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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20240312BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20240312BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240312BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240312BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
B60W20/13
B60K6/44 ZHV
B60W10/08 900
B60L15/20 S
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/16
B60L9/18 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019183653
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059171
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】生駒 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-345110(JP,A)
【文献】特開2015-101303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/13
B60K 6/44
B60W 10/08
B60L 15/20
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/13
B60L 58/16
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、
前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、
前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、
前記バッテリの充電率を算出する充電率算出部と、
前記充電率に対して、前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態での前記目標値が前記低温状態ではない通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第一マップと、を備え、
前記制御部は、
記低温状態では、前記目標発電電力を、前記通常状態での前記目標発電電力未満に制限し、
前記温度取得部で取得された前記温度及び前記充電率算出部で算出された前記充電率を前記第一マップに適用して前記目標値を取得するとともに、
前記第一マップでは、前記充電率が所定の下限値以上かつ満充電率以下の充電率範囲内において前記低温状態での前記目標値が前記通常状態での前記目標値未満に制限されるよう規定されており、
前記下限値は、前記車両の走行モードがCSモードに設定されるときの充電率の上限値に等しい
ことを特徴とする、電動車両の制御装置。
【請求項2】
車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、
前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、
前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、
前記バッテリの充電率を算出する充電率算出部と、
前記充電率に対して、前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態での前記目標値が前記低温状態ではない通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第一マップと、
前記バッテリの劣化度を算出する劣化度算出部と、
前記劣化度に対して、前記低温状態での前記目標値が前記通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第二マップと、を備え、
前記制御部は、
記低温状態では、前記目標発電電力を、前記通常状態での前記目標発電電力未満に制限し、
前記温度取得部で取得された前記温度及び前記充電率算出部で算出された前記充電率を前記第一マップに適用して前記目標値を取得し、
前記温度取得部で取得された前記温度及び前記劣化度算出部で算出された前記劣化度を前記第二マップに適用して前記目標値を取得して、前記第一マップ及び前記第二マップのそれぞれから取得した二つの前記目標値のうちの大きい一方を選択する
ことを特徴とする、電動車両の制御装置。
【請求項3】
車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、
前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、
前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、
前記バッテリの最大出力を算出する出力算出部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態では、前記目標発電電力を、前記低温状態ではない通常状態での前記目標発電電力未満に制限し、
前記通常状態での前記目標発電電力から前記低温状態での前記目標発電電力を引いた制限量が前記出力算出部で算出された前記最大出力を超える場合には、前記通常状態での前記目標発電電力から前記最大出力を引いた値を前記低温状態での前記目標発電電力として設定する
ことを特徴とする、電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの回転電機を備えた電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用バッテリの電力を消費して車両を駆動する回転電機(以下「モータ」という)と、エンジン動力で発電する回転電機(以下「ジェネレータ」という)とを備えた電動車両が実用化されている。ジェネレータで発電された電力は、バッテリに充電されるか、あるいは直接的にモータに供給される。例えば特許文献1には、リチウムイオン二次電池からなるバッテリを搭載したハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-34542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリの温度が0[℃]を下回るような低温状態では、バッテリの充放電パフォーマンスの低下(容量低下,出力低下,劣化促進など)を招くことが知られている。そのため、バッテリ電力のみでモータが作動する場合には、電力不足により車両の動力性能が低下しうる。これに対し、単にジェネレータの発電電力で車両の要求駆動力を確保しようとすると、バッテリの電力が消費されにくく、バッテリの低温状態が続いてしまうため、充放電パフォーマンスが低い状態が継続してしまう。
【0005】
本件の電動車両の制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、低温状態のバッテリを昇温させることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する電動車両の制御装置は、車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、前記バッテリの充電率を算出する充電率算出部と、前記充電率に対して、前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態での前記目標値が前記低温状態ではない通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第一マップと、を備える。前記制御部は、前記低温状態では、前記目標発電電力を、前記通常状態での前記目標発電電力未満に制限する。また、前記制御部は、前記温度取得部で取得された前記温度及び前記充電率算出部で算出された前記充電率を前記第一マップに適用して前記目標値を取得する。前記第一マップでは、前記充電率が所定の下限値以上かつ満充電率以下の充電率範囲内において前記低温状態での前記目標値が前記通常状態での前記目標値未満に制限されるよう規定されており、前記下限値は、前記車両の走行モードがCSモードに設定されるときの充電率の上限値に等しい。
【0007】
なお、前記第一回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機を意味する。また、前記第二回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機を意味する。
【0008】
ここで開示する第二の電動車両の制御装置は、車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、前記バッテリの充電率を算出する充電率算出部と、前記充電率に対して、前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態での前記目標値が前記低温状態ではない通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第一マップと、前記バッテリの劣化度を算出する劣化度算出部と、前記劣化度に対して、前記低温状態での前記目標値が前記通常状態での前記目標値未満に制限される関係を予め規定した第二マップと、を備える。前記制御部は、前記低温状態では、前記目標発電電力を、前記通常状態での前記目標発電電力未満に制限し、前記温度取得部で取得された前記温度及び前記充電率算出部で算出された前記充電率を前記第一マップに適用して前記目標値を取得し、前記温度取得部で取得された前記温度及び前記劣化度算出部で算出された前記劣化度を前記第二マップに適用して前記目標値を取得して、前記第一マップ及び前記第二マップのそれぞれから取得した二つの前記目標値のうちの大きい一方を選択する。
【0011】
ここで開示する第三の電動車両の制御装置は、車載のバッテリの電力を消費して作動する駆動用の第一回転電機と、エンジンの動力で発電した電力を少なくとも前記第一回転電機に供給可能な第二回転電機と、を具備した電動車両の制御装置であって、前記バッテリの温度を取得する温度取得部と、前記第二回転電機による発電電力の目標値を目標発電電力として設定して前記第二回転電機を制御する制御部と、前記バッテリの最大出力を算出する出力算出部と、を備える。前記制御部は、前記温度取得部で取得された前記温度が所定温度未満である低温状態では、前記目標発電電力を、前記低温状態ではない通常状態での前記目標発電電力未満に制限し、前記通常状態での前記目標発電電力から前記低温状態での前記目標発電電力を引いた制限量が前記出力算出部で算出された前記最大出力を超える場合には、前記通常状態での前記目標発電電力から前記最大出力を引いた値を前記低温状態での前記目標発電電力として設定する。
【発明の効果】
【0012】
開示した電動車両の制御装置によれば、バッテリの温度が所定温度未満の低温状態になると目標発電電力が制限され、第二回転電機の発電量が通常状態に比べて抑えられる。これにより、第一回転電機の電力源として、バッテリの電力がより多く消費される(電池出力が上昇する)ことから、低温状態のバッテリの昇温を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る制御装置を搭載した電動車両を例示する模式図である。
図2】充電率に対する発電電力の目標値を規定した第一マップの一例である。
図3】劣化度に対する発電電力の目標値を規定した第二マップの一例である。
図4図1の制御装置で実施される発電制御を含む制御内容を説明するためのフローチャート例である。
図5】発電制御による作用を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての電動車両の制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.全体構成]
本実施形態の制御装置10は、図1に示す車両1に適用される。車両1は、車載のバッテリ5の電力を消費して作動する駆動用のモータ2(第一回転電機)と、エンジン4の動力で発電するジェネレータ3(第二回転電機)とを具備した電動車両である。なお、エンジン4の動力はジェネレータ3のみに伝達されるよう構成されていてもよいし、エンジン4の動力がモータ2の動力とは別に駆動輪に伝達される構成であってもよい。
【0016】
車両1には、例えば、バッテリ5の電力を消費して走行するCDモードと、エンジン駆動によるハイブリッド走行であるCSモードの二種類の走行モードが設けられる。あるいは、EVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが設けられた車両1であってもよい。これらの走行モードは、車両1の負荷状態や車速,運転者の要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてモータ2,ジェネレータ3,エンジン4が制御される。
【0017】
モータ2は、車両1の駆動源として設けられる。モータ2の電力源は、バッテリ5に蓄電されている電力やジェネレータ3で発電された電力である。図1にはモータ2がフロント側に一つだけ配置された例を図示しているが、車両1に搭載されるモータ2の個数は一つに限られず、例えばフロント側及びリア側のそれぞれに設けられてもよいし、各車輪に設けられてもよい。
【0018】
ジェネレータ3は、エンジン4の動力で発電した電力を少なくともモータ2に供給可能である。本実施形態のモータ2及びジェネレータ3はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ2は、おもに電動機として機能して車両1を駆動し、回生時には発電機として機能する。また、ジェネレータ3は、エンジン4を始動させる際に電動機(スタータ)として機能し、エンジン4の作動時にはエンジン動力で発電を実施する。
【0019】
モータ2及びジェネレータ3の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータを含む図示しないコントロールユニット(例えばMCU,GCU)が設けられる。モータ2及びジェネレータ3の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ2,ジェネレータ3,各インバータの作動状態は、例えば制御装置10で制御される。
【0020】
エンジン4は、ガソリンや軽油を燃焼とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。エンジン4の作動状態は、例えば制御装置10で制御される。なお、モータ2,ジェネレータ3,エンジン4と駆動輪とを繋ぐ動力伝達経路上に、減速機構や動力分配機構等が設けられていてもよい。
【0021】
バッテリ5は、モータ2による回生電力及びジェネレータ3による発電電力の充電と放電とが可能に構成された高電圧電源である。本実施形態のバッテリ5は、複数の電池セル(例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池)が直列接続されて構成される。なお、バッテリ5が、車両外部の電源による外部充電、すなわち、家庭用交流電源での充電(普通充電)や、高圧直流電源での充電(急速充電)が可能に構成されてもよい。
【0022】
車両1には、バッテリ5のセル温度を検出する温度センサ21と、バッテリ5のセル電圧を検出する電圧センサ22と、バッテリ5の電流を検出する電流センサ23とが設けられる。各センサ21~23で検出された情報は、制御装置10に伝達される。
【0023】
制御装置10は、車両1に搭載される各種装置を統合制御する電子制御装置(コンピュータ)である。制御装置10の内部には、バスを介して互いに接続されたプロセッサ,メモリ,インターフェイス装置等(いずれも図示略)が内蔵され、車両1に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。制御装置10の入力側には上記のセンサ21~23が接続され、制御装置10の出力側にはモータ2及びジェネレータ3の各コントロールユニットやエンジン4等の各種装置が接続される。
【0024】
プロセッサは、例えば制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ)などを内蔵する処理装置である。また、メモリは、プログラムや作業中のデータが格納される記憶装置であり、ROM,RAM,不揮発メモリなどを含む。制御装置10で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてメモリに記録,保存されており、プログラムの実行時にはプログラムの内容がメモリ空間内に展開されプロセッサで実行される。
【0025】
本実施形態の制御装置10は、バッテリ5の温度が0[℃]を下回るような低温状態において、ジェネレータ3による発電電力を制限する発電電力制限制御(以下「発電制御」という)を実施する。発電制御の実施により、バッテリ5の消費電力が増えると、バッテリ5からジュール熱が発生するため、バッテリ5の昇温が可能となる。
【0026】
[2.制御構成]
制御装置10には、発電制御を実施するための要素として、温度取得部11,充電率算出部12,劣化度算出部13,出力算出部14,制御部15が設けられる。これらの要素は、制御装置10で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。また、本実施形態の制御装置10には、二種類のマップ16,17が設けられる。
【0027】
温度取得部11は、バッテリ5の温度(以下「バッテリ温度T」という)を取得するものである。温度取得部11は、バッテリ温度Tとして、温度センサ21で検出された複数のセル温度の平均値や中央値を取得してもよいし、複数のセル温度のうちの最低値(最低セル温度)を取得してもよい。本実施形態の温度取得部11は、最低セル温度をバッテリ温度Tとして取得する。
【0028】
充電率算出部12は、バッテリ5の充電率(SOC,State Of Charge)を算出するものである。充電率算出部12は、例えば、電圧センサ22や電流センサ23の検出値に基づき、従来周知の算出手法により充電率を算出可能である。
【0029】
劣化度算出部13は、バッテリ5の劣化度(SOH,State Of Health)を算出するものである。劣化度は、バッテリ5の劣化の進行度合い(劣化状態)を表すパラメータであり、バッテリ5の能力(特性)を表すパラメータの一つでもある。劣化度算出部13は、例えば、現在の満充電容量(最大充電量)と新品時における満充電容量(初期最大充電量)とを用いて算出する。なお、バッテリ5が新品のときの劣化度は100%である。
【0030】
出力算出部14は、現時点でバッテリ5が出力可能な最大出力(SOP,State of Power)を算出するものである。最大出力は、ある瞬間にバッテリ5から持ち出し可能な(充電,放電が可能な)電池出力の最大値であり、バッテリ5の充電率が高いほど大きな値とされる。出力算出部14は、バッテリ5の充電率のみから最大出力を算出してもよいし、充電率に加え、バッテリ5の劣化度及びバッテリ温度Tを考慮して最大出力を算出してもよい。劣化度を考慮することで、バッテリ5の給電能力に見合った最大出力の算出が可能となる。また、バッテリ温度Tを考慮することで、バッテリ5に対して電気的な負荷が過剰にならない範囲内での最大出力の算出が可能となる。
【0031】
制御部15は、ジェネレータ3による発電電力の目標値を目標発電電力として設定し、その目標発電電力を発電するようにジェネレータ3を制御するものである。制御部15は、温度取得部11で取得されたバッテリ温度Tが所定の第一閾値T1(所定温度)未満である低温状態では、目標発電電力を、低温状態ではない通常状態での目標発電電力未満に制限する(発電制御を実施する)。言い換えると、低温状態での目標発電電力は、通常状態での目標発電電力未満に設定されうる。
【0032】
第一閾値T1は、バッテリ5の充放電パフォーマンスが低いか否かを判定する閾値温度であり、0[℃]未満の値(例えば-20[℃]~-10[℃])に予め設定される。すなわち、本実施形態の制御装置10では、バッテリ温度Tが第一閾値T1を下回る低温状態での目標発電電力を、通常状態の目標発電電力未満に設定することで、ジェネレータ3の発電による電力確保量を小さくし、バッテリ5から持ち出される電力量を増やすことでバッテリ5を昇温させ、充放電パフォーマンスの向上を図る。
【0033】
低温状態とは、バッテリ温度Tが第一閾値T1未満であるバッテリ5の状態を意味し、通常状態とは、低温状態ではない状態、すなわち、少なくともバッテリ温度Tが第一閾値T1よりも高い状態を意味する。本実施形態では、バッテリ温度Tの閾値温度として、第一閾値T1のほかに第二閾値T2が設けられる。第二閾値T2は、目標発電電力の制限を解除するか否かを判定するための閾値温度であり、第一閾値T1よりも高い値(例えば-10[℃]~5[℃])に設定される。つまり、本実施形態の制御部15は、バッテリ温度T<第一閾値T1で目標発電電力の制限を開始し、バッテリ温度T≧第二閾値T2で目標発電電力の制限を解除して通常状態での目標発電電力に戻す。
【0034】
本実施形態の制御部15は、制御装置10に予め設けられた第一マップ16を使って目標発電電力の候補を取得する。第一マップ16は、充電率に対する発電電力の目標値の関係を規定したマップである。なお、本実施形態の第一マップ16には、通常状態での関係と低温状態での関係とがそれぞれ規定されているが、少なくとも低温状態での関係が規定されていればよい。
【0035】
図2は第一マップ16の一例である。第一マップ16では、横軸に充電率,縦軸に発電電力の目標値がとられ、充電率に対する低温状態での目標値(以下「低温目標値」という)と、充電率に対する通常状態での目標値(以下「通常目標値」という)とが規定される。図中破線で示す低温目標値は、所定の充電率範囲Rc内において、図中実線で示す通常目標値未満に設定される。この第一マップ16では、通常目標値が充電率によらず一定の値P0に設定され、低温目標値が上記の充電率範囲Rc内で充電率に応じて異なるように設定される。
【0036】
具体的には、充電率が第一所定値C1以上かつ満充電率(100[%])以下の充電率範囲Rcでは、低温目標値が通常目標値よりも低く設定される。図2の第一マップ16では、充電率が第一所定値C1以上かつ第二所定値C2未満の範囲では、低温目標値が、充電率が高くなるほど小さくなるようにランプ状に設定され、充電率が第二所定値C2以上かつ100[%]以下の範囲では一定の値P1に設定される。通常目標値から低温目標値を引いた差は、目標発電電力の制限量に相当する。なお、本実施形態の第一マップ16では、充電率が0[%]以上かつ第一所定値C1未満の範囲(充電率範囲Rcではない範囲)において、二つの目標値が互いに等しい値P0に設定される。
【0037】
本実施形態の第一所定値C1(下限値)は、車両1の走行モードがCSモードに設定されるときの充電率の上限値に等しい。充電率が第一所定値C1を下回る状態でバッテリ電力を消費し続けると充電率が枯渇し、最悪の場合、走行不能となりかねないため、充電率が第一所定値C1未満であるとき(車両1がCSモードに設定されるとき)には、目標発電電力の制限を実質的に行わず、バッテリ5の充電率が保持される。第一所定値C1は、制限量を0とする(発電制御を禁止する)充電率閾値(下限値)であるともいえる。
【0038】
なお、図2に示す第一マップ16は一例であり、各状態での目標値は図示したものに限られない。例えば、充電率範囲Rcが全範囲(0[%]~100[%])であってもよい。つまり、充電率が第一所定値C1未満のときにも、低温目標値が通常目標値未満に設定されていてもよいし、充電率が0[%]から100[%]に近づくほど(高くなるほど)、低温目標値が徐々に(直線状又は曲線状に)低下するように設定されていてもよい。
【0039】
制御部15は、温度取得部11で取得されたバッテリ温度T及び充電率算出部12で算出された充電率を第一マップ16に適用して目標値を取得する。制御部15は、例えば取得されたバッテリ温度Tが第一閾値T1未満の温度であり、かつ、算出された充電率が第二所定値C2以上の値Cxであれば、図2中の点Xに対応する目標値P1を取得する。この値P1が目標発電電力として設定されれば、目標発電電力が通常目標値P0よりも制限されうる。
【0040】
さらに本実施形態の制御部15は、上記の第一マップ16に加え、制御装置10に予め設けられた第二マップ17を使って目標発電電力の候補を取得する。第二マップ17は、劣化度に対する発電電力の目標値の関係を規定したマップである。第二マップ17にも、通常状態での関係と低温状態での関係とがそれぞれ規定されているが、少なくとも低温状態での関係が規定されていればよい。バッテリ5は、その劣化が進行するほど内部抵抗が大きくなるため、新品時と劣化時とでは同じ発電電力でも後者の方が発熱量が大きくなる傾向がある。そのため、バッテリ5の劣化状態をも考慮して目標発電電力を設定することで、目標発電電力の制限量を適正化する。
【0041】
図3は第二マップ17の一例である。第二マップ17では、横軸に劣化度,縦軸に発電電力の目標値がとられ、劣化度に対する低温目標値と、劣化度に対する通常目標値とが規定される。図中破線で示す低温目標値は、所定の劣化度範囲Rd内において、図中実線で示す通常目標値未満に設定される。この第二マップ17では、通常目標値が劣化度によらず一定の値P0に設定され、低温目標値が上記の劣化度範囲Rd内で劣化度に応じて異なるように設定される。なお、ここでは、図中の通常目標値P0が第一マップ16の通常目標値P0と同一である。
【0042】
具体的には、劣化度が第一所定値D1以上かつ100[%]以下の劣化度範囲Rdでは、低温目標値が通常目標値よりも低く設定される。図3の第二マップ17では、劣化度が第一所定値D1以上かつ第二所定値D2未満の範囲において、低温目標値が、劣化度が高くなるほど(新品に近いほど)小さくなるようにランプ状に設定され、劣化度が第二所定値D2以上かつ100[%]以下の範囲において一定の値P2に設定される。通常目標値から低温目標値を引いた差は、目標発電電力の制限量に相当する。低温目標値の最小値P2は、第一マップ16の低温目標値の最小値P1と同一の値であってもよいし異なる値であってもよい。なお、本実施形態の第二マップ17では、劣化度が0[%]以上かつ第一所定値D1未満の範囲(劣化度範囲Rdではない範囲)において、二つの目標値が互いに等しい値P0に設定される。
【0043】
図3に示す第二マップ17は一例であり、各状態での目標値は図示したものに限られない。例えば、劣化度範囲Rdが全範囲(0[%]~100[%])であってもよい。つまり、劣化度が第一所定値D1未満のときにも、低温目標値が通常目標値未満に設定されていてもよいし、劣化度が0[%]から100[%]に近づくほど(新品に近いほど)低温目標値が徐々に(直線状又は曲線状に)低下するように設定されていてもよい。
【0044】
制御部15は、温度取得部11で取得されたバッテリ温度T及び劣化度算出部13で算出された劣化度を第二マップ17に適用して目標値を取得し、第一マップ16及び第二マップ17のそれぞれから取得した二つの目標値のうちの大きい一方を選択する。つまり、制御部15は、二種類のマップ16,17を用いる場合には、各マップ16,17から取得した目標値の最大値取り(MAX取り)をする。
【0045】
制御部15は、例えば、取得されたバッテリ温度Tが第一閾値T1未満の温度であり、かつ、算出された充電率が第二所定値C2以上の値Cxであれば、上述した通り、第一マップ16にこれらの値を適用して、図2中の点Xに対応する目標値P1を取得する。また、制御部15は、同じタイミングで算出された劣化度が第一所定値D1以上かつ第二所定値D2未満の値Dyであれば、第二マップ17にこれらの値を適用して、図3中の点Yに対応する目標値P3を取得する。制御部15は、取得した二つの目標値P1,P3を比較し、大きい一方(例えばP3)を目標発電電力の候補として選択する。選択された目標値が目標発電電力に設定されれば、目標発電電力が通常目標値P0よりも制限されうる。
【0046】
なお、本実施形態では、通常目標値が、第一マップ16及び第二マップ17のいずれにおいても一定値P0に設定されていることから、制御部15はマップ16,17を用いずに通常状態での目標発電電力を設定する。つまり、本実施形態の制御部15は、バッテリ温度Tが第一閾値T1以上である場合(目標発電電力の制限後であれば、バッテリ温度Tが第二閾値T2以上となった場合)の通常状態では、予め設定された目標発電電力を設定し、ジェネレータ3を制御する。
【0047】
また、本実施形態の制御部15は、通常状態での目標発電電力から低温状態での目標発電電力を引いた制限量が、出力算出部14で算出された最大出力を超える場合には、通常状態での目標発電電力から最大出力を引いた値を、低温状態での目標発電電力として設定する。つまり、制御部15は、低温状態のときに制限する目標発電電力の制限量が、その時点でのバッテリ5の最大出力を超えないように、目標発電電力を設定する。
【0048】
例えば、制御部15が二種類のマップ16,17を用いて目標発電電力の候補(大きい方の目標値)を選択した場合には、この候補値を通常状態での目標発電電力から減じて制限量を算出する。そして、この制限量とバッテリ5の最大出力とを比較し、制限量が最大出力以下であれば、その候補値(大きい方の目標値)をそのまま目標発電電力として設定する。一方、制限量が最大出力を超えるときは、制限量を最大出力でクリップする。言い換えると、通常状態での目標発電電力から最大出力を引いた値を、低温状態での目標発電電力として設定する。これにより、車両1に要求される出力(要求駆動力)が不足する事態を回避する。
【0049】
また、車両1の走行モードとしてセーブモード及びチャージモードが設けられている場合には、制御部15は、上述した発電制御を実施する際に、セーブモード及びチャージモードの設定状態を確認する。セーブモードとは、セーブモード選択スイッチ(図示略)がオン操作された時点での充電率を維持した状態で走行する走行モードであり、チャージモードとは、充電率が100[%]付近となるまでエンジン4を作動させ、ジェネレータ3による発電を実施する走行モードである。これらのモードは、セーブモード選択スイッチやチャージモード選択スイッチ(図示略)といったスイッチをドライバが操作することで選択,設定される。
【0050】
セーブモード又はチャージモードが設定されている場合、制御部15は、バッテリ温度Tが第一閾値T1未満の低温状態であれば、設定中のセーブモード又はチャージモードをキャンセルし、上述した発電制御を実施する。また、セーブモード又はチャージモードが設定されていない場合に上記スイッチがドライバにより操作され、セーブモード又はチャージモードが設定された場合も同様に、制御部15は、バッテリ温度Tが第一閾値T1未満の低温状態であれば、セーブモード又はチャージモードへの遷移を禁止し、上述した発電制御を実施する。なお、低温状態でない通常状態であれば、制御部15はセーブモード又はチャージモードのキャンセルをせず、セーブモード又はチャージモードへの遷移を禁止しない。
【0051】
[3.フローチャート]
図4は、上述した発電制御を含むジェネレータ3の制御内容を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、例えば車両1の主電源が投入されたときに、制御装置10において所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、このフローチャートでは、セーブモード及びチャージモードは考慮していない。
【0052】
ステップS1では、各センサ21~23で検出された各種情報が取得される。ここで取得される情報には、少なくともバッテリ温度Tが含まれる。ステップS2では、充電率算出部12により現時点でのバッテリ5の充電率が算出され、ステップS3では、劣化度算出部13により現時点でのバッテリ5の劣化度が算出される。続くステップS4では、出力算出部14により現時点でのバッテリ5の最大出力が算出される。なお、これらステップS2~S4の算出工程は、このフローチャートで実施されなくてもよい。例えば、別のフローチャートにおいて、このフローチャートの演算周期とは異なる演算周期で算出された値を、ステップS1で取得してもよい。
【0053】
ステップS5では、バッテリ温度Tが第一閾値T1未満であるか否かが判定される。T<T1のときは低温状態であるため、ステップS6に進む。ステップS6では、第一マップ16に充電率を適用して目標値を取得し、続くステップS7では、第二マップ17に劣化度を適用して目標値を取得する。そして、ステップS8では、取得した二つの目標値のうちの大きい一方を選択する。また、ステップS9では、通常目標値から選択した目標値を減じて制限量を算出する。
【0054】
ステップS10では、この制限量がバッテリ5の最大出力以下であるか否かが判定される。制限量が最大出力以下であれば、ステップS11に進み、ステップS8で選択した目標値が目標発電電力に設定される。一方、制限量が最大出力を超えていれば、ステップS12に進み、通常状態での目標発電電力(通常目標値)から最大出力を減じた値が目標発電電力に設定される。次のステップS20では、ステップS11又はステップS12で設定された目標発電電力となるようにジェネレータ3が制御され、このフローチャートをリターンする。
【0055】
次の演算周期においても、ステップS1~S4の処理が実施され、ステップS5の判定が実施される。ジェネレータ3による発電電力が制限されることでバッテリ5の消費電力が増えると、バッテリ5の温度が上昇していくが、バッテリ温度Tが第一閾値T1未満のままである場合、または、バッテリ温度Tが第二閾値T2未満である場合には、ステップS5又はS13からステップS6に進み、上述したステップS6~S12の処理が実施され、ジェネレータ3が制御される(ステップS20)。
【0056】
このフローチャートが繰り返されることで、バッテリ5が昇温され、バッテリ温度Tが第二閾値T2以上となると、ステップS13からステップS14に進み、通常目標値が目標発電電力として設定され、ジェネレータ3が制御される(ステップS20)。なお、バッテリ5の劣化度は長期的に変化するパラメータであることから、ステップS3及びS7の処理をフローチャートの最初の演算周期でのみ実施し、その後(リターン後)は、最初の演算周期で取得した値を用いてもよい。
【0057】
[4.作用,効果]
上述した制御装置10では、図5中の時刻t1に示すように、バッテリ温度Tが第一閾値T1を下回り低温状態になると、目標発電電力が制限され、ジェネレータ3の発電量が通常状態に比べて抑えられる。これにより、モータ2の電力源として、バッテリ5の電力がより多く消費される(電池出力が上昇する)ことから、低温状態のバッテリ5の昇温を図ることができ、ひいては充放電パフォーマンスの向上を図ることができる。
【0058】
また、バッテリ5の電力消費量をどの程度増大させられるかは、バッテリ5の充電率によって変わる。このため、上述した制御装置10によれば、予めバッテリ5の充電率と低温目標値との関係をマップ(第一マップ16)として記憶しておくことで、制御構成を簡素化できるとともに、適切にバッテリ電力を消費でき、バッテリ5の昇温させることができる。
【0059】
上述した第一マップ16では、低温目標値が、充電率が高い方が低い方よりも制限量が大きくなるように設定されている。このため、バッテリ電力に余裕があるほどジェネレータ3による発電電力が制限され、バッテリ5の電力消費量が多くなることから、効果的にバッテリ5を昇温させることができる。
【0060】
また、バッテリ5の劣化が進行していると、バッテリ5の内部抵抗が増大し、目標発電電力の制限量が小さくてもバッテリ5の温度が上昇しやすくなる。このため、上述した制御装置10によれば、予めバッテリ5の劣化度と低温目標値との関係をマップ(第二マップ17)として記憶しておくことで、制御構成を簡素化できるとともに、劣化度をも考慮して適切にバッテリ電力を消費でき、バッテリ5を昇温させることができる。
【0061】
上述した第二マップ17では、低温目標値が、劣化度が小さい方が大きい方よりも(新品に近い方が)制限量が大きくなるように設定されている。このため、バッテリ5の内部抵抗が小さい状態の方がジェネレータ3による発電電力が制限され、バッテリ5の電力消費量が多くなることから、効果的にバッテリ5を昇温させることができる。
【0062】
上述した制御装置10では、図5中の時刻t2に示すように、制限量が最大出力を超えると、制限量が最大出力でクリップされる。つまり、低温状態での目標発電電力が、通常状態での目標発電電力(通常目標値)から最大出力を減じた値に設定される。これにより、低温状態でジェネレータ3の発電電力を制限する場合であっても、バッテリ5の最大出力以上には制限されない(制限量が最大出力を超えることはない)ため、車両1に要求される出力(要求駆動力)を実現しつつバッテリ5の昇温を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、図5中の時刻t3に示すように、発電制御の実施中にバッテリ温度Tが第二閾値T2以上になると、目標発電電力の制限が解除されて発電制御が終了する。このように、目標発電電力の制限を開始する温度(第一閾値T1)と制限を解除する温度(第二閾値T2)とを異なる値に設定することで、制御のハンチングを回避できる。
【0064】
さらに、上述した制御装置10では、図5中の時刻t4に示すように、発電制御の実施中に充電率が第一所定値C1になると、目標発電電力の制限が解除されて発電制御が終了する。この第一所定値C1が、車両1の走行モードがCSモードに設定されるときの充電率の上限値に等しければ、車両1がCSモードで走行するときにはジェネレータ3の発電電力は制限されないため、充電率が枯渇し、最悪の場合、走行不能となるおそれを回避できる。
【0065】
[5.その他]
上述した制御装置10の構成は一例である。上記実施形態では、二種類のマップ16,17と、出力算出部14で算出された最大出力とを用いて、最終的な目標発電電力を設定しているが、目標発電電力の設定方法はこれに限られない。例えば、バッテリ5の最大出力によらずに目標発電電力を設定してもよい。この場合、出力算出部14を省略できるとともに、バッテリ5を早期に昇温させることができる。
【0066】
また、第二マップ17を省略し、第一マップ16のみから目標発電電力を設定してもよい。この場合、劣化度算出部13及び第二マップ17を省略できるため、制御構成を簡素化できる。また、第一マップ16の代わりに、充電率をパラメータとした数式や表を用いて低温目標値又は制限量を算出することで目標発電電力を設定してもよい。この場合は第一マップ16を省略できる。
【0067】
また、車両1に搭載される回転電機2,3は上記のモータ2,ジェネレータ3に限られない。第一回転電機は、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機であればよい。また、第二回転電機は、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機であればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両(電動車両)
2 モータ(回転電機)
3 ジェネレータ(回転電機)
4 エンジン
5 バッテリ
10 制御装置
11 温度取得部
12 充電率算出部
13 劣化度算出部
14 出力算出部
15 制御部
16 第一マップ
17 第二マップ
21 温度センサ
22 電圧センサ
23 電流センサ
C1 第一所定値(下限値)
T バッテリ温度
T1 第一閾値(所定温度)
T2 第二閾値
図1
図2
図3
図4
図5