(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両ドア用モール
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B60R13/04 B
(21)【出願番号】P 2020016196
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】都築 建太
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-184898(JP,A)
【文献】特開2004-268707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186301(US,A1)
【文献】特開2018-158640(JP,A)
【文献】特開2014-189235(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008060448(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアを構成するドア本体部に取り付けられる車両ドア用モールにおいて、
前記ドア本体部に取り付けられるモール本体と、前記モール本体から突出して前記ドア本体部に接触してシールするシール部と、を有し、
前記シール部は、前記モール本体の車内側に位置する基部と、前記基部から突出して該基部よりも車外側に位置
し前記ドア本体部に接触するリップ部と、を有し、
前記リップ部に、前記モール本体に対向する対向面を有
し、
前記シール部よりも硬質で前記モール本体の車内側に固定される支持部材を有し、前記シール部の前記基部が前記支持部材に取り付けられることを特徴とする車両ドア用モール。
【請求項2】
前記モール本体は、外観部と、前記外観部の縁から車内側に延びる車内延設部と、を有し、
前記対向面は、前記車内延設部の側面に対向することを特徴とする請求項1に記載の車両ドア用モール。
【請求項3】
前記シール部は、前記支持部材を車内外方向に貫通して該支持部材に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項
1又は2に記載の車両ドア用モール。
【請求項4】
前記嵌合部と前記モール本体の前記外観部との間に隙間があることを特徴とする請求項2を引用する請求項
3に記載の車両ドア用モール。
【請求項5】
前記モール本体は、前記外観部から車内側に突出して前記支持部材の車内側の面に当接する折返部を有することを特徴とする請求項
2に記載の車両ドア用モール。
【請求項6】
前記折返部は、前記支持部材又は前記シール部を車内外方向に貫通することを特徴とする請求項
5に記載の車両ドア用モール。
【請求項7】
前記車両ドア用モールは、ベルトモールに接続する第1のモール部と、アッパサッシュモールに接続する第2のモール部と、前記第1のモール部と前記第2のモール部が交わるコーナー部とを有するフレームモールであることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の車両ドア用モール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに取り付けられる車両ドア用モールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアには、ドアフレーム(ドアサッシュ)やドアパネルの縁部の保護や美観の向上を目的として、外観部材であるモールが取り付けられる。例えば、窓開口の内縁に沿って取り付けられるベルトモール、アッパサッシュモール、フレームモールなどが知られている。
【0003】
モールは、ドアフレームやドアパネルのようなドア本体部に対して密着してシール性を有するように取り付けられる。そのため、金属や硬質の合成樹脂などで形成されるモール本体とは別に、モール本体よりも軟質の材質からなるシール部を設ける構成を用いる場合が多い。モール本体をドア本体部に取り付けると、シール部が弾性変形しながらドア本体部に密着する。
【0004】
例えば、特許文献1には、意匠部材とインナ部材を組み合わせて構成したフレームモールにおいて、インナ部材の下縁から下方に突出する形態のリップを備えることが記載されている。リップは、インナ部材と二色成形などによって一体的に形成され、ドアパネルの外面に密着するシール部として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モールのシール部は、シール性を維持するために、常にドア本体部(ドアパネルなど)側からの負荷を受けて弾性変形した状態にある。そのため、モール本体に対して別の材質からなるシール部を結合させたタイプのモールでは、シール部とモール本体の結合部分に負荷がかかりやすく、当該部分の耐久性が問題になりやすい。特に、特許文献1のリップのように、モール本体から突出する片持ち状の突出部の形状では、リップの先端側に作用する負荷を、モール本体に結合するリップの基端側のみで受ける状態になり、大きな負荷が加わったときにリップの基端側での剥離などが生じやすい。
【0007】
シール部をモール本体と同じ材質で一体的に形成すると、モール側の強度や耐久性の点では有利になる。しかし、ドア本体部との接触部分でのシール部の密着性(形状追従性)が悪くなり、シール性能に影響が及ぶおそれがある。そのため、従来のモールでは、シール部における耐久性とシール性能とを高度に両立させることが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、シール部の耐久性とシール性能に優れる車両ドア用モールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両用ドアを構成するドア本体部に取り付けられる車両ドア用モールにおいて、ドア本体部に取り付けられるモール本体と、モール本体から突出してドア本体部に接触してシールするシール部と、を有し、シール部は、モール本体の車内側に位置する基部と、基部から突出して該基部よりも車外側に位置しドア本体部に接触するリップ部と、を有し、リップ部に、モール本体に対向する対向面を有し、シール部よりも硬質でモール本体の車内側に固定される支持部材を有し、シール部の基部が支持部材に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
モール本体は、外観部と、外観部の縁から車内側に延びる車内延設部と、を有し、シール部の対向面は、モール本体の車内延設部の側面に対向することが好ましい。
【0012】
シール部は、支持部材を車内外方向に貫通して支持部材に嵌合する嵌合部を有することが好ましい。
【0013】
シール部の嵌合部とモール本体の外観部との間に隙間があることが好ましい。
【0014】
モール本体は、外観部から車内側に突出して支持部材の車内側の面に当接する折返部を有することが好ましい。
【0015】
モール本体の折返部は、支持部材又はシール部を車内外方向に貫通することが好ましい。
【0016】
本発明は、ドア本体部との間をシールするシール部を備えたモールに広く適用可能である。特に、ベルトモールに接続する第1のモール部と、アッパサッシュモールに接続する第2のモール部と、第1のモール部と第2のモール部が交わるコーナー部とを有するフレームモールに有用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両ドア用モールによれば、ドア本体部からシール部に加わる負荷を、リップ部が有する対向面を介してモール本体で受けることができる。従って、モール本体から突出するシール部によってドア本体部との間のシール性能を確保しながら、シール部の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】車内側から見たフレームモールの側面図である。
【
図3】フレームモールの構成要素を分解した図である。
【
図7】
図2のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図12】
図2のXII-XII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。
図1は、車外側から見た自動車(自動四輪車)の後方側面ドア1(以下、ドア1と呼ぶ)を示している。以下の説明における前方、後方、上方、下方、車内側、車外側といった方向の表現は、ドア1が取り付けられる自動車のボディを基準とした方向を意味する。
【0020】
ドア1は、ドア本体部に対して、窓部材である窓ガラスや、外観部材であるモールを取り付けて構成されている。ドア1におけるドア本体部を構成する要素として、ドアパネル2と、ドアパネル2の前部から上方に延設される立柱サッシュ3と、立柱サッシュ3の上端から後方に延びてドアパネル2の後部に至るアッパサッシュ4と、立柱サッシュ3の後方でドアパネル2とアッパサッシュ4を接続するディビジョンバー5と、を有している。ディビジョンバー5を挟んだ前後に窓開口が形成されている。立柱サッシュ3とアッパサッシュ4とディビジョンバー5に囲まれる前側の大型の窓開口内に、可動の窓部材である可動ガラス6が昇降する。ディビジョンバー5の後方の小型の窓開口内には、固定の窓部材である固定ガラス7が取り付けられている。固定ガラス7は固定的に取り付けられており、昇降などの動作を行わない。
【0021】
窓開口の縁飾り用の外観部材として、アッパサッシュ4に沿ってアッパサッシュモール8が組み付けられ、ドアパネル2の上縁部に沿ってベルトモール9が組み付けられる。また、固定ガラス7を囲む後端側の角隅部には、アッパサッシュモール8とベルトモール9に接続するフレームモール10が組み付けられる。フレームモール10は、ガーニッシュなどとも呼ばれる。
【0022】
図2は、車内側から見たフレームモール10を示しており、
図3は、フレームモール10の構成要素を分解した状態を示している。フレームモール10は、固定ガラス7の上下の縁に沿うV字形状であり、後方に進むにつれて上下方向の外寸が小さくなる。V字状のフレームモール10のうち、ドアパネル2の上縁部に沿う部分(ベルトモール9の延長上部分)を下部モール10A、アッパサッシュ4に沿う部分(アッパサッシュモール8の延長上部分)を上部モール10Bとし、下部モール10Aと上部モール10Bが交わる部分をコーナー部10Cとする。
【0023】
以下のフレームモール10の説明では、V字形状のフレームモール10の内縁方向(固定ガラス7が設けられている側)を内周側とし、V字形状のフレームモール10の外縁方向を外周側とする。内周側と外周側と結ぶ方向をフレームモール10の内外周方向とする。下部モール10Aと上部モール10Bはそれぞれ、アッパサッシュモール8とベルトモール9に接続する前端側の部分では内外周方向の幅が小さく、後方に進むと内外周方向の幅が大きくなる。
【0024】
図3に示すように、フレームモール10の構成要素として、モール本体11と、下部ホルダ12と、上部ホルダ13と、上部リテーナ14と、サブガーニッシュ15と、接続ブラケット16と、下部クリップ17と、中間クリップ18と、を備える。本実施形態では、モール本体11と上部リテーナ14は金属のプレス成形品であり、下部ホルダ12と上部ホルダ13と下部クリップ17と中間クリップ18は、合成樹脂製の成形品である。
【0025】
図4以降に示すように、モール本体11はフレームモール10の長手方向の位置の違いに応じて断面形状が異なっているが、モール本体11の基本構造として、外観部20と、外観部20の内周側の縁を構成する内周縁部21と、外観部20の外周側の縁を構成する外周縁部22とを有する。外観部20は、フレームモール10における外面の大部分を構成しており、概ね平坦な板状になっている。内周縁部21と外周縁部22はそれぞれ、外観部20の縁から屈曲又は湾曲して車内側に延びる車内延設部である。内周縁部21と外周縁部22の端部は、車内側に向く端面21aと端面22aになっている。
【0026】
下部ホルダ12は、モール本体11の車内側に配置されており、下部モール10Aの前端からコーナー部10Cまで延設されている。より詳しくは、下部モール10Aからコーナー部10Cまでの外周側の縁(外周縁部22)に沿って下部ホルダ12が取り付けられている。下部ホルダ12の一端は、アッパサッシュモール8に接続する下部モール10Aの前端付近にあり、下部ホルダ12の他端は、コーナー部10Cの後端付近に位置しており、下部モール10Aの長手方向の略全域に亘って下部ホルダ12が配設されている。
【0027】
上部ホルダ13は、モール本体11の車内側に配置されており、上部モール10Bの前端からコーナー部10Cまで延設されている。上部ホルダ13の一端は、アッパサッシュモール8に接続する上部モール10Bの前端付近にあり、上部ホルダ13の他端は、コーナー部10Cの後端付近に位置しており、上部モール10Bの長手方向の略全域に亘って上部ホルダ13が延設されている。さらに、上部ホルダ13の一部は下部モール10Aの領域まで延びている。
【0028】
下部モール10Aの前端はベルトモール9に接続され、上部モール10Bの前端はアッパサッシュモール8に接続される。ベルトモール9と下部モール10Aの接続は、接続ブラケット16を介して行われる。アッパサッシュモール8と上部モール10Bの接続は、モール本体11をアッパサッシュモール8に溶接して行われる。なお、フレームモール10と他のモール(アッパサッシュモール8やベルトモール9)との接続構造は、これらの構成には限定されない。
【0029】
下部モール10Aのうち、接続ブラケット16に近い端部付近に下部クリップ17が取り付けられ、下部クリップ17がドアパネル2に固定される(
図4参照)。
【0030】
フレームモール10は、下部モール10Aからコーナー部10Cまでの下半部分がドアパネル2に取り付けられ、上部モール10Bからコーナー部10Cまでの上半部分がアッパサッシュ4に取り付けられる。そして、フレームモール10は、アッパサッシュモール8とベルトモール9に接続する両端部分よりも、コーナー部10Cを含む中間部分の方が、内外周方向の幅が大きく、広い面積を有している。そのため、フレームモール10の中間部分については、下部クリップ17によるドアパネル2への取り付けだけでは高精度で安定した支持の実現が難しい。ドアパネル2に対するフレームモール10の中間部分の浮き上がりを防いで、高精度で安定したフレームモール10の支持を実現するために、中間クリップ18を備えている。
【0031】
フレームモール10の周辺の構造として、固定ガラス7の周縁を保持する窓保持部材19を備えている。窓保持部材19は、弾性変形可能で非通水性の材質(ゴムなど)で形成されている。
図4以降に示すように、フレームモール10の長手方向の位置の違いに応じて窓保持部材19の断面形状が異なっているが、窓保持部材19の基本構造として、固定ガラス7の車外側に位置する車外側部19aと、固定ガラス7の車内側に位置する車内側部19bとを有している。車外側部19aと車内側部19bの間には、固定ガラス7の周縁部分を挿入させる窓保持空間19cが形成されている。窓保持空間19cに入った固定ガラス7を、車外側部19aと車内側部19bによって車内外方向で挟むことによって、固定ガラス7の周縁部分をシールすると共に、固定ガラス7のガタつきや振動を抑えて安定させる。
【0032】
車外側部19aの内周側の端部には、車外側へ延びる片持ち状のリップ19dが設けられる。リップ19dは、フレームモール10と固定ガラス7の境界部分(特に内周縁部21の周辺)を覆うカバー部として機能する。
【0033】
車内側部19bの内周側の端部には、車内側へ延びる片持ち状のリップ19eが設けられる。ドアトリム(図示略)と固定ガラス7との間に存在する隙間を、リップ19eによって覆う。
【0034】
窓保持空間19cは、窓保持部材19の内周側では塞がれずに開口している。窓保持部材19の外周側では、窓保持空間19cの底部が部分的に塞がれている。また、窓保持空間19cの形成位置よりも外周側に突出する脚部19fが設けられる。
【0035】
図12に示すように、ドアパネル2は、車外側に位置するアウタパネル90と、車内側に位置するインナパネル91を組み合わせて構成されている。また、アウタパネル90とその他のドア構成部品との組み合わせとして、インナパネル91以外に、エクステンションブラケット92に対してアウタパネル90の内周側の縁部が組み合わせられる領域(
図5から
図8)や、アウタリンフォース93に対してアウタパネル90の内周側の縁部が組み合わせられる領域(
図4、
図5)も存在する。さらに、インナパネル91、エクステンションブラケット92、アウタリンフォース93などとは組み合わされずに、アウタパネル90の内周側の縁部が単独で存在する領域(
図9、
図10)も存在する。
【0036】
アウタパネル90は、内周側の縁部を車内側に折り返したヘミング部94を有する。ドアパネル2の上縁付近では、インナパネル91やエクステンションブラケット92やアウタリンフォース93は、アウタパネル90の車内側の面に沿って配置される。そして、ヘミング部94によってインナパネル91やエクステンションブラケット92やアウタリンフォース93を車内側から挟むことによって、アウタパネル90に対してインナパネル91やエクステンションブラケット92やアウタリンフォース93が結合される。
【0037】
エクステンションブラケット92は、ヘミング部94により挟持される上縁部分から外周側(下方)に延びる上下延設部92aと、上下延設部92aの下端部から屈曲して車内側に向けて延びる車内外延設部92bを有している。上下延設部92aは窓保持部材19の車外側部19aの車外側に位置しており、上下延設部92aと車外側部19aとの間には、車内外方向への隙間S1がある。ヘミング部94は隙間S1内に位置する。車内外延設部92bに対して、窓保持部材19に設けた脚部19fが当接する。
【0038】
中間クリップ18が設けられている部分での、ドア1に対するフレームモール10の取付構造を説明する。
図7から
図10に示すように、中間クリップ18は部分ごとに断面形状が異なるが、中間クリップ18の基本構造として、車外側に位置する車外側部30と、車外側部30の内周側の端部(上端)から車内側に向けて延びる内周接続部31と、内周接続部31の車内側の端部から外周側(下方)に向けて延びる車内側部32と、を有している。車内側部32は、エクステンションブラケット92(上下延設部92a)と窓保持部材19(車外側部19a)の間の隙間S1に位置している。
【0039】
車外側部30は、モール本体11における外観部20の車内側に沿って配置される部分であり、
図3のように側面視したときに、車外側部30が中間クリップ18の大部分(外形)を構成する。外観部20の車内側の面に対して、車外側部30の車外側の面が当接することで、車内外方向でのモール本体11と中間クリップ18の相対的な位置が定まる(
図7から
図10参照)。
【0040】
内周接続部31は、モール本体11の内周縁部21に沿って位置している、内周接続部31が内周縁部21に当接することで、モール本体11に対する内周側への中間クリップ18の移動が規制される(
図7から
図9参照)。中間クリップ18の外周側部分は下部ホルダ12と結合しており、下部ホルダ12はモール本体11の外周縁部22に対して、外周側への移動が規制されている。このモール本体11への下部ホルダ12の取付構造については後述する。従って、中間クリップ18は、モール本体11の内周縁部21と外周縁部22によって、内外周方向の位置が定められる。
【0041】
中間クリップ18の内周側の端部付近には、車内側へ突出する突出部33が形成されている。突出部33は、内周接続部31と車内側部32の境界付近に基端が接続し、内周側へ傾斜しながら車内側に延びる突起形状である。突出部33の先端は、車内側部32よりも車内側に位置している。
【0042】
中間クリップ18の突出部33に対して、モール本体11の屈曲部23が嵌合する(
図8及び
図9参照)。モール本体11と中間クリップ18を組み合わせる前の状態では、屈曲部23に相当する部分は、内周縁部21に対して屈曲せずに車内側に向けて延びるタブ状の突出部23Zになっている(
図3、
図8、
図9参照)。モール本体11と中間クリップ18を組み合わせる際に、突出部23Zが下方且つ車外側に向けて屈曲されて突出部33の外面に沿う形状になり、屈曲部23が形成される。屈曲部23の端面23aは、突出部33の基端付近の位置で、車内側部32の車内側の面に当接する。突出部33に対する屈曲部23の嵌合(かしめ)によって、モール本体11と中間クリップ18が互いに固定される。
【0043】
図2に示すように、フレームモール10(下部モール10A)の長手方向に位置を異ならせて2つの屈曲部23が設けられている。屈曲部23が設けられていない位置では、
図7に示すように、中間クリップ18の突出部33は内周側への突出量を大きくした形状になっており、内周縁部21の端面21aが、突出部33の近傍に位置する。
【0044】
また、
図5及び
図6に示すように、下部モール10Aのうち中間クリップ18が設けられていない部分では、内周縁部21の端面21aが窓保持部材19の車外側部19aに対向して位置する。
【0045】
中間クリップ18には、車外側部30と内周接続部31と車内側部32によって、外周側に向けて開口するコ字状の凹部が形成される。この凹部の内部空間T1に、アウタパネル90の内周側の縁部が挿入される。アウタパネル90の内周側の縁部には、ヘミング部94を有する部分(
図4から
図8)と、ヘミング部94を有さない部分(
図9、
図10)とがある。ヘミング部94は車内側に折り返して形成されているので、ヘミング部94を有さない部分よりも、ヘミング部94の方が車内側に位置する。そして、ヘミング部94の車内側の面が、中間クリップ18の車内側部32に当接する(
図7及び
図8参照)。一方、ヘミング部94が存在しない部分では、アウタパネル90と中間クリップ18の車内側部32が接触せず(離間し)、互いの間に車内外方向の隙間が存在する(
図9参照)。
【0046】
ヘミング部94よりも外周側で、中間クリップ18に取り付けたコーキングスポンジ36が、アウタパネル90に接触する。コーキングスポンジ36は、中間クリップ18の車外側部30の車内側の面に形成した支持座30a(
図3参照)に取り付けられている。コーキングスポンジ36は、弾性変形可能であり、非通水性を有している。
図8から
図10に示すコーキングスポンジ36は、変形前の自由状態での形状であり、アウタパネル90と重なる厚みを有している。従って、モール本体11と中間クリップ18を組み合わせると、コーキングスポンジ36がアウタパネル90の車外側の面に当接して押圧され、車内外方向に圧縮変形する。変形したコーキングスポンジ36が復元しようとすることで、アウタパネル90に対して中間クリップ18は車外側に向けて押圧される。この押圧力によって、車内側部32がヘミング部94に押し付けられて、アウタパネル90に対する中間クリップ18の車内外方向の位置が定まる。
【0047】
図10に示すように、アウタパネル90には車内外方向に貫通する取付孔95が形成されている。取付孔95は、上下方向に対向する上辺部と下辺部を有しており、
図10には取付孔95の上辺部と下辺部が表れている。中間クリップ18には、取付孔95に嵌合する嵌合部34が設けられている。嵌合部34は、当付部34aと、当付部34aから上方に突出する上方突出部34bと、当付部34aから下方に突出する下方突出部34cと、を有している。
【0048】
中間クリップ18は、嵌合部34を取付孔95に嵌合させてアウタパネル90に取り付けられる。
図10に示すように、取付孔95の上辺部が当付部34aに当接し、下方突出部34cの車外側の面がアウタパネル90の車内側の面に当接する。上述のように、変形したコーキングスポンジ36によって、中間クリップ18は車外側への押圧力を受ける。下方突出部34cがアウタパネル90に当接することで、嵌合部34は車外側への移動が規制される。アウタパネル90に対する下方突出部34cの当接を解除させるには、取付孔95に対して嵌合部34を上方に移動させる必要がある。しかし、取付孔95の上辺部への当付部34aの当接によって、嵌合部34は上方への移動が規制される。また、上方突出部34bの車外側の面とコーキングスポンジ36が、アウタパネル90の車外側の面に当接することで、嵌合部34は車内側への移動が規制される。アウタパネル90に対する上方突出部34bの当接を解除させるには、取付孔95に対して嵌合部34を下方に移動させる必要がある。しかし、嵌合部34は、取付孔95の下辺部の上方に位置する突起部を有しており、下方への嵌合部34の移動も制限される。その結果、
図10に示す取付孔95と当付部34aの嵌合状態が維持される。そして、取付孔95と当付部34aの嵌合によって、中間クリップ18を含むフレームモール10(下部モール10A)が、アウタパネル90に固定される。
【0049】
このように、中間クリップ18は、モール本体11をアウタパネル90に固定させる固定部として機能する。コーキングスポンジ36は、取付孔95及び嵌合部34の周囲を囲む枠型の形状である(
図3参照)。枠型のコーキングスポンジ36によって、取付孔95の周囲がシールされる。また、嵌合部34(特に上方突出部34bと下方突出部34c)とコーキングスポンジ36は、モール本体11に対して中間クリップ18が車内側及び車外側へ移動することを規制する規制部として機能する。嵌合部34とコーキングスポンジ36は、車内側部32がヘミング部94に当接する箇所とは異なる位置(下方)に設けられており、車内側部32とヘミング部94の当接箇所を中心として中間クリップ18がアウタパネル90に対して回転することを規制する。
【0050】
以上のようにして、中間クリップ18を介してフレームモール10をアウタパネル90に取り付けた状態で、窓保持部材19のリップ19dが、モール本体11の内周縁部21の一部を覆う。
図4、
図5、
図7から
図9に示すのは、リップ19dが変形する前の自由状態の形状である。リップ19dは、内周縁部21に接触して内周側に向けて弾性変形した形状になり(
図6参照)、フレームモール10と固定ガラス7の間がリップ19dによってシールされる。
【0051】
また、リップ19dは、フレームモール10と固定ガラス7の間の隙間や段差が外観に表れないようにカバーして、フレームモール10周りの美観を高める機能を有する。例えば、下部モール10Aのうち中間クリップ18が設けられている部分では、屈曲部23と突出部33が嵌合する箇所をリップ19dが覆う(
図8及び
図9参照)。下部モール10Aのうち中間クリップ18が設けられていない部分では、内周縁部21の端面21a付近をリップ19dが覆う(
図5及び
図6参照)。
【0052】
屈曲部23はモール本体11と中間クリップ18を固定させるかしめ部分であり、突出部23Zを屈曲させて屈曲部23を形成する際に、屈曲部23の周辺でモール本体11(内周縁部21)に僅かな歪みが生じる可能性がある。このような歪みが生じた場合でも、屈曲部23とその周囲を覆う形状のリップ19dによって、モール本体11における歪みが外観に露出することを防止できる。
【0053】
中間クリップ18を介してフレームモール10をアウタパネル90に取り付けると、フレームモール10の一部が、車外側から窓保持部材19に当接する。この当接箇所は屈曲部23である(
図8及び
図9参照)。
【0054】
図8に示すように、中間クリップ18の車内側部32は、ヘミング部94に対して車内側から当接して、車外側への移動が規制される。モール本体11は、屈曲部23を突出部33に嵌合させ、さらに屈曲部23の端面23aを車内側部32に当接させて、車外側への移動が規制される。そして、屈曲部23が窓保持部材19の車外側部19aに対して車外側から当接することで、車外側部19aは車外側への移動が規制される。つまり、フレームモール10は、窓保持部材19に対して車外側から当接する第1の当接部である屈曲部23と、ドアパネル2(アウタパネル90)に対して車内側から当接する第2の当接部である車内側部32とを有する。そして、ドアパネル2(アウタパネル90)に取り付けた状態のフレームモール10を介して、窓保持部材19が車外側に移動することを規制する。特に、屈曲部23が当接するのは車外側部19aの先端(内周側端部)付近であり、車外側部19aが固定ガラス7から離間して窓保持空間19cの内周側の開口幅が車内外方向に大きくなること(窓保持部材19の口開き変形)を、フレームモール10を介して防止できる。
【0055】
固定ガラス7の周縁を保持する窓保持部材19は、確実なシール性やガラス保持の安定性を得るために、車外側部19aと車内側部19bが所定の接触圧で固定ガラス7の車外側の面と車内側の面に接触することが求められる。ここで、ドアパネル2に取り付けられるフレームモール10を介して窓保持部材19(特に車外側部19a)を車外側から押さえることで、窓保持空間19cの開口幅の拡大を防いで、固定ガラス7に対する車外側部19aと車内側部19bの接触圧を維持させることができる。
【0056】
フレームモール10によって窓保持部材19の車外側部19aを車外側から押さえる構成は、特に、車両走行時に固定ガラス7を車外方向へ吸い出そうとする負荷がかかった場合などに有用である。
【0057】
屈曲部23は、当付部34aが取付孔95に嵌合する中間クリップ18の中央付近から離れた周縁部に位置している。しかし、屈曲部23は、中間クリップ18の車内側部32と突出部33を介して、近傍のヘミング部94を基準として位置が管理されるので、窓保持部材19への屈曲部23の接触状態を高精度に定めることができる。
【0058】
より詳しくは、固定ガラス7と屈曲部23の車内外方向の間隔が、窓保持部材19の自由状態における車外側部19aの車内外方向の肉厚よりも僅かに小さくなるように、屈曲部23の位置を設定している。別言すれば、車内外方向での屈曲部23の位置が、自由状態での車外側部19aの位置と重なるように設定している。この設定により、単に屈曲部23が車外側部19aの車外側への変形を規制するだけでなく、屈曲部23が車外側部19aを車内側へ押圧する関係になり、窓保持部材19による固定ガラス7の保持性を向上させることができる。
【0059】
ヘミング部94の箇所では、エクステンションブラケット92の両側をアウタパネル90が挟む三層構造になっていて高い剛性を有している。従って、中間クリップ18の車内側部32が当接する対象を、アウタパネル90のうちヘミング部94にすることで、車内側部32と屈曲部23を含む当接部の位置を高精度に管理して、窓保持部材19の安定した保持を実現できる。
【0060】
なお、
図8に示す断面位置では、アウタパネル90がエクステンションブラケット92をヘミング部94で挟持する箇所に車内側部32が当接しているが、本発明は、ヘミング部により挟持されるドア構成部品をエクステンションブラケットに限定するものではない。例えば、アウタパネル90のヘミング部94がアウタリンフォース93を挟持している箇所(
図4参照)に対して、車内側部32に相当する第2の当接部を当接させることも可能である。
【0061】
屈曲部23は、端面23aではなく、途中の滑らかな湾曲面を窓保持部材19の車外側部19aに当接させる。そのため、端面23aのエッジ部分によって窓保持部材19に損傷を与えるおそれがない。
【0062】
屈曲部23は、中間クリップ18の突出部33にかしめ固定されており、さらに端面23aを車内側部32に当接させている。そのため、屈曲部23は、中間クリップ18に対する位置ずれや変形を生じずに、高い精度で窓保持部材19の車外側部19aの位置を決めることができる。
【0063】
下部モール10Aのうち中間クリップ18が設けられていない部分では、
図6に示すように、窓保持部材19の車外側部19aから車外側に向けて突出する突起部19gが、ヘミング部94に対して当接する。
図6に示す突起部19gの形状は、変形していない自由状態のものであり、突起部19gの先端がヘミング部94と重なる位置まで延びている。従って、フレームモール10をドアパネル2に取り付けて突起部19gがヘミング部94に当接すると、突起部19gが弾性変形して車内側への押圧力を受ける状態になり、車外側へ向けての車外側部19aの変形が制限される。また、モール本体11の内周縁部21の端面21aが、車外側部19aの先端付近に対向している。従って、下部モール10Aでは、中間クリップ18が設けられていない部分においても、車外側部19aが車内側に大きく変形することを防止できる。
【0064】
なお、内周縁部21の端面21aについては、上述した屈曲部23よりも僅かに車外側に位置させてもよい。これにより、端面21aが車外側部19aを車内側へ向けて常時押圧する状態を回避し、端面23aのエッジ部分によって窓保持部材19が損傷するおそれを軽減できる。
【0065】
続いて、フレームモール10とドアパネル2(アウタパネル90)の間のシール構造について説明する。下部ホルダ12は、モール本体11の外周側の縁部に沿って取り付けられており、下部ホルダ12にシール部材50が取り付けられる。
図2及び
図3に示すように、シール部材50は、下部ホルダ12の長手方向の略全体に亘る長さを有している。シール部材50は、下部ホルダ12よりも軟質で非通水性の材質で形成されている。つまり、下部ホルダ12は、シール部材50よりも硬質であり、シール部材50を支持してモール本体11の車内側に固定される支持部材である。フレームモール10をドア1に取り付けた状態で、シール部材50がアウタパネル90の車外側の面に対して密着状態で接触し、シール部材50によってフレームモール10とアウタパネル90の間がシールされる。
【0066】
下部ホルダ12は、内外周方向において外周縁部22に近い外周側に位置しており、モール本体11の外観部20の車内側の面に沿って延設されている。下部ホルダ12には、車外側に突出して外観部20の車内側の面に当接する当付部40が設けられている。当付部40と外観部20の当接によって、モール本体11に対する下部ホルダ12の車内外方向の位置が定まる。当付部40以外の部分では、下部ホルダ12と外観部20の間に車外外方向の隙間がある。下部ホルダ12の内周側の端部近傍と、下部ホルダ12の外周側の端部近傍に当付部40を設けて安定性を確保している(
図4から
図6参照)。なお、
図11に示すように、下部ホルダ12の長手方向の所定の範囲では、当付部40の数や配置が異なる箇所も存在する。
【0067】
下部モール10Aからコーナー部10Cの後端までのモール本体11の外周側の縁部の一部には、外観部20から車内側に突出して外周側に折り返された形状の折返部24が形成されている(
図5参照)。モール本体11の長手方向に沿って複数の折返部24が所定の間隔で設けられている。各折返部24が下部ホルダ12の車内側の面に当接し、外観部20と折返部24によって下部ホルダ12を挟持することで、下部ホルダ12がモール本体11に対してかしめ固定される。
図5に示すように、折返部24は、外観部20から車内側へ延びる外周壁24aと、外周壁24aから外周側に延びる車内側壁24bとを有する。車内側壁24bは、外周縁部22よりも車内側に位置している。外周壁24aによって、モール本体11に対する内外周方向への下部ホルダ12の位置が定まる。また、車内側壁24bによって、車内側への下部ホルダ12の移動が規制される。
【0068】
より詳しくは、モール本体11と下部ホルダ12を組み合わせる前の状態では、各折返部24に相当する部分は、外周縁部22から車内側に向けて延びるタブ状の突出部24Z(
図3及び
図5参照)として形成されている。下部ホルダ12又はシール部材50には、複数の突出部24Zに対応する位置に、車内外方向へ貫通する複数の貫通部41が形成されている(
図3参照)。モール本体11と下部ホルダ12を組み合わせる際に、各貫通部41に突出部24Zを挿入する。続いて、突出部24Zを外周側に向けて折り曲げることで、折返部24が形成される。この状態で、折返部24の外周壁24aが下部ホルダ12又はシール部材50を車内外方向に貫通して貫通部41の内面に当接し、折返部24の車内側壁24bが下部ホルダ12の車内側の面に密着する。
【0069】
また、中間クリップ18が配置されている部分では、下部ホルダ12が中間クリップ18と重なって嵌合する(
図7から
図10参照)。下部ホルダ12は、中間クリップ18と重なる部分で、モール本体11の外観部20に対する車内側への間隔を大きくした薄肉部42を有している。この薄肉部42と外観部20の間に、中間クリップ18の車外側部30が位置する。すなわち、車外側から順に、外観部20、車外側部30、薄肉部42が重なる関係になる。薄肉部42と車外側部30の当接によって、車内外方向における下部ホルダ12と中間クリップ18の相対的な位置が定まる。
【0070】
下部ホルダ12には、薄肉部42よりも外周側に、車内外方向に貫通する貫通部43が形成されている。下部ホルダ12の長手方向に位置を異ならせて2つの貫通部43が形成されている(
図3参照)。中間クリップ18には、車外側部30の外周側端部から車内側に向けて突出する2つの外周屈曲部35が形成されている。各外周屈曲部35が各貫通部43に嵌合して(
図7から
図10参照)、内外周方向での下部ホルダ12と中間クリップ18の相対的な位置が定まる。
【0071】
このように、下部ホルダ12と中間クリップ18が個別にかしめ固定などによってモール本体11に取り付けられることに加えて、下部ホルダ12と中間クリップ18が重なって設けられる領域では、下部ホルダ12と中間クリップ18が互いの位置関係を決めるように構成されている。
【0072】
さらに、下部クリップ17が配置されている部分では、下部ホルダ12が下部クリップ17の保持にも関与している。
図4に示すように、下部モール10Aの前端付近では、下部ホルダ12は、モール本体11の外観部20に沿う本体部に加えて、本体部よりも車内側且つ内周側に位置する車内側部48を有する。車内側部48から内周側及び車内側に突出する突出部49が設けられる。車内側部48と突出部49は、上述した中間クリップ18の車内側部32と突出部33に概ね対応する位置にある。
【0073】
図4に示すように、下部クリップ17は、車内外方向で下部ホルダ12の本体部と車内側部48に挟まれる位置にある。より詳しくは、下部クリップ17は、車外側に位置する車外側部17aと、車外側部17aの内周側の端部から車内側に向けて延びる内周接続部17bと、内周接続部17bの車内側の端部から外周側に向けて延びる車内側部17cと、を有している。車外側部17aと車内側部17cが、下部ホルダ12の本体部と車内側部48の間に保持されている。内周接続部17bが、モール本体11の内周縁部21に沿って位置する。車内側部17cの端部に設けた鉤状部17dが、アウタパネル90のヘミング部94の端部に嵌合している。このようにして、下部クリップ17の位置が定まると共に、ドアパネル2(アウタパネル90)に対して下部クリップ17が固定される。
【0074】
下部クリップ17の突出部49に対して、モール本体11の屈曲部25が嵌合する(
図4参照)。モール本体11と下部クリップ17を組み合わせる前の状態では、屈曲部25に相当する部分は、内周縁部21に対して屈曲せずに車内側に向けて延びるタブ状の突出部25Zになっている(
図4参照)。モール本体11と下部クリップ17を組み合わせる際に、突出部25Zが下方且つ車外側に向けて屈曲されて突出部49の外面に沿う形状になり、屈曲部25が形成される。屈曲部25の端面25aは、突出部49の基端付近の位置で、車内側部48の車内側の面に当接する。突出部49に対する屈曲部25の嵌合(かしめ)によって、モール本体11と下部クリップ17が互いに固定される。
【0075】
図4に示すように、モール本体11の屈曲部25が窓保持部材19の車外側部19aに対して車外側から当接する。屈曲部25が嵌合する突出部49を有する下部ホルダ12の車内側部48は、下部クリップ17の車内側部17cに当接する。車内側部17cはアウタパネル90のヘミング部94に当接する。従って、ヘミング部94を基準として、車内側部17cと車内側部48と突出部49を介して、屈曲部25の車内外方向の位置が定まり、屈曲部25によって車外側部19aを車外側から押さえて窓保持部材19の変形(窓保持空間19cの内周側の開口幅が大きくなる口開き変形)を抑制できる。
【0076】
シール部材50は、下部ホルダ12に対して取り付けられる。
図11に示すように、シール部材50は、基部51と、屈曲部52と、リップ部53とを有している。基部51は、下部ホルダ12の車内側に位置しており、下部ホルダ12の車内側の面に沿う部分と、下部ホルダ12の外周側端部よりも外周側に突出する部分とを有している。外周縁部22は下部ホルダ12の外周側端部を覆う位置にあり、外周縁部22の端面22aは、下部ホルダ12の車内側の面よりも僅かに車外側に位置している。基部51は、外周縁部22よりも外周側まで延びて、端面22aを覆って露出を防いでいる。外周縁部22よりも外周側に突出した位置で、基部51から車外側に屈曲した屈曲部52が形成される。そして、屈曲部52に続いて、基部51よりも車外側に位置するリップ部53が形成される。リップ部53は、外周縁部22の外周側に隣接して位置する。屈曲部52からリップ部53にかけてのシール部材50の外面が、外周側に向けて凸となる湾曲形状の接触面54になっている。リップ部53は、接触面54の裏側に、内周側を向く対向面55を有しており、対向面55が外周縁部22の側面に対向する。
【0077】
図11に示すように、シール部材50は、嵌合部56を介して下部ホルダ12に固定される。下部ホルダ12には、嵌合部56が嵌合する嵌合孔44が形成されている。嵌合孔44は下部ホルダ12を車内外方向に貫通しており、嵌合孔44の車外側の開口部分は、他の部分よりも内径が大きい大径開口44aになっている。嵌合部56は嵌合孔44に挿入され、大径の頭部56aを大径開口44aに嵌合させて抜け止めされる。嵌合孔44と嵌合部56の嵌合によって、シール部材50は下部ホルダ12に対する車内外方向と内外周方向の位置が定まって固定される。嵌合孔44と嵌合部56は、外観部20から車内側に離間した位置で嵌合しており、嵌合部56の先端部(車外側を向く面)と外観部20との間には、車内外方向に隙間がある。これにより、モール本体11と下部ホルダ12の間の位置誤差の影響を受けずに、確実にシール部材50を下部ホルダ12に固定させることができる。例えば、シール部材50の成形のばらつきによって嵌合部56の位置が多少ずれても、上記の隙間を設けることにより、嵌合部56が外観部20に対して干渉せず、外観部20の変形による見栄えの低下を防ぐことができる。
【0078】
嵌合孔44と嵌合部56は、下部ホルダ12の長手方向に位置を異ならせて複数箇所設けられており、シール部材50の全体を下部ホルダ12に安定的に取り付けることができる。
【0079】
下部ホルダ12の長手方向のうち、嵌合孔44と嵌合部56が設けられていない領域での下部ホルダ12とシール部材50の断面構造は、
図4、
図6から
図10に表れている。
図6に拡大して示すように、下部ホルダ12のうち嵌合孔44が設けられていない部分では、下部ホルダ12の外周側端部からさらに外周方向に突出する外周突起45が設けられている。外周突起45は、モール本体11の外周縁部22の端面22aの車内側に対向して位置している。外周突起45によって、シール部材50(基部51)に対する端面22aの接触が防がれる。外周突起45と端面22aの間には、車内外方向に隙間が存在するように設計される。なお、下部ホルダ12はシール部材50よりも硬質の材料からなるため、仮に精度誤差によって端面22aの位置が車内側にずれても、軟質の材料からなるシール部材50に対して端面22aが接触して損傷させることを、外周突起45によって防止できる。
【0080】
以上のように下部ホルダ12を介してモール本体11に取り付けられたシール部材50は、フレームモール10をドア1に取り付けた状態で、接触面54をアウタパネル90の車外側の面に接触させる。アウタパネル90は、フレームモール10(下部モール10A)によって車外側から覆われる部分と、フレームモール10(下部モール10A)の外周側に位置して外観に露出する部分との境界に、段差部96を有している。この段差部96に対して、シール部材50の接触面54が接触する。
【0081】
アウタパネル90の段差部96に接触したシール部材50は、内周側に向けて押圧されて、自由状態よりも内外周方向に圧縮された弾性変形状態になる。これにより、接触面54が段差部96の外面に密着して、シール部材50によってフレームモール10とアウタパネル90の間がシールされる。
【0082】
シール部材50のうちアウタパネル90(段差部96)に接触する接触面54の裏側の対向面55に対向する位置に、モール本体11の外周縁部22が設けられている。段差部96から内周側への押圧力を受けるリップ部53は、対向面55を外周縁部22に当接させることによって、それ以上の内周側への移動(変形)が規制される。つまり、シール部材50がシール機能を発揮する際にリップ部53が受ける押圧力の作用方向の延長上に外周縁部22が位置しており、当該押圧力を外周縁部22によって受ける構造になっている。
【0083】
外周縁部22で負荷を受けることにより、シール部材50が下部ホルダ12に対して取り付けられている部分(基部51や嵌合部56)にかかる負荷が軽減される。外周縁部22はモール本体11の一部である。モール本体11は、シール部材50よりも強度の高い材質(本実施形態では金属)で形成されており、しかも下部ホルダ12よりも大型の部材である。そのため、シール部材50からの荷重が加わったときに外周縁部22が変形せず、耐荷重性に優れた構造で安定してシール部材50を支持することができる。
【0084】
また、シール部材50の単体状態では基部51から屈曲部52を介して突出する片持ち形状であるリップ部53を、モール本体11に取り付けた状態では外周縁部22を基準として位置管理できる。そのため、リップ部53の変形量や段差部96に対するリップ部53の接触圧をコントロールしやすい。従って、フレームモール10とアウタパネル90の間のシール性能を、高精度に管理することができる。
【0085】
例えば、本実施形態とは異なり、リップ部53の対向面55に対向する位置にモール本体11(外周縁部22など)が存在しない場合、アウタパネル90との間の精度のばらつきによってリップ部53が内周側に大きく押し込まれる可能性がある。すると、基部51や嵌合部56に大きな負荷がかかってシール部材50の支持性能が低下したり、シール部材50とアウタパネル90の間のシール性能にばらつきが生じたりするおそれがある。これに対し、本実施形態の構成によれば、こうした不具合が生じにくい。
【0086】
なお、シール部材50の対向面55と、モール本体11の外周縁部22は、初期状態から接触するように設定してもよいし、初期状態では離間していてリップ部53に所定以上の負荷が加わって変形量が増大した場合に接触するように設定してもよい。リップ部53の変形可能な量が小さすぎると、アウタパネル90に対するフレームモール10の組付誤差を吸収できずに、シール部材50がアウタパネル90に適切に接触しなくなるおそれがある。リップ部53の変形可能な量が大きすぎると、基部51や嵌合部56にかかる負荷が過大になって、シール部材50の安定性や耐久性が損なわれるおそれがある。こうした点に鑑みて、リップ部53の変形可能な量を最適化するように、対向面55と外周縁部22の位置関係を設定する。
【0087】
このように、ドア本体部であるドアパネル2(アウタパネル90)からシール部材50に加わる負荷を、接触面54の裏側に位置する対向面55を介してモール本体11(外周縁部22)で受けることで、モール本体11から突出するシール部材50によってドアパネル2との間のシール性能を確保しながら、シール部材50の耐久性を向上させることができる。
【0088】
モール本体11は、外観部20から車内側に向けて延びる車内延設部である外周縁部22の側面を、シール部材50の対向面55に対向させている。外周縁部22の側面と対向面55が概ね同じ向きの面であるため、対向面55と外周縁部22を確実に接触させて、シール部材50からの負荷をモール本体11で確実に受けることができる。例えば、本実施形態とは異なり、モール本体11の端面(22a)が外周側に向いて対向面55に対向する構成では、シール部材50からの負荷をモール本体11で受ける際に、互いの接触範囲が狭くなり局所的に負荷が集中し、シール部材50の姿勢安定性や耐久性に影響が及ぶ可能性がある。
【0089】
シール部材50は、下部ホルダ12を介してモール本体11に取り付けられる。本実施形態とは異なり、金属製のモール本体11に軟質のシール部材50を直接に取り付ける構成を想定すると、モール本体11の折返部24のような部位でシール部材50を挟持しても、シール部材50の柔らかさによって支持位置が安定しないおそれがある。一方、下部ホルダ12は、シール部材50よりも硬質であり、折返部24を用いた取り付けによって、モール本体11に対して高精度に固定することができる。そして、合成樹脂製の下部ホルダ12は、シール部材50を結合させるための構造の選択自由度が高いという利点があり、車内外方向での嵌合長が大きく位置安定性に優れる嵌合孔44と嵌合部56のような構造でシール部材50を取り付けることができる。その結果、下部ホルダ12を介在させて取り付けられたシール部材50は、モール本体11に対して精度良く支持され、リップ部53の変形量を最適化させやすくなる。
【0090】
また、下部ホルダ12の外周寄りの位置では、下部ホルダ12又はシール部材50に貫通部41を有し、貫通部41に挿入した折返部24との嵌合により、下部ホルダ12やシール部材50がモール本体11に固定される。そのため、モール本体11に対するシール部材50の位置基準が、シール部材50自体、あるいはシール部材50の近傍(下部ホルダ12)に設定される。当該構成も、モール本体11とシール部材50の間の位置精度向上に寄与する。
【0091】
なお、本発明は、下部ホルダ12のような中間部材を介さずモール本体に対してシール部を直接に取り付ける構成を除外するものではない。
【0092】
以上のようにして、モール本体11に対して下部ホルダ12、シール部材50、下部クリップ17、中間クリップ18が取り付けられる。フレームモール10ではさらに、上部ホルダ13、上部リテーナ14、サブガーニッシュ15が取り付けられる。
【0093】
上部ホルダ13は、複数のかしめ部26によって、モール本体11に固定される(
図2参照)。かしめ部26は、中間クリップ18や下部クリップ17や下部ホルダ12の固定に用いる屈曲部23,25や折返部24と同様の構成である。モール本体11と上部ホルダ13を組み合わせる前の状態では、各かしめ部26に相当する部分は、モール本体11の内周縁部21や外周縁部22から車内側に向けて延びるタブ状の突出部26Z(
図3参照)として形成されている。上部ホルダ13には、複数の突出部26Zに対応する位置に複数の凹部が形成されており、モール本体11と上部ホルダ13を組み合わせる際に、各凹部に突出部26Zを挿入する。続いて、突出部26Zを折り曲げることで、かしめ部26が形成される。
【0094】
図2、
図3、
図12に示すように、下部ホルダ12は、コーナー部10C側の端部付近に、車内側に突出する段差形状の被挿入部46を有する。上部ホルダ13は、被挿入部46とモール本体11の外観部20の間に挿入される挿入部47を有する。挿入部47が被挿入部46の内側(車外側)に挿入されることにより、コーナー部10Cにおいて車内側への上部ホルダ13の浮き上がりが規制される(
図12参照)。
【0095】
上部リテーナ14は、アッパサッシュ4に沿って配設されるウェザストリップ(図示略)の支持に用いられる。インサート成形などによって、上部リテーナ14が上部ホルダ13と一体化されている。
【0096】
サブガーニッシュ15は、コーナー部10Cの内周側に設けられ、モール本体11の外観部20と共にフレームモール10の意匠面を構成する。サブガーニッシュ15は上部ホルダ13によって車内側から保持される。
【0097】
上記実施形態は車両の後方側面ドアに適用しているが、本発明は、前方側面ドアや、側面以外のドアにも適用が可能である。
【0098】
本発明は、上記実施形態のようなフレームモールへの適用が有用であるが、フレームモール以外のモールにも適用が可能である。
【0099】
また、本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【符号の説明】
【0100】
1 :ドア(後方側面ドア)
2 :ドアパネル(ドア本体部)
3 :立柱サッシュ(ドア本体部)
4 :アッパサッシュ(ドア本体部)
5 :ディビジョンバー(ドア本体部)
6 :可動ガラス
7 :固定ガラス
8 :アッパサッシュモール
9 :ベルトモール
10 :フレームモール
10A :下部モール(第1のモール部)
10B :上部モール(第2のモール部)
10C :コーナー部
11 :モール本体
12 :下部ホルダ(支持部材)
13 :上部ホルダ
17 :下部クリップ
18 :中間クリップ
19 :窓保持部材
19a :車外側部
19b :車内側部
19d :リップ
20 :外観部
21 :内周縁部
22 :外周縁部(車内延設部)
23 :屈曲部
24 :折返部
30 :車外側部
31 :内周接続部
32 :車内側部
33 :突出部
34 :嵌合部
36 :コーキングスポンジ
50 :シール部材
51 :基部
52 :屈曲部
53 :リップ部
54 :接触面
55 :対向面
56 :嵌合部
90 :アウタパネル(ドア本体部)
91 :インナパネル(ドア本体部)
92 :エクステンションブラケット
93 :アウタリンフォース
94 :ヘミング部
96 :段差部