(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】吐出装置、吐出制御装置及び吐出制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2019214721
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松月 優人
(72)【発明者】
【氏名】田口 義之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 力
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 邦生
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 蒔
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151774(JP,A)
【文献】特開2009-262561(JP,A)
【文献】特開2018-162161(JP,A)
【文献】特開2003-211770(JP,A)
【文献】米国特許第06068362(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向へ搬送される記録媒体に液滴を吐出して、検知画像を形成する第一吐出部と、
前記第一吐出部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記検知画像を検知する
第一検知部と、
前記
第一検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体に液滴を吐出する第二吐出部と、
前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記検知画像を検知する第二検知部と、
基準時点から該検知画像が前記
第一検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との
第一差分
と、前記第一検知部によって前記検知画像が検知されてから前記第二検知部によって該検知画像が検知されるまでの検知時間と設定時間との第二差分と、から、前記記録媒体の前記搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、吐出タイミングを遅延させる遅延制御を前記第二吐出部に対して行う制御部と、
を備える吐出装置。
【請求項2】
前記第二検知部は、前記第二吐出部に対する前記搬送方向の下流側に配置されている
請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記第一吐出部は、
前記記録媒体の予め定められたページに前記検知画像を形成し、
前記制御部は、
前記予め定められたページの次のページに対して前記第二吐出部が吐出する吐出タイミングにおいて、前記遅延制御を行う
請求項2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記第二検知部は、前記第二吐出部に対する前記搬送方向の上流側に配置されている
請求項1に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側であって、前記第二検知部に対する前記搬送方向の上流側に配置され、前記記録媒体に液滴を吐出する第三吐出部
を備える
請求項4に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第一差分と前記第二差分とから前記伸び量を予測し、前記遅延制御を前記第三吐出部に対して行う
請求項5に記載の吐出装置。
【請求項7】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
搬送される記録媒体への第一吐出部の液滴の吐出により検知画像を形成してから該検知画像が第一検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との第一差分と、前記第一検知部によって前記検知画像が検知されてから第二検知部によって該検知画像が検知されるまでの検知時間と設定時間との第二差分と、から、前記記録媒体の搬送方向への伸び量を予測し、
該伸び量分、前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置された第二吐出部の吐出タイミングを遅延させる遅延制御を行う
吐出制御装置。
【請求項8】
コンピュータに、
搬送される記録媒体への第一吐出部の液滴の吐出により検知画像を形成してから該検知画像が第一検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との第一差分と、前記第一検知部によって前記検知画像が検知されてから第二検知部によって該検知画像が検知されるまでの検知時間と設定時間との第二差分と、から、前記記録媒体の搬送方向への伸び量を予測し、
該伸び量分、前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置された第二吐出部の吐出タイミングを遅延させる遅延制御を行う処理を実行させるための吐出制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置、吐出制御装置及び吐出制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録紙を搬送する記録紙搬送ローラと、この記録紙搬送ローラによる記録紙の搬送時に、該記録紙上の同一領域に各々異なる色でのライン単位の印画記録を行うカラー画像記録装置において、前記記録手段の色順をk、c、m、yとし、前記記録紙にk色の印画記録と同時に一定時間間隔でレジストマークを記録し、前記レジストマークを読み取る読取手段と、前記レジストマークの読み取り情報から記録紙の移動速度変位を演算する演算手段と、演算された記録紙の移動速度変位に基づいて、c、m、y色の前記記録手段によるライン単位の印画記録タイミングの補正データを作成するデータ作成手段と、前記データ作成手段により作成された補正データに基づいてc、m、y色の前記記録手段による印画記録タイミングを制御する制御手段とを有することを特徴とするカラー画像記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、搬送される記録媒体に、第一吐出部から液滴が吐出されて記録媒体が膨潤すると、記録媒体が搬送方向へ伸びる。記録媒体が搬送方向へ伸びると、第一吐出部による記録媒体への吐出位置と第二吐出部による記録媒体への吐出位置との位置ズレが生じる場合がある。
【0005】
本発明は、記録媒体の搬送方向への伸び量に関わらず、第二吐出部の吐出タイミングが一定である構成に比べ、第一吐出部による記録媒体への吐出位置と第二吐出部による記録媒体への吐出位置との位置ズレを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、搬送方向へ搬送される記録媒体に液滴を吐出して、検知画像を形成する第一吐出部と、前記第一吐出部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記検知画像を検知する検知部と、前記検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体に液滴を吐出する第二吐出部と、基準時点から該検知画像が前記検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との差分から、前記記録媒体の前記搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、吐出タイミングを遅延させる遅延制御を前記第二吐出部に対して行う制御部と、を備える。
【0007】
第2態様は、前記検知部としての第一検知部と、前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置され、前記検知画像を検知する第二検知部と、を備え、前記制御部は、前記差分としての第一差分と、前記第一検知部によって前記検知画像が検知されてから前記第二検知部によって該検知画像が検知されるまでの検知時間と設定時間との第二差分と、から前記伸び量を予測し、前記遅延制御を前記第二吐出部に対して行う。
【0008】
第3態様では、前記第二検知部は、前記第二吐出部に対する前記搬送方向の下流側に配置されている。
【0009】
第4態様では、前記第一吐出部は、前記記録媒体の予め定められたページに前記検知画像を形成し、前記制御部は、前記予め定められたページの次のページに対して前記第二吐出部が吐出する吐出タイミングにおいて、前記遅延制御を行う。
【0010】
第5態様では、前記第二検知部は、前記第二吐出部に対する前記搬送方向の上流側に配置されている。
【0011】
第6態様では、前記第一検知部に対する前記搬送方向の下流側であって、前記第二検知部に対する前記搬送方向の上流側に配置され、前記記録媒体に液滴を吐出する第三吐出部を備える。
【0012】
第7態様では、前記制御部は、前記第一差分と前記第二差分とから前記伸び量を予測し、前記遅延制御を前記第三吐出部に対して行う。
【0013】
第8態様は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、搬送される記録媒体への第一吐出部の液滴の吐出により検知画像を形成してから該検知画像が検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との差分から、前記記録媒体の搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、前記検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置された第二吐出部の吐出タイミングを遅延させる遅延制御を行う。
【0014】
第9態様は、コンピュータに、搬送される記録媒体への第一吐出部の液滴の吐出により検知画像を形成してから該検知画像が検知部によって検知されるまでの検知時間と設定時間との差分から、前記記録媒体の搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、前記検知部に対する前記搬送方向の下流側に配置された第二吐出部の吐出タイミングを遅延させる遅延制御を行う処理を実行させるための吐出制御プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
第1態様、第8態様及び第9態様の構成によれば、記録媒体の搬送方向への伸び量に関わらず、第二吐出部の吐出タイミングが一定である構成に比べ、第一吐出部による記録媒体への吐出位置と第二吐出部による記録媒体への吐出位置との位置ズレを抑制できる。
【0016】
第2態様の構成によれば、単一の差分を用いて記録媒体の搬送方向への伸び量を予測する場合に比べ、第一吐出部による記録媒体への吐出位置と第二吐出部による記録媒体への吐出位置との位置ズレを抑制できる。
【0017】
第3態様の構成によれば、第二検知部が第二吐出部に対する搬送方向の上流側に配置されている構成に比べ、第一吐出部と第二吐出部との距離を短くできる。
【0018】
第4態様の構成によれば、検知画像が形成された予め定められたページに対して第二吐出部が吐出する吐出タイミングにおいて遅延制御を行う場合に比べ、記録媒体に形成される余白を小さくできる。
【0019】
第5態様の構成によれば、第二検知部が第二吐出部に対する搬送方向の下流側に配置されている構成に比べ、遅延制御を実行する実行タイミングを早くできる。
【0020】
第6態様の構成によれば、第三吐出部が第一検知部及び第二検知部の搬送方向の上流側に配置される構成に比べ、第一吐出部と第三吐出部との距離と、第二吐出部と第三吐出部との距離とを差を小さくできる。
【0021】
第7態様の構成によれば、第一検知部及び第二検知部とは異なる検知部で検知された検知時間に基づく差分から伸び量を予測して、第三吐出部に対して遅延制御を行う場合に比べ、部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置における連続紙の伸び率(紙搬送速度の変化量)を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る制御装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るインクジェット記録装置において、求められる速度変化量及び位置ズレ量を示す概念図である。
【
図6】本実施形態に係る制御装置によって実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第五変形例に係るインクジェット記録装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(インクジェット記録装置10)
まず、インクジェット記録装置10について説明する。
図1は、インクジェット記録装置10の構成を示す概略図である。なお、
図1では、インクジェット記録装置10の側面図が紙面の上側部分に示され、後述の連続紙P及び検知部41、42、43を上方側から見た平面図が紙面の下側部分に示されている。
【0024】
図1に示されるインクジェット記録装置10は、液滴を吐出する吐出装置の一例である。具体的には、インクジェット記録装置10は、記録媒体にインク滴を吐出する装置である。さらに具体的には、インクジェット記録装置10は、
図1に示されるように、連続紙P(記録媒体の一例)にインク滴を吐出して連続紙Pに画像を形成する装置である。換言すれば、インクジェット記録装置10は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の一例ともいえる。
【0025】
連続紙Pは、
図1に示されるように、搬送される搬送方向に長さを有する長尺状の記録媒体である。具体的には、また、連続紙Pは、複数のページP1が搬送方向に沿って配置された用紙である。
【0026】
インクジェット記録装置10は、
図1に示されるように、搬送機構20と、吐出機構30と、検知部41、42、43と、制御装置50と、を備えている。以下、インクジェット記録装置10の各部(搬送機構20、吐出機構30、検知部41、42、43、及び制御装置50)の具体的な構成について説明する。
【0027】
(搬送機構20)
図1に示される搬送機構20は、連続紙Pを搬送する機構である。具体的には、搬送機構20は、例えば、
図1に示されるように、複数の巻掛ロール26と、複数の対向ロール27と、巻出ロール(図示省略)と、巻取ロール(図示省略)と、を有している。
【0028】
搬送機構20では、回転駆動される巻取ロール(図示省略)が、連続紙Pを巻き取ると共に、巻出ロール(図示省略)が連続紙Pを巻き出すことによって、連続紙Pが予め定められた搬送速度(以下、紙搬送速度という場合がある)で搬送される。複数の巻掛ロール26は、連続紙Pが巻き掛けられるロールである。この複数の巻掛ロール26は、巻出ロール(図示省略)と巻取ロール(図示省略)との間で連続紙Pに巻き掛けられている。これにより、巻出ロール(図示省略)から巻取ロール(図示省略)までの連続紙Pの搬送経路が定められている。
【0029】
複数の対向ロール27の各々は、複数の巻掛ロール26の各々に対向して配置されている。具体的には、複数の対向ロール27の各々は、複数の巻掛ロール26の各々との間で連続紙Pを挟んでいる。複数の巻掛ロール26及び複数の対向ロール27は、搬送される連続紙Pに従動して回転する。各図では、連続紙Pの搬送方向(以下、「紙搬送方向」という場合がある)を、適宜、矢印Aにて示している。
【0030】
なお、搬送機構20の構成としては、前述の構成に限られない。例えば、搬送機構20としては、連続紙Pが折り畳まれた状態で収容された収容部から、連続紙Pが折り畳まれるように収容される収容部まで、連続紙Pを搬送する機構であってもよい。また、搬送機構20としては、連続紙Pを搬送する搬送部材として、一対の搬送ロールや搬送ベルト等を用いた機構であってもよい。
【0031】
さらに、本実施形態では、記録媒体として、連続紙Pを用いたが、これに限られない。例えば、記録媒体としては、枚葉紙(すなわち、カット紙)を用いてもよい。
【0032】
(吐出機構30)
図1に示される吐出機構30は、液滴の一例としてのインク滴を吐出する機構である。具体的には、吐出機構30は、搬送機構20が搬送する連続紙Pへインク滴を吐出して画像を形成する。さらに具体的には、吐出機構30は、
図1に示されるように、吐出ヘッド32Y、32M、32C、32K(以下、32Y~32Kという)を有している。
【0033】
各吐出ヘッド32Y~32Kは、インク滴を吐出するヘッドである。具体的には、各吐出ヘッド32Y~32Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を連続紙Pに吐出して、連続紙Pに画像を形成する。さらに具体的には、各吐出ヘッド32Y~32Kは、以下のように構成されている。
【0034】
図1に示されるように、吐出ヘッド32Y~32Kは、この順で、紙搬送方向の上流側へ向かって配置されている。各吐出ヘッド32Y~32Kは、連続紙Pの幅方向に長さを有している。なお、連続紙Pの幅方向とは、紙搬送方向と交差する方向(具体的には、直交する方向)である。各図では、連続紙Pの幅方向、適宜、矢印Bにて示している。
【0035】
各吐出ヘッド32Y~32Kは、ノズル(図示省略)が形成されたノズル面30Sを有している。各吐出ヘッド32Y~32Kのノズル面30Sは、下側を向いており、搬送機構20で搬送される連続紙Pに対向している。各吐出ヘッド32Y~32Kは、サーマル方式、圧電方式等の公知の方式にて、ノズル(図示省略)からインク滴を連続紙Pに吐出する。
【0036】
各吐出ヘッド32Y~32Kで使用されるインクとして、例えば、水性インクが用いられる。水性インクは、例えば、水を主成分とする溶媒と、着色剤(具体的には、顔料や染料等)と、その他添加剤と、を含んでいる。
【0037】
本実施形態では、吐出ヘッド32Kが第一吐出部の一例である。吐出ヘッド32Kは、連続紙Pにインク滴を吐出して、通常画像70(
図2参照)及び検知マーク80を形成する。換言すれば、検知マーク80は、紙搬送方向の最上流側に配置された吐出ヘッドで形成される。
【0038】
通常画像70は、連続紙Pの各ページP1の画像領域Rに形成される画像である。また、通常画像70は、ユーザ端末等の外部から入力された画像形成の指示に基づき形成される画像でもある。さらに言えば、通常画像70は、制御装置50が画像形成の指示と共に取得した画像データに基づき形成される画像でもある。
【0039】
一方、検知マーク80は、検出画像の一例であり、例えば、連続紙Pの各ページP1の画像領域R外に形成される画像である。また、検知マーク80は、検知部41、42、43によって検知される画像である。さらに言えば、検知マーク80は、制御装置50が画像形成の指示と共に取得した画像データに関係なく形成される画像でもある。換言すれば、検知マーク80は、予め記憶された画像データに基づき、予め定められたパターンで形成される画像ともいえる。なお、検知マーク80は、各ページP1の画像領域R内に形成されてもよい。
【0040】
図1に示される吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々は、第二吐出部の一例である。吐出ヘッド32C、32M、32Yは、制御装置50によって制御される吐出タイミングで連続紙Pにインク滴を吐出する。
【0041】
なお、吐出ヘッド32C、32M、32Yのうち、いずれか1つ又は2つを第二吐出部の一例と把握してもよい。したがって、本実施形態では、吐出ヘッド32Kを第一吐出部の一例とした場合、吐出ヘッド32C、32M、32Yの少なくとも1つを第二吐出部の一例として用いることが可能である。
【0042】
さらに、吐出ヘッド32Kを第一吐出部の一例とし、吐出ヘッド32Mを第二吐出部の一例とした場合、吐出ヘッド32Cを第三吐出部の一例と把握してもよい。また、吐出ヘッド32Kを第一吐出部の一例とし、吐出ヘッド32Yを第二吐出部の一例とした場合、吐出ヘッド32C又は吐出ヘッド32Mを第三吐出部の一例と把握してもよい。
【0043】
(検知部41、42、43)
図1に示される検知部41、42、43は、検知マーク80を検知する検知部である。この検知部41、42、43は、検知マーク80の少なくとも前端を検知する。前端とは、紙搬送方向の下流端である。検知部41、42、43は、一例として、反射型の光センサで構成されている。
【0044】
本実施形態では、検知部41、42、43は、吐出ヘッド32Y~32Kの間に配置されている。具体的には、検知部41は、紙搬送方向において、吐出ヘッド32Kと吐出ヘッド32Cとの間に配置されている。すなわち、検知部41は、吐出ヘッド32Kに対する紙搬送方向下流側であって、吐出ヘッド32Cに対する紙搬送方向上流側に配置されている。なお、検知部41は、吐出ヘッド32K及び吐出ヘッド32Cに対して距離が等しい位置、又は、吐出ヘッド32K及び吐出ヘッド32Cの一方に接近した位置に配置されていてもよい。
【0045】
検知部42は、紙搬送方向において、吐出ヘッド32Cと吐出ヘッド32Mとの間に配置されている。すなわち、検知部42は、吐出ヘッド32Cに対する紙搬送方向下流側であって、吐出ヘッド32Mに対する紙搬送方向上流側に配置されている。なお、検知部42は、吐出ヘッド32C及び吐出ヘッド32Mに対して距離が等しい位置、又は、吐出ヘッド32C及び吐出ヘッド32Mの一方に接近した位置に配置されていてもよい。
【0046】
検知部43は、紙搬送方向において、吐出ヘッド32Mと吐出ヘッド32Yとの間に配置されている。すなわち、検知部43は、吐出ヘッド32Mに対する紙搬送方向下流側であって、吐出ヘッド32Yに対する紙搬送方向上流側に配置されている。なお、検知部43は、吐出ヘッド32M及び吐出ヘッド32Yに対して距離が等しい位置、又は、吐出ヘッド32M及び吐出ヘッド32Yの一方に接近した位置に配置されていてもよい。
【0047】
検知部41、42、43は、検知部の一例である。本実施形態では、検知部41を第一検知部の一例と把握可能である。この場合では、検知部42、43の少なくとも一方を第二検知部の一例と把握可能である。また、本実施形態では、検知部42を第一検知部の一例と把握可能である。この場合では、検知部43を第二検知部の一例と把握可能である。
【0048】
(制御装置50)
制御装置50は、インクジェット記録装置10の各部の動作を制御する装置である。具体的には、制御装置50は、例えば、各吐出ヘッド32Y~32Kの吐出タイミングを制御する。
【0049】
本実施形態では、制御装置50は、検知部41、42、43の各々で検知マーク80を検知してから予め定められた規定時間(以下、ディレイ時間という)後に、吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々の吐出を実行させる。
【0050】
さらに、制御装置50は、基準時点から検知マーク80が検知部41、42、43によって検知されるまでの検知時間と設定時間との差分から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、吐出タイミングを遅延させる遅延制御を吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々に対して行う。
【0051】
ここで、連続紙Pの紙搬送方向への伸びは、連続紙Pへ吐出されたインクが連続紙Pに浸透し、連続紙Pが膨潤することで生じる。この膨潤現象は、時間の経過に伴って進行する。このため、
図2に示されるように、吐出ヘッド32Kよりも搬送方向下流側に向かうに従って、連続紙Pの伸び率(すなわち伸び量)は大きくなっていく。この伸び率は、紙搬送速度の変化と比例関係にあると捉えることができるので、紙搬送速度の変化量も吐出ヘッド32Kよりも搬送方向下流側に向かうに従って、大きくなっていく。
【0052】
なお、連続紙Pは、通常画像70の画像密度が高いほど膨潤しやすく、
図2に示されるように、通常画像70がベタ画像(画像密度100%の近い画像)において、連続紙Pの膨潤が顕著となる。画像密度とは、記録媒体の単位面積(例えば画像領域Rの面積)あたりに画像が占める面積率をいう。
【0053】
そして、紙搬送速度の変化量は、以下の式で求められる。
【0054】
紙搬送速度の変化量=連続紙Pの紙搬送方向への伸び率×紙搬送速度
【0055】
また、連続紙Pの伸びによる位置ズレ量(すなわち、連続紙Pに伸びが生じなかった場合に対して位置ズレする距離)は、紙搬送速度の変化量の積分で求められ、
図2における斜線部分の面積に相当する。具体的には、検知部41が検知マーク80を検知してから吐出ヘッド32Cがインク滴を吐出するまでに生じる位置ズレ量は、面積Rc(以下、位置ズレ量Rcという場合がある)に相当する。また、検知部42が検知マーク80を検知してから吐出ヘッド32Mがインク滴を吐出するまでに生じる位置ズレ量は、面積Rm(以下、位置ズレ量Rmという場合がある)に相当する。さらに、検知部43が検知マーク80を検知してから吐出ヘッド32Yがインク滴を吐出するまでに生じる位置ズレ量は、面積Ry(以下、位置ズレ量Ryという場合がある)に相当する。
【0056】
そして、制御装置50では、当該位置ズレ量分に対応する遅延時間を求め、該遅延時間をディレイ時間に加算した時間を用いて、吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々の吐出することで、位置ズレを補正する。
【0057】
以下、制御装置50の具体的な構成について説明する。
【0058】
図3には、制御装置50のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。なお、制御装置50は、「制御部」の一例であり、「吐出制御装置」の一例である。
【0059】
図3に示されるように、制御装置50は、コンピュータとしての機能を備え、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、ストレージ54、ユーザインタフェース55、通信インタフェース56及びI/O部57を有している。制御装置50の各部は、バス59を介して相互に通信可能に接続されている。
【0060】
CPU51は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU51は、ROM52又はストレージ54からプログラムを読み出し、RAM53を作業領域としてプログラムを実行する。CPU51は、ROM52又はストレージ54に記録されているプログラムに従って、インクジェット記録装置10の各部の制御および各種の演算処理を行う。
【0061】
ROM52は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM53は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ54は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0062】
ユーザインタフェース55は、インクジェット記録装置10の使用者としてのユーザがインクジェット記録装置10を使用する際のインタフェースである。ユーザインタフェース55は、例えば、ボタンやタッチパネル等の入力部及び液晶ディスプレイ等の表示部を有している。
【0063】
通信インタフェース56は、パソコン等のユーザ端末と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース56の通信方式としては、有線又は無線が用いられる。通信インタフェース56の通信規格としては、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等が用いられる。I/O部57は、CPU51をインクジェット記録装置10の各部と接続する。
【0064】
上記のプログラムを実行する際に、制御装置50は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。制御装置50が実現する機能構成について説明する。
図4は、制御装置50の機能構成の例を示すブロック図である。
【0065】
図4に示されるように、制御装置50は、機能構成として、取得部50Aと、算出部50Bと、吐出制御部50Cと、を有している。各機能構成は、CPU51がROM52又はストレージ54に記憶された制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0066】
取得部50Aは、検知部41、42、43が検知マーク80を検知した検知情報(すなわち検知結果)を取得する。
【0067】
算出部50Bは、取得部50Aが取得した検知情報に基づき、吐出ヘッド32Kによって検知マーク80が形成された時点(基準時点の一例)から検知マーク80が検知部41によって検知されるまでの検知時間KTcを検出する。
【0068】
また、算出部50Bは、取得部50Aが取得した検知情報に基づき、検知マーク80が検知部41によって検知された時点(基準時点の一例)から検知マーク80が検知部42によって検知されるまでの検知時間KTmを検出する。
【0069】
さらに、算出部50Bは、取得部50Aが取得した検知情報に基づき、検知マーク80が検知部42によって検知された時点(基準時点の一例)から検知マーク80が検知部43によって検知されるまでの検知時間KTyを検出する。
【0070】
例えば、算出部50Bは、クロック信号を生成し、吐出ヘッド32Kによって検知マーク80が形成されてから検知マーク80が検知部41、42、43の各々によって検知されるまでのクロック信号のカウント数によって、各検知時間KTc、KTm、KTyを検出する。
【0071】
さらに、各検知時間KTc、KTm、KTyと、吐出ヘッド32C、32M、32Yごとの設定時間STc、STm、STyとの差分から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分の遅延時間Tc、Tm、Tyを算出する。当該設定時間STc、STm、STyは、予め定められた基準時間(すなわちノミナル時間)であり、連続紙Pに膨潤が生じていない場合の検知時間に相当する。
【0072】
当該遅延時間Tc、Tm、Tyは、具体的には、以下のように算出される。
【0073】
まず、吐出ヘッド32Kと検知部41との中間点の速度変化量Bkc(
図5参照)を以下の式により求める。なお、以下の式は、近似的に速度変化量Bkcを求めるものである。
速度変化量Bkc=差分時間÷設定時間STc×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTc-設定時間STc
【0074】
同様に、検知部41と検知部42との中間点の速度変化量Bcm(
図5参照)を以下の式により求める。
速度変化量Bcm=差分時間÷設定時間STm×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTm-設定時間STm
【0075】
同様に、検知部42と検知部43との中間点の速度変化量Bmy(
図5参照)を以下の式により求める。
速度変化量Bmy=差分時間÷設定時間STy×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTy-設定時間STy
【0076】
次に、検知部41と吐出ヘッド32Cとの中間点の速度変化量Vcを以下の式により求める。なお、以下の式は、速度変化量Vcを速度変化量Bkcから予測して求めるものである。
速度変化量Vc=速度変化量Bkc×係数Sc
【0077】
また、検知部42と吐出ヘッド32Mとの中間点の速度変化量Vmを以下の式により求める。
速度変化量Vm=速度変化量Bcm×係数Sm
【0078】
さらに、検知部43と吐出ヘッド32Yとの中間点の速度変化量Vyを以下の式により求める。
速度変化量Vy=速度変化量Bmy×係数Sy
【0079】
次に、位置ズレ量Rcを以下の式により求める。
位置ズレ量Rc=速度変化量Vc×距離Lc÷紙搬送速度
なお、距離Lc(
図5参照)は、検知部41から吐出ヘッド32Cまでの距離である。
【0080】
また、位置ズレ量Rmを以下の式により求める。
位置ズレ量Rm=速度変化量Vm×距離Lm÷紙搬送速度
なお、距離Lm(
図5参照)は、検知部42から吐出ヘッド32Mまでの距離である。
【0081】
さらに、位置ズレ量Rcを以下の式により求める。
位置ズレ量Ry=速度変化量Vy×距離Ly÷紙搬送速度
なお、距離Ly(
図5参照)は、検知部43から吐出ヘッド32Yまでの距離である。
【0082】
次に、吐出ヘッド32Cにおける遅延時間Tcを以下の式により求める。
遅延時間Tc=位置ズレ量Rc÷紙搬送速度
【0083】
また、吐出ヘッド32Mにおける遅延時間Tmを以下の式により求める。
遅延時間Tm=位置ズレ量Rm÷紙搬送速度
【0084】
また、吐出ヘッド32Yにおける遅延時間Tyを以下の式により求める。
遅延時間Ty=位置ズレ量Ry÷紙搬送速度
【0085】
吐出制御部50Cは、算出部50Bが算出した遅延時間Tc、Tm、Ty分、吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々に対して吐出タイミングを遅延させる。具体的には、吐出制御部50Cは、検知部41が検知した時点から、予め定められたディレイ時間に遅延時間Tcを加算した時間後に、吐出ヘッド32Cを吐出させる。
【0086】
また、吐出制御部50Cは、検知部42が検知した時点から、予め定められたディレイ時間に遅延時間Tmを加算した時間後に、吐出ヘッド32Mを吐出させる。
【0087】
さらに、吐出制御部50Cは、検知部43が検知した時点から、予め定められたディレイ時間に遅延時間Tyを加算した時間後に、吐出ヘッド32Yを吐出させる。
【0088】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
図6は、制御装置50によって実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0089】
本制御処理は、CPU51がROM52又はストレージ54から制御プログラムを読み出して実行することにより行なわれる。本制御処理は、例えば、CPU51が連続紙Pに通常画像70を形成する指示を取得した場合に行われる。本実施形態では、例えば、通常画像70の画像密度に関わらず、本制御処理が行われる。また、本実施形態では、例えば、連続紙Pの用紙種類に関わらず、本制御処理が行われる。
【0090】
図6に示されるように、本制御処理が開始されると、CPU51は、まず、吐出ヘッド32Kを駆動させ、通常画像70及び検知マーク80を連続紙Pに形成させる(ステップS102)。
【0091】
次に、CPU51は、検知部41が検知マーク80を検知したか否かを判断する(ステップS104)。CPU51は、ステップS104にて、検知部41が検知マーク80を検知したと判断した場合(ステップS104:YES)に、ステップS106に移行する。
【0092】
一方、CPU51は、ステップS104にて、検知部41が検知マーク80を検知していないと判断した場合(ステップS104:NO)は、検知部41が検知マーク80を検知するまで、ステップS104を繰り返す。
【0093】
ステップS106では、CPU51は、前述したように、遅延時間Tcを算出する。次に、CPU51は、検知部41が検知した時点から、予め定められたディレイ時間に遅延時間Tcを加算した時間後に、吐出ヘッド32Cを吐出させる(ステップS108)。
【0094】
なお、吐出ヘッド32M、32Yにおいても、同様に、CPU51は、検知部42、43が検知マーク80を検知したか否かを判断し(ステップS104)、検知部42、43が検知マーク80を検知したと判断した場合(ステップS104:YES)に、前述したように、遅延時間Tm、Tyを算出する。
【0095】
次に、CPU51は、検知部42、43が検知した時点から、予め定められたディレイ時間に遅延時間Tm、Tyを加算した時間後に、吐出ヘッド32M、32Yを吐出させる。
【0096】
なお、本実施形態では、検知マーク80が形成されたページP1に対して、吐出ヘッド32C、32M、32Yが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。
【0097】
以上のように、本実施形態では、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測し、該伸び量分、吐出タイミングを遅延させる遅延制御を吐出ヘッド32C、32M、32Yの各々に対して行う。
【0098】
このため、連続紙Pの搬送方向への伸び量に関わらず、吐出ヘッド32C、32M、32Yの吐出タイミングが一定である構成(比較例A)に比べ、吐出ヘッド32Kによる連続紙Pへの吐出位置と、吐出ヘッド32C、32M、32Yによる連続紙Pへの吐出位置との位置ズレが抑制される。
【0099】
(評価)
本評価では、
図7に示されるように、本実施形態の制御処理を行った場合と、本実施形態の制御処理を行わない比較例Aとにおいて、吐出ヘッド32Kによる連続紙Pへの吐出位置と、吐出ヘッド32C、32M、32Yによる連続紙Pへの吐出位置との位置ズレ量を測定することで、評価を行った。本評価では、連続紙Pの用紙種類を替えて、当該位置ズレ量を測定した。この結果、本実施形態では、位置ズレが抑制されることがわかった。特に、インクの浸透性が高い用紙(例えば、非コートの上質紙)において、位置ズレが抑制する効果が大きいことがわかった。
【0100】
(第一変形例)
本実施形態では、検知部41と吐出ヘッド32Cとの中間点の速度変化量Vcを以下の式により求めていた。
【0101】
速度変化量Vc=速度変化量Bkc×係数Sc
速度変化量Bkc=差分時間÷設定時間STc×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTc-設定時間STc
【0102】
換言すれば、検知時間KTcと設定時間STcとの差分時間から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測していたが、これに限られない。
【0103】
例えば、速度変化量Vcは、検知部41の検知情報から算出される速度変化量Bkcと、検知部42の検知情報から算出される速度変化量Bcmとの内挿法により求めてもよい。
【0104】
換言すれば、検知時間KTcと設定時間STcとの差分時間と、検知時間KTmと設定時間STmとの差分時間とから、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測してもよい。
【0105】
なお、この場合では、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。
【0106】
本変形例の構成では、複数の差分時間を用いて、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測するので、単一の差分時間を用いて連続紙Pの搬送方向への伸び量を予測する場合に比べ、予測精度が高くなり、吐出ヘッド32Kによる連続紙Pへの吐出位置と、吐出ヘッド32Cによる連続紙Pへの吐出位置との位置ズレが抑制される。
【0107】
また、本変形例において用いられる検知部42が、吐出ヘッド32Cに対する搬送方向の下流側に配置されているため、検知部42が吐出ヘッド32Cに対する搬送方向の上流側に配置されている構成に比べ、吐出ヘッド32Kと吐出ヘッド32Cとの距離が短くなる。
【0108】
さらに、本変形例では、前述のように、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。
【0109】
ここで、検知マーク80が形成された予め定められたページP1に対して吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて遅延制御を行う場合(比較例B)では、検知部42が当該ページP1の検知マーク80を検知した後に、吐出ヘッド32Cが当該ページP1へ吐出する必要がある。このため、連続紙PのページP1内において、吐出ヘッド32Cから検知部42までの距離分、検知マーク80から離れた位置に吐出ヘッド32Cからインク滴を吐出することになるため、当該ページP1に吐出ヘッド32Cから検知部42までの距離分の余白が必要となる。
【0110】
これに対して、本実施形態では、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行うので、前述の比較例Bに比べ、連続紙Pに形成される余白が小さくなる。
【0111】
なお、本変形例では、検知部41が第一検知部の一例である。また、検知部42が第二検知部の一例である。また、吐出ヘッド32Cを第二吐出部の一例と把握可能である。
【0112】
さらに、吐出ヘッド32Mを第二吐出部の一例と把握した場合には、吐出ヘッド32Cを第三吐出部の一例と把握可能である。このように把握した場合では、第三吐出部の一例としての吐出ヘッド32Cが、紙搬送方向において、第一検知部の一例としての検知部41と、第二検知部の一例としての検知部42との間に配置される。この構成によれば、例えば、吐出ヘッド32Cが検知部41及び検知部41の搬送方向の上流側に配置される構成に比べ、吐出ヘッド32Kと吐出ヘッド32Cとの距離と、吐出ヘッド32Mと吐出ヘッド32Cとの距離とを差が小さくなる。
【0113】
(第二変形例)
本実施形態では、検知部42と吐出ヘッド32Mとの中間点の速度変化量Vmを以下の式により求めていた。
【0114】
速度変化量Vm=速度変化量Bcm×係数Sm
速度変化量Bcm=差分時間÷設定時間STm×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTm-設定時間STm
【0115】
換言すれば、検知時間KTmと設定時間STmとの差分時間から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測していたが、これに限られない。
【0116】
例えば、速度変化量Vmは、検知部42の検知情報から算出される速度変化量Bcmと、検知部43の検知情報から算出される速度変化量Bmyとの内挿法により求めてもよい。
【0117】
換言すれば、検知時間KTmと設定時間STmとの差分時間と、検知時間KTyと設定時間STyとの差分時間とから、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測してもよい。
【0118】
本変形例では、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。本変形例は、前述の第一変形例と同様の作用を有する。
【0119】
なお、本変形例では、検知部42が第一検知部の一例である。また、検知部43が第二検知部の一例である。また、吐出ヘッド32Mを第二吐出部の一例と把握可能である。さらに、吐出ヘッド32Yを第二吐出部の一例と把握した場合には、吐出ヘッド32Mを第三吐出部の一例と把握可能である。
【0120】
(第三変形例)
さらに、速度変化量Vmは、例えば、検知部41の検知情報から算出される速度変化量Bkcと、検知部42の検知情報から算出される速度変化量Bcmとの外挿法により求めてもよい。
【0121】
換言すれば、検知時間KTcと設定時間STcとの差分時間と、検知時間KTmと設定時間STmとの差分時間とから、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測してもよい。
【0122】
なお、本変形例では、検知マーク80が形成されたページP1に対して、吐出ヘッド32Mが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。
【0123】
本変形例の構成では、複数の差分時間を用いて、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測するので、単一の差分時間を用いて連続紙Pの搬送方向への伸び量を予測する場合に比べ、予測精度が高くなり、吐出ヘッド32Kによる連続紙Pへの吐出位置と、吐出ヘッド32Mによる連続紙Pへの吐出位置との位置ズレが抑制される。
【0124】
本変形例では、吐出ヘッド32Mに対する搬送方向の上流側に配置されている検知部42を用いるので、前述の第二変形例のように、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う必要がなく、検知マーク80が形成されたページP1に対して、吐出ヘッド32Mが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。このため、本変形例では、前述の第二変形例に比べ、遅延制御を実行する実行タイミングが早くなる。
【0125】
なお、本変形例では、検知部41が第一検知部の一例である。また、検知部42が第二検知部の一例である。また、吐出ヘッド32Mを第二吐出部の一例と把握可能である。
【0126】
また、本変形例と、前述の第一変形例と組み合わせた場合には、第一変形例において、用いる差分時間から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測することになる。この構成によれば、検知部41及び検知部42とは異なる検知部で検知された検知時間に基づく差分から伸び量を予測して、吐出ヘッド32Cに対して遅延制御を行う場合に比べ、部品点数が低減され、また、効率的に制御処理が行える。
【0127】
(第四変形例)
本実施形態では、検知部43と吐出ヘッド32Yとの中間点の速度変化量Vyを以下の式により求めていた。
【0128】
速度変化量Vy=速度変化量Bmy×係数Sy
速度変化量Bmy=差分時間÷設定時間STy×紙搬送速度
差分時間=検知時間KTy-設定時間STy
【0129】
換言すれば、検知時間KTyと設定時間STyとの差分時間から、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測していたが、これに限られない。
【0130】
例えば、速度変化量Vyは、検知部42の検知情報から算出される速度変化量Bcmと、検知部43の検知情報から算出される速度変化量Bmyとの外挿法により求めてもよい。
【0131】
換言すれば、検知時間KTmと設定時間STmとの差分時間と、検知時間KTyと設定時間STyとの差分時間とから、連続紙Pの紙搬送方向への伸び量を予測してもよい。
【0132】
なお、本変形例では、検知マーク80が形成されたページP1に対して、吐出ヘッド32Mが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。本変形例は、前述の第三変形例と同様の作用を有する。
【0133】
なお、本変形例では、検知部42が第一検知部の一例である。また、検知部43が第二検知部の一例である。また、吐出ヘッド32Yを第二吐出部の一例と把握可能である。
【0134】
(第五変形例)
さらに、
図8に示されるように、吐出ヘッド32Yに対する紙搬送方向下流側に検知部44を設け、前述の同様に、吐出ヘッド32Yと検知部44との中間点の速度変化量Byzを求め、速度変化量Byzと、検知部43の検知情報から算出される速度変化量Bmyとの内挿法により、速度変化量Vyを求めてもよい。
【0135】
本変形例では、検知マーク80が形成されたページP1の次のページP1に対して、吐出ヘッド32Cが吐出する吐出タイミングにおいて、遅延制御を行う。本変形例は、前述の第一変形例と同様の作用を有する。
【0136】
(他の変形例)
本実施形態では、例えば、通常画像70に画像密度に関わらず、前述の制御処理が行われたが、これに限られない。例えば、通常画像70に画像密度が予め定められた閾値以上である場合に、前述の制御処理を実行する構成であってもよい。
【0137】
また、本実施形態では、例えば、連続紙Pの用紙種類に関わらず、前述の制御処理が行われたが、これに限られない。例えば、インクの浸透性が高い用紙(例えば、非コートの上質紙)が用いられる場合に、前述の制御処理を実行する構成であってもよい。
【0138】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【0139】
また、上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、前述のCPU等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0140】
さらに、上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0141】
10 インクジェット記録装置(吐出装置の一例)
32K 吐出ヘッド(第一吐出部の一例)
32C 吐出ヘッド(第二吐出部の一例、第三吐出部の一例)
32M 吐出ヘッド(第二吐出部の一例、第三吐出部の一例)
32Y 吐出ヘッド(第二吐出部の一例)
41 検知部(第一検知部の一例)
42 検知部(第二検知部の一例、第一検知部の一例)
43 検知部(第二検知部の一例、第一検知部の一例)
44 検知部(第二検知部の一例)
50 制御装置(制御部の一例、吐出制御部の一例)
51 CPU(プロセッサの一例)
P 連続紙(記録媒体の一例)