作に用いられる一時記憶装置である。具体的には、記憶部15に記憶されるプログラムがメインメモリ113にロードされ、無線端末10が動作する。また無線端末10が基地局20から受信した下り信号それぞれに対し、導出部16がパラメータを導出する際、メインメモリ113は導出部16にアクセスされ、導出部16により導出されたパラメータはメインメモリ113に格納される。またメインメモリ113は比較部17にアクセスされ、メインメモリ113に格納されるパラメータは比較部17に渡される。メインメモリ113はRAM(Random Access Memory)等のメモリで実現される。
【0046】
平均値保持部114は、比較部17における散らばり度合比較部173から指示を受けると、導出部16により導出された受信強度の平均値を、メインメモリ113の予め用意される領域に保持させる。
【0047】
導出部16は、受信強度導出部161、平均値導出部162、散らばり度合導出部163を有する。これらはそれぞれ異なるパラメータを導出する。
【0048】
受信強度導出部161は、無線端末10が基地局20から受信した、上述した応答(ACK)としての下り信号それぞれに対し電波受信強度を測定して受信強度値を導出する。具体的には、主制御部11の制御のもと受信部13が下り信号を受信すると、下り信号は受信強度導出部161に入力される。受信強度導出部161は入力された下り信号毎に受信強度値を導出し、受信強度値をメインメモリ113に格納する。受信強度値の表現形式は限定されないが、例えば下り信号の電力レベル(dBm)で表されてもよいし、RSSI(Received Signal Strength Indicator)で表されてもよい。なお、例えば、無線端末10が基地局20から受信した電波が極めて微弱であり、無線端末10が基地局20から応答(ACK)としての下り信号を受信したと判断できない場合は、無線端末10は基地局20から下り信号を受信しなかったものとして、受信強度導出部161は受信強度値を導出しない。
【0049】
平均値導出部162は、受信強度導出部161により導出された受信強度値に対する、受信強度の平均値(以下、平均値と呼ぶ)を導出する。具体的には、下り信号毎の受信強度値がメインメモリ113に格納されると、平均値導出部162はメインメモリ113から各受信強度値を読み出して平均値を導出し、平均値をメインメモリ113に格納する。
【0050】
散らばり度合導出部163は、受信強度導出部161により導出された受信強度値に対する、受信強度の散らばり度合値(以下、散らばり度合値と呼ぶ)を導出する。具体的には、下り信号毎の受信強度値がメインメモリ113に格納されると、散らばり度合導出部163はメインメモリ113から各受信強度値を読み出して散らばり度合値を導出し、散らばり度合値をメインメモリ113に格納する。散らばり度合値は、下り信号毎の受信強度値に対する標準偏差を表すものであってもよいし、下り信号毎の受信強度値に対する分散を表すものであってもよい。なお本実施形態における標準偏差は分散の正の平方根を指し、分散は統計値と平均値との違い(偏差)を二乗しそれを算術平均したものを指す。
【0051】
比較部17は受信回数比較部171、受信強度比較部172、散らばり度合比較部173を有する。これらはそれぞれ異なるパラメータと指標値とを比較する。
【0052】
受信回数比較部171は、無線端末10が基地局20から下り信号を受信した回数と、記憶部15に予め記憶される受信回数の指標値(以下、受信回数指標値と呼ぶ)とを比較する。具体的には、受信回数比較部171はメインメモリ113に格納された受信回数の値を読み出し、受信回数指標値と比較する。受信回数比較部171は、受信回数が受信回数指標値以上であると肯定(YES)の結果を出力し、受信回数が受信回数指標値未満であると否定(NO)の結果を出力する。受信回数比較部171による出力は、データ送信制御部18および後述する受信強度比較部172に入力される。
【0053】
受信強度比較部172は、平均値導出部162が導出した平均値(受信強度の平均値)と、記憶部15に予め記憶される受信強度の指標値(以下、受信強度指標値と呼ぶ)とを比較する。具体的には、受信強度比較部172はメインメモリ113に格納された平均値を読み出し、受信強度指標値と比較する。受信強度比較部172は、平均値が受信強度指標値未満であると肯定(YES)の結果を出力し、平均値が受信強度指標値以上であると否定(NO)の結果を出力する。受信強度比較部172による出力は、データ送信制御部18および後述する散らばり度合比較部173に入力される。なお受信強度比較部172は、受信回数比較部171による比較結果が肯定である場合に、平均値と受信強度指標値とを比較する。
【0054】
散らばり度合比較部173は、散らばり度合導出部163が導出した散らばり度合値(受信強度の散らばり度合を示す)と、記憶部15に予め記憶される散らばり度合の指標値(以下、散らばり度合指標値と呼ぶ)とを比較する。具体的には、散らばり度合比較部173はメインメモリ113に格納された散らばり度合値を読み出し、散らばり度合指標値と比較する。散らばり度合比較部173は、散らばり度合値が散らばり度合指標値以下であると肯定(YES)の結果を出力し、散らばり度合値が散らばり度合指標値より大きいと否定(NO)の結果を出力する。散らばり度合比較部173による出力は、データ送信制御部18および主制御部11の平均値保持部114に入力される。なお上述した平均値保持部114は、散らばり度合比較部173から肯定の出力が入力されると、受信強度の平均値をメインメモリ113の予め用意される領域に保持する。なお散らばり度合比較部173は、受信強度比較部172による比較結果が肯定である場合に、散らばり度合値と散らばり度合指標値とを比較する。
【0055】
(A-2)動作
無線端末10が、無線端末10と基地局20との通信可能であるかを判定する動作を、図3から図9を用いて説明する。以降の説明において(A-2-1)では無線端末10の動作の概要を説明する。(A-2-2)では無線端末10が基地局20から下り信号を受信する動作(以下、受信動作と呼ぶ)を説明する。(A-2-3)では無線端末10が、基地局20から受信した下り信号に関するパラメータを指標値と比較する動作(以下、比較動作と呼ぶ)を説明する。
【0056】
(A-2-1)無線端末10の動作の概要
図3は、無線端末の動作概要を示すフローチャートである。まず無線端末10において、無線端末10と基地局20とが通信可能であるかを判定する試験動作(以下、試験動作と呼ぶ)が開始されるトリガが無線端末10の主制御部11に入力される(S101)。トリガは、無線端末10に電源が投入されたことや、無線端末10が有する図示しない機械式スイッチが操作されたこと等である。
【0057】
次いで、無線端末10は試験動作を行う(S102)。当該試験動作は、上述した受信動作と比較動作の双方を含む。
【0058】
無線端末10は、試験動作の結果、無線端末10が基地局20との間で通信可能か否かを判定する(S103)。具体的には、無線端末10のデータ送信制御部18は、比較部17の各比較部(受信回数比較部171、受信強度比較部172、散らばり度合比較部173)から入力される比較結果に基づき、無線端末10が基地局20との間で通信可能か否かを判定する。
【0059】
判定が肯定(S103:YES)であれば、無線端末10は計測機器(図示せず)から取得したデータを含む上り信号を基地局20へ送信する運用状態へ移行する。具体的には、データ送信制御部18は、外部インタフェース19から取得したデータが存在する場合は、当該データを含む上り信号の送信を主制御部11に指示し、主制御部11の制御のもと送信部12から上り信号が送信される。
【0060】
判定が否定(S103:NO)であれば、無線端末10は運用状態へ移行しない。
【0061】
以上が、無線端末10の動作の概要である。続いて、図3に示した試験動作(S102)の詳細について、受信動作と比較動作とを説明する。
【0062】
(A-2-2)下り信号の受信動作
図4は、無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から下り信号を受信する動作を示すフローチャートである。図5は無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から下り信号を受信する流れを示すシーケンス図である。図8は無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関し導出された値を示す図である。
【0063】
図4を参照して説明する。なお図4のフローチャートの各動作を行う主体については、図2に示した無線端末10の各構成部を挙げて説明する。
【0064】
まず主制御部11は、カウンタ112およびメインメモリ113を制御し、上り信号の送信回数、下り信号の受信回数および受信強度の記録を初期化する(S201)。
【0065】
次いで主制御部11は、送信部12を制御して上り信号を基地局20へ送信させる(S202)。当該動作で無線端末10から基地局20へ送信される上り信号は、ダミーデータを含むものであってよい。送信部12が上り信号を送信すると、カウンタ112は送信回数を1だけインクリメントする。なお、当該受信動作において無線端末10が基地局20へ上り信号を送信する回数は、記憶部15に記憶されるプログラムに予め規定されている。
【0066】
次いで主制御部11は、受信部13を制御して無線端末10が基地局20から下り信号を受信可能な受信可能状態に移行させ、規定時間内に基地局20から下り信号を受信したか否かを判定する(S204)。
【0067】
図4におけるS202からS204の動作は、LoRaWANに規定されるClassAに準拠するものである。図4におけるS202からS204の動作を、図5を用いて説明する。
【0068】
無線端末10から基地局20へ上り信号が送信され(S301)、基地局20は上り信号をネットワークサーバ30へ中継する(S302)。無線端末10が上り信号を送信すると、主制御部11は規定時間T1の経過後に受信部13を受信可能状態に移行させる(S305)。主制御部11は、規定時間T2を上限として受信部13を受信可能状態とした後、受信部13をスリープ状態へ移行させる。図4のS204における規定時間とは、図5における規定時間T2に相当する。
【0069】
一方でネットワークサーバ30は、無線端末10が受信可能状態である期間に、無線端末10へ基地局20を介して下り信号を送信する(S303)。当該下り信号は、上り信号に対する応答(ACK)である。基地局20は下り信号を無線端末10へ中継する(S304)。ネットワークサーバ30は、例えば上り信号を受信してから規定時間T3が経過したタイミングで下り信号を送信する。この場合、規定時間T3は規定時間T1以上かつ規定時間T1と規定時間T2の和未満に設定される(T1≦T3<T1+T2)。
【0070】
なお図5に示すシーケンス図は、LoRaWANに規定されるClassAの仕様を一部簡略化して図示している。ClassAにおいて、受信部13が規定時間T2の間に基地局20から下り信号を受信しなかった場合、主制御部11は規定時間T2の経過後に、再度、受信部13を受信可能状態に移行させる。
【0071】
図4に戻って説明を続ける。無線端末10が規定時間内に基地局20から下り信号を受信したならば(S204:YES)、受信強度導出部161は当該下り信号における受信強度を測定し(S205)、測定された受信強度値をメインメモリ113に記憶する(S206)。また主制御部11は、下り信号の受信回数を1だけインクリメントしてメインメモリ113に記憶する(S207)
【0072】
一方で無線端末10が規定時間内に基地局20から下り信号を受信しなければ(S204:NO)、図4のS205からS207の動作は行われず、次の処理(S208)へ進む。
【0073】
次いで主制御部11は、カウンタ112によりカウントされる上り信号の送信回数が、予め定められる規定値以上か否かを判定する(S208)。上り信号の送信回数が規定値未満であれば(S208:NO)、主制御部11は送信部12を制御し、基地局20へ上り信号を送信する(S202)。以降は、上り信号の送信回数が予め定められる規定値以上(S208:YES)となるまで、上り信号の送信、下り信号の受信および電波強度の測定が繰り返される。
【0074】
図4に示す一連の動作によってメインメモリ113に記憶される情報を、図8を参照して説明する。図8に示す表は、メインメモリ113に設けられる配列を模式的に表したものである。当該配列は「受信強度測定値」欄と、「受信回数」欄と、「受信強度平均値」欄と、「散らばり度合値」欄を有する。図8は上り信号の送信回数の規定値が10回である場合を例示しており、送信回数の規定値に合わせて「受信強度測定値」欄は1番目から10番目の番号が振られている。図4に示す処理のうちS202からS207の一連の処理が一回行われると、「受信強度測定値」欄の若い番号から順に、受信強度導出部161で導出された受信強度値(図8においてはxn(nは整数))が記録され、「受信回数」欄の値が1ずつインクリメントされる。
【0075】
例えば無線端末10が基地局20へ上り信号を10回送信し、無線端末10が全ての上り信号に対し基地局20から下り信号を受信したならば、図8の配列における「受信強度測定値」欄の1番目から10番目までのそれぞれに受信強度値が記憶され、「受信回数」欄は10が記憶される。また例えば無線端末10が基地局20へ上り信号を10回送信し、5回目の上り信号送信および8回目の上り信号送信に対して、無線端末10が基地局20から下り信号を受信せず、他の上り信号に対しては下り信号を受信したならば、図8の配列における「受信強度測定値」欄の5番目と8番目を除く欄に受信強度値が記憶され、「受信回数」欄は8が記憶される。なお図8において「受信回数」欄の値はyと表現している。
【0076】
無線端末10が上り信号を規定される回数だけ基地局20へ送信し、図8に示すメインメモリ113上の配列に情報が記憶されると、無線端末10は図3に示した試験動作(S102)における比較動作を行う。
【0077】
(A-2-3)指標値との比較動作
図6は、無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関する値を指標値と比較する動作を示すフローチャートである。図7は無線端末の試験動作において、無線端末が記憶する指標値と、無線端末が保持する測定値とを示す図である。
【0078】
図6を参照して説明する。なお(A-2-2)と同様に、図6のフローチャートの各動作を行う主体については、図2に示した無線端末10の各構成部を挙げて説明する。
【0079】
まず平均値導出部162は、メインメモリ113に記憶された受信強度値に対する、受信強度の平均値を導出し、平均値をメインメモリ113に記憶する(S401)。当該動作により、図8に示す配列の「受信強度平均値」欄に平均値(図8においてはx_ave)が記憶される。
【0080】
次いで散らばり度合導出部163は、メインメモリ113に記憶された受信強度値に対する、受信強度の散らばり度合を示す散らばり度合値を導出し、散らばり度合値をメインメモリ113に記憶する(S402)。当該動作により、図8に示す配列の「散らばり度合値」欄に散らばり度合値(図8においてはz)が記憶される。
【0081】
次いで主制御部11は、記憶部15から比較動作に用いられる指標値を読み出し、メインメモリ113に記憶する(S403)。図7(a)に示す表は、メインメモリ113上の配列に記憶された指標値を表すものである。当該配列は「受信回数指標値」欄と「受信強度指標値」欄と「散らばり度合指標値」欄を有する。また比較動作に用いられる指標値としては、受信回数指標値はα、受信強度指標値はβ、散らばり度合指標値はγが記憶される。これら指標値は記憶部15に記憶されるプログラムに予め規定されている。
【0082】
受信回数指標値、受信強度指標値、散らばり度合指標値それぞれの具体的な値は限定されないが、受信回数指標値は例えば、規定される送信回数の7割(規定される送信回数が10回であれば7)等としてもよい。また受信強度指標値は例えば-115dBm等としてもよい。また散らばり度合指標値は、例えば標準偏差を用いるならば5dBm等とする。本実施例においては、標準偏差が5dBm以下であれば、無線端末10が基地局20から受信する下り信号の受信強度の散らばり度合は小さいものとする。
【0083】
また受信強度指標値については、指標値に下限値と上限値を設けてもよい。この場合、下限値β_lと上限値β_uの二つが記憶部15に格納されるプログラムで規定され、図7(a)の「受信強度指標値」欄に当該二つの指標値が読み込まれるようにしてもよい。下限値β_lの具体的な値は限定されないが、無線端末10が受信可能な電波強度の限界値を考慮して設定されるのが好適であり、例えば-130dBm等である。上限値β_uの具体的な値は、例えば上述した-115dBmである。
【0084】
次いで受信回数比較部171は、メインメモリ113に格納される受信回数の値y(図8)と、受信回数指標値α(図7(a))と比較する(S404)。受信回数が受信回数指標値以上(y≧α)であると比較結果は肯定となり(S404:YES)、受信回数が受信回数指標値未満(y<α)であると比較結果は否定(S404:NO)となる。ここでは、受信回数比較部171による比較結果は肯定であったものとする。
【0085】
受信回数比較部171の比較結果が肯定(S404:YES)であると、受信強度比較部172はメインメモリ113に格納される受信強度の平均値x_ave(図8)と、受信強度指標値β(図7(a))と比較する(S406)。平均値が受信強度指標値未満(x_ave<β)であると比較結果は肯定となり(S406:YES)、平均値が受信強度指標値以上(x_ave≧β)であると比較結果は否定(S406:NO)となる。ここでは、受信強度比較部172による比較結果は肯定であったものとする。
【0086】
なお、上述のように受信強度指標値に下限値β_lと上限値β_uが規定される場合、受信強度比較部172は、受信強度の平均値x_aveが下限値β_l以上かつ上限値β_u未満(β_l≦x_ave<β_u)であると比較結果を肯定とし(S406:YES)、受信強度の平均値x_aveが上限値β_u以上(x_ave≧β_u)であると比較結果を否定(S406:NO)としてもよい。
【0087】
受信強度比較部172の比較結果が肯定(S406:YES)であると、散らばり度合比較部173はメインメモリ113に格納される散らばり度合値z(図8)と、散らばり度合指標値γ(図7(a))と比較する(S408)。散らばり度合値が散らばり度合指標値以下(z≦γ)であると比較結果は肯定となり(S408:YES)、散らばり度合値が散らばり度合指標値より大きい(z>γ)と比較結果は否定(S408:NO)となる。ここでは、散らばり度合比較部173による比較結果は肯定であったものとする。
【0088】
散らばり度合比較部173の比較結果が肯定(S408:YES)であると、散らばり度合比較部173は当該比較結果(比較結果が肯定であることを示す情報)をデータ送信制御部18および平均値保持部114に出力する(S410)。
【0089】
平均値保持部114は、散らばり度合比較部173から比較結果が肯定であることを示す情報が入力されると、メインメモリ113に記憶される受信強度の平均値x_aveを、メインメモリ113に予め用意される他の領域(配列)に保持する(S411)。図7(b)に示す表は、メインメモリ113上の予め用意される領域「受信強度平均値(保持)」欄に記憶された平均値x_aveを示すものである。図7(b)に示す平均値x_aveは、図8の「受信強度平均値」欄の平均値x_aveと同一の値であるが、図8に示す配列と図7(b)に示す配列とはそれぞれ、メインメモリ113の異なる領域に設けられており、平均値保持部114は図8に示す配列の平均値x_aveを、図7(b)に示す領域にコピーする。
【0090】
なお、受信回数比較部171による比較結果が否定(S404:NO)であった場合は、受信回数比較部171は当該比較結果(比較結果が否定であることを示す情報)をデータ送信制御部18に出力する(S405)。
【0091】
受信強度比較部172による比較結果が否定(S406:NO)であった場合は、受信強度比較部172は当該比較結果(比較結果が否定であることを示す情報)をデータ送信制御部18に出力する(S407)。
【0092】
散らばり度合比較部173による比較結果が否定(S408:NO)であった場合は、散らばり度合比較部173は当該比較結果(比較結果が否定であることを示す情報)をデータ送信制御部18に出力する(S409)。
【0093】
以上が、無線端末10の動作うち、図3に示した試験動作(S102)の詳細である。
【0094】
図3図6との対応関係における、受信回数比較部171、受信強度比較部172、及び散らばり度合比較部173のそれぞれの判定と、データ送信制御部18の判定との関連を、図9を参照して説明する。図9は受信回数比較部、受信強度比較部、および散らばり度合比較部のそれぞれの判定と、データ送信制御部の判定との関連を示す図である。
【0095】
データ送信制御部18は、散らばり度合比較部173から比較結果が肯定であること(S408:YES)を示す情報が入力されると(S410)、無線端末10は基地局20と通信が可能と判定する(図3のS103:YES)(図9の4行目)。これは、無線端末10が基地局20から受信する下り信号に関し、受信回数は規定値以上であり、受信強度の平均値は規定値に満たないが、受信強度の散らばり度合は規定値以下であることから、無線端末10は基地局20と通信が可能と判定することを意味する。
【0096】
またデータ送信制御部18は、受信強度比較部172から、比較結果が否定であること(S406:NO)を示す情報が入力されると(S407)、無線端末10は基地局20と通信が可能と判定する(図3のS103:YES)(図9の2行目)。これは、無線端末10が基地局20から受信する下り信号に関し、受信回数は規定値以上であり、受信強度の平均値は規定値未満ではない(受信強度の平均値は規定値以上と同義)であることから、受信強度の散らばり度合を考慮せずとも、無線端末10は基地局20と通信が可能と判定することを意味する。
【0097】
無線端末10が基地局20と通信が可能と判定されると(S103:YES)、無線端末10は計測機器(図示せず)から取得したデータを含む上り信号を基地局20へ送信する運用状態へ移行する。具体的には、運用状態においてデータ送信制御部18は、外部インタフェース19を介して取得したデータが存在する場合は、当該データを含む上り信号の送信を主制御部11に指示し、無線端末10から基地局20へデータを含む上り信号が送信される(S104)。
【0098】
一方でデータ送信制御部18は、散らばり度合比較部173から、比較結果が否定であること(S408:NO)を示す情報が入力されると(S409)、無線端末10と基地局20との通信は不可と判定する(図3のS103:NO)(図9の3行目)。これは、無線端末10が基地局20から受信する下り信号に関し、受信回数は規定値以上であるが、受信強度の平均値は規定値に満たず、受信強度の散らばり度合は規定値より大きいことから、無線端末10と基地局20との通信は不可と判定することを意味する。
【0099】
またデータ送信制御部18は、受信回数比較部171から、比較結果が否定であること(S404:NO)を示す情報が入力されると(S405)、無線端末10と基地局20との通信は不可と判定する(図3のS103:NO)(図9の1行目)。これは、無線端末10が基地局20から受信する下り信号に関し、受信回数は規定値未満であることから、受信強度の平均値および受信強度の散らばり度合を考慮するまでもなく、無線端末10と基地局20と通信は不可と判定することを意味する。
【0100】
データ送信制御部18が無線端末10は基地局20と通信が不可と判定すると(S103:NO)、無線端末10から基地局20へデータを含む上り信号の送信が開始されず、無線端末10の動作は終了する。
【0101】
(A-3)第一の実施形態における効果
【0102】
本発明の第一の実施形態によれば、無線端末10は、無線端末10が基地局20から受信する下り信号の受信強度の平均値と、受信強度の散らばり度合との二つを考慮して、基地局20と通信可能であるかを判定することが可能となる。
【0103】
第一の実施形態に係る無線端末10は、導出部16が下り信号の受信強度の平均値と、受信強度の散らばり度合とを導出し、比較部17が当該二つの値を指標値と比較し、データ送信制御部18が比較結果に応じて無線端末10と基地局20との通信が可能であるか否かを判定する。そのため、無線端末10の設置される環境が、無線端末10と基地局20との間の電波伝搬における受信強度と受信強度の散らばり度合に影響を与えても、第一の実施形態に係る無線端末10は、その影響を考慮して基地局20と通信可能であるかを判定することができる。
【0104】
上述したように、無線端末10が基地局20から受信する下り信号の受信強度値が規定値以上でなくとも、下り信号の受信強度の散らばり度合が一定以下であれば、換言すると下り信号の受信強度値が規定値に満たずとも無線端末10が基地局20から安定して下り信号を受信できれば、無線端末10は実質的に基地局20と通信が可能と考えられる。
【0105】
この点において第一の実施形態に係る無線端末10は、無線端末間の通信品質を電波の受信強度のみを用いて判定する従来態様(例えば上述した特許文献1)に比べ、実質的に基地局20と通信可能である無線端末10に対して通信不可と判定せず、無線端末10は基地局20と通信可能であると判定することができる。
【0106】
また第一の実施形態に係る無線端末10を通信システム1に適用することで、基地局20一台あたりに収容される無線端末10の台数を向上させることができる。
【0107】
無線端末10は基地局20がカバーする範囲に多数設置される。そのため、基地局20に可能な限り多くの無線端末10を収容して通信システム1の経済コストを低減することが求められる。そのためには、基地局20と理想的な通信品質で通信可能な無線端末10を基地局20に収容するとともに、理想的な通信品質ではないが基地局20と実質的に通信可能な無線端末10も基地局20に収容する必要がある。この点において第一の実施形態に係る無線端末10は、実質的に基地局20と通信可能である環境に設置される無線端末10対して通信可能と判定するので、基地局20一台あたりに収容される無線端末10の台数が向上される。
【0108】
また第一の実施形態に係る無線端末10は、無線端末10が基地局20へ送信した上り信号に対する下り信号の受信回数、換言すると下り信号の受信成功率も用いて基地局20と通信可能であるかを判定するので、無線端末間の通信品質を電波の受信強度のみを用いて判定する従来態様(例えば上述した特許文献1)に比べ、精度よく判定を行うことができる。
【0109】
(B)第二の実施形態
本発明の第二の実施形態を、図10から図12を参照して説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態と同様にLoRaWANに規定される方式を一部利用する実施形態である。また第二の実施形態における無線端末10Bは、第一の実施形態における無線端末10の内部構成が一部変更される。また第二の実施形態における無線端末10Bは、第一の実施形態における無線端末10の動作(図4図6)が行い、さらに新たな動作を行う。それなので以降の説明では、第一の実施形態と同様の構成と動作については図1から図9を再度用いて説明を適宜に省略し、第一の実施形態に対する第二の実施形態の差分を中心に説明する。
【0110】
(B-1)構成
第二の実施形態に係る通信システム1Bの構成は、図1に示す第一の実施形態に係る通信システム1と同様である。ただし、第二の実施形態における無線端末10Bの内部構成は、第一の実施形態における無線端末10に対して変更されている。
【0111】
(B-1-1)無線端末10Bの構成
図10は、第二の実施形態における無線端末の内部構成を示す構成図である。図10に示す無線端末10Bは、主制御部11B、送信部12、受信部13、アンテナ14、記憶部15、導出部16、比較部17、データ送信制御部18、外部インタフェース19を有する。
【0112】
主制御部11Bは、第一の実施形態における主制御部11に比べて内部構成の一部と動作が異なる。そのため、主制御部11Bと他の機能部との入出力関係および機能の連携は、第一の実施形態の無線端末10に比べて異なる。
【0113】
具体的には、第一の実施形態においては、比較部17による比較結果はデータ送信制御部18へ出力される。対して第二の実施形態においては、比較部17による比較結果は主制御部11Bへ出力される。また第一の実施形態においては、データ送信制御部18が比較部17による比較結果に基づき無線端末10が基地局20と通信可能かを判定する。対して第二の実施形態においては、主制御部11Bが比較部17による比較結果に基づき無線端末10が基地局20と通信可能かを判定する。また第一の実施形態においては、データ送信制御部18は通信可能と判定すると、基地局20へ送信するべきデータの送信を主制御部11に指示する。対して第二の実施形態においては、主制御部11Bは通信可能と判定するとデータ送信制御部18に基地局20へ送信するべきデータがあるか問い合わせ、基地局20へ送信するべきデータがある場合は、主制御部11Bは送信部12を制御して当該データを基地局20へ送信する。
【0114】
上記の動作を行うために主制御部11Bは試験制御部115を有する。無線端末10Bが下り信号の受信動作(上述の(A-2-2)および図4で説明)および指標値との比較動作(上述の(A-2-3)および図6で説明)の一連の動作(以降、第一フェーズの動作と呼ぶ)を行った後、試験制御部115は無線端末10Bに基地局20から新たな下り信号を受信させ、新たな下り信号における受信回数と受信強度を用いて比較部17に再度比較を行わせる動作(以降、第二フェーズの動作と呼ぶ)の制御を行う。
【0115】
以上が、第二の実施形態における無線端末10Bの構成である。無線端末10Bの上記以外の構成は、第一の実施形態の無線端末10と同様である。
【0116】
(B-2)動作
無線端末10Bが無線端末10Bと基地局20との通信可能であるかを判定する動作について、第一の実施形態と共通する動作については概説し、第一の実施形態との差分については図11および図12を用いて説明する。上述のとおり、無線端末10Bの動作は、第一の実施形態における無線端末10の動作と同様である第一フェーズの動作(図4図6)に、新たに第二フェーズの動作が追加されたものである。
【0117】
(B-2-1)無線端末10Bの動作の概要
無線端末10Bの動作概要は、図3に示す第一の実施形態の無線端末10の動作概要と同様である。ただし、無線端末10Bにおける試験動作(図3のS102B)は、上述の第一フェーズの動作に第二フェーズの動作が追加されたものである。
【0118】
(B-2-2)無線端末10Bにおける試験動作
無線端末10Bにおける試験動作(図3のS102B)の詳細を説明する。まず無線端末10Bは第一フェーズの動作を行う。無線端末10Bは第一の実施形態と同様に図4に示すフローチャートのS201からS208の処理を実行する。これにより無線端末10Bのメインメモリ113に、図8に示す配列の「受信強度測定値」欄と「受信回数」欄との値が記憶される。
【0119】
次いで無線端末10Bは、第一の実施形態と同様に図6に示すフローチャートのS401からS411の処理を実行する。これにより無線端末10Bのメインメモリ113に、図8に示す配列の「受信強度平均値」欄と「散らばり度合値」欄との値が記憶される。そしてメインメモリ113に記憶された情報に基づいて、受信回数比較部171、受信強度比較部172および散らばり度合比較部173によって比較処理(S404、S406、S408)と比較結果の出力(S405、S407、S409、S410)が行われる。受信回数比較部171、受信強度比較部172および散らばり度合比較部173は、それぞれの比較結果を主制御部11Bに出力する。
【0120】
ここでは、受信回数比較部171、受信強度比較部172および散らばり度合比較部173のそれぞれにおける比較結果はいずれも肯定となり(S404:YES,S406:YES、S408:YES)、平均値保持部114が受信強度の平均値x_ave(図8)を、メインメモリ113に予め用意される領域(図7(b)の「受信強度平均値(保持)」)に記憶したものとする(S411)。
【0121】
以上が第一フェーズの動作である。
【0122】
試験制御部115は、散らばり度合比較部173から比較結果が肯定であることを示す情報が入力されると、第二フェーズの動作を行う。第二フェーズの動作について図4図11および図12を参照して説明する。図11は第二の実施形態における無線端末の試験動作において、第二フェーズで無線端末が行う再比較動作を示すフローチャートである。図12は第二の実施形態における無線端末の試験動作において、無線端末が基地局から受信した下り信号に関し導出された値を示す図である。
【0123】
散らばり度合比較部173の動作において、散らばり度合値が散らばり度合指標値以下であると、比較結果が肯定であること(S408:YES)を示す情報が散らばり度合比較部173から試験制御部115に入力される(S410)。次いで主制御部11Bは図4に示すフローチャートS201からS208の処理を再度実行する。これにより、図8に示す配列の各欄は初期化され、無線端末10Bは基地局20から新たに下り信号を受信する。そして新たな下り信号に対する受信強度の値と受信回数の値が図12に示す配列の「受信強度測定値」欄と「受信回数」欄とに記憶される。ここでは、新たな下り信号のそれぞれに対する受信強度値を「xn_s(nは整数)」とし、新たな下り信号に対する受信回数の値を「y_s」とする。なお第二フェーズの動作では散らばり度合値は導出されないので、図12における「散らばり度合値」欄は値が記憶されない(図12においては「-」と記載)。
【0124】
次いで無線端末10Bは、図11に示すフローチャートの動作を行う。まず平均値導出部162は、メインメモリ113に記憶された新たな受信強度値に対する新たな平均値を導出し、新たな平均値をメインメモリ113に記憶する(S501)。ここでは、新たな平均値を「x_ave_s」とする。これにより図12に示す配列の「受信強度平均値」欄に新たな平均値「x_ave_s」が記憶される。
【0125】
次いで主制御部11Bは、記憶部15から受信回数指標値(図7(a)のα)を読み出し、メインメモリ113から第一フェーズの動作においてメインメモリ113に記憶された受信強度の平均値x_ave(図7(b)を読み出す(S502)
【0126】
次いで受信回数比較部171は、メインメモリ113に格納された受信回数の値y_s(図12)と、受信回数指標値α(図7(a))と比較する(S503)。受信回数が受信回数指標値以上(y_s≧α)であると比較結果は肯定となり(S503:YES)、受信回数が受信回数指標値未満(y_s<α)であると比較結果は否定(S503:NO)となる。ここでは、受信回数比較部171による比較結果は肯定であったものとする。
【0127】
受信回数比較部171の比較結果が肯定(S503:YES)であると、受信強度比較部172は、メインメモリ113に格納された受信強度の平均値x_ave_s(図12)と、第一フェーズの動作における受信強度の平均値x_ave(図7(b))と比較する(S505)。第二フェーズの動作において受信強度比較部172は、第一フェーズの動作における受信強度の平均値x_aveを受信強度の指標値として、新たな平均値x_ave_sと比較する。平均値x_ave_sが第一フェーズの動作における受信強度の平均値x_ave以上(x_ave_s≧x_ave)であると比較結果は肯定となり(S505:YES)。一方で、平均値x_ave_sが第一フェーズの動作における受信強度の平均値x_ave未満(x_ave_s<x_ave)であると、比較結果は否定(S505:NO)となる。ここでは、受信強度比較部172による比較結果は肯定であったものとする。
【0128】
受信強度比較部172の比較結果が肯定(S505:YES)であると、受信強度比較部172は当該比較結果(比較結果が肯定であることを示す情報)を主制御部11Bに出力する(S507)。
【0129】
受信回数比較部171による比較結果が否定(S503:NO)であった場合は、受信回数比較部171は当該比較結果(比較結果が否定であることを示す情報)を主制御部11Bに出力する(S504)。
【0130】
受信強度比較部172による比較結果が否定(S505:NO)であった場合は、受信強度比較部172は当該比較結果(比較結果が否定であることを示す情報)を主制御部11Bに出力する(S506)。
【0131】
以上が、第二の実施形態における無線端末10Bにおける試験動作の詳細である。なお無線端末10Bの試験動作は、図3に示すフローチャートのS102Bの処理に相当する。続いて図11を参照しつつ、図3のフローチャートにおける無線端末10Bの、S103の動作を説明する。
【0132】
主制御部11Bは、図11に示す第二フェーズの動作において受信強度比較部172から比較結果が肯定であること(S505:YES)を示す情報が入力されると(S507)、図3のS103において無線端末10Bは基地局20と通信が可能と判定する(S103:YES)。この場合、第一フェーズの動作において無線端末10Bが基地局20から受信する下り信号に関し、受信回数は規定値を以上であり、受信強度の平均値は規定値に満たないが、受信強度の散らばり度合は規定値以下である。これは、無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能であることを意味する。そして第二フェーズの動作において再度試験を行った結果、第二フェーズにおける受信強度の平均値が第一フェーズにおける平均値以上となり、無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能であることが再確認されたことを意味する。
【0133】
そして主制御部11Bは、無線端末10Bは基地局20と通信が可能と判定すると(図3のS103:YES)、無線端末10Bを運用状態へ移行させ、データ送信制御部18に基地局20へ送信するべきデータがあるか問い合わせ、データが存在する場合は基地局20へ当該データを含む上り信号を送信する(S104)
【0134】
一方、主制御部11Bは、図11に示す第二フェーズにおいて受信強度比較部172から比較結果が否定であること(S505:NO)を示す情報が入力されると(S506)、図3のS103において無線端末10Bと基地局20との通信は不可と判定する(S103:NO)。この場合、第一フェーズの動作が行われた時点においては、無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能と判断されたことを意味する。ところが第二フェーズにおける受信強度の平均値が第一フェーズにおける平均値未満となったことは、基地局20に対する無線端末10Bの受信強度が低下傾向にあり、この状況で無線端末10Bの運用が開始されると、無線端末10Bと基地局20との通信が不可となる可能性があることを意味する。それなので無線端末10Bは図3のS103において、無線端末10Bと基地局20と通信は不可と判定する。
【0135】
また主制御部11Bは、図11に示す第二フェーズにおいて受信回数比較部171から比較結果が否定であること(S503:NO)を示す情報が入力されると(S504)、図3のS103において無線端末10Bと基地局20との通信は不可と判定する(S103:NO)。この場合、第一フェーズの動作が行われた時点においては、無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能である状態であったことを意味する、ところが第一フェーズから第二フェーズにかけて無線端末10Bのおかれる状態が変化し、その結果、第二フェーズにおける下り信号の受信回数が規定値未満となり、第二フェーズにおいて受信強度の平均値を比較するまでもなく、無線端末10Bは基地局20と通信が不可となったことを意味する。
【0136】
主制御部11Bが無線端末10Bは基地局20と通信が不可と判定すると(S103:NO)、無線端末10Bから基地局20へデータを含む上り信号の送信が開始されず、無線端末10Bの動作は終了する。
【0137】
なお上述した第一フェーズの動作において、試験制御部115が、散らばり度合比較部173から比較結果が否定であることを示す情報が入力されたならば(図6のS409)、主制御部11Bは第二フェーズの動作を行わず、無線端末10Bと基地局20との通信は不可と判定し、無線端末10Bの動作を終了させる。また上述した第一フェーズの動作において、試験制御部115が、受信回数比較部171から比較結果が否定であることを示す情報が入力されたならば(図6のS405)、主制御部11Bは第二フェーズの動作を行わず、無線端末10Bと基地局20との通信は不可と判定し、無線端末10Bの動作を終了させる。
【0138】
一方で、上述した第一フェーズの動作において、試験制御部115が、受信強度比較部172から比較結果が否定であることを示す情報が入力されたならば(図6のS407)、平均値保持部114は図7(b)に示す配列の「受信強度平均値(保持)」欄に新たな平均値「x_ave_s」を記憶させなくてもよい。この場合、主制御部11Bは第二フェーズの動作において、記憶部15に記憶される受信強度指標値β(図7(a))と、新たな平均値x_ave_sとを比較する(S505)。この場合、第一フェーズの動作を行った時点で、受信強度の散らばり度合を考慮せずとも無線端末10Bは基地局20と通信が可能であることを意味する。そして無線端末10Bは、第二フェーズの動作において受信回数と受信強度とを再度試験を行い、基地局20とが通信が可能であることが再度確認されたことを意味する。
【0139】
(B-3)第二の実施形態における効果
本発明の第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、無線端末10Bは、無線端末10が基地局20から受信する下り信号の受信強度の平均値と、受信強度の散らばり度合との二つを考慮して、基地局20と通信可能であるかを判定することが可能となる。
【0140】
さらに第二の実施形態によれば、無線端末10Bは、第一フェーズの動作(第一の実施形態における無線端末10の図4および図6の動作)を行い、その結果無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能であると把握されると、無線端末10Bは第二フェーズの動作を行って、無線端末10Bは基地局20と実質的に通信が可能であることを再確認することが可能となる。さらに無線端末10Bは、第一フェーズの動作以降、無線端末10Bが基地局20と実質的に通信が可能な状態から、通信が不可能な状態へ変化したとしても、第二フェーズの動作によって通信が不可能な状態へ変化したことを把握し、基地局20と通信可能であるかを判定することが可能となる。
【0141】
従って第二の実施形態における無線端末10Bは、第一の実施形態に加え、無線端末10Bの設置される環境において、信号の受信強度が急峻に変化しうる場合であっても、無線端末10が基地局20から受信する下り信号の受信強度の平均値と、受信強度の散らばり度合との二つを考慮して、基地局20と通信可能であるかを判定することが可能となる。
【0142】
(C)変形例
第一の実施形態および第一の実施形態の双方に次の変形例を適用してもよい。なお以下の説明では、各変形例を第一の実施形態に適用する例を説明するが、各変形例を第二の実施形態へ適用する場合についても同様である。
【0143】
(C-1)第一の変形例
無線端末10は、図3に示すフローチャートの動作を行った結果、無線端末10は基地局20と通信が可能であると判定されたならば(S103:YES)、当該判定を示す情報を基地局20へ送信してもよい。
【0144】
図13は、第一の変形例における通信システムの動作の流れを示すシーケンス図である。図13において、無線端末10、基地局20およびネットワークサーバ30との間におけるS301からS304の信号の授受は、図5に示すシーケンス図と同様である。第一の変形例においては、無線端末10は基地局20と通信が可能であると判定したならば(S601、図3のS103と同様)、無線端末10は当該判定の結果を示す識別子の情報を、基地局20を介しネットワークサーバ30へ送信する(S602およびS603)。対してネットワークサーバ30は、基地局20を介して応答(ACK)を無線端末10へ送信する(S604およびS605)。
【0145】
第一の変形例において、無線端末10がネットワークサーバ30へ送信する判定の結果を示す情報は、無線端末10の判定結果のパターンに対応する識別子とするのが好適である。識別子の例を図14に示す。図14は第一の変形例における無線端末が扱う識別子を示す図、および変形例におけるネットワークサーバが記憶する、無線端末のIDに紐づけられた当該識別子を示す図である。
【0146】
図14(a)は、図6のフローチャートにおけるS404、S406およびS408の比較結果の組み合わせ(各処理における肯定と否定の組み合わせ)に対し、1番から4番の識別子を割り当てたものである。識別子2番(図14(a)の2行目)は、受信回数比較部171の比較結果が肯定(S404:YES)であり、かつ受信強度比較部172の比較結果が否定(S406:NO)であることを示す。また識別子4番(図14(a)の4行目)は、受信回数比較部171の比較結果が肯定(S404:YES)であり、受信強度比較部172の比較結果が肯定(S406:YES)であり、かつ散らばり度合比較部173の比較結果が肯定(S408:YES)ことを示す。
【0147】
識別子2番は、受信回数と受信強度値が指標値を満たし、受信強度の散らばり度合を考慮するまでもなく無線端末10は基地局20と通信が可能と無線端末10が判定したことを示す。また識別子4番は、受信回数が指標値を満たし受信強度値は指標値を満たさないが受信強度の散らばり度合が指標値以下であるため、無線端末10は基地局20と通信が実質的に可能と無線端末10が判定したことを示す。
【0148】
基地局20がカバーする範囲に設置される無線端末10のそれぞれが、ネットワークサーバ30へ識別子2番または識別子4番の情報を送信することで、ネットワークサーバ30は、各無線端末10の判定結果を把握することができる、またネットワークサーバ30は、基地局20がカバーする範囲内における通信環境を、各無線端末10から受信された判定結果の情報を用いて推定することができる。
【0149】
なお図14(a)において識別子1番と識別子3番(図14(a)の1行目と3行目)は、無線端末10が、無線端末10と基地局20との通信が不可能と判断したことを示す。従って、第一の変形例において無線端末10は識別子1番または識別子3番の情報を基地局20へ送信しない。
【0150】
ネットワークサーバ30が、基地局20がカバーする範囲内における通信環境を、各無線端末10から受信された判定結果の情報を用いて推定するために、無線端末10は、識別子の情報を無線端末10に固有の固有識別子と紐づけて送信するのが好適である。また図14(b)に示すように、ネットワークサーバ30は、無線端末10から受信した識別子の情報を無線端末10の固有識別子(図14(b)ではIDn(nは整数))と紐づけて管理するのが好適である。これによりネットワークサーバ30は、無線端末10の固有識別子と紐づけられた無線端末10の設置場所の情報(基地局20がカバーする範囲内における位置情報)と、各無線端末10から受信された判定結果の情報とをさらに紐づけることができる。このようにすることで、ネットワークサーバ30は、識別子2番を送信した無線端末10の位置情報、および識別子4番を送信した無線端末10の位置情報を用いて、基地局20がカバーする範囲内における通信環境を地理的分布として把握することができる。
【0151】
第一の変形例において、無線端末10の固有識別子として例えばLoRaWANに規定される、端末(End Device)の固有識別子であるEnd-Device Identifier(DevEUI)を利用してもよい。DevEUIはLoRaWANに対応するデバイスに固有に割り当てられる64ビットの識別子である。または無線端末10の固有識別子として例えばLoRaWANに規定されるNetID(Network identifier)を利用してもよい。NetIDは端末(End Device)がネットワークに参加するに際に割り振られる識別子(アドレス)である。
【0152】
また第一の変形例において、無線端末10はLoRaWANに規定されるフレームフォーマットを利用して、ネットワークサーバ30へ判定の結果を示す識別子の情報を送信してもよい。この場合、LoRaWANに規定される無線端末10から基地局20への上り信号(LoRaにおいてはUplink Message)のフレームフォーマットの、例えばPHYPayload内に識別子の情報が格納されるようにしてもよい。また例えば、PHYPayload内のMACPayload内、またはMACPayload内のFRMPayload内に識別子の情報が格納されるようにしてもよい。
【0153】
(C-2)第二の変形例
無線端末10は、図6のフローチャートにおけるS404、S406およびS408の比較結果の組み合わせ(各処理における肯定と否定の組み合わせ)に応じて、無線端末10の図示しない表示部を制御し、無線端末10を操作する者(作業者等)に対して通知を行ってもよい。
【0154】
この場合、無線端末10はLED(Light Emitting Diode)等の図示しない表示部を備え、図14(a)に示す1番から4番の識別子毎に異なる表示態様となるよう表示部を制御するのが好適である。
【0155】
図14(a)に示す識別子のうち、識別子1番と識別子3番は、無線端末10が、無線端末10と基地局20との通信が不可能と判断したことを示す。この場合、無線端末10は基地局20と通信ができないので、識別子1番の情報または識別子3番の情報はネットワークサーバ30へ送信されないものと想定される。それなので、無線端末10が識別子1番または識別子3番に対応して表示部を用いて作業者に通知することで、作業者は確実に無線端末10の判定結果を把握することができる。
【符号の説明】
【0156】
1(1B)…通信システム、10(10B)…無線端末、20…基地局、30…ネットワークサーバ、40…アプリケーションサーバ、11(11B)…主制御部、111…タイマ、112…カウンタ、113…メインメモリ、114…平均値保持部、115…試験制御部、12…送信部、13…受信部、14…アンテナ、15…記憶部、16…導出部、161…受信強度導出部、162…平均値導出部、163…散らばり度合導出部、17…比較部、171…受信回数比較部、172…受信強度比較部、173…散らばり度合比較部、18…データ送信制御部、19…外部インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14