(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/057 20060101AFI20240312BHJP
B60J 7/043 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60J7/057 P
B60J7/043
(21)【出願番号】P 2020009184
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 篤史
(72)【発明者】
【氏名】菊田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】丁 学清
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-047271(JP,A)
【文献】特開2002-103979(JP,A)
【文献】特開2004-129454(JP,A)
【文献】特開平04-255482(JP,A)
【文献】特開昭62-094684(JP,A)
【文献】特開2018-107960(JP,A)
【文献】特開2018-159195(JP,A)
【文献】特開2013-023867(JP,A)
【文献】米国特許第05334876(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/057
B60J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となるモータの通電を制御することにより車両の開口部に設けられた開閉体の作動を制御する開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、前記モータの駆動力に基づき移動中の前記開閉体を停止させる場合には、前記モータの自由回転を許容する空走期間を設定し、該空走期間が経過した後に、前記モータに制動力を発生させるブレーキ制御を実行する車両用開閉体制御装置であって、
前記開閉制御部は、前記モータに駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後における前記開閉体の移動距離及び前記駆動制御の実行を停止した後の経過時間に基づいた前記空走期間を設定するものであって、
前記開閉制御部は、記憶領域から所定の移動距離及び所定の経過時間を読み出し、前記開閉体の移動距離が前記所定の移動距離に到達するまでの期間を前記空走期間に設定するとともに、前記経過時間が前記所定の経過時間に到達するまでの期間を前記空走期間に設定する
ものであり、
前記開閉制御部は、
前記モータに駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後における前記開閉体の移動距離が前記所定の移動距離に到達するまでに、前記駆動制御の実行を停止した後の経過時間が前記所定の経過時間に到達した場合には、前記空走期間が経過したと判定し、前記モータに制動力を発生させるブレーキ制御を実行するとともに、
前記駆動制御の実行を停止した後の経過時間が前記所定の経過時間に到達するまでに、前記駆動制御の実行を停止した後における前記開閉体の移動距離が前記所定の移動距離に到達した場合には、前記空走期間が経過したと判定し、前記モータに制動力を発生させるブレーキ制御を実行する
車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記ブレーキ制御は、回生ブレーキ制御であること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉制御部は、前記ブレーキ制御の実行により前記モータに発生させる前記制動力を徐々に増大させること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉体は、サンルーフ装置の可動パネルであること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、駆動源となるモータの通電を制御することにより、サンルーフ装置の可動パネル等、車両の開口部に設けられた開閉体の作動を制御する車両用の開閉体制御装置がある。また、例えば、特許文献2には、回生ブレーキ制御の実行により、モータに制動力を発生させる構成が開示されている。更に、この従来文献には、回生ブレーキ制御の実行時、そのオン作動させるスイッチング素子のゲート電圧を徐々に増加させる構成が開示されている。そして、これにより、そのモータが発生する制動力を徐々に増大させることで、慣性による振動及び音の発生を抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-103979号公報
【文献】特開2004-129454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両においては、あらゆる構成部品について、その更なる改善が進められている。そして、上記のような車両用開閉体制御装置についてもまた、上記従来技術の構成によって、必ずしも、その要求水準を満足するとは言い切れないことから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、開閉体を停止させる際の振動及び音を抑制することのできる車両用開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、駆動源となるモータの通電を制御することにより車両の開口部に設けられた開閉体の作動を制御する開閉制御部を備え、前記開閉制御部は、前記モータの駆動力に基づき移動中の前記開閉体を停止させる場合には、前記モータの自由回転を許容する空走期間を設定し、該空走期間が経過した後に、前記モータに制動力を発生させるブレーキ制御を実行する。
【0007】
上記構成によれば、ブレーキ制御の実行により開閉体に生ずる荷重移動を穏やかなものとすることができる。更に、摺動抵抗に基づいて、ブレーキ制御の実行までに開閉体の移動速度を低下させることができる。そして、これにより、その開閉体を停止させる際の振動及び音を抑制することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記モータに駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後における前記開閉体の移動距離に基づいた前記空走期間を設定することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、開閉体の移動速度が速い場合であっても、適切に、その空走期間の経過によりブレーキ制御に移行することができる。そして、これにより、停止位置のずれを抑制することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記モータに駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後の経過時間に基づいた前記空走期間を設定することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、開閉体の移動速度が遅い場合であっても、適切に、その空走期間の経過によりブレーキ制御に移行することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記ブレーキ制御は、回生ブレーキ制御であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、モータの発熱を抑制しつつ、このモータに制動力を発生させることができる。そして、モータがブラシ付きの直流モータであっても、そのブレーキ制御の実行が可能という利点がある。
【0013】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記ブレーキ制御の実行により前記モータに発生させる前記制動力を徐々に増大させることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、より好適に、その開閉体を停止させる際の振動及び音を抑制することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開閉体は、サンルーフ装置の可動パネルであることが好ましい。
【0015】
即ち、サンルーフ装置の可動パネルは、多くの場合、駆動制御の実行を停止した後においても、その慣性により移動し続けやすく、且つブレーキ制御の実行による荷重移動に伴い振動や音が発生しやすい構造を有している。そして、車両の乗員に近い位置に設けられることから、上記空走期間の設定により、その静粛性を高めることで、質感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開閉体を停止させる際の振動及び音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】駆動制御の実行を停止した後における可動パネルの移動距離に基づいた空走期間設定の説明図。
【
図5】駆動制御の実行を停止した後の経過時間に基づいた空走期間設定の説明図。
【
図6】駆動パネル停止制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用開閉体制御装置を車両のサンルーフ装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、車両1のルーフパネル2に形成されたルーフ開口部3には、このルーフ開口部3を開閉可能な略平板状の可動パネル10が設けられている。そして、本実施形態の車両1は、モータ駆動により、この可動パネル10を開閉動作させるサンルーフ装置11を備えている。
【0019】
具体的には、
図2に示すように、本実施形態のサンルーフ装置11は、ルーフ開口部3の幅方向両端側において、その車両前後方向に延びる左右一対のガイドレール20,20を備えている。また、このサンルーフ装置11は、これらの各ガイドレール20,20に係合する状態で、その延伸方向に沿って摺動する左右一対のフロントシュー21,21及びリヤシュー22,22を備えている。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これらの各フロントシュー21,21及び各リヤシュー22,22に連結された状態で、その可動パネル10を上方に支持する左右一対の支持ブラケット23,23を備えている。
【0020】
また、本実施形態のサンルーフ装置11は、モータ30を駆動源とするアクチュエータ31を備えている。本実施形態のサンルーフ装置11において、このアクチュエータ31は、ルーフパネル2の車両前方位置において、そのルーフ開口部3の内側に固定されている。更に、本実施形態のサンルーフ装置11は、その左右のガイドレール20,20に沿って配索された左右一対の駆動ケーブル32,32を備えている。そして、これらの各駆動ケーブル32,32は、それぞれ、その左右のガイドレール20,20に係合したリヤシュー22,22に連結されている。
【0021】
即ち、本実施形態のサンルーフ装置11は、モータ30が発生する駆動力に基づいて、その駆動ケーブル32,32を介してアクチュエータ31に連結された各リヤシュー22,22が車両前後方向に摺動する。更に、これらの各リヤシュー22,22に連動して各フロントシュー21,21が車両前後方向に摺動する。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これにより、その支持ブラケット23,23上に支持された可動パネル10が作動、詳しくはチルト開閉動作及びスライド開閉動作する構成になっている。
【0022】
詳述すると、
図3に示すように、本実施形態のサンルーフ装置11は、アクチュエータ31の駆動源となるモータ30について、その通電を制御するECU40を備えている。即ち、本実施形態のモータ30は、ECU40から駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これにより、その可動パネル10の作動を制御可能な構成になっている。
【0023】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ31には、そのモータ30の回転に同期したパルス信号Spを出力するパルスセンサ41が設けられている。そして、本実施形態のECU40は、このパルスセンサ41のパルス出力に基づいて、そのアクチュエータ31に駆動された可動パネル10の位置及び速度を検出する。
【0024】
また、本実施形態のECU40には、可動パネル10の作動要求を示す操作入力信号Scrが入力されるようになっている。尚、本実施形態の車両1において、この操作入力信号Scrは、例えば、車両1の乗員が、車室内或いは携帯機等に設けられた操作スイッチを操作することにより出力される。そして、本実施形態のECU40は、この操作入力信号Scrに基づいて、その可動パネル10の作動を制御する構成になっている。
【0025】
さらに詳述すると、本実施形態のECU40は、モータ制御信号を生成するモータ制御部45と、このモータ制御部45が出力するモータ制御信号に基づいて、モータ30に駆動電力を供給する駆動回路50と、を備えている。また、本実施形態のアクチュエータ31には、その駆動源となるモータ30として、ブラシ付きの直流モータが採用されている。そして、本実施形態の駆動回路50には、そのモータ制御信号に基づきオン/オフ動作する複数のスイッチング素子(FET:Field effect transistor)をブリッジ状に接続してなる周知のPWMインバータが用いられている。
【0026】
具体的には、本実施形態の駆動回路50は、直列に接続された一対のFET60a,60bを有する第1のスイッチングアーム61と、同じく直列に接続された一対のFET60c,60dを有する第2のスイッチングアーム62とが二列並列に接続された所謂Hブリッジ型の構造を有している。また、この駆動回路50は、これら第1及び第2のスイッチングアーム61,62における上段側(
図3中、上側)の各FET60a,60cに車載電源65の電源電圧Vbが印加されるとともに、下段側(
図3中、下側)の各FET60b,60dが接地されている。そして、その第1のスイッチングアーム61における各FET60a,60bの接続点61x、及び第2のスイッチングアーム62における各FET60c,60dの接続点62xが、それぞれ、そのモータ30に対する接続点、つまりはモータ接続端子となっている。
【0027】
即ち、本実施形態のモータ制御部45は、モータ30を第1方向に回転させる場合には、そのモータ制御信号の出力により、第1のスイッチングアーム61における上段側のFET60aをオン、下段側のFET60bをオフとし、第2のスイッチングアーム62における下段側のFET60dをオン、上段側のFET60cをオフとする。また、モータ30を第2方向に回転させる場合には、そのモータ制御信号の出力により、第2のスイッチングアーム62における上段側のFET60cをオン、下段側のFET60dをオフとし、第1のスイッチングアーム61における下段側のFET60bをオン、上段側のFET60aをオフとする。そして、本実施形態のモータ制御部45は、そのモータ制御信号の出力を通じて、これら各FET60a~60dのオンデューティ比を制御することにより、モータ30の発生する駆動力を変化させることが可能となっている。
【0028】
また、本実施形態のモータ制御部45は、モータ30の駆動力に基づき移動中の可動パネル10を停止させる場合、ブレーキ制御の実行により、そのモータ30に制動力を発生させる。具体的には、モータ制御部45は、駆動回路50を構成する上段側の各FET60a,60cをオン、又は下段側の各FET60b,60dをオンとする回生ブレーキ制御を実行する。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これにより、その移動中の可動パネル10を速やかに停止させることが可能となっている。
【0029】
更に、本実施形態のモータ制御部45は、モータ30に駆動力を発生させる駆動制御から上記回生ブレーキ制御に移行する際、駆動回路50を構成する各FET60a~60dの全てをオフとするモータフリー制御の実行により、そのモータ30の自由回転を許容する可動パネル10の空走期間を設定する。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これにより、その可動パネル10を停止させる際の振動及び音を抑制する構成になっている。
【0030】
詳述すると、
図4に示すように、本実施形態のモータ制御部45は、駆動制御の実行を停止した後、モータ30の回転、つまりは可動パネル10の作動に同期したパルス信号Spのエッジ、詳しくは、その立ち下がりのエッジをカウントすることにより、可動パネル10の移動距離Xを計測する。そして、そのカウント数Nが所定数N1に到達するまでの期間を可動パネル10の空走期間αに設定する。
【0031】
また、
図5に示すように、本実施形態のモータ制御部45は、駆動制御の実行を停止した後、その経過時間tを計測する。そして、その経過時間tが所定時間t1に到達するまでの期間を可動パネル10の空走期間αに設定する。
【0032】
つまり、本実施形態のサンルーフ装置11においては、モータ30に駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後における可動パネル10の移動距離X、及び駆動制御の実行を停止した後の経過時間tに基づいて、その可動パネル10の空走期間αが設定される。そして、この空走期間αが経過した後に、その回生ブレーキ制御が実行される構成になっている。
【0033】
即ち、
図6のフローチャートに示すように、本実施形態のモータ制御部45は、モータ30の駆動力に基づき移動中の可動パネル10を停止させる場合(ステップ101:YES)、先ず、そのモータ30に可動パネル10の駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止する(ステップ102)。次に、モータ制御部45は、図示しない記憶領域から上記所定数N1及び所定時間t1を読み出すことにより、その駆動制御の実行を停止した後の空走期間αを設定する(ステップ103)。そして、モータ制御部45は、駆動制御の実行を停止した後におけるパルス信号Spのカウント数Nを計測するカウンタ及び経過時間tを計測するタイマをセットして(N=0,t=0、ステップ104)、駆動回路50の各FET60a~60dを全てオフとするモータフリー制御の実行により、モータ30の自由回転を許容する(ステップ105)。
【0034】
更に、本実施形態のモータ制御部45は、そのモータ30の回転に同期、つまりは可動パネル10の作動に同期したパルス信号Spのカウント数Nが所定数N1に到達したか否かを判定し(ステップ106)、及び、その経過時間tが所定時間t1に到達したか否かを判定する(ステップ107)。そして、カウント数Nが所定数N1に満たず(N<N1、ステップ106:NO)、且つ経過時間tが所定時間t1に到達していない場合(t<t1、ステップ107:NO)には、再び、上記ステップ105のモータフリー制御を実行する。
【0035】
また、本実施形態のモータ制御部45は、上記ステップ106において、カウント数Nが所定数N1に到達した場合(N≧N1、ステップ106:YES)には、空走期間αが経過したと判定する(ステップ108)。更に、モータ制御部45は、その上記ステップ107において、経過時間tが所定時間t1に到達した場合(t≧t1、ステップ107:YES)にも、ステップ108において、その空走期間αが経過したと判定する。そして、本実施形態のモータ制御部45は、これにより、その実行するモータ30の制御形態を回生ブレーキ制御に切り替える(ステップ109)。
【0036】
尚、本実施形態のサンルーフ装置11において、この回生ブレーキ制御は、予め設定された所定時間を経過するまで継続される。そして、本実施形態のサンルーフ装置11は、これにより、確実に、その可動パネル10を停止させることが可能となっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、空走期間αの設定により、駆動制御からブレーキ制御に移行する際、その負荷方向の反転により生ずる可動パネル10の荷重移動が穏やかになる。更に、空走期間αにおいても、その摺動抵抗に基づいて、可動パネル10の移動速度が低下する。そして、これにより、その回生ブレーキ制御の実行に伴う振動及び音の発生が抑制される。
【0038】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)開閉制御部としてのECU40は、駆動源となるモータ30の通電を制御することにより車両1のルーフ開口部3に設けられた開閉体としての可動パネル10の作動を制御する。また、ECU40は、モータ30の駆動力に基づき移動中の可動パネル10を停止させる場合には、そのモータ30の自由回転を許容する空走期間αを設定する。そして、この空走期間αが経過した後に、そのモータ30に制動力を発生させるブレーキ制御を実行する。
【0039】
上記構成によれば、ブレーキ制御の実行により可動パネル10に生ずる荷重移動を穏やかなものとすることができる。更に、その摺動抵抗に基づいて、ブレーキ制御の実行までに可動パネル10の移動速度を低下させることができる。そして、これにより、その可動パネル10を停止させる際の振動及び音を抑制することができる。
【0040】
特に、サンルーフ装置11の可動パネル10は、多くの場合、駆動制御の実行を停止した後においても、その慣性により移動し続けやすく、且つブレーキ制御の実行による荷重移動に伴い振動や音が発生しやすい構造を有している。そして、車両1の乗員に近い位置に設けられることから、上記構成の採用により静粛性を高めることで、その質感を向上させることができる。
【0041】
(2)ECU40は、モータ30に駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後における可動パネル10の移動距離Xに基づいた空走期間αを設定する。
上記構成によれば、モータ30の回転が速く、可動パネル10の移動速度が速い場合であっても、適切に、その空走期間αの経過によりブレーキ制御に移行することができる。そして、これにより、停止位置のずれを抑制することができる。
【0042】
(3)ECU40は、モータ30に駆動力を発生させる駆動制御の実行を停止した後の経過時間tに基づいた空走期間αを設定する。これにより、モータ30の回転が遅く、可動パネル10の移動速度が遅い場合であっても、適切に、その空走期間αの経過によりブレーキ制御に移行することができる。
【0043】
(4)ECU40は、空走期間αの経過後、回生ブレーキ制御を実行する。
上記構成によれば、モータ30の発熱を抑制しつつ、このモータ30に制動力を発生させることができる。そして、モータ30がブラシ付きの直流モータであっても、そのブレーキ制御の実行が可能という利点がある。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・上記実施形態では、車両1のルーフ開口部3に設けられた可動パネル10を開閉体とするサンルーフ装置11に具体化した。しかし、これに限らず、例えば、車両のドア開口部に設けられたスライドドア等を開閉体とするパワースライドドア装置等、その他の車両用開閉体制御装置に適用してもよい。そして、このような車両用開閉制御装置に限らず、その他の用途に使用可能なモータ制御装置に適用してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、アクチュエータ31の駆動源となるモータ30には、ブラシ付きの直流モータが採用されることとしたが、アクチュエータ31のモータ30にブラシレスモータを採用する構成に適用してもよい。そして、この場合、回生ブレーキ制御に限らず、そのブレーキ制御として通電相を固定した所謂相固定通電による電磁ブレーキ制御を実行してもよい。
【0047】
・また、例えば、
図7に示すように、ブレーキ制御の実行時、時間Tの経過とともに、そのオン作動させるスイッチング素子のデューティDを徐々に増大させる等、ブレーキ制御の実行によりモータ30に発生させる制動力を徐々に増大させる構成としてもよい。これにより、より好適に、その可動パネル10を停止させる際の振動及び音を抑制することができる。
【0048】
・上記実施形態では、モータ30の回転に同期したパルス信号Spのエッジをカウントすることにより、その駆動制御の実行を停止した後における可動パネル10の移動距離Xを計測することとした。しかし、これに限らず、可動パネル10の作動に同期するものであれば、その移動距離Xの計測に用いるパルス信号Spは、例えば、減速ギヤの回転等、その他の部材の動作に同期したものであってもよい。そして、パルス信号Spのカウント以外の方法により、その駆動制御の実行を停止した後における可動パネル10の移動距離Xを計測する構成であってもよい。
【0049】
・上記実施形態では、駆動制御の実行を停止した後における可動パネル10の移動距離X、及び駆動制御の実行を停止した後の経過時間tに基づいて、その可動パネル10の空走期間αが設定されることとしたが、移動距離X又は経過時間tの何れか一方に基づいた空走期間αが設定される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…車両
3…ドア開口部(開口部)
10…可動パネル(開閉体)
11…サンルーフ装置(開閉体制御装置)
30…モータ
40…ECU(開閉制御部)
α…空走期間