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特許7451965タイヤの転がり抵抗の計算方法、コンピュータプログラム及び計算装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】タイヤの転がり抵抗の計算方法、コンピュータプログラム及び計算装置
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240312BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240312BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240312BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
G06F30/10
G06F30/23
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019214491
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2020093781
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018226701
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴臣
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-089788(JP,A)
【文献】特開2007-131209(JP,A)
【文献】特開2005-138621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G06F 30/10
G06F 30/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて、粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算するための方法であって、
前記コンピュータに、前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する工程と、
前記コンピュータに、前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する工程と、
前記コンピュータが、前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める工程と、
前記コンピュータが、前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める工程と、
前記コンピュータが、前記粘弾性特性分布から第1粘弾性特性を特定する工程と、
前記コンピュータが、前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する工程とを含み、
前記第1粘弾性特性を特定する工程は、
前記第1周波数分布の少なくとも一部について、前記歪振幅の合計値を求めた後に、前記合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示す第1寄与率と、前記第1寄与率に対応する周波数との関係を示す第1寄与率分布を求める第1工程と、
前記粘弾性特性分布と、前記第1寄与率分布とに基づいて、前記第1粘弾性特性を特定する第2工程とを含み、
前記第2工程は、
同一の周波数ごとに前記粘弾性特性と前記第1寄与率とを乗じた第2寄与率と、前記第2寄与率に対応する周波数との関係を示す第2寄与率分布を求める工程と、
前記第2寄与率分布の重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数を求めて、前記重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数に対応する前記粘弾性特性を、前記第1粘弾性特性として特定する工程とを含む、
タイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記第1周波数分布のうち、一部の前記周波数の範囲で選択した抽出周波数分布を用いて、前記第1寄与率分布を求める工程を含む、請求項1記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記抽出周波数分布を逆フーリエ変換した第2歪分布を求める工程と、
前記第2歪分布の歪と、前記第1歪分布の前記歪との差が、予め定められた閾値以下である場合に、前記抽出周波数分布を用いて前記第1寄与率分布を求める工程とを含む、請求項2記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項4】
前記トレッドゴムは、前記粘弾性特性の温度依存性をさらに有するものであり、
前記粘弾性特性分布は、任意の温度について、前記粘弾性特性と前記周波数との関係を特定するものであり、
前記タイヤの転がり抵抗を計算する工程の後に、前記コンピュータが、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の温度及び周波数と、前記粘弾性特性分布とに基づいて、前記第1粘弾性特性を更新する工程と、
前記コンピュータが、更新された前記第1粘弾性特性に基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を再計算する工程とをさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項5】
前記第1粘弾性特性を更新する工程は、前記各要素において、前記タイヤモデルが転動したときの歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第2周波数分布を求める工程と、
前記第2周波数分布の少なくとも一部について、前記歪振幅の合計値を求めた後に、前記合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示す第3寄与率と、第3寄与率に対応する周波数との関係を示す第3寄与率分布を求める工程と、
前記第3寄与率分布の重心周波数を、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の周波数として特定する工程とを含む、請求項4記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項6】
前記粘弾性特性分布は、前記粘弾性特性、前記温度及び前記周波数の関係を示す近似式であり、
前記第1粘弾性特性を更新する工程は、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の温度及び周波数を、前記近似式に代入して、前記第1粘弾性特性を計算する工程を含む、請求項4又は5記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項7】
前記転がり抵抗を再計算する工程は、前記温度が予め定められた範囲内に収束するまで、前記転がり抵抗を再計算する、請求項4ないし6のいずれかに記載のタイヤの転がり抵抗の計算方法。
【請求項8】
粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する手段と、
前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する手段と、
前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める手段と、
前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める手段と、
前記粘弾性特性分布から第1粘弾性特性を特定する手段と、
前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する手段として機能させ、
前記第1粘弾性特性を特定する手段は、
前記第1周波数分布の少なくとも一部について、前記歪振幅の合計値を求めた後に、前記合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示す第1寄与率と、前記第1寄与率に対応する周波数との関係を示す第1寄与率分布を求める第1工程と、
前記粘弾性特性分布と、前記第1寄与率分布とに基づいて、前記第1粘弾性特性を特定する第2工程とを実行し、
前記第2工程は、
同一の周波数ごとに前記粘弾性特性と前記第1寄与率とを乗じた第2寄与率と、前記第2寄与率に対応する周波数との関係を示す第2寄与率分布を求める工程と、
前記第2寄与率分布の重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数を求めて、前記重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数に対応する前記粘弾性特性を、前記第1粘弾性特性として特定する工程とを含む、
タイヤの転がり抵抗を計算するためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算する演算処理装置を有する計算装置であって、
前記演算処理装置は、
前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する手段と、
前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する手段と、
前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める手段と、
前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める手段と、
前記粘弾性特性分布から第1粘弾性特性を特定する手段と、
前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する手段とを含み、
前記第1粘弾性特性を特定する手段は、
前記第1周波数分布の少なくとも一部について、前記歪振幅の合計値を求めた後に、前記合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示す第1寄与率と、前記第1寄与率に対応する周波数との関係を示す第1寄与率分布を求める第1工程と、
前記粘弾性特性分布と、前記第1寄与率分布とに基づいて、前記第1粘弾性特性を特定する第2工程とを実行し、
前記第2工程は、
同一の周波数ごとに前記粘弾性特性と前記第1寄与率とを乗じた第2寄与率と、前記第2寄与率に対応する周波数との関係を示す第2寄与率分布を求める工程と、
前記第2寄与率分布の重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数を求めて、前記重心周波数又は前記第2寄与率が最大となる周波数に対応する前記粘弾性特性を、前記第1粘弾性特性として特定する工程とを含む、
タイヤの転がり抵抗の計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの転がり抵抗を、コンピュータを用いて計算するための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、タイヤの転がり抵抗を、コンピュータを用いて予測するためのシミュレーション方法を提案している。この方法では、先ず、タイヤモデルを路面モデルに接地させる。次に、タイヤモデルを構成する各要素について、タイヤ1回転時の歪の履歴が、タイヤモデルの周方向の歪分布から計算される。そして、歪の変化量の絶対値を積算した値と、各要素の貯蔵弾性率とを用いて、各要素のエネルギーロスが計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4469172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法で計算された転がり抵抗の結果は、現実のタイヤの転がり抵抗の測定結果と、必ずしも同様の相関を示さない場合があった。
【0005】
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、貯蔵弾性率等のゴムの粘弾性特性は、ゴムに与えられる変形の周波数に応じて変化する周波数依存性を有するところ、上記計算結果には、この周波数依存性が十分に反映されていないことが原因であることを知見した。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることが可能なタイヤの転がり抵抗の計算方法等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンピュータを用いて、粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算するための方法であって、前記コンピュータに、前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する工程と、前記コンピュータに、前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する工程と、前記コンピュータが、前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める工程と、前記コンピュータが、前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める工程と、前記コンピュータが、前記粘弾性特性分布から、前記歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性を特定する工程と、前記コンピュータが、前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第1粘弾性特性を特定する工程は、前記第1周波数分布の全体に対する前記歪振幅の割合が相対的に大きい前記周波数において、前記粘弾性特性分布から、前記第1粘弾性特性を特定する工程を含んでもよい。
【0009】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第1粘弾性特性を特定する工程は、前記第1周波数分布の少なくとも一部について、前記歪振幅の合計値を求めた後に、前記合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示す第1寄与率と、前記第1寄与率に対応する周波数との関係を示す第1寄与率分布を求める第1工程と、前記粘弾性特性分布から、前記第1寄与率の影響が相対的に大きい前記周波数での粘弾性特性を、前記第1粘弾性特性として特定する第2工程とを含でもよい。
【0010】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第2工程は、同一の周波数ごとに前記粘弾性特性と前記第1寄与率とを乗じた第2寄与率と、前記第2寄与率に対応する周波数との関係を示す第2寄与率分布を求める工程と、前記第2寄与率分布の重心周波数を求めて、前記重心周波数に対応する前記粘弾性特性を、前記第1粘弾性特性として特定する工程とを含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第1工程は、前記第1周波数分布のうち、一部の前記周波数の範囲で選択した抽出周波数分布を用いて、前記第1寄与率分布を求める工程を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第1工程は、前記抽出周波数分布を逆フーリエ変換した第2歪分布を求める工程と、前記第2歪分布の前記歪と前記第1歪分布の前記歪との差が、予め定められた閾値以下である場合に、前記抽出周波数分布を用いて前記第1寄与率分布を求める工程とを含んでもよい。
【0013】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記トレッドゴムは、前記粘弾性特性の温度依存性をさらに有するものであり、前記粘弾性特性分布は、任意の温度について、前記粘弾性特性と前記周波数との関係を特定するものであり、前記タイヤの転がり抵抗を計算する工程の後に、前記コンピュータが、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の温度及び周波数と、前記粘弾性特性分布とに基づいて、前記第1粘弾性特性を更新する工程と、前記コンピュータが、更新された前記第1粘弾性特性に基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を再計算する工程とをさらに含んでもよい。
【0014】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記第1粘弾性特性を更新する工程は、前記各要素において、前記タイヤモデルが転動したときの歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第2周波数分布を求める工程と、前記第2周波数分布の全体に対する前記歪振幅の割合が相対的に大きい周波数を、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の周波数として特定する工程とを含んでもよい。
【0015】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記粘弾性特性分布は、前記粘弾性特性、前記温度及び前記周波数の関係を示す近似式であり、前記第1粘弾性特性を更新する工程は、前記タイヤモデルの転動時の前記要素の温度及び周波数を、前記近似式に代入して、前記第1粘弾性特性を計算する工程を含んでもよい。
【0016】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗の計算方法において、前記転がり抵抗を再計算する工程は、前記温度が予め定められた範囲内に収束するまで、前記転がり抵抗を再計算してもよい。
【0017】
本発明は、粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する手段と、前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する手段と、前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める手段と、前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める手段と、前記粘弾性特性分布から、前記歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性を特定する手段と、前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明は、粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗を計算する演算処理装置を有する計算装置であって、前記演算処理装置は、前記トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルを入力する手段と、前記粘弾性特性と、前記粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布を入力する手段と、前記要素について、前記タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布を求める手段と、前記第1歪分布をフーリエ変換して、歪振幅と、前記歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布を求める手段と、前記粘弾性特性分布から、前記歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性を特定する手段と、前記第1粘弾性特性と、前記第1歪分布とに基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を計算する手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤの転がり抵抗の計算方法は、タイヤが転動したときの歪と、前記歪に対応する前記タイヤの回転角度との関係を示す第1歪分布をフーリエ変換した第1周波数分布を求めた後に、前記第1周波数分布の歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性を用いて、タイヤの転がり抵抗を計算している。また、前記第1粘弾性特性は、粘弾性特性の周波数依存性を考慮して特定される。したがって、本発明のタイヤの転がり抵抗の計算方法では、トレッドゴムの周波数依存性を考慮して転がり抵抗を計算することができるため、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】タイヤの転がり抵抗の計算方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。
図2】タイヤの転がり抵抗の計算方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】タイヤモデルの一例を示す斜視図である。
図4図3のタイヤモデルのタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面である。
図5】粘弾性特性分布の一例を示すグラフである。
図6】第1歪分布の一例を示すグラフである。
図7図7は、(a)~(c)は、歪を説明する要素の斜視図である。
図8】第1周波数分布の一例を示すグラフである。
図9】特定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】第1寄与率分布の一例を示すグラフである。
図11】第2工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】第2寄与率分布の一例を示すグラフである。
図13】本発明の他の実施形態の第2寄与率分布の一例を示すグラフである。
図14】本発明の他の実施形態の第1工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15】抽出周波数分布の一例を示すグラフである。
図16】第2歪分布の一例を示すグラフである。
図17】本発明のさらに他の実施形態のタイヤの転がり抵抗の計算方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18】任意の温度について、粘弾性特性と周波数との関係を特定する粘弾性特性分布の一例を示すグラフである。
図19】マスターカーブに基づいて、任意の温度での粘弾性特性と周波数との関係を特定した粘弾性特性分布の一例を示すグラフである。
図20】更新工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図21】周波数計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図22】第3寄与率分布の一例を示すグラフである。
図23】再計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤの転がり抵抗の計算方法(以下、単に「計算方法」ということがある。)では、コンピュータを用いて、粘弾性特性の周波数依存性を有するトレッドゴムを含むタイヤの転がり抵抗が計算される。図1は、タイヤの転がり抵抗の計算方法を実行するためのコンピュータ1の一例を示す斜視図である。
【0022】
コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dが含まれる。この本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの記憶装置及びディスクドライブ装置1a1、1a2などが設けられている。なお、記憶装置には、本実施形態の計算方法を実行するための処理手順(タイヤの転がり抵抗を計算するためのコンピュータプログラム)が予め記憶されている。コンピュータプログラムは、演算処理装置によって実行される。これにより、コンピュータ1は、タイヤの転がり抵抗を計算するため手段として機能し、タイヤの転がり抵抗の計算装置として構成される。
【0023】
図2は、タイヤの転がり抵抗の計算方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態の計算方法では、コンピュータ1に、トレッドゴムを有限個の要素でモデリングしたトレッドゴムモデルを含むタイヤモデルが入力される(工程S1)。工程S1では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、タイヤモデルを入力する手段として機能させている。図3は、タイヤモデル2の一例を示す斜視図である。図4は、図3のタイヤモデル2のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面である。
【0024】
工程S1では、上記特許文献1と同様に、タイヤに関する情報(例えば、タイヤの輪郭データ等)に基づいて、有限個の要素F(i)(i=1、2、…)で離散化している。本実施形態では、トレッドゴムを含むゴム部材、カーカスプライ、及び、各ベルトプライ等の各タイヤ構成部材が、有限個の要素F(i)で離散化されている。これにより、トレッドゴムモデル3を含むタイヤモデル2が設定される。
【0025】
各要素F(i)は、数値解析法により取り扱い可能なものである。数値解析法としては、例えば、有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法を適宜採用できる。本実施形態の数値解析法には、有限要素法が採用されている。また、各要素F(i)としては、例えば、4面体ソリッド要素、5面体ソリッド要素、又は、6面体ソリッド要素などが用いられるのが望ましい。各要素F(i)には、複数個の節点5が設けられる。これらの各要素F(i)には、要素番号、節点5の番号、節点5の座標値、及び、材料特性(例えば密度、ヤング率及び/又は減衰係数等)などの数値データが定義される。タイヤモデル2は、コンピュータ1に入力される。
【0026】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1に、路面モデル6が入力される(工程S2)。工程S2では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、路面モデルを入力する手段として機能させている。
【0027】
本実施形態の工程S2では、図2に示されるように、路面(本実施形態では、平坦路)に関する情報に基づいて、数値解析法(本実施形態では、有限要素法)により取り扱い可能な有限個の要素H(i)(i=1、2、…)で離散化している。これにより、工程S2では、路面モデル6が設定される。有限個の要素(以下、単に、「要素」ということがある。)H(i)としては、変形不能に設定された剛平面要素が採用される。各要素H(i)には、複数の節点7が設けられている。これらの各要素H(i)には、要素番号や、節点7の座標値等の数値データが定義される。
【0028】
本実施形態の路面モデル6は、平坦路(図示省略)をモデル化しているが、このような態様に限定されない。路面モデル6は、例えば、円筒状に形成されたドラム試験機(図示省略)の外周面をモデル化したものでもよい。また、本実施形態の路面モデル6の外面は、平滑なスムース路面として設定されているが、このような態様に限定されない。路面モデル6の外面には、例えば、走行騒音試験に用いられる路面(ISO路面)や、アスファルト路面に基づいて、凹凸(図示省略)が設定されてもよい。路面モデル6は、コンピュータ1に記憶される。
【0029】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1に、粘弾性特性と、粘弾性特性に対応する周波数との関係を示す粘弾性特性分布が入力される(工程S3)。工程S3では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、粘弾性特性分布を入力する手段として機能させている。
【0030】
工程S3では、現実のタイヤのトレッドゴムと同一の配合を有するゴムサンプル(図示省略)について、粘弾性特性分布が求められる。ゴムサンプルは、例えば、幅4.2mm、長さ35mm及び厚さ1.5mmの板形状に形成されている。
【0031】
粘弾性特性としては、例えば、貯蔵弾性率E'、損失弾性率E"、損失正接tanδ、貯蔵せん断弾性率G'、及び、損失せん断弾性率G"など適宜選択することができる。本実施形態では、損失正接tanδ、及び、貯蔵弾性率E'が入力される。
【0032】
粘弾性特性分布の測定には、JIS-K6394の規定に準拠して、例えば、公知の粘弾性試験装置(図示省略)が用いられる。本実施形態の粘弾性試験装置には、ネッチガボ社製の動的粘弾性測定装置「イプレクサー4000N」が用いられる。
【0033】
本実施形態の粘弾性試験では、ゴムサンプルに、異なる変形の周波数が与えられる。これにより、粘弾性特性(本例では、損失正接tanδ、及び、貯蔵弾性率E')と周波数との関係を示す粘弾性特性分布が測定される。粘弾性特性分布は、例えば、上記の粘弾性試験装置を用いて、次に示される条件で測定されている。
温度:30℃
初期歪:10%
振幅:±2%
周波数:1~300Hz
変形モード:引張
【0034】
図5は、粘弾性特性分布(損失正接tanδ)の一例を示すグラフである。図5に示されるように、トレッドゴムの粘弾性特性(損失正接tanδ及び貯蔵弾性率E')は、トレッドゴムに与えられる変形の周波数に応じて変化する周波数依存性を有している。したがって、転がり抵抗の計算には、粘弾性特性の周波数依存性を反映させることが重要である。粘弾性特性分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0035】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、内圧条件、及び、荷重条件が定義されたタイヤモデル2を計算する(工程S4)。工程S4では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、内圧が充填され、かつ、荷重条件が定義されたタイヤモデル2を計算する手段として機能させている。
【0036】
工程S4では、上記特許文献1など公知の手順に基づいて、内圧が充填され、かつ、荷重条件が定義されたタイヤモデル2が計算される。工程S4では、先ず、図4に示されるように、リム(図示省略)をモデル化したリムモデル8によって、タイヤモデル2のビード部2c、2cが拘束される。リムモデル8は、例えば、リムに関する情報(輪郭データ等)に基づいて、数値解析法(本実施形態では、有限要素法)により取り扱い可能な有限個の要素(図示省略)で離散化されることによって設定される。リムモデル8を構成する要素は、例えば、変形不能に設定された剛平面要素(図示省略)として定義されるのが望ましい。
【0037】
次に、工程S4では、内圧条件に相当する等分布荷重wに基づいて、タイヤモデル2の変形が計算される。内圧条件としては、例えば、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定める空気圧が設定される。これにより、工程S4では、内圧充填後のタイヤモデル2が計算される。
【0038】
タイヤモデル2の変形計算は、各要素F(i)の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、前記各種の条件を当てはめて運動方程式が作成され、これらを微小時間(単位時間Tx(x=0、1、…))ごとに逐次計算することで、タイヤモデル2の変形計算が行われる。このような変形計算は、例えば、Dassault Systems社製のAbaqus、LSTC社製のLS-DYNA、又は、MSC社製のNASTRANなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。なお、単位時間Txについては、求められるシミュレーション精度によって、適宜設定することができる。
【0039】
次に、工程S4では、図3に示されるように、内圧充填後のタイヤモデル2と路面モデル6との接触が設定される。次に、工程S4では、タイヤモデル2の回転軸2sに、荷重条件(荷重L)が設定される。荷重条件としては、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定める空気圧及び荷重が設定される。これにより、工程S4では、荷重条件が負荷されて変形したタイヤモデル2が計算される。荷重条件が定義されたタイヤモデル2は、コンピュータ1に記憶される。
【0040】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、タイヤモデル2の要素F(i)について、第1歪分布を求める(工程S5)。第1歪分布は、タイヤが転動したときの歪と、歪に対応するタイヤの回転角度との関係を示すものである。工程S5では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、第1歪分布を求める手段として機能させている。
【0041】
第1歪分布が求められる要素F(i)としては、適宜選択することができる。本実施形態では、タイヤモデル2の外面2oを構成するトレッドゴムモデル3の要素F(i)のうち、トレッドゴムモデル3のタイヤ軸方向の外側(外端側)で、タイヤ周方向に連続する領域Tに配された要素F(i)が選択される。このような領域Tのトレッドゴムは、他の領域のトレッドゴムに比べて変形が大きいため、タイヤの転がり抵抗への寄与が相対的に高い。本実施形態では、転がり抵抗への寄与が高い領域Tにおいて、第1歪分布が求められる。
【0042】
本実施形態の工程S5では、上記特許文献1と同様に、タイヤモデル2が路面モデル6に静的に接触した状態で受ける歪を、タイヤが負荷転動しているときの一瞬間に受ける動的な歪と実質的に等しいものと仮定して、静的な計算結果から動的な歪の履歴を求めている。このような静的解析は、短時間で計算するのに役立つ。なお、工程S5では、タイヤモデル2を路面モデル6に転動させて、動的な歪の履歴を求める動的解析が行われてもよい。図6は、第1歪分布の一例を示すグラフである。
【0043】
本実施形態では、第1歪分布として、6成分の歪と、6成分の歪に対応するタイヤの回転角度との関係が求められる。図7は、(a)~(c)は、歪を説明する要素F(i)の斜視図である。6成分の歪は、タイヤ子午線方向に沿う垂直歪D11(図3に示す)、タイヤ厚さ方向に沿う垂直歪D22(図3に示す)、タイヤ周方向に沿う垂直歪D33(図3に示す)、タイヤ子午線方向を法線とする面の接線方向(タイヤ厚さ方向)の歪D12(図7(a)に示す)、タイヤ厚さ方向を法線とする面の接線方向(タイヤ周方向)の歪D23(図7(b)に示す)、及び、タイヤ周方向を法線とする面の接線方向(タイヤ子午線方向)の歪D31(図7(c)に示す)とが含まれる。図6において、回転角度が180度の位置は、タイヤモデル2が路面モデル6に接地したときのタイヤ周方向の接地中心の位置を示している。第1歪分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0044】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、第1歪分布をフーリエ変換して、第1周波数分布を求める(工程S6)。第1周波数分布は、歪振幅と、歪振幅に対応する周波数との関係を示すものである。工程S6では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、第1周波数分布を求める手段として機能させている。
【0045】
本実施形態の工程S6では、図6に示した第1歪分布の6成分の歪(D11~D31)をそれぞれフーリエ変換し、そのフーリエ変換した値に、タイヤの転動速度に基づいて求められる転動周波数(転動速度/転動時のタイヤの周長)を乗じている。これにより、タイヤの転動速度に基づいて、6成分の歪振幅と、歪振幅に対応する周波数との関係を示す第1周波数分布が求められる。転動周波数としては、乗用車用タイヤの場合、例えば、転動速度が80(km/h)において、10~12Hzである。なお、工程S6では、図6に示した第1歪分布から転動速度を考慮した時系列データを作成し、この時系列データをフーリエ変換することで、第1周波数分布が求められてもよい。図8は、第1周波数分布の一例を示すグラフである。
【0046】
6成分の歪振幅は、タイヤ子午線方向の垂直歪振幅C11、タイヤ厚さ方向の垂直歪振幅C22、タイヤ周方向の垂直歪振幅C33、タイヤ子午線方向を法線とする面の接線方向(タイヤ厚さ方向)の歪振幅C12、タイヤ厚さ方向を法線とする面の接線方向(タイヤ周方向)の歪振幅C23、及び、タイヤ周方向を法線とする面の接線方向(タイヤ子午線方向)の歪振幅C31が含まれる。第1周波数分布のうち6成分の歪振幅が相対的に大きい周波数において、6成分の歪振幅が、タイヤ転動時のトレッドゴムに主として作用する。第1周波数分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0047】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、粘弾性特性分布から、歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性を特定する(特定工程S7)。特定工程S7では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、第1粘弾性特性を特定する手段として機能させている。
【0048】
特定工程S7では、第1周波数分布の全体に対する歪振幅の割合が相対的に大きい周波数において、図5に示した粘弾性特性分布から、粘弾性特性(第1粘弾性特性)が特定される。このような周波数は、タイヤ転動時のトレッドゴムの歪振幅(6成分)の周波数と近似する。したがって、この周波数から特定される第1粘弾性特性は、タイヤ転動時のトレッドゴムの粘弾性特性に近似しうる。図9は、特定工程S7の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
本実施形態の特定工程S7では、先ず、第1寄与率と、第1寄与率に対応する周波数との関係を示す第1寄与率分布が求められる(第1工程S71)。第1寄与率は、図8に示した第1周波数分布の少なくとも一部について、歪振幅の合計値を求めた後に、その合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示したものである。各周波数の第1寄与率Rfは、下記式(1)を用いて計算することができる。
【0050】
【数1】
ここで、
f:周波数
min:最小周波数
max:最大周波数
C11f:周波数fでのタイヤ子午線方向の垂直歪振幅
C22f:周波数fでのタイヤ厚さ方向の垂直歪振幅
C33f:周波数fでのタイヤ周方向の垂直歪振幅
C12f:周波数fでのタイヤ子午線方向を法線とする面の接線方向(タイヤ厚さ方向)の歪振幅
C23f:周波数fでのタイヤ厚さ方向を法線とする面の接線方向(タイヤ周方向)の歪振幅
C31f:周波数fでのタイヤ周方向を法線とする面の接線方向(タイヤ子午線方向)の歪振幅
【0051】
上記式(1)の分母は、最小周波数fmin~最大周波数fmaxまでの範囲でのすべての歪振幅(C11~C31)の合計値である。分子は、各周波数fでの全ての歪振幅(C11~C31)の合計値である。この分子は、最小周波数fmin~最大周波数fmaxまでにおいて、周波数fごとに求められる。なお、分子及び分母において、歪振幅C12f、C23f、及び、C31fの合計値に1/3を乗じているのは、非圧縮材料において、せん断弾性係数Gが縦弾性係数Eの約1/3になることから、エネルギーの観点から見た場合に、せん断歪の影響を、垂直歪の影響の1/3と評価するためである。
【0052】
最小周波数fmin及び最大周波数fmaxは、適宜設定することができる。本実施形態の最小周波数fminは、図8に示した第1周波数分布の周波数の最小値(本例では、1Hz)が選択される。また、最大周波数fmaxには、第1周波数分布の周波数の最大値(本例では、300Hz)が選択される。上記式(1)により、最小周波数fminから最大周波数fmaxまでの第1寄与率分布が求められる。図10は、第1寄与率分布の一例を示すグラフである。
【0053】
第1寄与率分布は、最小周波数fmin~最大周波数fmaxまでの範囲でのすべての歪振幅(C11~C31)の合計値に対して、各周波数fでの全ての歪振幅(C11~C31)の合計値の割合を示している。図10において、10~80Hz程度の周波数の第1寄与率が相対的に大きくなっている。このような周波数(本例では、10~80Hz程度)は、タイヤ転動時のトレッドゴムに作用する歪振幅(6成分)の周波数に近似する。一方、図10において、90~300Hz程度の周波数の第1寄与率が相対的に小さくなっている。このため、第1工程S71では、図10に示した周波数90~300Hzの第1寄与率を、周波数100Hzに集約した第1寄与率分布(図示省略)が求められてもよい。これにより、第1寄与率が相対的に小さい周波数を省略して第1寄与率分布を簡略化することができる。第1寄与率分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0054】
次に、本実施形態の特定工程S7では、図5に示した粘弾性特性分布から、第1寄与率の影響が相対的に大きい周波数での粘弾性特性が、第1粘弾性特性として特定される(第2工程S72)。図11は、第2工程S72の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
本実施形態の第2工程S72では、先ず、第2寄与率と、第2寄与率に対応する周波数との関係を示す第2寄与率分布が求められる(工程S81)。第2寄与率は、同一の周波数ごとに、図5に示した粘弾性特性と、図10に示した第1寄与率とを乗じたものである。図12は、第2寄与率分布の一例を示すグラフである。
【0056】
第2寄与率は、図5に示した粘弾性特性を、図10に示した第1寄与率で重み付けしたものである。上述したように、図5に示した粘弾性特性は、周波数依存性を有している。一方、図10に示した第1寄与率は、図8に示した第1周波数分布の各周波数の歪振幅の割合を示したものである。この第1寄与率が相対的に大きい部分の周波数(本例では、10~80Hz程度)は、タイヤ転動時において、トレッドゴムに作用する歪振幅(6成分)の周波数に近似する。したがって、第2寄与率は、第1寄与率(タイヤ転動時のトレッドゴムに作用する歪振幅)の影響を考慮した粘弾性特性を示している。
【0057】
第2寄与率分布において、第2寄与率が大きいほど(図12では、周波数が10~80Hz程度の第2寄与率)、図5に示した粘弾性特性は、図10に示した第1寄与率(図8に示した第1周波数分布の歪振幅)の影響を相対的に大きく受けていることを示している。一方、第2寄与率分布は、第2寄与率が小さいほど(図12では、周波数が100~300Hz程度の第2寄与率)、粘弾性特性は、第1寄与率(第1周波数分布の歪振幅)の影響が相対的に小さいことを示している。第2寄与率分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0058】
上述したように、図10に示した第1寄与率分布において、90~300Hz程度の周波数の第1寄与率が相対的に小さくなっている。このため、図10に示した周波数90~300Hzの第1寄与率を、周波数100Hzに集約した第1寄与率分布(図示省略)を用いて、第2寄与率分布が求められてもよい。図13は、本発明の他の実施形態の第2寄与率分布を示すグラフである。
【0059】
このように、図10に示した周波数90~300Hzの第1寄与率を、周波数100Hzに集約した第1寄与率分布(図示省略)が用いられることにより、第1寄与率に乗じられる図5に示した粘弾性特性の周波数の範囲を小さく(周波数:1~100Hz)することができる。これにより、第2寄与率分布を容易に取得することができる。
【0060】
次に、本実施形態の第2工程S72では、図12(又は図13)に示した第2寄与率分布の重心周波数を求めて、重心周波数に対応する粘弾性特性が、第1粘弾性特性として特定される(工程S82)。重心周波数は、第2寄与率分布の代表値(加重平均値)であり、周波数と第2寄与率との積の合計値を、第2寄与率の合計値で除することで求められる。図12において、本実施形態の重心周波数Kは、50Hzであり、周波数10~300Hzにおいて、第1寄与率(図8に示した第1周波数分布の歪振幅)の影響が相対的に大きい。なお、重心周波数で、第1寄与率(第1周波数分布の歪振幅)の影響が相対的に大きい周波数を特定できるのは、一般的なタイヤの転動時において、第1寄与率が大きい周波数に偏りがある(本例では、10~80Hz程度)からである。
【0061】
このように、重心周波数Kは、図5に示した粘弾性特性分布において、図10に示した第1寄与率(図8に示した第1周波数分布の歪振幅)の影響を相対的に大きく受ける粘弾性特性の周波数として特定することができる。さらに、重心周波数Kは、第1寄与率の影響が相対的に小さい粘弾性特性の周波数も考慮されている。このような重心周波数により、粘弾性特性への第1寄与率の全体の影響を考慮することができる。
【0062】
次に、本実施形態の工程S82では、図5に示した粘弾性特性分布から、重心周波数Kに対応する粘弾性特性を、第1粘弾性特性V1として特定する。上述したように、重心周波数Kは、図5に示した粘弾性特性分布において、図10に示した第1寄与率(図8に示した第1周波数分布の歪振幅)の影響を相対的に大きく受ける粘弾性特性の周波数として特定されている。したがって、工程S82では、重心周波数Kに対応する粘弾性特性が特定されることにより、粘弾性特性の周波数依存性と、第1寄与率(即ち、第1周波数分布の歪振幅)との双方を考慮した第1粘弾性特性V1を求めることができる。
【0063】
本実施形態の特定工程S7では、損失正接tanδの粘弾性特性分布、及び、貯蔵弾性率E'の粘弾性特性分布から、損失正接tanδの第1粘弾性特性V1、及び、貯蔵弾性率E'の第1粘弾性特性(図示省略)がそれぞれ特定される。これらの第1粘弾性特性V1は、コンピュータ1に記憶される。
【0064】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、第1粘弾性特性V1と、第1歪分布とに基づいて、タイヤの転がり抵抗を計算する(工程S8)。工程S8では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、タイヤの転がり抵抗を計算する手段として機能させている。
【0065】
工程S8では、先ず、上記特許文献1と同様に、下記式(2)に基づいて、エネルギーロスが計算される。
W=Σπ・E'・(εp /2)2 ・tanδ …(2)
ここで、
Σ:全タイヤ座標系についての総和
E':各要素F(i)の貯蔵弾性率
εp:周方向で隣り合う要素F(i)、F(i)間での歪の差の絶対値を、タイヤモデル2の1周分について積算した積算値の半分の値
tanδ:各要素の損失正接
【0066】
上記式(2)を用いたエネルギーロスの計算方法等については、上記特許文献1に記載のとおりである。なお、図4に示したトレッドゴムモデル3を構成する要素F(i)については、上記式(2)において、貯蔵弾性率E'には、特定工程S7で求められた貯蔵弾性率E'の第1粘弾性特性(図示省略)が用いられる。さらに、損失正接tanδには、特定工程S7で求められた損失正接tanδの第1粘弾性特性V1(図5に示す)が用いられる。
【0067】
トレッドゴムモデル3以外のゴムモデル(例えば、サイドウォールゴムモデル4(図4に示す))等を構成する要素F(i)の貯蔵弾性率E'及び損失正接tanδについては、そのゴムと同一の配合を有するゴムサンプルを、工程S3に記載した上記条件のうち、周波数の条件を予め定められた周波数(例えば、10Hz)のみを変更した条件での測定結果が用いられる。
【0068】
次に、工程S8では、上記特許文献1と同様に、下記式(3)に基づいて、タイヤの転がり抵抗が計算される。なお、下記式(3)を用いた転がり抵抗の計算方法等については、上記特許文献1に記載のとおりである。
RR={Σ(W・V)}/2πR …(3)
ここで、
W:エネルギーロス
V:各要素F(i)の体積
R:タイヤの荷重半径
Σ:各要素のエネルギーロスWと体積Vとの積について、全ての要素F(i)の総和
【0069】
本実施形態の計算方法では、タイヤの転がり抵抗の計算に、粘弾性特性の周波数依存性を考慮して特定された第1粘弾性特性V1(本例では、貯蔵弾性率E'及び損失正接tanδ)が用いられている。したがって、本実施形態の計算方法では、トレッドゴムの周波数依存性を考慮して転がり抵抗を計算することができるため、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。また、本実施形態の計算方法では、転がり抵抗への影響が相対的に大きいトレッドゴムの周波数依存性のみが考慮されるため、トレッドゴムモデル3以外のゴムモデル(例えば、サイドウォールゴムモデル4等)の周波数依存性も考慮される場合に比べて、計算時間を短縮することができる。
【0070】
次に、本実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、タイヤの転がり抵抗が許容範囲内か否かを判断する(工程S9)。工程S9では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、タイヤの転がり抵抗が許容範囲内か否かを判断する手段として機能させている。許容範囲については、タイヤに求められる転がり抵抗に応じて、適宜選択することができる。
【0071】
工程S9において、転がり抵抗が許容範囲内である場合(工程S9において、「Y」)、タイヤモデル2の構造、及び、ゴムサンプルの配合に基づいて、タイヤが製造される(工程S10)。他方、工程S9において、転がり抵抗が許容範囲外である場合(工程S9において、「N」)、図4に示したタイヤモデル2の構造、又は、ゴムサンプルの配合を変更して(工程S11)、工程S1~工程S9が再度実施される。したがって、本実施形態の計算方法では、転がり抵抗が良好なタイヤを確実に設計することができる。
【0072】
本実施形態の計算方法では、トレッドゴムの周波数依存性を考慮して特定された第1粘弾性特性V1(図5に示す)が用いられたが、このような態様に限定されない。例えば、トレッドゴム以外のゴム(例えば、サイドウォールゴム等)の周波数依存性を考慮して特定された第1粘弾性特性(図示省略)が用いられてもよい。例えば、サイドウォールゴムの第1粘弾性特性を特定するには、トレッドゴムの第1粘弾性特性V1と同様に、先ず、サイドウォールゴムモデル4を構成する要素F(i)の第1歪分布を求めて、第1歪分布をフーリエ変換した第1周波数分布が求められる。そして、サイドウォールゴムの粘弾性特性分布から、第1周波数分布の歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性が特定される。
【0073】
このような計算方法では、トレッドゴム以外のゴム(例えば、サイドウォールゴム等)の周波数依存性を考慮して特定された第1粘弾性特性が用いられることにより、トレッドゴム以外のゴムの周波数依存性を考慮して転がり抵抗を計算することができる。これにより、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。さらに、計算方法では、トレッドゴムの第1粘弾性特性V1(図5に示す)とともに、トレッドゴム以外のゴムの第1粘弾性特性が特定されることにより、より現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。
【0074】
これまでの実施形態では、図12に示した第2寄与率分布の重心周波数Kに対応する粘弾性特性を、第1粘弾性特性V1(図5に示す)として特定されたが、このような態様に限定されない。例えば、第2寄与率が相対的に大きい周波数(一例として、第2寄与率が最大となる周波数(25Hz))を特定し、その周波数に対応する粘弾性特性を、第1粘弾性特性V1として特定されてもよい。このような第1粘弾性特性V1も、粘弾性特性の周波数依存性を考慮して特定されるため、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。
【0075】
これまでの実施形態の第1工程では、図8に示した第1周波数分布の全周波数を対象に、図10に示した第1寄与率分布が求められたが、このような態様に限定されない。図8に示されるように、第1周波数分布では、周波数が高い部分(例えば、100~300Hz)の歪振幅が小さくなっており、粘弾性特性への影響が小さい。このため、第1工程S71では、第1周波数分布のうち、一部の周波数の範囲で選択した抽出周波数分布を用いて、第1寄与率分布が求められてもよい。このような抽出周波数分布が求められることにより、第1寄与率分布、及び、第2寄与率分布(図11に示す)の計算を短縮することが可能となる。図14は、本発明の他の実施形態の第1工程S71の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0076】
この実施形態の第1工程S71では、先ず、第1周波数分布のうち、一部の周波数の範囲で選択した抽出周波数分布が特定される(工程S91)。抽出周波数分布の特定は、適宜設定することができる。図8に示されるように、第1周波数分布では、周波数の下限値(本例では、10Hz)において、歪振幅が相対的に大きくなっている。このため、この実施形態において、抽出周波数分布の周波数の下限値は、第1周波数分布の周波数の下限値に設定される。一方、抽出周波数分布の周波数の上限値が大きいと、選択される周波数の範囲が大きくなり、計算時間を十分に短縮できないおそれがある。このような観点より、抽出周波数分布の周波数の上限値は、第1周波数分布の上限値よりも小さい値(本例では、100Hz)が選択されるのが望ましい。図15は、抽出周波数分布の一例を示すグラフである。抽出周波数分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0077】
次に、この実施形態の第1工程S71では、図15に示した抽出周波数分布を逆フーリエ変換した第2歪分布が求められる(工程S92)。工程S92では、抽出周波数分布を逆フーリエ変換することで、図6に示した第1歪分布と同様に、タイヤが転動したときの歪と、歪に対応するタイヤの回転角度との関係を示す第2歪分布(図示省略)が求められる。図16は、第2歪分布の一例を示すグラフである。第2歪分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0078】
次に、この実施形態の第1工程S71では、図16の第2歪分布の歪と、図6の第1歪分布の歪との差が求められる(工程S93)。第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差については、適宜求めることができる。この実施形態では、6成分の歪ごとに、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差が求められる。下記式(4)は、タイヤ子午線方向の垂直歪D11について、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dを求めるための計算式の一例を示している。
【0079】
【数2】
ここで、
a:回転角度
amin:最小回転角度
amax:最大回転角度
D11:第1歪分布の回転角度aでのタイヤ子午線方向の垂直歪
J11:第2歪分布の回転角度aでのタイヤ子午線方向の垂直歪
【0080】
上記式(4)において、差Dは、第2歪分布の垂直歪J11と第1歪分布の垂直歪C11との差の絶対値の合計値について、第1歪分布のタイヤ子午線方向の垂直歪C11の合計値に対する割合を示している。上記式(4)において、差Dが小さいほど、第2歪分布の歪と、第1歪分布の幅とが近似しており、図15に示した抽出周波数分布を用いて、図10に示した第1寄与率分布を求めても、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができることを示している。6成分の歪ごとに求められた差Dは、コンピュータ1に記憶される。
【0081】
次に、この実施形態の第1工程S71では、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dが、予め定められた閾値以下であるか否かが判断される(工程S94)。工程S94では、6成分の歪ごとに求められた差Dの全てが、閾値以下であるか否かが判断される。閾値については、求められる計算結果の精度等に基づいて、適宜設定される。この実施形態の閾値は、0.01(即ち、1%)に設定される。
【0082】
工程S94において、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dが、閾値以下である場合(工程S94において、「Y」)、図14に示した抽出周波数分布を用いて、図10に示した第1寄与率分布が求められる(工程S95)。これにより、この実施形態の計算方法では、計算対象の周波数の範囲を小さくできるため、第1寄与率分布、及び、図12に示した第2寄与率分布の計算時間を短縮することができる。
【0083】
一方、工程S94において、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dが、閾値を超える場合(工程S94において、「N」)、異なる周波数の範囲で新たな抽出周波数分布が選択され(工程S96)、工程S92~工程S94が実施される。
【0084】
図15に示した抽出周波数分布の周波数の範囲が大きいほど、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dが小さくなる傾向にある。このため、工程S96では、当初の抽出周波数(図14に示す)よりも大きい周波数の範囲で、新たな抽出周波数分布が選択されるのが望ましい。これにより、この実施形態の第1工程S71では、第2歪分布の歪と、第1歪分布の歪との差Dが、閾値以下となる抽出周波数分布を確実に選択することができため、計算時間を短縮しつつ、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができる。
【0085】
これまでの実施形態では、粘弾性特性の周波数依存性を考慮して、タイヤの転がり抵抗が計算されたが、このような態様に限定されない。トレッドゴムは、粘弾性特性の周波数依存性とともに、温度依存性をさらに有している。このため、この実施形態の計算方法では、トレッドゴムの周波数依存性と温度依存性とを考慮して、タイヤの転がり抵抗が計算される。図17は、本発明のさらに他の実施形態のタイヤの転がり抵抗の計算方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0086】
この実施形態の工程S3では、コンピュータ1に、任意の温度について、粘弾性特性と周波数との関係を特定する粘弾性特性分布が入力される。粘弾性特性としては、これまでの実施形態と同様のもの(本例では、損失正接tanδ及び貯蔵弾性率E')が採用される。また、粘弾性特性分布の測定方法については、任意の温度で測定されることを除いて、これまでの実施形態と同一の方法が採用される。なお、任意の温度については、適宜選択することができ、例えば、30℃、50℃及び70℃が選択される。
【0087】
図18は、任意の温度について、粘弾性特性と周波数との関係を特定する粘弾性特性分布(損失正接tanδ)の一例を示すグラフである。図18に示されるように、トレッドゴムの粘弾性特性(損失正接tanδ及び貯蔵弾性率E')は、トレッドゴムに与えられる変形の周波数に応じて変化する周波数依存性、及び、温度に応じて変化する温度依存性を有している。したがって、転がり抵抗の計算には、粘弾性特性の周波数依存性、及び、温度依存性の双方を反映させることが重要である。
【0088】
この実施形態の工程S3では、図5に示した粘弾性特性分布に代えて、図18に示した粘弾性特定分布が入力される。なお、この実施形態の特定工程S7では、これまでの実施形態の特定工程S7と同様に、図18に示した粘弾性特性分布のうち、30℃で測定された粘弾性特定分布が用いられる。
【0089】
この実施形態では、図18に示した粘弾性特性分布が、粘弾性特性、温度及び周波数の関係を示す近似式で定義される。近似式については、適宜設定することができる。本実施形態の近似式には、下記式(5)が用いられる。
【0090】
【数3】
ここで、
0:温度シフト前の周波数
αT:シフトファクター
f:温度シフト後の周波数
Δt:基準温度に対する温度変化量
a1~a4、C1及びC2:フィッティングパラメータ
【0091】
図18に示した基準温度(本例では、30℃)の粘弾性特性分布に対して、他の温度(本例では、50℃及び70℃)の粘弾性特性分布を移動させると、それらの粘弾性特性分布は、基準温度での粘弾性特性分布(マスターカーブM)に重なる。上記式(5)は、WLF則に基づいて、基準温度での粘弾性特性分布(マスターカーブM)から、任意の温度の粘弾性特性分布を求めるためのものである。上記式(5)では、損失正接tanδの近似式が代表して示されているが、貯蔵弾性率E'の近似式も同様に定義されうる。
【0092】
上記式(5)において、温度変化量Δtは、図18に示した粘弾性特性分布の各温度(本例では、30℃、50℃及び70℃)から基準温度(本例では、30℃)を減じたものである。なお、基準温度については、本例のような30℃に限定されることなく、適宜設定されうる。シフトファクターαTは、温度-周波数換算式(WLF換算式)に基づくものである。この実施形態の工程S3では、任意の温度の粘弾性特性分布が、マスターカーブMに重なるように、上記式(5)のフィッティングパラメータa1~a4、C1及びC2が求められる。
【0093】
上記のフィッティングパラメータが求められた上記式(5)に、周波数及び温度(即ち、基準温度からの温度変化量Δt)が代入されることで、任意の周波数及び温度(すなわち、図18の周波数及び温度とは異なるものを含む)での粘弾性特性が求められうる。図19は、マスターカーブに基づいて、任意の温度での粘弾性特性と周波数との関係を特定した粘弾性特性分布の一例を示すグラフである。図19では、20℃、30℃、50℃及び70℃での粘弾性特性分布が代表して示されている。上記の近似式は、コンピュータ1に記憶される。
【0094】
次に、図17に示されるように、この実施形態の計算方法では、タイヤの転がり抵抗を計算する工程S8の後に、コンピュータ1(図1に示す)が、図4に示したタイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度及び周波数と、粘弾性特性分布とに基づいて、第1粘弾性特性V1を更新する(更新工程S12)。更新工程S12では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1を、第1粘弾性特性V1を更新する手段として機能させている。
【0095】
この実施形態の更新工程S12において、第1粘弾性特性V1が更新される要素F(i)については、適宜選択することができる。この実施形態では、図4に示したトレッドゴムモデル3の各要素F(i)について、第1粘弾性特性V1が更新される。なお、トレッドゴムモデル3とともに、他のモデル(サイドウォールゴムモデル4等)の要素F(i)の第1粘弾性特性V1が更新されてもよい。図20は、更新工程S12の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0096】
この実施形態の更新工程S12では、先ず、図3及び図4に示したタイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度が計算される(工程S21)。この実施形態の工程S21では、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)について、発熱量と放熱量との熱収支が計算されることにより、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度が計算される。
【0097】
この実施形態の工程S21において、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の発熱量の計算には、タイヤの転がり抵抗を計算する工程S8でのタイヤモデル2が用いられる。したがって、工程S21では、特定工程S7で特定された第1粘弾性特性V1(本例では、貯蔵弾性率E'及び損失正接tanδ)に基づいて、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度が計算される。また、工程S21では、図3に示したタイヤモデル2が路面モデル6に静的に接触した状態において、各要素F(i)のタイヤ周方向の歪変動量を用いて、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の発熱量が計算される。
【0098】
タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の放熱量は、タイヤモデル2の外面及びタイヤ内腔面にそれぞれ設定された熱伝達率、空気(外気)の温度、及び、各要素F(i)の熱伝導率に基づいて計算される。
【0099】
発熱量、放熱量及び温度の計算は、例えば、文献(特開2017-009482号公報)に記載の手順に基づいて行うことができる。また、発熱量及び放熱量の計算は、例えば、上記の有限要素解析アプリケーションソフトを用いることによって、容易に行うことができる。タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度は、コンピュータ1に記憶される。
【0100】
次に、図20に示されるように、この実施形態の更新工程S12では、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の周波数が計算される(周波数計算工程S22)。図21は、周波数計算工程S22の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0101】
この本実施形態の周波数計算工程S22では、先ず、各要素F(i)において、タイヤモデル2が転動したときの第3歪分布が求められる(工程S31)。工程S31では、タイヤの転がり抵抗を計算する工程S8でのタイヤモデル2が用いられる。したがって、工程S31でのタイヤモデル2は、第1歪分布(図6に示す)を求める工程S5で用いられたタイヤモデル2とは異なり、特定工程S7で特定された第1粘弾性特性V1(本例では、貯蔵弾性率E'及び損失正接tanδ)が定義されている。また、工程S31では、第1歪分布(図6に示す)を求める工程S5と同様の手順に基づいて、第3歪分布(図示省略)が求められる。第3歪分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0102】
次に、この実施形態の周波数計算工程S22では、各要素F(i)において、第3歪分布(図示省略)をフーリエ変換して、第2周波数分布が求められる(工程S32)。第2周波数分布は、要素F(i)において、タイヤモデル2が転動したときの歪振幅と、歪振幅に対応する周波数との関係を示すものである。工程S32では、第1周波数分布(図8に示す)を求める工程S6と同様の手順に基づいて、第2周波数分布(図示省略)が求められる。第2周波数分布は、コンピュータ1に記憶される。
【0103】
次に、この実施形態の周波数計算工程S22では、各要素F(i)において、第2周波数分布(図示省略)の全体に対する歪振幅の割合が相対的に大きい周波数を、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の周波数として特定する(工程S33)。工程S33では、先ず、第1寄与率分布(図10に示す)を求める第1工程S71(図9に示す)と同様の手順に基づいて、第3寄与率と、第3寄与率に対応する周波数との関係を示す第3寄与率分布が求められる。
【0104】
第3寄与率は、工程S32で求められた第2周波数分布(図示省略)の少なくとも一部について、歪振幅の合計値を求めた後に、その合計値に対する各周波数での歪振幅の割合を示したものである。各周波数の第3寄与率は、上記式(1)を用いて計算することができる。図22は、第3寄与率分布の一例を示すグラフである。
【0105】
この実施形態の第3寄与率分布は、第1寄与率分布(図10に示す)と同様に、第2周波数分布(図示省略)の最小周波数fmin~最大周波数fmaxまでの範囲でのすべての歪振幅(C11~C31)の合計値に対して、各周波数fでの全ての歪振幅(C11~C31)の合計値の割合を示している。そして、本実施形態の工程S33では、第3寄与率分布の重心周波数Lが、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の周波数として特定される。このような周波数(重心周波数L)は、要素F(i)ごとに特定される。各要素F(i)で特定された周波数は、コンピュータ1に記憶される。
【0106】
次に、図20に示されるように、この実施形態の更新工程S12では、タイヤモデル2の転動時の要素F(i)の温度及び周波数を、上記式(5)の近似式に代入して、第1粘弾性特性A1が計算される(工程S23)。工程S23では、タイヤモデル2の各要素F(i)について、工程S21で求められた温度(基準温度からの温度変化量Δt)と、周波数計算工程S22で求められた周波数(本例では、図22の重心周波数L)とが用いられる。これにより、工程S23では、タイヤモデル2の各要素F(i)について、転動時の温度及び周波数での第1粘弾性特性A1がそれぞれ計算されうる。計算された第1粘弾性特性A1は、コンピュータ1に記憶される。
【0107】
次に、図20に示されるように、この実施形態の更新工程S12では、タイヤモデル2の各要素F(i)について、第1粘弾性特性A1が更新される(工程S24)。この実施形態の工程S24では、図3及び図4に示したタイヤモデル2の各要素F(i)について、工程S8で用いられた第1粘弾性特性A1が、工程S23で計算された第1粘弾性特性A1に更新される。更新された第1粘弾性特性A1は、コンピュータ1に記憶される。
【0108】
次に、図17に示されるように、この実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、更新された第1粘弾性特性に基づいて、タイヤの転がり抵抗を再計算する(再計算工程S13)。再計算工程S13では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1(図1に示す)を、タイヤの転がり抵抗を再計算する手段として機能させている。図23は、再計算工程S13の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0109】
この実施形態の再計算工程S13では、先ず、第1粘弾性特性A1が更新されたタイヤモデル2(図3及び図4に示す)について、タイヤモデル2の要素F(i)の第4歪分布が求められる(工程S41)。この実施形態の工程S41では、これまでの実施形態の第1歪分布(図6に示す)を求める工程S5と同様の処理手順に基づいて、各要素F(i)の第4歪分布(図示省略)が計算される。
【0110】
次に、この実施形態の再計算工程S13では、更新された第1粘弾性特性A1と、工程S41で計算された第4歪分布(図示省略)とに基づいて、タイヤの転がり抵抗が計算される(工程S42)。この実施形態の工程S42では、更新された第1粘弾性特性A1と、第4歪分布とが用いられることを除き、これまでの実施形態の工程S8での手順に基づいて、タイヤの転がり抵抗が計算される。
【0111】
この実施形態の再計算工程S13では、タイヤモデル2(図3及び図4に示す)の第1粘弾性特性A1が、転動時の温度及び周波数に基づいて更新されているため、温度依存性と周波数依存性とを有する実際の粘弾性特性を考慮した転がり抵抗の計算が可能となる。タイヤモデル2の転がり抵抗は、コンピュータ1に記憶される。
【0112】
次に、図17に示されるように、この実施形態の計算方法では、コンピュータ1が、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が予め定められた範囲内に収束したか否かを判断する(工程S14)。工程S14では、コンピュータプログラムが、演算処理装置によって実行されることにより、コンピュータ1(図17に示す)を、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束したか否かを判断する手段として機能させている。
【0113】
この実施形態の工程S14では、タイヤモデル2の各要素F(i)について、今回の再計算工程S13で計算された温度と、前回の再計算工程S13で計算された温度との差が、予め定められた範囲(温度範囲)内にあるときに、温度が収束したと判断される。したがって、再計算工程S13が複数回行われていない場合には、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束していないものとして判断される。収束したか否かを判断するための温度範囲については、適宜設定することができる。この実施形態の温度範囲は、例えば、±1℃に設定される。
【0114】
工程S14において、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束したと判断された場合(工程S14で、「Y」)、次の工程S9が実施される。一方、工程S14において、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束していないと判断された場合(工程S14において、「N」)、更新工程S12~工程S14が再度実施される。なお、次回の更新工程S12では、今回の再計算工程S13で用いられたタイヤモデル2について、転動時の要素F(i)の温度及び周波数が求められ、これらの温度及び周波数に基づいて、第1粘弾性特性V1が更新される。
【0115】
このように、この実施形態の計算方法では、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束するまで、第1粘弾性特性V1を更新しながら、タイヤモデル2の転がり抵抗が再計算される。したがって、この実施形態では、タイヤモデル2の要素F(i)の温度が収束した定常温度での転がり抵抗を、高い精度で計算することができる。これにより、この実施形態の計算方法では、工程S10において、所望の転がり抵抗を有するタイヤを、より確実に設計することが可能となる。
【0116】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0117】
[実施例A]
トレッドゴムの配合が異なる2つのタイヤA及びタイヤBが製造された(実験例)。これらのタイヤA及びタイヤBについて、転がり抵抗試験機を用い、速度80km/h、荷重4.82kN、及び、内圧210kPaの条件にて測定し、タイヤAの転がり抵抗を100とする指数が求められた。数値が小さいほど、転がり抵抗が小さく、良好である。
【0118】
タイヤA及びタイヤBの転がり抵抗が計算された(実施例、及び、比較例)。実施例では、図2に示した処理手順にしたがって、図5に示した粘弾性特性分布から、図8に示した第1周波数分布の歪振幅の影響を相対的に大きく受ける第1粘弾性特性が特定された。第1粘弾性特性は、図12に示した第2寄与率分布の重心周波数に対応する粘弾性特性で特定された。そして、実施例では、第1粘弾性特性と、第1歪分布とに基づいて、タイヤの転がり抵抗が計算された。そして、実施例のタイヤA及びタイヤBの転がり抵抗について、実験例のタイヤAの転がり抵抗を100とする指数が求められた。
【0119】
比較例では、上記特許文献1の手順に基づいて、トレッドゴムの周波数依存性を考慮せずに特定された粘弾性特性を用いて、タイヤの転がり抵抗が計算された。そして、比較例のタイヤA及びタイヤBの転がり抵抗について、実験例のタイヤAの転がり抵抗を100とする指数が求められた。共通仕様等は、次のとおりである。
タイヤサイズ:205/55R16
リムサイズ:16×6.5J
比較例の粘弾性特性の測定条件:
温度30℃
初期歪:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張
じテストの結果を、表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
テストの結果、実験例では、タイヤAの転がり抵抗が、タイヤBの転がり抵抗よりも小さい測定結果が得られた。実施例では、実験例の測定結果と同様に、タイヤAの転がり抵抗が、タイヤBの転がり抵抗よりも小さい計算結果が得られた。一方、比較例では、実験例の測定結果とは異なり、タイヤA及びタイヤBの転がり抵抗が同一となる計算結果が得られた。したがって、実施例では、比較例に比べて、現実のタイヤの転がり抵抗と相関の高い計算結果を得ることができた。さらに、実施例の転がり抵抗では、比較例の転がり抵抗に比べて、実験例の転がり抵抗に近似した。したがって、実施例は、トレッドゴムの周波数依存性を考慮して、タイヤの転がり抵抗を高い精度で計算することができた。
【0122】
[実施例B]
タイヤサイズ及び/又はトレッドゴムの配合が異なるタイヤC~Iが製造された(実験例)。そして、これらのタイヤC~Iについて、転がり抵抗試験機を用い、速度80km/h及び下記の条件で転がり抵抗が測定され、タイヤCの転がり抵抗を100とする指数が求められた。数値が小さいほど、転がり抵抗が小さいことを示している。
タイヤC~E:
タイヤサイズ:205/55R16
リムサイズ:16×6.5J
内圧:210kPa
荷重:4.82kN
トレッドゴムの配合:タイヤC~Eで互いに異なる
タイヤF~G:
タイヤサイズ:195/65R15
リムサイズ:15×6.5J
内圧:210kPa
荷重:4.82kN
トレッドゴムの配合:タイヤH及びIで互いに異なる
タイヤH~I:
タイヤサイズが185/60R15
リムサイズ:15×5.5J
内圧:210kPa
荷重:4.82kN
トレッドゴムの配合:タイヤH及びIで互いに異なる
【0123】
次に、タイヤC~Iの転がり抵抗が計算された(実施例2、及び、比較例2)。実施例2では、上記の実施例Aでの実施例と同様の手順に基づいて、タイヤC~Iの転がり抵抗が計算された後に、図17に示した処理手順に基づいて、タイヤモデルの転動時の要素の温度及び周波数と、図18に示した粘弾性特性分布とに基づいて、第1粘弾性特性が更新された。さらに、実施例2では、更新された第1粘弾性特性に基づいて、タイヤC~Iの転がり抵抗が再計算された。転がり抵抗の再計算は、各要素の温度が、予め定められた範囲内(±1℃)に収束するまで実施された。そして、実施例2のタイヤC~Iの転がり抵抗について、実験例のタイヤCの転がり抵抗を100とする指数が求められた。
【0124】
比較例2では、実施例Aでの比較例と同様の手順に基づいて、トレッドゴムの周波数依存性を考慮せずに特定された粘弾性特性を用いて、タイヤの転がり抵抗が計算された。そして、比較例2のタイヤC~Iの転がり抵抗について、実験例のタイヤCの転がり抵抗を100とする指数が求められた。
テストの結果を、表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
テストの結果、実施例2は、比較例2に比べて、実験例の転がり抵抗に近似させることができた。したがって、実施例2は、タイヤの転がり抵抗を高い精度で計算することができた。さらに、実施例2は、温度依存性と周波数依存性とを有する実際の粘弾性特性を考慮して、転がり抵抗が計算されたため、タイヤの転がり抵抗を高い精度で計算することができた。
【符号の説明】
【0127】
S1 タイヤモデルを入力する工程
S3 粘弾性特性分布を入力する工程
S5 第1歪分布を求める工程
S6 第1周波数分布を求める工程
S7 第1粘弾性特性を特定する工程
S8 タイヤの転がり抵抗を計算する工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23