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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20240312BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20240312BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J2/325 A
B65H23/188
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209450
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079641
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 徳顕
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074557(JP,A)
【文献】特開平08-001972(JP,A)
【文献】特開2003-237996(JP,A)
【文献】特開平10-114152(JP,A)
【文献】特開2002-240335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 2/325
B65H 23/188
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写リボンの一部を中間媒体に転写して前記中間媒体に対し転写体を形成する第1転写部と、
前記中間媒体に形成された前記転写体を被転写媒体に転写する第2転写部と、
前記第1転写部から送られた前記転写体を前記第2転写部に送る保留部と、を備え、
前記保留部は、モーターの制御によって所定の軸に沿って移動可能に構成されたローラーであって、前記中間媒体に当接して前記第1転写部による転写位置での前記中間媒体の張力を制御する1つの前記ローラーを備え、前記ローラーの動きによって前記転写体を前記第2転写部に送り、
前記第1転写部の動作には、前記第2転写部による転写中に、前記保留部に送る前記転写体を形成することが含まれる
転写装置。
【請求項2】
前記第2転写部による転写中において、前記保留部は、前記第2転写部に送る1以上の前記転写体を当該保留部に待機させている
請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記第1転写部の動作には、前記保留部に送る前記転写体を形成することで、前記保留部が待機させている前記転写体を増やすことが含まれる
請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記第2転写部は、スタンプ機構を備え、前記スタンプ機構による熱圧の印加によって前記転写体を被転写媒体に転写する
請求項1~3のいずれか一項に記載の転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次転写および二次転写を実施する転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1転写部と第2転写部とを備える転写装置が知られている。第1転写部は、転写リボンの一部を中間媒体に転写することにより、中間媒体に対して転写体を形成する。例えば、転写リボンは、所定の色を有する着色層や、構造色を呈するホログラム等からなる呈色層を有し、着色層や呈色層が中間媒体に転写される。転写リボンのなかで転写される部分が、所望の文字や画像を表すように定められることにより、文字や画像を示す転写体が形成される。第2転写部は、中間媒体に形成された転写体を、被転写媒体に転写する。これにより、被転写媒体上に文字や画像を有する印刷物が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-187833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写装置においては、まず、第1転写部による転写である一次転写が行われる。一次転写によって形成された転写体は、中間媒体の搬送によって、第2転写部へ運ばれる。次に、第2転写部による転写である二次転写が行われる。ここで、複数の印刷物が連続して形成される場合、一次転写と二次転写とをひとまとまりとする一連の転写が二次転写の終了ごとに開始される。すなわち、1つの印刷物の形成のための一次転写と二次転写とが順に行われ、この二次転写が完了した後に、次の印刷物の形成のための一次転写が開始される。このように、一次転写と二次転写とを交互に繰り返す転写装置では、結局のところ、先の印刷物の形成が終了するまで次の印刷物の形成が開始されないため、単位時間あたりに形成される印刷物の数量を増やして印刷物の形成効率を向上するには限界がある。
【0005】
本発明は、印刷物の形成効率を高めることのできる転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する転写装置は、転写リボンの一部を中間媒体に転写して前記中間媒体に対し転写体を形成する第1転写部と、前記中間媒体に形成された前記転写体を被転写媒体に転写する第2転写部と、前記第1転写部から送られた前記転写体を前記第2転写部に送る保留部と、を備え、前記第1転写部の動作には、前記第2転写部による転写中に、前記保留部に送る前記転写体を形成することが含まれる。
【0007】
上記構成によれば、第2転写部が1つ目の印刷物の形成のための転写を行っている間に、第1転写部が1つ目よりも後の印刷物の形成のための転写を行う。したがって、1つの印刷物の形成のための一次転写と二次転写とが完了した後に、次の印刷物の形成のための一次転写を行う転写装置と比較して、印刷物の形成効率を高めることができる。
【0008】
上記構成において、前記第2転写部による転写中において、前記保留部は、前記第2転写部に送る1以上の前記転写体を当該保留部に待機させていてもよい。
上記構成によれば、第2転写部による二次転写を連続して円滑に進められるため、印刷物の形成効率が的確に高められる。
【0009】
上記構成において、前記第1転写部の動作には、前記保留部に送る前記転写体を形成することで、前記保留部が待機させている前記転写体を増やすことが含まれてもよい。
上記構成によれば、待機する転写体の数が一定である形態、すなわち、第1転写部による転写体の形成のタイミングを第2転写部による転写の進度に合わせる形態と比較して、第1転写部の作動期間と停止期間との配分についての自由度が高められる。したがって、第1転写部の作動期間と停止期間とを、第1転写部によるエネルギーの消費効率が高められるように設定することも可能である。
【0010】
上記構成において、前記保留部は、移動可能なローラーであって、前記中間媒体に当接して前記第1転写部による転写位置での前記中間媒体の張力を制御する前記ローラーを備えてもよい。
上記構成によれば、一次転写位置での中間媒体の張力、および、保留部における中間媒体の搬送経路の長さ、これらの制御が簡易な構成によって可能となる。
【0011】
上記構成において、前記第2転写部は、スタンプ機構を備え、前記スタンプ機構による熱圧の印加によって前記転写体を被転写媒体に転写してもよい。
【0012】
上記構成によれば、第2転写部がホットローラーによって二次転写を行う場合と比較して、二次転写に要する時間が短くなる。したがって、特に二次転写に要する時間が単位時間あたりに形成される印刷物の数量に大きく作用する場合において、印刷物の形成効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷物の形成効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】転写装置の一実施形態について、転写装置の全体構成を示す図。
図2】一実施形態の転写装置の電気的構成を示す図。
図3】一実施形態の転写装置の動作を示す図。
図4】一実施形態の転写装置の動作を示す図。
図5】一実施形態の転写装置の動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図5を参照して、転写装置の一実施形態を説明する。
[転写装置の構成]
図1が示すように、転写装置10は、第1転写部20と、第2転写部30とを備えている。第1転写部20は、転写リボン11の一部を中間媒体12に転写する。これにより、中間媒体12上に、転写リボン11から転写された部分である転写体が形成される。第2転写部30は、中間媒体12上の転写体を被転写媒体13に転写する。第1転写部20による転写が一次転写であり、第2転写部30による転写が二次転写である。
【0016】
転写装置10は、さらに、転写リボン11を搬送する転写リボン搬送部40と、中間媒体12を搬送する中間媒体搬送部50と、被転写媒体13を搬送する被転写媒体搬送部60とを備えている。
【0017】
転写リボン搬送部40は、第1転写部20による一次転写が行われる位置である一次転写位置に転写リボン11を搬送し、一次転写に使用された転写リボン11を回収する。転写リボン搬送部40は、帯状に延びる転写リボン11を、当該リボンが巻かれたロールから一次転写位置に向けて送り出す供給ローラー41、一次転写位置の下流で転写リボン11を回収する巻取ローラー42、供給ローラー41と巻取ローラー42との間で転写リボン11を支持する図示しない補助ローラー等を含む。
【0018】
中間媒体搬送部50は、中間媒体12を一次転写位置に搬送し、一次転写を受けた中間媒体12を、一次転写位置から、第2転写部30による二次転写が行われる位置である二次転写位置に搬送する。そして、中間媒体搬送部50は、二次転写に使用された中間媒体12を回収する。
【0019】
中間媒体搬送部50は、帯状に延びる中間媒体12を、当該媒体が巻かれたロールから一次転写位置に向けて送り出す供給ローラー51、二次転写位置の下流で中間媒体12を回収する巻取ローラー52、供給ローラー51と巻取ローラー52との間で中間媒体12を支持する補助ローラー等を含む。補助ローラーには、一次転写位置と二次転写位置との間で中間媒体12を支持し、一次転写位置から二次転写位置へ中間媒体12を搬送する複数の搬送ローラー53が含まれる。
【0020】
被転写媒体搬送部60は、二次転写位置に被転写媒体13を搬送し、二次転写によって形成された印刷物を回収する。被転写媒体搬送部60は、被転写媒体13の搬送のためのコンベアやローラーを含む。
【0021】
転写リボン11は、基材と転写層とを備える帯状のシートである。転写層は、色素による色もしくは構造色を呈する機能層を有する。例えば、機能層は、色素を含む有色の層、ホログラム等を構成する回折構造を有する層、蛍光顔料やパール顔料を含む層等を含む。転写層は、さらに、基材と機能層との間に位置する剥離層や、中間媒体12に接触させられる接着層等を有していてもよい。
【0022】
中間媒体12は、基材を備える帯状のシートである。中間媒体12は、基材に加えて、転写リボン11から転写された転写体を定着させる受像層、受像層と基材との間に位置する剥離層等を備えていてもよい。被転写媒体13は、紙や樹脂シート等である。
【0023】
第1転写部20は、サーマルヘッド21と、プラテンローラー22とを備える。サーマルヘッド21は、列状に並ぶ複数の発熱抵抗体を備える。複数の発熱抵抗体は通電により選択的に発熱可能に構成されている。プラテンローラー22は、一次転写位置において、サーマルヘッド21と対向する。プラテンローラー22は、中間媒体12を支持し、中間媒体12の幅方向を軸方向として回転する。
【0024】
一次転写位置では、サーマルヘッド21とプラテンローラー22との間に、転写リボン11と中間媒体12とが挟まれる。転写リボン11の転写層は中間媒体12に接し、サーマルヘッド21は、転写リボン11を中間媒体12に向けて押圧する。転写リボン11のなかで、発熱した発熱抵抗体が押し付けられた部分の転写層が、ドット状に中間媒体12に転写される。
【0025】
サーマルヘッド21は、発熱抵抗体への通電を制御する制御部を備え、当該制御部は、印刷対象のデータに応じた位置の発熱抵抗体を発熱させる。プラテンローラー22と転写リボン搬送部40と中間媒体搬送部50との協働によって、転写リボン11および中間媒体12が移動されることにより、中間媒体12上に、転写層からなるドットの列が順に形成される。これにより、ドットの集合からなる転写体が、印刷対象の文字や画像を示すように、中間媒体12上に形成される。
【0026】
第2転写部30は、押圧体31と支持部32とを含むスタンプ機構を備える。押圧体31と支持部32とは、二次転写位置において互いに対向する。二次転写位置において、押圧体31と支持部32との間に、中間媒体12における転写体の位置する部分と被転写媒体13とが挟まれる。転写体は、被転写媒体13に向けられる。押圧体31は、加熱された状態で、被転写媒体13の表面と直交する方向に沿って移動し、被転写媒体13に向けて中間媒体12を押圧する。これにより、転写体が被転写媒体13に転写され、被転写媒体13と転写体とを備える印刷物が形成される。なお、転写体とともに、押圧体31に押圧された領域の受像層や剥離層等の中間媒体12の一部も、被転写媒体13に転写されてもよい。
【0027】
転写装置10は、さらに、第1転写部20から送られた転写体を第2転写部30に送る保留部70を有する。保留部70は、一次転写位置と二次転写位置との間、すなわち、第1転写部20と第2転写部30との間に位置する中間媒体12の搬送経路を含み、二次転写位置に送られる転写体を待機させる機能を有する。
【0028】
保留部70は、調整ローラー71を備える。調整ローラー71は、モーターの制御によって、所定の軸に沿って摺動するように構成されている。調整ローラー71は、調整ローラー71の位置を変えることで、第1転写部20と第2転写部30との間における中間媒体12の搬送経路の長さを伸縮させる。例えば、調整ローラー71は、保留部70において中間媒体12が全体として上方から下方へ搬送される場合に、水平方向に移動可能に構成される。調整ローラー71は、中間媒体12に当接し、中間媒体12を押す方向に移動することによって中間媒体12を引っ張り、調整ローラー71に沿って迂回する中間媒体12の経路を長くする。また、調整ローラー71は、中間媒体12を押す方向とは反対方向に移動することによって調整ローラー71に沿って迂回する中間媒体12の経路を短くする。調整ローラー71は、中間媒体12の搬送経路の長さを変化させることによって、一次転写位置において中間媒体12にかかる張力を変化させる。
【0029】
なお、二次転写位置の手前には、中間媒体12の張力の切り替え位置が設けられ、二次転写位置における中間媒体12の張力は、二次転写位置の下流に位置するローラーによって制御される。中間媒体12の張力の切り替え位置では、例えば、2つの搬送ローラー53によって中間媒体12が挟まれ、これにより、切り替え位置よりも上流と下流とで中間媒体12の張力を互いに独立して制御することが可能とされている。
【0030】
図2を参照して、転写装置10の電気的な構成を説明する。転写装置10は、転写装置10の各部の動作を制御する制御部80を備えている。
すなわち、制御部80は、第1転写部20、第2転写部30、転写リボン搬送部40、中間媒体搬送部50、被転写媒体搬送部60、および、調整ローラー71の各々の動作を制御する。こうした各部の制御を通じて、制御部80は、一次転写と二次転写とのタイミング、転写リボン11と中間媒体12と被転写媒体13との搬送、および、調整ローラー71の動きを制御する。
【0031】
制御部80は、第2転写部30が二次転写を行っている間に、第1転写部20に一次転写を行わせて転写体を形成させる。そして、制御部80は、形成された転写体を保留部70に送って、当該転写体を保留部70に待機させる。さらに、制御部80は、保留部70に待機している転写体を第2転写部30に送って、第2転写部30に次の二次転写を行わせる。制御部80は、転写装置10がこうした動作を繰り返すように、上述の各部の動作を制御する。
【0032】
制御部80は、例えば、CPU、RAM、ROMなどのコンピュータに用いられるハードウェア要素、および、ソフトウェアを備える。制御部80は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、制御部80は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアである特定用途向け集積回路(ASIC)を備えてもよい。制御部80は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムであるソフトウェアに従って動作する1つ以上のプロセッサであるマイクロコンピュータ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路を備えてもよい。
【0033】
なお、制御部80は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。例えば、制御部80は、上述の各部の動きを別々に制御する複数のコンピュータと、これらのコンピュータを統合制御して転写装置10全体の動作を制御するコンピュータとから構成されてもよい。
【0034】
[転写装置の動作]
転写装置10の動作を説明する。なお、転写装置10の動作は、制御部80の指示に基づき各部が動作することにより実現される。
【0035】
図3が示すように、まず、第1転写部20が一次転写を行い、1番目の転写体Tr1を形成する。形成された転写体Tr1は保留部70に送られる。1つの転写体Trは、1つの印刷物のための印刷対象を示す部分である。言い換えれば、1つの転写体Trは、1回の二次転写によって転写される部分であって、1回の二次転写によって転写可能な範囲内に含まれる。
【0036】
なお、カラーの画像を示す転写体Trの形成時には、色もしくは光の三原色を含む複数の色の領域が搬送方向に沿って並ぶ転写リボン11を用い、中間媒体12の特定の領域に各色の領域が順に転写されるように転写リボン11の送りと中間媒体12の送りおよび引き戻しとが制御されつつ、一次転写が進められる。
【0037】
調整ローラー71は、一次転写中においては、一次転写位置における中間媒体12の張力が適切となるように、中間媒体12の搬送経路の長さを伸縮させる。また、調整ローラー71は、転写体Trを移動させるときには、転写体Trの搬送が円滑に進むように、中間媒体12の搬送経路の長さを伸縮させて中間媒体12の張力を調整する。例えば、調整ローラー71は、一次転写中には、中間媒体12の張力を強め、転写体Trの搬送時には、中間媒体12の張力を弱める。すなわち、調整ローラー71は、一次転写中には、中間媒体12の搬送経路を伸ばし、転写体Trの搬送時には、中間媒体12の搬送経路を縮める。
【0038】
図4が示すように、続いて、第1転写部20が一次転写を行い、2番目の転写体Tr2を形成する。形成された2番目の転写体Tr2は保留部70に送られる。1番目の転写体Tr1は、下流に搬送され、第2転写部30に送られる。
【0039】
図5が示すように、1番目の転写体Tr1が二次転写位置に送られると、第2転写部30が1番目の転写体Tr1に対して二次転写を行う。このとき、2番目の転写体Tr2は保留部70に待機している。そして、第1転写部20は一次転写を行って3番目の転写体Tr3を形成し、形成された3番目の転写体Tr3は保留部70に送られる。
【0040】
2番目および3番目の転写体Tr2,Tr3の一次転写に際しても、1番目の転写体Tr1の一次転写の際と同様に、調整ローラー71が一次転写位置における中間媒体12の張力を制御する。
【0041】
このような動作が繰り返されることで、転写体Trが転写された被転写媒体13である印刷物が順に形成される。本実施形態の転写装置10においては、第2転写部30が1番目の印刷物の形成のための二次転写を行っている間に、第1転写部20が1番目よりも後の印刷物の形成のための一次転写を行う。したがって、1つの印刷物の形成のための一次転写と二次転写とが完了した後に、次の印刷物の形成のための一次転写を行う転写装置と比較して、印刷物の形成効率を高めることができる。
【0042】
特に、第2転写部30による二次転写中に、次の二次転写の対象である転写体Trが保留部70で待機しているため、二次転写を連続して円滑に進められる。したがって、印刷物の形成効率が的確に高められる。
【0043】
なお、第2転写部30による転写中において、保留部70に待機されている転写体Trの数は特に限定されない。例えば、1番目の転写体Tr1を用いた二次転写が行われているときに、2番目の転写体Tr2が二次転写位置の手前で待機し、3番目の転写体Tr3が2番目の転写体Tr2よりも上流で待機し、4番目の転写体Trの形成のための一次転写が行われてもよい。
【0044】
1つの転写体Trを対象とした一次転写に要する時間と二次転写に要する時間とは異なってもよく、第1転写部20と第2転写部30とは常に同時に転写を行っている必要はない。すなわち、第1転写部20が停止している間に第2転写部30が転写を行うことがあってもよいし、第2転写部30が停止している間に第1転写部20が転写を行うことがあってもよい。一次転写に要する時間と二次転写に要する時間とが異なる場合、印刷物の形成効率を高めるためには、二次転写に要する時間よりも一次転写に要する時間が短いことが好ましい。
【0045】
本実施形態の転写装置10では、調整ローラー71の移動によって、二次転写位置での中間媒体12の張力とは独立して一次転写位置での中間媒体12の張力を制御可能である。また、調整ローラー71の移動によって、保留部70における中間媒体12の搬送経路の長さ、すなわち、転写体Trを待機させておく部分の長さの調整も可能である。したがって、第1転写部20による一次転写と第2転写部30による二次転写との進行の調整についての自由度が高い。
【0046】
転写装置10では、二次転写位置の中間媒体12を動かさずに調整ローラー71の動きによって保留部70における中間媒体12の搬送経路を伸ばすこと、調整ローラー71の動きによって保留部70から二次転写位置へ中間媒体12を動かすこと、一次転写位置と二次転写位置とを含めて中間媒体12の搬送経路の全体で中間媒体12を動かすこと、これらが可能である。これらの動作の切り替えによって、保留部70に待機させる転写体Trを形成する一次転写、印刷物を形成する二次転写、転写体Trの移動、これらの円滑な進行が可能となる。
【0047】
例えば、二次転写に要する時間よりも一次転写に要する時間が短い場合、二次転写が行われている間に、第1転写部20が転写体Trを形成して保留部70に送り、保留部70に待機している転写体Trの数を増やすことも可能である。1回の二次転写中に複数回の一次転写が行われてもよい。
【0048】
また、転写装置10においては、一次転写位置での中間媒体12の張力が、保留部70における調整ローラー71によって制御される一方で、二次転写位置での中間媒体12の張力は、二次転写位置の下流で制御される。したがって、二次転写位置での中間媒体12の張力が、二次転写位置の上流で制御される形態、すなわち、保留部70に、一次転写位置での中間媒体12の張力を制御するための調整ローラー71に加えて、二次転写位置での中間媒体12の張力を制御するための移動可能なローラー等の構成が含まれる形態と比較して、保留部70の構成が簡易になる。その結果、保留部70の制御が複雑になることが抑えられるとともに、保留部70を設けることによる転写装置10の大型化を抑制することができる。
【0049】
また、転写装置10において、第2転写部30は、スタンプ機構による熱圧の印加によって転写体Trを被転写媒体13に転写する。こうした第2転写部30は、ホットローラーを用いて転写を行う場合と比較して短い時間で二次転写を行うことができる。二次転写に要する時間よりも一次転写に要する時間が短い場合には、二次転写に要する時間が短いほど、単位時間あたりに形成される印刷物の数量が多くなるため、第2転写部30にスタンプ機構を用いることにより、印刷物の形成効率をより高めることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の転写装置10によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1転写部20が、第2転写部30による転写中に、保留部70に送る転写体Tr、すなわち、次以降の二次転写のための転写体Trを形成する。したがって、1つの印刷物の形成のための一次転写と二次転写とが完了した後に、次の印刷物の形成のための一次転写を行う転写装置と比較して、印刷物の形成効率を高めることができる。
【0051】
(2)第2転写部30による転写中において、保留部70は、次に第2転写部30に送る転写体Trを当該保留部70に待機させている。したがって、二次転写を連続して円滑に進められるため、印刷物の形成効率が的確に高められる。
【0052】
(3)第1転写部20が、保留部70に送る転写体Trを形成することで、保留部70が待機させている転写体Trを増やす形態であれば、待機する転写体Trの数が一定である形態、すなわち、第1転写部20による転写体Trの形成のタイミングを第2転写部30による転写の進度に合わせる形態と比較して、第1転写部20の作動期間と停止期間との配分についての自由度が高められる。例えば、第1転写部20を連続して作動させ、複数の転写体Trを形成させた後に、第2転写部30が待機している転写体Trを消費するまで第1転写部20を停止させることも可能であり、第1転写部20の作動期間と停止期間とを、第1転写部20によるエネルギーの消費効率が高められるように設定することも可能である。
【0053】
(4)保留部70が、中間媒体12に当接して移動することで一次転写位置での中間媒体12の張力を制御する調整ローラー71を備えている。こうした構成によれば、一次転写位置での中間媒体12の張力、および、保留部70における中間媒体12の搬送経路の長さ、これらの制御が簡易な構成によって可能となる。また、二次転写位置での中間媒体12の張力を制御するための構成が保留部70に含まれずに二次転写位置の下流に位置するため、保留部70の構成が簡易になる。
【0054】
(5)第2転写部30は、スタンプ機構を備え、スタンプ機構による熱圧の印加によって転写体Trを被転写媒体13に転写する。こうした構成によれば、第2転写部30がホットローラーによって二次転写を行う場合と比較して、二次転写に要する時間が短くなる。したがって、特に二次転写に要する時間が単位時間あたりに形成される印刷物の数量に大きく作用する場合において、印刷物の形成効率を高めることができる。
【0055】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・第2転写部30による転写中に、保留部70には転写体Trが待機されていなくてもよい。すなわち、第2転写部30が1番目の転写体Trを用いた転写を行っている間に、第1転写部20が2番目の転写体Trを形成し、第2転写部30による1番目の転写体Trの二次転写の終了後に、2番目の転写体Trが保留部70を通って第2転写部30に送られてもよい。こうした構成によっても上記(1)の効果は得られる。
【0056】
・第2転写部30は、スタンプ機構に代えてホットローラーを備え、ホットローラーを用いて二次転写を行ってもよい。すなわち、第2転写部30は、中間媒体12と被転写媒体13との積層体の上に加熱されたローラーを転がすことで、転写体Trに対する加熱および加圧を行ってもよい。
【0057】
・一次転写における転写方式は、溶融転写方式に限らず、昇華転写方式であってもよい。要は、転写リボン11の一部が中間媒体12に転写されることにより、中間媒体12に対し、転写リボン11の一部が転写された部分である転写体Trが形成されればよい。
【符号の説明】
【0058】
Tr,Tr1~Tr3…転写体、10…転写装置、11…転写リボン、12…中間媒体、13…被転写媒体、20…第1転写部、21…サーマルヘッド、22…プラテンローラー、30…第2転写部、31…押圧体、32…支持部、40…転写リボン搬送部、41…供給ローラー、42…巻取ローラー、50…中間媒体搬送部、51…供給ローラー、52…巻取ローラー、53…搬送ローラー、60…被転写媒体搬送部、70…保留部、71…調整ローラー、80…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5