(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】供給計画作成装置、供給計画作成方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240312BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2019218572
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018227835
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【氏名又は名称】渥美 元幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126538
【氏名又は名称】嶺 直道
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 智也
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134556(JP,A)
【文献】特開2006-260155(JP,A)
【文献】特開2004-238180(JP,A)
【文献】特開2014-199552(JP,A)
【文献】特開2005-012912(JP,A)
【文献】特開2018-185705(JP,A)
【文献】特開2018-207728(JP,A)
【文献】特開2018-206276(JP,A)
【文献】特開2017-187932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16Z 99/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部と、を備え、
前記制約条件は、
契約で定められた1回当たりの前記燃料の補給量の条件を含む、供給計画作成装置。
【請求項2】
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部と、を備え、
前記制約条件は、各日の前記燃料の供給可能回数の条件を含む、供給計画作成装置。
【請求項3】
前記制約条件は、所定期間における前記燃料の最低使用量の条件を含む、請求項1
または請求項2に記載の供給計画作成装置。
【請求項4】
前記制約条件は、所定期間における前記燃料の最低供給回数の条件を含む、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項5】
前記制約条件は、前記貯蔵装置における前記燃料の貯蔵量に関する条件を含む、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項6】
前記実績情報は、前記貯蔵装置に貯蔵されている前記燃料の貯蔵量の情報を含む、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項7】
前記設備特性情報は、前記発電機の発電効率の情報を含む、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項8】
前記設備特性情報は、前記発電機の出力範囲の情報を含む、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項9】
前記燃料は、天然ガスまたは水素燃料を含む、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の供給計画作成装置。
【請求項10】
コンピュータによる供給計画作成方法であって、
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得するステップと、
取得された前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成するステップと、を含み、
前記制約条件は、
契約で定められた1回当たりの前記燃料の補給量の条件を含む、供給計画作成方法。
【請求項11】
コンピュータによる供給計画作成方法であって、
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得するステップと、
取得された前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成するステップと、を含み、
前記制約条件は、各日の前記燃料の供給可能回数の条件を含む、供給計画作成方法。
【請求項12】
コンピュータを、
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記制約条件は、
契約で定められた1回当たりの前記燃料の補給量の条件を含む、コンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、
需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記制約条件は、各日の前記燃料の供給可能回数の条件を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、供給計画作成装置、供給計画作成方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)を貯蔵するLNG基地からのガス導管が敷設されていない地域の需要家向けに、LNGローリー車によりLNG基地から需要家にLNGを輸送するLNGの供給形態(以下、「LNGサテライト供給」という。)が近年普及している。
【0003】
LNGサテライト供給においては、LNGローリー車により輸送されたLNGは、一旦、需要家のLNGタンクに貯蔵される。LNGタンクに貯蔵されたLNGは、需要家施設に敷設されたガス導管等を通じてガス発電機やガスを利用したその他の設備に供給され、利用される。
【0004】
一方、特許文献1には、LNG基地のバルク容器内のLNGの貯蔵量を監視し、貯蔵量が所定値以下になった場合に、LNGが充填された別のバルク容器を搬送するLNGのバルク容器の管理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の管理方法を、LNGサテライト供給にそのまま適用することは困難である。なぜならば、1つのLNG基地が管理対象とする需要家の数は非常に多い。このため、需要家のLNGタンクのLNG貯蔵量が少なくなったとしても、LNGローリー車によるLNGの供給をすぐに受けられない場合がある。このような場合には、LNGタンク内のLNGが枯渇してしまい、ガス発電機等を動かすことができなくなってしまう。
【0007】
一方、LNGタンク内のLNGが枯渇しないように、LNGが少し減った段階でLNGを発注して、LNGの供給を受けることも考えられる。しかし、LNGの消費量が少ない時期であっても定期的にLNGを供給しなければならないなどの契約がガス会社との間で結ばれている場合には、すぐにLNGタンクにLNGが満杯になってしまい契約を守れない場合が生じる。
【0008】
このため、どのようなタイミングでLNGを発注するのかを需要家が決定するのは困難である。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、需要家へ適切なタイミングで燃料を供給することのできる燃料の供給計画を作成する供給計画作成装置、供給計画作成方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一実施態様に係る供給計画作成装置は、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部と、を備える。
【0011】
本開示の他の実施態様に係る供給計画作成方法は、コンピュータによる供給計画作成方法であって、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得するステップと、取得された前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成するステップと、を含む。
【0012】
本開示の他の実施態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部として機能させる。
【0013】
なお、本開示は、このような特徴的な処理部を備える供給計画作成装置として実現することができるだけでなく、供給計画作成装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、供給計画作成装置を含むシステムとして実現したりすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、需要家へ適切なタイミングで燃料を供給することのできる燃料の供給計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電力システムの全体構成を示す図である。
【
図2】LNGサテライト供給における制約条件について説明するための図である。
【
図4】目的関数および制約条件に含まれる各変数および各定数の意味を説明するための図である。
【
図5】制約条件に含まれる各変数および各定数の意味を説明するための図である。
【
図6】サーバの処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】年間のLNG消費量を比較するための図である。
【
図10】年間のLNG補給量を比較するための図である。
【
図11】運用AにおけるLNGタンク内のLNG残量の変化を示す図である。
【
図12】運用BにおけるLNGタンク内のLNG残量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本開示の実施形態の概要]
最初に本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態に係る供給計画作成装置は、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部と、を備える。
【0017】
この構成によると、例えば、LNGタンクなどの燃料の貯蔵装置への燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で、目的関数を最適化することにより、燃料の貯蔵装置への供給計画を作成することができる。このため、燃料の供給回数および供給量の制約を満たす範囲で最適化された燃料の供給計画を作成することができる。これにより、需要家へ適切なタイミングで燃料を供給することのできる燃料の供給計画を作成することができる。
【0018】
(2)前記制約条件は、所定期間における前記燃料の最低使用量の条件を含むのが好ましい。
【0019】
この構成によると、所定期間における燃料の最低使用量が、需要家と燃料の供給者または販売者等との間で締結された契約で定められている場合に、その契約を履行するように燃料の供給計画を作成することができる。
【0020】
(3)前記制約条件は、所定期間における前記燃料の最低供給回数の条件を含むのが好ましい。
【0021】
この構成によると、所定期間における燃料の最低供給回数が、需要家と燃料の供給者または販売者等との間で締結された契約で定められている場合に、その契約を履行するように燃料の供給計画を作成することができる。
【0022】
(4)前記制約条件は、1回当たりの前記燃料の補給量の条件を含むのが好ましい。
【0023】
この構成によると、1回当たりの前記燃料の補給量が、需要家と燃料の供給者または販売者等との間で締結された契約で定められている場合に、その契約を履行するように燃料の供給計画を作成することができる。
【0024】
(5)前記制約条件は、前記貯蔵装置における前記燃料の貯蔵量に関する条件を含むのが好ましい。
【0025】
この構成によると、例えば、貯蔵装置内の燃料の貯蔵量が、貯蔵装置の貯蔵可能最大量および貯蔵可能最小量の範囲内に収まるように燃料の供給計画を作成することができる。これにより、燃料の貯蔵量が多すぎることにより追加の燃料が補給できなかったり、燃料の貯蔵量が少なすぎることにより発電機が発電できなかったりするのを防止することができる。
【0026】
(6)前記制約条件は、各日の前記燃料の供給可能回数の条件を含むのが好ましい。
【0027】
この構成によると、例えば、曜日ごとの燃料の供給可能回数が、需要家と燃料の供給者または販売者等との間で締結された契約で定められている場合に、その契約を履行するように燃料の供給計画を作成することができる。
【0028】
(7)前記実績情報は、前記貯蔵装置に貯蔵されている前記燃料の貯蔵量の情報を含むのが好ましい。
【0029】
この構成によると、貯蔵装置に貯蔵されている燃料の貯蔵量を考慮して燃料の供給計画を作成することができる。このため、貯蔵量の多寡に応じた最適な燃料の供給計画を作成することができる。
【0030】
(8)前記設備特性情報は、前記発電機の発電効率の情報を含むのが好ましい。
【0031】
この構成によると、発電機の発電効率を考慮して最適な燃料の供給計画を作成することができる。これにより、例えば、発電効率が悪い発電機しか備えていない需要家に対しては、燃料を少なめに供給するような供給計画が作成される。
【0032】
(9)前記設備特性情報は、前記発電機の出力範囲の情報を含むのが好ましい。
【0033】
この構成によると、発電機の出力範囲の制約を満たした上で燃料の供給計画を作成することができる。
【0034】
(10)前記燃料は、天然ガスまたは水素燃料を含んでいてもよい。
【0035】
この構成によると、例えば、LNGタンクなどの貯蔵装置へのLNG等の天然ガスの供給回数および供給量に関する制約条件の下で、目的関数を最適化することにより、天然ガスの貯蔵装置への供給計画を作成することができる。このため、天然ガスの供給回数および供給量の制約を満たす範囲で最適化された天然ガスの供給計画を作成することができる。これにより、需要家へ適切なタイミングで天然ガスを供給することのできる天然ガスの供給計画を作成することができる。また、天然ガスの場合と同様に、高圧ガス水素または液体水素などの水素燃料の供給計画を作成することもできる。
【0036】
(11)本開示の他の実施形態に係る供給計画作成方法は、コンピュータによる供給計画作成方法であって、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得するステップと、取得された前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成するステップと、を含む。
【0037】
この構成は、上述の供給計画作成装置が備える特徴的な処理部に対応するステップを含む。このため、上述の供給計画作成装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0038】
(12)本開示の他の実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、需要家における、電力の需要の予測値と、燃料の貯蔵装置および前記燃料を利用して発電する発電機を少なくとも含む各設備に関する設備特性情報と、前記各設備に関する実績情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記予測値、前記設備特性情報および前記実績情報に基づいて、前記貯蔵装置への前記燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、前記燃料の前記貯蔵装置への供給計画を作成する供給計画作成部として機能させる。
【0039】
この構成によると、コンピュータを、上述の供給計画作成装置として機能させることができる。このため、上述の供給計画作成装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0040】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本開示は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本開示の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0041】
〔電力システムの全体構成〕
図1は、本開示の実施の形態に係る電力システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、電力システムは、需要家施設に設置されたEMS(Energy Management System)2、太陽光発電機4、蓄電池5、ガス発電機6およびLNGタンク3と、EMS2とインターネット等のネットワーク14を介して接続されたサーバ1とを備える。
【0042】
太陽光発電機4は、太陽光エネルギーを電力に変換する。太陽光発電機4は、パワーコンディショナーを介して電力線9に接続されている。
【0043】
蓄電池5は、例えば、レドックスフロー(RF)電池、リチウムイオン電池、溶融塩電池、鉛蓄電池などの二次電池を含む。なお、これらの二次電池に代えてフライホイールバッテリーや揚水発電機などが用いられてもよい。
【0044】
ガス発電機6は、LNGタンク3とガス導管11を介して接続され、LNGタンク3から供給されるガスを燃焼させることにより発電を行う。
【0045】
LNGタンク3は、LNGの貯蔵装置であり、LNGタンク3には、ガス会社等のLNG基地12からLNGローリー車13により輸送されるLNGが備蓄される。LNGローリー車13は、LNGを輸送するためのタンクローリー車である。このようなLNGサテライト供給には供給量や供給回数に関する各種制約条件が存在する。制約条件の詳細については後述する。
【0046】
EMS2は、通信線10を介して、受変電設備や太陽光発電機4、蓄電池5、ガス発電機6およびLNGタンク3に接続され、太陽光発電機4、蓄電池5およびガス発電機6の運転を制御することで、受電電力を制御する。また、EMS2は、サーバ1が作成したLNGの供給計画を取得し、画面に表示することにより、当該供給計画をユーザに提示する。ユーザは、提示された供給計画に基づいて、LNGの発注を行う。
【0047】
需要家には、例えば、電力負荷としての工場8が設置されている。電力系統7を介して電力会社から送電される電力は、工場8で消費されたり、蓄電池5に充電されたりする。また、太陽光発電機4およびガス発電機6で発電された電力は、工場8で消費されたり、蓄電池5に充電されたりする。さらに、蓄電池5に充電された電力は、蓄電池5から放電され、工場8で消費される。
【0048】
サーバ1は、需要家の設備(受変電設備、太陽光発電機4、蓄電池5、ガス発電機6およびLNGタンク3)の実績情報および設備特性情報をEMS2から取得する。実績情報は、設備の運用によって時間的に変化する情報であり、例えば、設備の出力や、LNG残量などが含まれる。一方、設備特性情報は、設備の運用によっては変化しない情報であり、例えば、設備のスペック情報などが含まれる。サーバ1は、取得した実績情報および設備特性情報に基づいて、EMS2による分散型電源の運転計画を作成する。また、サーバ1は、供給計画作成装置として機能し、運転計画の作成と同時に、LNGローリー車13によるLNGの供給計画を作成する。
【0049】
〔LNGサテライト供給における制約条件〕
次に、需要家へのLNGサテライト供給における制約条件について説明する。
【0050】
図2は、LNGサテライト供給における制約条件について説明するための図である。
需要家には、例えば、それぞれ20トンのLNGを備蓄可能なLNGタンク3が2基設置されているものとする。
LNGローリー車13による1回のLNG供給量は5トンであるものとする。
【0051】
また、1週間のうちのLNGの供給可能回数は、火曜、木曜、土曜がそれぞれ2回であり、その他の曜日は0回である。つまり、火曜、木曜、土曜については、需要家が希望すれば、1回または2回のLNGサテライト供給を受けることができ、それ以外の曜日は需要家が希望してもLNGサテライト供給を受けることができない。
また、週1回は必ずLNGの供給を受けなければならない。
【0052】
さらに、需要家は、年間1000トン以上のLNGの供給を受けなければならない。
【0053】
これらの制約条件は、例えば、ガス会社と需要家との間で事前に締結された契約において定められる。
【0054】
〔サーバの構成〕
図3は、サーバの構成を示すブロック図である。
サーバ1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータにより構成され、通信部101と、実績情報取得部102と、需要予測部103と、設備特性情報取得部104と、計画作成部105と、計画提供部106とを備える。
【0055】
通信部101は、通信インタフェースを含んで構成され、ネットワーク14に接続することにより、EMS2と通信を行う。
【0056】
各処理部102~106は、HDD(Hard Disk Drive)やROM等の記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能的な処理部である。
【0057】
実績情報取得部102は、取得部として機能し、通信部101を介して、EMS2から、需要家の実績情報を受信することにより、当該実績情報を取得する。例えば、実績情報取得部102は、過去1年間の需要家の電力需要の実績情報を取得する。また、実績情報には、各設備の稼働状況に関する情報などの変化情報が含まれる。
【0058】
需要予測部103は、取得部として機能し、実績情報取得部102が取得した実績情報に基づいて、電力需要を予測することにより、電力需要を取得する。例えば、需要予測部103は、電力需要の実績値を月および曜日ごとに集計し、集計した実績値の平均を算出することにより、電力需要の予測値を算出してもよい。これにより、各月の各曜日の電力需要が予測される。なお、電力需要の予測方法は、これに限定されるものではなく、その他の方法を用いてもよいし、サーバ1において予測は行わずに、EMS2などの他の装置から予測値を取得してもよい。
【0059】
設備特性情報取得部104は、取得部として機能し、通信部101を介して、EMS2から、分散型電源およびLNGタンク3の設備特性情報を取得する。設備特性情報には、各設備の定格出力など、予め定められた情報が含まれる。なお、取得先はEMS2に限定されるものではないが、設備特性情報には、電力料金に関する情報、ガス料金に関する情報、契約電力に関する情報などの、各種情報が含まれていてもよい。
【0060】
計画作成部105は、実績情報取得部102が取得した実績情報と、需要予測部103が予測した電力需要の予測値と、設備特性情報取得部104が取得した設備特性情報とに基づいて、LNGタンク3へのLNGの供給回数および供給量に関する制約条件の下で所定の目的関数を最適化することにより、分散型電源の運転計画を作成する。それとともに、計画作成部105は、供給計画作成部として機能し、LNGローリー車13によるLNGタンク3によるLNGの供給計画を作成する。運転計画および供給計画の作成方法については後述する。
【0061】
計画提供部106は、計画作成部105が作成した運転計画および供給計画を、通信部101を介してEMS2に送信することにより、EMS2にこれらを提供する。
【0062】
〔運転計画および供給計画の作成方法〕
次に、計画作成部105による分散型電源の運転計画およびLNGの供給計画の作成方法について詳細に説明する。なお、説明の簡単化のため、運転計画の作成対象である電力システムには、太陽光発電機4および蓄電池5が含まれないものとするが、太陽光発電機4および蓄電池5が含まれる場合には、それらに関する制約条件を追加して、運転計画および供給計画を作成すればよい。
【0063】
計画作成部105は、実績情報取得部102が取得した実績情報と、需要予測部103が予測した電力需要の予測値と、設備特性情報取得部104が取得した設備特性情報とに基づいて、後述の式2~式20に規定する制約条件の下で、後述の式1に示す目的関数を最適化(ここでは、最小化)することにより、各変数の値を算出し、分散型電源の運転計画およびLNGの供給計画を作成する。例えば、計画作成部105は、混合整数線形計画法に従い、制約条件の下で目的関数の値が最小となるときの各変数の値を算出する。
【0064】
ここで、
図4は、目的関数および制約条件に含まれる各変数および各定数の意味を説明するための図であり、
図5は、制約条件に含まれる各変数および各定数の意味を説明するための図である。なお、ここでいう定数は、既知の値を意味し、時刻により変化する値も含む。例えば、時刻tにおける需要電力を示すPload(t)は、既知の値ではあるが、時刻tごとに変化する値である。
【0065】
<目的関数>
Celec+Cgas+Crun …(式1)
式1の目的関数は、運用により変化するコストの合計を示しており、目的関数の値を最小化することにより、コストが最小となるときの分散型電源の運転計画とLNGの供給計画とを算出することができる。なお、本実施の形態では、1年間の運転計画および供給計画を算出することを想定している。
【0066】
<制約条件>
(1)電力需給の制約
【数1】
式2は、時刻tにおいて電力の需要と供給が等しいことを示す制約条件である。
【0067】
(2)ガス発電機6の発電電力の制約
Pge(g,t)=Ege(g)×Gge(g,t)+a(g)×kge(g,t)
…(式3)
式3は、ガス発電機gのガス消費量と発電電力を一次近似した式である。
【0068】
Pgerat(g)×kge(g,t)-Pge(g,t)≧0 …(式4)
式4は、時刻tにおけるガス発電機gの発電電力は、ガス発電機gの定格出力以下であり、ガス発電機gが停止している場合は発電電力が0であることを示す制約条件である。
【0069】
Rgemin(g)×Pgerat(g)+M×(kge(g,t)-1)
≦Pge(g,t) …(式5)
式5は、時刻tにおいてガス発電機gが稼働している場合には、ガス発電機gの発電電力は、ガス発電機gの最低負荷率とガス発電機gの定格出力との積以上であることを示す制約条件である。
【0070】
(3)ガス発電機6補機電力の制約
Auxge(g,t)
=Pgerat(g)×Auxratge(g)×kge(g,t) …(式6)
式6は、ガス発電機gが停止している場合には、ガス発電機gの補機電力は0であり、ガス発電機gが稼働している場合には、ガス発電機gの補機電力は、ガス発電機gの定格出力と当該定格出力に対する補機電力の割合との積であることを示す制約条件である。
【0071】
(4)LNGの残量の制約
STOgasmin≦STOgas(t)≦STOgasmax …(式7)
式7は、時刻tにおけるLNGタンクのLNG残量は、LNG残量として許容される最大値および最小値の範囲内であることを示す制約条件である。
【0072】
【数2】
式8は、時刻tにおけるLNGタンクのLNG残量、LNGタンクへのLNG補給量、およびガス発電機gでのLNG消費量と、時刻t+1におけるLNGタンクのLNG残量との関係を示す式である。
【0073】
Gsup(t)=Gsuprat×kj(t) …(式9)
式9は、時刻tにおけるLNGタンクへのLNG補給量は、LNG補給がない場合にでは0であり、ガス補給がある場合には、予め定められた1回当たりのLNG補給量であることを示す制約条件である。
【0074】
kj(t)=0(t∈TsupNG) …(式10)
TsupNG:LNG補給不可の時刻tの集合
式10は、LNG補給することのできない時刻において、変数kj(t)を0とする制約条件である。
【0075】
(5)LNGの最低供給回数の制約
【数3】
時刻p(p∈T
week)
T
week:1週間の始点に相当する時刻の集合
τ:1週間分に相当する期間
式11は、LNGタンクにLNGを1週当たり週間最低供給回数以上の回数補給することを示す制約条件である。
【0076】
(6)LNGの年間最低使用量の制約
【数4】
式12は、LNGタンクに1年当たり年間最低LNG使用量以上のLNG補給をすることを示す制約条件である。
【0077】
(7)運用によって変化する分散型電源のランニングコストの合計の制約
【数5】
式13は、運用によって変化する分散型電源のランニングコストの合計は、ガス発電機gのランニングコストの合計であることを示す制約条件である。
【0078】
(8)ガス発電機のランニングコストの制約
【数6】
式14は、ガス発電機gのランニングコストは、ガス発電機gの稼働時間に比例することを示す制約条件である。
【0079】
(9)電力コストの制約
Pcont≧Pbuy(t) …(式15)
式15は、時刻tにおける受電電力は契約電力以下であることを示す制約条件である。
【0080】
Celeccont=12×Pcont×PRCeleccont …(式16)
式16は、年間の基本電力料金は、月ごとの基本電力料金に月数12を掛け合わせたものであることを示す制約条件である。
【0081】
Celecvol(t)=PRCelecvol(t)×Pbuy(t)×Tc
…(式17)
式17は、時刻tにおける従量電力料金は、時刻tにおける従量電力単価と受電電力量の積であることを示す制約条件である。
【0082】
【数7】
式18は、年間の電気料金は、年間の基本電力料金に、年間を通じた従量電力料金の和を加算することで得られることを示す制約条件である。
【0083】
(10)ガスコストの制約
【数8】
式19は、時刻tにおける従量ガス料金は、時刻tにおける従量ガス単価に、時刻tにおける全てのガス発電機gでの燃料消費量の和を掛け合わせることにより得られることを示す制約条件である。
【0084】
【数9】
式20は、年間のガス料金は、時刻tにおける従量ガス料金を年間にわたり合計した値であることを示す制約条件である。
【0085】
〔サーバの処理手順〕
図6は、サーバの処理手順を示すフローチャートである。
実績情報取得部102は、EMS2から、需要家の電力需要の実績情報を取得する(S1)。
【0086】
需要予測部103は、実績情報取得部102が取得した実績情報に基づいて、需要家の電力需要を予測する(S2)。
【0087】
設備特性情報取得部104は、EMS2から、分散型電源およびLNGタンク3の設備特性情報を取得する(S3)。
【0088】
計画作成部105は、ステップS1で取得された実績情報と、ステップS2で予測された電力需要と、ステップS3で取得された設備特性情報とに基づいて、分散型電源の運転計画とLNGの供給計画を作成する(S4)。運転計画および供給計画の作成方法については上述した通りである。
【0089】
計画提供部106は、計画作成部105が作成した運転計画および供給計画を、EMS2に提供する(S5)。
【0090】
〔シミュレーション結果〕
次に、LNGの補給計画を含む分散型電源の運転計画について、2つのパターンを比較する。
【0091】
まず、諸条件について説明する。
<電力需要の条件>
図7は、予測された電力需要の一例を示す図である。横軸は各日の時間を示し、縦軸は電力需要を示す。なお、シミュレーションの簡単のため、電力需要は月ごとのデータとする。つまり、1月間同じ電力需要が続くものとする。
図7では、8月の電力需要が最も高くなっている。
【0092】
<ガス発電機の条件>
ガス発電機6の定格出力は2000kWであり、出力範囲は定格出力の50%~100%とする。
ガス発電機6の運転時における定格出力に対する補機電力の割合は4%である。
ガス発電機6の出力とガス消費量との関係は以下の通りである。出力2000kWの場合にはガス消費量は443m3/hであり、出力1000kWの場合にはガス消費量246m3/hである。
【0093】
<LNGタンクの条件>
LNGタンク3のLNG容量は40トンである。
LNGタンク3へのLNG残量として許容される値は4トン(10%)~36トン(90%)の間である。
【0094】
<電力契約の条件>
契約電力料金(基本電力料金)の単価は、2000円/(kW・月)である。
電力料金に平日と休日の区別はない。
夏季(7~9月)の従量電力料金は以下の通りである。ピーク時(13~16時)は11.7円/kWh、昼間(8~13時,16時~22時)は9.3円/kWh、夜間(22~8時)は7.5円/kWhである。
その他の季節の従量電力料金は以下の通りである。昼間(8~22時)は9.0円/kWh、夜間(22~8時)は7.5円/kWhである。
【0095】
<LNG契約の条件>
ガス料金は、従量料金のみであり、従量単価は、60円/m3である。
【0096】
次に、分散型電源の運転およびLNGサテライト供給の2つのパターンの運用について説明する。
【0097】
<運用A>
運用Aは、LNG供給に関する制約を守ることを最優先で考えたルールでの運用である。運用Aでは、LNGの供給に関する制約を満たしつつも、LNG残量を制御するため、下記ルールで運用することを想定している。
【0098】
つまり、7月および8月は、ガス発電機6を2000kW出力で12時間(9時~21時)運用する。また、LNG補給回数は、6回/週とする。
【0099】
また、その他の月では、ガス発電機6を1000kW出力で12時間(9時~21時)運用する。また、LNG補給回数は、3回/週(火:1回,木:1回,土:1回)と4回/週(火:1回,木:1回,土:2回)を交互に繰り返すものとする。
【0100】
<運用B>
運用Bは、計画作成部105が作成した分散型電源の運転計画およびLNGの供給計画に従った運用である。つまり、年間を通した、電気料金、ガス料金およびランニングコストの合計(式1)を最小とする運用である。
【0101】
次に、運用Aおよび運用Bのシミュレーション結果を説明する。
【0102】
図8は、年間のコストを比較するための図である。
図8は、運用Aおよび運用Bについての、年間最大受電電力、基本電力料金、従量電力料金、ガス料金、分散型電源のランニングコストを含むメンテナンス料金、年間の総コスト(以下、「年間コスト」という。)を示している。年間コストは、基本電力料金、従量電力料金、ガス料金およびメンテナンス料金の和である。運用Bの方が、運用Aに比べて、年間で4600万円のコストを節約することができる。
【0103】
図9は、年間のガス消費量を比較するための図である。
図9は、運用Aおよび運用Bについての、夏季(7月~9月)およびその他の季節におけるガス消費量と、年間のガス消費量とを示している。運用Bは運用Aに比べ、夏季のガス消費量が高く、その他の季節のガス消費量が低い。また、運用Aと運用Bとでは、ガス消費量の差はほとんどなく、いずれも、ガスの年間最低使用量(1000トン)の制約を満たしている。
【0104】
図10は、年間のLNG補給量を比較するための図である。
図10は、運用Aおよび運用Bについての、夏季(7月~9月)およびその他の季節におけるLNGサテライト供給によるLNG補給量と、年間のLNG補給量とを示している。運用Bは運用Aに比べ、夏季のLNG補給量が高く、その他の季節のLNG補給量が低い。
【0105】
図11は、運用AにおけるLNGタンク内のLNG残量の変化を示す図である。
図12は、運用BにおけるLNGタンク内のLNG残量の変化を示す図である。各図の横軸は月を示し、縦軸はLNG残量を示す。
【0106】
図11に示すように、運用Aでは年間を通じてLNG残量の変化が少ない。これに対して、
図12に示すように、運用Bでは、6月末の時点で、夏季に備えてLNG残量を高い状態にし、夏季にLNGの消費がLNGの補給よりも多いため、LNG残量が漸減していることが分かる。
【0107】
〔実施の形態の効果〕
以上説明したように、本開示の実施の形態によると、LNGタンク3へのLNGの供給回数および供給量に関する制約条件の下で、目的関数を最適化することにより、分散型電源の運転計画とともに、LNGのLNGタンク3への供給計画を作成している。このため、LNGの供給回数および供給量の制約を満たす範囲で最適化されたLNGの供給計画を作成することができる。これにより、需要家へ適切なタイミングでLNGを供給することのできるLNGの供給計画を作成することができる。
【0108】
[変形例1]
上述の実施の形態では、需要家施設への供給対象とする燃料としてLNGを例にとり説明を行ったが、燃料は高圧ガス水素または液体水素などの水素燃料であってもよい。
【0109】
水素燃料は、LNGの場合と同様にタンクローリー車により需要家施設に輸送され、需要家施設に設置された水素タンクに貯蔵される。
【0110】
また、需要家施設には、水素タンクと水素導管を介して接続され、水素タンクから供給される水素燃料を燃焼させることにより発電を行う燃料電池などの水素発電機が設けられる。
【0111】
EMS2は、通信線10を介して、受変電設備や太陽光発電機4、蓄電池5、水素発電機および水素タンクに接続され、太陽光発電機4、蓄電池5および水素発電機の運転を制御することで、受電電力を制御する。また、EMS2は、サーバ1が作成した水素燃料の供給計画を取得し、画面に表示することにより、当該供給計画をユーザに提示する。ユーザは、提示された供給計画に基づいて、水素燃料の発注を行う。
【0112】
なお、サーバ1による水素燃料の供給計画の作成方法は、燃料がLNGの場合と同様と同様に行うことができる。
【0113】
変形例1によると、水素燃料の供給回数および供給量に関する制約条件の下で、目的関数を最適化することにより、分散型電源の運転計画とともに、水素燃料の水素タンクへの供給計画を作成している。このため、水素燃料の供給回数および供給量の制約を満たす範囲で最適化された水素燃料の供給計画を作成することができる。これにより、需要家へ適切なタイミングで水素燃料を供給することのできる水素燃料の供給計画を作成することができる。
【0114】
[付記]
以上、本開示の実施の形態に係る電力システムについて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0115】
例えば、上述の実施の形態では、LNG供給計画または水素燃料供給計画の作成方法について説明したが、需要家への供給対象とする燃料はLNG等天然ガスまたは水素燃料に限定されるものではない。例えば、LPG(液化石油ガス)、石油、重油、石炭など、車やタンカー等の移動体により供給され、需要家において備蓄され、発電に利用される燃料であれば、他の燃料を用いることもできる。
【0116】
また、電力システムは、工場に設置されるものに限定されるものではなく、例えば、ビル、マンション、家庭等に設置されてもよい。
【0117】
また、サーバ1の機能が、EMS2の中に備えられていてもよい。
【0118】
また、上記のサーバ1を構成する構成要素の一部または全部は、1または複数のシステムLSIなどの半導体装置から構成されていてもよい。
【0119】
また、サーバ1を供給計画作成装置として機能させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体、例えば、HDD、CD-ROM、半導体メモリなどに記録して流通させてもよいし、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0120】
また、サーバ1は、複数のコンピュータにより実現されてもよい。サーバ1の一部または全部の機能がクラウドコンピューティングによって提供されてもよい。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 サーバ
2 EMS
3 LNGタンク
4 太陽光発電機
5 蓄電池
6 ガス発電機
7 電力系統
8 工場
9 電力線
10 通信線
11 ガス導管
12 LNG基地
13 LNGローリー車
14 ネットワーク
101 通信部
102 実績情報取得部
103 需要予測部
104 設備特性情報取得部
105 計画作成部
106 計画提供部