(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】振動素子、振動デバイス、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5607 20120101AFI20240312BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240312BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01C19/5607
H10N30/30
H03H9/19 K
(21)【出願番号】P 2020014101
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川内 修
(72)【発明者】
【氏名】志村 匡史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 奨悟
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-013047(JP,A)
【文献】特開2009-200648(JP,A)
【文献】特表2019-520297(JP,A)
【文献】特開平10-093211(JP,A)
【文献】特開2016-220118(JP,A)
【文献】特開2019-125897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 19/00-19/72
H03H 3/007-3/06
9/00-9/135
9/15-9/24
9/30-9/40
9/46-9/62
9/66、9/70、90/74
H10N 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から延出する振動腕と、
前記振動腕に配置されている錘と、を有し、
前記錘は、
厚膜部と、
前記厚膜部よりも膜厚が薄い薄膜部と、
前記厚膜部と前記薄膜部との間に位置して前記厚膜部と前記薄膜部とを接続し、膜厚が前記厚膜部側から前記薄膜部側に向けて漸減するテーパー状をなす接続部と、を有し、
前記薄膜部は、
前記薄膜部の前記接続部と反対側の端部に
位置し、前記薄膜部の前記接続部側の端部よりも膜厚が厚い部分
と、
前記膜厚が厚い部分よりも前記接続部側に位置し、前記膜厚が厚い部分よりも膜厚が薄く、かつ、膜厚が一定である膜厚一定部と、
前記膜厚が厚い部分と前記膜厚一定部との間に位置して前記膜厚が厚い部分と前記膜厚一定部とを接続し、膜厚が前記膜厚が厚い部分側から前記膜厚一定部側に向けて漸減するテーパー状をなす先端部側接続部と、を有することを特徴とする振動素子。
【請求項2】
前記薄膜部および前記接続部は、それぞれ、レーザー光の照射により薄膜化されたレーザー加工部である請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
前記薄膜部は、前記厚膜部に対して前記振動腕の先端側に位置する請求項2に記載の振動素子。
【請求項4】
前記接続部の傾斜角は、60°以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項5】
前記接続部の傾斜角は、20°以上である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動素子を有することを特徴とする振動デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動素子と、
前記振動素子から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動素子と、
前記振動素子から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子、振動デバイス、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されている音叉振動子は、振動腕の先端部に設けられている金属膜を有する。このような音叉振動子では、金属膜にレーザー光を照射し、金属膜の一部を除去することにより、共振周波数を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の音叉振動子では、共振周波数を調整した後の状態で、金属膜に垂直な面を有する段差が形成されている。そのため、この段差を起点に金属膜が振動腕から剥離し易くなる。金属膜が剥離すると振動腕の質量が変化し、これにより音叉振動子の周波数が変化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本適用例の振動素子は、基部と、
前記基部から延出する振動腕と、
前記振動腕に配置されている錘と、を有し、
前記錘は、
厚膜部と、
前記厚膜部よりも膜厚が薄い薄膜部と、
前記厚膜部と前記薄膜部との間に位置して前記厚膜部と前記薄膜部とを接続し、膜厚が前記厚膜部側から前記薄膜部側に向けて漸減するテーパー状をなす接続部と、を有することを特徴とする。
【0006】
本適用例の振動素子では、前記薄膜部および前記接続部は、それぞれ、レーザー光の照射により薄膜化されたレーザー加工部であることが好ましい。
【0007】
本適用例の振動素子では、前記薄膜部は、前記厚膜部に対して前記振動腕の先端側に位置することが好ましい。
【0008】
本適用例の振動素子では、前記接続部の傾斜角は、60°以下であることが好ましい。
【0009】
本適用例の振動素子では、前記接続部の傾斜角は、20°以上であることが好ましい。
【0010】
本適用例の振動デバイスは、上述の振動素子を有することを特徴とする。
【0011】
本適用例の電子機器は、上述の振動素子と、
前記振動素子から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を有することを特徴とする。
【0012】
本適用例の移動体は、上述の振動素子と、
前記振動素子から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
【
図2】
図1の振動デバイスが有する振動素子を示す平面図である。
【
図4】
図2の振動素子が有する錘を示す断面図である。
【
図5】
図2の振動素子が有する錘を示す断面図である。
【
図6】
図1の振動デバイスの製造工程を示す図である。
【
図7】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図8】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図11】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図12】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図13】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図14】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図15】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図16】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
【
図18】
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る振動素子が有する錘を示す平面図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
【
図23】
図22に示す振動素子の動作を説明するための模式図である。
【
図24】
図22に示す振動素子の動作を説明するための模式図である。
【
図25】第4実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【
図26】第5実施形態の自動車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の振動素子、振動デバイス、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
図2は、
図1の振動デバイスが有する振動素子を示す平面図である。
図3は、
図2中のA-A線断面図である。
図4および
図5は、それぞれ、
図2の振動素子が有する錘を示す断面図である。
図6は、
図1の振動デバイスの製造工程を示す図である。
図7は、
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
図8は、
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための断面図である。
図9は、レーザー光の強度分布を示す図である。
図10ないし
図16は、それぞれ、
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための平面図である。
図17は、錘の変形例を示す断面図である。
図18は、
図1の振動デバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【0016】
なお、説明の便宜上、
図6および
図9を除く各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を示す。また、X軸に沿う方向をX軸方向とも言い、Y軸に沿う方向をY軸方向とも言い、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側をプラス側とも言い、反対側をマイナス側とも言う。また、Z軸方向のプラス側を「上」とも言い、マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を、単に「平面視」とも言う。また、X軸、Y軸およびZ軸は、後述するように、水晶の結晶軸に相当する。
【0017】
図1に示す振動デバイス1は、例えば、発振器として用いられる。このような振動デバイス1は、パッケージ3と、パッケージ3内に収納されている振動素子4および回路素子6と、を有する。
【0018】
図1に示すように、パッケージ3は、上面に開口する凹部311を備えるベース31と、凹部311の開口を塞ぐようにベース31の上面に接合部材33を介して接合されている板状のリッド32と、を有する。パッケージ3の内側には、凹部311によって内部空間Sが形成され、内部空間Sに振動素子4および回路素子6が収納されている。
【0019】
例えば、ベース31は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、リッド32は、コバール等の金属材料で構成することができる。ただし、ベース31およびリッド32の構成材料としては、それぞれ、特に限定されない。例えば、リッド32は、光透過性を有するガラス材料で構成されていてもよい。
【0020】
また、内部空間Sは、気密であり、減圧状態、好ましくは、より真空に近い状態となっている。これにより、粘性抵抗が減少して振動素子4の振動特性が向上する。ただし、内部空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素またはAr等の不活性ガスを封入した雰囲気であってもよく、減圧状態でなく大気圧状態または加圧状態となっていてもよい。
【0021】
また、凹部311は、ベース31の上面に開口する凹部311aと、凹部311aの底面に開口し、凹部311aよりも開口幅が小さい凹部311bと、凹部311bの底面に開口し、凹部311bよりも開口幅が小さい凹部311cと、を有する。そして、凹部311aの底面に導電性の接合部材2を介して振動素子4が接合され、凹部311cの底面に回路素子6が接合されている。
【0022】
また、凹部311aの底面には複数の内部端子341が配置され、凹部311bの底面には複数の内部端子342が配置され、ベース31の下面には外部端子343が配置されている。複数の内部端子342の一部は、ベース31内に形成されている図示しない内部配線を介して内部端子341と電気的に接続され、残りは、前記内部配線を介して外部端子343と電気的に接続されている。また、各内部端子342は、ボンディングワイヤーBWを介して回路素子6と電気的に接続されている。
【0023】
振動素子4は、
図2に示すように、振動体41と、振動体41に配置されている電極と、周波数調整用の金属膜としての錘46と、を有する。
【0024】
振動体41は、音叉型の水晶振動素子である。振動体41は、Zカット水晶板から形成され、水晶の結晶軸であるX軸(電気軸)およびY軸(機械軸)で規定されるXY平面に広がりを有し、Z軸(光軸)方向に厚みを有する。
【0025】
ただし、振動体41の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、リン酸ガリウム(GaPO4)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)等の各種圧電材料を用いてもよいし、例えば、シリコン基板等の圧電材料以外の材料を用いてもよい。
【0026】
また、振動体41は、基部42と、基部42からY軸方向プラス側に並んで延出する一対の振動腕43、44と、を有する。そして、基部42において一対の接合部材2を介してベース31に固定されている。
【0027】
また、
図3に示すように、振動腕43は、上面に開口する溝432と、下面に開口する溝433と、を有する。同様に、振動腕44は、上面に開口する溝442と、下面に開口する溝443と、を有する。したがって、振動腕43、44は、略H状の横断面形状を有する。
【0028】
また、
図2および
図3に示すように、電極として、信号電極481と、接地電極482と、が配置されている。
図3に示すように、信号電極481は、振動腕43の上面および下面と、振動腕44の両側面と、に配置されている。一方、接地電極482は、振動腕43の両側面と、振動腕44の上面および下面と、に配置されている。また、信号電極481は、一方の接合部材2を介して内部端子341と電気的に接続されており、接地電極482は、他方の接合部材2を介して別の内部端子341と電気的に接続されている。これにより、振動素子4と回路素子6とが電気的に接続される。そして、回路素子6が信号電極481に駆動信号を印加すると、
図2中の矢印で示すように、振動腕43、44が接近、離間を繰り返すようにして屈曲振動する。
【0029】
また、
図2に示すように、振動腕43、44の先端部の上面には、それぞれ、錘46が配置されている。錘46は、振動素子4の共振周波数を調整したり、振動腕43、44の振動バランスを調整したりするためのものである。後述するように、振動素子4の製造工程に含まれる第1周波数調整工程において、レーザー光Lを錘46に照射して錘46の一部を除去し、振動腕43、44の質量を減少させることにより振動素子4の共振周波数を調整することができる。なお、錘46の構成としては、特に限定されず、例えば、Au(金)やAl(アルミ)、および、Au(金)やAl(アルミ)を主成分とする合金を積層した金属被膜で構成することができる。本実施形態では、錘46は、Au(金)で構成されている。
【0030】
第1周波数調整工程を終えた後、すなわち、レーザー光Lが照射され、その一部が除去された状態の錘46は、
図4および
図5に示す構成となっている。錘46は、除去部461と、厚膜部462と、を有する。除去部461は、第1周波数調整工程においてレーザー光Lが照射されたレーザー加工部46’であり、その一部が厚さ方向に除去されて薄膜化されている領域である。一方、厚膜部462は、第1周波数調整工程においてレーザー光Lが照射されなかった非レーザー加工部46”であり、実質的にその一部も除去されなかった、すなわち、薄膜化されていない領域である。
【0031】
また、除去部461および厚膜部462は、振動腕43、44の長手方向であるY軸方向に並んで配置され、本実施形態では、除去部461が厚膜部462に対して振動腕43、44の先端側すなわちY軸方向プラス側に位置する。このように、レーザー光Lで加工する領域である除去部461を厚膜部462よりも振動腕43、44の先端側に配置することにより、言い換えると、錘46の先端側を除去することにより、除去した錘46の単位質量あたりの周波数変化量をより大きくすることができる。そのため、第1周波数調整工程において、十分な周波数調整幅を確保することができる。ただし、除去部461および厚膜部462の配置は、特に限定されず、例えば、除去部461が、厚膜部462のY軸方向マイナス側に位置していてもよいし、除去部461のY軸方向両側に、厚膜部462が位置していてもよい。
【0032】
また、除去部461は、膜厚Tが厚膜部462よりも薄い薄膜部463と、薄膜部463と厚膜部462との間に位置し、薄膜部463と厚膜部462とを接続する接続部464と、を有する。接続部464は、振動腕43、44の上面に対して傾斜しており、膜厚Tが厚膜部462側から薄膜部463側すなわちY軸方向マイナス側からプラス側に向けて漸減するテーパー状となっている。このように、接続部464をテーパー状とすることにより、厚膜部462と薄膜部463との境界に垂直な面を有する段差すなわち矩形の段差が形成されるのを抑制することができる。そのため、当該部分を起点とした錘46の不本意な剥離を効果的に抑制することができる。
【0033】
厚膜部462の膜厚T、言い換えると、第1周波数調整工程においてレーザー光Lが照射される前の膜厚Tとしては、特に限定されないが、例えば、3μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上6μm以下であることがより好ましい。これにより、第1周波数調整工程において、十分な周波数調整幅を確保することができる。また、薄膜部463の膜厚T、言い換えると、第1周波数調整工程においてレーザー光Lが照射された後の膜厚Tとしては、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。これにより、薄膜部463が過度に薄くなり、振動腕43、44との密着性が低下してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0034】
また、接続部464の傾斜角θ、すなわち振動腕43、44の上面に対する傾きの平均値としては、特に限定されないが、例えば、60°以下であることが好ましく、55°以下であることがより好ましく、50°以下であることがさらに好ましい。これにより、上述した効果すなわち錘46の剥離抑制効果がより顕著なものとなる。一方、傾斜角θの下限値としては、特に限定されないが、例えば、20°以上であることが好ましく、25°以上であることがより好ましく、35°以上であることがさらに好ましい。これにより、接続部464のY軸方向の長さを抑えることができる。そして、その分、薄膜部463の面積を十分に広く確保することができ、第1周波数調整工程において、十分な周波数調整幅を確保することができる。
【0035】
ここで、
図3および
図4では、テーパー角θは、Y軸方向に一定に表されているが、これに限定されず、接続部464は、Y軸方向またはX軸方向にテーパー角θが変化する部分を有していてもよい。この場合、テーパー角θの平均値が上記値内であればよい。
【0036】
本実施形態では、接続部464の上面が傾斜した平面で構成されており、膜厚Tの漸減率がY軸方向に沿って一定であるが、これに限定されない。例えば、接続部464の上面が凸湾曲面で構成されており、膜厚Tの漸減率がY軸方向プラス側に向けて漸増していてもよいし、反対に、接続部464の上面が凹湾曲面で構成されており、膜厚Tの漸減率がY軸方向プラス側に向けて漸減していてもよい。また、凸湾曲面や凹湾曲面に替えて、傾斜角が異なる複数の平面をY軸方向に並べて接続した構成としてもよい。
【0037】
図1に示すように、回路素子6は、凹部311cの底面に固定されている。このような回路素子6には、例えば、外部のホストデバイスと通信を行うインターフェース部、振動素子4を発振させる発振回路等が含まれている。なお、回路素子6は、省略してもよいし、パッケージ3の外部に配置してもよい。
【0038】
以上、振動デバイス1の構成について説明した。次に、振動デバイス1の製造方法について説明する。
図6に示すように、振動デバイス1の製造方法は、振動素子4を準備する準備工程と、水晶ウエハ40上で振動素子4の周波数を調整する第1周波数調整工程と、振動素子4をベース31にマウントするマウント工程と、ベース31上で振動素子4の周波数を調整する第2周波数調整工程と、ベース31にリッド32を接合する封止工程と、を含む。
【0039】
[準備工程]
まず、
図7に示すように、水晶ウエハ40を準備し、フォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いて水晶ウエハ40をパターニングすることにより、水晶ウエハ40に複数の振動体41を形成する。次に、スパッタリング等によって、振動体41の表面に電極を形成し、さらに、蒸着等によって、振動腕43、44の先端部に錘46を形成する。
【0040】
[第1周波数調整工程]
次に、水晶ウエハ40上で振動素子4の共振周波数を調整する。具体的には、
図8に示すように、振動腕43、44に設けられた錘46にレーザー光Lを照射し、錘46の一部を除去して振動腕43、44の質量を減少させることにより振動素子4の共振周波数を調整して、振動素子4の共振周波数を目標値に合わせ込む。
【0041】
レーザー光Lとしては、特に限定されず、例えば、YAG、YVO4、エキシマレーザー等のパルス状レーザー光、炭酸ガスレーザー等の連続発振レーザー光を用いることができる。なお、本実施形態では、レーザー光Lとしてパルス状レーザー光を用いている。つまり、スポット状に集光されたレーザー光Lを連続して照射することにより、錘46の加工を行う。このように、レーザー光Lとしてパルス状レーザー光を用いることにより、レーザー光Lの強度を変化させることなく一定としたまま、照射時間や照射ピッチを変更することにより、錘46に対する単位面積当たりのレーザー光Lの照射量すなわちエネルギー量を制御することができる。そのため、レーザー光Lが安定し、本工程を精度よく行うことができる。
【0042】
レーザー光Lのスポット径としては、特に限定されないが、例えば、20μm以下であるのが好ましく、15μm以下であるのがより好ましい。これにより、錘46に対する十分な微細加工が可能となる。
【0043】
また、レーザー光Lとしては、特に限定されないが、ピコ秒レーザー光であることが好ましい。なお、ピコ秒レーザー光とは、レーザー光Lのパルス幅をピコ秒レベルまで短パルス化したものである。ピコ秒レーザーを用いることにより、例えば、一般的なYAGレーザーと比べて高いピークパワーで錘46を蒸発させることができる。そのため、熱影響の少ない加工が可能となる。また、蒸発した錘材料の錘46上への再付着を効果的に抑制することができ、錘46上にドロスが付着するのを効果的に抑制することができる。そのため、錘46からドロスが剥がれ、それに伴って振動素子4の共振周波数が変化してしまうことを効果的に抑制することができる。そのため、振動素子4の信頼性が向上する。
【0044】
また、レーザー光Lのパルス幅としては、特に限定されないが、錘46の構成材料の格子イオン温度を融点まで加熱したときの時間である衝突緩和時間よりも短いことが好ましい。これにより、上述の効果がより顕著なものとなる。本実施形態では、錘46がAu(金)で構成されており、Auの衝突緩和時間が約25ピコ秒である。そのため、レーザー光Lのパルス幅としては、25ピコ秒以下であることが好ましく、20ピコ秒以下であることがより好ましく、10ピコ秒以下であることがさらに好ましい。
【0045】
また、
図9に示すように、レーザー光Lの強度は、ガウシアン分布を持ち、スポットの中央部から外周部に向けて漸減している。このような強度分布を有するレーザー光Lを用いることにより、スポットの外周部での加工が抑えられて、スポット径よりも小さい加工、すなわち微細加工が可能となる。また、接続部464の傾斜面をより滑らかに形成することもできる。
【0046】
また、本工程では、レーザー光Lを
図10に示す順で錘46に照射する。すなわち、レーザー光Lを振動腕43、44の幅方向であるX軸方向に沿って主走査すると共に、振動腕43、44の基端側から先端側すなわち厚膜部462側から除去部461側に向けて副走査する。具体的には、まず、レーザー光Lを除去部461の最も基端側に位置するラインL1に沿って走査し、次に、レーザー光LをラインL1と隣り合うラインL2に沿って走査し、次に、レーザー光LをラインL2と隣り合うラインL3に沿って走査し、これを除去部461の先端に位置するラインLnまで順に繰り返して行う。
【0047】
なお、前述したように、錘46には、レーザー光Lを照射しない厚膜部462と、厚膜部462の先端側に位置し、レーザー光Lを照射する除去部461と、を形成する必要があるため、ラインL1は、錘46の基端と重ならず、当該基端よりも先端側に位置している。このように、レーザー光Lを厚膜部462側から除去部461側に向けて副走査することにより、言い換えると、錘46に対して、厚膜部462に近い側から遠い側に向けて順にレーザー光Lを照射することにより、蒸散した錘材料が厚膜部462に付着し難くなり、厚膜部462へのドロスの付着を効果的に抑制することができる。
【0048】
また、この際、薄膜部463を形成する領域では、各部へのレーザー光Lの照射量を等しくする。これにより、膜厚Tがほぼ一定な薄膜部463を形成することができる。一方で、接続部464を形成する領域では、厚膜部462側から薄膜部463側すなわちY軸方向マイナス側からプラス側に向けて、レーザー光Lの照射量を漸増させている。前記「照射量」とは、単位面積当たりの照射量すなわちエネルギー量とも言える。これにより、厚膜部462側から薄膜部463側に向けて徐々に錘46の除去量が増加し、これらの間にテーパー状の接続部464が形成される。また、厚膜部462側ほど錘46の除去量が少なくなるため、厚膜部462へのドロスの付着を効果的に抑制することができる。
【0049】
次に、接続部464において、厚膜部462側から薄膜部463側に向けてレーザー光Lの照射量を漸増させるいくつかの方法について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、ラインL1、L2、L3、L4に沿ってレーザー光Lを照射することにより、接続部464が形成されることとする。
【0050】
第1の方法として、レーザー光Lの照射ピッチを厚膜部462側よりも薄膜部463側で狭くする方法、特に、レーザー光Lの照射ピッチを厚膜部462側から薄膜部463側に向けて徐々に狭くする方法が挙げられる。具体的には、レーザー光Lの強度およびパルス幅を一定とし、ラインL1、L2、L3、L4上でのレーザー光Lの移動速度を一定とした上で、
図11に示すように、ラインL1、L2の離間距離D1と、ラインL2、L3の離間距離D2と、ラインL3、L4の離間距離D3と、をD1>D2>D3とする。このような方法によれば、簡単な方法で、厚膜部462側から薄膜部463側に向けてレーザー光Lの照射量を漸増させることができる。
【0051】
特に、離間距離D1、D2、D3の変化率、すなわち、D1/D2、D2/D3を等しくすることにより、接続部464の傾斜面をより滑らかな平面とすることができる。
【0052】
なお、離間距離D1、D2、D3は、それぞれ、レーザー光LのスポットSPの径よりも小さく、ラインL2上のスポットSPがラインL1上のスポットSPと重なり、ラインL3上のスポットSPがラインL2上のスポットSPと重なり、ラインL4上のスポットSPの一部がラインL3上のスポットSPと重なっている。また、ラインL1、L2、L3、L4上では、それぞれ、X軸方向に隣り合うスポットSP同士が重なっている。このように、Y軸方向およびX軸方向の両方向において隣り合うスポットSP同士が重なるように加工することにより、精度のよい加工が可能となる。
【0053】
第2の方法として、レーザー光Lの移動速度を厚膜部462側よりも薄膜部463側で遅くする方法、特に、レーザー光Lの移動速度を厚膜部462側から薄膜部463側に向けて徐々に遅くする方法が挙げられる。具体的には、レーザー光Lの強度およびパルス幅を一定とした上で、
図12に示すように、離間距離D1、D2、D3を等しくし、さらには、ラインL1上のレーザー光Lの移動速度S1と、ラインL2上のレーザー光Lの移動速度S2と、ラインL3上のレーザー光Lの移動速度S3と、ラインL4上のレーザー光Lの移動速度S4と、をS1>S2>S3>S4とする。このような方法によれば、簡単な方法で、厚膜部462側から薄膜部463側に向けてレーザー光Lの照射量を漸増させることができる。
【0054】
特に、移動速度S1、S2、S3、S4の変化率、すなわち、S1/S2、S2/S3、S3/S4をほぼ等しくすることにより、接続部464の傾斜面をより滑らかな平面とすることができる。
【0055】
移動速度S1は、ラインL1上でのスポットSPのピッチと、移動速度S2は、ラインL2上でのスポットSPのピッチと、移動速度S3は、ラインL3上でのスポットSPのピッチと、移動速度S4は、ラインL4上でのスポットSPのピッチと、それぞれ、言い換えることができる。そして、各ラインL1、L2、L3、L4上でのピッチがそれぞれスポットSPの径よりも小さく、各ラインL1、L2、L3、L4上において、X軸方向に隣り合うスポットSP同士が重なるように移動速度S1、S2、S3、S4が設定される。
【0056】
第3の方法として、レーザー光Lの照射回数を厚膜部462側よりも薄膜部463側で多くする方法、特に、レーザー光Lの照射回数を厚膜部462側から薄膜部463側に向けて徐々に多くする方法が挙げられる。具体的には、レーザー光Lの強度およびパルス幅を一定とし、ラインL1、L2、L3、L4上でのレーザー光Lの移動速度S1、S2、S3、S4を一定とし、離間距離D1、D2、D3を等しくした上で、
図13に示すように、ラインL1に沿ったレーザー光Lの走査回数N1と、ラインL2に沿ったレーザー光Lの走査回数N2と、ラインL3に沿ったレーザー光Lの走査回数N3と、ラインL4に沿ったレーザー光Lの走査回数N4と、をN1<N2<N3<N4とする。このような方法によれば、簡単な方法で、厚膜部462側から薄膜部463側に向けてレーザー光Lの照射量を漸増させることができる。
【0057】
特に、レーザー光Lの強度、各ラインL1、L2、L3、L4上での移動速度、離間距離D1、D2、D3を一定に保ったままで、すなわち、より多くの条件を一定に保ったままで錘46の加工を行うことができるため、その作業がより簡単なものとなる。また、例えば、N1=1、N2=2、N3=3、N4=4とし、N2-N1、N3-N2、N4-N3を等しくすることにより、接続部464の傾斜面をより滑らかな平面とすることができる。
【0058】
この方法では、例えば、
図14に示すように、まず、ラインL1、L2、L3、L4に沿ってレーザー光Lを1回ずつ走査し、次に、ラインL2、L3、L4に沿ってレーザー光Lを1回ずつ走査し、次に、ラインL3、L4に沿ってレーザー光Lを1回ずつ走査し、最後に、ラインL4に沿ってレーザー光Lを1回走査してもよい。また、
図15に示すように、まず、ラインL1に沿ってレーザー光Lを1回走査し、次に、ラインL2に沿ってレーザー光Lを2回走査し、次に、ラインL3に沿ってレーザー光Lを3回走査し、最後に、ラインL4に沿ってレーザー光Lを4回走査してもよい。
【0059】
第4の方法として、レーザー光Lの強度を厚膜部462側よりも薄膜部463側で高くする方法、特に、レーザー光Lの強度を厚膜部462側から薄膜部463側に向けて徐々に高くする方法が挙げられる。具体的には、各ラインL1、L2、L3、L4上でのレーザー光Lの移動速度S1、S2、S3、S4を一定とし、離間距離D1、D2、D3を等しくした上で、
図16に示すように、ラインL1上でのレーザー光Lの強度LP1と、ラインL2上でのレーザー光Lの強度LP2と、ラインL3上でのレーザー光Lの強度LP3と、ラインL4上でのレーザー光Lの強度LP4と、をLP1<LP2<LP3<LP4とする。このような方法によれば、簡単な方法で、厚膜部462側から薄膜部463側に向けてレーザー光Lの照射量を漸増させることができる。
【0060】
特に、強度LP1、LP2、LP3、LP4の変化率、すなわち、LP1/LP2、LP2/LP3、LP3/LP4を等しくすることにより、接続部464の傾斜面をより滑らかな平面とすることができる。
【0061】
このように、水晶ウエハ40上で、すなわち、振動素子4をベース31に搭載する前に周波数を調整することにより、調整時に蒸散した錘46がベース31に付着することによる悪影響を抑制することができる。
【0062】
なお、例えば、
図14に示した方法において、4回目のレーザー光Lの照射をラインLnまで行わないうちに振動素子4の共振周波数が目標値となった場合には、そこでレーザー光Lの照射を終了すればよい。この場合は、
図17に示すように、薄膜部463の先端部に、基端部よりも膜厚Tが厚い部分4630が形成される。この部分4630は、例えば、マウント工程後の振動素子4の共振周波数の微調に用いられる。
【0063】
[マウント工程]
次に、振動素子4を水晶ウエハ40から切り取って、切り取った振動素子4をベース31に接合する。
【0064】
[第2周波数調整工程]
前述のマウント工程において、振動素子4をベース31に固定することにより、振動素子4の共振周波数が水晶ウエハ40上での共振周波数から変動するおそれがある。そのため、本工程では、イオンビームを用いて錘46の一部を除去して、振動素子4の共振周波数を調整する。具体的には、真空状態とし、
図18に示すように、振動腕43、44の錘46の全域にイオンビームIBを照射して、錘46の表層全体を薄く除去する。このようにして錘46の一部を除去することにより、振動素子4の共振周波数を目標値に合わせ込む。なお、本工程は、必要がなければ省略してもよい。
【0065】
[封止工程]
次に、真空状態で、例えば、シームリングからなる接合部材33を介してリッド32をベース31の上面にシーム溶接する。これにより、内部空間Sが気密封止され、振動デバイス1が得られる。
【0066】
以上、振動デバイス1について説明した。このような振動デバイス1が有する振動素子4は、基部42と、基部42から延出する振動腕43、44と、振動腕43、44に配置されている錘46と、を有する。また、錘46は、厚膜部462と、厚膜部462よりも膜厚Tが薄い薄膜部463と、厚膜部462と薄膜部463との間に位置して厚膜部462と薄膜部463とを接続し、膜厚Tが厚膜部462側から薄膜部463側に向けて漸減するテーパー状をなす接続部464と、を有する。このように、厚膜部462と薄膜部463との間にテーパー状をなす接続部464を設けることにより、厚膜部462と薄膜部463との境界に垂直な面を有する段差すなわち矩形の段差が形成されるのを抑制することができる。そのため、当該部分を起点とした錘46の剥離を効果的に抑制することができる。その結果、より適正な周波数の振動素子4を得ることができる。
【0067】
また、前述したように、薄膜部463および接続部464は、それぞれ、レーザー光Lの照射により薄膜化されたレーザー加工部46’である。これにより、振動素子4の共振周波数を調整することができる。
【0068】
また、前述したように、薄膜部463は、厚膜部462に対して振動腕43、44の先端側に位置している。このように、レーザー加工部46’である除去部461を厚膜部462よりも振動腕43、44の先端側に配置することにより、言い換えると、錘46の先端側を除去することにより、除去した錘46の単位質量あたりの周波数変化量をより大きくすることができる。そのため、第1周波数調整工程において、十分な周波数調整幅を確保することができる。
【0069】
また、前述したように、接続部464の傾斜角θは、60°以下であることが好ましい。これにより、錘46の剥離抑制効果がより顕著なものとなる。一方、接続部464の傾斜角θは、20°以上であることが好ましい。これにより、接続部464のY軸方向の長さを抑えることができる。そして、その分、薄膜部463の面積を十分に広く確保することができ、第1周波数調整工程において、十分な周波数調整幅を確保することができる。
【0070】
また、前述したように、振動デバイス1は、振動素子4を有する。これにより、振動素子4の効果を享受することができ、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0071】
<第2実施形態>
図19は、本発明の第2実施形態に係る振動素子が有する錘を示す平面図である。
図20は、
図19中のB-B線断面図である。
図21は、錘の効果を説明するための断面図である。
【0072】
本実施形態に係る振動デバイス1では、錘46の構成、具体的には除去部461の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態の振動デバイス1に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図19ないし
図21では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0073】
図19および
図20に示すように、本実施形態の振動素子4が有する錘46では、除去部461のY軸方向マイナス側のみならずX軸方向両側にも厚膜部462が配置されている。つまり、厚膜部462は、除去部461のY軸方向マイナス側に位置する第1部分462aと、除去部461のX軸方向プラス側に位置する第2部分462bと、除去部461のX軸方向マイナス側に位置する第3部分462cと、を有する。
【0074】
また、除去部461では、薄膜部463のY軸方向マイナス側のみならずX軸方向両側にもテーパー状の接続部464が配置されている。つまり、接続部464は、薄膜部463のY軸方向マイナス側に位置し、薄膜部463と厚膜部462の第1部分462aとを接続する第1部分464aと、薄膜部463のX軸方向プラス側に位置し、薄膜部463と厚膜部462の第2部分462bとを接続する第2部分464bと、薄膜部463のX軸方向マイナス側に位置し、薄膜部463と厚膜部462の第3部分462cとを接続する第3部分464cと、を有する。
【0075】
例えば、前述した第1実施形態のように、除去部461が錘46のX軸方向両側に開放していると、
図21に示すように、振動腕43上の錘46のX軸方向マイナス側の角部にレーザー光L(L’)が照射されると、当該部分から蒸散した錘材料460が隣の振動腕44に向けて飛散され易くなる。反対に、振動腕44上の錘46のX軸方向プラス側の角部にレーザー光L(L”)が照射されると、当該部分から蒸散した錘材料460が隣の振動腕43に向けて飛散され易くなる。そのため、隣の錘46から蒸散した錘材料460によって錘46にドロスが付着し易くなるおそれがある。
【0076】
そこで、本実施形態のように、除去部461のX軸方向両側にも厚膜部462を配置し、錘46のX軸方向両側の角部にレーザー光Lが照射されない構成とすることにより、前述したようなドロスの付着を効果的に抑制することができる。
【0077】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、振動腕43上の錘46からは、第2部分462bおよび第2部分464bを省略してもよく、振動腕44上の錘46からは、第3部分462cおよび第3部分464cを省略してもよい。
【0078】
<第3実施形態>
図22は、本発明の第3実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
図23および
図24は、それぞれ、
図22に示す振動素子の動作を説明するための模式図である。
【0079】
本実施形態に係る振動デバイス1では、振動素子4の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第3実施形態の振動デバイス1に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図22では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0080】
本実施形態の振動素子4は、物理量センサー素子として、Z軸を検出軸とする角速度ωzを検出することのできる角速度センサー素子である。
図22に示すように、振動素子4は、振動体41と、振動体41に配置されている電極と、周波数調整用の金属膜としての錘46と、を有する。
【0081】
また、振動体41は、Zカット水晶基板から構成されており、中央部に位置する基部451と、基部451からY軸方向の両側に延出する振動腕としての一対の検出腕452、453と、基部451からX軸方向の両側に延出する一対の連結腕454、455と、連結腕454の先端部からY軸方向の両側に延出する振動腕としての一対の駆動腕456、457と、連結腕455の先端部からY軸方向の両側に延出する振動腕としての一対の駆動腕458、459と、を有する。
【0082】
また、電極は、駆動信号電極483と、駆動接地電極484と、第1検出信号電極485と、第1検出接地電極486と、第2検出信号電極487と、第2検出接地電極488と、を有する。
【0083】
駆動信号電極483は、駆動腕456、457の両側面と、駆動腕458、459の上面および下面と、に配置されている。一方、駆動接地電極484は、駆動腕456、457の上面および下面と、駆動腕458、459の両側面と、に配置されている。
【0084】
また、第1検出信号電極485は、検出腕452の上面および下面に配置され、第1検出接地電極486は、検出腕452の両側面に配置されている。一方、第2検出信号電極487は、検出腕453の上面および下面に配置され、第2検出接地電極488は、検出腕453の両側面に配置されている。
【0085】
また、駆動腕456、457、458、459および検出腕452、453の先端部には、それぞれ、錘46が配置されている。そして、これら各錘46は、前述した第1実施形態と同様の構成となっており、厚膜部462と、薄膜部463と、接続部464と、を有する。
【0086】
このような振動素子4は、次のようにして角速度ωzを検出する。まず、駆動信号電極483および駆動接地電極484の間に駆動信号を印加すると、駆動腕456~459が、
図23の矢印で示すように屈曲振動する。以下、この駆動モードを駆動振動モードと言う。そして、駆動振動モードで駆動している状態で、振動素子4に角速度ωzが加わると、
図24に示す検出振動モードが新たに励振される。検出振動モードでは、駆動腕456~459にコリオリの力が作用して矢印bに示す方向の振動が励振され、この振動に呼応して、検出腕452、453が矢印aに示す方向に屈曲振動による検出振動が生じる。このような検出振動モードによって検出腕452に発生した電荷を第1検出信号電極485および第1検出接地電極486の間から第1検出信号として取り出し、検出腕453に発生した電荷を第2検出信号電極487および第2検出接地電極488の間から第2検出信号として取り出し、これら第1、第2検出信号に基づいて角速度ωzを検出することができる。
【0087】
回路素子6には、例えば、外部のホストデバイスと通信を行うインターフェース部、振動素子4を駆動させる駆動回路、振動素子4からの検出信号に基づいて角速度ωzを検出する検出回路等が含まれている。
【0088】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、本実施形態では、6つの錘46の全てに接続部464が形成されているが、これに限定されず、少なくとも1つの錘46に接続部464が形成されていればよい。
【0089】
<第4実施形態>
図25は、第4実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【0090】
図25に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。このようなスマートフォン1200は、振動素子4が搭載され、発振器として用いられる振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1210と、を有する。演算処理回路1210は、例えば、画面1208から入力された入力信号に基づいて、表示画面を変化させたり、特定のアプリケーションを立ち上げたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させたりすることができる。なお、振動素子4を備える振動デバイス1としては、例えば、前述した第1、第2実施形態のいずれかのものを適用することができる。
【0091】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、振動素子4と、振動素子4から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1210と、を備える。そのため、スマートフォン1200は、前述した振動素子4の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0092】
なお、振動素子4を備える電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、ページャー、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0093】
<第5実施形態>
図26は、第5実施形態の自動車を示す斜視図である。
【0094】
図26に示す移動体としての自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステム等のシステム1502を含んでいる。また、自動車1500は、振動素子4が搭載され、発振器として用いられる振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作し、システム1502を制御する演算処理回路1510と、を有する。なお、振動素子4としては、例えば、前述した第1、第2実施形態のいずれかのものを適用することができる。
【0095】
このように、移動体としての自動車1500は、振動素子4と、振動素子4から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1510と、を備える。そのため、自動車1500は、前述した振動素子4の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0096】
なお、振動素子4を備える移動体は、自動車1500の他、例えば、ロボット、ドローン、二輪車、航空機、船舶、電車、ロケット、宇宙船等であってもよい。
【0097】
以上、本発明の振動素子、振動デバイス、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…振動デバイス、2…接合部材、3…パッケージ、31…ベース、311、311a、311b、311c…凹部、32…リッド、33…接合部材、341、342…内部端子、343…外部端子、4…振動素子、40…水晶ウエハ、41…振動体、42…基部、43…振動腕、432、433…溝、44…振動腕、442、443…溝、451…基部、452、453…検出腕、454、455…連結腕、456、457、458、459…駆動腕、46…錘、46’…レーザー加工部、46”…非レーザー加工部、460…錘材料、461…除去部、462…厚膜部、462a…第1部分、462b…第2部分、462c…第3部分、463…薄膜部、464…接続部、464a…第1部分、464b…第2部分、464c…第3部分、481…信号電極、482…接地電極、483…駆動信号電極、484…駆動接地電極、485…第1検出信号電極、486…第1検出接地電極、487…第2検出信号電極、488…第2検出接地電極、6…回路素子、1200…スマートフォン、1208…画面、1210…演算処理回路、1500…自動車、1502…システム、1510…演算処理回路、BW…ボンディングワイヤー、D1、D2、D3…離間距離、IB…イオンビーム、L、L’、L”…レーザー光、L1、L2、L3、L4、Ln…ライン、LP1、LP2、LP3、LP4…強度、N1、N2、N3、N4…走査回数、S…内部空間、S1、S2、S3、S4…移動速度、SP…スポット、T…膜厚、a…矢印、b…矢印、θ…傾斜角、ωz…角速度