(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 125
(21)【出願番号】P 2019223873
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 壯
(72)【発明者】
【氏名】田畑 英二
(72)【発明者】
【氏名】福本 和子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 麻紀子
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120330(JP,A)
【文献】特開2017-217909(JP,A)
【文献】特開2014-151549(JP,A)
【文献】特開2015-136847(JP,A)
【文献】特開2005-170036(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録体上に第1反応性成分を含む第1液を付与する工程と、
前記第1液上に色材を含有するインクを付与する工程と、
前記インク上に第2反応性成分を含む第2液を付与する工程とをこの順に含み、
前記第1反応性成分および前記第2反応性成分は、前記色材を凝集させる作用を有し、
前記第1反応性成分と前記第2反応性成分とは、同一であり、
前記第2液を付与する工程において前記インク上に付与される前記第2液の温度は、前記第1液を付与する工程において前記記録体上に付与される前記第1液よりも高いことにより、前記色材を凝集させる作用は、前記第2液が前記第1液よりも強い、画像形成方法。
【請求項2】
記録体上に第1反応性成分を含む第1液を付与する工程と、
前記第1液上に色材を含有するインクを付与する工程と、
前記インク上に第2反応性成分を含む第2液を付与する工程とをこの順に含み、
前記第1液を付与する工程の後であって前記インクを付与する工程の前に前記記録体上の前記第1液を乾燥させる工程を含み、
前記第1反応性成分および前記第2反応性成分は、前記色材を凝集させる作用を有し、
前記第1液を乾燥させる工程において前記第1液の前記色材を凝集させる作用が減じられることにより、前記色材を凝集させる作用は、前記第2液が前記第1液よりも強い、画像形成方法。
【請求項3】
前記第1液を付与する工程の後であって前記インクを付与する工程の前に前記記録体上の前記第1液を乾燥させる工程を含み、
前記第1液を乾燥させる工程により前記第1液の前記色材を凝集させる作用が減じられる、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記第1反応性成分と前記第2反応性成分とは、同一であり、
前記第2液を付与する工程において前記インク上に付与される前記第2液中の前記第2反応性成分は、前記第1液を付与する工程において前記記録体上に付与される前記第1液中の前記第1反応性成分よりも絶対量が多い、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記第2液を付与する工程において前記インク上に付与される前記第2液中の前記第2反応性成分は、前記第1液を付与する工程において前記記録体上に付与される前記第1液中の前記第1反応性成分よりも濃度が高い、
請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第2液を付与する工程において前記インク上に付与される前記第2液は、前記第1液を付与する工程において前記記録体上に付与される前記第1液よりも液量が多い、
請求項4または請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1液を付与する工程は、前記記録体上に前記第1液をベタ塗りする工程である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第2液を付与する工程は、前記インク上に前記第2液をベタ塗りする工程である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部と、
色材を含有するインクを前記第1液上に付与するインク付与部と、
第2反応性成分を含む第2液を前記インク上に付与する第2液付与部とを備える画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、前記記録体の搬送方向を基準として、上流側から前記第1液付与部、前記インク付与部および前記第2液付与部をこの順に備え、
前記第1反応性成分および前記第2反応性成分は、前記色材を凝集させる作用を有し、
前記第1反応性成分と前記第2反応性成分とは、同一であり、
前記画像形成装置は、前記インク上に付与される前記第2液の温度が、前記記録体上に付与される前記第1液よりも高くなるように、前記第1液付与部および前記第2液付与部を制御し、前記第2液の前記色材を凝集させる作用
を、前記第1液より
も強くする、画像形成装置。
【請求項10】
第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部と、
色材を含有するインクを前記第1液上に付与するインク付与部と、
第2反応性成分を含む第2液を前記インク上に付与する第2液付与部とを備える画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、前記記録体の搬送方向を基準として、上流側から前記第1液付与部、前記インク付与部および前記第2液付与部をこの順に備え、かつ
前記第1液付与部よりも下流側かつ前記インク付与部よりも上流側に第1液乾燥部を備え、
前記第1反応性成分および前記第2反応性成分は、前記色材を凝集させる作用を有し、
前記第1液乾燥部により前記第1液の前記色材を凝集させる作用を減じることにより、前記第2液の前記色材を凝集させる作用を、前記第1液よりも強くする、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの画像形成装置において、記録用のインクと、該インク中の色材と反応する反応性成分を含む液体(以下、「反応液」とも記す)との2液を用いて画像を形成する方法(以下、「2液システム」とも記す)が公知である。上記2液システムによれば、インク中で分散状態にある色材を記録体上で上記反応性成分と反応させ、上記色材を凝集させることにより、画像の輪郭部の不明瞭性を改善することができるため、カラーブリーディングの発生を抑制した画像を得ることができるとされる。たとえば特開2010-120330号公報(特許文献1)は、インクで画像を形成する工程の前後に上記反応液を記録体に付与する工程を有するインクジェット記録方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記2液システムによれば、記録体上で色材を凝集させるまでに時間がかかり、画像にヒゲ状の滲み(フェザリング)による画像の乱れが散見されることが知られている。さらに本発明者らの検討によれば、上記2液システムにおいて反応液中の反応性成分の絶対量(反応性成分の濃度×反応液の液量)を高め、上述した凝集にかかる時間を短縮することにより、カラーブリーディングとともにフェザリングの発生を抑制しようとした場合、画像にひびおよび割れのいずれか(以下、これらを纏めて「画像の割れ」とも記す)が発生し、画像が乱れることが判明した。上記画像の割れが発生する理由は、上記色材と上記反応性成分とで形成される凝集体において、これらが接触した部分から接触していない部分に向かって凝集が進行することにより、凝集体の内部で残留応力が発生するためであると推測された。したがって2液システムを用いたインクジェットプリンタなどにおいて、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することによって画像を乱さない技術は、未だ実現しておらず、その開発が切望されている。
【0005】
上記実情に鑑み、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができる画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成することができる画像形成方法および画像形成装置を鋭意検討した結果、本開示に到達した。まず記録体上のインクを上下から反応液で挟み、この状態で色材と反応性成分とを反応させることに注目した。さらにインクの上から付与する反応液が有する色材を凝集させる作用を、インクの下に存する反応液が有する色材を凝集させる作用よりも強くすることを想到した。これにより、上記凝集体においてインクの下側から上向きに向かう凝集の進行をインクの上側からより強い凝集作用で阻止し、もって上記凝集体における凝集を一様とすることによって凝集体の内部での残留応力の発生を抑制できることを知見し、本開示を完成させた。
【0007】
すなわち本開示のある局面に従うと、記録体上に第1反応性成分を含む第1液を付与する工程と、上記第1液上に色材を含有するインクを付与する工程と、上記インク上に第2反応性成分を含む第2液を付与する工程とをこの順に含み、上記第1反応性成分および上記第2反応性成分は、上記色材を凝集させる作用を有し、上記色材を凝集させる作用は、上記第2液が上記第1液よりも強い、画像形成方法が提供される。
【0008】
上記画像形成方法において、上記第1反応性成分と上記第2反応性成分とは、同一であり、上記第2液を付与する工程において上記インク上に付与される上記第2液中の上記第2反応性成分は、上記第1液を付与する工程において上記記録体上に付与される上記第1液中の上記第1反応性成分よりも絶対量が多いことが好ましい。
【0009】
上記画像形成方法において、上記第2液を付与する工程において上記インク上に付与される上記第2液中の上記第2反応性成分は、上記第1液を付与する工程において上記記録体上に付与される上記第1液中の上記第1反応性成分よりも濃度が高いことが好ましい。
【0010】
上記画像形成方法において、上記第2液を付与する工程において上記インク上に付与される上記第2液は、上記第1液を付与する工程において上記記録体上に付与される上記第1液よりも液量が多いことが好ましい。
【0011】
上記画像形成方法において、上記第1反応性成分と上記第2反応性成分とは、同一であり、上記第2液を付与する工程において上記インク上に付与される上記第2液は、上記第1液を付与する工程において上記記録体上に付与される上記第1液よりも温度が高いことが好ましい。
【0012】
上記画像形成方法は、上記記録体上の上記第1液を乾燥させる工程を含み、上記乾燥させる工程は、上記第1液を付与する工程の後であって上記インクを付与する工程の前に含まれることが好ましい。
【0013】
上記第1液を付与する工程は、上記記録体上に上記第1液をベタ塗りする工程であることが好ましい。
【0014】
上記第2液を付与する工程は、上記インク上に上記第2液をベタ塗りする工程であることが好ましい。
【0015】
本開示の他の局面に従うと、第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部と、色材を含有するインクを上記第1液上に付与するインク付与部と、第2反応性成分を含む第2液を上記インク上に付与する第2液付与部とを備える画像形成装置であって、上記画像形成装置は、上記記録体の搬送方向を基準として、上流側から上記第1液付与部、上記インク付与部および上記第2液付与部をこの順に備え、上記第1反応性成分および上記第2反応性成分は、上記色材を凝集させる作用を有し、上記色材を凝集させる作用は、上記第1液よりも上記第2液が強い、画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができる画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る画像形成方法を適用することにより形成される画像の側断面を模式的に示した説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本開示の一実施の形態(以下、「本実施形態」とも記す)について説明する。以下の本実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表わす。図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0019】
[画像形成方法]
本実施形態に係る画像形成方法は、記録体上に第1反応性成分を含む第1液を付与する工程(第1工程)と、上記第1液上に色材を含有するインクを付与する工程(第2工程)と、上記インク上に第2反応性成分を含む第2液を付与する工程(第3工程)とをこの順に含む。上記画像形成方法において、上記第1反応性成分および上記第2反応性成分は、上記色材を凝集させる作用を有し、上記色材を凝集させる作用は、上記第2液が上記第1液よりも強い。このような特徴を有する画像形成方法は、上記色材、上記第1反応性成分および上記第2反応性成分で形成される凝集体における凝集を一様とすることにより、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができ、もって画像を乱さないようにすることができる。本実施形態に係る画像形成方法は、具体的には以下のような工程を含むことにより、
図1に示すような画像を形成することができる。
図1は、本実施形態に係る画像形成方法を適用することにより形成される画像の側断面を模式的に示した説明図である。
【0020】
〔第1工程〕
本実施形態に係る画像形成方法は、第1工程として、記録体上に第1反応性成分を含む第1液を付与する工程を含む。第1工程は、第2工程および第3工程よりも先に実行される。すなわち上記画像形成方法においては、記録体100上に最初に第1液101が付与される。
【0021】
第1液101の付与方法は、たとえばローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法などの記録体上に第1液をベタ塗りすることができる塗布方法を挙げることができる。すなわち第1液を付与する工程(第1工程)は、記録体上に第1液をベタ塗りする工程であることが好ましい。ただし第1工程は、後述する第2工程と同様にインクジェット方式の記録ヘッドを用いることにより、記録体100上に第1液101を選択的に付与することも可能である。ここで「記録ヘッド」とは、一端にオリフィスを有し、かつアクチュエータを内蔵するノズル部と、上記アクチュエータを駆動する電気回路部と、上記ノズル部に各種の液体を供給する液供給部とを備えることによって記録体上への液体付与を担うデバイスをいう。
【0022】
〔第2工程〕
本実施形態に係る画像形成方法は、第2工程として、上記第1液上に色材を含有するインクを付与する工程を含む。第2工程は、第1工程よりも後であって、第3工程よりも先に実行される。すなわち上記画像形成方法においては、記録体100上に第1液101が付与された後、記録体100の第1液101が付与された側の面にインク(
図1においてCMYKの符号により表される)が付与される。
【0023】
第2工程において第1液101上に付与されるインクの液量としては、特に制限されることはなく、この種の画像形成方法において許容される液量を第1液101上に付与することができる。ただし上記画像形成方法により形成しようとする画像は、1次色、多次色または中間調を有する部位の集合体である場合があり、この場合、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)からなる群より選ばれる1色または2色以上のインクを用いて第2工程が実行される。このため画像は、
図1に示すように1次色、多次色または中間調で表される部位毎にインクの高さが異なることとなる。第2工程におけるインクの付与方法は、インクジェット方式の記録ヘッド(以下、インクを吐出する記録ヘッドを「インクジェットヘッド」とも記す)を用いた付与方法であることが好ましい。
【0024】
〔第3工程〕
本実施形態に係る画像形成方法は、第3工程として、上記インク上に第2反応性成分を含む第2液を付与する工程を含む。第3工程は、上述した第1工程および第2工程よりも後に実行される。すなわち上記画像形成方法においては、記録体100上に第1液101およびインクが付与された後、記録体100の第1液101およびインクが付与された側の面に第2液102が付与される。本実施形態に係る画像形成方法は、第3工程が実行されることにより記録体100上に画像を形成することができる。
【0025】
第2液102の付与方法は、たとえばローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法などのインク上に第2液102をベタ塗りすることができる塗布方法を挙げることができる。すなわち第2液を付与する工程(第3工程)は、インク上に第2液をベタ塗りする工程であることが好ましい。ただし第3工程は、上述した第2工程と同様にインクジェット方式の記録ヘッドを用いることにより、インク上に第2液102を選択的に付与することも可能である。
【0026】
〔画像形成方法に用いられる各要素〕
以下、本実施形態に係る画像形成方法に用いられる「記録体」、「第1液」、「インク」、「第2液」などの各要素について詳述する。
【0027】
ここで本明細書において第1液に含まれる「第1反応性成分」および第2液に含まれる「第2反応性成分」とは、それぞれ後述するインクに含まれる色材(たとえば顔料など)を凝集させる成分をいう。すなわち第1反応性成分および第2反応性成分は、上記色材を凝集させる作用を有する。本明細書において第1液中の第1反応性成分および第2液中の第2反応性成分がインク(特に、該インクに含まれる色材)と「反応する」と記す場合も、第1反応性成分および第2反応性成分がそれぞれインク中の色材を凝集させることを意味する。第1反応性成分および第2反応性成分は、色材を凝集させる作用を有する限り、同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし色材を凝集させる作用は、上述のように第2反応性成分を含む第2液が、第1反応性成分を含む第1液よりも強いことを要する。
【0028】
本明細書において「第1反応性成分」および「第2反応性成分」をまとめて、「反応性成分」の用語により記載することがある。また色材と反応性成分とで形成される凝集体の凝集が「一様」であるとは、凝集体において、その一部から他部へと凝集が進行する方向が明確には形成されず、凝集体の全体にわたって凝集が同じように起こることを意味する。さらに第1反応性成分の「絶対量」とは、[第1反応性成分の濃度]×[第1液の液量]の式で表される量を意味し、第2反応性成分の「絶対量」とは、[第2反応性成分の濃度]×[第2液の液量]の式で表される量を意味する。
【0029】
本明細書において「インク」は、1色または2色以上の各色のインクをまとめて、インクの用語により記載することがある。「インク」は、以下の説明において水性インクを前提として説明するが、本開示の効果を奏する限りにおいて油性インクであってもよい。
【0030】
<記録体>
記録体は、この種の画像形成方法および画像形成装置において形成される画像を記録するために用いられる記録媒体であり、たとえば紙、樹脂または金属からなるフィルム、木板、段ボール、布などを例示することができる。記録体としては、具体的には普通紙、OHP(Over Head Projector)フィルムなどを用いることができる。記録体は、ロール状に巻かれた長尺のシートであってもよく、所定の寸法に裁断された枚葉であってもよい。
【0031】
<第1液>
第1液は、上述のようにインクに含まれる色材(たとえば顔料など)を凝集させる作用を有する第1反応性成分を含む液体をいう。第1液は、第1工程により記録体上に付与される点、すなわちインクおよび第2液よりも先に記録体上に付与される点において少なくとも後述するインクおよび第2液と区別される。第1液は、第1反応性成分としてたとえば酸性を呈する酸などを含む。第1液は、この酸性を呈する酸とインク中の色材とが反応することにより、上記色材を凝集させることができる。第1液は、酸性を呈する酸に代えて、第1反応性成分として多価金属塩、またはカチオン性樹脂を含むことができる。
【0032】
第1液が酸性を呈する場合、第1液を酸性にするために用いる酸としては特に限定されないが、インク中のカルボン酸基と反応させる観点から、酸解離定数(pKa)が4.5より低い値を示す酸を用いることが好ましい。このような酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸などの無機酸、カルボキシル基を有する有機酸、スルホン基を有する有機酸およびリン酸基を有する有機酸などを例示することができる。さらに記録体の最終形態の品質(すなわちプリントされた記録体の黄変、画像保存性など)を考慮した場合、第1液を酸性にするために用いる酸としては無機酸よりも有機酸が好ましい。このような有機酸としては、好ましくはクエン酸、イソクエン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、サリチル酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸誘導体、ピルピン酸、オキサロ酢酸などが挙げられる。第1液に酸を含む場合、酸の濃度(質量%)は、全第1液の質量に対し1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。特に、第1液中の酸の濃度(質量%)は、上述した範囲の中から後述する第2液よりも色材を凝集させる作用が弱くなる濃度が選択されることを要する。
【0033】
第1液が多価金属塩を含む場合、上記多価金属塩としては、2価以上の価数をもつ金属の塩を使用することができる。たとえばCa2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+などの2価の金属の塩、ならびにFe3+、Cr3+、Y3+およびAl3+などの3価の金属の塩が挙げられる。塩の種類としては炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩などの公知の塩を使用することができる。多価金属塩を含む第1液は、必要に応じて多価金属塩の溶解を目的にpHを調整することが好ましい。上記多価金属塩として好ましい塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどが例示される。第1液が多価金属塩を含む場合、多価金属塩の濃度(質量%)は、全第1液の質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。特に、第1液中の多価金属塩の濃度(質量%)は、上述した範囲の中から後述する第2液よりも色材を凝集させる作用が弱くなる濃度が選択されることを要する。
【0034】
第1液がカチオン性樹脂を含む場合、第1液に含まれるカチオン性樹脂としては特に限定されないが、たとえば4級アミンを有する樹脂を用いることが、添加量当たりの効果の観点から好ましい。たとえばカチオン性樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリアミン、カチオン変性アクリル酸樹脂、カチオン変性(メタ)アクリル樹脂、カチオン変性ビニル樹脂、カチオン性ウレタン樹脂、ならびにそのコポリマーなどが挙げられる。第1液がカチオン性樹脂を含む場合、カチオン性樹脂の濃度(質量%)は、全第1液の質量に対して1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。特に、第1液中のカチオン性樹脂の濃度(質量%)は、上述した範囲の中から後述する第2液よりも色材を凝集させる作用が弱くなる濃度が選択されることを要する。ここで本明細書において「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合、それぞれ「アクリルおよびメタクリルの両方またはいずれか一方」、「アクリレートおよびメタクリレートの両方またはいずれか一方」を表すものとする。
【0035】
第1液は、上述したインク中の固形分を凝集させ、あるいは高粘度化させる成分のほかに、必要に応じて溶剤、界面活性剤などの添加剤を含むことができる。第1液中に含有させることのできる溶剤としては、水、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオールなどを挙げることができる。
【0036】
上記溶剤は、粘性などの各種の記録体上に付与することが容易となる物性を第1液に備えさせることができる。上記溶剤は、上述した例示の中から1種を単独で用い、あるいは2種以上を併用することが好ましい。特に、溶剤の一部として水を含むことが塗布性、乾燥性、画質、安全性などの観点から好ましい。
【0037】
第1液中に含有させることのできる界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の界面活性剤をいずれも用いることができる。たとえば後述するインクに含有させることのできる界面活性剤を、いずれも第1液中に含有させることが可能である。第1液中の界面活性剤の濃度(質量%)は、全第1液の質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。第1液は、種々の目的でその他の添加剤を含むことができる。たとえば多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤などを必要に応じて添加することができる。さらに流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイルなどの油滴微粒子、紫外線吸収剤、退色防止剤、蛍光増白剤などを第1液中に含有させることも可能である。
【0038】
<インク>
インクは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)を含む各色のインクとして用いられる。インクは、これらCMYKからなる群より選ばれる1色または2色以上のインクを用いることにより、1次色、多次色または中間調を形成することができる。インクは、色材、樹脂、水性媒体、界面活性剤およびその他の添加剤などの各成分を含むことができる。インクを構成する各成分について以下、説明する。
【0039】
(色材)
インクに含まれる色材としては、顔料または染料を用いることができる。顔料としては、従来公知の顔料を制限することなく用いることができる。たとえば顔料として水分散性顔料、溶剤分散性顔料などを使用することができ、具体的には不溶性顔料、レーキ顔料などの有機顔料、およびカーボンブラックなどの無機顔料を好ましく用いることができる。
【0040】
不溶性顔料としては、特に限定されないが、たとえばアゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロールなどを好ましく用いることができる。具体的には、C.I.(カラーインデックス)ナンバーで表される以下の顔料を好ましく用いることができる。
【0041】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、たとえばC.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などを用いることができる。
【0042】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、たとえばC.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などを用いることができる。
【0043】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、たとえばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7などを用いることができる。
【0044】
その他、レッド、グリーン、ブルーまたはその他の中間色が必要とされる場合、以下の顔料から1種を単独で用い、あるいは2種以上を併用して用いることができる。たとえばC.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド194、C.I.バットバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6などを用いることができる。ブラック用の顔料としては、カーボンブラックまたはC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7などを用いることができる。
【0045】
上記顔料の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上50nm以下がさらに好ましい。上記平均粒径が200nmを超える場合、分散が不安定となる恐れがある。上記平均粒径が10nm未満になる場合も、分散が不安定となる傾向があり、もってインクの保存安定性が低下する恐れがある。顔料の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法などを用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。さらに透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも顔料の100粒子以上に対して行い、この像をImage-Pro(メディアサイバネティクス製)などの画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0046】
染料としては、アニオン性基を有する化合物を含む染料を用いることが好ましい。具体的には、アゾ染料、トリフェニルメタン染料、(アザ)フタロシアニン染料、キサンテン染料、アントラピリドン染料などが挙げられる。
【0047】
インクに含まれる色材としては、染料よりも顔料を用いることが好ましい。インク中の色材の濃度(質量%)は、全インクの質量に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(樹脂)
インクに含まれる樹脂としては、(メタ)アクリル系、スチレンアクリル系、アクリロニトリル-アクリル系、酢酸ビニルアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系などの樹脂を挙げることができる。具体的には、インクに含まれる樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂およびウレタン樹脂が好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル樹脂としては、親水性ユニットおよび疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマーおよび(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくともいずれかに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。あるいは(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレンおよびα-メチルスチレンの少なくともいずれかのモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。
【0050】
親水性ユニットとは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットをいう。親水性ユニットは、たとえば親水性基を有する親水性モノマーを重合することにより形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの無水物および塩などのアニオン性モノマーなどが挙げられる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。疎水性ユニットとは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットをいう。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0051】
ウレタン樹脂は、たとえばポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得ることができる。ポリイソシアネートとポリオールとを反応させ、さらに鎖延長剤を添加することによっても得ることができる。
【0052】
上記樹脂の重量平均分子量は、3000以上30000以下であることが好ましく、10000以上20000以下がより好ましい。上記樹脂の酸価は、60以上300以下であることが好ましい。さらに樹脂の平均粒径は、体積基準の累積50%粒径として動的光散乱法法による粒度分析計(たとえば商品名「UPA-EX150」、日機装株式会社製)を用いることにより測定することができ、たとえば100nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0053】
インク中の上記樹脂の濃度は、樹脂の重合度によっても異なるが、全インクの質量に対して2~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましい。上記樹脂の濃度が些少である場合、本開示の効果を奏することが困難となる傾向があり、上記樹脂の濃度が過多である場合、インクジェットの射出性または保存安定性が低下する傾向がある。
【0054】
上記樹脂は、上述した例示の中から1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。さらに上記樹脂は共重合体として用いられてもよく、エマルジョン状態で溶媒中に分散されて用いられてもよい。エマルジョン状態で溶媒中に分散させる場合、インクジェットによる射出性を損なわないという観点から、上記樹脂の平均粒径は300nm以下であることが好ましい。上記樹脂として溶解性ポリマーが用いられる場合、その組成および分子量は特に限定されるべきではないが、重合度の高いポリマーほど射出性が悪化する傾向があるため、重量平均分子量を50000以下とすることが好ましい。
【0055】
(水性媒体)
インクは、水性媒体を含有させることができる。水性媒体とは、水、または水および水溶性有機溶剤の混合溶媒をいう。水としては、脱イオン水またはイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の濃度は、全インクの質量に対して20質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の濃度は、全インクの質量に対して3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などをいずれも用いることができる。
【0056】
水溶性有機溶剤としては、たとえばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオールなどを用いることができる。水溶性有機溶剤は、上述した種類の中から1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
(界面活性剤)
インクに含まれる界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。界面活性剤の具体例としては、特に限定するべきではないが、たとえば陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などを挙げることができる。たとえば陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などを挙げることができる。
【0058】
たとえば両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタインなどを挙げることができる。たとえば非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコールなどを挙げることができる。
【0059】
上記界面活性剤は、その化学構造上の一部の元素が、フッ素または珪素に置換されていることも、低表面張力化の観点から好ましい。上記界面活性剤は、上述した例示の中から1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
(その他添加剤)
インクは、インクジェットヘッドの射出性または保存安定性、プリントヘッドおよびインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じ、以下の公知の各種添加剤をさらに含むことができる。たとえば多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤などを含むことができる。さらに流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイルなどの油滴微粒子、紫外線吸収剤、退色防止剤および蛍光増白剤なども含むことができる。
【0061】
(作用)
インクは、インク中の色材が上記第1液中の第1反応性成分および後述する第2液中の第2反応性成分によって凝集することにより、記録体上に定着することができる。
【0062】
<第2液>
第2液は、上述した第1液と、その組成等において同等な液体とすることができる。これによりインク中の色材を凝集させることができる。たとえば第2液は、第1液に含まれる第1反応性成分として例示した各成分を、いずれも第2反応成分として含むことができる。さらに第2液は、必要に応じて第1液に含むことができるとして例示した溶剤、添加剤およびその他の添加剤をいずれも含むことができる。第2液は、第3工程によりインク上に付与される点、すなわち第1液およびインクよりも後に記録体上に付与される点において少なくとも上述した第1液およびインクと区別される。
【0063】
ここで第1液に含まれる第1反応成分と、第2液に含まれる第2反応成分とは、色材を凝集させる作用において第2液が第1液よりも強くなる限り、同一であってもよく、異なっていてもよい。つまり、色材を凝集させる作用において第2液が第1液よりも強くなる限り、たとえば第1液に含まれる第1反応成分と、第2液に含まれる第2反応成分とが共にマロン酸であってもよく、第1液に含まれる第1反応成分がマロン酸であり、第2液に含まれる第2反応成分がフマル酸であってもよく、または第1液に含まれる第1反応成分がマロン酸であり、第2液に含まれる第2反応成分がAl3+であってもよい。このことは第1液に含まれる第1反応成分がマロン酸以外である場合であっても同様である。
【0064】
〔色材を凝集させる作用〕
本実施形態に係る画像形成方法において、上述のように色材を凝集させる作用は、第2液が第1液よりも強い。上記画像形成方法においては、たとえば第1反応性成分と第2反応性成分とが同一である場合がある。この場合、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くするためには、たとえば以下の方法に依ることができる。
【0065】
<反応性成分の絶対量>
すなわち本実施形態に係る画像形成方法は、上記第1反応性成分と上記第2反応性成分とは、同一であり、第2液を付与する工程(第3工程)において上記インク上に付与される上記第2液中の上記第2反応性成分は、上記第1液を付与する工程(第1工程)において上記記録体上に付与される上記第1液中の上記第1反応性成分よりも絶対量が多いことが好ましい。
【0066】
(濃度または液量)
このような画像形成方法としては、上記第2液を付与する工程(第3工程)において上記インク上に付与される上記第2液中の上記第2反応性成分は、上記第1液を付与する工程(第1工程)において上記記録体上に付与される上記第1液中の上記第1反応性成分よりも濃度が高いことがより好ましい。さらに、上記第2液を付与する工程(第3工程)において上記インク上に付与される上記第2液は、上記第1液を付与する工程(第1工程)において上記記録体上に付与される上記第1液よりも液量が多いこともより好ましい。以下、このような態様の画像形成方法として、たとえば第1液に含まれる第1反応成分と、第2液に含まれる第2反応成分とが共にマロン酸である場合を例示して説明する。
【0067】
第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くするためには、たとえば第3工程においてインク上に付与される第2液中のマロン酸の絶対量を、第1工程において記録体上に付与される第1液中のマロン酸の絶対量よりも多くすることができる。ここで第1液中のマロン酸の「絶対量」は、第1液中の[マロン酸の濃度]×[第1液の液量]の式で表される量である。また第2反応性成分の「絶対量」は、第1液中の[マロン酸の濃度]×[第2液の液量]の式で表される量である。
【0068】
したがって、たとえば第3工程においてインク上に付与される第2液と第1工程において記録体上に付与される第1液とを同量とした場合、第2液中のマロン酸の濃度を、第1液中のマロン酸の濃度よりも高濃度とすることにより、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くすることができる。さらに、たとえば第3工程においてインク上に付与される第2液中のマロン酸の濃度と第1工程において記録体上に付与される第1液中のマロン酸の濃度とを同濃度とした場合、インク上に付与する第2液の液量を、記録体上に付与する液量よりも多くすることにより、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くすることができる。このことは、第1液に含まれる第1反応成分と、第2液に含まれる第2反応成分とが共にマロン酸である場合に限られず、その他の酸、多価金属塩およびカチオン性樹脂であっても同様である。
【0069】
第1液および第2液中の反応性成分の具体的な濃度は、上述した第1液中の多価金属塩、酸またはカチオン性樹脂の濃度の範囲から選択されることが好ましい。さらに第1液および第2液の液量については、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くする限り、特に制限されることはなく、この種の画像形成方法において許容される液量で記録体に付与することができる。
【0070】
<第1液および第2液の温度>
本実施形態に係る画像形成方法は、第1反応性成分と第2反応性成分とが同一である場合において、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くするためには、以下の方法に依ることもできる。
【0071】
すなわち本実施形態に係る画像形成方法は、上記第1反応性成分と上記第2反応性成分とは、同一であり、上記第2液を付与する工程(第3工程)において上記インク上に付与される上記第2液は、上記第1液を付与する工程(第1工程)において上記記録体上に付与される上記第1液よりも温度が高いことが好ましい。このような画像形成方法によれば、第2液の温度が第1液の温度よりも高いことにより、第2液中の第2反応性成分の分子運動(反応性)を第1液中の第1反応性成分のそれよりも高めることができる。これにより容易に第2液の色材を凝集させる作用を、第1液のそれよりも強くすることができる。
【0072】
〔第1液乾燥工程〕
ここで上記画像形成方法は、上記記録体上の上記第1液を乾燥させる工程(第1液乾燥工程)を含むことが好ましい。上記第1液を乾燥させる工程(第1液乾燥工程)は、上記第1液を付与する工程(第1工程)の後であって上記インクを付与する工程(第2工程)の前に含まれることが好ましい。第1液乾燥工程により、第1工程において記録体上に付与した第1液を、記録体上で乾燥させることができる。これにより第2工程において乾燥している第1液上にインクが付与されたとき、第1反応性成分がインク中に染み出して色材を凝集させるまでに時間を要することとなって、第1液の色材を凝集させる作用(換言すれば、第1液の色材を凝集させる凝集速度)を減じることができる。もって容易に第2液の色材を凝集させる作用を、第1液のそれよりも強くすることができる。
【0073】
〔その他の工程〕
本実施形態に係る画像形成方法は、その他の工程として、第1工程、第2工程および第3工程が実行された後に、上記記録体上に存する残液を除去する工程(残液除去工程)を含むことができる。本明細書において「残液」とは、第1液の一部、インクの一部および第2液の一部の少なくともいずれかを含み、記録体上で画像として定着されることなく余剰分として残存する液体を意味する。残液除去工程は、たとえば吸収面を記録体上の画像と接触させることによって残液を吸収する作用を有する従来公知の吸収部材を用いることにより、記録体上に存する残液を除去することができる。このような従来公知の吸収部材としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸収性ポリマー、セルロースなどの繊維材料および任意のポリマーから多数の孔を形成した多孔体ポリマーなどを挙げることができる。残液除去工程により、記録体上で画像として定着されることなく余剰となった残液を除去し、もって画像を記録体上で速やかに定着させることができる。
【0074】
さらに画像形成方法は、その他の工程として、第1工程、第2工程および第3工程が実行された後に、記録体上の画像を乾燥させることにより、上記画像を記録体上に定着させる工程(画像定着工程)を含むことができる。上記画像定着工程は、たとえば記録体上の画像に向けて温風を吹き付ける従来公知の乾燥手段を用いることにより、上記記録体上に画像を定着させることができる。
【0075】
〔色材を凝集させる作用の評価方法〕
第1液および第2液が有する色材を凝集させる作用の強弱については、次の方法により測定することができる。すなわち、まず測定用インク(組成:顔料分散体40質量%(顔料9質量%)、樹脂3質量%、水性有機溶剤10質量%、界面活性剤0.5質量%および残部のイオン交換水)を10mL入れた50mLビーカーを必要数準備するともに、本実施形態に係る画像形成方法に用いるために調製した第1液および第2液を各3mL準備する。次に、上記測定用インクが収容された50mLビーカーそれぞれに第1液および第2液を各3mL投入することにより、上記ビーカー中に沈殿物(第1液中の第1反応性成分または第2液中の第2反応性成分によって測定用インク中の色材が凝集してなる凝集物)を発生させる。この場合において、第1液および第2液を上記ビーカーに各3mL投入したときから、上記沈殿物がビーカー中で目視で認められるまでの時間を計測する。これにより計測される時間が短いほど、色材を凝集させる作用が強いと評価することができる。
【0076】
〔画像の割れの評価方法〕
本実施形態に係る画像形成方法を用いて得られた画像が割れを有するか否かは、光学顕微鏡(たとえば商品名:「BX30」、オリンパス株式会社製)を用いて記録体上の画像を観察することにより評価することができる。具体的には、記録体上の画像の端部および中央部から各5箇所ずつの合計10箇所を上記光学顕微鏡で10倍の倍率で観察することにより、上記10箇所のすべてでインクに割れ、ひびなどの形状変化が確認されなかった場合、画像の割れによる画像の乱れが起きていないと評価することができる。一方、上記10箇所中の1箇所でも上記の形状変化が確認された場合、画像の割れによる画像の乱れが起きたと評価することができる。
【0077】
〔フェザリングの評価方法〕
本実施形態に係る画像形成方法を用いて得られた画像がフェザリングを有するか否かについても、光学顕微鏡(たとえば商品名:「BX30」、オリンパス株式会社製)を用いて記録体上の画像を観察することにより評価することができる。具体的には、記録体上の画像の端部および中央部から各5箇所ずつの合計10箇所を上記光学顕微鏡で10倍の倍率で観察することにより、上記10箇所のすべてでフェザリングが確認されなかった場合、フェザリングが起きていないと評価することができる。一方、上記10箇所中の1箇所でも上記のフェザリングが確認された場合、フェザリングが起きたと評価することができる。
【0078】
〔作用〕
本実施形態に係る画像形成方法は、上述した第1工程、第2工程および第3工程をこの順に含み、色材、第1反応性成分および第2反応性成分で形成される凝集体における凝集を一様とすることにより、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができ、もって画像を乱さないようにすることができる。
【0079】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部と、色材を含有するインクを上記第1液上に付与するインク付与部と、第2反応性成分を含む第2液を上記インク上に付与する第2液付与部とを備える画像形成装置である。上記画像形成装置は、上記記録体の搬送方向を基準として、上流側から上記第1液付与部、上記インク付与部および上記第2液付与部をこの順に備える。上記第1反応性成分および上記第2反応性成分は、上記色材を凝集させる作用を有し、上記色材を凝集させる作用は、上記第1液よりも上記第2液が強い。このような特徴を有する画像形成装置は、色材、第1反応性成分および第2反応性成分で形成される凝集体における凝集を一様とすることにより、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができ、もって画像を乱さないようにすることができる。本実施形態に係る画像形成装置は、たとえばインクジェットプリンタとして実装される画像形成装置であることが好ましい。
【0080】
以下、
図2に基づいて本実施形態の一態様に係る画像形成装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略側断面図である。
図2に示す画像形成装置は、具体的には、記録体の搬送方向に対して直交方向に記録ヘッドを動作させることにより画像を形成するシリアル型のインクジェットプリンタとして実装される画像形成装置であり、次のような構成を有する。
【0081】
〔第1液付与部〕
画像形成装置は、第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部を含む。
図2において第1液付与部は、記録体19を給紙するための給紙トレイ17を有する給紙カセット16内に搭載されており、以下の構成を有する。すなわち第1液付与部は、第1液15を供給するための第1液補充タンク22と、この第1液補充タンク22に周面の一部を浸した状態で回転自在に支持された第1液供給ローラ13と、第1液供給ローラ13と平行となるようにして配置され、かつ第1液供給ローラ13と接触することによって回転する第1液塗布ローラ6とを有する。ここで第1液塗布ローラ6は、記録体19を搬送するための中間ローラ12とも周面が接触し、かつ中間ローラ12と平行となるようにして配置されている。したがって、給紙トレイ17から記録体19が給紙されることによって記録体19が搬送される際には、中間ローラ12の回転に伴って第1液供給ローラ13および第1液塗布ローラ6が回転する。その結果、第1液供給ローラ13によって第1液塗布ローラ6の周面に第1液が供給され、さらに第1液塗布ローラ6と中間ローラ12とによって挟持された記録体19上に、第1液15が第1液塗布ローラ6によってベタ塗りされる。このように第1液付与部は、記録体19上に第1液15をベタ塗りする機構を備えることが好ましい。
【0082】
なお第1液15の詳細については、上述したとおりであるので、その説明は繰り返さない。また第1液付与部を含む給紙カセット16は、画像形成装置の筐体から着脱することができる。この給紙カセット16内の給紙トレイ17上に、記録体19が積載される。給紙時においては、給紙トレイ17を上方向に押圧する弾性部材18によって最上位に位置する記録体19が給紙ローラ10に圧接される。この給紙ローラ10は、断面形状が概略半月形のローラであり、モータ(不図示)によって駆動回転し、分離爪(不図示)により最上位の記録体19のみを中間ローラ12の方向へ給紙する。
【0083】
〔インク付与部〕
画像形成装置は、色材を含有するインクを第1液上に付与するインク付与部を含む。
図2においてインク付与部は、キャリッジ2と、このキャリッジ2内に収容され、色材を含有するインクを記録体19へ付与する記録ヘッド1と、この記録ヘッド1を往復移動させるための駆動手段と、キャリッジ2を記録体19の幅方向に沿って平行に移動可能とするガイド軸9とを備えている。記録ヘッド1は、色材を含有するインクを記録体19に付与された第1液15上に付与するために、インク吐出口が形成された面を圧盤11側に配向するようにしてキャリッジ2に搭載されている。記録ヘッド1は、上記インク吐出口と、インクを加熱するための複数の電気熱変換体(たとえば発熱抵抗素子)と、これを支持する基板とを有している。記録ヘッド1は、キャリッジ2の後述する往復移動と同期して駆動し、インクを記録体19へ向けて吐出することにより、インクを第1液15上に付与することができる。
【0084】
キャリッジ2は、上述の記録ヘッド1を搭載し、さらに記録ヘッド1からインクを吐出するためのインクカートリッジを搭載することができる。キャリッジ2は、記録体19の幅方向に沿って平行に延びる2本のガイド軸9に沿って往復移動することができる。なおインクの詳細については、上述したとおりであるので、その説明は繰り返さない。
【0085】
〔第2液付与部〕
画像形成装置は、第2反応性成分を含む第2液をインク上に付与する第2液付与部を含む。
図2において第2液付与部は、図示を省略したが、たとえばインク付与部を基準として、記録ヘッド1からインクが付与された記録体19を排出搬送するための排紙ローラ3とこれに圧接する拍車4とが位置する側に設けられる。第2液付与部は、たとえば第2液をローラーコーティング法により記録体19に付与されたインク上に付与する場合、上述した第1液補充タンク22、第1液供給ローラ13および第1液塗布ローラ6とからなる機構と同様な機構(以下、当該機構に含まれるそれぞれを「第2液補充タンク」、「第2液供給ローラ」および「第2液塗布ローラ」とも記す)を有することができる。このような機構により第2液付与部は、インク上に第2液をベタ塗りする機構を備えることが好ましい。なお第2液の詳細については、上述したとおりであるので、その説明は繰り返さない。
【0086】
〔第1液付与部、インク付与部および第2液付与部の位置関係〕
画像形成装置は、記録体19の搬送方向を基準として、上流側から第1液付与部、インク付与部および第2液付与部をこの順に備える。すなわち記録体19は、給紙トレイ17から給紙された後、まず中間ローラ12とこれに圧接している小径の第1液塗布ローラ6とによって、記録体19上の一方の面に第1液15が付与されながら、筐体の搬送面(ペーパーガイド27)に沿って搬送される。ここでペーパーガイド27は、中間ローラ12と同心的な円弧を描くようにして湾曲した面からなる。したがって記録体19は、ペーパーガイド27を通過することによって、その搬送方向を逆転させる。これにより記録体19上の第1液15、インクおよび第2液が付与される面は、給紙トレイ17から搬送されて中間ローラ12に達するまで
図2において下方向を向いているが、記録ヘッド1に対向する時点では、上方向(記録ヘッド1側)を向く。
【0087】
次に、第1液15が付与された記録体19は、搬送ローラ7とそれに圧接しているピンチローラ8により所定量送られてインク付与部へと搬送され、記録ヘッド1からインクを付与される。その後、記録体19は、第2液付与部によって第2液が付与された後、排紙ローラ3とこれに圧接する拍車4とによって排出搬送され、排紙トレイ5上にスタックされる。
【0088】
〔色材を凝集させる作用〕
本実施形態に係る画像形成装置では、上述のように第1液中の第1反応性成分および第2液中の第2反応性成分が、インク中の色材を凝集させる作用を有する。この色材を凝集させる作用は、第2液が第1液よりも強い。上記画像形成装置においては、次のような制御部を備えることにより、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くすることができる。具体的には画像形成装置は、たとえば第1反応性成分と第2反応性成分とが同一である場合、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くするために、以下のような制御部を備えることができる。
【0089】
<反応性成分の絶対量>
本実施形態に係る画像形成装置は、第1反応性成分と第2反応性成分とが同一であり、インク上に付与される第2液中の第2反応性成分の絶対量が、記録体上に付与される第1液中の第1反応性成分の絶対量よりも多く含まれるように制御することが好ましい。この場合、たとえば上記画像形成装置の制御部は、第1液塗布ローラ6の周面に供給される第1液15中の第1反応性成分の絶対量、および第2液塗布ローラの周面に供給される第2液中の第2反応性成分の絶対量をモニタし、これを調整することにより、第2液中の第2反応性成分の絶対量が第1液中の第1反応性成分の絶対量よりも多く含まれるように制御する。これにより容易に第2液の色材を凝集させる作用を、第1液のそれよりも強くすることができる。ここで第1液中の第1反応性成分の「絶対量」は、上述のように第1液中の[第1反応性成分の濃度]×[第1液の液量]の式で表される量である。また第2反応性成分の「絶対量」は、上述のように第2液中の[第2反応性成分の濃度]×[第2液の液量]の式で表される量である。
【0090】
(濃度または液量)
このような画像形成装置においては、インク上に付与される第2液中の第2反応性成分の濃度が、記録体上に付与される第1液中の第1反応性成分の濃度よりも高くなるように、第1液付与部および第2液付与部を制御することがより好ましい。また画像形成装置は、インク上に付与される第2液の液量が、記録体上に付与される第1液の液量よりも多くなるように、第1液付与部および第2液付与部を制御することもより好ましい。
【0091】
すなわち画像形成装置の制御部は、第1液塗布ローラ6が供給する第1液15、および第2液塗布ローラが供給する第2液とが同量である場合、第1液塗布ローラ6の周面に供給される第1液15中の第1反応性成分の濃度、および第2液塗布ローラの周面に供給される第2液中の第2反応性成分の濃度をモニタし、これを調整する。これにより第2液中の第2反応性成分の濃度を、第1液15中の第1反応性成分の濃度よりも高濃度となるように制御することができる。さらに制御部は、第1液塗布ローラ6が供給する第1液15中の第1反応性成分の濃度、および第2液塗布ローラが供給する第2液中の第2反応性成分の濃度とが同じである場合、第1液塗布ローラ6の周面に供給される第1液15の液量、および第2液塗布ローラの周面に供給される第2液の液量をモニタし、これを調整する。これにより第1液塗布ローラ6が供給する第1液15の液量を、第2液塗布ローラが供給する第2液の液量よりも多くなるように制御することができる。なお、第1液および第2液中の反応性成分の具体的な濃度、および第1液および第2液の液量は、上述したとおりであるので説明を繰り返さない。
【0092】
<第1液および第2液の温度>
さらに本実施形態に係る画像形成装置においては、次のような制御部を備えることにより、第1反応性成分と第2反応性成分とが同一である場合、第2液の色材を凝集させる作用を第1液のそれよりも強くすることもできる。
【0093】
このような画像形成装置においては、第1反応性成分と第2反応性成分とが同一であり、インク上に付与される第2液の温度が、記録体上に付与される第1液の温度よりも高くなるように、第1液付与部および第2液付与部を制御することが好ましい。この場合、画像形成装置の制御部は、第1液補充タンク22中の第1液15の温度、および第2液補充タンク中の第2液の温度をモニタし、これを調整する。これにより、第2液の温度が第1液の温度よりも高くなるように第1液付与部および第2液付与部を制御することができ、もってより容易に第2液の色材を凝集させる作用を、第1液のそれよりも強くすることができる。
【0094】
〔第1液乾燥部〕
ここで上記画像形成装置は、上記記録体上の上記第1液を乾燥させる乾燥部(第1液乾燥部)を含むことが好ましい。上記乾燥部(第1液乾燥部)は、上記記録体の搬送方向を基準として、上記第1液付与部よりも下流側かつ上記インク付与部よりも上流側に備えられることが好ましい。第1液乾燥部により、第1液付与部において記録体上に付与した第1液を、記録体上で乾燥させることができる。これによりインク付与部において記録体上で乾燥している第1液上にインクが付与されたとき、第1反応性成分がインク中に染み出して色材を凝集させるまでに時間を要することとなって、第1液の色材を凝集させる作用(換言すれば、第1液の色材を凝集させる凝集速度)を減じることができる。もって容易に第2液の色材を凝集させる作用を、第1液のそれよりも強くすることができる。
【0095】
〔その他の構成〕
本実施形態に係る画像形成装置は、その他の構成として、第2液付与部においてインク上に第2液が付与された後に、上記記録体上に存する残液を除去する残液除去部を含むことができる。上記「残液」とは、上述したとおりであるので説明を繰り返さない。残液除去部は、たとえば吸収面を有し、この吸収面を記録体上の画像と接触させることによって残液を吸収する機能を有する従来公知の吸収部材を含むことが好ましい。このような従来公知の吸収部材としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸収性ポリマー、セルロースなどの繊維材料および任意のポリマーから多数の孔を形成した多孔体ポリマーなどを挙げることができる。残液除去部により、記録体上で画像として定着されることなく余剰となった残液を一様に除去し、もって画像を記録体上で速やかに定着させることができる。
【0096】
さらに画像形成装置は、その他の構成として、第2液付与部においてインク上に第2液が付与された後に、記録体上の画像を乾燥させることにより、上記画像を記録体上に定着させる画像定着部を含むことができる。画像定着部は、たとえば記録体上の画像に向けて温風を吹き付ける従来公知の乾燥手段を用いることにより、記録体上に画像を定着させることができる。
【0097】
〔作用〕
本実施形態に係る画像形成装置は、記録体の搬送方向を基準として、上流側から上述した第1液付与部、インク付与部および第2液付与部をこの順に備え、色材、第1反応性成分および第2反応性成分で形成される凝集体における凝集を一様とすることにより、画像の割れおよびフェザリングの両者の発生を抑制することができ、もって画像を乱さないようにすることができる。
【0098】
〔付記〕
以上の説明は、以下に付記する実施形態を含む。
【0099】
<付記1>
第1反応性成分を含む第1液を記録体上に付与する第1液付与部と、
色材を含有するインクを前記第1液上に付与するインク付与部と、
第2反応性成分を含む第2液を前記インク上に付与する第2液付与部とを備える画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、前記記録体の搬送方向を基準として、上流側から前記第1液付与部、前記インク付与部および前記第2液付与部をこの順に備え、
前記第1反応性成分および前記第2反応性成分は、前記色材を凝集させる作用を有し、
前記色材を凝集させる作用は、前記第1液よりも前記第2液が強い、画像形成装置。
【0100】
<付記2>
前記第1反応性成分と前記第2反応性成分とは、同一であり、
前記画像形成装置は、前記インク上に付与される前記第2液中の前記第2反応性成分の絶対量が、前記記録体上に付与される前記第1液中の前記第1反応性成分の絶対量よりも多く含まれるように、前記第1液付与部および前記第2液付与部を制御する、付記1に記載の画像形成装置。
【0101】
<付記3>
前記画像形成装置は、前記インク上に付与される前記第2液中の前記第2反応性成分の濃度が、前記記録体上に付与される前記第1液中の前記第1反応性成分の濃度よりも高くなるように、前記第1液付与部および前記第2液付与部を制御する、付記2に記載の画像形成装置。
【0102】
<付記4>
前記画像形成装置は、前記インク上に付与される前記第2液の液量が、前記記録体上に付与される前記第1液の液量よりも多くなるように、前記第1液付与部および前記第2液付与部を制御する、付記2または付記3に記載の画像形成装置。
【0103】
<付記5>
前記第1反応性成分と前記第2反応性成分とは、同一であり、
前記画像形成装置は、前記インク上に付与される前記第2液の温度が、前記記録体上に付与される前記第1液の温度よりも高くなるように、前記第1液付与部および前記第2液付与部を制御する、付記1から付記4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0104】
<付記6>
前記画像形成装置は、前記記録体上の前記第1液を乾燥させる乾燥部を含み、
前記乾燥部は、前記記録体の搬送方向を基準として、前記第1液付与部よりも下流側かつ前記インク付与部よりも上流側に備えられる、付記1から付記5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0105】
<付記7>
前記第1液付与部は、前記記録体上に前記第1液をベタ塗りする機構を備える、付記1から付記6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0106】
<付記8>
前記第2液付与部は、前記インク上に前記第2液をベタ塗りする機構を備える、付記1から付記7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0108】
<記録体、第1液、インク、第2液および画像形成装置などの準備>
記録体として市販の一般紙(商品名:「OKトップコート+(A2 73gsm)」、王子製紙株式会社製)を準備した。
【0109】
画像形成装置として市販のインクジェット印刷機を改造したテスタ機を準備した。上記テスタ機は、
図2に示すようなシリアル型のインクジェットプリンタとして実装される画像形成装置であり、画像形成方法を実行するための各種の制御を行うことができる。すなわち上記テスタ機は、ローラーコーティング法を実行可能な第1液塗布ローラを有する第1液付与部、記録ヘッドを有するインク付与部、ローラーコーティング法を実行可能な第2液塗布ローラを有する第2液付与部、ならびにこれらの第1液付与部、インク付与部および第2液付与部を制御する制御部を備える。上記テスタ機において記録体の搬送速度は、200mm/秒である。
【0110】
第1液として、マロン酸(pKaは2.83)5質量%、有機溶剤5質量%、界面活性剤4質量%および残部のイオン交換水からなる組成を有する液体を準備した。
【0111】
インクとして、顔料分散体40質量%(顔料9質量%)、樹脂3質量%、水性有機溶剤10質量%、界面活性剤0.5質量%および残部のイオン交換水からなる組成を有する顔料分散液を準備した。
【0112】
第2液として、上記第1液におけるマロン酸の濃度を1倍とした液体(以下、「第2液-1」とも記す)および2倍とした液体(以下、「第2液-2」とも記す)をそれぞれ準備した。
【0113】
<予備実験の実行>
(色材を凝集させる作用の評価)
第1液、第2液-1および第2液-2が有する色材を凝集させる作用の強弱を上述した方法により測定した。すなわち、上述した測定用インクを10mL入れたビーカーを4つ準備するとともに、第1液、第2液-1および第2液-2を各10mL準備した。次に、インクが収容された上記ビーカーそれぞれに3mLの第1液(被測定試料a)、4.5mLの第2液-1(被測定試料b)、3mLの第2液-2(被測定試料c)および2.25mLの第2液-2(被測定試料d)をぞれぞれ投入することにより、上記ビーカー中に沈殿物(マロン酸とインク中の色材が凝集してなる凝集物)を発生させた。この場合において、被測定試料a~被測定試料dを上記ビーカーに投入したときから、上記沈殿物がビーカー中で目視で認められるまでの時間を計測した。これにより計測される時間が短い被測定試料ほど、色材を凝集させる作用が強いと評価した。
【0114】
その結果、色材を凝集させる作用は、被測定試料cが最も強く、被測定試料bおよび被測定試料dが次いで強く、被測定試料aが最も弱いことが分かった。
【0115】
<画像形成方法の実行>
(試料1)
上述のようにして準備した記録体、第1液、インク、第2液および画像形成装置(テスタ機)を用い、記録体上に
図1に示すような画像を形成した。まず第1液付与部を用いてA2サイズの記録体上に2.5mL(厚み約10μm)の第1液(色材を凝集させる作用は被測定試料aのそれに相当)を付与した(第1工程)。さらにインク付与部により第1液上にインクを付与した(第2工程)。次いで、第2液付与部を用いてインク上に2.5mL(厚み約10μm)の第2液-2(色材を凝集させる作用は被測定試料cのそれに相当)を付与した(第3工程)。これにより上記記録体上に画像を形成した。上述のように試料1では、マロン酸濃度が第1液の2倍である第2液-2を第1液と同量付与した。
【0116】
(試料2)
第2液付与部を用いてインク上に3.75mL(厚み約15μm)の第2液-1(色材を凝集させる作用は被測定試料bのそれに相当)を付与すること以外、試料1と同じ工程を経ることにより画像を形成した。試料2では、マロン酸濃度が第1液と同じである第2液-1を第1液に対して1.5倍量付与した。
【0117】
(試料3)
第2液付与部を用いてインク上に1.88mL(厚み約7.5μm)の第2液-2(色材を凝集させる作用は被測定試料dのそれに相当)を付与すること以外、試料1と同じ工程を経ることにより画像を形成した。試料3では、マロン酸濃度が第1液の2倍である第2液-2を第1液に対して0.75倍量付与した。
【0118】
(試料4)
第2液付与部により第2液を付与しなかったこと以外、試料1と同じ工程を経ることにより画像を形成した。
【0119】
(試料5)
第1液付与部を用いて記録体上に2.5mL(厚み約10μm)の第2液-2を(色材を凝集させる作用は被測定試料cのそれに相当)付与し、かつ第2液付与部により第2液を付与しなかったこと以外、試料1と同じ工程を経ることにより画像を形成した。
【0120】
(試料6)
第2液付与部を用いてインク上に2.5mL(厚み約10μm)の第2液-1(色材を凝集させる作用は被測定試料aのそれに相当)を付与すること以外、試料1と同じ工程を経ることにより画像を形成した。試料6では、マロン酸濃度が第1液と同じである第2液-1を第1液と同量付与した。
【0121】
本実施例においては、試料1~3が実施例に相当し、試料4~試料6が比較例に相当する。
【0122】
<画像の割れの評価>
試料1~試料6の画像に対し、上述した評価方法に従って画像が割れを有するか否か(インクに割れなどの形状変化が確認されるか否か)を定性評価した。結果を表1に示す。表1中、評価結果の「割れ」の項目において、インクに形状変化が確認された試料を「有」と示し、インクに形状変化が確認されなかった試料を「無」と示す。
【0123】
<凝集速度の評価>
試料1~試料6の画像に対し、第2液付与部によりインク上に第2液を付与した時点から画像が記録体上で定着するまでの凝集時間を測定することにより、インクの凝集速度の速さを比較した。上記の凝集速度が速いほど、早期に画像が定着するため乱れのない良好な画像が得るために有利となるものと評価することができる。また上記の凝集速度が遅いほど、フェザリングが発生するリスクが高まると評価することができる。結果を表1に示す。表1中、評価結果の「凝集速度」の項目において、「AAA」は、試料1~試料6の中で最も凝集時間が短く、もって凝集速度が最も速かったことを示し、「AA」は、試料1~試料6の中で2番目に凝集時間が短く、もって2番目に凝集速度が速かったことを示す。「A」は、試料1~試料6の中で3番目に凝集時間が短く、もって3番目に凝集速度が速かったことを示す。「B」は、試料1~試料6の中で最も凝集時間が長く、もって最も凝集速度が遅かったことを示す。
【0124】
<画像の乱れの評価>
さらに試料1~試料6に対して目視により、インクの形状変化またはフェザリング等による画像の乱れの有無を確認した。その結果を、表1中の「画像の乱れ」の項目において示す。
【0125】
【0126】
ここで表1において、第1液および第2液中の「マロン酸」の項目において示す「1」および「2」は、試料4の第1液中のマロン酸の濃度を「1」とした場合における各試料の第1液および第2液中の各マロン酸の濃度を表す。第1液および第2液中の「液量」の項目において示す「1」、「1.5」および「0.75」は、試料4の第1液の液量を「1」とした場合における各試料の第1液および第2液の液量を表す。
【0127】
<考察>
上記の表1によれば、試料1~試料3において乱れのない良好な画像が得られた。試料1~試料3の画像は、第2液が第1液よりも色材を凝集させる作用が強いという関係を満たす第1液および第2液を用いて形成された。これに対し、試料5~試料6の画像は乱れが観察された。試料5~試料6の画像は、第2液を用いないで、あるいは色材を凝集させる作用が等しい関係にある第1液および第2液を用いて形成された。なお試料4においても画像の乱れが観察された。試料4は、従来の2液システムに沿って画像を印刷した例であって、インクに形状変化が確認されなかったものの、凝集速度が遅いことに起因してインクが記録体上で滲むフェザリングが発生したために画像が乱れたと推定された。以上から、本開示に係る第1工程、第2工程および第3工程をこの順に含む画像形成方法、および記録体の搬送方向を基準として、上流側から第1液付与部、インク付与部および第2液付与部をこの順に備える画像形成装置においては、色材、第1反応性成分および第2反応性成分で形成される凝集体における凝集が一様となり、もって乱れのない良好な画像が得られたことが示唆される。
【0128】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0129】
100 記録体、101 第1液、102 第2液、1 記録ヘッド、2 キャリッジ、3 排紙ローラ、4 拍車、5 排紙トレイ、6 第1液塗布ローラ、7 搬送ローラ、8 ピンチローラ、9 ガイド軸、10 給紙ローラ、11 圧盤、12 中間ローラ、13 第1液供給ローラ、15 第1液 16 給紙カセット、17 給紙トレイ、18 弾性部材、19 記録体、22 第1液補充タンク、27 ペーパーガイド。