(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】防水床ユニットおよび外部床の防水構造
(51)【国際特許分類】
E04D 11/00 20060101AFI20240312BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20240312BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20240312BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240312BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20240312BHJP
E04D 7/00 20060101ALI20240312BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240312BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E04D11/00 J
E04B1/682 A
E04B1/80 100P
E04B1/76 500Z
E04B1/66 A
E04D7/00 G
E04D7/00 J
E04D7/00 K
E04F15/02 H
E04D13/04 J
(21)【出願番号】P 2020012901
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】水津 裕行
(72)【発明者】
【氏名】宮城 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】大西 正人
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-061344(JP,A)
【文献】特開2015-068046(JP,A)
【文献】特開2004-225434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 11/00
E04B 1/682
E04B 1/80
E04B 1/76
E04B 1/66
E04D 7/00
E04F 15/02
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状に形成された防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設されて、前記防水床ユニット同士が隣接する目地部分に防水処理が施される外部床の防水構造に供される防水床ユニットであって、
上面が平坦な断熱材と、
前記断熱材の上面全体に積層接着された平坦な被覆金属板と、
前記被覆金属板の目地に沿う縁部を除く内側領域の上面に積層接着された、合成樹脂製の薄板体からなる嵩上げ材と、
前記嵩上げ材の上面全体に積層接着された補強繊維層と、
前記補強繊維層の上面全体に防水塗料を塗布して形成された塗膜と、
を具備して、
前記被覆金属板の目地に沿う縁部の上面と前記防水塗料からなる塗膜の上面との間に段差が設けられるとともに、
前記嵩上げ材には
、その上下両面に開口する複数個の孔部が形成されており、
前記防水塗料が前記補強繊維層を通過して
前記嵩上げ材の上面に接着するとともに前記孔部内に
も流入し
て、前記被覆金属板の上面に接着され
ることにより、
前記目地に沿う縁部を除いた内側領域の上面に、前記被覆金属板に対して前記嵩上げ材および前記防水塗料の塗膜が一体的に接着されて、前記被覆金属板と前記防水塗料の塗膜とからなる二重の防水層が形成されている
ことを特徴とする防水床ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された防水床ユニットにおいて、
前記孔部は、前記嵩上げ材の全面にわたって等間隔の格子状に形成されている
ことを特徴とする防水床ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載された防水床ユニットにおいて、
前記孔部は、前記被覆金属板に接する下面側の開口よりも前記補強繊維層に接する上面側の開口のほうが大径となるように形成されている
ことを特徴とする防水床ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設され、
前記防水床ユニットの前記段差を設けた縁部同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分に防水処理が施される外部床の防水構造であって、
前記防水床ユニットの縁部同士が隣接する目地の上に防水テープが張着され、
前記防水テープの上から前記凹溝状の目地部分に、前記防水床ユニットの上層の塗膜を形成する防水塗料と同質の防水塗料が充填されて、
その充填された防水塗料の上面と、前記防水床ユニットの塗膜の上面とが面一に仕上げられたことを特徴とする外部床の防水構造。
【請求項5】
パネル状に形成された防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設されて、前記防水床ユニット同士が隣接する目地部分に防水処理が施される外部床の防水構造であって、
前記防水床ユニットは、上面が平坦な断熱材と、前記断熱材の上面全体に積層接着された平坦な被覆金属板とを具備し、
前記被覆金属板の目地に沿う縁部を除く内側領域の上面に、上下両面に開口する複数個の孔部が形成された合成樹脂製の薄板体からなる嵩上げ材が積層接着され、さらに前記嵩上げ材の上面全体に補強繊維層が積層接着されることにより、前記被覆金属板の目地に沿う縁部の上面と前記補強繊維
層の上面との間に段差が設けられ、
前記
防水床ユニットの前記段差を設けた縁部同士が隣接する目地の上に防水テープが張着され、
前記縁部同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分と前記補強繊維層の上面とに防水塗料が塗布されて、前記防水床ユニットの敷設領域全体に前記防水塗料の塗膜が面一に形成されるとともに、
前記防水塗料が前記補強繊維層を通過して前記嵩上げ材の上面に接着するとともに前記嵩上げ材の孔部内にも流入して前記被覆金属板の上面に接着されることにより、
前記目地に沿う縁部を除いた内側領域の上面に、前記被覆金属板に対して前記嵩上げ材および前記防水塗料の塗膜が一体的に接着されて、前記被覆金属板と前記防水塗料の塗膜とからなる二重の防水層が形成されている
ことを特徴とする外部床の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、建物の外部床の防水施工に供される防水床ユニットと、該防水床ユニットを使用した外部床の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、建物のバルコニーや屋上等に設けられる外部床の防水構造(防水工法)として、特許文献1に記載された防水構造の実用化を図っている。該文献記載の防水構造は、あらかじめ工場で製造したパネル状の防水床ユニットを外部床下地上に複数枚敷き並べるユニット防水構造において、防水床ユニット同士が隣接する目地部分の防水性、耐久性および施工性を向上させようとしたものである。該防水構造の概略的構成を
図3に示す。
【0003】
該防水構造は、
(1)発泡樹脂等からなる断熱材11の表面に、耐候性材料によって被覆された金属板(被覆金属板)12を積層するなどして防水床ユニット1を製造する。その防水床ユニット1の縁部上面には階段状の段落部13を形成しておく。
(2)隣接する防水床ユニット1同士をわずかに離して、外部床下地2上に防水床ユニット1を敷き並べる。
(3)防水床ユニット1の縁部同士が隣接する目地部分においては、段落部13同士を突き合わせて形成される凹溝の底面に、ブチルゴムその他の合成ゴム材料等からなる防水テープ4を張着して、目地3を被覆する。
(4)防水テープ4の上から凹溝内に、ウレタン樹脂系塗料をはじめとする合成樹脂系または合成ゴム系の防水塗料5を充填する。
という工程を組み合わせて構成される。
【0004】
これらの複合作用により、防水床ユニット1同士が隣接する目地3の上には、防水テープ4と、防水塗料5の塗膜と、からなる二重の防水層が形成される。凹溝内に充填された防水塗料5は、段落部13の高さに相当する厚みと塗料自体の伸縮性によって優れた防水性および耐久性を発揮する。また、防水塗料5の上面が防水床ユニット1(被覆金属板12)の上面と略面一に仕上がるので、防水床ユニット1の敷設領域全体にわたって良好な排水性が得られることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の防水構造を実施するには、防水床ユニットの目地に沿う縁部に、所定の幅および高さの段落部を精度良く形成する必要がある。この段落部を形成するためには、以下のような複数の手段が想定されている。
(ア)断熱材の縁部の上面を削ぎ取るようにして断熱材の厚みを減じ、その上面に、縁部を階段状に折曲成形した被覆金属板を積層して接着する。
(イ)表面が平坦な断熱材の上に平坦な被覆金属板を積層して接着し、さらにその縁部を除いた内側領域の上面に、合成樹脂系または合成ゴム系の防水シートを張り重ねて嵩上げする。
(ウ)表面が平坦な断熱材の上に平坦な被覆金属板を積層して接着し、さらにその縁部を除いた内側領域の上面に、合成樹脂系または合成ゴム系の防水塗料を一定の厚さで塗り増して嵩上げする。
【0007】
しかし、前記(ア)の手段については、製造すべき防水床ユニットの平面形状および寸法が施工現場ごとに相違することに加えて、表面に排水勾配を設ける必要から断熱材の厚さも一様ではなくなるので、被覆金属板の折曲加工をプレス成形等によって一律的に行うのが難しい。そのため、被覆金属板の折曲加工は手作業への依存度が高くなる。さらに、被覆金属板の複数辺を加工しなければならないので、特に隅部において歪みや皺が生じやすく、それを防ぐには高度な加工技術が必要になって手間もかかる。
【0008】
(イ)の手段については、被覆金属板が熱伸縮すると、その上に張り重ねた防水シートと被覆金属板との伸縮特性等の差異等によって防水シートに膨れや皺が生じ、施工面の防水性や美観が損なわれる。
【0009】
(ウ)の手段によれば、防水塗料の種類を適切に選択することで被覆金属板と防水塗料との密着性は良くなるものの、全体に重量が増して、コストが嵩む。
【0010】
本願が開示する発明は前述のような事情に鑑みてなされたものであり、防水床ユニットの縁部に設ける段落部を簡便かつ安価な手段で精度良く形成することで、防水工事の施工性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願が開示する発明にかかる防水床ユニットは、パネル状に形成された防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設されて、前記防水床ユニット同士が隣接する目地部分に防水処理が施される外部床の防水構造に供される防水床ユニットについて、前述の目的を達成するために以下の構成を採用する。
【0012】
すなわち、該防水床ユニットは、上面が平坦な断熱材と、前記断熱材の上面全体に積層接着された平坦な被覆金属板と、前記被覆金属板の目地に沿う縁部を除く内側領域の上面に積層接着された、合成樹脂製の薄板体からなる嵩上げ材と、前記嵩上げ材の上面全体に積層接着された補強繊維層と、前記補強繊維層の上面全体に防水塗料を塗布して形成された塗膜と、を具備して、前記被覆金属板の目地に沿う縁部の上面と前記防水塗料からなる塗膜の上面との間に段差が設けられるとともに、前記嵩上げ材には、その上下両面に開口する複数個の孔部が形成されており、前記防水塗料が前記補強繊維層を通過して前記嵩上げ材の上面に接着するとともに前記孔部内にも流入して、前記被覆金属板の上面に接着されることにより、前記目地に沿う縁部を除いた内側領域の上面に、前記被覆金属板に対して前記嵩上げ材および前記防水塗料の塗膜が一体的に接着されて、前記被覆金属板と前記防水塗料の塗膜とからなる二重の防水層が形成されている、ものとして特徴づけられる。
【0013】
これにより、防水床ユニットの目地に沿う縁部を除いた内側領域の上面には、被覆金属板と、防水塗料の塗膜とからなる二重の防水層が形成される、防水塗料が嵩上げ材の孔部内に流入して被覆金属板に接着することで、被覆金属板に対する嵩上げ材および防水塗料の一体的な接着力が長期間にわたって好適に保持される。そして、目地に沿う縁部には、被覆金属板の上面と防水塗料の塗膜の上面との段差によって段落部が形成される。
【0014】
この防水床ユニットにおいては、前記孔部が、前記嵩上げ材の全面にわたって等間隔の格子状に形成されていると、被覆金属板に対する嵩上げ材および防水塗料の接着力が全面的に均等化して、より好ましい。
【0015】
さらに、前記孔部が、前記被覆金属板に接する下面側の開口よりも前記補強繊維層に接する上面側の開口のほうが大径となるように形成されていると、防水塗料が孔部内に流入し易くなって、より好ましい。
【0016】
また、本願が開示する発明にかかる外部床の防水構造は、前記防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設され、前記防水床ユニットの、前記段差を設けた縁部同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分に防水処理が施される防水構造であって、前記防水床ユニットの縁部同士が隣接する目地の上に防水テープが張着され、前記防水テープの上から前記凹溝状の目地部分に、前記防水床ユニットの上層の塗膜を形成する防水塗料と同質の防水塗料が充填されて、その充填された防水塗料の上面と、前記防水床ユニットの塗膜の上面とが面一に仕上げられた、ものとして特徴づけられる。
【0017】
また、本願が開示する発明にかかる外部床の防水構造は、パネル状に形成された防水床ユニットが外部床下地上に複数枚、敷設されて、前記防水床ユニット同士が隣接する目地部分に防水処理が施される外部床の防水構造であって、前記防水床ユニットは、上面が平坦な断熱材と、前記断熱材の上面全体に積層接着された平坦な被覆金属板とを具備し、前記被覆金属板の目地に沿う縁部を除く内側領域の上面に、上下両面に開口する複数個の孔部が形成された合成樹脂製の薄板体からなる嵩上げ材が積層接着され、さらに前記嵩上げ材の上面全体に補強繊維層が積層接着されることにより、前記被覆金属板の目地に沿う縁部の上面と前記補強繊維層の上面との間に段差が設けられ、前記防水床ユニットの前記段差を設けた縁部同士が隣接する目地の上に防水テープが張着され、前記縁部同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分と前記補強繊維層の上面とに防水塗料が塗布されて、前記防水床ユニットの敷設領域全体に前記防水塗料の塗膜が面一に形成されるとともに、前記防水塗料が前記補強繊維層を通過して前記嵩上げ材の上面に接着するとともに前記嵩上げ材の孔部内にも流入して前記被覆金属板の上面に接着されることにより、前記目地に沿う縁部を除いた内側領域の上面に、前記被覆金属板に対して前記嵩上げ材および前記防水塗料の塗膜が一体的に接着されて、前記被覆金属板と前記防水塗料の塗膜とからなる二重の防水層が形成されている、との構成によって特徴づけることもできる。
【0018】
これらの構成により、防水床ユニットの敷設領域全体にわたって均質な厚みを有する防水面が形成され、良好な防水性と排水性とが得られる。
【発明の効果】
【0019】
防水床ユニットを前述のように構成することにより、目地に沿う縁部に設ける段差(段落部)を、簡便かつ安価な手段で精度良く形成することができる。
【0020】
そして、かかる防水床ユニットを外部床下地上に敷設し、前記段差を設けた縁部同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分に、前記防水床ユニットの上層の塗膜を形成する防水塗料と同質の防水塗料を充填することで、防水床ユニットの上層の塗膜と目地部分の塗膜とが一体的に連続した防水面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願が開示する発明の一実施形態にかかる防水床ユニットの構成を、一部を剥離して示す斜視図である。
【
図2】
図1の防水床ユニットを使用した外部床の防水構造の、目地部分における構成を示す断面図である。
【
図3】特許文献1に開示された従来の外部床の防水構造の概略的構成を示す断面図であって、(a)は施工途中の状態、(b)は施工完了状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本願が開示する発明の一実施形態にかかる防水床ユニットの構成を示しており、
図2は、前記防水床ユニットを使用した外部床の防水構造を示している。なお、
図2に示した部位は、
図3に示した従来の防水構造の目地部分と同じ部位を拡大したものであり、
図3に示した従来の防水構造と実質的に同一の構成要素には共通の符号を付している。
【0024】
(防水床ユニット)
防水床ユニット10は、防水面の主体を構成するパネル状の部材であり、あらかじめ工場で施工現場の形状に合わせて製造され、施工現場に搬入されて外部床下地2上に敷設される。本願が開示する発明にかかる防水床ユニット10は、下側から順に、断熱材11と、被覆金属板12と、嵩上げ材15と、補強繊維層16と、防水塗料17の塗膜と、を積層して構成されている。
【0025】
断熱材11は上下両面が平坦な板体である。例示の形態では、水上側(
図1における右上側)から水下側(同、左下側)に向けて厚さが漸減するように成形され、これによって防水床ユニット10の上面に排水勾配(
図1中に矢印で示す)が付与される。断熱材11の材質としては発泡ポリスチレン樹脂が実用性において特に優れるが、これに限らず、適度な断熱性と保型性とを備えた比較的軽量の材料を好適に利用することができる。
【0026】
被覆金属板12は表裏の平坦な金属板であり、その縁部を断熱材11の縁部と揃えるようにして断熱材11の上面全体に重ねられ、適宜の接着剤を介して断熱材11に接着される。この被覆金属板12には、薄鋼板の上面または上下両面にポリ塩化ビニル樹脂による耐候性被膜を形成した、いわゆる塩ビ鋼板を好適に利用することができる。また、それに替えて、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂系、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、シリコンポリエステル系樹脂その他の合成樹脂系材料、あるいはエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムその他の合成ゴム材料等による塗装、融着あるいはシート張着等の表面処理によって耐水性、耐蝕性、耐酸性等を向上させた鋼板等も利用可能である。また、鋼板に替えて、それ自体が耐水性に優れるステンレス鋼板やアルミニウム合金板を利用してもよいが、その場合も、メッキや塗装等の表面処理によって耐蝕性や耐酸性を強化すると、より好ましい。
【0027】
例示の形態では、図示右上側の縁部に、被覆金属板12を延設して上向きに折曲した立上部14が形成されている。この立上部14は、外部床に接する建物の外壁下地(図示せず)等に添設されて、外部床と外壁との接続部位に雨水が侵入するのを防ぐ。なお、立上部14は、被覆金属板12とは別体のシート状部材(例えば塩ビシート等)によって形成されてもよい。
【0028】
嵩上げ材15は、合成樹脂からなる一様厚さの薄板体である。この嵩上げ材15は、防水床ユニット10同士が隣接する目地に沿う所定幅の縁部を除いた内側領域の全体にわたって、被覆金属板12の上面に積層接着される。嵩上げ材15の材質としては、軽量かつ安価で保型性に優れ、日射熱による伸縮変形や軟化を比較的生じにくい、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネイト、ポリウレタン等の合成樹脂材料を好適に利用することができる。
【0029】
この嵩上げ材15には、その上下両面に開口する孔部18が多数、形成されて、略等間隔の格子状に配列されている。例示形態にかかる孔部18は、
図2に示すように、嵩上げ材15の厚さ方向における下半部に形成された小径孔18aと、上半部に形成された大径孔18bとが同心状に連通する形態を有している。
【0030】
補強繊維層16は、例えば細いガラス繊維を粗目のメッシュ状に編成するなどして形成されている。補強繊維層16は、嵩上げ材15の略全面にわたって積層され、嵩上げ材15に形成された孔部18にも被せられて、適宜の接着剤または熱融着等により接着される。なお、嵩上げ材15と補強繊維層16との材質的な相性によっては、嵩上げ材15の上面に適宜のプライマー処理を施した上で補強繊維層16が接着されてもよい。
【0031】
補強繊維層16の上面には、嵩上げ材15の略全面にわたって防水塗料17が略一様の厚さで塗布される。この防水塗料17としては、適度な流動性を備えて厚塗りに適し、塗布後も長期間にわたって適度な伸縮性を保持する合成樹脂系塗料が好ましく、特にウレタン(ポリウレタン、アクリルウレタン)樹脂系塗料が実用性に優れる。また、それ以外にも、被覆金属板12および防水テープとの接着性が良い各種の合成樹脂系塗料(例えば、ピュアアクリル塗料、シリコン樹脂系塗料、ビニル樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料等)や、合成ゴム系塗料(例えば、塩化ゴム系塗料、クロロプレンゴム系塗料、ゴムアスファルト系塗料等)、あるいはポリマーセメント系の防水塗料等も好適に利用することができる。この防水塗料17は、補強繊維層16を通過して嵩上げ材15の上面に接着するとともに、嵩上げ材15に形成された孔部18内にも流れ込んで、被覆金属板12の上面にも接着される。
【0032】
かかる構成により、防水床ユニット10の目地3に沿う縁部を除いた内側領域の上面には、被覆金属板12と、防水塗料17の塗膜とからなる二重の防水層が形成される、防水塗料17が嵩上げ材15の孔部18内に流入して被覆金属板12に接着するので、被覆金属板12に対する嵩上げ材15および防水塗料17の塗膜の一体的な接着力が長期間にわたって好適に保持される。さらに例示の形態では、孔部18の上面側の開口が下面側の開口よりも大きくなるように形成されているので、防水塗料17が孔部18内に流入し易くなる。
【0033】
また、目地3に沿う縁部には、被覆金属板12の上面と防水塗料17の塗膜の上面との段差によって段落部13が形成される。各部の寸法の実用的な目安として、防水床ユニット10の縁部(段落部13)の幅は50mm~100mm(好ましくは80mm前後)である。また、嵩上げ材15の厚さは1.5~5.0mm(好ましくは2mm前後)、補強繊維層16の厚さは0.3~0.7mm(好ましくは0.5mm前後)、防水塗料17の塗布厚さは0.8~1.5mm(好ましくは1mm前後)であり、これらによって防水床ユニット10の縁部に3~8mm(好ましくは3.5mm前後)の段差を有する段落部13が形成される。孔部18の直径は5~15mm(好ましくは8mm前後)であり、孔部18同士の離隔寸法(中心間距離ではなく、孔部18以外の部分の寸法)は孔部18の直径の1~3倍(好ましくは2倍前後)である。これらの比率設定により、被覆金属板12に対する嵩上げ材15および防水塗料17からなる塗膜の接着力のバランスを最適化することができる。
【0034】
(防水構造)
この防水床ユニット10同士が目地部分に略一定幅(例えば10mm前後)の隙間をあけて外部床下地2上に並べられ、接着剤等を介して外部床下地2に固定される。外部床下地2は、例えばALC床版や構造用合板等によって形成されるが、本願が開示する発明においては特にその材質や構造を限定しない。
【0035】
防水床ユニット10同士が隣接する目地3の上には防水テープ4が途切れなく張着されて、目地3の隙間が水密的に被覆される。防水テープ4は、基材の片面または両面に合成ゴム材料を適宜の厚みで塗布するなどして接着層を形成したものである。基材には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリオレフィン、レーヨン等の合成樹脂材料からなる不織布またはフィルム、あるいはブチルゴム等の合成ゴム材料からなる発泡シート体、その他適宜の粘着テープ用基材を利用することができる。接着層には、耐候性や耐蝕性に優れた各種の合成ゴム材料を利用することができるが、施工性や伸縮性、経済性等の面ではブチルゴムが特に実用的である。
【0036】
次いで、防水テープ4の上に防水塗料5が塗り重ねられる。この防水塗料5には、防水床ユニット10の上層の塗膜を形成する防水塗料17と同質(同一、または同系統で相互親和性が高いもの)の防水塗料を使用するのが好ましい。防水床ユニット10の縁部同士が隣接する凹溝状の目地部分に防水塗料5が充填されて、その上面が防水床ユニット10の塗膜の上面と面一に仕上げられることにより、防水床ユニット10の敷設領域全体にわたって均質な厚みを有する防水面が形成され、良好な防水性と排水性とが得られることになる。
【0037】
かかる構成により、防水上の弱点になりやすい目地3の上には、防水テープ4と防水塗料5の塗膜とからなる二重の防水層が形成される。防水テープ4と防水塗料5とは材質が異なり、それらが互いの特性を補完し合うことで、被覆金属板12に対する一体的な接着力が長期間にわたって好適に保持される。特に、ブチルゴムを接着層する防水テープ4と、ウレタン樹脂系の防水塗料5とを組み合わせた場合には、互いが相性よく接着して、それぞれの伸縮性も良好に保持される
なお、前述した防水構造は、以下の手順で施工することも可能である。
(1)断熱材11の上面に被覆金属板13を接着した、平坦な状態の防水床ユニット(図示せず)を用意する。この防水床ユニットには、まだ嵩上げ材が積層されておらず、したがって縁部には、まだ段落部が形成されていない。この防水床ユニットを施工現場に搬入し、外部床下地上2に敷き並べて固定する。
(2)嵩上げ材15の上面にあらかじめ補強繊維層16を接着したものを別途用意し、それを施工現場で防水床ユニットの寸法に合わせて切寸した上で、防水床ユニットの上面に重ねて接着する。この段階で、防水床ユニットの縁部に段落部13が形成される。
(3)防水床ユニットの縁部同士が隣接する目地部分に防水テープ4を張着して、目地3を被覆する。この工程(3)は前記(2)の工程と先後してもよい。
(4)防水床ユニットの全面に防水塗料17を塗り重ねる。この防水塗料17は、補強繊維層16を通過して嵩上げ材15に形成された孔部18内に流れ込み、被覆金属板12の上面にも接着される。同時に、防水床ユニットの段落部13同士を突き合わせて形成される凹溝状の目地部分にも充填されて防水テープ4を被覆する。これにより、防水床ユニットの敷設領域全体にわたって、防水塗料17からなる塗膜が凹凸なく一体的に形成される。この施工手順は、施工現場に搬入する資材の重量を軽減したい場合や、施工現場で行うマスキング作業等の事情に応じて適宜選択することができる。
【0038】
以上、本願が開示する発明の実施形態を説明したが、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、構造、材質、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【0039】
特に、本願が開示する発明の要部をなす嵩上げ材15の孔部18については、その断面形状を直円筒状やテーパ状にしてもよいし、その平面形状を楕円形や長円形にしてもよい。また、孔部18の配列形態が、例示のような矩形の格子状でなく、中心が正三角形状に並ぶ「三角格子」等の形態であってもよい。さらに、小径の孔部と大径の孔部とが反復的に並ぶような形態であってもよい。これらは、嵩上げ材15の厚さや補強繊維層16の種類、防水塗料の種類等に合わせて適宜、選択可能である。
【0040】
さらに、防水床ユニットの段落部13上、又は防水テープ4上に、別途防水塗料17にて形成したシート状部材を載置した状態で、防水床ユニットの全面に防水塗料17を塗り重ねることもできる。これにより、塗り重ねる防水塗料17の塗布量を低減することができるとともに、施工時間を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願が開示する発明は、建物その他の構造物の屋外部分に略水平に設けられる外部床(非歩行タイプの平坦な屋根面を含む。)の防水構造として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 防水床ユニット
11 断熱材
12 被覆金属板
13 段落部
14 立上部
15 嵩上げ材
16 補強繊維層
17 防水塗料(塗膜)
18 孔部
2 外部床下地
3 目地
4 防水テープ
5 防水塗料