(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】異物検出装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240312BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240312BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2019174222
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】今澤 孝則
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-93128(JP,A)
【文献】特開2016-189693(JP,A)
【文献】特開2015-128363(JP,A)
【文献】特開2018-107945(JP,A)
【文献】特開2013-5523(JP,A)
【文献】特開2010-263690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/12
H02J 7/00
H01F 38/14
G01V 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触にて電力が伝送される、送電装置の送信コイルと受電装置の受信コイルとの間に配置される基板上に、互いに電磁結合可能に配置される複数の第1の検出コイルと、
前記複数の第1の検出コイルのそれぞれについて、当該第1の検出コイルとともに第1の共振周波数を有する第1の共振回路を構成する複数の第1のコンデンサと、
前記基板上に、互いに電磁結合可能に配置される複数の第2の検出コイルと、
前記複数の第2の検出コイルのそれぞれについて、当該第2の検出コイルとともに前記第1の共振周波数と異なる第2の共振周波数を有する第2の共振回路を構成する複数の第2のコンデンサと、
前記複数の第1の検出コイルのうちの第1の入力コイルに、前記第1の共振回路のそれぞれが共振可能な第1の周波数を持つ交流電力を供給し、かつ、前記複数の第2の検出コイルのうちの第2の入力コイルに、前記第2の共振回路のそれぞれが共振可能な第2の周波数を持つ交流電力を供給する少なくとも一つの電力供給回路と、
前記複数の第1の検出コイルのうちの前記第1の入力コイルと異なる第1の出力コイルから、前記複数の第1の検出コイルを介して伝達された前記交流電力の第1の電圧を検出し、かつ、前記複数の第2の検出コイルのうちの前記第2の入力コイルと異なる第2の出力コイルから、前記複数の第2の検出コイルを介して伝達された交流電力の第2の電圧を検出し、検出された前記第1の電圧または前記第2の電圧に応じて前記送信コイルと前記受信コイルの間に混入した異物を検出する検出回路と、
を有し、
前記第1の周波数は、前記送信コイルに供給される交流電力の伝送周波数、前記送信コイルを含む送電側共振回路が共振する周波数、及び、前記受信コイルを含む受電側共振回路が共振する周波数のそれぞれと異なり、かつ、前記第2の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であり、
前記第2の周波数は、前記第1の周波数、前記伝送周波数、前記送電側共振回路が共振する周波数、及び、前記受電側共振回路が共振する周波数のそれぞれと異なり、かつ、前記第1の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であり、
前記複数の第1の検出コイルのうちの互いに隣接する第1の検出コイル同士は、前記基板の法線方向から見て互いに重ならないように配置され、かつ、
前記複数の第2の検出コイルのうちの互いに隣接する第2の検出コイル同士は、前記基板の法線方向から見て互いに重ならないように配置される、
異物検出装置。
【請求項2】
前記複数の第1の検出コイルと前記複数の第2の検出コイルとは、前記基板の法線方向から見て互いに交互に配置される、請求項1に記載の異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触にて電力が伝送される電力伝送システム内の異物を検出する異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の接点などを介さずに、空間を通じて電力を伝送する、いわゆる非接触給電(ワイヤレス給電とも呼ばれる)技術が研究されている。このような非接触給電技術の一つとして、電磁誘導により給電する方式が知られている。電磁誘導により給電する方式では、一次側(送電側あるいは給電側)のコイル(以下、送信コイルと呼ぶ)と二次側(受電側)のコイル(以下、受信コイルと呼ぶ)とが電磁結合することにより、送信コイルから受信コイルへ電力が伝送される。
【0003】
このような非接触給電技術を利用した電力伝送システムにおいて、送信コイルと受信コイルの間に、金属などの異物が入り込んでしまうことがある。このような場合、電力伝送中にその異物が誘導加熱されて発火し、あるいは、異物の発熱に起因して装置が故障することがある。また、このような電力伝送システムでは、電力伝送中に送信コイルと受信コイルとの相対的な位置関係が変動し、その結果として、送信コイルと受信コイル間の結合度が変化することがある。そこで、送信コイルと受信コイル間の結合度が変化する場合でも、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物による故障を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、非接触給電装置が有する送電装置の送信コイルに供給される交流電力の周波数を所定の周波数領域にわたって変化させても、非接触給電装置が定電圧出力動作しない場合、非接触給電装置は、送信コイルと、受電装置が有する受信コイルとの間に何らかの異物が混入したと判定して、送信コイルへの電力供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送信コイルと受信コイルの間に、非常に小さい異物が混入した場合、送電装置から受電装置への電力伝送特性が変化せず、その結果として、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物が検出されないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、送電側の装置の送信コイルと受電側の装置の受信コイルの間に混入した異物の検出精度を向上できる異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、異物検出装置が提供される。この異物検出装置は、非接触にて電力が伝送される、送電装置の送信コイルと受電装置の受信コイルとの間に配置される基板上に、互いに電磁結合可能に配置される複数の第1の検出コイルと、複数の第1の検出コイルのそれぞれについて、その第1の検出コイルとともに、第1の共振周波数をを有する第1の共振回路を構成する複数の第1のコンデンサと、その基板上に、互いに電磁結合可能に配置される複数の第2の検出コイルと、複数の第2の検出コイルのそれぞれについて、その第2の検出コイルとともに、第1の共振周波数と異なる第2の共振周波数を有する第2の共振回路を構成する複数の第2のコンデンサと、複数の第1の検出コイルのうちの第1の入力コイルに、第1の共振回路のそれぞれが共振可能な第1の周波数を持つ交流電力を供給し、かつ、複数の第2の検出コイルのうちの第2の入力コイルに、第2の共振回路のそれぞれが共振可能な第2の周波数を持つ交流電力を供給する少なくとも一つの電力供給回路と、複数の第1の検出コイルのうちの第1の入力コイルと異なる第1の出力コイルから、複数の第1の検出コイルを介して伝達された交流電力の第1の電圧を検出し、かつ、複数の第2の検出コイルのうちの第2の入力コイルと異なる第2の出力コイルから、複数の第2の検出コイルを介して伝達された交流電力の第2の電圧を検出し、検出された第1の電圧または第2の電圧に応じて送信コイルと受信コイルの間に混入した異物を検出する検出回路とを有する。
本発明に係る異物検出装置は、このような構成を有することにより、送電側の装置の送信コイルと受電側の装置の受信コイルとの間に混入した異物の検出精度を向上することができる。
【0008】
この異物検出装置において、複数の第1の検出コイルと複数の第2の検出コイルとは、基板の法線方向から見て互いに交互に配置されることが好ましい。
これにより、異物検出装置は、送信コイルと受信コイル間に混入した異物は、複数の第1の検出コイル及び複数の第2の検出コイルの何れかの近傍に位置することになるので、異物の混入により第1の電圧または第2の電圧の何れかが、異物検知に十分な程度に変動する。そのため、この異物検出装置は、混入した異物の位置によらず、その異物を精度良く検出できる。
【0009】
また、この異物検出装置において、第1の周波数は、第2の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であり、かつ、第2の周波数は、第1の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であることが好ましい。
これにより、第1の周波数を持つ交流電力は第2の共振回路のそれぞれに影響せず、逆に、第2の周波数を持つ交流電力は第1の共振回路のそれぞれに影響しない。そのため、複数の第1の検出コイルの何れかの近傍に異物が位置する場合、第1の電圧は、異物検知に十分な程度に変動する。同様に、複数の第2の検出コイルの何れかの近傍に異物が位置する場合、第2の電圧は、異物検知に十分な程度に変動する。そのため、この異物検出装置は、混入した異物の位置によらず、その異物を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る異物検出装置を含む電力伝送システムの概略構成図である。
【
図3】異物検出装置が設けられる基板と送信コイルとの位置関係の一例を示す概略側面断面図である。
【
図4】異物検出装置が有する、各検出コイルの配置の一例を示す概略平面図である。
【
図5】電力供給回路の一例を示す回路構成図である。
【
図7】異物混入の有無による、検出回路にて検出される電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーションにおける、第1及び第2の検出コイルの配置の一例を示す図である。
【
図8】異物混入の有無による、第1の検出コイル間を伝達される交流電力に対する、検出回路による検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9】異物混入の有無による、第1の検出コイル間を伝達される交流電力に対する、検出回路による検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図10】異物混入の有無による、第2の検出コイル間を伝達される交流電力に対する、検出回路による検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図11】異物混入の有無による、第2の検出コイル間を伝達される交流電力に対する、検出回路による検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図12】(a)及び(b)は、比較例における、異物混入の有無による、検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】変形例による電力供給回路の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一つの実施形態による異物検出装置を、図を参照しつつ説明する。この異物検出装置は、非接触により電力を伝送する電力伝送システムが有する、送電側の装置(以下、単に送電装置と呼ぶ)の送信コイルと、受電側の装置(以下、単に受電装置と呼ぶ)の受信コイルとの間に配置される基板を有し、その基板上に形成される、互いに電磁結合可能に配置される複数の第1の検出コイルと、互いに電磁結合可能に配置される複数の第2の検出コイルとを有する。複数の第1の検出コイルのそれぞれは、その第1の検出コイルと接続される第1のコンデンサとともに第1の共振回路を構成する。そしてその第1の共振回路のそれぞれは、送電装置の送信コイルに供給される電力の周波数(以下、説明の便宜上、伝送周波数と呼ぶ)とは異なり、かつ、送信コイルを含む共振回路(送電側に共振回路が設けられる場合)及び受信コイルを含む共振回路の何れもが共振しない第1の共振周波数を有する。同様に、複数の第2の検出コイルのそれぞれは、その第2の検出コイルと接続される第2のコンデンサとともに第2の共振回路を構成する。そしてその第2の共振回路のそれぞれは、伝送周波数及び第1の周波数とは異なり、かつ、送信コイルを含む共振回路及び受信コイルを含む共振回路の何れもが共振しない第2の共振周波数を有する。この異物検出装置は、複数の第1の検出コイルの何れか一つである第1の入力コイルに、第1の共振回路のそれぞれが共振可能な第1の周波数を持つ交流電力を供給し、一方、複数の第1の検出コイルの他の一つである第1の出力コイルから出力される第1の電圧を検出する。同様に、この異物検出装置は、複数の第2の検出コイルの何れか一つである第2の入力コイルに、第2の共振回路のそれぞれが共振可能な第2の周波数を持つ交流電力を供給し、一方、複数の第2の検出コイルの他の一つである第2の出力コイルから出力される第2の電圧を検出する。
【0012】
送信コイルと受信コイルの間に金属などの導電性を有する異物が混入すると、複数の第1の共振回路または複数の第2の共振回路の何れかの共振特性が変化し、その結果として、検出される第1の電圧及び第2の電圧の少なくとも一方が変化する。特に、複数の第1の共振回路の何れについても共振特性の変動が少ない位置に異物が混入しても、複数の第2の共振回路の何れかの共振特性が相対的に大きく変化し、逆に、複数の第2の共振回路の何れについても共振特性の変動が少ない位置に異物が混入しても、複数の第1の共振回路の何れかの共振特性が相対的に大きく変化する。その結果として、異物が混入すると、第1の電圧及び第2の電圧の少なくとも一方が大きく変化する。
【0013】
そこで、この異物検出装置は、検出される第1の電圧及び第2の電圧を監視して、その第1の電圧及び第2の電圧の少なくとも一方が、異物が混入していない場合に相当する所定の基準範囲から外れると、送信コイルと受信コイルの間に異物が混入したと判定する。これにより、この異物検出装置は、送信コイルと受信コイルとの間に混入した異物の位置によらず、その異物を精度良く検出できる。
【0014】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る異物検出装置を含む電力伝送システムの概略構成図である。
図1に示されるように、電力伝送システム1は、送電装置2と、受電装置3と、異物検出装置4とを有する。送電装置2と受電装置3とは、非接触給電装置を構成し、送電装置2から受電装置3へ、空間を介して非接触で電力が伝送される。送電装置2は、電力供給回路11と、送信コイル12とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21と、共振コンデンサ22と、受電回路23とを有する。電力伝送システム1は、例えば、いわゆる一次直列二次直列共振コンデンサ方式(SS方式)、または一次直列二次並列共振コンデンサ方式(SP方式)の非接触給電装置とすることができる。あるいは、電力伝送システム1は、一次側の共振を利用せず、二次側において受信コイルと共振コンデンサとが直列共振する方式(NS方式)、または、一次側の共振を利用せず、二次側において受信コイルと共振コンデンサとが並列共振する方式(NP方式)の非接触給電装置であってもよい。
【0015】
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路11は、交流電力を送信コイル12へ供給する。そのために、電力供給回路11は、例えば、直流電力を供給する直流電源と、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して送信コイル12へ供給するインバータ回路と、インバータ回路を制御する制御回路とを有する。インバータ回路は、4個のスイッチング素子(例えば、MOSFET)がフルブリッジ状に接続されるフルブリッジインバータであってもよく、あるいは、2個のスイッチング素子がハーフブリッジ状に接続されるハーフブリッジインバータであってもよい。制御回路は、送信コイル12に供給される交流電力の周波数が所定の周波数(例えば、受電装置3の共振回路が共振する周波数)となるように、インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。電力供給回路11は、さらに、直流電源とインバータ回路との間に、DC-DCコンバータを有してもよい。あるいは、電力供給回路11は、直流電源の代わりに、交流電源と接続され、交流電源からの交流電力を整流する整流回路と、整流回路と接続され、整流回路から出力される脈流電力を直流電力に変換する力率改善回路とを有していてもよい。この場合には、制御回路は、例えば、受電装置3が受電する電力の電圧を一定に保つために、力率改善回路を制御して、インバータ回路へ供給される直流電力の電圧を調整してもよい。
【0016】
送信コイル12は、電力供給回路11から供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の受信コイル21へ伝送する。なお、送電装置2は、送信コイル12と電力供給回路11のインバータ回路との間に、送信コイル12と直列に接続されるコンデンサを有してもよい。このコンデンサは、直流電力を遮断するためのものであってもよく、あるいは、送信コイル12に供給される交流電力の周波数において送信コイル12とともに共振する共振回路を構成するためのものであってもよい。
【0017】
なお、送電装置2は、受電装置3による受電状況を表す信号を受信する通信器をさらに有してもよい。この場合には、電力供給回路11の制御回路は、受電状況に応じて、送信コイル12に供給される交流電力の周波数を変更するよう、インバータ回路の各スイッチング素子のオン/オフの切り替えタイミングを変更してもよい。
【0018】
さらに、電力供給回路11の制御回路は、異物検出装置4から、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物が検出されたことを表す信号を受信すると、インバータが有する各スイッチング素子をオフにして、電力供給回路11から送信コイル12への電力供給を停止してもよい。
【0019】
次に、受電装置3について説明する。
受信コイル21は、共振コンデンサ22とともに共振回路を構成し、送電装置2の送信コイル12に流れる交流電流と共振することで、送信コイル12から電力を受信する。そのために、共振コンデンサ22は、受信コイル21と直列に接続されてもよく、あるいは、受信コイル21と並列に接続されてもよい。そして受信コイル21と共振コンデンサ22とにより形成される共振回路から出力される交流電力は、受電回路23へ出力される。なお、受信コイル21の巻き数と、送信コイル12の巻き数は同じでもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0020】
受電回路23は、受信コイル21と共振コンデンサ22とにより形成される共振回路からの交流電力を直流電力に変換して、直流電力を受電回路23と接続される負荷回路(図示せず)へ出力する。そのために、受電回路23は、例えば、共振回路からの交流電力を脈流電力に変換する全波整流回路と、全波整流回路から出力される脈流電力を平滑化して負荷回路へ出力するための平滑コンデンサとを有する。さらに、受電回路23は、負荷回路へ出力される電圧を測定するための電圧計、電圧計により測定された電圧など、受電状況を表す信号を送電装置2へ送信するための通信器、負荷回路と受電回路23との接続または切断を切り替えるためのスイッチング素子、及び、そのスイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する制御回路などを有してもよい。
【0021】
次に、本実施形態による、異物検出装置4について説明する。異物検出装置4は、送電装置2と受電装置3とが、電力伝送可能な位置関係、すなわち、送信コイル12と受信コイル21とが電磁結合可能な位置関係となっている場合における、送信コイル12と受信コイル21の間に配置される。そして異物検出装置4は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した、金属などの導電性を有する異物を検出する。
【0022】
図2は、異物検出装置4の概略構成図である。
図3は、異物検出装置4が設けられる基板と送信コイル12との位置関係の一例を示す概略側面断面図である。さらに、
図4は、異物検出装置4が有する、各検出コイルの配置の一例を示す概略平面図である。
【0023】
図2に示されるように、異物検出装置4は、二つの電力供給回路41-1、41-2と、複数の第1の検出コイル42-1~42-n(nは2以上の整数)と、複数の第1のコンデンサ43-1~43-nと、複数の第2の検出コイル44-1~44-m(mは2以上の整数)と、複数の第2のコンデンサ45-1~45-mと、検出回路46とを有する。本実施形態では、検出回路46には、二つの検出回路46-1、46-2が含まれる。異物検出装置4が有するこれらの各素子は、送信コイル12と受信コイル21とが電磁結合可能な位置関係となっている場合における、送信コイル12と受信コイル21の間に位置する基板47上に設けられる。本実施形態では、基板47は、送電装置2に取り付けられる。そして検出回路46-1、46-2からの異物の検出結果を表す信号は、送電装置2の電力供給回路11へ出力される。
【0024】
次に、電力供給回路41-1、41-2の詳細について説明する。本実施形態では、電力供給回路41-1、41-2は、供給する交流電力の周波数が互いに異なること以外、同じとすることができる。そこで以下では、主として電力供給回路41-1について説明し、電力供給回路41-2については、電力供給回路41-1と相違する点について説明する。
【0025】
図5は、電力供給回路41-1の一例を示す回路構成図である。電力供給回路41-1は、例えば、直流電力を供給する直流電源51と、給電コイル52と、コンデンサ53と、インバータ回路54と、インバータ回路54を制御する制御回路55とを有する。
【0026】
給電コイル52は、その一端がコンデンサ53を介してインバータ回路54と接続され、他端が接地される。そして給電コイル52は、複数の第1の検出コイル42-1~42-nの何れかである第1の入力コイル(本実施形態では、検出コイル42-1)と電磁結合可能なように配置され、インバータ回路54から供給された交流電力を第1の入力コイルへ供給する。なお、給電コイル52とコンデンサ53の接続順序は入れ替わってもよい。なお、電力供給回路41-2については、給電コイル52は、複数の第2の検出コイル44-1~44-mの何れかである第2の入力コイル(本実施形態では、検出コイル44-1)と電磁結合可能なように配置され、インバータ回路54から供給された交流電力を第2の入力コイルへ供給する。
【0027】
インバータ回路54は、直流電源51から供給された直流電力を交流電力に変換して給電コイル52へ供給する。この例では、インバータ回路54は、2個のスイッチング素子(例えば、MOSFET)がハーフブリッジ状に接続されるハーフブリッジインバータとして構成されるが、インバータ回路54は、4個のスイッチング素子がフルブリッジ状に接続されるフルブリッジインバータであってもよい。制御回路55は、給電コイル52に供給される交流電力の周波数が、第1の検出コイル42-i(i=1,2,...,n)と第1のコンデンサ43-iとから構成され、第1の共振周波数を有する第1の共振回路が共振可能な第1の周波数となるように、インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。すなわち、第1の周波数は、供給された交流電力が第1の検出コイルのそれぞれを伝搬可能な周波数であればよく、例えば、第1の共振周波数そのものとすることができる。また、電力供給回路41-2については、制御回路55は、給電コイル52に供給される交流電力の周波数が、第2の検出コイル44-i(i=1,2,...,m)と第2のコンデンサ45-iとから構成され、第2の共振周波数を有する第2の共振回路が共振可能な第2の周波数となるように、インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。すなわち、第2の周波数は、供給された交流電力が第2の検出コイルのそれぞれを伝搬可能な周波数であればよく、例えば、第2の共振周波数そのものとすることができる。
【0028】
上記のように、電力供給回路41-1に関して、給電コイル52を介して電力供給回路41-1から第1の入力コイルへ供給される交流電力の第1の周波数は、送電装置2の送信コイル12に供給される交流電力の伝送周波数とは異なり、かつ、送信コイル12を含む共振回路及び受信コイル21を含む共振回路の何れもが共振しない周波数とすることが好ましい。さらに、電力供給回路41-2に関して、給電コイル52を介して電力供給回路41-2から第2の入力コイルへ供給される交流電力の第2の周波数は、伝送周波数とは異なり、かつ、送信コイル12を含む共振回路及び受信コイル21を含む共振回路の何れもが共振しない周波数とすることが好ましい。さらに、第1の周波数と第2の周波数とは互いに異なり、第1の周波数は、第2の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であり、かつ、第2の周波数は、第1の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であることが好ましい。
【0029】
例えば、電力供給回路41-1が供給する交流電力の第1の周波数及び電力供給回路41-2が供給する交流電力の第2の周波数は、伝送周波数(例えば、85kHzまたは150kHz)よりも高い周波数、例えば、ISMバンドに属する、13.56MHz、27.12MHzまたは40.68MHzとすることができる。さらに、第1の周波数を13.56MHzとし、第2の周波数を27.12MHzとすることができる。これにより、電力供給回路41-1から供給される交流電力及び電力供給回路41-2から供給される交流電力が送電装置2から受電装置3への電力伝送に影響することが防止される。またこのように第1の周波数及び第2の周波数が設定されることで、異物検出装置4が有する複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれのインダクタンスを相対的に小さくできるので、各検出コイルのサイズを送信コイル12のサイズよりも小さくすることが容易となる。
【0030】
さらに、第1の周波数と第2の周波数とが異なり、第1の周波数は、第2の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であり、かつ、第2の周波数は、第1の共振回路のそれぞれが共振しない周波数であることで、第1の共振回路の何れについても、その共振特性が異物によってあまり変化しない場合でも、第2の共振回路の何れかの共振特性が、異物によって比較的大きく変化する。逆に、第2の共振回路の何れについても、その共振特性が異物によってあまり変化しない場合でも、第1の共振回路の何れかの共振特性が、異物によって比較的大きく変化する。そのため、異物の検出精度が向上する。
【0031】
再度
図3及び
図4を参照すると、複数の第1の検出コイル42-1~42-nのそれぞれは、基板47上に設けられる、金属などの導体による配線パターンとして構成される。そして第1の検出コイル42-i(i=1,2,...,n)と対応する第1のコンデンサ43-iとは互いに接続され、それぞれ、一つの第1の共振回路を構成する。第1の検出コイル42-iのインダクタンス及び第1のコンデンサ43-iの静電容量は、その第1の検出コイルと第1のコンデンサとにより構成される第1の共振回路の第1の共振周波数が、送信コイル12に供給される交流電力の伝送周波数にて共振しない周波数となるように設定されることが好ましい。これにより、第1の共振回路のそれぞれは、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力に対して共振しないので、異物検出装置4は、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力が、異物の検出に影響することを防止できる。さらに、第1の検出コイル42-iのインダクタンス及び第1のコンデンサ43-iの静電容量は、第1の共振回路のそれぞれが、電力供給回路41-1から供給される交流電力の第1の周波数にて共振するように設定されることが好ましい。これにより、電力供給回路41-1から供給される交流電力が検出回路46-1に達するまでの損失が抑制されるので、異物検出装置4は、異物の検出精度が低下することを抑制できる。上記のように、第1の共振周波数と第1の周波数とは、電力供給回路41-1から供給される交流電力が第1の共振回路のそれぞれを伝搬して検出回路46-1に達する限りにおいて、一致していなくてもよい。
【0032】
同様に、複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれは、基板47上に設けられる、金属などの導体による配線パターンとして構成される。そして第2の検出コイル44-i(i=1,2,...,m)と対応する第2のコンデンサ45-iとは互いに接続され、それぞれ、一つの第2の共振回路を構成する。第2の検出コイル44-iのインダクタンス及び第2のコンデンサ45-iの静電容量は、その第2の検出コイルと第2のコンデンサとにより構成される第2の共振回路の第2の共振周波数が、送信コイル12に供給される交流電力の伝送周波数にて共振しない周波数となるように設定されることが好ましい。これにより、第2の共振回路のそれぞれは、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力に対して共振しないので、異物検出装置4は、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力が、異物の検出に影響することを防止できる。さらに、第2の検出コイル44-iのインダクタンス及び第2のコンデンサ45-iの静電容量は、第2の共振回路のそれぞれが、電力供給回路41-2から供給される交流電力の第2の周波数にて共振するように設定されることが好ましい。これにより、電力供給回路41-2から供給される交流電力が検出回路46-2に達するまでの損失が抑制されるので、異物検出装置4は、異物の検出精度が低下することを抑制できる。上記のように、第2の共振周波数と第2の周波数とは、電力供給回路41-2から供給される交流電力が第2の共振回路のそれぞれを伝搬して検出回路46-2に達する限りにおいて、一致していなくてもよい。
【0033】
また、複数の第1の検出コイル42-1~42-nのそれぞれは、互いに電気的に接触せず、かつ、互いに電磁結合可能なように、基板47の一方の面(例えば、受信コイル21と対向する側の面、以下、便宜上、表面と呼ぶ)上に配置される。例えば、複数の第1の検出コイル42-1~42-nのそれぞれは、その複数の第1の検出コイルのうちの他の何れか一つ以上の第1の検出コイルと直接的に電磁結合可能なように基板47の表面上に配置される。さらに、電力供給回路41-1及び検出回路46-1も、基板47の表面上に配置される。したがって、電力供給回路41-1から供給された交流電力に対して、第1の検出コイルのそれぞれが対応する第1のコンデンサとともに共振することで、その交流電力は検出回路46-1へ伝達される。
【0034】
同様に、複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれは、互いに電気的に接触せず、かつ、互いに電磁結合可能なように、基板47の他方の面(例えば、送信コイル12と対向する側の面、以下、便宜上、裏面と呼ぶ)上に配置される。例えば、複数の第2の検出コイル44-1~44-nのそれぞれは、その複数の第2の検出コイルのうちの他の何れか一つ以上の第2の検出コイルと直接的に電磁結合可能なように基板47の裏面上に配置される。さらに、電力供給回路41-2及び検出回路46-2も、基板47の裏面上に配置される。したがって、電力供給回路41-2から供給された交流電力に対して、第2の検出コイルのそれぞれが対応する第2のコンデンサとともに共振することで、その交流電力は検出回路46-2へ伝達される。
【0035】
なお、
図4に示される例とは逆に、電力供給回路41-1、複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び検出回路46-1が基板47の裏面上に配置され、電力供給回路41-2、複数の第2の検出コイル44-1~44-m及び検出回路46-2が基板47の表面上に配置されてもよい。また、複数の第1の検出コイル42-1~42-nと、複数の第2の検出コイル44-1~44-mは、基板47の同一の面に配置されてもよい。
【0036】
基板47は、送信コイル12の中心軸方向と基板47の法線方向とが略平行となるように配置される。そして複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mは、送信コイル12をその中心軸方向から見たときに、送信コイル12全体を覆うように配置される。
【0037】
さらに、複数の第1の検出コイル42-1~42-nと、複数の第2の検出コイル44-1~44-mとは、基板47の法線方向から見て互いに交互に配置される。これにより、送信コイル12と受信コイル21間に混入した異物が、第1の検出コイルの何れの巻き線の外側に位置する場合でも、第2の検出コイルの何れかの巻き線の内側に位置することとなる。そのため、その異物により、第2の検出コイルの何れかが大きく影響されるので、第1の電圧はあまり変動しなくても、第2の電圧は大きく変動する。逆に、その異物が、第2の検出コイルの何れの巻き線の外側に位置する場合でも、第1の検出コイルの何れかの巻き線の内側に位置することとなる。そのため、その異物により、第1の検出コイルの何れかが大きく影響されるので、第2の電圧はあまり変動しなくても、第1の電圧は大きく変動する。このように、混入した異物の位置によらず、第1の電圧及び第2の電圧の少なくとも一方が大きく変動するので、異物検出装置4は、その異物を精度良く検出できる。
【0038】
なお、
図4に示される例では、複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれは、略円形に形成されているが、各検出コイルの形状は円形に限られず、例えば、楕円形または矩形であってもよい。また、複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれの形状及びサイズは、互いに同一でもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。さらに、送信コイル12の中心軸方向から見た、複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mのそれぞれのサイズは、送信コイル12のサイズよりも小さいことが好ましい。これにより、送信コイル12よりも小さい異物が送信コイル12と受信コイル21の間に混入した場合でも、複数の第1の検出コイル42-1~42-n及び複数の第2の検出コイル44-1~44-mの何れかが、その異物により影響を受け易くなるので、異物検出装置4は、そのような小さな異物を精度良く検出することができる。
【0039】
次に、検出回路46-1、46-2について説明する。
検出回路46-1は、複数の第1の検出コイル42-1~42-nを介して伝達された交流電力の第1の電圧を検出し、検出された第1の電圧に基づいて、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を検出する。同様に、検出回路46-2は、複数の第2の検出コイル44-1~44-mを介して伝達された交流電力の第2の電圧を検出し、検出された第2の電圧に基づいて、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を検出する。
【0040】
本実施形態では、検出回路46-1と検出回路46-2とは、同一の構成とすることができるので、以下では、検出回路46-1について説明する。そして以下の説明において、検出回路46-2に関しては、第1の検出コイルを第2の検出コイルと読み替え、電力供給回路41-1を電力供給回路41-2と読み替え、第1の電圧を第2の電圧と読み替えればよい。
【0041】
本実施形態では、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力は、複数の第1の検出コイル42-1~42-nを介した、電力供給回路41-1から検出回路46-1への交流電力の伝達に影響しない。一方、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が混入すると、その異物により、複数の第1の検出コイル42-1~42-nの何れかの共振特性が変化し、電力供給回路41-1から検出回路46-1への交流電力の伝達に影響する。特に、異物が何れかの第1の検出コイルの近傍に位置する場合、例えば、基板47の法線方向から見て、異物が何れかの第1の検出コイルの巻き線の内側に位置する場合、その影響は顕著となる。その結果として、検出回路46-1にて検出される第1の電圧が変化する。例えば、供給された交流電力により、電流が流れている何れかの第1の検出コイルに金属が近付くと、その電流により第1の検出コイル近傍に生じる磁束により、その金属において渦電流が発生して損失が生じる。また、発生した渦電流による磁束により、第1の検出コイルのインダクタンスが低下する。特に、その金属が磁性体である場合、インダクタンスの変化は小さいにもかかわらず、損失だけが比較的大きくなることがある。これらの結果として、その第1の検出コイルを含む第1の共振回路の共振特性が変化する。そこで、検出回路46-1は、検出された第1の電圧が所定の基準範囲に含まれるか否か判定し、所定の基準範囲から外れる場合に、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が混入したと判定する。なお、所定の基準範囲として、下限値のみが設定されてもよく、あるいは、上限値と下限値の両方が設定されてもよい。下限値のみが設定される場合には、検出された第1の電圧がその下限値よりも低くなる場合に、検出された第1の電圧が所定の基準範囲から外れると判定される。また、上限値と下限値の両方が設定される場合には、検出された第1の電圧がその下限値よりも低くなるか、または、その上限値よりも高くなる場合に、検出された第1の電圧が所定の基準範囲から外れると判定される。
【0042】
なお、この例では、異物検出装置4に含まれる検出回路46-1は一つであるが、これに限られず、異物検出装置4は、2個以上の検出回路46-1を有してもよい。例えば、
図4において、複数の第1の検出コイル42-1~42-nのアレイにおける、右上端部及び左下端部は、電力供給回路41-1から検出回路46-1への交流電力の伝送経路としての機能がそれほど高くない。そこで、複数の検出コイル42-1~42-nのアレイの右上端及び左下端の何れか若しくは両方に、検出回路46-1が追加されてもよい。これにより、異物検出装置4が異物を精度良く検出できる範囲がより広くなる。同様に、異物検出装置4は、2個以上の検出回路46-2を有してもよい。
【0043】
図6は、検出回路46-1の一例を示す回路構成図である。検出回路46-1は、受信コイル61及び共振コンデンサ62を有する共振回路63と、ハイパスフィルタ64と、アンプ65と、半波整流回路66と、ローパスフィルタ67と、電圧検出回路68と、判定回路69とを有する。なお、検出回路46-1の回路構成は、
図6に示されたものに限られず、第1の検出コイルのそれぞれにより伝達された交流電力の第1の電圧を検出し、検出された第1の電圧が所定の基準範囲から外れるか否かを判定可能な様々な回路の何れかとすることができる。
【0044】
共振回路63は、電力供給回路41-1から供給され、複数の第1の検出コイル42-1~42-nを介して伝達された交流電力を検出する。そのために、共振回路63の受信コイル61は、複数の第1の検出コイル42-1~42-nのうち、電力供給回路41-1から交流電力が供給される入力コイル以外の出力コイル(本実施形態では、第1の検出コイル42-n)と直接的に(すなわち、他の第1の検出コイルを介さずに)電磁結合可能に配置される。そして共振回路63は、電力供給回路41-1から供給された交流電力に対して共振するように、受信コイル61のインダクタンス及び共振コンデンサ62の静電容量は設定される。なお、
図6では、二つの共振コンデンサ62が受信コイル61と並列に接続されることが示されているが、共振回路63が有する共振コンデンサ62の数は二つに限られず、一つまたは三つ以上であってもよい。また、受信コイル61と共振コンデンサ62とは、直列に接続されてもよい。
【0045】
なお、受信コイル61と電磁結合可能な出力コイル(検出コイル42-n)は、電力供給回路41-1から供給された交流電力が複数の第1の検出コイル42-1~42-nの全てを経由してから受信コイル61に伝達されるよう、電力供給回路41-1から交流電力が供給される入力コイル(第1の検出コイル42-1)に対して直接的に電磁結合しない検出コイルであることが好ましい。本実施形態では、
図4に示されるように、出力コイルは、入力コイルが位置する側の端部とは反対側の端部に位置する。
【0046】
ハイパスフィルタ64は、共振回路63とアンプ65との間に接続され、共振回路63が受信した交流電力のうち、電力供給回路41-1から供給される交流電力の周波数未満の周波数を持つノイズ成分を減衰させる。アンプ65は、ハイパスフィルタ64と半波整流回路66との間に接続され、ハイパスフィルタ64から出力された交流電力を増幅する。
【0047】
半波整流回路66は、アンプ65とローパスフィルタ67の間に接続され、アンプ65から出力された、増幅された交流電力を半波整流して脈流電力に変換する。ローパスフィルタ67は、半波整流回路66と電圧検出回路68との間に接続され、半波整流回路66から出力された脈流電力を平滑化して直流電力に変換する。
【0048】
電圧検出回路68は、ローパスフィルタ67と接続され、ローパスフィルタ67から出力された直流電力の電圧(すなわち、第1の電圧)を検出する。そして判定回路69は、検出された第1の電圧が所定の基準範囲に含まれるか否か判定する。検出された第1の電圧が所定の基準範囲に含まれる場合、判定回路69は、送信コイル12と受信コイル21の間の異物を検出しない。一方、検出された第1の電圧が所定の基準範囲から外れると、判定回路69は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入された異物が有ると判定する。そして判定回路69は、異物の検出結果を表す信号を、送電装置2の電力供給回路11へ出力する。なお、電圧検出回路68は、直流電圧を検出するための電圧検出回路の何れかとすることができる。また、判定回路69は、検出された第1の電圧と所定の基準範囲とを比較し、その比較結果に応じた信号を出力可能な様々な回路の何れかとすることができる。
【0049】
したがって、検出回路46-1及び検出回路46-2の少なくとも何れか一方の判定回路69が、送信コイル12と受信コイル21の間に混入された異物が有ると判定した場合、異物検出装置4は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入された異物を検出する。
【0050】
図7は、異物混入の有無による、検出回路46-1、46-2にて検出される電圧(以下、単に検出電圧と呼ぶことがある)の周波数特性の変化を示すシミュレーションにおける、第1及び第2の検出コイルの配置の一例を示す図である。
図8及び
図9は、それぞれ、異物混入の有無による、検出回路46-1により検出される第1の電圧(以下、便宜上、第1の検出電圧と呼ぶ)の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。また、
図10及び
図11は、それぞれ、異物混入の有無による、検出回路46-2により検出される第2の電圧(以下、便宜上、第2の検出電圧と呼ぶ)の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果の一例を示す図である。このシミュレーションでは、簡単化のために、
図7に示されるように、第1の検出コイルの数及び第2の検出コイルの数をそれぞれ3個とし(すなわち、m=n=3)、第1の検出コイル42-1~42-3及び第2の検出コイル44-1~44-3は、互いに交互に、かつ、電力供給回路41-1、41-2と検出回路46-1、46-2との間に一列に配置されるものとした。また、第1の検出コイル42-1~42-3は基板47の表面に配置され、一方、第2の検出コイル44-1~44-3は基板47の裏面に配置されるものとした。さらに、このシミュレーションにおいて、各検出コイルのインダクタンスLを50nHとし、第1の検出コイル42-1~4-3のそれぞれと第1の共振回路を構成する第1のコンデンサ43-1~43-3の静電容量C1を2.755nFとし、第2の検出コイル44-1~44-3のそれぞれと第2の共振回路を構成する第2のコンデンサ45-1~45-3の静電容量C2をC1/4とした。また、各検出コイルと対応するコンデンサとにより構成される共振回路の抵抗Rを、それぞれ、0.1Ωとした。すなわち、第1の共振回路のそれぞれの第1の共振周波数は、13.56MHzとなり、第2の共振回路のそれぞれの第2の共振周波数は27.12MHzとなる。また、互いに隣接する二つの第1の検出コイル間の結合度、及び、互いに隣接する二つの第2の検出コイル間の結合度を、それぞれ、0.01とした。また、第1の検出コイル42-1と第1の検出コイル42-3間の結合度、及び、第2の検出コイル44-1と第2の検出コイル44-3間の結合度を、それぞれ、0.0001とした。さらに、このシミュレーションでは、何れかの検出コイルの近傍、例えば、何れかの検出コイルの巻き線の内側に相当する位置に異物が混入し、その結果として、異物の近傍の検出コイルのインダクタンスまたはその検出コイルを含む共振回路の抵抗値が変化したことを想定した。
【0051】
図8~
図11において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、検出電圧を表す。
図8におけるグラフ801は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。グラフ802は、第1の検出コイル42-1の近傍(例えば、第1の検出コイル42-1の巻き線内)に異物が混入したことにより、第1の検出コイル42-1のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ803は、第2の検出コイル44-1の近傍に異物が混入したことにより、第2の検出コイル44-1のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ804は、第1の検出コイル42-2の近傍に異物が混入したことにより、第1の検出コイル42-2のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。さらにまた、グラフ805は、第1の検出コイル42-3の近傍に異物が混入したことにより、第1の検出コイル42-3のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。
【0052】
グラフ801、802、804及び805に示されるように、送信コイル12と受信コイル21の間において、第1の検出コイル42-1~42-3の何れかの近傍に異物が混入したと仮定された場合の第1の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性と比較して低下することが分かる。特に、第1の共振回路のそれぞれの第1の共振周波数(13.56MHz)と等しい周波数を持つ交流電力が電力供給回路41-1から供給される場合、その電圧変化が顕著となる。したがって、異物検出装置4は、第1の検出電圧を調べることで、送信コイル12と受信コイル21の間において第1の検出コイル42-1~42-3の何れかの近傍に混入した異物を検出できることが分かる。
【0053】
一方、グラフ803に示されるように、送信コイル12と受信コイル21の間において、第2の検出コイル44-1の近傍に異物が混入したと仮定された場合、すなわち、第1の検出コイルのそれぞれの巻き線の外側に異物が位置すると仮定された場合、第1の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性とほぼ同じであることが分かる。そのため、第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に異物が混入した場合には、異物検出装置4は、第1の検出電圧を調べても、そのような位置に混入した異物を検出できないおそれがある。
【0054】
図9におけるグラフ901は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性を表す。グラフ902は、第1の検出コイル42-1の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第1の検出コイル42-1を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ903は、第2の検出コイル44-1の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第2の検出コイル44-1を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ904は、第1の検出コイル42-2の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第1の検出コイル42-2を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。さらにまた、グラフ905は、第1の検出コイル42-3の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第1の検出コイル42-3を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。
【0055】
グラフ901、902、904及び905に示されるように、この場合も、送信コイル12と受信コイル21の間において、第1の検出コイル42-1~42-3の何れかの近傍に異物が混入したと仮定された場合の第1の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性と比較して低下することが分かる。特に、第1の共振周波数(13.56MHz)と等しい周波数を持つ交流電力が電力供給回路41-1から供給される場合、その電圧変化が顕著となる。したがって、この場合も、異物検出装置4は、第1の検出電圧を調べることで、送信コイル12と受信コイル21の間において第1の検出コイル42-1~42-3の何れかの近傍に混入した異物を検出できることが分かる。
【0056】
一方、グラフ903に示されるように、送信コイル12と受信コイル21の間において、第2の検出コイル44-1の近傍に異物が混入したと仮定された場合の第1の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性とほぼ同じであることが分かる。そのため、第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に異物が混入した場合には、異物検出装置4は、第1の検出電圧を調べても、そのような位置に混入した異物を検出できないおそれがある。
【0057】
図10におけるグラフ1001は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が無い場合の第2の検出電圧の周波数特性を表す。グラフ1002は、第2の検出コイル44-1の近傍(例えば、第2の検出コイル44-1の巻き線内)に異物が混入したことにより、第2の検出コイル44-1のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第2の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1003は、第2の検出コイル44-2の近傍に異物が混入したことにより、第2の検出コイル44-2のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第2の検出電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1004は、第2の検出コイル44-3の近傍に異物が混入したことにより、第2の検出コイル44-3のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の第2の検出電圧の周波数特性を表す。
【0058】
グラフ1001~1004に示されるように、送信コイル12と受信コイル21の間において、第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に異物が混入したと仮定された場合の第2の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第2の検出電圧の周波数特性と比較して低下することが分かる。特に、第2の共振回路のそれぞれの第2の共振周波数(27.12MHz)と等しい周波数を持つ交流電力が電力供給回路41-2から供給される場合、その電圧変化が顕著となる。したがって、異物検出装置4は、第2の検出電圧を調べることで、送信コイル12と受信コイル21の間において第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に混入した異物を検出できることが分かる。
【0059】
図11におけるグラフ1101は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が無い場合の第2の検出電圧の周波数特性を表す。グラフ1102は、第2の検出コイル44-1の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第2の検出コイル44-1を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1103は、第2の検出コイル44-2の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第2の検出コイル44-2を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1104は、第2の検出コイル44-3の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、第2の検出コイル44-3を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。
【0060】
グラフ1101~1104に示されるように、この場合も、送信コイル12と受信コイル21の間において、第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に異物が混入したと仮定された場合の第2の検出電圧の周波数特性は、そのような異物が無い場合の第1の検出電圧の周波数特性と比較して低下することが分かる。特に、第2の共振周波数(27.12MHz)と等しい周波数を持つ交流電力が電力供給回路41-2から供給される場合、その電圧変化が顕著となる。したがって、異物検出装置4は、第2の検出電圧を調べることで、送信コイル12と受信コイル21の間において第2の検出コイル44-1~44-3の何れかの近傍に混入した異物を検出できることが分かる。
【0061】
したがって、異物検出装置4は、第1の検出電圧及び第2の検出電圧の両方を調べることで、第1の検出コイル42-1~42-3及び第2の検出コイル44-1~44-3の何れの近傍に異物が混入した場合でも、その異物を検出できることが分かる。
【0062】
なお、異物検出装置が有する複数の検出コイルのうち、互いに隣接する検出コイル同士が基板の法線方向から見て互いに部分的に重なるように密接に各検出コイルを配置し、かつ、各検出コイルが同じ共振周波数に対して共振するように設けられ、一つの電力供給回路からその共振周波数を持つ交流電力を供給することも考えられる。しかし、このように各検出コイルが配置されると、供給される交流電力により生じる磁束の検出コイル間の変動が大きくなる。その結果として、検出コイルによっては、その検出コイルの近傍の異物の有無による、検出電圧の変動も小さくなる。
【0063】
図12(a)及び
図12(b)は、上記のような、互いに隣接する検出コイル同士が部分的に重なるように密接に配置された比較例における、異物混入の有無による、検出電圧の周波数特性の変化を示すシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションにおいて、
図12(a)に示されるように、比較例による異物検出装置が有する検出コイル42-1~42-nの数を3個とし(すなわち、n=3)、それら検出コイル42-1~42-3は、電力供給回路と検出回路との間に一列に配置されるものとした。そして、検出コイル42-1と検出コイル42-3は基板47の表面に配置され、一方、検出コイル42-2は基板47の裏面に配置されるものとした。さらに、このシミュレーションにおいて、各回路素子のパラメータの値は、
図7~
図11に示されるシミュレーションで用いたパラメータの値と同じとした。すなわち、各検出コイル及び対応するコンデンサにより構成される共振回路の共振周波数を13.56MHzとした。ただし、検出コイル42-1と検出コイル42-2間の結合度、及び、検出コイル42-2と検出コイル42-3間の結合度をそれぞれ、0.1とし、検出コイル42-1と検出コイル42-3間の結合度を0.01とした。
【0064】
図12(b)において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、検出電圧を表す。グラフ1201は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が無い場合の検出電圧の周波数特性を表す。グラフ1202は、検出コイル42-1の近傍に異物が混入したことにより、検出コイル42-1のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1203は、検出コイル42-1の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、検出コイル42-1を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。同様に、グラフ1204は、検出コイル42-2の近傍に異物が混入したことにより、検出コイル42-2のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1205は、検出コイル42-2の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、検出コイル42-2を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1206は、検出コイル42-3の近傍に異物が混入したことにより、検出コイル42-3のインダクタンスが10%低下したと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。さらにまた、グラフ1207は、検出コイル42-3の近傍に異物が混入したことで生じた損失により、検出コイル42-3を含む共振回路の抵抗が3倍になったと仮定した場合の検出電圧の周波数特性を表す。
【0065】
グラフ1201~1207に示されるように、この比較例では、検出コイル42-1または検出コイル42-3の近傍に異物が混入した場合における検出電圧の周波数特性は、異物が混入していない場合における検出電圧の周波数特性と比較して比較的大きく変動することが分かる。一方、検出コイル42-2の近傍に異物が混入した場合における検出電圧の周波数特性は、異物が混入していない場合における検出電圧の周波数特性と比較してそれほど変動していないことが分かる。特に、電力供給回路が各共振回路の共振周波数である13.56MHzの周波数を持つ交流電力を供給する場合、異物の有無により、検出電圧はほとんど変化しない。このことから、隣接する検出コイル同士を密接に配置して同一の周波数の交流電力を各検出コイルに供給する比較例よりも、本実施形態による異物検出装置4の方が、混入した異物の位置によらず、その異物を精度良く検出できることが分かる。
【0066】
以上に説明してきたように、この異物検出装置は、送電装置と受電装置とが送電装置から受電装置へ電力伝送可能な位置関係となる場合に、送信コイルと受信コイルの間に配置される、互いに電磁結合可能な第1の検出コイルと、互いに電磁結合可能に配置される複数の第2の検出コイルとを有する。また、第1の検出コイルを含む第1の共振回路は第1の共振周波数を有し、一方、第2の検出コイルを含む第2の共振回路は、第1の共振周波数と異なる第2の共振周波数を有する。そしてこの異物検出装置は、複数の第1の検出コイルの何れかに供給され、かつ、その複数の第1の検出コイルを伝達された交流電力による第1の電圧を検出回路で検出する。同様に、この異物検出装置は、複数の第2の検出コイルの何れかに供給され、かつ、その複数の第2の検出コイルを伝達された交流電力による第2の電圧を検出回路で検出する。そしてこの異物検出装置は、検出された第1の電圧及び第2の電圧の少なくとも一方が所定の基準範囲から外れている場合に、送信コイルと受信コイルの間に異物が混入したと判定する。そのため、この異物検出装置は、送信コイル及び受信コイルよりも小さい異物が混入しても、その異物を精度良く検出することができる。さらに、この異物検出装置は、混入した異物が何れの検出コイルの近傍に位置している場合でも、その異物を精度良く検出できる。さらに、この異物検出装置は、送電装置から受電装置へ伝送される交流電力とは別個の交流電力を用いて異物を検出するので、送電装置から受電装置への電力伝送に影響されずに異物を検出できる。
【0067】
なお、変形例によれば、異物検出装置4は、一つの電力供給回路41を有し、その一つの電力供給回路41が、第1の周波数を持つ交流電力を複数の第1の検出コイルのうちの第1の入力コイルへ供給するとともに、第2の周波数を持つ交流電力を複数の第2の検出コイルのうちの第2の入力コイルへ供給してもよい。
【0068】
図13は、この変形例による電力供給回路41の回路構成図である。電力供給回路41は、例えば、直流電力を供給する直流電源51と、給電コイル52と、二つのコンデンサ53-1、53-2と、インバータ回路54と、スイッチング素子56と、制御回路55とを有する。この変形例による電力供給回路41は、
図5に示される電力供給回路41-1と比較して、二つのコンデンサ53-1、53-2及びスイッチング素子56を有する点、及び、制御回路55による制御の一部について相違する。そこで以下では、この相違点及び関連部分について説明する。
【0069】
二つのコンデンサ53-1、53-2は、互いに並列、かつ、給電コイル52に対して直列に制御される。また、コンデンサ53-2とスイッチング素子56とは直列に接続される。なお、スイッチング素子56は、例えば、MOSFETまたはリレーとすることができる。すなわち、スイッチング素子56がオフとなる場合には、二つのコンデンサ53-1、53-2のうち、コンデンサ53-1が給電コイル52とともに共振回路を構成し、一方、スイッチング素子56がオンとなる場合には、二つのコンデンサ53-1、53-2のそれぞれが給電コイル52とともに共振回路を構成する。コンデンサ53-1の静電容量は、例えば、給電コイル52とコンデンサ53-1により構成される共振回路の共振周波数が、第2の検出コイルを含む第2の入力コイルに供給される交流電力の第2の周波数となるように設定される。また、コンデンサ53-2の静電容量は、例えば、給電コイル52と二つのコンデンサ53-1、53-2により構成される共振回路の共振周波数が、第1の入力コイルに供給される交流電力の第1の周波数となるように設定される。
さらに、給電コイル52は、複数の第1の検出コイルのうちの第1の入力コイル及び複数の第2の検出コイルのうちの第2の入力コイルのそれぞれと電磁結合可能なように配置される。
【0070】
制御回路55は、所定の周期(ただし、第1の周波数に相当する周期及び第2の周波数に相当する周期よりも長い周期)ごとに、スイッチング素子56のオン/オフを切り替える。そして制御回路55は、スイッチング素子56がオンとなっている期間において、給電コイル52に供給される交流電力の周波数が第1の周波数となるように、インバータ回路54が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。また、制御回路55は、スイッチング素子56がオフとなっている期間において、給電コイル52に供給される交流電力の周波数が第2の周波数となるように、インバータ回路54が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。これにより、電力供給回路41は、所定の周期ごとに、第1の入力コイルへの第1の周波数を持つ交流電力の供給と、第2の入力コイルへの第2の周波数を持つ交流電力の供給とを切り替えることができる。
【0071】
他の変形例によれば、異物検出装置4は、受電装置3に取り付けられてもよい。この場合には、受電装置3は、受信コイル21と並列に、受信コイル21の両端を短絡するか否かを切り替えるスイッチング素子(図示せず)と、そのスイッチング素子をオンにするかオフにするかを切り替えるための制御回路(図示せず)をさらに有していてもよい。そして検出回路46-1、46-2からの異物の検出結果を表す信号は、受電装置3の制御回路へ出力され、制御回路は、その信号の何れかが、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物が検出されたことを表している場合、スイッチング素子をオンにして、受信コイル21の両端を短絡する。これにより、送電装置2から受電装置3への電力伝送が中断され、混入した異物による故障の発生が防止される。
【0072】
また、送電装置2と受電装置3とが、互いに通信するための通信器(図示せず)をそれぞれ有している場合、受電装置3の制御回路は、異物検出装置4の検出回路46-1、46-2から受信した信号の何れかが、送信コイル12と受信コイル21との間に混入した異物が検出されたことを表している場合、通信器を介して、送電装置2へ電力伝送の停止を指示する信号を送信してもよい。そして送電装置2の電力供給回路11の制御回路は、通信器を介して、電力伝送の停止を指示する信号を受信すると、電力供給回路11から送信コイル12への電力供給を停止してもよい。
【0073】
さらに、送電装置2と受電装置3のそれぞれに、異物検出装置4が取り付けられてもよい。すなわち、送信コイル12と受信コイル21との間に、二つの異物検出装置4が配置されてもよい。
【0074】
さらに他の変形例によれば、異物検出装置4は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を除去するための除去機構(図示せず)をさらに有していてもよい。この場合、検出回路46-1、46-2の何れかが、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を検出すると、その除去機構を動作させて、異物を除去してもよい。なお、そのような除去機構は、例えば、送電装置2の筐体の受電装置3と対向する側の面、または、受電装置3の筐体の送電装置2と対向する側の面を拭くワイパー、あるいは、送電装置2と受電装置3の間に空気を吹き出して異物を除去するエアーガンとすることができる。これにより、異物検出装置4は、異物が検出された場合でも、異物の発火及び異物の発熱による送電装置2または受電装置3の故障を防止しつつ、送電装置2から受電装置3への電力伝送の継続を可能とすることができる。
【0075】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
1 電力伝送システム
2 送電装置
11 電力供給回路
12 送信コイル
3 受電装置
21 受信コイル
22 共振コンデンサ
23 受電回路
4 異物検出装置
41、41-1、41-2 電力供給回路
42-1~42-n 第1の検出コイル
43-1~43-n 第1のコンデンサ
44-1~44-n 第2の検出コイル
45-1~45-n 第2のコンデンサ
46、46-1、46-2 検出回路
47 基板
51 直流電源
52 給電コイル
53、53-1、53-2 コンデンサ
54 インバータ回路
55 制御回路
56 スイッチング素子
61 受信コイル
62 共振コンデンサ
63 共振回路
64 ハイパスフィルタ
65 アンプ
66 半波整流回路
67 ローパスフィルタ
68 電圧検出回路
69 判定回路