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特許7452046表示制御装置、画像表示装置、制御方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】表示制御装置、画像表示装置、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 17/04 20060101AFI20240312BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240312BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240312BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240312BHJP
【FI】
H04N17/04 E
G09G5/10 B
G09G5/00 510D
H04N5/66 A
A61B6/00 550A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020015576
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021125712
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 正雄
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170114(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033502(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030519(WO,A1)
【文献】特開2007-117351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/01-17/04
G09G 5/00-5/42
H04N 5/66-5/74
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを解析して、画像の種類を判定する画像解析部と、
画像種別に応じて規定された輝度および階調特性を含む表示特性で前記画像データを表示部に表示させる場合に、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定する表示特性判定部と、を備え
前記画像解析部は、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する表示制御装置。
【請求項2】
前記表示特性判定部で、現在の前記設定値が前記画像の種類に適したものでないと判定されたとき、前記画像の種類に適した設定値を設定する表示特性設定部をさらに備える請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記画像解析部は、前記画像の中央を含む第一所定領域で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であり、かつ、前記画像の縁部を含む第二所定領域で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であり、かつ、前記画像に分割線が含まれるときに、前記画像が前記マンモグラフィ画像であると判定する請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
画像データを表示する表示部と、前記表示部の表示特性を制御する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の表示制御装置とを備える画像表示装置。
【請求項5】
画像解析により入力された画像データの画像の種類を判定するステップと、
前記画像を表示部で表示させるときの輝度および階調特性を含む表示特性について、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定するステップと、
を備え
画像の種類を判定するステップは、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する画像表示装置の制御方法。
【請求項6】
現在の前記設定値が前記画像の種類に適したものでないと判定されたとき、前記画像の種類に適した設定値を設定するステップをさらに備える請求項5に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項7】
画像解析により入力された画像データの画像の種類を判定するステップと、
前記画像を表示部で表示させるときの輝度および階調特性を含む表示特性について、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定するステップと、を備え、
画像の種類を判定するステップは、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する処理をコンピュータに実行させる画像表示装置の制御プログラム。
【請求項8】
現在の前記設定値が前記画像の種類に適したものでないと判定されたとき、前記画像の種類に適した設定値を設定するステップをさらに備える請求項7に記載の画像表示装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、画像表示装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に医療画像を表示させて医療診断を行う読影においては、表示装置の輝度や階調特性といった表示特性に関する規格が定められている。そのため、従来、読影において表示装置の表示特性を適切に調整する技術が知られている。例えば、特許文献1には、医療撮影装置で撮影された2つの画像について、表示装置のバックライト光量を同一にすることで輝度を揃える画像表示装置が記載されている。また、特許文献2には、医療画像についてモノクロ領域とカラー領域とを区分し、各領域で異なる階調特性を持つようにガンマ補正を行う画像表示装置が記載されている。さらに、特許文献3には、入力画像の画素単位の彩度値に基づいて、カラー用とモノクロ用のガンマ値を混合した値でガンマ補正を行う画像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6039316号公報
【文献】特許第5210348号公報
【文献】特許第6277984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
読影においては、医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドラインに従って表示装置の輝度や階調特性を設定することが求められる。例えば、マンモグラフィ画像を表示させるとき、表示装置の最大輝度を500cd以上、階調特性をDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格で規定されるGSDF(Grayscale Standard Display Function)に設定する。このように、医療画像の種類により医用画像表示用モニタの設定が異なるため、医師が利用する読影用の表示装置が医療画像の種類に対して専用端末が用意されていることが望ましい。しかしながら、専用端末が用意されていないことがあり、この場合は表示する医療画像に応じて設定を切り替える操作が必要となる。このような場合に、操作のし忘れ等に起因して、他の医療画像を表示させる際の輝度や階調特性のまま診察を行ってしまう可能性がある。
【0005】
特許文献1に記載の画像表示装置では、2つの画像データの表示に際して輝度を統一することができるが、読影対象の医療画像種別を切り替えるタイミングで、表示設定を適切に切り替えることができるものではない。また、特許文献1には、階調特性を調整することは開示されていない。特許文献2、3に記載の画像表示装置では、カラー領域およびモノクロ領域の階調特性を変更することはできるものの、異なるモノクロ画像(例えば、マンモグラフィ画像と一般的なX線診断画像)について、階調特性を調整することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、医療画像の読影において、表示装置の輝度および階調特性を含む表示特性を読影対象の医療画像種別に応じて適切に切り替えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る表示制御装置は、画像データを解析して、画像の種類を判定する画像解析部と、画像種別に応じて規定された輝度および階調特性を含む表示特性で前記画像データを表示部に表示させる場合に、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定する表示特性判定部と、を備え、前記画像解析部は、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像表示装置は、画像データを表示する表示部と、前記表示部の表示特性を制御する上記表示制御装置とを備える。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像表示装置の制御方法は、画像解析により入力された画像データの画像の種類を判定するステップと、前記画像を表示部で表示させるときの輝度および階調特性を含む表示特性について、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定するステップと、を備え、画像の種類を判定するステップは、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像表示装置の制御プログラムは、画像解析により入力された画像データの画像の種類を判定するステップと、前記画像を表示部で表示させるときの輝度および階調特性を含む表示特性について、現在の前記表示特性の設定値が前記画像の種類に適したものであるか否かを判定するステップと、を備え、画像の種類を判定するステップは、前記画像の画素を白色と黒色の画素に二値化し、二値化された前記画像の所定領域に含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて前記画像の種類がマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを判定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる表示制御装置、画像表示装置、制御方法および制御プログラムは、医療画像の読影において、表示装置の輝度および階調特性を含む表示特性を画像に応じて適切に切り替えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第一実施形態にかかる表示制御装置を備えた画像表示装置を示す概略構成図である。
図2図2は、マンモグラフィ画像の一例を示す説明図である。
図3図3は、その他の画像の一例を示す説明図である。
図4図4は、表示部の表示特性を制御する処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、画像解析部における画像解析の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、マンモグラフィ画像の他の例を示す説明図である。
図7図7は、第二実施形態にかかる表示制御装置を備えた画像表示装置を示す概略構成図である。
図8図8は、第二実施形態において、表示部の表示特性を制御する処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、マンモグラフィ画像の他の例を示す説明図である。
図10図10は、その他の画像の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る表示制御装置、画像表示装置、制御方法および制御プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかる表示制御装置を備えた画像表示装置を示す概略構成図である。第一実施形態において、画像表示装置1は、医療現場において医師が医療画像を表示させて診察を行う読影において用いられる表示装置である。
【0015】
医療画像は、例えばマンモグラフィ診断画像、X線診断画像、超音波診断画像といった患者の診察部位を撮影した画像である。図2は、マンモグラフィ画像の一例を示す説明図であり、図3は、その他の画像の一例を示す説明図である。マンモグラフィ画像M1は、人体の乳房80を図示しないマンモグラフィ用のX線撮影装置により撮影した画像である。図2に示す例では、マンモグラフィ画像M1は、一対の乳房80を撮影した2つの画像M11、M12が、図中の上下方向に延びる分割線L1(中心線)を挟んで左右に対称配置されている。一方、図3に例示するその他の画像M2は、図示しないX線撮影装置により人体の胸部を中心的に撮影した画像である。したがって、マンモグラフィ画像M1およびその他の画像M2は、いずれもモノクロ画像である。なお、図3に示すその他の画像M2は、画像内に分割線L1を含むものではないが、後述する第一所定領域A1と第二所定領域A2との区別を説明するために、図面内における中心線を示す分割線L1を記載している。
【0016】
図2および図3に例示するような医療画像は、医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドラインに従って表示装置の輝度や階調特性を設定することが求められている。階調特性は、画像の階調の応答特性(コントラスト応答)であり、入力階調に対する表示階調を所定のカーブで規定されるガンマ値で補正する、いわゆるガンマ補正の特性である。例えば、マンモグラフィ画像を表示させるとき、表示装置の最大輝度を500cd以上、階調特性をDICOM規格で規定されるGSDFに設定する必要がある。一方、一般的なX線診断画像では、表示装置の最大輝度を350cd以上に設定する必要がある。なお、一般的なX線診断画像での表示装置の階調特性は、マンモグラフィ画像と同じく、DICOM規格で規定されるGSDF(以下、単に「GSDF」と称する)に設定する。
【0017】
画像表示装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ等の外部演算装置に接続されたディスプレイ装置である。表示装置は、演算装置と一体の装置であってもよい。画像表示装置1は、図1に示すように、表示部10と、表示制御装置20とを備えている。
【0018】
表示部10は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイを含むディスプレイである。表示部10は、輝度および階調特性を調整できるものであればよい。
【0019】
表示制御装置20は、表示部10を制御する。表示制御装置20は、記憶部30と、制御部40とを備えている。
【0020】
記憶部30は、表示制御装置20における各種処理に要するデータおよび各種処理結果を記憶する。記憶部30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。記憶部30は、制御部40と通信により各種プログラムおよびデータをやり取りする。
【0021】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御部40は、記憶部30に記憶されているプログラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。また、制御部40は、外部装置と有線通信または無線通信により、各種データをやり取りする。制御部40は、画像データ取得部41と、画像解析部42と、表示特性判定部43と、表示特性設定部44と、表示制御部45とを有する。
【0022】
画像データ取得部41は、外部装置から医療画像である画像データを取得する。画像データは、専用の医療用撮影装置で撮影された医療画像を映したデータであり、ユーザーによる外部装置の操作にしたがって、外部装置から入力される。画像データ取得部41は、取得した画像を画像解析部42へと出力する。
【0023】
画像解析部42は、画像データ取得部41で取得された画像データに映し出された画像Mの種類を画像解析により判定する。本実施形態において、画像解析部42は、画像Mがマンモグラフィ画像であるか、その他の画像であるかを画像解析により判定する。以下、画像の種類を判定する手法について、具体的に説明する。
【0024】
画像解析部42は、図2および図3に例示するマンモグラフィ画像M1と、その他の画像M2を区別するために、まず、画像Mについて、すべての画素を白色と黒色との二値で表現した二値化画像へと変換する二値化処理を実行する。画像解析部42は、例えば大津の二値化処理(判別分析法)を用いて、画像Mの二値化処理を実行する。大津の二値化処理は、画像内の明るい部分と暗い部分との二つのクラスがあると想定し、クラス内における明るい部分と暗い部分との分離度が最大となるように閾値を自動的に決定する処理である。明るい部分は、白色の画素とされ、暗い部分は、黒色の画素とされる。なお、画像解析部42は、画像Mのすべての画素を白色と黒色との二値で表現した二値化画像とすることができれば、いかなる手法を用いてもよい。
【0025】
画像解析部42は、二値化した画像Mについて、所定領域Aに含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて画像Mの種類を判定する。すなわち、画像解析部42は、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるか、その他の画像M2であるかを判定する。本実施形態において、画像解析部42は、図2および図3に示すように、画像Mの中央を含む第一所定領域A1と、画像Mの縁部L2を含む第二所定領域A2とを区分する。本実施形態において、第一所定領域A1は、画像Mを中心線である分割線L1で分割してみたとき、片側の範囲の左右方向の長さD1に対して、画像Mの縁部L2から例えば50%の長さの位置X1よりも内側の領域である。また、本実施形態において、第二所定領域A2は、画像Mを中心線である分割線L1で分割してみたとき、片側の範囲の左右方向の長さD1に対して、画像Mの縁部L2から例えば50%の長さの位置X1よりも外側の領域である。なお、その他の画像M2においては、本来的には分割線L1を含むものではないが、画像内の中心からの長さに基づいて、第一所定領域A1および第二所定領域A2を区分すればよい。
【0026】
なお、ここでは、図2に例示する方向で画像Mを表示部10に表示させる場合の例を説明した。ただし、マンモグラフィ画像M1において、分割線L1が左右方向に延び、一対の乳房80が上下対称に配置されるように表示部10に表示させる場合、第一所定領域A1および第二所定領域A2は、図2を90度回転させた状態で見たときの領域として区分されればよい。
【0027】
画像解析部42は、所定領域AXに含まれる白色の画素数Nx(w)に対する黒色の画素数Nx(b)の比Rx(w)を以下の式により計算する。
Rx(w)=Nx(w)/(Nx(w)+Nx(b)) (式1)
このとき、画像Mを第一所定領域A1と第二所定領域A2とを区分すると、第一所定領域A1における第一閾値T1を定義して、R1(w)≧T1であり、かつ、第二所定領域A2における第二閾値T2を定義して、R2(w)≦T2であるか否かを判定する。図2に示すように、マンモグラフィ画像M1は、画像中央の近傍は患部である乳房80が映し出され、画像縁部の近傍は患部が映されない背景となる。そのため、画像中央を含む第一所定領域A1で白色の画素が多く、画像縁部を含む第二所定領域A2で黒色の画素が多い場合、画像Mがマンモグラフィ画像M1である可能性が高いといえる。一方で、図3に示すように、その他の画像M2では、画像全体に白色の画素および黒色の画素が散見されるため、第一所定領域A1で白色の画素が多く、画像縁部を含む第二所定領域A2で黒色の画素が多くなる可能性は低い。したがって、第一所定領域A1および第二所定領域A2で白色の画素と黒色の画素との比を算出することで、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるか、その他の画像M2であるかを傾向的に区別することができる。
【0028】
さらに、画像解析部42は、第一所定領域A1および第二所定領域A2で白色の画素と黒色の画素との比に基づく判断に加えて、画像Mに上下方向に延びる分割線L1が含まれるか否かを判定する。図2に示すように、マンモグラフィ画像M1は、本実施形態において、分割線L1で分割されて一対の乳房80の双方が映し出されている。一方で、その他の画像M2には、本来的には中心線である分割線L1は含まれない。そのため、分割線L1を含む場合、画像Mがマンモグラフィ画像M1である可能性が高いといえ、分割線L1を含まない場合、画像Mがその他の画像M2である可能性が高いといえる。したがって、画像Mにおける分割線L1の有無を検出することで、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるか、その他の画像M2であるかを傾向的に区別することができる。画像解析部42は、例えばハフ変換による直線検出手法を用いて、画像Mに分割線L1が含まれるか否かを判定する。なお、画像解析部42は、その他の周知のいかなる手法を用いて、画像Mに分割線L1が含まれるか否かを判定してもよい。
【0029】
以上より、本実施形態において、画像解析部42は、第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であり、第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であり、画像Mに分割線L1が含まれるとき、画像Mがマンモグラフィ画像M1であると判定する。一方、画像解析部42は、第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値未満であるとき、第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値より大きいとき、および、画像Mに分割線L1が含まれないときのいずれかの場合には、画像Mがその他の画像M2であると判定する。第一閾値および第二閾値は、マンモグラフィ画像M1とその他の画像M2との区別を傾向的に判断可能な値として、任意に設定される。第一閾値は、第二閾値よりも大きな値である。画像解析部42は、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるか、その他の画像M2であるかの判定結果を表示特性判定部43に出力する。
【0030】
表示特性判定部43は、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであるか否かを判定する。表示特性は、画像Mを表示部10で表示させるときの、表示部10における輝度(最大輝度)および階調特性を含む特性である。表示特性判定部43は、表示部10における現在の最大輝度および階調特性が、上記判別されたマンモグラフィ画像M1、または、その他の画像M2に適したものであるか否かを判定する。すなわち、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるとき、表示部10の最大輝度が500cd以上、階調特性がGSDFに設定されているか否かを判定する。一方、画像Mがその他の画像M2であるとき、その他の画像M2に適した最大輝度(例えば350cd)および階調特性(例えばGSDF)に設定されているか否かを判定する。表示特性判定部43は、判定結果を表示特性設定部44に出力する。
【0031】
表示特性設定部44は、表示特性判定部43で、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであると判定されたとき、現在の設定値を維持させる。つまり、画像Mがマンモグラフィ画像M1であり、かつ、現在の設定値が最大輝度500cd以上かつ階調特性GSDFに設定されていれば、その状態を維持する。また、画像Mがその他の画像M2であり、かつ、現在の設定値が適した最大輝度(例えば350cd)および階調特性(例えばGSDF)であれば、その状態を維持する。一方、表示特性設定部44は、表示特性判定部43で、表示部10における現在の設定値が画像Mの種類に適したものでないと判定されたとき、画像Mの種類に適した設定値を設定する。つまり、画像Mがマンモグラフィ画像M1であり、かつ、現在の設定値が最大輝度500cd以上かつ階調特性GSDFに設定されていない場合、設定値を最大輝度500cd以上かつ階調特性GSDFに設定する。また、画像Mがその他の画像M2であり、かつ、現在の設定値が適した最大輝度(例えば350cd)および階調特性(例えばGSDF)ではない場合、適した最大輝度(例えば350cd)および階調特性(例えばGSDF)に設定する。表示特性設定部44は、設定した表示特性を表示制御部45に出力する。
【0032】
表示制御部45は、表示特性設定部44で設定された表示特性、すなわち、最大輝度および階調特性で表示部10において画像Mが表示されるように、表示部10のバックライト光量やガンマ値を含む設定値を制御する。
【0033】
次に、本実施形態にかかる画像表示装置の制御方法について、図4および図5に基づいて説明する。図4は、表示部の表示特性を設定する処理の一例を示すフローチャートであり、図5は、画像解析部における画像解析の処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す処理は、ユーザーが外部装置を操作して画像データを表示部10に表示させる指示を行ったときに、制御部40において実行される。また、図5に示す処理は、画像解析部42において実行される。
【0034】
図4に示すように、制御部40は、まず、ステップS1として、外部装置から画像Mが映し出された画像データを画像データ取得部41で取得する。画像データ取得部41は、取得した画像データを画像解析部42に出力する。
【0035】
次に、制御部40は、ステップS2として、画像解析部42において、画像解析により、画像Mの種類を特定する。図5を参照しながら、画像解析の手順の一例について説明する。画像解析部42は、ステップS21として、画像Mのすべての画素を白色と黒色との二値で表現した二値化画像へと変換する二値化処理を実行する。上述したように、二値化処理は、例えば大津の二値化処理を用いる。次に、画像解析部42は、ステップS22として、画像Mを第一所定領域A1と第二所定領域A2とに区分する。第一所定領域A1および第二所定領域A2は、上述のように、画像Mの中央を含む範囲と縁部を含む範囲とを区分した領域である。
【0036】
次に、画像解析部42は、ステップS23として、画像Mの第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であるか否かを判定する。画像解析部42は、画像Mの第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であると判定したとき(ステップS23でYes)、ステップS24として、第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であるか否かを判定する。画像解析部42は、画像Mの第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であると判定したとき(ステップS24でYes)、ステップS25として、画像Mを2つに分割する分割線L1が含まれるか否かを判定する。画像解析部42は、画像Mに分割線L1が含まれていると判定したとき(ステップS25でYes)、ステップS26として、画像Mがマンモグラフィ画像M1であると判定する。
【0037】
一方、画像解析部42は、画像Mの第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値未満であると判定したとき(ステップS23でNo)、画像Mの第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値より大きいと判定したとき(ステップS24でNo)、および、画像Mを2つに分割する分割線L1が含まれないと判定したとき(ステップS25でNo)には、ステップS27として、画像Mがその他の画像M2であると判定する。
【0038】
図4の説明に戻る。制御部40は、画像解析部42で画像Mの種類が特定されると、ステップS3として、表示特性判定部43において、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであるか否かを判定する。表示特性判定部43は、上述したように、表示部10における現在の最大輝度および階調特性が、上記判別されたマンモグラフィ画像M1、または、その他の画像M2に適したものであるか否かを判定する。
【0039】
制御部40は、表示特性判定部43において、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであると判定されたとき(ステップS3でYes)、ステップS4として、表示特性設定部44において、設定値を現在の状態に維持させる。一方、制御部40は、表示特性判定部43において、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでないと判定されたとき(ステップS3でNo)、ステップS5として、表示特性設定部44において、画像Mに適した表示特性の設定値を設定する。具体的には、上述したように、画像Mがマンモグラフィ画像M1である場合、設定値を最大輝度500cd以上かつ階調特性GSDFに設定する。また、画像Mがその他の画像M2である場合、適した最大輝度(例えば350cd)および階調特性(例えばGSDF)に設定する。これにより、画像Mに適した表示特性の設定値が設定され、表示制御部45により、当該設定値で表示部10が制御される。制御部40は、ステップS4またはステップS5の後、本ルーチンを終了する。
【0040】
以上説明したように、第一実施形態にかかる表示制御装置20は、画像解析により画像データに映し出された画像Mの種類を判定する画像解析部42と、画像Mを表示部10で表示させるときの輝度および階調特性を含む表示特性について、現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであるか否かを判定する表示特性判定部43と、を備える。
【0041】
この構成により、画像解析部42で判定された画像Mの種類に対して、現在の表示部10の表示特性の設定値が適したものであるか否かの情報を得ることができる。そのため、表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでない場合に、適切な対応を取ることが可能となる。例えば、第一実施形態で説明したように、表示特性の設定値を画像Mの種類に適した値に自動的に設定することで、操作し忘れのような人為的なミスを避けて、表示部10に要求される表示特性を満たすことができる。したがって、第一実施形態にかかる表示制御装置20、画像表示装置1、制御方法および制御プログラムは、医療画像の読影において、表示装置の輝度および階調特性を含む表示特性を画像に応じて適切に切り替えることができる。
【0042】
その結果、人為的なミスによる表示特性の設定が医療画像に適していない状態で診断が行われることを抑制することができる。また、例えば常に表示部10の最大輝度を高い状態に維持する場合に比べて、表示部10の寿命延長を図ることも可能となる。
【0043】
また、第一実施形態にかかる表示制御装置20は、現在の設定値が画像Mの種類に適したものであると判定されたとき、現在の設定値を維持させ、現在の設定値が画像Mの種類に適したものでないと判定されたとき、画像Mの種類に適した設定値を設定する表示特性設定部44をさらに備える。この構成により、上述したように、表示特性の設定値を画像Mの種類に適した値に自動的に設定することが可能となる。
【0044】
また、第一実施形態において、画像解析部42は、画像Mを白色と黒色の画素で二値化し、二値化された画像Mの所定領域Aに含まれる白色の画素数と黒色の画素数とを比較し、比較結果に基づいて画像Mの種類がマンモグラフィ画像M1であるか、その他の画像M2であるかを判定する。この構成により、画像Mがマンモグラフィ画像M1または一般的なX線診断画像(その他の画像M2)といったモノクロ画像である場合にも、画像Mの種類を適切に判定することができる。
【0045】
また、第一実施形態において、画像解析部42は、画像Mの中央を含む第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であり、かつ、画像Mの縁部L2を含む第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であり、さらに、画像Mを2つに分割する分割線L1が含まれるときに、画像Mがマンモグラフィ画像M1であると判定する。これにより、マンモグラフィ画像M1が図2に例示するような特徴を有する場合に、画像Mがマンモグラフィ画像M1であるか否かを精度良く判定することができる。
【0046】
なお、画像解析部42は、画像Mに分割線L1が含まれるか否かに関わらず、画像Mの種類を判定してもよい。すなわち、画像Mの中央を含む第一所定領域A1で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第一閾値以上であり、かつ、画像Mの縁部L2を含む第二所定領域A2で、白色の画素数に対する黒色の画素数の比が第二閾値以下であるときに、画像Mがマンモグラフィ画像M1であると判定してもよい。
【0047】
また、マンモグラフィ画像M1が図2のように上下方向に延びる分割線L1で分割されず、左右対称に一対の乳房80を映すものでない場合も考えられる。図6は、マンモグラフィ画像の他の例を示す説明図である。図6に例示するように、マンモグラフィ画像M1が、分割線L1を有さず、一対の乳房80の片方のみを映した画像である場合を考える。このとき、第一所定領域A1および第二所定領域A2は、画像M全体の左右方向の長さD2に対して、縁部L2から例えば50%の長さの位置X2を挟んだ片側の領域として区分されればよい。
【0048】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態にかかる画像表示装置2、表示制御装置200、制御方法および制御プログラムについて説明する。図7は、第二実施形態にかかる表示制御装置を備えた画像表示装置を示す概略構成図である。第二実施形態にかかる表示制御装置200は、図示するように、表示特性設定部44に代えて表示特性設定部46を備える。また、第二実施形態にかかる表示制御装置200は、報知指示部47を備えている。表示制御装置200および画像表示装置2の他の構成は、第一実施形態と同様であるため、説明を省略し、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0049】
第二実施形態において、制御部40は、第一実施形態と同様の手法により、画像解析部42で画像Mの種類を判定し、表示特性判定部43で表示部10の現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであるか否かを判定する。表示特性判定部43は、判定結果を報知指示部47に出力する。
【0050】
第二実施形態において、表示特性設定部46は、外部装置を介して入力されるユーザーの指示に従って、表示部10の表示特性の設定値を設定し、表示制御部45へと出力する。すなわち、第二実施形態において、表示部10の表示特性は、外部装置を介したユーザーの操作指示に基づいて操作されることになる。
【0051】
報知指示部47は、表示部10の現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでない場合、その旨を表示部10で報知させる。報知指示部47は、例えば、「表示特性の設定値が画像Mに適していません。設定を変更してください。」といった文章を表示部10に表示させる。一方、報知指示部47は、表示部10の現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものである場合には、表示部10に特に報知を行わない。
【0052】
第二実施形態にかかる画像表示装置の制御方法について、図8を参照しながら説明する。図8は、第二実施形態において、表示部の表示特性を制御する処理の一例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、ユーザーが外部装置を操作して画像データを表示部10に表示させる指示を行ったときに、制御部40において実行される。図8に示す処理において、ステップS1からステップS3の処理は、図4に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
制御部40は、表示特性判定部43において、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものであると判定されたとき(ステップS3でYes)、報知指示部47から表示部10へと報知を行わせることなく、本ルーチンを終了する。一方、制御部40は、表示特性判定部43において、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでないと判定されたとき(ステップS3でNo)、ステップS6として、報知指示部47で、表示部10の現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでない旨の情報を表示部10に報知させる。制御部40は、その後、本ルーチンを終了する。
【0054】
これにより、ユーザーである医師は、表示部10に表示された情報を見て、表示部10の表示特性の設定値が画像Mに適していないという情報を得ることができ、当該情報に基づいて表示部10の表示特性を画像Mに適した値に変更することが可能となる。したがって、第二実施形態にかかる表示制御装置200、画像表示装置2、制御方法および制御プログラムでも、医療画像の読影において、表示装置の輝度および階調特性を含む表示特性を画像に応じて適切に切り替えることができる。
【0055】
第二実施形態において、表示特性設定部46は、外部装置を介して入力されるユーザーの指示に従って、表示部10の表示特性の設定値を設定するものとした。ただし、表示特性設定部46は、第一実施形態と同様に、表示特性判定部43での判定結果に基づいて、自動的に表示特性の設定値を設定し、表示制御部45に出力するものとしてもよい。この場合、報知指示部47は、表示部10における現在の表示特性の設定値が画像Mの種類に適したものでないと判定されたとき(図8のステップS3でNo)、例えば、「表示特性の設定値が画像Mに適していないため、自動的に変更されました。」といったように、設定変更の結果を報知するものであってもよい。
【0056】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、画像Mの中央を含む第一所定領域A1と、画像Mの縁部L2を含む第二所定領域A2とを区分する例について説明したが、これに限定されない。図9は、マンモグラフィ画像の他の例を示す説明図である。図10は、その他の画像の他の例を示す説明図である。図9及び図10に示すように、画像の中心点Oから特定の縦横比の矩形領域を設定し、矩形領域内を第一所定領域A1、矩形領域外を第二所定領域A2としてもよい。この場合、例えば、画像の中心点Oから上下左右の方向に半分の位置に矩形領域の境界を設定することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,2 画像表示装置
10 表示部
20,200 表示制御装置
30 記憶部
40 制御部
41 画像データ取得部
42 画像解析部
43 表示特性判定部
44,46 表示特性設定部
45 表示制御部
47 報知指示部
80 乳房
A1 第一所定領域
A2 第二所定領域
L1 分割線
L2 縁部
M 画像
M1 マンモグラフィ画像
M2 その他の画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10