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特許7452037眼鏡レンズ情報取得装置及び眼鏡レンズ情報取得プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ情報取得装置及び眼鏡レンズ情報取得プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240312BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20240312BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01M11/02 B
G02C7/02
G02C13/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020013030
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117210
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】栃久保 裕司郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 勝保
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060760(JP,A)
【文献】特表2019-511699(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125902(WO,A1)
【文献】特開2009-086568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0231282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
G02C 1/00 - G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ情報取得装置であって、
装用者が眼鏡を装用した装用状態における前記眼鏡の形状を再現して、前記眼鏡を保持する保持手段と、
前記眼鏡が前記保持手段に保持された状態で、前記眼鏡の眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズにおける前記装用状態の第1光学特性を取得する光学特性取得手段と、
前記眼鏡フレームにおける前記装用状態の反り角を取得する反り角取得手段と、
前記反り角取得手段が取得した前記反り角に基づいて、前記光学特性取得手段が取得した前記第1光学特性を、前記装用状態にて発生する前記反り角の影響をキャンセルした非装用状態の第2光学特性に補正する補正手段と、
前記補正手段が補正した前記第2光学特性を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ情報取得装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ情報取得装置において、
前記出力手段は、前記眼鏡レンズの前記第1光学特性と、前記眼鏡レンズの前記第2光学特性と、を比較可能に出力することを特徴とする眼鏡レンズ情報取得装置。
【請求項3】
請求項1または2の眼鏡レンズ情報取得装置において、
前記補正手段は、前記眼鏡フレームの前記反り角が、所定の反り角よりも大きな反り角である場合に、前記眼鏡レンズの前記第1光学特性を前記第2光学特性に補正することを特徴とする眼鏡レンズ情報取得装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの眼鏡レンズ情報取得装置において、
前記補正手段は、前記眼鏡フレームの前記反り角に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸と、前記眼鏡レンズに照射された測定光束の光軸と、が一致した状態での光学特性を得るように、前記第1光学特性を前記第2光学特性に補正することを特徴とする眼鏡レンズ情報取得装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの眼鏡レンズ情報取得装置において、
記眼鏡レンズに向けて光源から測定光束を照射し、前記眼鏡レンズを経由した前記測定光束を検出器にて検出することによって、前記眼鏡レンズの前記第1光学特性を測定するレンズ測定手段備えることを特徴とする眼鏡レンズ情報取得装置。
【請求項6】
眼鏡レンズ情報取得装置にて用いる眼鏡レンズ情報取得プログラムであって、
前記眼鏡レンズ情報取得装置のプロセッサに実行されることで、
装用者が眼鏡を装用した装用状態における前記眼鏡の形状を再現して、前記眼鏡を保持する保持ステップと、
前記眼鏡が前記保持ステップにて保持された状態で、前記眼鏡の眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズにおける前記装用状態の第1光学特性を取得する光学特性取得ステップと、
前記眼鏡フレームにおける前記装用状態の反り角を取得する反り角取得ステップと、
前記反り角取得ステップにて取得された前記反り角に基づいて、前記光学特性取得ステップにて取得された前記第1光学特性を、前記装用状態にて発生する前記反り角の影響をキャンセルした非装用状態の第2光学特性に補正する補正ステップと、
前記補正ステップにて補正された前記第2光学特性を出力する出力ステップと、
を前記眼鏡レンズ情報取得装置に実行させることを特徴とする眼鏡レンズ情報取得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズに関する情報を取得する、眼鏡レンズ情報取得装置、及び、眼鏡レンズ情報取得プログラム、に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズに関する情報として、眼鏡レンズの光学特性を取得することができる、レンズメータが知られている。例えば、眼鏡フレームの装用状態を再現して保持し、この眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズの光学特性を取得するレンズメータが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-72038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレンズメータでは、眼鏡フレームの装用状態を再現することで、この眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズの屈折力を取得することができる。言い換えると、装用者が眼鏡を装用した際に、眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズが装用者の眼に付加する屈折力を知ることができる。しかし、このような、眼鏡フレームの装用状態を再現して得られた眼鏡レンズの屈折力に基づいてレンズを処方すると、眼鏡フレームの反り角と、眼鏡レンズの光軸のずれと、の影響により、装用者の眼に付加する屈折力が変化してしまい、適切な処方とならない場合があった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡レンズの光学特性を適切に取得することができる眼鏡レンズ測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)本開示の第1態様に係る眼鏡レンズ情報取得装置は、眼鏡レンズ情報取得装置であって、装用者が眼鏡を装用した装用状態における前記眼鏡の形状を再現して、前記眼鏡を保持する保持手段と、前記眼鏡が前記保持手段に保持された状態で、前記眼鏡の眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズにおける前記装用状態の第1光学特性を取得する光学特性取得手段と、前記眼鏡フレームにおける前記装用状態の反り角を取得する反り角取得手段と、前記反り角取得手段が取得した前記反り角に基づいて、前記光学特性取得手段が取得した前記第1光学特性を、前記装用状態にて発生する前記反り角の影響をキャンセルした非装用状態の第2光学特性に補正する補正手段と、前記補正手段が補正した前記第2光学特性を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
(2)本開示の第2態様に係る眼鏡レンズ情報取得プログラムは、眼鏡レンズ情報取得装置にて用いる眼鏡レンズ情報取得プログラムであって、前記眼鏡レンズ情報取得装置のプロセッサに実行されることで、装用者が眼鏡を装用した装用状態における前記眼鏡の形状を再現して、前記眼鏡を保持する保持ステップと、前記眼鏡が前記保持ステップにて保持された状態で、前記眼鏡の眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズにおける前記装用状態の第1光学特性を取得する光学特性取得ステップと、前記眼鏡フレームにおける前記装用状態の反り角を取得する反り角取得ステップと、前記反り角取得ステップにて取得された前記反り角に基づいて、前記光学特性取得ステップにて取得された前記第1光学特性を、前記装用状態にて発生する前記反り角の影響をキャンセルした非装用状態の第2光学特性に補正する補正ステップと、前記補正ステップにて補正された前記第2光学特性を出力する出力ステップと、を前記眼鏡レンズ情報取得装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼鏡レンズ測定装置の外観図である。
図2】眼鏡支持ユニットとレンズ測定ユニットとの概略図である。
図3】透過型ディスプレイに表示可能な指標パターンの一例である。
図4】第1透過型ディスプレイに第1指標パターンを表示させることで得られる撮像画像の一例である。
図5】第2透過型ディスプレイに第2指標パターンを表示させることで得られる撮像画像の一例である。
図6】眼鏡レンズ測定装置の制御系を示す図である。
図7】フレームの反り角を説明する図である。
図8】測定光学系の光軸と、レンズの光軸と、装用者の視軸と、の関係を説明する図である。
図9】モニタの表示画面の一例である。
図10】補正テーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示の実施形態に関わる眼鏡レンズ情報取得装置の概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0011】
<光学特性取得手段>
本実施形態における眼鏡レンズ情報取得装置は、光学特性取得手段(例えば、制御部70)を備える。光学特性取得手段は、眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズの第1光学特性を取得する。例えば、眼鏡レンズの第1光学特性は、眼鏡レンズの屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれか)であってもよい。
【0012】
眼鏡レンズの第1光学特性は、眼鏡フレームへ眼鏡レンズが枠入れされた後における、眼鏡レンズの光学特性であってもよい。言い換えると、眼鏡レンズの第1光学特性は、眼鏡の装用状態を再現した状態における、眼鏡レンズの光学特性であってもよい。例えば、このような、眼鏡フレームへ眼鏡レンズが枠入れされた後における眼鏡レンズの光学特性(眼鏡の装用状態を再現した状態における眼鏡レンズの光学特性)は、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射される測定光束の光軸と、がずれた状態にて取得された光学特性であってもよい。例えば、眼鏡レンズの光軸は、眼鏡レンズの光学中心を通り、眼鏡レンズのレンズ面に垂直な軸であってもよい。
【0013】
光学特性取得手段は、操作者が操作手段(例えば、モニタ4)を操作することで入力される操作信号に基づいて、眼鏡レンズの第1光学特性を取得してもよい。また、光学特性取得手段は、眼鏡レンズの第1光学特性を測定することが可能な、後述のレンズ測定手段を用いることで、眼鏡レンズの第1光学特性を取得してもよい。また、光学特性取得手段は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置(例えば、レンズメータ、等)を用いることで、眼鏡レンズの第1光学特性を取得してもよい。例えば、この場合、光学特性取得手段は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置から眼鏡レンズの第1光学特性を受信することによって、眼鏡レンズの第1光学特性を取得してもよい。
【0014】
<反り角取得手段>
本実施形態における眼鏡レンズ情報取得装置は、反り角取得手段(例えば、制御部70)を備えてもよい。反り角取得手段は、眼鏡フレームの反り角を取得する。例えば、眼鏡フレームの反り角は、眼鏡フレームを上方向から観察した状態で、眼鏡フレームのリムにより形成される玉型と、眼鏡フレームのブリッジと、が成す角として表されてもよい。言い換えると、眼鏡フレームを上方向から観察した状態で、眼鏡フレームのブリッジの中央とリムのもっとも耳側の点とを結ぶ線分と、眼鏡フレームのブリッジを基点に左右方向へ伸びる線分と、が成す角として表されてもよい。
【0015】
反り角取得手段は、操作者が操作手段(例えば、モニタ4)を操作することで入力される操作信号に基づいて、眼鏡フレームの反り角を取得してもよい。また、反り角取得手段は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置を用いることで、眼鏡フレームの反り角を取得してもよい。例えば、この場合、反り角取得手段は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置から眼鏡フレームの反り角を受信することによって、眼鏡フレームの反り角を取得してもよい。また、反り角取得手段は、眼鏡フレームの反り角が予め蓄積されたデータを用いることで、眼鏡フレームの反り角を取得してもよい。例えば、この場合、反り角取得手段は、メモリ、サーバ、クラウド、等から該当するデータを呼び出すことによって、眼鏡フレームの反り角を取得してもよい。
【0016】
<補正手段>
本実施形態における眼鏡レンズ情報取得装置は、補正手段(例えば、制御部70)を備えてもよい。補正手段は、眼鏡フレームの反り角に基づいて、眼鏡レンズの第1光学特性を、第1光学特性における反り角をキャンセルした第2光学特性に補正する。すなわち、補正手段は、眼鏡フレームの反り角に基づいて、眼鏡フレームへの枠入れ後における眼鏡レンズの第1光学特性を、第1光学特性における反り角をキャンセルした第2光学特性に補正する。例えば、眼鏡レンズの第2光学特性は、眼鏡レンズの屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれか)であってもよい。
【0017】
眼鏡レンズの第2光学特性は、眼鏡フレームへ眼鏡レンズが枠入れされる前における、眼鏡レンズの光学特性であってもよい。言い換えると、眼鏡レンズの第2光学特性は、眼鏡の非装用状態における、眼鏡レンズの本来の光学特性であってもよい。例えば、このような、眼鏡フレームへ眼鏡レンズが枠入れされる前における眼鏡レンズの光学特性(眼鏡の非装用状態における眼鏡レンズの光学特性)は、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射される測定光束の光軸と、が一致(略一致)した状態において取得された光学特性であってもよい。
【0018】
つまり、補正手段は、眼鏡フレームへの枠入れ後における眼鏡レンズの第1光学特性を、眼鏡フレームの反り角に基づいて、眼鏡フレームへの枠入れ前における第2光学特性に補正してもよい。言い換えると、補正手段は、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射される測定光束の光軸と、がずれた状態において取得された眼鏡レンズの第1光学特性を、眼鏡フレームの反り角に基づいて、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射された測定光束の光軸と、が一致(略一致)した状態における眼鏡レンズの第2光学特性となるように補正してもよい。これによって、眼鏡フレームの反り角が影響し、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射された測定光束の光軸と、がずれた状態における眼鏡レンズの第1光学特性が取得されても、各々の光軸が一致した状態における眼鏡レンズの第2光学特性を、適切に取得することができる。
【0019】
補正手段は、眼鏡フレームの反り角が、所定の反り角よりも大きな反り角である場合に、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。この場合、補正手段は、眼鏡フレームの反り角が所定の閾値を超えるか否かに基づいて、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。例えば、補正手段は、眼鏡フレームの反り角が所定の閾値を超えるときは、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。また、例えば、補正手段は、眼鏡フレームの反り角が所定の閾値以下であるときは、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正しなくてもよい。なお、眼鏡フレームの反り角に対する所定の閾値は、実験やシミュレーションの結果から、予め設定されていてもよい。例えば、少なくとも眼鏡フレームの反り角が大きな場合には、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正することで、眼鏡フレームの反り角に影響されない眼鏡レンズの本来の第2光学特性を、適切に取得することができる。
【0020】
補正手段は、眼鏡フレームの反り角に基づいた演算式を利用して、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。一例として、補正手段は、眼鏡フレームの反り角と、眼鏡フレームの反り角に応じて変化する眼鏡レンズの傾きと、眼鏡レンズの屈折率と、に基づく演算式を利用して、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。なお、眼鏡フレームの反り角に基づいた演算式は、実験やシミュレーションの結果から、予め設定されていてもよい。
【0021】
また、補正手段は、眼鏡フレームの反り角に基づいた補正テーブルを利用して、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。一例として、補正手段は、眼鏡フレームの反り角と、眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡レンズの第2光学特性と、を対応付けた補正テーブルを利用して、眼鏡レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。なお、眼鏡フレームの反り角に基づいた補正テーブルは、実験やシミュレーションの結果から、予め設定されていてもよい。
【0022】
<出力手段>
本実施形態の眼鏡レンズ情報取得装置は、出力手段(例えば、制御部70)を備える。出力手段は、眼鏡レンズの光学特性を出力する。例えば、出力手段は、眼鏡レンズの光学特性を、表示手段への表示による出力、メモリへの保存による出力、サーバやクラウドへの送信による出力、音声ガイドの発生による出力、プリンタへの印刷による出力、等の少なくともいずれかによって出力してもよい。
【0023】
なお、例えば、出力手段による表示手段への表示は、眼鏡レンズ情報取得装置が備える表示手段(例えば、モニタ4)への表示であってもよい。また、例えば、出力手段による表示手段への表示は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置が備える表示手段への表示であってもよい。また、例えば、出力手段による表示手段への表示は、携帯端末(一例として、タブレット端末、等)が有する表示手段への表示であってもよい。
【0024】
なお、例えば、出力手段によるメモリへの保存は、眼鏡レンズ情報取得装置が備えるメモリへの保存であってもよい。また、例えば、出力手段によるメモリへの保存は、眼鏡レンズ情報取得装置に接続可能な外部メモリへの保存であってもよい。また、例えば、出力手段によるメモリへの保存は、眼鏡レンズ情報取得装置とは異なる装置が備えるメモリへの保存であってもよい。また、例えば、出力手段によるメモリへの保存は、携帯端末(一例として、タブレット端末、等)が有するメモリへの保存であってもよい。
【0025】
出力手段は、眼鏡レンズの第2光学特性を出力してもよい。すなわち、出力手段は、眼鏡フレームへの枠入れ前における眼鏡レンズの第2光学特性を出力してもよい。これによって、眼鏡フレームの反り角に影響されない、眼鏡レンズの本来の第2光学特性を、適切に取得することができる。
【0026】
出力手段は、眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡レンズの第2光学特性と、を比較可能に出力してもよい。すなわち、出力手段は、眼鏡フレームへの枠入れ後における眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡フレームへの枠入れ前における眼鏡レンズの第2光学特性と、を比較可能に出力してもよい。
【0027】
例えば、出力手段は、眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡レンズの第2光学特性と、を切り換えることによって、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とを比較可能としてもよい。一例として、出力手段は、表示手段へ、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性との一方を表示させるとともに、操作者が操作手段を操作することで入力される操作信号に基づいて、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性との他方を切り換えて表示させることによって、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とを比較可能としてもよい。
【0028】
また、例えば、出力手段は、眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡レンズの第2光学特性と、を並列することによって、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とを比較可能としてもよい。一例として、出力手段は、表示手段へ、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とを、並列に表示させてもよい。なお、この場合、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とは、横方向に並列に表示させてもよい。また、この場合、眼鏡レンズの第1光学特性と第2光学特性とは、縦方向に並列に表示させてもよい。
【0029】
例えば、このように、出力手段が、眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡レンズの第2光学特性と、を比較可能に出力することによって、眼鏡の装用状態を再現した眼鏡レンズの第1光学特性と、眼鏡の非装用状態における眼鏡レンズの第2光学特性と、を容易に確認し、状況に応じて使い分けることができる。
【0030】
<保持手段>
本実施形態における眼鏡レンズ情報取得装置は、保持手段(例えば、眼鏡支持ユニット10)を備えてもよい。保持手段は、眼鏡フレームを保持する。保持手段は、眼鏡フレームを所定の状態に保持することができる構成であればよい。例えば、保持手段は、眼鏡フレームを載置するための載置台であってもよい。また、例えば、保持手段は、眼鏡フレームを支持するためのピンであってもよい。
【0031】
保持手段は、装用者による眼鏡の装用状態を再現した状態で、眼鏡フレームを保持してもよい。すなわち、保持手段は、眼鏡フレームが後述のレンズ測定手段における測定位置に配置されたとき、眼鏡レンズの光軸と、眼鏡レンズに照射される測定光束の光軸と、がずれた状態となるように、眼鏡フレームを保持してもよい。この場合、保持手段は、眼鏡フレームの反り角が、眼鏡の装用状態における反り角と、同一(略同一)となるように、眼鏡フレームを保持してもよい。すなわち、保持手段は、眼鏡フレームの反り角を装用状態に合わせることで、眼鏡レンズの光軸と測定光束の光軸とがずれた状態で、眼鏡フレームを保持してもよい。また、この場合、保持手段は、眼鏡フレームの前傾角が、眼鏡の装用状態における前傾角と、同一(略同一)となるように、眼鏡フレームを保持してもよい。すなわち、保持手段は、眼鏡フレームの前傾角を装用状態に合わせることで、眼鏡レンズの光軸と測定光束の光軸とがずれた状態で、眼鏡フレームを保持してもよい。もちろん、この場合、保持手段は、眼鏡フレームの反り角及び前傾角が、眼鏡の装用状態における反り角及び前傾角と、同一(略同一)となるように、眼鏡フレームを保持してもよい。すなわち、保持手段は、眼鏡フレームの反り角と前傾角とを装用状態に合わせることで、眼鏡レンズの光軸と測定光束の光軸とがずれた状態で、眼鏡フレームを保持してもよい。
【0032】
<レンズ測定手段>
本実施形態における眼鏡レンズ情報取得装置は、レンズ測定手段(例えば、測定光学系20)を備えてもよい。レンズ測定手段は、眼鏡レンズに向けて光源から測定光束を照射し、眼鏡レンズを経由した測定光束を検出器にて検出することによって、眼鏡レンズの光学特性を測定する。なお、レンズ測定手段は、眼鏡レンズに向けて光源から測定光束を照射し、眼鏡レンズを経由した測定光束を検出器にて検出することによって、眼鏡レンズの第1光学特性(眼鏡フレームへの枠入れ後における眼鏡レンズの光学特性であって、眼鏡の装用状態を再現した状態における眼鏡レンズの光学特性)を測定することが可能であってもよい。
【0033】
レンズ測定手段は、光源(例えば、ディスプレイ21)と、指標板と、検出器(例えば、撮像素子27)と、を少なくとも備えた構成であればよい。
光源は、眼鏡レンズに向けて測定光束を照射する。指標板は、複数の指標の配列により形成される指標パターンを有する。例えば、指標板は、光源からの測定光束を透光させる投光部と、光源からの測定光束を遮光する遮光部と、により指標パターンを表現した指標板であってもよい。また、例えば、指標板は、複数の指標を任意に表示させることにより指標パターンを表現できるディスプレイ(例えば、透過型ディスプレイ24)であってもよい。検出器は、眼鏡レンズを経由した測定光束を検出する。
【0034】
もちろん、レンズ測定手段は、光源と、指標板と、検出器と、に加えて、種々の光学部材を備えた構成としてもよい。一例としては、光源からの測定光束を整形するための光学部材(例えば、コンデンサレンズ23)を備えた構成としてもよい。また、一例としては、光源からの測定光束を複数の光路に分岐させるための光路分岐部材(例えば、ハーフミラー22)を備えた構成としてもよい。
【0035】
本実施形態において、眼鏡レンズ情報取得装置は、保持手段が、眼鏡フレームの装用状態を再現した状態にて、眼鏡フレームを保持し、レンズ測定手段が、このような眼鏡フレームに枠入れされた眼鏡レンズの光学特性を測定する構成であってもよい。この場合、眼鏡フレームの反り角が影響し、眼鏡レンズの光軸と、レンズ測定手段の測定光軸と、にずれが生じるため、眼鏡の装用状態における眼鏡レンズの第1光学特性(眼鏡フレームへの枠入れ後の光学特性)が取得されることになる。
【0036】
しかし、眼鏡レンズの第1光学特性に基づく処方レンズの決定は、装用者にとって不適切になることがある。より詳細には、例えば、新たな眼鏡フレームに処方レンズを枠入れした際、新たな眼鏡フレームの反り角が影響し、処方レンズの光軸と、装用者の視軸と、にずれが生じるため、想定された処方の通りにならないことがある。
【0037】
このため、眼鏡の装用状態を再現した状態にて、眼鏡レンズの光学特性を測定する構成では、上述のような、眼鏡の装用状態を再現した状態における眼鏡レンズの第1光学特性(眼鏡フレームへの枠入れ後における眼鏡レンズの光学特性)を、眼鏡の非装用状態における眼鏡レンズの第2光学特性(眼鏡フレームへの枠入れ前における眼鏡レンズの光学特性)に補正することが、特に重要となる。例えば、眼鏡レンズの第2光学特性に基づいて処方レンズを決定することで、新たな眼鏡フレームに処方レンズを枠入れした際、新たな眼鏡フレームの反り角が影響しても、処方レンズの光軸と、装用者の視軸と、が一致(略一致)するため、想定された適切な処方の通りとすることができる。
【0038】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0039】
<実施例>
本実施例では、眼鏡レンズ(以下、レンズ)に関する情報を取得する眼鏡レンズ情報取得装置として、レンズの光学特性を測定することが可能なレンズ測定ユニットを備える眼鏡レンズ測定装置(以下、測定装置)を例に挙げて説明する。本実施例では、測定装置1の左右方向をX方向、上下方向(鉛直方向)をY方向、前後方向をZ方向、として表す。
【0040】
図1は、測定装置1の外観図である。例えば、測定装置1は、筐体2、収納部3、モニタ4、等を備える。
【0041】
筐体2は、その内部に収納部3を有する。収納部3には、後述の眼鏡支持ユニット10、後述のレンズ測定ユニット、等が収納される。モニタ4は、各種の情報(例えば、レンズLEの第1光学特性、レンズLEの第2光学特性、等)を表示する。モニタ4は、タッチパネルである。すなわち、モニタ4は、操作部としての機能を兼ね、操作者が各種の設定(例えば、測定の開始、等)を行う際に用いられる。操作者によりモニタ4から入力された操作指示に応じた信号は、後述の制御部70に出力される。
【0042】
図2は、眼鏡支持ユニット10とレンズ測定ユニットとの概略図である。
【0043】
<支持ユニット>
眼鏡支持ユニット10は、眼鏡Fを載置するために用いる。例えば、眼鏡支持ユニット10は、位置決めピン11、前方支持部12、後方支持部13、等を備える。
【0044】
位置決めピン11は、眼鏡FにおけるレンズLEの後面に当接される。位置決めピン11は、レンズLEと、後述の透過型ディスプレイ24と、の位置関係を一定にする。また、位置決めピン11は、レンズLEと、後述の撮像素子27と、の位置関係を一定にする。
【0045】
前方支持部12は、眼鏡FにおけるフレームのテンプルFTが伸びる方向の中心より、前方の部位を支持する。例えば、前方支持部12は、フレームのブリッジFBを支持する。なお、前方支持部12は、本実施例に限定されず、一例としてフレームのリムを支持してもよい。後方支持部13は、眼鏡FにおけるフレームのテンプルFTが伸びる方向の中心より、後方の部位を支持する。例えば、後方支持部13は、フレームのテンプルFTを支持する。なお、後方支持部13は、本実施例に限定されず、一例としてフレームのモダンFMを支持してもよい。例えば、本実施例では、前方支持部12及び後方支持部13に、フレームのリムの上端を上方向に、フレームのリムの下端を下方向に向けて、眼鏡Fが載置される。
【0046】
なお、前方支持部12と、後方支持部13とは、基台5へ移動可能に配置されてもよい。例えば、前方支持部12は、図示なき駆動機構によって、上下方向(Y方向)へ移動可能に配置されてもよい。また、例えば、後方支持部13は、図示なき駆動機構によって、上下方向(Y方向)へ移動可能に配置されてもよい。例えば、前方支持部12と後方支持部13との少なくともいずれかを上下方向へ移動させることで、眼鏡Fにおけるフレームの前傾角度を調節することができる。例えば、眼鏡FにおけるレンズLEの後面と、位置決めピン11の底面と、を平行(略平行)にすることができる。また、例えば、眼鏡Fを側方からみた場合における測定光学系20の光軸N1(後述)とレンズLEとのなす角度を、人間の一般的な常用視線の方向とレンズLEとのなす角度(例えば、90度)に合わせることができる。また、例えば、レンズLEの光軸N2(後述)と装用者の水平方向の視軸との垂直面内の角度を、眼鏡Fの装用状態に合わせることができる。なお、前方支持部12および後方支持部13を移動させ、眼鏡Fの装用状態を再現することによって、眼鏡Fを装用者が装用した際に近いレンズLEの光学特性を精度よく得ることができる。
【0047】
<レンズ測定ユニット>
レンズ測定ユニットは、眼鏡Fに枠入れされたレンズLEの光学特性を測定するために用いる。例えば、レンズ測定ユニットは、測定光学系20を備える。例えば、測定光学系20は、ディスプレイ21、コンデンサレンズ23、透過型ディスプレイ24、撮像素子27、等を備える。
【0048】
ディスプレイ21は、眼鏡FのレンズLEに向けて測定光束を照射する。例えば、ディスプレイ21のバックライトを点灯させ、ディスプレイ21を非表示とすることで、ディスプレイ21からの測定光束によりレンズLEが照明される。
【0049】
コンデンサレンズ23は、ディスプレイ21からレンズLEに向けて照射された測定光束のうち、光軸N1と平行(略平行)に屈折された測定光束を、集光させる。
【0050】
透過型ディスプレイ24は、ディスプレイ21からの測定光束を透過させることが可能な、透過率の高いディスプレイである。透過型ディスプレイ24は、後述の指標パターン30を表示可能である。例えば、透過型ディスプレイ24に指標パターン30を表示させることで、ディスプレイ21からの測定光束が透過型ディスプレイ24を透過して指標パターン30状に形成され、これによってレンズLEに指標パターン30が投影される。なお、例えば、透過型ディスプレイ24を非表示とすれば、ディスプレイ21からの測定光束は透過型ディスプレイ24を素通りするために指標パターン30状に形成されず、レンズLEに指標パターン30が投影されない。
【0051】
本実施例では、透過型ディスプレイ24として、第1透過型ディスプレイ24aと、第2透過型ディスプレイ24bと、が設けられる。第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24bとは、各々の上下中央及び左右中央が、光軸L1と一致するように配置される。また、第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24bとは、光軸N1方向に所定の距離ΔDをあけて配置される。
【0052】
撮像素子27は、ディスプレイ21から照射され、透過型ディスプレイ24(第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24b)レンズLEとを経由した測定光束を撮像する。撮像素子27の焦点は、レンズLEの前面付近に合わせられている。このため、例えば、レンズLEに投影された指標パターン30、レンズLEに形成された隠しマーク、等がほぼ焦点の合った状態で撮像される。
【0053】
例えば、ディスプレイ21からの測定光束は、透過型ディスプレイ24(第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24b)を通過し、レンズLEがもつ屈折力により収束あるいは発散されるが、光軸N1と平行(略平行)に屈折された測定光束のみが、コンデンサレンズ23により撮像素子27へ集光される。撮像素子27は、各部材を経由した測定光束を撮像する。
【0054】
<指標パターン>
図3は、透過型ディスプレイ24に表示可能な指標パターン30の一例である。ここでは、第1透過型ディスプレイ24aに表示可能な第1指標パターン30aを例に挙げる。なお、第2透過型ディスプレイ24bに表示可能な第2指標パターン30bは、下記の構成と同一であるため、その説明を省略する。
【0055】
第1透過型ディスプレイ24aは、画面上に、指標31を表示可能とする。指標31は、周辺指標31aと、基準指標31bと、からなる。
【0056】
例えば、周辺指標31aは、予め、所定の形状、所定の位置、及び所定の個数、等で、基準指標31bの周辺に設けられる。本実施例では、周辺指標31aが、円形で形成される。また、本実施例では、周辺指標31aが、左レンズLElを配置する側の右領域33aと、右レンズLErを配置する側の左領域33bと、のそれぞれに配置される。なお、周辺指標31aは、光軸L1の通過位置Iを通る上下方向(Y方向)の軸に対し、左右対称となるように、右領域33aと左領域33bとのそれぞれに配置される。また、本実施例では、周辺指標31aが、多数配置される。
【0057】
例えば、基準指標31bは、周辺指標31aと区別することができればよく、予め、所定の形状、所定の位置、及び所定の個数、等で設けられる。本実施例では、基準指標31bが、周辺指標31aよりも大きな円形で形成される。また、本実施例では、基準指標31bが、光軸L1の通過位置Iを通る上下方向(Y方向)の軸に対し、左右対称となるように、右領域33aと左領域33bとのそれぞれに配置される。また、本実施例では、基準指標31bが、4個ずつ配置される。例えば、基準指標31bによって、各々の周辺指標31aの位置関係を特定しやすくなる。
【0058】
例えば、第1透過型ディスプレイ24aの第1指標パターン30aは、このような指標31の配列によって形成される。同様に、例えば、第2透過型ディスプレイ24bの第2指標パターン30bは、このような指標31の配列によって形成される。
【0059】
本実施例では、第1透過型ディスプレイ24aの第1指標パターン30aと、第2透過型ディスプレイ24bの第2指標パターン30bと、が同一のパターンとなるように構成される。つまり、第1指標パターン30aにおける指標31の形状と、第2指標パターン30bにおける指標31の形状と、が同一となるように構成される。また、第1指標パターン30aにおける指標31の位置と、第2指標パターン30bにおける指標31の位置と、が同一となるように構成される。また、第1指標パターン30aにおける指標31の個数と、第2指標パターン30bにおける指標31の個数と、が同一となるように構成される。
【0060】
<指標パターン像>
例えば、ディスプレイ21からの測定光束が撮像素子27により撮像されると、後述の制御部70により電気信号が処理され、撮像画像が得られる。
【0061】
図4は、第1透過型ディスプレイ24aに第1指標パターン30aを表示させることで得られる撮像画像の一例である。図4(a)は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置していない状態を表す。図4(b)は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置した状態を表す。図5は、第2透過型ディスプレイ24bに第2指標パターン30bを表示させることで得られる撮像画像の一例である。図5(a)は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置していない状態を表す。図5(b)は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置した状態を表す。
【0062】
なお、図4及び図5では、眼鏡Fに枠入れされたレンズLEがマイナスレンズである場合を例に挙げ、右レンズLErに対する撮像画像を図示する。また、図4及び図5では、便宜上、第1指標パターン30aの形状と、第2指標パターン30の形状と、を異なる形状として図示する。
【0063】
まず、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置していない基準状態について説明する。基準状態で第1透過型ディスプレイ24aに第1指標パターン30aを表示させると、ディスプレイ21からの測定光束が、第1指標パターン30a状に形成される。このため、図4(a)に示すように、撮像画像としては、第1指標パターン30aの像(以下、第1指標パターン像41)を含む基準画像B1が取得される。また、基準状態で第2透過型ディスプレイ24bに第2指標パターン30bを表示させると、ディスプレイ21からの測定光束が、第2指標パターン30b状に形成される。このため、図5(a)に示すように、撮像画像としては、第2指標パターン30bの像(以下、第2指標パターン像51)を含む基準画像B2が取得される。
【0064】
なお、第1指標パターン30aにおける複数の指標31の位置及び個数と、第2指標パターン30bにおける複数の指標31の位置及び個数と、は同一である。このため、基準状態では、基準画像B1における各々の指標像の画素位置と、基準画像B2における各々の指標像の画素位置と、が同一の位置となる。一例としては、第1指標パターン像41において、左から4個目かつ上から3個目の指標像に対応する点P1の画素位置と、第2指標パターン像51において、左から4個目かつ上から3個目の指標像に対応する点P2の画素位置と、が同一の位置となる。
【0065】
次に、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に載置した測定状態について説明する。測定状態で第1透過型ディスプレイ24aに第1指標パターン30aを表示させると、ディスプレイ21からの測定光束が第1指標パターン30a状に形成され、さらに、ディスプレイ21からの測定光束がレンズLEの屈折力により屈折されて発散する。このため、図4(b)に示すように、撮像画像としては、少なくとも一部が基準状態よりも円形状に縮小された第1指標パターン像41と、右レンズLErの像(以下、右レンズ像60)と、を含む測定画像M1が取得される。また、測定状態で第2透過型ディスプレイ24bに第2指標パターン30bを表示させると、ディスプレイ21からの測定光束が第2指標パターン30b状に形成され、さらに、ディスプレイ21からの測定光束がレンズLEの屈折力により屈折されて発散する。このため、図5(b)に示すように、撮像画像としては、少なくとも一部が基準状態よりも円形状に縮小された第2指標パターン像51と、右レンズ像60と、を含む測定画像M2が取得される。
【0066】
なお、本実施例では、レンズLEから第1透過型ディスプレイ24aまでの距離よりも、レンズLEから第2透過型ディスプレイ24bまでの距離が遠くなるように、各々の透過型ディスプレイが配置されている。このため、測定状態では、測定画像M1における第1指標パターン像41よりも、測定画像M2における第2指標パターン像51が、小さな像として現れ、測定画像M1における各々の指標像の画素位置と、測定画像M2における各々の指標像の画素位置と、が異なる位置となる。一例としては、第1指標パターン像41において、左から4個目かつ上から3個目の指標像に対応する点P1’の画素位置と、第2指標パターン像51において、左から4個目かつ上から3個目の指標像に対応する点P2’の画素位置と、が異なる位置となる。
【0067】
例えば、上記では、眼鏡FのレンズLEをマイナスレンズとしたが、レンズLEがプラスレンズであれば、ディスプレイ21からの測定光束がレンズLEの屈折力により屈折されて収束する。このため、測定状態では、少なくとも一部が基準状態よりも円形状に拡大された第1指標パターン像41と第2指標パターン像51が取得される。測定画像M1における第1指標パターン像41よりも、測定画像M2における第2指標パターン像51は、大きな像として現れる。また、レンズLEが乱視レンズであれば、少なくとも一部が基準状態よりも楕円形状に変化した第1指標パターン像41と第2指標パターン像51が取得される。また、レンズLEが累進レンズであれば、累進帯の屈折力に応じて変化した第1指標パターン像41と第2指標パターン像51が取得される。
【0068】
<制御部>
図6は、測定装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部70には、モニタ4、ディスプレイ21、第1透過型ディスプレイ24a、第2透過型ディスプレイ24b、撮像素子27、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)、等が電気的に接続されている。
【0069】
例えば、制御部70は、一般的なCPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等で実現される。例えば、CPUは、測定装置1における各部の駆動を制御する。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、CPUが実行する各種プログラムが記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0070】
メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ75には、基準状態における基準画像B1及び基準画像B2、測定状態における測定画像M1及びM2、等が記憶される。
【0071】
<制御動作>
測定装置1の制御動作について説明する。
【0072】
操作者は、装用者の眼鏡Fを受け取り、眼鏡フレーム(以下、フレーム)の反り角θと、レンズLEの屈折率nと、をそれぞれ測定する。
【0073】
<フレームの反り角の取得>
図7は、フレームの反り角θを説明する図である。操作者は、分度器、角度目盛が描かれた図表、等を利用して、フレームの反り角θを測定する。例えば、フレームの反り角θは、水平線Hと線分Kとの成す角として表される。水平線Hは、フレームにおけるブリッジFBの中央点Cを基点に、左右方向へ伸びる水平線である。線分Kは、フレームにおけるブリッジFBの中央点Cと、フレームのリムにおけるもっとも耳側の点Eと、を結ぶ線分である。
【0074】
操作者は、モニタ4を操作して、図示なき入力画面にフレームの反り角θを入力する。制御部70は、モニタ4からの入力信号に基づいて、フレームの反り角θを取得し、フレームの反り角θをメモリ75に記憶させる。
【0075】
<レンズの屈折率の取得>
操作者は、屈折率測定装置を利用して、レンズLEの屈折率nを測定する。例えば、レンズLEの屈折率nは、レンズの厚みを示す指標として利用される値である。例えば、レンズの屈折率nが大きいほどレンズは薄く、レンズの屈折率nが小さいほどレンズは厚くなる。
【0076】
操作者は、モニタ4を操作して、図示なき入力画面にレンズLEの屈折率nを入力する。制御部70は、モニタ4からの入力信号に基づいて、レンズLEの屈折率nを取得し、レンズLEの屈折率nをメモリ75に記憶させる。
【0077】
<レンズの第1光学特性の取得>
操作者は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10へ載置し、前方支持部12、後方支持部13、及び位置決めピン11、の少なくともいずれかを移動させ、眼鏡Fと測定光学系20との位置合わせを完了させる。
【0078】
操作者は、モニタ4を操作して、レンズLEの第1光学特性を測定するための測定ボタンを選択する。制御部70は、モニタ4からの入力信号に応じ、第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24bとを表示させ、レンズLEに第1指標パターン30aと第2指標パターン30bとを投影することによって、レンズLEの第1光学特性を測定する。一例として、制御部70は、レンズLEの、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかを測定する。
【0079】
制御部70は、ディスプレイ21を点灯させる。また、制御部70は、第1透過型ディスプレイ24aに所定の第1指標パターン30aを表示させる。第2透過型ディスプレイ24bは非表示とし、所定の第2指標パターン30bを表示させない。ディスプレイ21からの測定光束は、第2透過型ディスプレイ24bを素通りし、第1透過型ディスプレイ24aを通過して第1指標パターン30a状に形成されると、左レンズLElと右レンズLErの各々で屈折され、コンデンサレンズ23で集光されて、撮像素子27に到達する。制御部70は、撮像素子27の撮像結果に基づき、第1指標パターン像41と、左レンズ像と、右レンズ像60と、を含む測定画像M1を取得する。また、制御部70は、測定画像M1をメモリ75へ記憶させる。
【0080】
続いて、制御部70は、第1透過型ディスプレイ24aを非表示とし、第2透過型ディスプレイ24bに所定の第2指標パターン30bを表示させる。ディスプレイ21からの測定光束は、第2透過型ディスプレイ24bを通過して第2指標パターン30b状に形成され、第1透過型ディスプレイ24aを素通りすると、左レンズLElと右レンズLErの各々で屈折され、コンデンサレンズ23で集光されて、撮像素子27に到達する。制御部70は、撮像素子27の撮像結果に基づき、第2指標パターン像51と、左レンズ像と、右レンズ像60と、を含む測定画像M2を取得する。また、制御部70は、測定画像M2をメモリ75へ記憶させる。
【0081】
制御部70は、ディスプレイ21からの測定光束が光軸方向における2点を通過した通過位置の位置情報を利用して、左レンズLElと右レンズLErの各々の光学特性を測定する。制御部70は、眼鏡Fを載置していない基準状態における基準画像B1の指標像が、眼鏡Fを載置して測定状態となったことで、測定画像M1のどこへ移動したのかを検出する。例えば、制御部70は、測定画像M1について、第1指標パターン像41を構成する各々の指標像の画素位置を検出し、基準画像B1における各々の指標像の画素位置と比較する。これによって、ディスプレイ21からの測定光束が、光軸方向における所定の位置に配置された第1透過型ディスプレイ24aを通過した通過位置の位置情報が取得される。
【0082】
同様に、制御部70は、基準画像B2の指標像が、測定画像M2のどこへ移動したのかを検出する。例えば、制御部70は、測定画像M2について、第2指標パターン像51を構成する各々の指標像の画素位置を検出し、基準画像B2における各々の指標像の画素位置と比較する。これによって、ディスプレイ21からの測定光束が、光軸方向における所定の位置に配置された第2透過型ディスプレイ24bを通過した通過位置の位置情報が取得される。
【0083】
制御部70は、ディスプレイ21からの測定光束が、第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24bとを通過した通過位置の位置情報に基づき、ディスプレイ21からの測定光束がレンズLEによって屈折された屈折角度を算出する。また、制御部70は、ディスプレイ21からの測定光束がレンズLEによって屈折された屈折角度と、第1指標パターン像41及び第2指標パターン像51を形成する各々の指標像の間隔の変化量と、に基づき、左レンズLElと右レンズLErの各々の第1光学特性を算出する。制御部70は、このように第1光学特性を取得し、メモリ75に記憶させる。
【0084】
<レンズの第2光学特性の取得>
図8は、測定光学系20の光軸N1と、レンズLEの光軸N2と、装用者の視軸N3と、の関係を説明する図である。例えば、測定光学系20の光軸N1は、フレームにおけるブリッジFBの中央点Cを通過してもよい。例えば、レンズLEの光軸N2は、レンズLEの光学中心Oを通り、レンズLEのレンズ面に垂直な軸として表される。例えば、装用者の視軸N3は、レンズLEの光学中心Oを通り、光軸N1と平行(略平行)な軸として表される。
【0085】
眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10へ載置して測定されたレンズLEの第1光学特性は、フレームの反り角θが反映された、装用状態におけるレンズLEの第1光学特性である。言い換えると、測定光学系20の光軸N1(装用者の視軸N3)と、レンズLEの光軸N2と、がずれた状態で測定されたレンズLEの第1光学特性である。しかし、例えば、このような装用状態におけるレンズLEの第1光学特性に基づいて、装用者の眼を矯正するための処方レンズを選択すると、装用者に適した処方とならないことがある。
【0086】
一例として、装用者が、現在装用している眼鏡Fと、フレームの反り角θが同一であり、かつ、レンズLEの球面度数(言い換えると、レンズLEの枠入れ前の球面度数)が同一である、新しい眼鏡F’を作製する場合を例に挙げる。ここでは、フレームの反り角θを20度、レンズLEの枠入れ前の球面度数を-5.0Dとして説明する。レンズLEの枠入れ前の円柱度数は0D、レンズLEの枠入れ前の乱視軸角度は0度とする。
【0087】
眼鏡Fに枠入れされたレンズLEは、フレームの反り角が影響し、測定光学系20の光軸N1(装用者の視軸N3)とレンズLEの光軸N2とにずれが生じるため、測定光学系20によって第1球面度数が-5.2Dと取得される。すなわち、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数が-5.2Dと取得される。操作者が、取得結果に基づく処方レンズ(第1球面度数-5.2D)を選択して加工し、新しい眼鏡F’のフレームに処方レンズを枠入れすると、装用者の眼は、フレームの反り角が影響し、装用者の視軸N3とレンズLEの光軸N2とにずれが生じることで、実際には球面度数が-5.4Dで矯正されるようになる。
【0088】
装用者は、現在装用している眼鏡Fに枠入れされたレンズLE(球面度数-5.0D)によって、眼が実際には球面度数-5.2Dで矯正されていた状態から、新しく作製した眼鏡F’ に枠入れされた処方レンズ(球面度数-5.2D)によって、眼が実際には球面度数-5.4Dで矯正されている状態となる。このため、装用者が、新しく作製した眼鏡F’による見え具合に、違和感を覚える等の原因になる。
【0089】
なお、レンズLEの枠入れ前の光学特性(言い換えると、レンズLEの非装用状態の光学特性)と、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性(言い換えると、レンズLEの装用状態を再現した光学特性)とは、フレームの反り角θが大きな値であるほど、その差が大きくなる。また、レンズLEの枠入れ前の光学特性と、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性とは、レンズLEの枠入れ前の光学特性における絶対値が大きな値であるほど、その差が大きくなる。一例として、レンズLEの枠入れ前の屈折力(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)における絶対値が大きな値であるほど、レンズLEの枠入れ前の屈折力と、レンズLEの枠入れ後の屈折力と、の差が大きくなる。
【0090】
そこで、本実施例では、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を補正し、フレームの反り角θの影響がキャンセルされた、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を取得する。より詳細には、測定光学系20の光軸N1と、レンズLEの光軸N2と、が一致(略一致)するように、フレームの反り角θに基づいてレンズLEの第1光学特性を補正することで、フレームの反り角θの影響がキャンセルされたレンズLEの第2光学特性を取得する。以下、レンズLEにおける第1光学特性の補正による第2光学特性の取得について、詳細に説明する。
【0091】
制御部70は、前述のように取得したフレームの反り角θに基づき、測定光学系20の光軸N1とレンズLEの光軸N2との成す角αを算出する。言い換えると、測定光学系20の光軸N1とレンズLEの光軸N2とのずれ角αを算出する。例えば、レンズLEの光軸N2は、フレームにおけるブリッジFBの中央点Cとリムの耳側の点Eとを結ぶ線分Kに対する垂線Qに一致(略一致)するとみなすことができる。このため、例えば、制御部70は、線分Kに対する垂線Qを求め、さらに、垂線Qと光軸N1との成す角を求めることによって、光軸N1と光軸N2との成す角α(ずれ角α)を算出する。
【0092】
続いて、制御部70は、光軸N1と光軸N2との成す角αと、レンズLEの屈折率nと、に基づいて、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性に補正する。例えば、制御部70は、光軸N1と光軸N2との成す角αと、レンズLEの屈折率nと、に基づいて、レンズLEの第1球面度数S1をレンズLEの第2球面度数S2に補正する。例えば、レンズLEの第2球面度数S2は、以下の数式により算出することができる。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
なお、レンズLEの第1球面度数S1と、レンズLEの第1円柱度数C1(レンズLEの枠入れ後の第1円柱度数)と、を乗算した値が0以上であれば、式1を用いてもよい。また、レンズLEの第1球面度数S1と、レンズLEの第1円柱度数C1と、を乗算した値が0未満であれば、式2を用いてもよい。
【0096】
例えば、装用者が現在装用している眼鏡Fについて、フレームの反り角θが20度、レンズLEの屈折率nが1.67、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数S1が-5.2D、であった場合、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数S2は-5.0Dと算出される。
【0097】
制御部70は、フレームの反り角θの影響がキャンセルされた、このようなレンズLEの枠入れ前の第2光学特性(第2球面度数S2)を算出する。また、制御部70は、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性(第2球面度数S2)を取得し、メモリ75に記憶させる。
【0098】
<レンズの第1光学特性と第2光学特性の表示>
図9は、モニタ4の表示画面の一例である。制御部70は、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性(レンズLEの装用状態を再現した光学特性)と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性(レンズLEの非装用状態における光学特性)と、をモニタ4へ表示させる。例えば、制御部70は、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を示す第1画像90と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を示す第2画像91と、を並列に表示してもよい。さらに、例えば、制御部70は、フレームの反り角を示す第3画像93を表示してもよい。
【0099】
操作者は、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性と、を比較することによって、これらの光学特性を状況に応じて使い分けることができる。例えば、操作者は、レンズLEの第1光学特性を確認し、装用者の眼が、フレームの反り角θの影響により過矯正になっているか否かを判断してもよい。また、例えば、操作者は、レンズLEの第2光学特性に基づいて、装用者の眼を矯正するための処方レンズを選択してもよい。
【0100】
前述の一例と同様に、装用者が、現在装用している眼鏡Fと、フレームの反り角θが同一であり、かつ、レンズLEの球面度数S(言い換えると、レンズLEの枠入れ前の球面度数S)が同一である、新しい眼鏡F’を作製する場合を例に挙げる。フレームの反り角θは20度、レンズLEの枠入れ前の球面度数は-5.0D、レンズLEの枠入れ前の円柱度数は0D、レンズLEの枠入れ前の乱視軸角度は0度、である。
【0101】
眼鏡Fに枠入れされたレンズLEは、フレームの反り角の影響により、その枠入れ後の第1球面度数S1が-5.2Dと取得される。しかし、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数S1を、フレームの反り角の影響をキャンセルするように補正することで、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数S2が-5.0Dと算出される。操作者が、第2球面度数に基づく処方レンズ(第2球面度数-5.0D)を選択して加工し、新しい眼鏡F’のフレームに処方レンズを枠入れすると、装用者の眼は、フレームの反り角が影響し、装用者の視軸N3とレンズLEの光軸N2とにずれが生じることで、実際には球面度数が-5.2Dで矯正されるようになる。
【0102】
装用者は、現在装用している眼鏡Fに枠入れされたレンズLE(球面度数-5.0D)によって、眼が実際には球面度数-5.2Dで矯正されていた状態から、新しく作製した眼鏡F’ に枠入れされた処方レンズ(球面度数-5.0D)によって、眼が実際には球面度数-5.2Dで矯正されている状態となる。現在装用している眼鏡Fによる見え具合と、新しく作製した眼鏡F’による見え具合と、が同様であるため、装用者の眼に適した違和感のない処方とすることができる。
【0103】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼鏡レンズ情報取得装置は、フレームの反り角に基づいて、フレームに枠入れされたレンズの第1光学特性を、フレームの反り角をキャンセルしたレンズの第2光学特性に補正し、レンズの第2光学特性を出力する。すなわち、フレームの反り角に基づいて、フレームへの枠入れ後におけるレンズの第1光学特性を、フレームの反り角をキャンセルした、フレームへの枠入れ前におけるレンズの第2光学特性に補正し、レンズの第2光学特性を出力する。これによって、操作者は、フレームの反り角に影響されないレンズの本来の光学特性を、適切に取得することができる。
【0104】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ情報取得装置は、フレームへの枠入れ後におけるレンズの第1光学特性と、フレームへの枠入れ前におけるレンズの第2光学特性と、を比較可能に出力する。これによって、操作者は、眼鏡の装用状態と非装用状態のレンズの光学特性を容易に確認し、状況に応じて使い分けることができる。一例として、フレームへの枠入れ後におけるレンズの第1光学特性(眼鏡の装用状態におけるレンズの第1光学特性)を用いて、装用者が装用しているレンズが、装用者に適したものであるかを確認することができる。また、一例として、フレームへの枠入れ前におけるレンズの第2光学特性(眼鏡の非装用状態におけるレンズ本来の第2光学特性)を用いて、装用者に処方する処方レンズを決定することができる。
【0105】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ情報取得装置は、フレームの反り角に基づいて、レンズの光軸と、レンズに照射された測定光束の光軸と、が一致した状態での光学特性を得るように、フレームへの枠入れ後におけるレンズの第1光学特性を、フレームへの枠入れ前におけるレンズの第2光学特性に補正する。これによって、フレームの反り角が影響し、レンズの光軸とレンズに照射された測定光束の光軸とがずれた状態におけるレンズの第1光学特性が取得されても、各々の光軸が一致した状態におけるレンズの第2光学特性を、適切に取得することができる。
【0106】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ情報取得装置は、フレームを保持し、フレームに枠入れされたレンズに向けて、光源から測定光束を照射し、レンズを経由した測定光束を検出器にて検出することによって、フレームへの枠入れ後におけるレンズの第1光学特性を測定する。例えば、フレームが装用状態を再現した状態にて保持される構成では、フレームの反り角が影響してレンズの光軸と測定光軸とにずれが生じ、眼鏡の装用状態におけるレンズの第1光学特性が取得される。しかし、レンズの第1光学特性に基づく処方レンズの決定は、装用者にとって不適切になることがある。このため、特に、フレームが装用状態を再現した状態にて保持される構成では、レンズの第1光学特性を、眼鏡の非装用状態における、レンズの本来の第2光学特性に補正することが重要となる。操作者は、レンズの第2光学特性に基づいて処方レンズを決定することで、装用者に適した処方をすることができる。
【0107】
<変容例>
なお、本実施例では、操作者が、分度器、角度目盛が描かれた図表、等を利用してフレームの反り角θを測定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、フレームの反り角θを取得することができればよく、操作者が手動で反り角θを測定および入力する構成としてもよいし、制御部70が自動で反り角θを取得する構成としてもよい。例えば、手動の場合、眼鏡支持ユニット10における眼鏡Fの載置面(本実施例では、基台5)に、印刷等で予め角度目盛を設けた構成としてもよい。操作者は、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10へ載置するとともに、基台5の角度目盛を用いて反り角θを測定してもよい。また、例えば、自動の場合、眼鏡支持ユニット10に載置された眼鏡Fを上方向から撮影するための撮像素子を設けた構成としてもよい。制御部70は、撮像素子により撮像された眼鏡Fの撮像画像を画像処理することで、フレームの反り角θを取得してもよい。もちろん、自動の場合は、測定装置1とは異なる装置から反り角θを受信してもよいし、予め蓄積されたデータから該当する反り角θを呼び出してもよい。
【0108】
また、本実施例では、操作者がレンズLEの屈折力nを測定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、一般的なレンズの屈折率の値(例えば、1.67、等)を予めメモリ75に記憶しておいてもよく、この場合には、制御部70がメモリ75を参照することで、レンズの屈折率が取得されてもよい。
【0109】
なお、本実施例では、レンズLEの光学中心Oにおける第1光学特性を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズLEのプリズム度数の測定値が0となる位置にて、第1光学特性を取得する構成としてもよい。また、このような第1光学特性を補正し、プリズム度数の測定値が0となる位置における第2光学特性を取得してもよい。
【0110】
なお、本実施例では、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を示す第1画像90と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を示す第2画像91と、をモニタ4に並列させて表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を示す第1画像90と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を示す第2画像91と、のいずれかをモニタ4に表示する構成としてもよい。この場合、モニタ4の表示画面に、第1画像90と第2画像91とを切り換える切換ボタンを表示してもよい。操作者は、モニタ4を操作して切換ボタンを選択し、制御部70は、モニタ4からの入力信号に応じて、第1画像90と第2画像91とを切り換え、第1画像90と第2画像91とのいずれかをモニタ4に表示してもよい。
【0111】
なお、本実施例では、レンズLEの光学特性として球面度数を例に挙げ、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数(すなわち、レンズLEの装用状態を再現した球面度数)を、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数(すなわち、レンズLEの非装用状態における球面度数)に補正する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズLEの円柱度数についても、同様に、レンズLEの枠入れ後の第1円柱度数(すなわち、レンズLEの装用状態の円柱度数)を、レンズLEの枠入れ前の第2円柱度数(すなわち、レンズLEの非装用状態の円柱度数)に補正する構成としてもよい。
【0112】
この場合、制御部70は、測定光学系20の光軸N1と、レンズLEの光軸N2と、の成す角αに基づいて、レンズLEの枠入れ後の第1円柱度数C1を、レンズLEの枠入れ前の第2円柱度数C2に補正する。例えば、レンズLEの第2円柱度数C2は、以下の数式により算出することができる。
【0113】
【数3】
【0114】
例えば、装用者が現在装用している眼鏡Fについて、フレームの反り角θが20度、レンズLEの屈折率nが1.67、レンズLEの枠入れ後の第1円柱度数C1が-0.7D、であった場合、レンズLEの枠入れ前の第2円柱度数C2は-0.0Dと算出される。
【0115】
なお、本実施例では、フレームの反り角θに基づく演算式を利用して、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性に補正し、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、フレームの反り角θと、レンズLEの第1光学特性と、レンズLEの第2光学特性と、を対応付けた補正テーブルを利用して、レンズLEの第2光学特性を取得する構成としてもよい。例えば、補正テーブルは、実験やシミュレーションにより予め作成され、メモリ75に記憶されていてもよい。また、補正テーブルは、レンズLEの第1光学特性毎(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、毎)に設けられてもよい。
【0116】
図10は、補正テーブルの一例である。なお、図10は、フレームの反り角θと、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数S1と、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数S2と、を対応付けた補正テーブルを示している。例えば、補正テーブルは、フレームの所定の反り角θ(例えば、5度ステップの反り角)で、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数S2と対応付けられていてもよい。また、例えば、補正テーブルは、レンズの所定の第1球面度数(例えば、5度ステップの第1球面度数)で、レンズLEの枠入れ前の第2球面度数S2と対応付けられていてもよい。制御部70は、フレームの反り角θと、レンズLEの枠入れ後の第1球面度数S1と、を参照することで、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を取得することができる。
【0117】
なお、本実施例では、フレームの反り角θが、所定の反り角よりも大きな反り角である場合に、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性に補正する構成としてもよい。例えば、フレームの反り角θによっては、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性と、の差がわずかであるために、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正しなくてもよい場合がある。そこで、フレームの反り角θに対して閾値を設け、フレームの反り角θが閾値を超えるか否かに基づいて、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正するか否かが決定されてもよい。フレームの反り角θに対する閾値は、実験やシミュレーションにより予め作成され、メモリ75に記憶されていてもよい。例えば、このように、少なくともフレームの反り角が大きな場合には、レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正することで、フレームの反り角に影響されないレンズの本来の光学特性を、適切に取得することができる。
【0118】
なお、本実施例では、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性が、所定の値を超える場合に、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性に補正する構成としてもよい。例えば、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性によっては、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性と、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性と、の差がわずかであるために、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正しなくてもよい場合がある。そこで、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対して閾値を設け、レンズLEの第1光学特性が閾値を超えるか否かに基づいて、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正するか否かが決定されてもよい。レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対する閾値は、実験やシミュレーションにより予め作成され、メモリ75に記憶されていてもよい。例えば、このように、少なくともレンズLEの枠入れ後の第1光学特性が、所定の値を超える場合には、レンズの第1光学特性を第2光学特性に補正することで、フレームの反り角に影響されないレンズの本来の光学特性を、適切に取得することができる。
【0119】
なお、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対する閾値は、レンズLEの第1光学特性の値が小さくなる方向に設けられてもよい。また、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対する閾値は、レンズLEの第1光学特性の値が大きくなる方向に設けられてもよい。また、また、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対する閾値は、レンズLEの第1光学特性の値が小さくなる方向と、レンズLEの第1光学特性の値が大きくなる方向と、に許容範囲として設けられてもよい。
【0120】
もちろん、本実施例では、フレームの反り角θに対する閾値と、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性に対する閾値と、の双方を設けてもよい。例えば、フレームの反り角θが閾値を超え、かつ、レンズLEの第1光学特性が閾値を超える場合に、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正してもよい。また、例えば、フレームの反り角θと、レンズLEの第1光学特性と、のいずれか一方が閾値を超えない場合は、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正しなくてもよい。また、例えば、フレームの反り角θと、レンズLEの第1光学特性と、の双方が閾値を超えない場合は、レンズLEの第1光学特性を第2光学特性に補正しなくてもよい。
【0121】
なお、本実施例では、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を補正し、フレームの反り角θの影響がキャンセルされた、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、眼鏡Fを眼鏡支持ユニット10に保持させ、フレームの前傾角度を調節した際には、フレームの前傾角度とフレームの反り角θとが反映された、装用状態におけるレンズLEの第1光学特性が取得される。このため、レンズLEの枠入れ後の第1光学特性を補正し、フレームの前傾角度の影響と、フレームの反り角θの影響と、の双方がキャンセルされた、レンズLEの枠入れ前の第2光学特性を取得する構成としてもよい。
【0122】
なお、本実施例では、レンズLEの第2光学特性を、そのまま、モニタ4へ表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズは一般的に所定の間隔(例えば、0.25D間隔)で作製されていることが多い。このため、制御部70は、レンズLEの第2光学特性が所定の間隔の値にならない場合、第2光学特性の値を、所定の間隔の値(例えば、-5.0D、-5.25D、-5.5D、…)と比較し、その差がもっとも小さくなる所定の間隔の値を、第2光学特性としてモニタ4へ表示してもよい。これによって、フレームに枠入れされているレンズLEの本来の光学特性が特定しやすくなる。
【0123】
なお、本実施例では、レンズLEが単焦点レンズである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズLEは、累進焦点レンズであってもよい。このとき、制御部70は、第1透過型ディスプレイ24aと第2透過型ディスプレイ24bとにおける指標パターンを非表示とし、得られた測定画像から累進焦点レンズに施された隠しマークの像を検出してもよい。また、制御部70は、累進焦点レンズの隠しマークから遠用測定基準点と近用部設計基準点との少なくともいずれかを特定し、これらの位置にて第1光学特性を取得する構成としてもよい。なお、制御部70は、レンズLEの光学特性の分布に基づいて、遠用測定基準点と近用部設計基準点との少なくともいずれかを推定し、これらの位置にて第1光学特性を取得する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 眼鏡レンズ測定装置
10 眼鏡支持ユニット
20 測定光学系
21 光源
24 透過型ディスプレイ
27 撮像素子
70 制御部
75 メモリ
図1
図2
図3
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図8
図9
図10