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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20240312BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B62D37/02 Z
B62D25/20 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019190834
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021066233
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】油目 雅史
(72)【発明者】
【氏名】一色 泰範
(72)【発明者】
【氏名】新谷 卓司
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両側部において車両後方側かつ下側に配置された後輪と、
当該後輪の前方側に配置されたディフレクタと、
前記車体の床部の下方に設けられたフロアアンダーカバーと
を備え、
前記ディフレクタは、車幅方向に延びる縦壁部を有し、
前記縦壁部における車幅方向外側の端部は、前記後輪における車幅方向外側の端部よりも車幅方向内方に位置しており、
前記フロアアンダーカバーは、車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部における車両後方側の部分において車幅方向外方へ膨出する膨出部とを有し、
前記膨出部は、車両前方を向く前面と、車両後方を向く後面とを有し、
前記前面は、前記ディフレクタの車幅内方かつ前方において、前記ディフレクタの前面に走行風を指向させる偏向面部を形成し、
前記偏向面部および前記ディフレクタは、正面視で当該偏向面部と当該ディフレクタとの間に間隙が形成される位置に配置され、
前記後面は、平面視で車幅内方かつ後方に延び、かつ、前記膨出部の車両後方側かつ前記フロアアンダーカバーにおける車両後方を向く後面に対して車両前方に位置するオフセット面によって形成されている車両の下部構造。
【請求項2】
前記偏向面部は、前記縦壁部における車幅方向内側の端部に向いて延びている、
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
車両前面視において、前記偏向面部における車幅方向外側の端部は、前記後輪における車幅方向内側の端部と車幅方向で重複する、
請求項1または2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
前記フロアアンダーカバーの周縁にフランジ部が形成され、
前記フランジ部は、互いに離間する複数の固定部によって前記車体の床部に固定され、
前記偏向面部は、隣接する前記固定部を結んだ線分と交差するように車幅方向外方に延びている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
前記偏向面部における車幅方向外側の端部の下端は、前記ディフレクタの前記縦壁部における車幅方向内側の端部における下端と同じ高さまたはそれより低い高さに位置している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の下部構造。
【請求項6】
前記膨出部における車両後方を向く前記後面には、排水孔が形成されている、
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項7】
前記フロアアンダーカバーにおける車両後方を向く後面は、前記膨出部の前記後面の後端に連続して前記側壁部より車幅方向内側の位置まで延びる部分を有する、
請求項1に記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中には、車輪前方の空気が車輪の後方側へ相対的に流れる走行風が発生し、走行風が車輪に当たると走行抵抗が増加する。そこで、車輪に走行風が当たらないようにする車両の下部構造が種々考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1および2の車両の下部構造のように、リアタイヤの前方において走行風を遮る車幅方向に広がる縦壁部を有するリアディフレクタが設けられることが一般である。リアディフレクタをリアタイヤの前方に設けることにより、走行風はリアタイヤ前方のリアディフレクタに最初に当たってブロックされる。これにより、走行風がリアタイヤに当たることによる空力抵抗を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-74905号公報
【文献】特許第5522254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のデザイン向上の観点から見た場合、リアタイヤを外部から見えやすくしたデザインが考えられる。しかし、リアタイヤを外部から見えやすくするために、上記のリアディフレクタの車幅方向外側の端部をリアタイヤの外側端部よりも車幅内方側に配置すれば、走行風がリアタイヤの外側端部に当たりやすくなり、空力抵抗を抑制する性能(すなわち、空力性能)を維持しにくくなる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両における空力性能の維持とデザインの向上を両立することが可能な車両の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の車両の下部構造は、車体の車幅方向両側部において車両後方側かつ下側に配置された後輪と、当該後輪の前方側に配置されたディフレクタと、前記車体の床部の下方に設けられたフロアアンダーカバーとを備え、前記ディフレクタは、車幅方向に延びる縦壁部を有し、前記縦壁部における車幅方向外側の端部は、前記後輪における車幅方向外側の端部よりも車幅方向内方に位置しており、前記フロアアンダーカバーは、車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部における車両後方側の部分において車幅方向外方へ膨出する膨出部とを有し、前記膨出部は、車両前方を向く前面と、車両後方を向く後面とを有し、前記前面は、前記ディフレクタの車幅内方かつ前方において、前記ディフレクタの前面に走行風を指向させる偏向面部を形成し、前記偏向面部および前記ディフレクタは、正面視で当該偏向面部と当該ディフレクタとの間に間隙が形成される位置に配置され、前記後面は、平面視で車幅内方かつ後方に延び、かつ、前記膨出部の車両後方側かつ前記フロアアンダーカバーにおける車両後方を向く後面に対して車両前方に位置するオフセット面によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、ディフレクタの縦壁部における外側端部は、後輪における外側端部よりも車幅方向内方に位置しているので、後輪が外部から見えやすくなり、車両のデザインが向上する。一方、車体の床部の下方には、フロアアンダーカバーが設けられ、フロアアンダーカバーは、車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部における車両後方側の部分において車幅方向外方へ膨出する膨出部とを有する。膨出部は、車両前方を向く前面と、車両後方を向く後面とを有する。前面は、ディフレクタの車幅内方かつ前方において、ディフレクタの前面に走行風を指向させる偏向面部を形成する。すなわち、フロアアンダーカバーは、ディフレクタの車幅内方かつ前方において、ディフレクタの前面に走行風を指向させる偏向面部を有する。この構成では、車両走行中に発生する走行風は、ディフレクタの車幅内方かつ前方の偏向面部によってフロアアンダーカバーの車幅外方に指向されるので、ディフレクタの縦壁部で受ける走行風を車幅外方に案内することが可能である。これにより、ディフレクタの縦壁部における外側端部が後輪における外側端部よりも車幅方向内方に位置していても、空力抵抗を抑制する性能(すなわち、空力性能)を維持することが可能である。その結果、車両における空力性能の維持とデザインの向上を両立することが可能になる。
上記の車両の下部構造では、フロアアンダーカバーは、車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部における車両後方側の部分において車幅方向外方へ膨出する膨出部とを有する。偏向面部は、膨出部における車両前方を向く前面によって形成されている。
かかる構成では、偏向面部よりも車両前方側において、フロアアンダーカバーの側壁部が走行風を偏向面部に案内するので、偏向面部により多くの走行風を円滑に案内することが可能になる。これにより、ディフレクタの縦壁部で受ける走行風を車幅方向外方に案内する効果を向上させ、空力性能をより確実に維持することが可能である。
しかも、偏向面部が膨出部と一体形成されているので、フロアアンダーカバーの構造が簡単になるとともに偏向面部の破損や変形を抑制することが可能である。
さらに、上記の車両の下部構造では、偏向面部およびディフレクタは、正面視で当該偏向面部と当該ディフレクタとの間に間隙が形成される位置に配置されている。膨出部は、平面視で車両後方を向くとともに車幅内方かつ後方に延びる後面を有する。膨出部の後面は、フロアアンダーカバーにおける車両後方を向く後面に対して車両前方に位置するオフセット面によって形成されている。
かかる構成では、正面視における偏向面部とディフレクタの縦壁部との間隙を通して車両後方に流れる走行風を膨出部の後面を形成するオフセット面に沿って車両内方へ案内することが可能である。これにより、後輪に当たる走行風をさらに減らして、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0009】
上記の車両の下部構造において、前記偏向面部は、前記縦壁部における車幅方向内側の端部に向いて延びているのが好ましい。
【0010】
かかる構成では、車両走行中に発生する走行風は、ディフレクタの車幅内方かつ前方の偏向面部によって、ディフレクタの縦壁部における車幅方向内側の端部に向けて案内され、さらに縦壁部の車幅方向の幅全体で車幅外方へ案内される、そのため、縦壁部で受ける走行風を車幅外方により円滑に案内することが可能になる。その結果、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0011】
上記の車両の下部構造において、車両前面視において、前記偏向面部における車幅方向外側の端部は、前記後輪における車幅方向内側の端部と車幅方向で重複するのが好ましい。
【0012】
かかる構成では、偏向面部を車幅外方まで延ばし、ディフレクタの縦壁部により近接して延設することが可能である。その結果、偏向面部による走行風を縦壁部に案内する効果をさらに高め、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0013】
上記の車両の下部構造において、前記フロアアンダーカバーの周縁にフランジ部が形成され、前記フランジ部は、互いに離間する複数の固定部によって前記車体の床部に固定され、前記偏向面部は、隣接する前記固定部を結んだ線分と交差するように車幅方向外方に延びているのが好ましい。
【0014】
かかる構成では、偏向面部をフロアカバーアンダー周縁のフランジ部まで延ばし、ディフレクタの縦壁部により近接して延設することが可能である。その結果、偏向面部による走行風を縦壁部に案内する効果をさらに高め、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0015】
上記の車両の下部構造において、前記偏向面部における車幅方向外側の端部の下端は、前記ディフレクタの前記縦壁部における車幅方向内側の端部における下端と同じ高さまたはそれより低い高さに位置しているのが好ましい。
【0016】
かかる構成では、偏向面部によってディフレクタの縦壁部に向けて案内された走行風は、縦壁部の上下方向全体にわたって当たるので、縦壁部の全面によって走行風を車幅外方へ案内する機能を効果的に発揮することが可能である。これにより、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0022】
上記の車両の下部構造において、前記膨出部における車両後方を向く後面には、排水孔が形成されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成では、フロアアンダーカバーの側壁部よりも車幅外方に膨出した膨出部の後面に排水孔が形成されている。これにより、フロアアンダーカバーの内部に溜まった水を側壁部に沿って後方に流して膨出部の排水孔からカバー外部へ円滑に排出することが可能である。
記の車両の下部構造において、前記フロアアンダーカバーにおける車両後方を向く後面は、前記膨出部の前記後面の後端に連続して前記側壁部より車幅方向内側の位置まで延びる部分を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両の下部構造によれば、車両における空力性能の維持とデザインの向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る車両の下部構造の主要部を左下方から見た斜視図である。
図2図1の下部構造の主要部を斜め下方から見た斜視図である。
図3図1のリアタイヤ、ディフレクタ、および偏向面部を有する膨出部を拡大してみた底面図である。
図4図1のフロアアンダーカバーを斜め上方から見た斜視図である。
図5図1の車体を膨出部の前方で車幅方向に切断した状態の拡大断面図である。
図6図5のフロアアンダーカバーの上方にバッテリーが配置されている構成を模式的に示した断面説明図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る車両の下部構造であって、バッテリーを搭載しないタイプの車体の主要部を左下方から見た斜視図である。
図8図7の車体を膨出部の前方で車幅方向に切断した状態の拡大断面図である。
図9図8のフロアアンダーカバーの上方にバッテリーが配置されている構成を模式的に示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0027】
本実施形態の車両の下部構造は、図1~3に示されるように、車体1の車幅方向Yの両側に配置され、車両前後方向Xに延びるサイドシル2と、サイドシル2の車両後方側X2に配置されたリアフェンダ3と、当該リアフェンダ3に収容されたリアタイヤ4(後輪)と、当該リアタイヤ4の前方側X1に配置されたディフレクタ5と、車体1の床部6(フロアパネル)の下方に設けられたフロアアンダーカバー7とを備えている。リアタイヤ4は、車体1の車幅方向Yの両側部において車両後方側X2かつ下側に配置されている。
【0028】
図3および図5に示されるように、ディフレクタ5は、縦壁部5aと、サイドシル2の下面2a(図2~3参照)にボルトなどで取り付けられる被取付部5eとを有している。ディフレクタ5は、例えば、樹脂などによって縦壁部5aおよび被取付部5eが一体形成される。
【0029】
縦壁部5aは、リアタイヤ4の前方X1に位置しており、サイドシル2の下面2aから下方に延びるとともに車幅方向Yに延びている。
【0030】
また、縦壁部5aにおける車幅方向外側Y1の端部5bは、リアタイヤ4における車幅方向外側Y1の端部4aよりも車幅方向内方Y2に位置している。
【0031】
フロアアンダーカバー7は、図1~6に示されるように、バッテリー8を収容可能な深さを有するカバーであり、車幅方向Yの両側において、車両前後方向Xに延びる側壁部10を有する。フロアアンダーカバー7の周縁には、フランジ部20が形成されている。フランジ部20は、複数の固定部13(図3参照)によって、車体1の床部6(フロアパネル)に固定されている。固定部13は、例えば、床部6に設けられたスタッドボルトと、当該スタッドボルトに螺合するナットとから構成される。
【0032】
図6に示されるように、フロアアンダーカバー7が車体1の床部6に固定されることにより、車体1の下部において、バッテリー8がフロアアンダーカバー7に収容される。これにより、大型のバッテリー8を車体1の下部に収容することが可能である。したがって、本実施形態の車両の下部構造は、電気自動車やハイブリッド車などに適用することが可能である。
【0033】
図1~5に示されるように、フロアアンダーカバー7は、ディフレクタ5の車幅内方Y2かつ前方X1において、ディフレクタ5の前面に走行風W1を指向させる偏向面部12を有する。
【0034】
本実施形態では、図1~4に示されるように、フロアアンダーカバー7の側壁部10は、当該側壁部10における車両後方側X2の部分(本実施形態では側壁部10の後端の部分)において車幅方向Y外方へ膨出する膨出部11を有している。偏向面部12は、膨出部11における車両前方X1を向く前面によって形成されている。
【0035】
偏向面部12は、図3に示されるように、側壁部10の後端に連続しており、車両後方X2かつ車幅外方Y1へ向けてなめらかに湾曲して延びている。これにより、側壁部10に沿って車両後方X2に流れる走行風W1を偏向面部12によって、車両後方X2かつ車幅外方Y1へ案内することが可能である。
【0036】
図3および図5に示されるように、偏向面部12は、縦壁部5aにおける車幅方向内側Y2の端部5cに向いて延びている。
【0037】
また、車両前面視において、偏向面部12における車幅方向外側Y1の端部12aは、リアタイヤ4における車幅方向内側Y2の端部4bと車幅方向Yで重複している。
【0038】
本実施形態では、図3に示されるように、フロアアンダーカバー7の周縁のフランジ部20が複数の固定部13によって固定された構成であるが、偏向面部12をよりディフレクタ5に近づけるために、偏向面部12は、隣接する固定部13を結んだ線分14と交差するように車幅方向Y外方に延びている。
【0039】
さらに、図5に示されるように、偏向面部12における車幅方向外側Y1の端部12aの下端12bは、ディフレクタ5の縦壁部5aにおける車幅方向内側Y2の端部5cにおける下端5dと同じ高さまたはそれより低い高さに位置している。
【0040】
図3~4に示されるように、偏向面部12およびディフレクタ5は、正面視で当該偏向面部12と当該ディフレクタ5との間に間隙が形成される位置に配置されている。膨出部11は、車両後方X2を向く後面17を有する。後面17は、平面視で車幅内方Y2かつ後方X2に延びている。後面17は、フロアアンダーカバー7における車両後方X2を向く後面15に対して車両前方X1に位置するオフセット面19によって形成されている。図3に示されるように、オフセット面19は、フロアアンダーカバー7の後面15との間にオフセット用の段差部16を介在した状態で、当該後面15よりも車両前方X1にずれた位置に配置(オフセット)されている。
【0041】
また、膨出部11の上記の後面17には、フロアアンダーカバー7内部に溜まる水を排水する排水孔18が形成されている。
【0042】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両の下部構造は、図1~3に示されるように、車体1の車幅方向Yの両側部において車両後方側X2かつ下側に配置されているリアタイヤ4と、当該リアタイヤ4の前方側X1に配置されたディフレクタ5と、車体1の床部6の下方に設けられたフロアアンダーカバー7とを備えている。ディフレクタ5は、車幅方向Yに延びる縦壁部5aを有している。縦壁部5aにおける車幅方向外側Y1の端部5bは、リアタイヤ4における車幅方向外側Y1の端部4aよりも車幅方向内方Y2に位置している。フロアアンダーカバー7は、ディフレクタ5の車幅内方Y2かつ前方X1において、ディフレクタ5の前面に走行風W1を指向させる偏向面部12を有する。
【0043】
上記の構成では、ディフレクタ5の縦壁部5aにおける外側端部5bは、リアタイヤ4における外側端部4aよりも車幅方向内方Y2に位置しているので、リアタイヤ4が外部から見えやすくなり、車両のデザインが向上する。一方、車体1の床部6の下方には、フロアアンダーカバー7が設けられ、フロアアンダーカバー7は、ディフレクタ5の車幅内方Y2かつ前方X1において、ディフレクタ5の前面に走行風W1を指向させる偏向面部12を有する。この構成では、車両走行中に発生する走行風W1は、ディフレクタ5の車幅内方Y2かつ前方の偏向面部12によってフロアアンダーカバー7の車幅外方Y1に指向されるので、ディフレクタ5の縦壁部5aで受ける走行風W1を車幅外方Y1に案内することが可能である。これにより、ディフレクタ5の縦壁部5aにおける外側端部がリアタイヤ4における外側端部よりも車幅方向内方Y2に位置していても(すなわち、縦壁部5aの車幅方向Yの幅が小さくても)、空力抵抗を抑制する性能(すなわち、空力性能)を維持することが可能である。その結果、車両における空力性能の維持とデザインの向上を両立することが可能になる。
【0044】
(2)
本実施形態の車両の下部構造では、図3および図5に示されるように、偏向面部12は、縦壁部5aにおける車幅方向内側Y2の端部5cに向いて延びている。この構成では、車両走行中に発生する走行風W1は、ディフレクタ5の車幅内方Y2かつ前方X1の偏向面部12によって、ディフレクタ5の縦壁部5aにおける車幅方向内側Y2の端部5cに向けて案内され、さらに縦壁部5aの車幅方向Yの幅全体で車幅外方Y1へ案内される、そのため、縦壁部5aで受ける走行風W1を車幅外方Y1により円滑に案内することが可能になる。その結果、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0045】
(3)
本実施形態の車両の下部構造では、図3および図5に示されるように、車両前面視において、偏向面部12における車幅方向外側Y1の端部12aは、リアタイヤ4における車幅方向内側Y2の端部4bと車幅方向Yで重複する。この構成では、偏向面部12を車幅外方Y1まで延ばし、ディフレクタ5の縦壁部5aにより近接して延設することが可能である。その結果、偏向面部12による走行風W1を縦壁部5aに案内する効果をさらに高め、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0046】
(4)
本実施形態の車両の下部構造では、図3~4に示されるように、フロアアンダーカバー7の周縁にフランジ部20が形成されている。フランジ部20は、互いに離間する複数の固定部13によって車体1の床部6に固定されている。偏向面部12は、隣接する固定部13を結んだ線分14と交差するように車幅方向Y外方に延びている。
【0047】
この構成では、偏向面部12をフロアカバーアンダー7周縁のフランジ部20まで延ばし、ディフレクタ5の縦壁部5aにより近接して延設することが可能である。その結果、偏向面部12による走行風W1を縦壁部5aに案内する効果をさらに高め、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0048】
(5)
本実施形態の車両の下部構造では、図5に示されるように、偏向面部12における車幅方向外側Y1の端部12aの下端12bは、ディフレクタ5の縦壁部5aにおける車幅方向内側Y2の端部5cにおける下端5dと同じ高さまたはそれより低い高さに位置している。
【0049】
この構成では、偏向面部12によってディフレクタ5の縦壁部5aに向けて案内された走行風W1は、縦壁部5aの上下方向全体にわたって当たるので、縦壁部5aの全面によって走行風W1を車幅外方Y1へ案内する機能を効果的に発揮することが可能である。これにより、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0050】
(6)
本実施形態の車両の下部構造では、図1~4に示されるように、フロアアンダーカバー7は、車両前後方向Xに延びる側壁部10を有してる。側壁部10は、当該側壁部10における車両後方側X2の部分(本実施形態では側壁部10の後端の部分)において車幅方向Y外方へ膨出する膨出部11を有している。偏向面部12は、膨出部11における車両前方X1を向く前面によって形成されている。
【0051】
この構成では、偏向面部12よりも車両前方側X1において、フロアアンダーカバー7の側壁部10が走行風W1を偏向面部12に案内するので、偏向面部12により多くの走行風W1を円滑に案内することが可能になる。これにより、ディフレクタ5の縦壁部5aで受ける走行風W1を車幅方向Y外方に案内する効果を向上させ、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0052】
しかも、偏向面部12が膨出部11と一体形成されているので、フロアアンダーカバー7の構造が簡単になるとともに偏向面部12の破損や変形を抑制することが可能である。
【0053】
(7)
本実施形態の車両の下部構造では、図3~4に示されるように、偏向面部12およびディフレクタ5は、正面視で当該偏向面部12と当該ディフレクタ5との間に間隙が形成される位置に配置されている。膨出部11は、平面視で車両後方X2を向くとともに車幅内方Y2かつ後方X2に延びる後面17を有する。膨出部11の後面17は、フロアアンダーカバー7における車両後方X2を向く後面15に対して車両前方X1に位置するオフセット面19によって形成されている。
【0054】
この構成では、正面視における偏向面部12とディフレクタ5の縦壁部5aとの間隙を通して車両後方X2に流れる走行風W2を膨出部11の後面17を形成するオフセット面19に沿って車両内方Y2へ案内することが可能である。これにより、リアタイヤ4に当たる走行風W2をさらに減らして、空力性能をより確実に維持することが可能である。
【0055】
(8)
本実施形態の車両の下部構造では、図3~4に示されるように、膨出部11における車両後方X2を向く後面17には、フロアアンダーカバー7内部に溜まる水を排水する排水孔18が形成されている。この構成では、フロアアンダーカバー7の側壁部10よりも車幅外方Y1に膨出した膨出部11の後面17に排水孔18が形成されている。これにより、フロアアンダーカバー7の内部に溜まった水を側壁部10に沿って後方に流して膨出部11の排水孔18からカバー外部へ円滑に排出することが可能である。
【0056】
(変形例)
(A)
上記の図1~6に示される実施形態では、車体1の床部6(フロアパネル)とフロアアンダーカバー7との間にバッテリー8が搭載された車両の下部構造が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
本発明の変形例として、図7~9に示されるように、バッテリー8が搭載されない車両の下部構造であってもよい。この変形例の構造では、バッテリー8を搭載しないので、フロアアンダーカバー7を上下方向の幅を狭く(より扁平な形状で)形成することが可能である。これにより、フロアアンダーカバー7の側壁部10ならびに偏向面部12を有する膨出部11の上下方向の幅は小さくなっている。
【0058】
したがって、図7~9に示される変形例では、偏向面部12の上下方向の幅は、ディフレクタ5の上下方向の幅よりも若干小さくなっているが、その他の構成は、上記の図1~6の構成と共通している。したがって、図7~9に示される変形例においても、上記の(本実施形態の特徴)の(1)~(8)のうち(5)以外の作用効果を同様に奏することが可能である。
【0059】
(B)
なお、上記実施形態のリアタイヤ4は、本発明の後輪の一例であり、本発明の後輪は、タイヤを有する車輪に限定されない。したがって、本発明の後輪には、例えば、樹脂や金属などの一体成形の車輪なども含まれる。つまり、本発明は、後輪の前方にディフレクタを備えた車両に広く適用することが可能である。したがって、例えば、電気自動車やガソリン自動車以外にも、鉄道の車両にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 車体
4 リアタイヤ(後輪)
4a 外側端部
4b 内側端部
5 ディフレクタ
5a 縦壁部
5b 外側端部
5c 内側端部
5d 下端
6 床部
7 フロアアンダーカバー
8 バッテリー
10 側壁部
11 膨出部
12 偏向面部
12a 外側端部
12b 下端
13 固定部
14 線分
15 後面
17 後面
18 排水孔
19 オフセット面
20 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9