(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】盤装置
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240312BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20240312BHJP
G08C 15/06 20060101ALI20240312BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H02B3/00 Z
H02B1/40 A
G08C15/06 K
G08B21/00 C
(21)【出願番号】P 2019196247
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018227815
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】町田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154696(JP,A)
【文献】特開2014-14237(JP,A)
【文献】特開平2-49329(JP,A)
【文献】特開2002-298722(JP,A)
【文献】特開2016-86323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0267790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収納された複数の機器と、
を備え、
前記複数の機器の少なくとも1つは、
機器本体と、
前記機器本体の状態を検出する状態検出部と、
発光部と、
前記状態検出部から前記機器本体の状態を示す情報を取得し、当該状態を示す情報を有
し、光通信の通信信号である光信号を前記発光部に発信させる発光制御部と、
を備え、
前記光信号は、前記機器本体の電源状態、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する
盤装置。
【請求項2】
前記筐体は、開閉可能な戸を備え、
前記発光部は、前記筐体の戸開時に、前記筐体の開口部から露出するように、前記機器に配置される
請求項1に記載の盤装置。
【請求項3】
前記発光制御部は、機器種別に応じた周波数を有する前記光信号を、前記発光部に発信させる
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の盤装置。
【請求項4】
前記機器は、互いに異なる周波数を有する光を発する複数の前記発光部を備える
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の盤装置。
【請求項5】
前記機器は、第1色の光を発する第1発光部と、第1色とは異なる第2色の光を発する第2発光部と、を備え、
前記発光制御部は、前記機器本体の状態に応じて、前記第1発光部及び前記第2発光部のいずれか一方を発光させる
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の盤装置。
【請求項6】
前記発光制御部は、前記光信号を受信して情報を取得する受信装置の受信部と同期通信するための同期信号を有する前記光信号を前記発光部に発信させる
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、受電盤などの盤装置は、集中監視システムにより監視されている。盤装置に異常が発生すると、集中監視システムにより異常が検知され、保全担当者が現場に派遣される。従来、現場に派遣された保全担当者は、異常が発生した箇所や原因を、図面やマニュアルを頼りに手作業で特定し、盤装置の修理を行っていた。このため、盤装置の修理には長い時間がかかった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、盤装置に搭載された通信装置によって、盤装置に収納された各機器の状態を、外部サーバを介して、保全担当者が所持する端末に送信する方法が提案されている。この方法によれば、保全担当者は、通信装置から送信された各機器の識別情報及び状態を、容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の方法では、通信装置が送信する機器の識別情報は、機器に事後的に割り当てられる。すなわち、識別情報は、機器自体に記載されているわけではない。このため、保全担当者は、通信装置から送信された識別情報が、どの機器の識別情報であるかを、一見して把握できず、識別情報と共に送信された機器種別などの情報を頼りに、現場で確認する必要がある。この確認に時間を要するため、上記従来の方法では、盤装置の修理の短期化に限度があった。また、上記従来の方法では、盤装置に通信装置を搭載したり、盤装置から情報を収集する外部サーバを用意したりする必要があるため、大きなコストがかかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、短時間で修理が可能な盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る盤装置は、筐体と、前記筐体に収納された複数の機器と、を備え、前記複数の機器の少なくとも1つは、機器本体と、前記機器本体の状態を検出する状態検出部と、発光部と、前記状態検出部から前記機器本体の状態を示す情報を取得し、当該状態を示す情報を有し、光通信の通信信号である光信号を前記発光部に発信させる発光制御部と、を備え、前記光信号は、前記機器本体の電源状態、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の各実施形態によれば、短時間で盤装置を修理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】1つの発光部による機器本体の電源状態及び動作状態の簡易表示の方法を模式的に示す図。
【
図7】2つの発光部による機器本体の電源状態及び動作状態の簡易表示の方法を模式的に示す図。
【
図8】1つの発光部を備える機器の動作の一例を示すフローチャート。
【
図9】2つの発光部を備える機器の動作の一例を示すフローチャート。
【
図10】盤装置100の修理方法を説明する模式図。
【
図11】端末の表示装置に表示される、機器本体の状態を示す情報の一例を示す図。
【
図12】端末の表示装置に表示される、機器本体の状態を示す情報の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
【0011】
一実施形態に係る盤装置100について、
図1~
図12を参照して説明する。本実施形態に係る盤装置100は、筐体と、筐体に収納された複数の機器と、を備えた任意の装置で有り得る。盤装置100は、例えば、制御盤、配電盤、分電盤、又は受電盤であるが、これに限られない。
【0012】
図1は、戸開時の盤装置100の一例を示す斜視図である。
図2は、戸閉時の盤装置100の一例を示す斜視図である。
図3は、盤装置100の一例を示す正面図である。
図3の例では、戸12が省略されている。
図1~
図3に示すように、盤装置100は、筐体1と、複数の機器2a~2vと、を備える。以下、機器2a~2vを区別しない場合、機器2と称する。
【0013】
筐体1は、内部に複数の機器2を収納する。
図1の筐体1は、直方体形状を有し、金属により形成されるが、筐体1の形状及び材質は、これに限られない。筐体1は、収納部11と、戸12と、を備える。収納部11は、筐体1の背面(
図2における図面奥側の面)及び側面(底面と垂直な面)を構成し、一面に開口部13を有する。戸12は、筐体1の正面(
図2における図面手前側の面)を構成し、収納部11の開口部13を開閉可能なように、収納部11に取り付けられる。
図1の戸12は、開き戸であるが、引き戸であってもよい。
【0014】
筐体1は、建物の壁面などに、その背面を固定される。集中監視システムにより盤装置100の異常が検知されると、現場(盤装置100の設置場所)に派遣された保全担当者は、戸12を開き、筐体1の内部に収納された機器2を修理する。
【0015】
機器2は、盤装置100を構成する任意の機器であり、収納部11の背面や側面に固定され、筐体1の内部に収納される。機器2は、ブレーカ、マグネットスイッチ、インバータ、サーボコントローラ、アンプ、リレー、サーマルリレー、又はタイマーであるが、これに限られない。盤装置100が備える機器2の種類及び数は、盤装置100の種類や用途に応じて適宜選択される。
【0016】
ここで、
図4は、機器2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4の機器2は、機器本体21と、状態検出部22と、発光部23と、発光制御部24と、を備える。
【0017】
機器本体21は、機器2の主たる機能を実現するハードウェアである。機器本体21の構成は、機器2の種類に応じて適宜設計される。例えば、機器2がマグネットスイッチである場合、機器本体21は、電磁石として機能するコイルと、コイルを付勢するバネと、コイルに電力を供給する電源回路、コイルの位置に応じて回路を切断又は接続する接触子と、全体の動作を制御するマイコンなどの制御回路と、を備える。
【0018】
状態検出部22は、機器本体21の状態を検出するハードウェアである。状態検出部22は、電源状態(電源のON/OFF)、動作状態(異常の有無)、電流値、電圧値、又は動作周波数を検出する任意の回路又はセンサで有り得る。状態検出部22は、ハードウェアにより機器本体21の状態を検出してもよいし、ソフトウェアにより機器本体21の状態を検出してもよい。
図4の機器2は、状態検出部22を1つ備えるが、状態検出部22を複数備えてもよい。
【0019】
発光部23は、発光可能な素子であり、発光制御部24により発光を制御される。発光部23は、後述する通り、点滅により光信号を発信する。光信号は、光通信の通信信号である。光信号については後述する。発光部23は、例えば、LED(Light Emitting Diode)であるが、これに限られない。発光部23が発する光は、光通信に利用可能な光であればよく、可視光、又は赤外光などの不可視光であるが、これに限られない。盤装置100が備える複数の発光部23は、それぞれ同一の周波数を有する光を発してもよいし、異なる周波数を有する光を発してもよい。また、機器2は、発光部23を1つ備えてもよいし、2つ以上備えてもよい。例えば、
図3の例では、機器2bは1つの発光部23を備える、機器2aは2つの発光部23a,23bを備える。また、盤装置100は、発光部23を備える機器2と共に、発光部23を備えない機器2を備えてもよい。いずれの場合も、発光部23は、
図1に示すように、筐体1の戸開時に、開口部13から露出するように機器2に配置される。言い換えると、発光部23は、筐体1の戸開時に保全担当者から見えるように機器2に配置される。
【0020】
発光制御部24は、マイコンなどの制御回路であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUがROMに保存されたプログラムをRAM上で実行することにより、発光制御部24の機能が実現される。
【0021】
発光制御部24は、状態検出部22に接続され、状態検出部22から機器本体21の状態を示す情報を取得する。取得した情報は、RAMに保存される。また、発光制御部24は、発光部23に接続され、発光部23の発光を制御する。具体的には、発光制御部24は、発光部23を所定の周波数で点滅させることにより、状態検出部22から取得した機器本体21の状態を示す情報を有する光信号を発光部23に発信させる。光信号は、状態検出部22が検出した、機器本体21の電源状態、動作状態、電流値、電圧値、及び動作周波数等の少なくとも1つを示す情報を有する。
【0022】
また、発光制御部24は、機器本体21に異常が発生した場合(すなわち、機器本体21に異常が発生したことを示す情報を状態検出部22から取得した場合)、状態検出部22から取得した情報に基づいて、当該異常の原因を特定してもよい。発光制御部24は、機器本体21の状態を示す情報と、異常の原因と、の対応関係を示す異常原因テーブルを参照することにより、異常の原因を特定することができる。異常原因テーブルは、予め用意され、発光制御部24のROMに保存される。
【0023】
発光制御部24が機器本体21に発生した異常の原因を特定する場合、光信号は、発光制御部24により特定された、機器本体21の異常の原因を示す情報を有してもよい。また、光信号は、機器本体21の識別情報、種別、型番などを示す情報を有してもよい。
【0024】
盤装置100が備える複数の発光制御部24は、それぞれ同一の周波数を有する光信号を発光部23に発信させてもよい。この場合、盤装置100が備える複数の発光部23は、いずれも同一の周波数を有する光信号を発信する。
【0025】
また、盤装置100が備える複数の発光制御部24は、搭載された機器2の種別に応じた周波数を有する光信号を発光部23に発信させてもよい。この場合、ブレーカが備える発光部23は、ブレーカに応じて設定された周波数を有する光信号を発信し、マグネットスイッチが備える発光部23は、マグネットスイッチに応じて設定された周波数を有する光信号を発信する。このように、光信号の周波数を異ならせることにより、光信号の読み取りを容易にすることができる。
【0026】
なお、発光部23が発する光は、可視光であるのが好ましい。これにより、発光部23が発した光が保全担当者に見えるため、発光部23の状態によって、保全担当者に対して機器本体21の状態を簡易表示することができる。発光部23が可視光を発し、かつ、光信号の周波数が十分に高い場合、光信号は、可視光通信の通信信号となる。可視光信号を発信する発光部23(すなわち、所定の周波数で点滅する発光部)は、人には点灯しているように見える。
【0027】
ここで、機器2が可視光を発する1つの発光部23を備える場合について検討する。機器2が可視光を発する1つの発光部23を備える場合、発光部23の状態により、機器本体21の電源状態を示すことができる。例えば、機器本体21の電源がONの間、発光部23が継続的に点滅(光信号を発信)し、機器本体21の電源がOFFの間、発光部23が所定のパターンで消灯及び点滅を繰り返せばよい。
【0028】
これにより、保全担当者は、発光部23の状態から、当該発光部23を備えた機器本体21の電源状態を容易に把握することができる。また、発光部23は、機器本体21の電源状態によらず継続的又は間欠的に点滅するため、機器本体21の電源状態によらず光信号を発信することができる。すなわち、発光部23により、機器本体21の電源状態の簡易表示と、機器本体21の電源状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の電源状態によらず両立できる。
【0029】
また、機器2が可視光を発する1つの発光部23を備える場合、発光部23の状態により、機器本体21の動作状態を示すこともできる。例えば、機器本体21が正常である間、発光部23が継続的に点滅し、機器本体21に異常が発生している間、発光部23が所定のパターンで消灯及び点滅を繰り返せばよい。
【0030】
これにより、保全担当者は、発光部23の状態から、当該発光部23を備えた機器本体21の動作状態を容易に把握することができる。また、発光部23は、機器本体21の動作状態によらず継続的又は間欠的に点滅するため、機器本体21の動作状態によらず光信号を発信することができる。すなわち、発光部23により、機器本体21の動作状態の簡易表示と、機器本体21の動作状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の動作状態によらず両立できる。
【0031】
さらに、機器2が可視光を発する1つの発光部23を備える場合、発光部23の状態により、機器本体21の電源状態及び動作状態を示すこともできる。
図5は、1つの発光部23による機器本体21の電源状態及び動作状態の簡易表示の方法を模式的に示す図である。
図5の例では、機器本体21の電源がOFFの間、発光部23が所定の第1パターンで消灯及び点滅を繰り返し(
図5中央)、機器本体21の電源がONであり、かつ、機器本体21が正常である間、発光部23が継続的に点滅し(
図5左)、機器本体21の電源がONであり、かつ、機器本体21に異常が発生している間、発光部23が第1パターンとは異なる所定の第2パターンで消灯及び点滅を繰り返している(
図5右)。
【0032】
これにより、保全担当者は、発光部23の状態から、当該発光部23を備えた機器本体21の電源状態及び動作状態を容易に把握することができる。また、発光部23は、機器本体21の電源状態及び動作状態によらず継続的又は間欠的に点滅するため、機器本体21の電源状態及び動作状態によらず光信号を発信することができる。すなわち、発光部23により、機器本体21の電源状態及び動作状態の簡易表示と、機器本体21の電源状態及び動作状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の電源状態及び動作状態によらず両立できる。なお、1つの発光部23により機器本体21の状態を簡易表示する方法は、上記の例に限られない。
【0033】
ここで、光信号の具体例について説明する。
図6は、光信号の一例を示す図である。
図6の光信号は、8ビットの開始ビットと、16ビットの機器種別ビットと、16ビットの状態ビットと、16ビットの計測種別ビットと、32ビットの計測値ビットと、8ビットの終了ビットと、を有する。
【0034】
開始ビットは、光信号の開始を示すビットである。機器種別ビットは、機器本体21の種別を示すビットである。状態ビットは機器本体21の電源状態及び動作状態を示すビットである。計測種別ビットは、機器本体21における計測対象の種別を示すビットである。計測値ビットは、機器本体21における計測値を示すビットである。終了ビットは光信号の終了を示すビットである。
【0035】
ここで、開始ビットは、STX(0x02)であるものとする。機器種別ビットは、01がブレーカを示し、02がマグネットスイッチを示し、03がインバータを示すものとする。状態ビットは、01がON、02がOFF、11がONかつ異常発生、12がオフかつ異常発生を示すものとする。計測種別ビットは、A1~A4がそれぞれ電流チャネル1~4を示すものとする。終了ビットは、CR(0x0d)であるものとする。なお、上記の機器種別ビット、状態ビット、及び計測種別ビットの値は、いずれもASCII文字列である。
【0036】
ブレーカ(機器本体21)がONかつ異常であり、ブレーカの電流チャネル1が計測対象であり、電流チャネル1の電流値が1234(ASCII文字列)である場合、当該ブレーカに設置された発光部23は、
図6に示すように、「"STX"0111A11234"CR"」という情報を光信号として発信する。この情報は、16進数の場合、「02303131314031313233340D」で表される。光信号は、2値の信号であるため、発光部23は、この情報を2進数で表した光信号を発信する。具体的には、発光部23は、
図6のタイミングチャートに従って点滅することにより、「"STX"0111A11234"CR"」という情報を有する光信号を発信する。なお、
図6の例では、発光部23の点灯が1(High)、消灯が0(Low)の場合を想定しているが、逆でもよい。
【0037】
さらに、
図6の光信号を発光部23が発信する際には、該当光信号を受信する端末機器と光信号の周波数が同期をとることができるように、同期のタイミングを与えるための信号として、発信する光信号の先頭に同期ビットを付加する。例えば、同期ビットは「10101010」といった1と0が交互に続くパターンである。
【0038】
次に、機器2が可視光を発する2つの発光部23a,23bを備える場合について検討する。機器2が可視光を発する2つの発光部23a,23bを備える場合、発光部23a,23bの状態により、機器本体21の電源状態を示すことができる。例えば、機器本体21の電源がONの間、発光部23aが継続的に点滅すると共に発光部23bが消灯し、機器本体21の電源がOFFの間、発光部23aが消灯すると共に発光部23bが継続的に点滅すればよい。
【0039】
これにより、保全担当者は、発光部23a,23bの状態から、当該発光部23a,23bを備えた機器本体21の電源状態を容易に把握することができる。また、機器本体21の電源状態によらず発光部23a又は発光部23bが継続的に点滅するため、機器本体21の電源状態によらず、発光部23a又は発光部23bにより光信号を発信することができる。すなわち、発光部23a及び発光部23bにより、機器本体21の電源状態の簡易表示と、機器本体21の電源状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の電源状態によらず両立できる。
【0040】
また、機器2が可視光を発する2つの発光部23a,23bを備える場合、発光部23a,23bの状態により、機器本体21の動作状態を示すこともできる。例えば、機器本体21が正常である間、発光部23aが継続的に点滅すると共に発光部23bが消灯し、機器本体21に異常が発生している間、発光部23aが消灯すると共に発光部23bが継続的に点滅すればよい。
【0041】
これにより、保全担当者は、発光部23a,23bの状態から、当該発光部23a,23bを備えた機器本体21の動作状態を容易に把握することができる。また、機器本体21の動作状態によらず、発光部23a又は発光部23bが継続的に点滅するため、機器本体21の動作状態によらず、発光部23a又は発光部23bにより光信号を発信することができる。すなわち、発光部23a及び発光部23bにより、機器本体21の動作状態の簡易表示と、機器本体21の動作状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の動作状態によらず両立できる。
【0042】
さらに、機器2が可視光を発する2つの発光部23a,23bを備える場合、発光部23a,23bの状態により、機器本体21の電源状態及び動作状態を示すこともできる。
図7は、2つの発光部23a,23bによる機器本体21の電源状態及び動作状態の簡易表示の方法を模式的に示す図である。
図7の例では、機器本体21の電源がOFFの間、発光部23aが消灯すると共に発光部23bが継続的に点滅し(
図7中央)、機器本体21の電源がONであり、かつ、機器本体21が正常である間、発光部23aが継続的に点滅すると共に発光部23bが消灯し(
図7左)、機器本体21の電源がONであり、かつ、機器本体21に異常が発生している間、発光部23aが消灯すると共に発光部23bが所定のパターンで消灯及び点滅を繰り返している(
図7右)。
【0043】
これにより、保全担当者は、発光部23a,23bの状態から、当該発光部23a,23bを備えた機器本体21の電源状態及び動作状態を容易に把握することができる。また、機器本体21の電源状態及び動作状態によらず、発光部23a又は発光部23bが継続的又は間欠的に点滅するため、機器本体21の電源状態及び動作状態によらず、発光部23a又は発光部23bにより光信号を発信することができる。すなわち、発光部23a及び発光部23bにより、機器本体21の電源状態及び動作状態の簡易表示と、機器本体21の電源状態及び動作状態を示す情報を有する光信号の発信と、を機器本体21の電源状態及び動作状態によらず両立できる。
【0044】
なお、2つの発光部23a,23bにより機器本体21の状態を簡易表示する方法は、上記の例に限られない。また、機器2が可視光を発する2つの発光部23a,23bを備える場合、発光部23a,23bは、互いに異なる周波数を有する光を発するのが好ましい。具体的には、発光部23a(第1発光部)は、第1色の光を発し、発光部23b(第2発光部)は、第1色とは異なる第2色の光を発するのが好ましい。
図7の例では、発光部23aが緑色(第1色)の光を発し、発光部23bが赤色(第2色)の光を発する場合を想定しているが、第1色及び第2色は、これに限られない。このように、発光部23a,23bが発する光の色を異ならせることにより、保全担当者は、発光部23a,23bの状態から、当該発光部23a,23bを備えた機器本体21の状態をより容易に把握することができる。
【0045】
次に、機器2の動作について説明する。
図8は、1つの発光部23を備える機器2の動作の一例を示すフローチャートである。1つの発光部23を備える機器2(例えば、機器2b)は、
図8の動作を定期的に又は継続的に実行する。以下では、発光部23は、可視光を発するものとする。
【0046】
まず、状態検出部22が、機器本体21の状態を検出する(ステップS101)。次に、発光制御部24が、状態検出部22から機器本体21の状態を示す情報を取得する(ステップS102)。
【0047】
発光制御部24は、機器本体21の状態を示す情報を取得すると、機器本体21の電源がONであるか確認する(ステップS103)。機器本体21の電源がONである場合(ステップS103:YES)、発光制御部24は、機器本体21に異常が発生しているか確認する(ステップS104)。
【0048】
機器本体21に異常が発生していない場合(ステップS104:NO)、すなわち、機器本体21が正常である場合、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(ON)、動作状態(正常)、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23に継続的に発信させる(ステップS105)。
【0049】
一方、機器本体21に異常が発生している場合(ステップS104:YES)、発光制御部24は、状態検出部22から取得した情報と、異常原因テーブルと、に基づいて、機器本体21に発生した異常の原因を特定する(ステップS106)。
【0050】
続いて、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(ON)、動作状態(異常)、異常原因、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23に第2パターンで発信させる(ステップS107)。
【0051】
他方、機器本体21の電源がOFFである場合(ステップS103:NO)、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(OFF)、動作状態、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23に第1パターンで発信させる(ステップS108)。機器本体21の電源がOFFである場合、機器本体21は停止しているため、光信号は、機器本体21の動作状態、電圧値、電流値、及び動作周波数を有しなくてもよい。
【0052】
以上の動作により、機器2は、1つの発光部23により、機器本体21の状態を示す情報を有する光信号を発信することができる。また、機器2は、光信号の発信方法(継続発信、第1パターンで発信、第2パターンで発信)により、機器本体21の状態を簡易表示することができる。
【0053】
なお、上述の通り、光信号が有する情報及び光信号の発信方法は、
図8の例に限られない。また、発光部23は、赤外光のような不可視光を発してもよい。発光部23が不可視光を発する場合、機器本体21の状態の簡易表示はできないため、発光部23は、光信号を継続発信すればよい。
【0054】
図9は、2つの発光部23a,23bを備える機器2の動作の一例を示すフローチャートである。2つの発光部23a,23bを備える機器2(例えば、機器2a)は、
図9の動作を定期的に又は継続的に実行する。以下では、発光部23a,23bは、可視光を発するものとする。
【0055】
まず、状態検出部22が、機器本体21の状態を検出する(ステップS201)。次に、発光制御部24が、状態検出部22から機器本体21の状態を示す情報を取得する(ステップS202)。
【0056】
発光制御部24は、機器本体21の状態を示す情報を取得すると、機器本体21の電源がONであるか確認する(ステップS203)。機器本体21の電源がONである場合(ステップS203:YES)、発光制御部24は、機器本体21に異常が発生しているか確認する(ステップS204)。
【0057】
機器本体21に異常が発生していない場合(ステップS204:NO)、すなわち、機器本体21が正常である場合、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(ON)、動作状態(正常)、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23aに継続的に発信させつつ(ステップS205)、発光部23bを消灯する(ステップS206)。
【0058】
一方、機器本体21に異常が発生している場合(ステップS204:YES)、発光制御部24は、状態検出部22から取得した情報と、異常原因テーブルと、に基づいて、機器本体21に発生した異常の原因を特定する(ステップS207)。
【0059】
続いて、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(ON)、動作状態(異常)、異常原因、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23bに所定のパターンで発信させつつ(ステップS208)、発光部23aを消灯する(ステップS209)。
【0060】
他方、機器本体21の電源がOFFである場合(ステップS203:NO)、発光制御部24は、機器本体21の電源状態(OFF)、動作状態、電圧値、電流値、及び動作周波数の少なくとも1つを示す情報を有する光信号を、発光部23bに継続的に発信させつつ(ステップS210)、発光部23aを消灯させる。機器本体21の電源がOFFである場合、機器本体21は停止しているため、光信号は、機器本体21の動作状態、電圧値、電流値、及び動作周波数を有しなくてもよい。
【0061】
以上の動作により、機器2は、2つの発光部23a,23bにより、機器本体21の状態を示す情報を有する光信号を発信することができる。また、機器2は、光信号を発信する発光部23a,23bと、光信号の発信方法(継続発信、パターンで発信)と、により、機器本体21の状態を簡易表示することができる。
【0062】
なお、上述の通り、光信号が有する情報及び光信号の発信方法は、
図9の例に限られない。また、発光部23a,23bは、赤外光のような不可視光を発してもよい。発光部23a,23bが不可視光を発する場合、機器本体21の簡易表示はできないため、発光部23a,23bは、光信号を継続発信すればよい。また、発光部23a,23bの一方で可視光を発信し、他方で不可視光を発信してもよい。この場合、発光部23a,23bの一方で光信号を継続的に発信し、他方で機器本体21の状態を簡易表示することができる。
【0063】
次に、保全担当者による盤装置100の修理方法について説明する。
図10は、盤装置100の修理方法を説明する模式図である。
【0064】
盤装置100に異常が発生すると、集中監視システムにより異常が検知され、保全担当者が現場に派遣される。保全担当者は、盤装置100の修理のための端末200を持って現場に向かう。端末200は、発光部23が発信した光信号を受信可能なカメラを備えたコンピュータであり、CPU、ROM、RAM、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ、タッチパネルなどの入力装置、及び表示装置を備える。また、端末200は、カメラで受信した光信号から情報を読み取るためのアプリケーション(以下「読み取りアプリ」という。)を予めインストールされる。端末200は、スマートフォン又はタブレット端末であるが、これに限られない。
【0065】
保全担当者は、現場(盤装置100の設置場所)に到着すると、盤装置100の戸12を開き、端末200上で読み取りアプリを起動し、端末200のカメラで盤装置100の内部を撮影する。盤装置100の内部を撮影すると、端末200の表示装置に、盤装置100の内部の画像が表示される。また、盤装置100の内部を撮影すると、盤装置100が備える複数の発光部23が発信した光信号をカメラが受信する。カメラが光信号を受信すると、読み取りアプリは、まず各光信号の先頭に付加されている同期ビットを検出して光信号と同期するための処理を行う。具体的には、光信号の周波数と同じになるようにカメラの撮影の周波数を設定し、その周波数で連続撮影して同期ビットを検出する。同期ビットが検知できない場合は各光信号と同期が取れていない状態と判断して、カメラの撮影タイミングを変更して再度撮影を行う。この処理を繰り返し実施して同期ビットが検出できた場合は各光信号と同期が取れていると判断する。この同期が取れた状態から各光信号が有する情報を読み取り、読み取った情報(すなわち、各機器2の機器本体21の状態を示す情報)を表示装置に表示する。保全担当者は、表示装置に表示された情報を参照して、各機器2(機器本体21)の状態を把握し、盤装置100の修理を実行する。
【0066】
図11は、端末200の表示装置に表示される、機器本体21の状態を示す情報の一例を示す図である。
図11の例では、機器2ごとに、機器ID(識別情報)及び種別と、機器本体21の状態を示す情報(電源状態、動作状態、電圧値、電流値、及び異常原因)と、が表形式で表示されている。
図11の表は、カメラにより撮影された盤装置100の内部の画像と同一画面に表示されてもよいし、カメラにより撮影された盤装置100の内部の画像が表示される画面とは異なる画面に表示されてもよい。また、
図11の表は、カメラが光信号を受信するたびに更新される。
【0067】
図11の例のように、機器2ごとに機器本体21の状態を示す情報を表形式で表示することにより、保守担当者は、各機器2(機器本体21)の状態を容易に把握することができる。また、
図11の例では、異常が発生した機器2(機器ID=D04)に関する情報を表示するレコードが、他の機器2に関する情報を表示するレコードとは異なる色で表示されている。このように、異常が発生した機器2に関する情報を表示するレコードを目立つように表示することにより、保守担当者は、異常が発生した機器2を容易に把握することができる。
【0068】
図12は、端末200の表示装置に表示される、機器本体21の状態を示す情報の他の例を示す図である。
図12の例では、各機器2に関する情報が、カメラにより撮影された盤装置100の内部の画像における各機器2に対応する表示エリアに、AR(Augmented Reality)表示されている。
図12のようなAR表示は、読み取りアプリが、カメラにより撮影された盤装置100の内部の画像における発光部23の位置を特定し、特定した位置を基準とした表示エリアを設定し、設定した表示エリアに当該発光部23から受信した光信号が有する情報を表示することにより実現される。
【0069】
図12の例では、機器2に対応する表示エリアは、当該機器2の画像上に設定されている。このように、機器2に対応する表示エリアを、当該機器2の画像の少なくとも一部と重複するように設定することにより、機器2に関する情報が、当該機器2の画像上に表示されるため、保全担当者は、各機器2(機器本体21)の状態を
図11の例よりさらに容易に把握することができる。
【0070】
また、
図12の例では、機器2に対応する表示エリアの幅は、当該機器2の幅に対応するように設定されている。このように、機器2に対応する表示エリアを、当該機器2の形状に応じて設定することにより、各機器2に対応する表示エリアを機器2の画像上に自然に配置することができる。なお、機器2の形状は、任意の画像処理方法により、カメラにより撮影された盤装置100の内部の画像から抽出することができる。
【0071】
また、
図12の例では、各表示エリアが重複しないように表示されている。これにより、表示エリアの重複によって、機器2に関する情報が見え難くなることを防ぐことができる。
【0072】
また、
図12の例では、異常が発生した機器2(機器ID=D04)に対応する表示エリアが、他の機器2に対応する表示エリアとは異なる色で表示されている。このように、異常が発生した機器2に関する情報を表示する表示エリアを目立つように表示することにより、保守担当者は、異常が発生した機器2を容易に把握することができる。
【0073】
また、
図12の例では、表示エリアの面積に応じて、表示される情報が異なっている。具体的には、面積が大きい表示エリアほど多くの情報が表示され、面積が小さい表示エリアほど少ない情報が表示されている。このように、表示エリアの面積に応じて、当該表示エリアに表示する情報の量を調整することにより、表示エリア内に自然に情報を表示することができる。
【0074】
以上説明した通り、本実施形態によれば、機器2の発光部23が発信した光信号により、保全担当者が保持する端末200に、機器本体21の状態を示す情報が送信され、当該情報が端末200に表示される。保全担当者は、端末200を参照するだけで機器本体21の状態を容易に把握することができるため、短時間で盤装置100を修理することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、機器2の発光部23が発信した光信号により、保全担当者が保持する端末200に、直接的に機器本体21の状態を示す情報が送信される。すなわち、盤装置100に通信装置を搭載したり、盤装置100から情報を収集するための外部サーバを用意したりすることなく、機器本体21の状態を示す情報を、保全担当者が所持する端末200に送信することができる。したがって、盤装置100の保全ためのコストを低減することができる。
【0076】
また、光信号は、一般に、無線信号に比べて送受信可能な距離が短い上、戸閉時には、戸12により、外部への漏えいが遮断されている。したがって、本実施形態によれば、無線信号により機器本体21の状態を示す情報を送信する場合に比べて、機器本体21の状態を示す情報を盗聴されるリスクを低減し、盤装置100のセキュリティを向上させることができる。
【0077】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0078】
1:筐体
2:機器
21:機器本体
22:状態検出部
23:発光部
24:発光制御部
11:収納部
12:戸
13:開口部
100:盤装置
200:端末