(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20240312BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240312BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240312BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D30/02 ZAB
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B65D65/40 D BRH
(21)【出願番号】P 2020004344
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】雨河 宏太朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171861(JP,A)
【文献】特開2019-006421(JP,A)
【文献】特開2018-099843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339498(US,A1)
【文献】特開2015-123672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B32B 9/00
B32B 27/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルム層、インキ層、接着層、シーラント層が、この順に積層され、
前記バリアフィルム層は密度0.940~0.980g/cm
3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムであり、
前記シーラント層は、
外層(A)と中間層(B)と内層(C)がこの順に積層された3層以上
の厚さ50~80μmの易引裂性多層ポリエチレン樹脂フィルムであ
り、
前記外層(A)がポリエチレン樹脂(a)を含み、前記中間層(B)がポリエチレン樹脂(b2)を含み、前記内層(C)がポリエチレン樹脂(c)を含み、
前記外層(A)、前記中間層(B)及び前記内層(C)のうち、前記中間層(B)のみが環状オレフィン系樹脂(b1)及びヒンダードアミン系光安定剤を更に含有していることを特徴とする積層体から作製された自立性包装袋。
【請求項2】
前記バリアフィルム層に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、前記シーラント層のシール強度安定温度より30℃以上高いことを特徴とする請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項3】
前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材の一方の面に金属酸化物からなる蒸着層とガスバリア被膜層とをこの順序に積層してなり、
前記ガスバリア被膜層は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2に記載の自立性包装袋。
【請求項4】
前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材と蒸着層との間にアンカーコート剤を含有する密着層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項5】
前記バリアフィルムの金属酸化物蒸着層は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項6】
前
記中間層(B)が、
前記環状オレフィン系樹脂(b1)10~90重量%と、
前記ポリ
エチレン樹脂(b2)10~90重量%を含むことを特徴とする請求項
1~5のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項7】
前
記環状オレフィン系樹脂(b1)は、エチレン・環状オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項
1~6のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項8】
前
記中間層(B)に含まれる
前記環状オレフィン系樹脂(b1)の含有量は、
前記シーラント層全体の5~50重量%であることを特徴とする請求項
1~
7のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項9】
前記シーラント層に含まれるポリ
エチレン樹脂(a)、ポリ
エチレン系樹脂(b2)
及びポリ
エチレン系樹脂(c)が
いずれも下記(1)および(2)の
条件を満たすことを特徴とする請求項
1~
8のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
(1)メルトフローレート(MFR;190℃、21.18N荷重)が0.01~20g/10分
(2)密度が0.870~0.970g/cm
3
【請求項10】
前記シーラント層は、次の(1)
又は(2)の構成を有することを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
(
1)
前記外層(A)
が紫外線吸収剤を
更に含有する。
(
2)
前記中間層(B)
が紫外線吸収剤を
更に含有する。
【請求項11】
前
記中間層(B)
における前記ヒンダードアミン系光安定剤
の含有量が前記中間層の重量基準で0.1重量%以上
であることを特徴とする請求項
1~10のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項12】
前記シーラント層を構成する多層フィルムは、JIS K7350-4に準拠して行ったサンシャインカーボンアークウェザーメーター耐候性試験において、耐候性試験前の引張破壊伸度の50%に到達するまでのカーボンアーク暴露時間が、
前記中間層(B)をポリオレフィン系樹脂(b2)のみで構成した時の多層フィルムと同等以上であることを特徴とする請求項
1~
11のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【請求項13】
前記シーラント層を構成する多層フィルムは、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向および横方向において、それぞれ100N/15mm以下であることを特徴とする請求項1~
12のいずれか1項に記載の自立性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装材料を製袋して得られる自立性包装袋(スタンディングパウチ)に関し、特に単一素材の組み合わせからなり、易開封性とバリア性を兼ね備えた自立性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂フィルムの積層体からなる軟包装材料を製袋加工して得られるスタンディングパウチと称する自立性包装袋が、各種液体食品や、トイレタリー用品の収納容器として広く用いられている。スタンディングパウチは、自立性を有するので、販売時における展示効果に優れ、購入後の保管や使用にも便利であるばかりでなく、包装袋としての収納効率にも優れている。
【0003】
従来のスタンディングパウチは、耐熱性を有する基材フィルムと低温融着性を有するシーラント層とを少なくとも有する積層体を用いて製造されていた。耐熱性を有する基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムや、延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム、延伸ナイロン(ONy)樹脂フィルム等が用いられ、シーラント層としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂等のポリオレフィン系樹脂が多く用いられていた。
【0004】
しかし、これらの異種素材を組み合わせた軟包装材料は、廃棄後に分別するのが困難であるため、素材としてリサイクル使用することができないか、あるいは機械的に分別したとしても回収材料の純度を落とす結果となり、処理方法としては、埋め立てるか焼却処理して熱エネルギーとして回収するしか方法がなかった。
【0005】
近年、地球環境保護の必要性から、焼却処理(サーマルリサイクル)から、素材としてのリサイクル(マテリアルリサイクル)への気運が高まるにつれて、異種素材の組み合わせではなく、単一素材の組み合わせからなるモノマテリアル包装材料が注目を浴びるようになってきた。
【0006】
一方、包装材料として必要とされる性質としては、製袋適性、易開封性、バリア性等が挙げられる。製袋適性の中でも、ヒートシール適性は重要であり、安定したヒートシールを可能とするためには、基材層とシーラント層の溶融温度差が30℃以上あることが望ましいとされている。
【0007】
易開封性については、従来例えばPET/PEの組み合わせであれば、CO2レーザー光をPETは吸収するがPEは透過する性質を利用して、CO2レーザー加工機を用いてPET層のみにハーフカット加工による開封線を施す処理が容易に可能であったが、例えばPE系樹脂のみからなる積層体では、このようなレーザーを用いたハーフカット加工が安定してできないという問題がある。
【0008】
バリア性については、従来PETフィルムを基材として用いた無機酸化物蒸着フィルムが広く用いられているが、包装材をすべてPET樹脂系で統一しようとすると、シール温度が高くなり、製袋適性に問題が生じる。
【0009】
特許文献1に記載された積層構造体及びそれから作製されるスタンドアップパウチは、PE樹脂系材料を組み合わせて構成された積層構造体と、これを用いて作製されたスタンディングパウチである。特許文献1に記載されたスタンディングパウチは、単一のPE樹
脂系材料から構成されているため、マテリアルリサイクルが可能であるが、易開封性やバリア性については、一切考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、マテリアルリサイクルが可能であり、しかも易開封性やガスバリア性にも優れた包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、バリアフィルム層、インキ層、接着層、シーラント層が、この順に積層され、前記バリアフィルム層は密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムであり、前記シーラント層は、3層以上からなる厚さ50~80μmの易引裂性多層ポリエチレン樹脂フィルムであることを特徴とする積層体から作製された自立性包装袋である。
【0013】
本発明に係る自立性包装袋は、包装袋を構成する積層体の主要な成分がポリエチレン樹脂で統一されているため、マテリアルリサイクルが可能である。また積層体がバリアフィルム層を備えているため、ガスバリア性を有し、さらにシーラント層が易引裂性を有するため、積層体も易引裂性を有し、包装袋の開封が容易である。
【0014】
なお前記バリアフィルム層に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、前記シーラント層のシール強度安定温度より30℃以上高いことが望ましい。
【0015】
また、前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材の一方の面に金属酸化物からなる蒸着層とガスバリア被膜層とをこの順序に積層してなり、前記ガスバリア被膜層は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含むことができる。
【0016】
また、前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材と蒸着層との間にアンカーコート剤を含有する密着層を有することができる。
【0017】
また、前記バリアフィルムの金属酸化物蒸着層は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含むことができる。
【0018】
また、前記シーラント層は、環状オレフィン系樹脂(b1)、およびポリオレフィン系樹脂(b2)の混合樹脂を樹脂主成分とする中間層(B)、該中間層よりも外側に積層した、ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂主成分とする外層(A)、および前記中間層よりも内側に積層した、ポリオレフィン系樹脂(c)を樹脂主成分とする内層(C)を少なくとも有する、3層以上の積層構造を有する多層フィルムとすることができる。
【0019】
また、前記シーラント層は、次の(1)~(3)のいずれかの構成を有することが望ましい。
(1)中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤を含有する。
(2)外層(A)に紫外線吸収剤を含有し、中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤を含有する。
(3)中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤と紫外線吸収剤を含有する。
【0020】
また、前記シーラント層は、中間層(B)が、環状オレフィン系樹脂(b1)10~90重量%と、ポリオレフィン系樹脂(b2)10~90重量%を含むことができる。
【0021】
また、前記シーラント層は、中間層(B)中にヒンダードアミン系光安定剤を中間層の0.1重量%以上含むことがより望ましい。
【0022】
また、前記シーラント層の中間層(B)に含まれる環状オレフィン系樹脂(b1)は、エチレン・環状オレフィン共重合体であってもよい。
【0023】
また、前記シーラント層の中間層(B)に含まれる環状オレフィン系樹脂(b1)の含有量は、シーラント層全体の5~50重量%であることが望ましい。
【0024】
また、前記シーラント層に含まれるポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂(b2)、ポリオレフィン系樹脂(c)が下記(1)および(2)の特徴を有するポリエチレン系樹脂であることが望ましい。
(1)メルトフローレート(MFR;190℃、21.18N荷重)が0.01~20g
/10分
(2)密度が0.870~0.970g/cm3
【0025】
また、前記シーラント層を構成する多層フィルムは、JIS K7350-4に準拠して行ったサンシャインカーボンアークウェザーメーター耐候性試験において、耐候性試験前の引張破壊伸度の50%に到達するまでのカーボンアーク暴露時間が、中間層(B)をポリオレフィン系樹脂(b2)のみで構成した時の多層フィルムと同等以上であることが望ましい。
【0026】
また、前記シーラント層を構成する多層フィルムは、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向および横方向において、それぞれ100N/15mm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る自立性包装袋は、包装袋を構成する積層体の主要な成分がポリエチレン樹脂で統一されているため、マテリアルリサイクルが可能である。またバリアフィルム層を備えているため、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア性を有し、内容物の保存性が高い。さらにシーラント層が易引裂性を有するため、易開封性の包装袋とすることができ、容易に開封することができる。
【0028】
積層体の表層となる高密度ポリエチレン樹脂フィルムの疑似接着開始温度と、シーラント層のシール強度安定温度との間に30℃以上の差がある場合には、自立性包装袋を安定して能率良く生産することができる。
【0029】
シーラント層にヒンダードアミン系光安定剤を添加した場合には、十分な耐候性を備えた自立性包装袋とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係る自立性包装袋の一例を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した自立性包装袋の平面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る自立性包装袋を構成する積層体の層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。
【
図4】
図4は、積層体を構成するバリアフィルムの層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。
【
図5】
図5は、積層体を構成するシーラント層の層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下図面を参照しながら、本発明に係る自立性包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る自立性包装袋1の一例を示した斜視図である。また
図2は、
図1に示した自立性包装袋1の平面模式図である。トップシール部5は、未シール状態にしておき、内容物を充填後にヒートシールするのが一般的である。
【0032】
一般にスタンディングパウチと呼ばれる自立性包装袋は、表面積層体2と裏面積層体3の2枚の積層体のシーラント層同士を対向させ、この間にシーラント層を外側にして逆V字状に折った底テープ4を挿入し、周縁をヒートシールして作製される。スタンディングパウチの場合、単なる四方袋や三方袋と異なり、底テープの存在する部分すなわちサイドシール部6の下部とボトムシール部7においては、積層体の表面同士が接触した状態でヒートシールされるため、シーラント同士をヒートシールする際に、表面同士が疑似接着することを避けなければならない。
【0033】
従来のスタンディングパウチの場合、積層体の表面側には例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムのような耐熱性の高い材料を用い、裏面側のシーラント層には溶融温度の低いポリエチレン(PE)樹脂を用いるといったことで、この問題を解決することができた。
【0034】
しかし、マテリアルリサイクルの観点から、すべての層を単一の材料で構成しようとした時に、積層体の表裏面の溶融温度差を大きくすることは、容易ではない。本発明に係る自立性包装袋においては、表面側に密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムを用い、裏面側に3層以上からなる厚さ50~80μmの易引裂性多層ポリエチレン樹脂フィルムを使用することで、この問題を解決したものである。
【0035】
一方、易開封性に関しても、従来のPET/PE構成の積層体であれば、CO2レーザー光の選択吸収性を利用して、PET層だけにハーフカットを施すことが容易に可能であったが、PE単一構成の積層体では、この手段を用いることができない。本発明の自立性包装袋においては、シーラント層として易引裂性多層ポリエチレン樹脂フィルムを使用することで、レーザー加工を行うことなく、易開封性を付与することができたものである。
【0036】
また、バリア性の問題についても、従来PETフィルムベースで供給されていたガスバリアフィルムを密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムとすることで、同様に解決することができたものである。
【0037】
図3は、本発明に係る自立性包装袋1を構成する積層体10の層構成を模式的に示した断面模式図である。積層体10は、バリアフィルム層11、インキ層12、接着層13、シーラント層14が、この順に積層されており、前述の通りバリアフィルム層11は密度
0.940~0.980g/cm
3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムであり、シーラント層14は、3層以上からなる厚さ50~80μmの易引裂性多層ポリエチレン樹脂フィルムである。
【0038】
バリアフィルム層11に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、シーラント層14のシール強度安定温度より30℃以上高いことが望ましい。この温度差が大きい程、ヒートシール条件の幅が広くなり、品質が安定すると共に、生産効率も向上する。
【0039】
図4は、積層体10を構成するバリアフィルム層11の層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。この例では高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材21の一方の面に、アンカーコート剤を含有する密着層22を介して金属酸化物からなる蒸着層23とガスバリア被膜層24とをこの順序に積層してなる。高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材21以外の層は、いずれもごく薄い層であるから、例えばガスバリア層としてエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のような層を用いる場合に較べて、リサイクル時の純度低下を防ぐ効果が高い。
【0040】
蒸着層23は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含むことが望ましい。すなわち、蒸着層23は、酸化アルミニウムあるいは酸化ケイ素の少なくとも1種を含むものであることが望ましい。
【0041】
また、ガスバリア被膜層24は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含むものであることがより望ましい。
【0042】
図5は、積層体10を構成するシーラント層14の層構成を模式的に示した断面模式図である。この例ではシーラント層14は、ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂主成分とする外層(A)31、環状オレフィン系樹脂(b1)、およびポリオレフィン系樹脂(b2)の混合樹脂を樹脂主成分とする中間層(B)32、ポリオレフィン系樹脂(c)を樹脂主成分とする内層(C)33の3層構造を有する多層シーラントフィルムである。
【0043】
中間層(B)32は、環状オレフィン系樹脂(b1)10~90重量%と、ポリオレフィン系樹脂(b2)10~90重量%を含むことが望ましい。また、シーラント層14の中間層(B)32に含まれる環状オレフィン系樹脂(b1)は、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが望ましい。またさらに、シーラント層の中間層(B)32に含まれる環状オレフィン系樹脂(b1)の含有量は、シーラント層全体の5~50重量%であることが望ましい。
【0044】
シーラント層14に含まれるポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂(b2)、ポリオレフィン系樹脂(c)は、下記(1)および(2)の特徴を有するポリエチレン系樹脂であることが望ましい。
(1)メルトフローレート(MFR;190℃、21.18N荷重)が0.01~20g
/10分
(2)密度が0.870~0.970g/cm3
【0045】
シーラント層14は、次の(1)~(3)のいずれかの構成を有することが望ましい。(1)中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤を含有する。
(2)外層(A)に紫外線吸収剤を含有し、中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤を含有する。
(3)中間層(B)にヒンダードアミン系光安定剤と紫外線吸収剤を含有する。
【0046】
さらにシーラント層14は、中間層(B)32中にヒンダードアミン系光安定剤を中間層の0.1重量%以上含むことが望ましい。
【0047】
シーラント層14を構成する多層シーラントフィルムは、JIS K7350-4に準拠して行ったサンシャインカーボンアークウェザーメーター耐候性試験において、耐候性試験前の引張破壊伸度の50%に到達するまでのカーボンアーク暴露時間が、中間層(B)をポリオレフィン系樹脂(b2)のみで構成した時の多層フィルムと同等以上であることが望ましい。
【0048】
シーラント層を構成する多層フィルムは、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向および横方向において、それぞれ100N/15mm以下であることが望ましい。以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る自立性包装袋についてさらに具体的に説明する。
【0049】
<実施例1>
バリアフィルム層として、厚さ30μm、密度0.96の高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に酸化ケイ素を蒸着した無機蒸着フィルム(凸版印刷社製GLフィルム)を用い、この蒸着面に水性フレキソインキを用いてインキ層を印刷した。
【0050】
シーラント層として、易引裂性を有する厚さ50μmの3層ポリエチレン樹脂シーラントフィルムを用い、バリアフィルム層の印刷面とシーラントフィルムの外層(A)とをノンソルベントラミネート接着剤を用いて接着し、積層体を作製した。シーラントフィルムの構成は、外層(A)および内層(C)がポリエチレン樹脂であり、中間層(B)が、環状オレフィン系樹脂(b1)24.4%、ポリエチレン樹脂(b2)75%、ヒンダードアミン系光安定剤0.6%を含むものである。シーラントフィルムの外層(A)、中間層(B)、内層(C)の厚さ比率は、1:2:1である。
【0051】
<実施例2>
シーラントフィルムの厚さを80μmとした以外は、実施例1と同様にして自立性包装袋を作製した。
【0052】
<比較例>
シーラントフィルムの厚さを30μmとした以外は、実施例1と同様にして自立性包装袋を作製した。
【0053】
それぞれの積層体を用いて、
図1に示したような形状の自立性包装袋を作製した。包装袋の寸法は、高さ約235mm、幅約130mm、容量約360mlである。包装袋に、水を360ml封入して、耐圧強度と落下試験を実施した。耐圧強度は、包装袋に80kgの重りを載せて1分間保持し、破袋の有無を確認した。落下試験は、包装袋を1mの高さから5回落下させて、破袋の有無を確認した。
【0054】
また、実施例1、実施例2、比較例に用いたシーラントフィルムのエルメンドルフ引裂強度を測定した。以上の結果を表1にまとめた。
【0055】
【0056】
表1の結果から、シーラントフィルムの厚さについては、30μmでは、引裂強度は良好であるが、耐圧強度、落下強度とも不十分である。シーラントフィルムの厚さとしては、50μm以上必要であることが分かった。
【0057】
また積層体のシール温度範囲を評価するために、シール温度を120℃から180℃ま
で10℃間隔で変化させて、バリアフィルム基材同士とシーラント同士それぞれのシール強度を測定した。結果を表2に示す。表2において、網掛部分は、好ましくない結果であることを示す。
【0058】
【0059】
表2の結果から、シール温度範囲については、どの構成であっても30℃以上確保されていることが分かった。
【符号の説明】
【0060】
1・・・自立性包装袋
2・・・表面積層体
3・・・裏面積層体
4・・・底テープ
5・・・トップシール部
6・・・サイドシール部
7・・・ボトムシール部
8・・・開封開始部
10・・・積層体
11・・・バリアフィルム層
12・・・インキ層
13・・・接着層
14・・・シーラント層
21・・・高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材
22・・・密着層
23・・・蒸着層
24・・・ガスバリア層
31・・・外層(A)
32・・・中間層(B)
33・・・内層(C)