(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240312BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20240312BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20240312BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240312BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240312BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20240312BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240312BHJP
H01M 6/02 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01G11/82
H01G11/10
H01M50/449
H01M50/474
H01M50/477
H01M10/0587
H01M6/02 Z
(21)【出願番号】P 2019173972
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鋤納 功治
(72)【発明者】
【氏名】向井 寛
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053862(JP,A)
【文献】特開2017-107719(JP,A)
【文献】特開2014-199797(JP,A)
【文献】特開2019-140075(JP,A)
【文献】特開2015-156366(JP,A)
【文献】特開2021-193640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058-10/0587
H01M 50/449
H01M 50/471-50/477
H01G 11/82
H01G 11/10
H01M 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された2つの電極体を有する蓄電素子であって、
前記2つの電極体の間に介在し、前記2つの電極体を接着する接着層を備え、
前記2つの電極体のそれぞれは、正極板と負極板とを絶縁するセパレータを有し、
前記接着層は、前記2つの電極体の少なくとも一方の電極体の前記セパレータの基材上に形成されて
おり、
さらに、前記2つの電極体の並び方向において前記容器の内面との間に配置され、前記セパレータが有する前記接着層によって前記セパレータと接着された絶縁部材を備える、
蓄電素子。
【請求項2】
容器に収容された2つの電極体を有する蓄電素子であって、
前記2つの電極体の間に介在し、前記2つの電極体を接着する接着層を備え、
前記2つの電極体のそれぞれは、正極板と負極板とを絶縁するセパレータを有し、
前記接着層は、前記2つの電極体の少なくとも一方の電極体の前記セパレータの基材上に形成されており、
前記2つの電極体のそれぞれは、巻回された正極板及び負極板を有する巻回型の電極体である、
蓄電素子。
【請求項3】
前記2つの電極体の少なくとも一方は、前記正極板及び前記負極板の巻回中心に位置する平板状の芯材を有する、
請求項
2記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に電解液を貯蔵する容器と、容器内に配されたシート状の正極板及び負極板と、一対のセパレータとを備える二次電池が開示されている。この二次電池において、一対のセパレータは、帯状に形成され、長手方向に正極板と負極板とが交互に配された状態で正極板及び負極板を間に挟み、少なくとも一部で互いに接着されている。さらに、一対のセパレータが、隣り合う正極板と負極板との間でつづら折に折り曲げられて容器内に配されている。特許文献1には、上記構成により、隣り合う正極板と負極板との間で一対のセパレータがつづら折に折り曲げられて連続しているので、積層後に正極板と負極板との間における電極位置ずれを好適に抑えることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の二次電池における電極体のように、セパレータを介して正極板と負極板とが積層された電極体が、容器内に複数収容される蓄電素子も存在する。この場合、複数の電極体を容器内においてどのように位置規制するかが問題となる。より具体的には、例えば複数の電極体のそれぞれが他方に対して移動可能である場合、外部から与えられる振動または衝撃に起因して、一方が他方に衝突または摺動する可能性があり、また、電極体と集電体等との接続部分に不具合が生じる可能性がある。このことは、蓄電素子の性能の維持または安全性の観点からは好ましくない。そのため、例えば、複数の電極体を樹脂フィルムで巻いて樹脂フィルムの端部をテープでとめることで、複数の電極体を一体化する構造が採用される場合がある。しかしながら、この場合においても、振動または衝撃が与えられた場合、例えば隣り合う2つの電極体が互いにずり動く可能性がある。また、複数の電極体を樹脂フィルムで巻く工程が必要であり、その工程における樹脂フィルムの張力の管理など、煩雑な作業が増加する可能性もある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、複数の電極体を備える蓄電素子であって、耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器に収容された2つの電極体を有する蓄電素子であって、前記2つの電極体の間に介在し、前記2つの電極体を接着する接着層を備える。
【0007】
この構成によれば、2つの電極体の一方の面と他方の面とを接着することができるため、2つの電極体の互いの滑り合いが抑制され、また、2つの電極体の一方が他方の移動を規制することができる。これにより、耐振動性または耐衝撃性が向上する。このように、本態様の蓄電素子によれば、耐振動性または耐衝撃性を向上させることができる。
【0008】
また、前記2つの電極体のそれぞれは、正極板と負極板とを絶縁するセパレータを有し、前記接着層は、前記2つの電極体の少なくとも一方の電極体の前記セパレータの基材上に形成されている、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、少なくとも一方の電極体に、接着層を有するセパレータが用いられており、これにより、2つの電極体の互いに対向する面が接着される。また、当該一方の電極体は、他方の電極体と面で接着されるとともに、正極板と負極板とをセパレータによって接着することも可能である。その結果、正極板、負極板及びセパレータを含む積層体である電極体としての強度が向上し、また、正極板と負極板との乖離が抑制されることによる正極板と負極板との間隔の一定化が図られる。これにより、当該一方の電極体の発電能力(蓄電能力)の劣化が抑制されるとともに、蓄電素子の耐振動性または耐衝撃性が向上される。
【0010】
また、蓄電素子はさらに、前記2つの電極体の並び方向において前記容器の内面との間に配置され、前記セパレータが有する前記接着層によって前記セパレータと接着された絶縁部材を備える、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、2つ電極体の少なくとも一方と容器との電気的な絶縁性が向上する。また、当該一方の電極体と絶縁部材とは接着されるため互いの滑り合いが生じ難い。その結果、絶縁部材による電気的絶縁の確実性が向上する。また、セパレータと絶縁部材とがこすれ合うことによる、セパレータの損傷も抑制される。従って、2つ電極体が互いに接着されることで耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子において、安全性がさらに向上する。
【0012】
また、前記2つの電極体のそれぞれは、巻回された正極板及び負極板を有する巻回型の電極体である、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、1つの容器に複数の巻回型の電極体が収容されることで、エネルギー密度が向上された蓄電素子であって、耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子が得られる。
【0014】
また、前記2つの電極体の少なくとも一方は、前記正極板及び前記負極板の巻回中心に位置する平板状の芯材を有する、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、2つの電極体を並び方向に加圧した場合、少なくとも一方が平面で他方に当接しやすくなるため、2つの電極体の接着面積が増加する。このことは、蓄電素子の耐振動性または耐衝撃性の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の電極体を備える蓄電素子であって、耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電素子の容器内に配置されている構成要素を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電極体の構成概要を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る蓄電素子の構成概要を示す断面図である。
【
図5】実施の形態の変形例1に係る蓄電素子の構成概要を示す断面図である。
【
図6】実施の形態の変形例2に係る蓄電素子が備える2つの電極体と接着シートとを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及び変形例に係る蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0019】
また、以下で説明する実施の形態及び変形例のそれぞれは、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態及び変形例で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0020】
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。また、1つの蓄電素子における電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。また、蓄電素子の短側面の長手方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(以下実施の形態及びその変形例では、直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の実施の形態及び特許請求の範囲において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0021】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態に係る蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内に配置されている構成要素を示す斜視図である。
【0022】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電素子10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。
【0023】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、負極端子200と、正極端子300とを備えている。また、
図2に示すように、容器100の内部には、負極側の集電体120と、正極側の集電体130と、2つの電極体400とが収容されている。
【0024】
なお、蓄電素子10は、上記の構成要素の他、集電体120及び130の側方に配置されるスペーサ、及び、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するためのガス排出弁などを備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0025】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。本体111は、4つの側壁部と図示しない底壁部とにより箱型の収容空間を形成する部材である。4つの側壁部は、
図2に示すように、対向して配置された一対の長側面部111aと、対向して配置された一対の短側面部111bとにより構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。電極体400は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。電極体400の詳細な構成については、
図3等を用いて後述する。
【0026】
負極端子200は、集電体120を介して2つの電極体400の負極と電気的に接続された電極端子である。正極端子300は、集電体130を介して2つの電極体400の正極と電気的に接続された電極端子である。負極端子200及び正極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に、絶縁性を有するガスケット(図示せず)を介して取り付けられている。
【0027】
集電体120は、2つの電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子200と2つの電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0028】
集電体130は、2つの電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子300と2つの電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0029】
具体的には、集電体120及び130は、蓋体110に固定されている。また、集電体120は、2つの電極体400の負極側端部に接合され、集電体130は、2つの電極体400の正極側端部に接合されている。
【0030】
本実施の形態では、集電体120及び130のそれぞれは、2つの電極体400と接合される2組の一対の脚部を有する。集電体120が有する一対の脚部は、1つの電極体400の負極側端部と超音波接合によって接合され、集電体130における一対の脚部は、1つの電極体400の正極側端部と超音波接合によって接合される。なお、集電体120及び130のそれぞれと電極体400との接合の手法は超音波接合には限定されず、抵抗溶接またはかしめ接合などの手法が用いられてもよい。また、集電体120及び130のそれぞれにおいて、1つの電極体400と接合される脚部の数は1でもよい。つまり、集電体120及び130のそれぞれは、2つの電極体400と接続される部位として、2つの脚部のみを有してもよい。
【0031】
[2.電極体の基本構成]
次に、以上のように構成された蓄電素子10が備える電極体400の基本的な構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。なお、
図3では、積層されて巻回された極板等の要素(積層要素)を一部展開して図示している。また、
図3において符号Wが付された一点鎖線は、電極体400の巻回軸を表している。巻回軸Wは、極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るX軸に平行な直線である。つまり、本実施の形態において、「巻回軸Wの方向」は、本実施の形態におうてX軸方向と同義である。
【0032】
電極体400は、巻回された正極板及び負極板を有する巻回型の電極体の一例である。本実施の形態では、後述する芯材を中心に正極板410及び負極板420が巻回されている。電極体400は、
図3に示すように、巻回軸Wと直交する方向(
図3におけるY軸方向)に扁平な形状である。つまり、電極体400は、巻回軸Wの方向から見た場合に、全体として長円形状であり、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、電極体400は、対向する一対の湾曲部(巻回軸Wを挟んでZ軸方向で対向する部分)490と、一対の湾曲部490の間の部分である中間部480とを有している。
【0033】
本実施の形態において、正極板410は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる長尺帯状の金属箔(正極基材層411)の表面に、正極活物質を含む正極合材層414が形成されたものである。負極板420は、銅または銅合金等からなる長尺帯状の金属箔(負極基材層421)の表面に、負極活物質を含む負極合材層424が形成されたものである。また、本実施の形態では、セパレータ430及び450は、樹脂からなる微多孔性のシートを基材として有している。
【0034】
より具体的には、正極板410と負極板420とは、セパレータ430または450を介し、巻回軸Wの方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板410及び負極板420は、それぞれのずらされた方向の端部に、基材層における、合材層が形成されていない部分である合材層非形成部を有する。
【0035】
具体的には、正極板410は、巻回軸Wの方向の一端(
図3ではX軸方向プラス側の端部)に、正極合材層414が形成されていない合材層非形成部411aを有している。また、負極板420は、巻回軸Wの方向の他端(
図3ではX軸方向マイナス側の端部)に、負極合材層424が形成されていない合材層非形成部421aを有している。
【0036】
つまり、正極板410の露出した金属箔(合材層非形成部411a)の層によって正極側端部が形成され、負極板420の露出した金属箔(合材層非形成部421a)の層によって負極側端部が形成されている。正極側端部は集電体130と接合され、負極側端部は集電体120と接合される。
【0037】
このように、電極体400は、セパレータ450、負極板420、セパレータ430、及び正極板410がこの順に積層された積層体が巻回軸W周りに巻回されることで形成されており、最外周はセパレータ450によって形成される。本実施の形態では、セパレータ450は、
図3に示すように、基材450a上に形成された接着層500を有している。より具体的には、基材450aの厚み方向の両面に接着層500が形成されている。従って、電極体400の内部において、セパレータ450は、セパレータ450に隣接する正極板410と負極板420とを電気的に絶縁するとともに、これらを接着する部材としても機能する。
【0038】
[3.電極体の接着構造]
上記のように、セパレータ450は、基材450aの両面に形成された接着層500を有し、かつ、電極体400の最外周に配置されている。従って、電極体400は最外周に接着層500を有する状態である。本実施の形態では、この接着層500によって互いに隣り合う2つの電極体400が接着されている。この接着構造について
図4を用いて説明する。
【0039】
図4は、実施の形態に係る蓄電素子10の構成概要を示す断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線を通るYZ平面における蓄電素子10の断面が模式的に表されており、正極端子300等の他の構成要素の図示は省略されている。また、以下で2つの電極体400のそれぞれを区別して説明する場合、
図4に示すように、2つの電極体400のそれぞれを、電極体400A及び電極体400Bと称する。
【0040】
図4に示すように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、容器100に収容された2つの電極体400を有する。蓄電素子10は、2つの電極体400の間に介在し、2つの電極体400を接着する接着層500を備える。
【0041】
この構成によれば、2つの電極体400の一方の面と他方の面とを接着することができる。具体的には、
図4に示すように、電極体400A及び400Bは、これらの並び方向(Y軸方向)に扁平形状であり、比較的に平坦でかつ広い外面を形成する中間部480を有している。電極体400A及び400Bは、それぞれの中間部480の互いに対向する面が接着層500で接着される。これにより、電極体400A及び400Bの互いの滑り合いが抑制され、また、電極体400A及び400Bの一方が他方の移動を規制することができる。これにより、蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性が向上する。また、例えば、2つの電極体400を互いに拘束するフィルム等を巻くような作業が不要である。さらに、蓄電素子10の製造時において、2つの電極体400を並び方向に加圧することで、容器100の本体111への挿入を容易にすることができるとともに、接着の信頼性をより向上させることができる。言い換えると、2つの電極体400を容器100に挿入するための工程であるプレス工程を経ることで、2つの電極体400の間の接着層500の接着力の向上または接着面積の増加等の効果が得られる。このように、本態様の蓄電素子10によれば、耐振動性または耐衝撃性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、2つの電極体400のそれぞれは、正極板410と負極板420とを絶縁するセパレータ450を有する。接着層500は、2つの電極体400の少なくとも一方の電極体400のセパレータ450の基材450a上に形成されている。
【0043】
このように、本実施の形態では、少なくとも一方の電極体400に、接着層500を有するセパレータ450が用いられており、これにより、2つの電極体400の互いに対向する面が接着される。また、本実施の形態では、セパレータ450の厚み方向の両面に接着層500が配置されており、これにより、正極板410と負極板420とがセパレータ450によって接着される。その結果、正極板410、負極板420及びセパレータ450を含む積層体である電極体400としての強度が向上する。さらに、正極板410と負極板420との乖離が抑制されることによる正極板410と負極板420との間隔の一定化が図られる。これにより、電極体400の発電能力(蓄電能力)の劣化が抑制されるとともに、蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性が向上される。
【0044】
また、セパレータ450が接着層500を有することで、2つの電極体400を容器100に挿入するためのプレス工程を行った場合、2つの電極体400のそれぞれが、元の形状に戻り難い。つまり、電極体400の内部において正極板410と負極板420とが接着されていることで、プレス後のスプリングバックが生じ難い。これにより、例えば、2つの電極体400の容器100への挿入作業が容易になる。このことは、1つの容器内に複数の電極体400を収容する蓄電素子を製造する場合に、特に有用である。
【0045】
なお、
図4では、電極体400A及び400Bの間に接着層500が模式的に一層のみ図示されているが、電極体400A及び400Bのそれぞれが接着層500を有する場合、電極体400A及び400Bの間には二層の接着層500が介在し、二層の接着層500によって電極体400A及び400Bが接着される。つまり、電極体400A及び400Bの少なくとも一方のセパレータ450が、外周側の面に接着層500を有していれば、電極体400A及び400Bとは接着層500によって接着される。
【0046】
また、電極体400が有する2つのセパレータ450及び430のうち、電極体400の最外周が形成するセパレータ450だけでなく、セパレータ430も接着層500を有してもよい。これにより、正極板410及び負極板420の、セパレータ430を挟んで対向する面同士も接着される。そのため、正極板410及び負極板420の、セパレータ430を挟んで対向する部分についても、例えば、間隔の一定化による発電能力(蓄電能力)の劣化の抑制効果が得られる。
【0047】
また、接着層500の材料としては、例えば、加熱することで粘着力が発現または向上する、熱可塑性樹脂を含む接着剤が例示される。この場合、例えば、電極体400の製造時には、セパレータ430及び450と正極板410及び負極板420とを滑らせ合いながら巻回することができる。また、例えば、2つの電極体400を容器100に挿入する際、または、挿入後において、2つの電極体400を加熱することで、2つの電極体400を互いに接着することができる。
【0048】
また、本実施の形態において、2つの電極体400のそれぞれは、巻回された正極板410及び負極板420を有する巻回型の電極体である。
【0049】
つまり、本実施の形態では、1つの容器100に複数の巻回型の電極体400が収容されており、これにより、容器100内における電極体400が占める割合が増加する。具体的には、巻回型の電極体は、一対の湾曲部(本実施の形態では湾曲部490)を有する形状であり、湾曲部490の側方には、容器100との間に比較的に大きな隙間が形成されやすい。この点に関し、容器100に収まるサイズの比較的大きな1つの巻回型の電極体を容器100に収容した場合と、本実施の形態のように、2つの巻回型の電極体400を容器100に収容した場合を比較すると、後者の方が、容器100内の隙間の容積は小さくなる。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子10において、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0050】
なお、蓄電素子10が備える電極体の種類は巻回型には限定されない。例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体、または、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって積層した蛇腹状の構造を有する電極体が、蓄電素子10に備えられてもよい。つまり、蓄電素子10において、接着層を介して接着される2つの電極体のそれぞれは、例えば、セパレータを介して積層された正極板と負極板とを有し、かつ、積層方向、(厚み方向または電極体の並び方向)の両端にセパレータが配置された電極体である、と表現できる。いずれの場合であっても、容器100内において隣り合う2つの電極体が、2つの電極体の間に介在する接着層によって接着されることで、2つの電極体の互いの滑り合いが抑制され、また、2つの電極体の一方が他方の移動を規制することができる。これにより、蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性が向上する。
【0051】
また、本実施の形態において、2つの電極体400の少なくとも一方は、正極板410及び負極板420の巻回中心に位置する平板状の芯材600を有している。
【0052】
この構成によれば、2つの電極体400を並び方向に加圧した場合、少なくとも一方の電極体400が、平板状の芯材600の存在により平面で他方に当接しやすくなる。これにより、2つの電極体400の接着面積が増加する。このことは、蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性の向上に寄与する。
【0053】
より詳細には、本実施の形態では、電極体400A及び400Bのいずれも平板状の芯材600を有しており、電極体400A及び400Bが並び方向に加圧される場合、それぞれの中間部480の外面は、芯材600の外形に沿った平面になるように矯正される。従って、電極体400A及び400Bの互いの接着面がより平板化し、これにより、電極体400A及び400Bがしっかりと面で接着される。
【0054】
このように、電極体400は、平板状の芯材600を備えることで、内向きに凹みやすいZ軸方向の中央部を内側から芯材600に支えさせることができ、これにより、その凹みが生じ難くなる。その結果、隣接する他の電極体400との接着面積が増加する。従って、2つの電極体400を容器100に挿入するためのプレス工程による、2つの電極体400の互いの接着の信頼性の向上効果がより顕著となる。
【0055】
以上、実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10の電極体400及びその周辺に関する構成(電極体400周りの構成)は、
図2~
図4に示される構成とは異なっていてもよい。そこで、以下に、蓄電素子10の電極体400周りの構成についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0056】
(変形例1)
図5は、実施の形態の変形例1に係る蓄電素子10aの構成概要を示す断面図である。
図5における断面の位置は、
図4における断面の位置に準じている。
【0057】
図5に示す蓄電素子10aは、実施の形態に係る蓄電素子10が備える構成要素に加え、さらに、絶縁部材700を備えている。具体的には、蓄電素子10aは、2つの電極体400の並び方向(Y軸方向)において容器100の内面112との間に配置された絶縁部材700を有している。絶縁部材700は、セパレータ450が有する接着層500によってセパレータ450と接着されている。
【0058】
例えば、電極体400Aが有するセパレータ450は、電極体400Bに対向する部分だけでなく、他の範囲においても接着層500を有している。従って、電極体400Aの、容器100の長側面部111aの内面112と対向する範囲にも接着層500が形成されており、この範囲の接着層500に絶縁部材700が接着される。
【0059】
この構成によれば、2つ電極体400の少なくとも一方と容器100との絶縁性が向上する。また、当該一方の電極体400と絶縁部材700とは接着されるため、互いの滑り合いが生じ難い。その結果、絶縁部材700による電気的絶縁の確実性が向上する。また、セパレータ450と絶縁部材700とがこすれ合うことによる、セパレータの損傷も抑制される。従って、2つ電極体400が互いに接着されることで耐振動性または耐衝撃性が向上された蓄電素子10aにおいて、安全性がさらに向上する。
【0060】
なお、本実施の形態では、電極体400Bについても同様に、電極体400Bの、容器100の長側面部111aの内面112と対向する範囲に接着層500が形成されており、この範囲の接着層500に絶縁部材700が接着される。つまり、本実施の形態では、電極体400Aだけでなく、電極体400Bについても、容器100との絶縁性が向上されている。
【0061】
絶縁部材700の形状及びサイズに特に限定はないが、電極体400と容器100との電気的な絶縁の確実性の観点からは、側面視(Y軸方向から見た場合)において電極体400の全域を覆うサイズ及び形状であることが好ましい。また、
図5において、電極体400Aに接着される絶縁部材700と、電極体400Bに接着される絶縁部材700とが一体化されていてもよい。例えば、
図5において、電極体400Aの左側面と、電極体400A及び400Bの底面と、電極体400Bの右側面とを連続して覆うシート状(またはフィルム状)の部材が、絶縁部材として配置されてもよい。この場合、電極体400A及び400Bの底面と当該絶縁部材とが、電極体400A及び400Bそれぞれの接着層500によって接着されてもよい。これにより、容器100の本体111の底壁部と、電極体400A及び400Bとの間の電気的な絶縁の確実性が向上する。また、2つの電極体400を容器100に挿入しやすくなるため、2つの電極体400の容器100への挿入作業の効率が向上する。
【0062】
また、絶縁部材700の材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、もしくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または絶縁塗装をした金属等が例示される。
【0063】
(変形例2)
図6は、実施の形態の変形例2に係る蓄電素子10bが備える2つの電極体400と接着シート550とを示す分解斜視図である。
図6では、蓄電素子10bが備える容器100等の他の構成要素の図示は省略されている。
【0064】
本変形例において、電極体400の最外周を形成するセパレータ451は、実施の形態に係るセパレータ450とは異なり、接着層500を有していない。そのため、セパレータ451を利用して、隣接する電極体400と接着することはできない。しかし、本変形例では、2つの電極体400の間に接着シート550を介在させることで、2つの電極体400を接着している。
【0065】
具体的には、
図6に示すように、電極体400Aと電極体400Bとの間に、両面に接着層552を有する接着シート550が配置される。接着シート550は、例えば樹脂で形成されたシート基材551と、シート基材551の厚み方向の両面に形成された接着層552とを有する。
【0066】
これにより、接着層を有しないセパレータ451で最外周が形成された電極体400であっても、隣り合う他の電極体400と、接着層552を介して接着することができる。これにより、2つの電極体400の互いの滑り合いが抑制され、また、2つの電極体400の一方が他方の移動を規制することができる。これにより、蓄電素子10bの耐振動性または耐衝撃性が向上する。
【0067】
なお、
図6では、接着シート550は、2つの電極体400の互いに対向する面のほぼ全域を覆う形状及びサイズであるが、2つの電極体400を接着する接着シートの形状及びサイズはこれには限定されない。例えば、2つの電極体400の間において、1以上の、X軸方向に長尺状の接着シート(例えば、両面テープと呼ばれる、以下同じ)を、Z軸方向に並べることで、2つの電極体400を接着してもよい。また、例えば、2つの電極体400の間において、1以上の、Z軸方向に長尺状の接着シートを、X軸方向に並べることで、2つの電極体400を接着してもよい。つまり、2つの電極体400の間に配置され、かつ、2つの電極体400に接着する接着層を有するシート状、テープ状、またはフィルム状の接着部材は、どのような形状またはサイズであっても、2つの電極体400を接着することが可能である。
【0068】
また、2つの電極体400の接着に接着シート550等の接着部材を用いる場合において、2つの電極体400の少なくとも一方が、正極板410及び負極板420の巻回中心に位置する平板状の芯材600を備えてもよい。この場合であっても、芯材600を備える電極体400は、平板状の芯材600の存在により平面で他方の電極体400に当接しやすくなる。これにより、2つの電極体400の接着面積が増加する。このことは、蓄電素子10bの耐振動性または耐衝撃性の向上に寄与する。
【0069】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態及び変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
例えば、実施の形態において、蓄電素子10は、容器100に収容された2つの電極体400を備えるとした。しかし、蓄電素子10が備える電極体400の数は3以上であってもよい。電極体400の数が3以上であっても、隣り合う2つの電極体400が、当該2つの電極体400の間に介在する1以上の接着層500で接着されることで、複数の電極体400は安定して保持される。具体的には、蓄電素子10が備える複数の電極体400それぞれの移動は、他の電極体400によって直接的にまたは間接的に拘束される。これにより、蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性が向上される。また、蓄電素子10が備える電極体400の数が3以上の場合において、少なくとも2つの電極体400が相互に接着されていることで、当該2つの電極体400についての耐振動性または耐衝撃性を向上させることができる。
【0071】
また、電極体400が有するセパレータ450は、厚み方向の両面に接着層500を有することは必須ではない。セパレータ450は、厚み方向の両面のうち、最外周を形成する面にのみ接着層500を有してもよい。この場合であっても、接着層500に、隣接する他の電極体400を接着することは可能である。つまり、隣り合う2つの電極体400を一層の接着層500で接着することができる。
【0072】
また、2つの電極体400を接着する接着層は、何等かの基材上に形成されていなくてもよい。例えば、2つの電極体400のうちの一方の電極体400の中間部480の側面に接着剤を塗布すること、または、2つの電極体400の間に接着剤を充填することで、他方の電極体400を当該一方の電極体400に接着してもよい。つまり、塗布または充填した接着剤が硬化することで、2つの電極体400の間を接着する接着層が形成されてもよい。
【0073】
また、電極体400が有するセパレータ450は、厚み方向の両面のそれぞれにおいて、全域に接着層500を有する必要はない。例えば、電極体400の最外周に相当する部分のみに接着層500が形成されてもよく、さらに、隣接する電極体400に対向する部分のみに接着層500が形成されてもよい。また、例えば、セパレータ450の基材450a(
図3参照)の表面に、2次元的に分散した接着層500が形成されてもよい。いずれの場合であっても、隣り合う2つの電極体400を接着層500で接着することは可能である。
【0074】
また、2つの電極体400の最外周の極板を、接着層を挟んで隣り合わせてもよい。例えば、電極体400Aの最外周に位置する負極板420に接着層を形成し、その接着層に、電極体400Bの最外周に位置する負極板420を接着してもよい。この場合であっても、少なくとも2つの電極体400を、接着層によって電気的に絶縁しつつ接着することは可能である。この場合、2つの電極体400と容器100とは、例えば絶縁フィルムで絶縁してもよい。
【0075】
また、蓄電素子10が備える電極体が巻回型であり、かつ、巻回軸の方向がZ軸方向に平行な姿勢で配置される電極体であってもよい。この場合であっても、例えばセパレータが有する接着層によって、隣り合う2つの電極体を接着することは可能である。なお、この場合、2つの電極体それぞれは、例えば、本体部と、本体部から蓋体110(
図2参照)側に突出した正極のタブ部及び負極のタブ部とを有する。これら2つの電極体の正極のタブ部は、例えば平板状の集電体を介して正極端子に接続され、2つの電極体の負極のタブ部は、例えば平板状の集電体を介して負極端子に接続される。
【0076】
また、上記の、実施の形態に係る蓄電素子10についての各種の補足事項は、変形例1または2に係る蓄電素子10aまたは10bに適用されてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態及び変形例に記載された構成を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10、10a、10b 蓄電素子
100 容器
112 内面
400、400A、400B 電極体
410 正極板
420 負極板
430、450、451 セパレータ
450a 基材
500、552 接着層
550 接着シート
551 シート基材
600 芯材
700 絶縁部材