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特許7452032車間距離警報装置および車間距離警報制御方法
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  • 特許-車間距離警報装置および車間距離警報制御方法 図1
  • 特許-車間距離警報装置および車間距離警報制御方法 図2
  • 特許-車間距離警報装置および車間距離警報制御方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車間距離警報装置および車間距離警報制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20240312BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60W30/16
B60K31/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011475
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115990
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚基
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245834(JP,A)
【文献】特表2014-511301(JP,A)
【文献】特開2018-135003(JP,A)
【文献】特開2019-098914(JP,A)
【文献】特開平04-232130(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066028(WO,A1)
【文献】特開平8-310269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を走行する先行車を特定する先行車特定部と、
前記先行車が静止状態である場合、前記車両がACC(Adaptive Cruise Control)を実行中であることを条件に警報出力部から車間距離警報を出力させ、前記先行車が静止状態でない場合、車間距離警報を出力させない、警報出力制御部と、を有する、
車間距離警報装置。
【請求項2】
前記警報出力制御部は、
前記車両が前記ACCを実行中であって、前記車両と前記先行車との車間距離が警報距離以下となったときに、前記警報出力部から前記車間距離警報を出力させる、
請求項1に記載の車間距離警報装置。
【請求項3】
前記警報出力制御部は、
前記ACCによる自動制動が実行される前に、前記警報出力部から前記車間距離警報を出力させる、
請求項1または2に記載の車間距離警報装置。
【請求項4】
車両に搭載された装置が行う車間距離警報制御方法であって、
前記車両の前方を走行する先行車を特定するステップと、
前記先行車が静止状態である場合、前記車両がACC(Adaptive Cruise Control)を実行中であることを条件に警報出力部から車間距離警報を出力させ、前記先行車が静止状態でない場合、車間距離警報を出力させない、ステップと、を有する、
車間距離警報制御方法。
【請求項5】
前記車間距離警報は、前記車両が前記ACCを実行中であって、前記車両と前記先行車との車間距離が警報距離以下となったときに出力される、
請求項4に記載の車間距離警報制御方法。
【請求項6】
前記車間距離警報は、前記ACCによる自動制動が実行される前に出力される、
請求項4または5に記載の車間距離警報制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車間距離警報装置および車間距離警報制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方を走行する先行車を特定し、その先行車と車両との間の車間距離を算出し、その車間距離に基づいて警報を発する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-151649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、車両の乗員に与えられる安心感の面で改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、車両の乗員に対してより安心感を与えることができる車間距離警報装置および車間距離警報制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車間距離警報装置は、車両の前方を走行する先行車を特定する先行車特定部と、前記先行車が静止状態である場合、前記車両がACC(Adaptive Cruise Control)を実行中であることを条件に警報出力部から車間距離警報を出力させ、前記先行車が静止状態でない場合、車間距離警報を出力させない、警報出力制御部と、を有前記警報出力制御部は、前記車両と前記先行車との車間距離が警報距離以下となったときに、前記警報出力部から前記車間距離警報を出力させる
【0007】
本開示の一態様に係る車間距離警報制御方法は、車両に搭載された装置が行う車間距離警報制御方法であって、前記車両の前方を走行する先行車を特定するステップと、前記先行車が静止状態である場合、前記車両がACC(Adaptive Cruise Control)を実行中であることを条件に警報出力部から車間距離警報を出力させ、前記先行車が静止状態でない場合、車間距離警報を出力させない、ステップと、を有前記車間距離警報は、前記車両と前記先行車との車間距離が警報距離以下となったときに出力される
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両がACCを実行中である場合において車間距離警報の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係る車両および車間距離警報装置の構成を示すブロック図
図2】本開示の実施の形態に係る車間距離警報装置を備えた車両と先行車との車間距離の例を示す模式図
図3】本開示の実施の形態に係る車間距離警報装置の動作の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
まず、本開示の実施の形態に係る車両2および車間距離警報装置1の構成について、図1図2を用いて説明する。図1は、車両2および車間距離警報装置1の構成を示すブロック図である。図2は、車両2と先行車3との車間距離Dmの例を示す模式図である。
【0012】
車両2は、例えば、自動車であり、乗用車であってもよいし、商用車であってもよい。
【0013】
図1図2に示すように、車両2は、車間距離警報装置1、ミリ波レーダ装置10、カメラ11、車速センサ12(図2では図示略)、および走行制御装置18(図2では図示略)を有する。
【0014】
ミリ波レーダ装置10は、図2に示すように車両2の前方側に配置され、前方にミリ波レーダを発信し、その反射波を受信する。ミリ波レーダ装置10は、ミリ波レーダの送信タイミングと、その反射波の受信タイミングとを示すタイミング情報を、車間距離警報装置1の先行車特定部13へ出力する。なお、ミリ波レーダ装置10は、ミリ波レーダに代えて赤外線レーダを発信してもよい。
【0015】
カメラ11は、図2に示すように車両2の前方側に配置され、車両2の前方を撮影し、その映像を車間距離警報装置1の先行車特定部13へ出力する。
【0016】
車速センサ12は、車両2の速度を検出し、その速度を示す車速情報を、車間距離警報装置1の警報距離設定部14および警報判定部15へ出力する。車速センサ12としては、例えば、車両2の車軸(図示略)の回転数に比例したパルス信号を発生させるセンサを用いることができる。
【0017】
走行制御装置18は、車両2を先行車3(図2参照)に追従させて走行させるACC(Adaptive Cruise Control)を実行する。例えば、走行制御装置18は、車両2に対する先行車3の相対速度(以下、単に相対速度という)、および、車両2の進行方向における車両2と先行車3との車間距離Dm(以下、単に車間距離Dmという。図2参照)に基づいて、図示しない各種アクチュエータ群(加減速アクチュエータ、操舵アクチュエータ、制動アクチュエータ等)を制御することにより、ACCを実行する。なお、相対速度および車間距離Dmは、例えば、車間距離警報装置1の先行車特定部13によって算出される。
【0018】
車間距離警報装置1は、先行車特定部13、警報距離設定部14、警報判定部15、警報出力制御部16、および警報出力部17を備える。
【0019】
図示は省略するが、車間距離警報装置1は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する。そして、以下に説明する車間距離警報装置1の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0020】
先行車特定部13は、ミリ波レーダ装置10から受け取ったタイミング情報およびカメラ11から受け取った映像に基づいて、車両2の進行方向に存在する先行車3を特定する。車間距離Dmが例えば約1m~約100mであれば、先行車特定部13は、先行車3を特定可能である。
【0021】
先行車3を特定すると、先行車特定部13は、相対速度および車間距離Dmを算出する。そして、先行車特定部13は、相対速度を示す相対速度情報と、車間距離Dmを示す車間距離情報とを、警報距離設定部14および走行制御装置18へ出力する。
【0022】
警報距離設定部14は、先行車特定部13から相対速度情報および車間距離情報を受け取り、車速センサ12から車速情報を受け取る。そして、警報距離設定部14は、それらの情報に基づいて、リアルタイムで可変に警報距離を設定する。この警報距離は、車間距離警報の出力を行うか否かを判定する閾値として用いられる。
【0023】
そして、警報距離設定部14は、警報距離を示す警報距離情報、相対速度情報、および車間距離警報を警報判定部15へ出力する。
【0024】
警報判定部15は、車間距離情報に示される車間距離Dmが警報距離情報に示される警報距離以下であるか否かを判定する。
【0025】
警報出力制御部16は、警報判定部15により車間距離Dmが警報距離以下であると判定された場合、警報出力部17に警報出力指示を与える。
【0026】
警報出力部17は、警報出力制御部16から警報出力指示が与えられると、車間距離警報を出力する。
【0027】
車間距離警報としては、例えば、左右のドアスピーカからの警報音でもよいし、運転席のインパネに設けたディスプレイによる画像表示でもよい。このようにして車間距離警報が出力されることにより、車両2の乗員は、車両2が先行車3に接近していることを認識することができる。
【0028】
以上が車間距離警報装置1の基本的な動作であるが、本実施の形態の車間距離警報装置1は、さらに、以下に説明する特徴的な動作を行う。
【0029】
一般的に、ACCを実行中である車両が静止中の先行車に接近した場合、衝突を回避するために、運転者の操作によらず、走行制御装置18によって自動的に制動(以下、自動制動という)が行われるが、その際、車間距離警報の出力は行われない。しかし、運転者は、ACCにより自動制動が行われることを認識していても、実際に車両が先行車に接近すると、不安を抱くおそれがある。
【0030】
そこで、本実施の形態の車間距離警報装置1は、先行車3が静止状態である場合、車両2がACCを実行中であることを条件に車間距離警報を出力するようにする。また、車間距離警報装置1は、先行車3が静止状態である場合、車両2がACCを実行中でなければ、車間距離警報を出力しないようにする。この動作について、以下に具体例を説明する。なお、以下では、上述した先行車特定部13、警報距離設定部14、および警報判定部15それぞれの動作についての説明は、省略する。
【0031】
まず、警報判定部15は、車速センサ12から受け取った車速情報と、警報距離設定部14から受け取った相対速度情報とに基づいて、先行車3が静止状態であるか否かを判定する。例えば、警報判定部15は、車速情報に示される速度と相対速度情報に示される速度との差分がゼロである場合、先行車3が静止状態であると判定する。
【0032】
なお、上記説明における「静止状態」とは、先行車3の車速がゼロである状態だけでなく、先行車3の車速がゼロに近い速度である状態を含む概念であってもよい。その場合、警報判定部15は、車速情報に示される速度と相対速度情報に示される速度との差分が予め定められた閾値(例えば、時速数キロメートル程度)以下である場合、先行車3が静止状態であると判定する。
【0033】
次に、警報判定部15は、車両2がACCを実行中であるか否かを判定する。例えば、警報判定部15は、走行制御装置18からACCを開始した旨の通知(以下、ACC開始通知という)を受けている場合、ACCが実行中であると判定(認識と言ってもよい)する。ACC開始通知は、例えば、ACCが開始されたときに、走行制御装置18から警報判定部15へ出力される。
【0034】
警報出力制御部16は、警報判定部15により、先行車3が静止状態であると判定され、かつ、車両2がACCを実行中であると判定された場合、警報出力部17に警報出力指示を与える。これにより、警報出力部17は、車間距離警報を出力する。この場合、警報出力指示は、例えば、車間距離Dmが警報距離以下となり、ACCによる自動制動が行われる前に、警報出力部17に与えられてもよい。
【0035】
一方、警報出力制御部16は、警報判定部15により、先行車3が静止状態であると判定され、かつ、車両2がACCを実行中ではないと判定された場合、警報出力部17に警報出力指示を与えない。これにより、警報出力部17は、車間距離警報を出力しない。
【0036】
このように、本実施の形態の車間距離警報装置1では、ACCの実行中に車両2が静止状態である先行車3に接近する場合であっても、車間距離警報が出力されるので、運転者は、前もって自動制動が行われることを認識できる。また、運転者は、手動の制動操作を行う準備を行うことができる。よって、運転者の不安を軽減することができ、運転者に対してより安心感を与えることができる。
【0037】
以上、車間距離警報装置1および車両2の構成について説明した。
【0038】
次に、車間距離警報装置1の動作の流れについて、図3を用いて説明する。図3は、車間距離警報装置1の動作の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローは、例えば、車両2の走行の開始とともに開始される。
【0039】
ステップS11において、先行車特定部13は、ミリ波レーダ装置10からのタイミング情報およびカメラ11からの映像に基づいて、車両2の進行方向に存在する先行車3を特定する。
【0040】
ステップS12において、先行車特定部13は、相対速度および車間距離Dmを算出する。そして、先行車特定部13は、相対速度情報および車間距離情報を警報距離設定部14および走行制御装置18へ出力する。
【0041】
ステップS13において、警報距離設定部14は、先行車特定部13からの相対速度情報、車間距離情報と、車速センサ12からの車速情報とに基づいて、警報距離を設定する。そして、警報距離設定部14は、警報距離情報、相対速度情報、および車間距離情報を警報判定部15へ出力する。
【0042】
ステップS14において、警報判定部15は、車速センサ12からの車速情報と、警報距離設定部14からの相対速度情報とに基づいて、先行車3が静止状態であるか否かを判定する。
【0043】
先行車3が静止状態ではないと判定された場合、(ステップS14:NO)、フローは、終了する。その後、図示は省略するが、警報出力制御部16は、車間距離情報に示される車間距離Dmが警報距離情報に示される警報距離以下となったときに、警報出力部17に対して車間距離警報を出力するように指示してもよい。
【0044】
一方、先行車3が静止状態であると判定された場合(ステップS14:YES)、フローは、ステップS15へ進む。
【0045】
ステップS15において、警報判定部15は、走行制御装置18からのACC開始通知の有無に基づいて、車両2がACCを実行中であるか否かを判定する。
【0046】
走行制御装置18からACC開始通知を受け取っている場合、警報判定部15は、ACCが実行中であると判定する(ステップS15:YES)。この場合、フローは、ステップS16へ進む。
【0047】
一方、走行制御装置18からACC開始通知を受け取っていない場合、警報判定部15は、ACCが実行中ではないと判定する(ステップS15:NO)。この場合、フローは、ステップS18へ進む。
【0048】
ステップS16において、警報判定部15は、車間距離情報に示される車間距離Dmが警報距離情報に示される警報距離以下であるか否かを判定する。
【0049】
車間距離Dmが警報距離以下ではないと判定された場合(ステップS16:NO)、フローは、ステップS16へ戻る。
【0050】
一方、車間距離Dmが警報距離以下であると判定された場合(ステップS16:YES)、フローは、ステップS17へ進む。
【0051】
ステップS17において、警報出力制御部16は、走行制御装置18により自動制動が実行される前に、警報出力部17に対して車間距離警報を出力するように指示する。これにより、警報出力部17は、自動制動の前に車間距離警報を出力する。
【0052】
ステップS18において、警報出力制御部16は、警報出力部17に対して車間距離警報の出力を指示しない。これにより、警報出力部17は、車間距離警報の出力を行わない。
【0053】
以上、車間距離警報装置1の動作の流れについて説明した。
【0054】
なお、本開示は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の車間距離警報装置および車間距離警報制御方法は、ACCの実行中における車間距離警報の出力に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 車間距離警報装置
2 車両
3 先行車
10 ミリ波レーダ装置
11 カメラ
12 車速センサ
13 先行車特定部
14 警報距離設定部
15 警報判定部
16 警報出力制御部
17 警報出力部
18 走行制御装置
図1
図2
図3