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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】通蒸型パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20240312BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D81/34 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019223684
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091454
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222369(JP,A)
【文献】特開2015-067330(JP,A)
【文献】特開2011-162667(JP,A)
【文献】特開2005-075353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚の胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、
左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成し、さらに内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、
左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、前記通蒸部下方底面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、
前記胴部材シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み、
前記最外層が、無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、
前記中間層がポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、
前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されていることを特徴とする通蒸型パウチ。
【請求項2】
前記易開封線は、レーザー加工によって、連続的あるいは間欠的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通蒸型パウチ。
【請求項3】
前記左右側面のシール部の少なくとも一方にあって、前記通蒸部下方底面側にノッチを有し、かつ、前記ノッチは、その先端部が前記易開封線を延長した仮想線上に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の通蒸型パウチ。
【請求項4】
前記胴部材シートのシーラント層は、耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料によって構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項5】
前記シーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項6】
前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされ、底部が角底に成形された請求項1~5のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封部を手などで容易に引き裂くことができ、また開封後に喫食用の容器としても使用できる通蒸型パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレトルト食品や冷凍食品などの、加熱される内容物を収容する電子レンジ用パウチが広く利用されている。このパウチを電子レンジ内で加熱すると、加熱に伴って内容物に含まれる水分が蒸発してパウチ内の圧力が高まっていく。パウチ内の圧力が高まると、パウチが破袋して内容物が飛散し電子レンジ内を汚してしまう恐れがある。そこで、加熱に伴い高まったパウチ内の圧力を外部に逃がすべく、蒸気抜き機構を備えた通蒸型パウチが知られている。
【0003】
通蒸型パウチは、内容物を収容可能な収容空間が形成されるようにシールされたシート、および、収容空間の圧力の上昇にともない開口するようにシートの一部がシールされた通蒸部、および、内容物を収容空間に充填できるように設けられた開口部を含む。通蒸型パウチの収容空間に内容物が収容された状態では、開口部がシールされることによって収容空間が閉じられる。内容物を収容した通蒸型パウチが電子レンジなどの加熱手段によって加熱された場合、内容物から水蒸気が発生し、収容空間の圧力が上昇し、シートの各部分に応力が生じる。収容空間の圧力がある程度まで上昇した場合、通蒸部を構成するシールが剥離し、収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水分が通蒸部に形成された通路を通過してパウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。
【0004】
特許文献1は、従来の通蒸型パウチの一例である電子レンジ用パウチを開示している。この電子レンジ用パウチは、特許文献1に示されるように、積層シートを備える。積層シートは、基材層、印刷層、他の層、およびシーラント層を含む。内容物を収容した電子レンジ用パウチの加熱手段による加熱が終了した場合、開封部から積層シートが引き裂かれ、収容空間から内容物が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-127257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の電子レンジ用パウチでは、手などで開封部から積層シートを引き裂こうとすると、引き裂いている途中で最内層のシーラント層が延びて、直線的に引き裂けなかったり、引き裂きか所に羽毛立ちが生じたり波状の変形が生じたりすることによって、十分な開口が得られず、開封部から容易に内容物を取り出すことができなくなる問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、通蒸型パウチであって、パウチ加熱後でも開封部を手などで容易に、直線的にかつ美麗に引き裂くことができ、容易に内容物を取り出すことができる通蒸型パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した問題を解消するために、
本発明の請求項1によると、
対向する2枚の胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、
左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成し、さらに内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、
左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、前記通蒸部下方底面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、
前記シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み、
前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されていることを特徴とする通蒸型パウチである。
【0009】
内容物が収容空間に収容された後、密封シールされた状態で、通蒸型パウチが加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。また、通蒸部の底面側に底面とほぼ平行な開封部があり、胴部材シートの中間層に形成された易開封線にそってシートを幅方向に容易に引き裂くことができる。また、中間層にだけ形成するので胴部材シートは貫通することがなく蒸気が外に漏れないのでパウチの膨張状態が保持され、好適に蒸らしを行うことができる。そして、胴部材シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【0010】
また、本発明の請求項2によると、前記易開封線は、レーザー加工によって、連続的あるいは間欠的に形成されている。レーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、易開封線の形状や深さを比較的容易に調節することができるため、中間層にだけ易開封線を形成することが可能になる。
【0011】
また、本発明の請求項3によると、前記左右側面のシール部の少なくとも一方にあって、前記通蒸部下方底面側にノッチを有し、かつ、前記ノッチは、その先端部が前記易開封線を延長した仮想線上に位置するように形成されている。易開封線は1本或いは複数本の小孔の集合体であるが、複数本のほうが、ノッチの先端部を易開封線の延長線上に一致させ易いので好ましい。ノッチの上下には掴み部があってもよく、ノッチを引き裂きの開始点とし、易開封線にそってシートを幅方向に容易に引き裂くことができる。
【0012】
また、本発明の請求項4によると、前記胴部材シートのシーラント層は、耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料によって構成されているため、シートを容易に引き裂くことができる。このため、シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【0013】
また、本発明の請求項5によると、前記シーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明の請求項6によると、前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガゼット部を有する形式で形成シールされ、底部が角底に成形されることによって、加熱により内圧が上昇したときに、パウチが底開きしやすくなり、自立状態が安定化し、パウチを開封して上部に開口部を形成した際、開口部の幅は拡大され、内容物の取り出し易さが向上し、パウチから直接喫食が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関する通蒸型パウチによれば、パウチ加熱後でも開封部を手などで容易に、直線的にかつ美麗に引き裂くことができ、容易に内容物を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の一例を示す通蒸型パウチの斜視図。
図2】本発明で用いた部材シートの層構成を示す断面図。
図3】開口した状態の通蒸部およびその周辺の拡大図。
図4】開封された状態の通蒸型パウチの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。図1は、加熱に適した内容物15の収容、および、内容物15から発生した蒸気の排出が可能な通蒸型パウチ10の一例を示している。内容物15は加熱されることによって、水蒸気を発生する被加熱物である。内容物15の一例は食品である。食品の一例は、シチューおよびスープなどのように流動性を有する食品である。通蒸型パウチ10は内容物15の品質を保ちながら長期間保存できるように構成されている。通蒸型パウチ10が取り得る形状の例は、スタンディングタイプ、ガゼットタイプなどの自立型である。図1に例示される通蒸型パウチ10の形状は、底部が角底に成形された角底タイプである。以下では、通蒸型パウチ10の正面視における通蒸型パウチ10の左右方向を標準幅方向と称し、標準幅方向と直交する方向を標準高さ方向と称する。
【0018】
通蒸型パウチ10は、胴部材シート20、底部材シート23、上部シール部31、底部シール部32、右側面シール部33、左側面シール部34、開封部50、通蒸部60を含む。胴部材シート20は、正面シート21、背面シート22からなる。正面シート21および背面シート22は、内容物15を収容する収容空間11が各シート21、22の間に形成されるように対向している。底部材シート23は、周辺を折り込まれて正面シート21の底部と背面シート22の底部との間を閉じるようにシールされる。
【0019】
胴部材シート20(21、22)および底部材シート23は、複数の層が積層された層構造を備えている。図2はこれらの部材シート20~23の層構成を示す断面図である。20~23の部材シートは最外層20A、中間層20B、シーラント層20C、第1接着層20D、および、第2接着層20Eを含む。各シート21~23の製造方法の一例はドライラミネートである。各シート21~23の第1接着層は最外層と中間層の間に設けられ、第2接着層は中間層とシーラント層の間に設けられている。
【0020】
最外層20Aは主にガス遮断性、印刷適正、および、耐熱性に優れる。最外層20Aは例えば透明蒸着層である。最外層20Aを構成する材料の一例は無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート(以下では、「蒸着PET」という)である。中間層20Bは主に耐熱性および防湿性に優れる。中間層20Bを構成する材料は、例えば胴部材シート20の幅方向に易引き裂き性を有するポリエチレンテレフタレートである。以下では、各シート21、22を構成する材料の配向方向をMD(Machine Direction)方向と称し、MD方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。各シート21、22のMD方向は、標準幅方向に沿う方向である。各シート21、22のTD方向は標準高さ方向に沿う方向である。第1接着層20Dを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。第2接着層20Eを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。
【0021】
シーラント層20Cは、耐熱性、ヒートシール性、および耐衝撃性に優れる。シーラント層20Cを構成する材料の一例はMD方向の引き裂き性に優れた無延伸ポリプロピレン(以下では、「CPP」という)である。
【0022】
MD方向の引き裂き性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。トラウザー引裂法では、TD方向の長さが50mm、MD方向の長さが150mmの長方形の試験片の中央に75mmの切り込みを入れ、23℃の恒温室内において、速度200mm/分でMD方向への引裂き力を測定した。
【0023】
図1に示される各シール部31~34は、各シート21~23が分離しないように各シート21~23を接合している。シール部31~34を形成する方法の一例はヒートシールである。正面視における通蒸型パウチ10の外郭形状は任意に選択できる。図1に示される例では、通蒸型パウチの外郭形状は長方形である。
【0024】
<通蒸型パウチの製造方法>
次に、通蒸型パウチ10の製造方法について説明する。まず、胴部材シート20からなる正面シート21、背面シート22を準備する。次に、正面シート21と背面シート22の下部の間に底部材シート23(正面シート21および背面シート22と同じてあっても異なっていてもよい)を内側に折り返し部まで挿入してなるガゼット部を有する形式で形成する。続いて、各シートの内面同士をヒートシールして、底部シール部32、右側面シール部33、左側面シール部34などのシール部を形成することによって、図1に示す底部が角底形状を有する通蒸型パウチ10を得る。続いて、胴部材シート20の上部は、上部シール部31でヒートシールするが、この部分は内容物15の充填口に使用するため、内容物15の充填前は未シールの開口部とし、内容物15の充填後にヒートシールするものである。なお、上述の例では、正面シート21、背面シート22および胴部材シート20という3枚の包装材料を用いて通蒸型パウチ10を構成する例について説明したが、通蒸型パウチ10を構成する包装材料の枚数は特には限定されない。
【0025】
<開封部>
開封部50は、左右側面のシール部の少なくとも一方にノッチ51を有する。ノッチ51の上下には掴み部53および54を有してもよい。また、標準高さ方向においてノッチ51と同じ高さで、左側面シール部右端から右側面シール部左端まで、胴部材シート20の切り裂きをガイドする易開封線52を胴部材シート20の中間層上に備えるのが望ましい。開封部50(ノッチ51、易開封線52)は、標準高さ方向において、設けられる位置は任意に選択できる。図1に示される一例では、開封部50は、標準高さ方向において、通蒸部60と底部材シート23との間に設けられる。好ましい例では、標準高さ方向において、底部材シート23よりも通蒸部60に近い位置に設けられる。
【0026】
易開封線52は、胴部材シート20の中間層上に形成された、レーザー加工による小孔の集合であり、胴部材シート20のMD方向に沿うように形成されている。ノッチ51は、ノッチ51の先端部が易開封線52の端部を延長した仮想線上に位置するように、右側面シール部33および左側面シール部34の少なくとも一方に形成される。図1では、左側面シール部34にノッチ51が形成された例を示している。
【0027】
ノッチ51は、それぞれ、図1に示すような、V字状の切り欠けからなるVノッチ以外にも、5角形の切り欠けからなる五角(亀甲)ノッチ、U字状の切り欠けからなるUノッチ、I字状の切り込みからなるIノッチ、キズ加工からなるノッチノン(登録商標)などでも良いが、切り欠けからなるノッチのように、巾の持つものが、易開封線の端部をノッチと一致させ易いので好ましい。
【0028】
易開封線52が形成された開封部50は、易開封線52が形成されていない胴部材シート20の他の部分よりも引裂強度が低い。このため、開封部50に対して易開封線52に沿う方向に力が加えられた場合、胴部材シート20が易開封線52に沿って容易に引き裂かれる。易開封線52は標準幅方向において不連続に形成された複数の切込52Aを含む
。易開封線52を形成する手段は例えばレーザー加工機である。
【0029】
易開封線52は、胴部材シート20の最外層20A側からのレーザー照射によるレーザー加工機で形成する。レーザー加工機を用いた方法によれば、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なるのを利用して、特定の層だけをカットするようなことができる。このような例としては、レーザーとして、波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、材質によってレーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、易開封線52の形状や深さを比較的容易に調節することができる。
【0030】
切込52Aの形状としては、直線状、曲線状、ミシン目線状、破線状などのいずれでもよく、その本数は、標準高さ方向において一本ないしそれ以上でよく、本発明では切込52A部分が易開封線として作用すればよい。
【0031】
好ましい例では、切込52Aは胴部材シート20を構成する最外層20A、中間層20B、および、シーラント層20Cの3層の全部を貫通せず、かつ、3層のうちの1層に形成される。切込52Aが胴部材シート20の3層を貫通していないため、収容空間11に収容された内容物15が易開封線52から外部に通過することがない。本実施形態では、切込52Aは胴部材シート20のうちの中間層20Bのみを貫通するように設けられる。
【0032】
<通蒸部>
通蒸型パウチ10は、内容物15を加熱するために加熱手段によって加熱される。加熱手段の一例は電子レンジである。通蒸型パウチ10が加熱されることにともない内容物15から水蒸気が発生する。水蒸気の発生にともない収容空間11の圧力が上昇する。通蒸部60は収容空間11の圧力の上昇にともない開口し、収容空間11の水蒸気を通蒸型パウチ10の外部に排出できるように構成されている。好ましい例では、通蒸部60は収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。
【0033】
通蒸部60は種々の形態を取り得る。一例では、通蒸部60は右側面シール部33および左側面シール部34の少なくとも一方に設けられる。別の例では、通蒸部60は右側面シール部33および左側面シール部34とは独立して、シール部の内側に設けられる。図1では、右側面シール部33だけに設けられた例を示している。
【0034】
図1に示されるように、通蒸部60の形状は、標準幅方向の外側から内側に凹む形状である。通蒸部60における標準幅方向の最も内側の部分である先端部61は、胴部材シート20のうちの収容空間11の圧力が上昇した場合に強い応力集中が生じる場所に設けられている。収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口する。
【0035】
<蒸気抜き方法>
具体的には、収容空間11の圧力の上昇にともない通蒸部60の先端部61において接合されている正面シート21と背面シート22とが剥離し、図3に示されるように収容空間11と通蒸型パウチ10の外部とを連通する蒸気抜き通路62が通蒸部60に形成される。通蒸部60が剥離する範囲は収容空間11の圧力の大きさに応じて異なる。収容空間11の圧力が高い場合、通蒸部60の根元の部分まで剥離が進行する場合もある。蒸気抜き通路62の通路面積は通蒸部60の剥離が進行するにつれて広くなる。通蒸部60が開口した場合、収容空間11の水蒸気が蒸気抜き通路62を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出される。水蒸気が排出されることにより、収容空間11の圧力の上昇が抑えられ、通蒸型パウチ10の破袋が回避される。
【0036】
<開封方法>
次に、通蒸型パウチ10を開封する方法について説明する。まず、底部材シート23を下にして通蒸型パウチ10を自立させた状態で、通蒸型パウチ10を電子レンジの内部に載置する。次に、電子レンジを利用して内容物を加熱する。これによって、内容物15の
温度が高くなり、これに伴って、内容物15に含まれる水分が蒸発して収容部11の圧力が高まる。収容部11の圧力が高くなると、正面シート21および背面シート22が外側に膨らみ、通蒸部60の蒸気抜きシール部61に力が加わり、蒸気抜きシール部61が剥離する。これにより、通蒸部60の蒸気抜き通路62を介して収容部15の蒸気を外部に逃がすことができる。
【0037】
続いて、電子レンジ調理後に、開封部でパウチを上下に引き裂く際、パウチが加熱され膨れた状態では、開封は力がかかりにくく困難となるため、ノッチ51から切り裂きをガイドする易開封線52が必要となる。この時ノッチ51の上下には掴み部53、54があってもよく、ノッチ51を引き裂きの開始点とし、掴み部53,54を両手の指で掴んで易開封線52にそってシートを幅方向に引き裂く。これにより、図4に示すように、通蒸型パウチ10を開封して上部に開口部を形成することができる。
【0038】
ところで、底部が角底に成形された角底タイプの通蒸型パウチ10を電子レンジで加熱すると、通蒸型パウチ10の収容部11の圧力が高まるにつれて通蒸型パウチ10の底部材シート23のガゼット部の幅が広がることがある。このように角底タイプは、加熱により底開き性がよく、安定して自立させることができるので好ましい。
【0039】
底開き性がよく、安定して自立させることができると、通蒸型パウチ10を開封して上部に開口部を形成した際、開口部の幅は拡大され、内容物の取り出し易さを向上させることができる。このことにより、例えば、通蒸型パウチ10に収容された状態の内容物を、皿などの別の容器に移すことなく、スプーンなどを用いてそのまま喫食することが可能になる。もちろん、通蒸型パウチ10に収容された内容物を、皿などの別の容器に取り出してもよい。この場合にも、通蒸型パウチ10の開口部の幅が拡大されていることにより、内容物の取り出し易さを向上させることができる。
【実施例
【0040】
実施例および比較例の試料を用いて、レーザー加工を有する胴部材シート20の層構成と、電子レンジ調理性、開封性の関係を確認する試験を実施した。試料は、レトルト用パウチで、内容物はカレーである。試料を600Wの電子レンジで1分間加熱調理後、電子レンジ調理時に不具合がなかったか、また胴部材シート20を引き裂いた時の開封性を、官能評価した。層構成は、透明蒸着PET12/PET12/CPP60である。また、レーザー加工としては、波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、加工を施した。なお、材料に関する用語の意味は以下のとおりである。
【0041】
<透明蒸着PET12>
酸化アルミニウムをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)に蒸着した透明蒸着フィルム。
【0042】
<PET12>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)。
【0043】
<CPP60>
耐熱性の無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み60μm)。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の実施例1~3の結果からわかるように、胴部材シート20の中間層であるPET12にだけレーザー加工を施した場合は、切込の形状が、直線状、ミシン目線状でも、また本数が、標準高さ方向において一本ないしそれ以上でも、電子レンジ調理が可能であり、また開封性においても直線カットが可能である。比較例1のように、最外層である透明蒸着PET12にレーザー加工を施すと、開封性は良いがガスバリア性が低下したため、電子レンジ調理性が悪かった。また、レーザー加工を施さなかった比較例2では、電子レンジ調理性は良かったが、開封性が悪く、内容物を取り出すことができなかった。
【0046】
以上から、本発明の通蒸型パウチによれば、次のような作用および効果が得られる。内容物が収容空間に収容され、閉鎖された通蒸型パウチが加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部とを連通する蒸気抜き通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が蒸気抜き通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。
【0047】
また胴部材シートにおいては、中間層にレーザー加工が施された場合に、胴部材シートを、開封部から手で容易に、かつ、直線的に美麗に引き裂くことができる。このため、開封口から内容物を容易に取り出すことができる。また、底部が角底に成形された角底タイプにすると、底開き性が向上して自立状態が安定化し、パウチを開封して上部に開口部を形成した際、開口部の幅は拡大され、内容物の取り出し易さを向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10・・・通蒸型パウチ
11・・・収容空間
15・・・内容物
20・・・胴部材シート
20A・・・胴部材シート最外層
20B・・・胴部材シート中間層
20C・・・胴部材シートシーラント層
20D・・・胴部材シートの第1接着層
20E・・・胴部材シートの第2接着層
21・・・正面シート
22・・・背面シート
23・・・底部材シート
31・・・上面シール部
32・・・底面シール部
33・・・右側面シール部
34・・・左側面シール部
50・・・開封部
51・・・ノッチ
52・・・易開封線
52A・・・切込
53・・・掴み部
54・・・掴み部
60・・・通蒸部
61・・・通蒸部の先端部
62・・・蒸気抜き通路
図1
図2
図3
図4