(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】配管システム
(51)【国際特許分類】
F17D 5/02 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F17D5/02
(21)【出願番号】P 2020016713
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】与謝 国平
(72)【発明者】
【氏名】原嶋 寛
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017932(JP,A)
【文献】特開2021-092935(JP,A)
【文献】実開平01-109699(JP,U)
【文献】特開昭61-004587(JP,A)
【文献】特開2014-205092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 1/00 - 5/08
A62C 2/00 - 99/00
C02F 1/44 - 1/78
E03C 1/00 - 1/10
F24D 17/00 - 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から供給される用水が流れる主管を備えた配管システムであって、
前記主管が、第1ユースポイントが設けられた上流側配管と第2ユースポイントが設けられた下流側配管とで構成され、
前記下流側配管が、前記上流側配管よりも小さな流路断面積を有し、
前記主管における前記第1ユースポイントの下流側に接続されて前記第2ユースポイントをバイパスするバイパス管を有し、前記バイパス管の流量により、前記下流側配管の流速を調整する調整部をさらに備え
、
前記調整部は、前記下流側配管および前記バイパス管の少なくとも一方に配設された流量調整弁と、前記下流側配管における流速に関する計測器と、を有し、前記計測器の計測結果に基づいて前記流量調整弁を制御する
配管システム。
【請求項2】
前記計測器は、前記下流側配管における前記第2ユースポイントの下流側に配設されている
請求項
1に記載の配管システム。
【請求項3】
前記下流側配管に接続され、前記下流側配管を通過した前記用水を前記供給源に還流する還流管をさらに備え、
前記調整部は、前記バイパス管が前記下流側配管における前記第2ユースポイントの下流側に接続され、前記バイパス管に前記用水が流れる状態を維持しながら前記下流側配管の流速を調整する
請求項
1または2に記載の配管システム。
【請求項4】
供給源から供給される用水が流れる主管を備えた配管システムであって、
前記主管が、第1ユースポイントが設けられた上流側配管と第2ユースポイントが設けられた下流側配管とで構成され、
前記下流側配管が、前記上流側配管よりも小さな流路断面積を有し、
前記主管における前記第1ユースポイントの下流側に接続されて前記第2ユースポイントをバイパスするバイパス管を有し、前記バイパス管の流量により、前記下流側配管の流速を調整する調整部
と、
前記下流側配管に接続され、前記下流側配管を通過した前記用水を前記供給源に還流する還流管と、をさらに備え、
前記調整部は、前記バイパス管が前記下流側配管における前記第2ユースポイントの下流側に接続され、前記バイパス管に前記用水が流れる状態を維持しながら前記下流側配管の流速を調整する
配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッドレグが形成される配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、精密機械部品、電子部品等を生産する工場には、各所に設置されたユースポイントに用水を供給する配管システムが設けられている。配管システムは、供給源が供給する用水が流れる主管と主管から分岐する枝管とを備えている。枝管の一例は、先端に閉止機構として開閉弁が設けられてユースポイントまで用水を運ぶ配管である。枝管の他の例は、先端に閉止機構として計器が設けられた配管である。こうした枝管においては、用水が滞留した状態にあるとき、その用水の滞留に起因した水質の低下が懸念されるデッドレグが形成される。こうしたデッドレグによる水質の低下を抑えるべく、非特許文献1参照には、日本厚生労働省の指針として、主管の中心から枝管の先端の閉止機構までの距離を示すデッドレグ長さを枝管内径の6倍以内にすること、可能であれば3倍以内にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】GMP構造設備要求比較 製造用水設備 001:デッドレグの定義と設定、[online]、一般社団法人 製剤機械技術学会 ホームページ、[令和2年1月31日検索]インターネット、〈URL:https://www.seikiken.or.jp/gmp/gmp_hikaku/hikaku_test.html#yousui001〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した配管システムにおいては、上流側に位置するユースポイントにおいて用水の使用量が大きくなるほど、主管の下流側に位置するデッドレグにおいて用水が滞留しやすくなる。
【0005】
本発明は、用水の滞留が抑えられる配管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する配管システムは、供給源から供給される用水が流れる主管を備えた配管システムであって、前記主管が、第1ユースポイントが設けられた上流側配管と第2ユースポイントが設けられた下流側配管とで構成され、前記下流側配管が、前記上流側配管よりも小さな流路断面積を有し、前記主管における前記第1ユースポイントの下流側に接続されて前記第2ユースポイントをバイパスするバイパス管を有し、前記バイパス管の流量により、前記下流側配管の流速を調整する調整部をさらに備える。
【0007】
上記構成の配管システムにおいて、前記調整部は、前記下流側配管および前記バイパス管の少なくとも一方に流量調整弁を有することが好ましい。
上記構成の配管システムにおいて、前記調整部は、前記下流側配管における流速に関する計測器を有し、前記計測器の計測結果に基づいて前記流量調整弁を制御することが好ましい。
【0008】
上記構成の配管システムにおいて、前記計測器は、前記下流側配管における前記第2ユースポイントの下流側に配設されていることが好ましい。
上記構成の配管システムは、前記下流側配管に接続され、前記下流側配管を通過した前記用水を前記供給源に還流する還流管をさらに備え、前記調整部は、前記バイパス管が前記下流側配管における前記第2ユースポイントの下流側に接続され、前記バイパス管に前記用水が流れる状態を維持しながら前記下流側配管の流速を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管システムにおける用水の滞留が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】配管システムの一実施形態を模式的に示す図。
【
図2】調整部の概略構成の一例を示す機能ブロック図。
【
図4】変形例において、調整部の概略構成の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図3を参照して、配管システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、配管システム10は、清浄な用水を供給する供給源11を有している。供給源11は、清浄な用水を貯留するタンク12と、タンク12内の用水を主管15に供給するポンプ13とで構成されている。ポンプ13は、予め設定された流量の用水を主管15に供給する。なお、配管システム10を構成する各配管は、ステンレス鋼鋼管、例えばJISに規定された配管用ステンレス鋼鋼管で構成される。
【0012】
主管15は、供給源11を基準として用水を循環可能に構成されている。配管システム10は、主管15におけるポンプ13の下流側の部分とタンク12とを接続する供給量調整管16を有している。供給量調整管16には、第1供給量調整弁17が配設されている。また、配管システム10は、主管15における供給量調整管16の接続部分の下流側に、第2供給量調整弁18と供給量計測器19とを有している。第1供給量調整弁17と第2供給量調整弁18とを調整することにより、主管15に流入する用水の流量を調整する。配管システム10は、供給量計測器19の計測値に基づいて、第1供給量調整弁17および第2供給量調整弁18の開度が調整されることにより、主管15への用水の供給量Qが精度よく調整可能に構成されている。なお、主管15への用水の供給量Qは、供給量調整管16を通じてタンク12に還流される用水を含まない量である。
【0013】
主管15は、上流側配管21、下流側配管22、還流管23、および、排水管24を有している。
上流側配管21は、ポンプ13に接続されている。上流側配管21には、第2供給量調整弁18および供給量計測器19の下流側に1以上の第1ユースポイント25が設けられている。第1ユースポイント25の一部は、主管15から分岐する第1枝管26と、第1枝管26の先端に設けられた閉止機構である第1開閉弁27とで構成されている。また、上流側配管21には、主管15を流れる用水の性状を上流側配管21において計測するための第1計器用枝管28が接続されており、その第1計器用枝管28の先端には閉止機構として第1計器29が配設されている。
【0014】
主管15への用水の供給量Q、および、上流側配管21の流路断面積である上流側断面積S1は、例えば、各ユースポイントにおける用水の用途などから各時刻における用水の使用量をユースポイントごとに予測した使用予測情報に基づいて、次のように設定される。以下では、上流側断面積S1は、JISに規定された配管用ステンレス鋼鋼管のサイズに基づく値、すなわち呼び径および呼び厚さに基づく値である。
【0015】
供給量Qおよび上流側断面積S1の設定は、主管15が上流側配管21のみで構成されていると仮定して行われる。供給量Qおよび上流側断面積S1は、供給量Qを上流側断面積S1で除算した値である最大流速v11(=Q/S1)が適正流速範囲の上限値よりも小さくなるように設定される。また、供給量Qおよび上流側断面積S1は、使用予測情報に基づく配管システム10全体としての最大使用量で供給量Qを減算した最小流量Qminを、上流側断面積S1で除算した値である最小流速v12(=Qmin/S1)が適正流速範囲の下限値よりも大きくなるように設定される。なお、配管用ステンレス鋼鋼管においては、適正流速範囲の下限値は0.3m/s、好ましくは0.5m/sであり、適正流速範囲の上限値は2.0m/s、好ましくは1.5m/sである。
【0016】
下流側配管22は、分流点30において、上流側配管21の下流端に対して図示されない継手を介して接続されている。下流側配管22は、上流側配管21よりも小さな流路断面積を有している。下流側配管22には、1以上の第2ユースポイント31が設けられている。第2ユースポイント31の一部は、主管15から分岐する第2枝管32と、第2枝管32の先端に設けられた閉止機構である第2開閉弁33とで構成されている。また、下流側配管22には、主管15を流れる用水の性状を下流側配管22において計測するための第2計器用枝管34が接続されており、その第2計器用枝管34の先端には閉止機構として第2計器35が配設されている。
【0017】
下流側配管22の流路断面積である下流側断面積S2は、後述するバイパス管41の断面積であるバイパス断面積S3との合計値が上流側断面積S1に近い値となるように設定される。下流側断面積S2は、上流側断面積S1と同様に、JISに規定された配管用ステンレス鋼鋼管のサイズに基づく値、すなわち呼び径および呼び厚さに基づく値である。
【0018】
本実施形態において、主管15は、各ユースポイントの下流側における流量に基づいて上流側配管21と下流側配管22とに分けられる。
具体的には、供給量Qと使用予測情報とに基づいて、主管15における各ユースポイントの下流側の流量を時刻ごとに算出し、各ユースポイントの平均流量を算出する。そして、平均流量が供給量Qの1/2を下回るユースポイントよりも上流側に位置するユースポイントが接続される配管を上流側配管21として設定し、それ以外のユースポイントが接続される配管を下流側配管22として設定する。すなわち、主管15において流速が遅くなりやすい部分が下流側配管22に設定される。
【0019】
還流管23は、下流側配管22の下流端とタンク12とに接続された配管である。還流管23には、還流管23を開閉可能な循環弁36が配設されている。配管システム10は、循環弁36が開状態にあるときに、下流側配管22と後述するバイパス管41を通過した用水をタンク12へ還流可能に構成されている。
【0020】
排水管24は、還流管23から分岐し、下流端が開放された配管である。排水管24には、排水管24を開閉可能な排水弁37が配設されている。配管システム10は、排水弁37が開状態にあるとき、主管15を流れる用水を外部へと排水可能に構成されている。
【0021】
配管システム10は、下流側配管22における用水の流量、すなわち、下流側配管22における用水の流速を調整する調整部40を有している。調整部40は、バイパス管41、下流側流量調整弁42、バイパス流量調整弁43、下流側流量計測器44、バイパス流量計測器45、および、制御装置50を有している。
【0022】
バイパス管41は、主管15における第1ユースポイント25の下流側から分岐して第2ユースポイント31をバイパスする配管である。バイパス管41は、上流側配管21よりも小さな流路断面積を有している。バイパス管41は、分流点30において上流側配管21の下流端に対して図示されない継手を介して接続され、合流点38において下流側配管22の下流端に対して図示されない継手を介して接続されている。バイパス管41の流路断面積であるバイパス断面積S3は、上述したように下流側断面積S2との合計値が上流側断面積S1に近い値となるように設定される。バイパス断面積S3は、上流側断面積S1と同様に、JISに規定された配管用ステンレス鋼鋼管のサイズに基づく値、すなわち呼び径および呼び厚さに基づく値である。
【0023】
下流側流量調整弁42は、下流側配管22における各第2ユースポイント31よりも上流側に配設された自動弁である。下流側流量調整弁42は、弁体が閉方向へ変位することにより、下流側配管22への用水の流入量を小さくするとともにバイパス管41への用水の流入量を大きくする。また、下流側流量調整弁42は、弁体が開方向へ変位することにより、下流側配管22への用水の流入量を大きくするとともにバイパス管41への用水の流入量を小さくする。
【0024】
バイパス流量調整弁43は、バイパス管41に配設された自動弁である。バイパス流量調整弁43は、弁体が閉方向へ変位することにより、下流側配管22への用水の流入量を大きくするとともにバイパス管41への用水の流入量を小さくする。また、バイパス流量調整弁43は、弁体が開方向へ変位することにより、下流側配管22への用水の流入量を小さくするとともにバイパス管41への用水の流入量を大きくする。
【0025】
下流側流量計測器44は、下流側配管22における全ての第2ユースポイント31の下流側に配設されており、下流側配管22からの用水の流出量を下流側流量Q2として計測する。下流側流量計測器44は、その計測した下流側流量Q2を示す信号を制御装置50に出力する。なお、この下流側流量Q2と下流側断面積S2とに基づく下流側流速v2(=Q2/S2)は、下流側配管22において最も小さい流速である。
【0026】
バイパス流量計測器45は、バイパス管41におけるバイパス流量調整弁43の下流側に配設されており、バイパス管41への用水の流入量であるバイパス流量Q3を計測する。バイパス流量計測器45は、その計測したバイパス流量Q3を示す信号を制御装置50に出力する。
【0027】
制御装置50は、各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。制御装置50は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0028】
制御装置50は、下流側流量計測器44が出力した下流側流量Q2、および、バイパス流量計測器45が出力したバイパス流量Q3を取得する。そして制御装置50は、その取得した下流側流量Q2およびバイパス流量Q3に基づいて、下流側流量調整弁42の開度とバイパス流量調整弁43の開度とを制御し、流速を調整する調整処理を行う。
【0029】
図2に示すように、制御装置50は、流量取得部51、流速演算部52、弁制御部53、および、記憶部54を有している。
流量取得部51は、下流側流量Q2とバイパス流量Q3とを取得する。
【0030】
流速演算部52は、下流側流量Q2に基づいて下流側流速v2を演算し、バイパス流量Q3に基づいてバイパス流速v3を演算する。
弁制御部53は、下流側流速v2およびバイパス流速v3に基づいて、下流側流量調整弁42の開度とバイパス流量調整弁43の開度とを制御する。
【0031】
記憶部54には、主管15に対する用水の供給量Q、流速演算部52の演算に用いられる下流側断面積S2およびバイパス断面積S3、各流量調整弁42,43の開度制御に必要な閾値などが記憶されている。
【0032】
図3に示すように、調整処理において、制御装置50は、流量取得処理を行う(ステップS101)。ここでは、流量取得部51は、下流側流量計測器44からの信号に基づいて下流側流量Q2を取得するとともに、バイパス流量計測器45からの信号に基づいてバイパス流量Q3を取得する。
【0033】
次に、制御装置50は、流速演算処理を行う(ステップS102)。ここでは、流速演算部52は、流量取得部51が取得した下流側流量Q2と記憶部54に記憶されている下流側断面積S2とに基づいて、下流側流速v2(=Q2/S2)を演算する。また流速演算部52は、流量取得部51が取得したバイパス流量Q3と記憶部54に記憶されているバイパス断面積S3とに基づいて、バイパス管41における流速であるバイパス流速v3(=Q3/S3)を演算する。
【0034】
次に、制御装置50は、開度制御処理を行う(ステップS103)。ここでは、弁制御部53は、流速演算部52の演算した下流側流速v2が下限流速vminよりも大きく、かつ、上限流速vmaxよりも小さくなるように、下流側流量調整弁42の開度およびバイパス流量調整弁43の開度を制御する。下限流速vminおよび上限流速vmaxは、各流量調整弁42,43の制御に必要な閾値である。本実施形態において、下流側流速v2は、下流側配管22から流出する用水の流速、すなわち、下流側配管22における用水の最低流速である。そのため、下限流速vminは、適正流速範囲の下限値よりも大きな値に設定される。上限流速vmaxは、第2ユースポイント31における用水の使用、および、下流側配管22に流入する用水の流速が適正流速範囲を超えないこと、これらを考慮して適正流速範囲の上限値よりも小さな値に設定される。また、弁制御部53は、流速演算部52の演算したバイパス流速v3が下限流速vminよりも大きく、かつ、上限流速vmaxよりも小さくなるように、下流側流量調整弁42の開度およびバイパス流量調整弁43の開度を制御する。なお、弁制御部53は、下流側流速v2が上限流速vmaxに近づくように、下流側流量調整弁42の開度およびバイパス流量調整弁43の開度を制御することが好ましい。
【0035】
配管システム10においては、開閉弁27,33が設けられたユースポイント25,31を構成する枝管26,32においては、用水の滞留に起因した水質の低下が懸念されるデッドレグが形成される。本発明者らは、デッドレグについて各種実験等を行った結果、主管15における枝管の接続部分の流速が大きいほど、その枝管において用水が滞留しにくいこと、すなわちデッドレグに起因した水質の低下が抑えられることを見出した。
【0036】
上述した配管システム10においては、流速が小さくなりやすい部分である主管15の下流側が、上流側配管21よりも小さな断面積を有する下流側配管22で構成されている。また、配管システム10は、調整部40により、下流側配管22の下流側流速v2が下限流速vminよりも大きく、かつ、上限流速vmaxよりも小さい状態に維持されるように構成されている。これにより、下流側配管22における用水の流速が小さくなることが抑えられる。
【0037】
本実施形態の効果について説明する。
(1)配管システム10の構成によれば、第1ユースポイント25における用水の使用により下流側配管22に対する用水の流入量が減少したとしても、主管15の下流側において用水の滞留を抑えることができる。
【0038】
(2)本発明者らは、各種実験等を通じて、主管15における枝管の接続部分の流速が大きいほど、デッドレグ長さの許容値を大きく設定することができることを見出した。また、配管システム10においては、より大きな流速に下流側配管22における流速を設定することができる。これらのことから、配管システム10においては、第2ユースポイント31におけるデッドレグ長さの許容値を大きくすることができる。その結果、より小さな内径の配管で第2枝管32を構成することが可能となり、配管システム10のコストの上昇を抑えることができる。
【0039】
(3)調整部40は、バイパス管41に配設されたバイパス流量調整弁43を有している。これにより、バイパス流量Q3の調整を通じて下流側流量Q2、すなわち下流側流速v2を調整することができる。
【0040】
(4)調整部40は、下流側配管22に配設された下流側流量調整弁42を有している。これにより、下流側配管22の下流側流量Q2を直接的に調整することができる。
(5)調整部40は、下流側流量調整弁42およびバイパス流量調整弁43双方の開度制御により流量調整を行っている。このため、下流側流量Q2およびバイパス流量Q3を高い応答性のもとで制御することができる。
【0041】
(6)調整部40は、下流側流量計測器44およびバイパス流量計測器45の計測結果に基づいて、下流側流量Q2およびバイパス流量Q3の調整を行っている。これにより、下流側流量Q2およびバイパス流量Q3の調整を高い精度で行うことができる。
【0042】
(7)下流側流量計測器44は、下流側配管22における第2ユースポイント31の下流側、すなわち、下流側配管22において最も流量が少なくなる部分における流量を計測する。これにより、下流側配管22においては、下流側流量Q2に基づく下流側流速v2よりも大きな流速で用水が流れることとなる。その結果、下流側配管22における用水の滞留を効果的に抑えることができる。
【0043】
(8)配管システム10は、下流側配管22を通過した用水を供給源11に還流する還流管23を備えている。また、調整部40は、下流側配管22にバイパス管41が接続されており、下流側流速v2およびバイパス流速v3の双方が適正流速範囲に収まるように、下流側流量Q2およびバイパス流量Q3を調整している。これにより、下流側配管22およびバイパス管41において、滞留による水質の低下が抑えられた用水を供給源11に還流することができる。
【0044】
(9)下流側流速v2およびバイパス流速v3の下限流速vminが適正流速範囲の下限値よりも大きな値に設定され、上限流速vmaxが適正流速範囲の上限値よりも小さな値に設定される。これにより、下流側配管22およびバイパス管41における用水の滞留を抑えることができる。
【0045】
(10)下流側流速v2が上限流速vmaxに近づくように下流側流量Q2が制御されることによって、主管15の下流側における用水の滞留をより効果的に抑えることができる。
【0046】
(11)下流側断面積S2がバイパス断面積S3よりも小さいことにより、下流側流速v2が大きい状態が維持されやすくなる。これにより、下流側配管22における用水の滞留を効果的に抑えることができる。
【0047】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・バイパス管41は、下流側配管22に接続される構成に限らず、バイパス管41を通過した用水が全て排水される構成であってもよい。この構成においては、上述した実施形態と同様の開度制御によりバイパス流量調整弁43を制御し、下流側流量Q2の調整を行うことができる。また、他の開度制御として閉状態を含む開度制御によりバイパス流量調整弁43を制御し、下流側流量Q2の調整を行うこともできる。
【0048】
・下流側配管22は、還流管23に接続される構成に限らず、下流側配管22を通過した用水が全て排水される構成であってもよい。
・調整部40は、下流側流量Q2およびバイパス流量Q3の計測結果に基づいて、下流側流量調整弁42およびバイパス流量調整弁43の開度制御を行う構成に限られない。調整部40は、下流側流量Q2の計測結果のみに基づいて開度制御を行ってもよい。また、調整部40は、上流側配管21を通過する用水の通過量を演算したうえで、バイパス流量Q3の計測結果のみに基づいて開度制御を行ってもよい。
【0049】
・下流側流量計測器44は、下流側配管22における用水の流量を計測する構成であればよい。そのため、下流側流量計測器44は、下流側配管22への用水の流入量を計測する構成であってもよい。こうした構成においては、上限流速vmaxが、適正流速範囲の上限値に設定される。
【0050】
・調整部40は、下流側流量計測器44に代えて下流側流速計測器を有し、下流側流速計測器が計測する下流側流速v2に基づいて、下流側流量調整弁42の開度およびバイパス流量調整弁43の開度を制御してもよい。
【0051】
・調整部40は、バイパス流量計測器45に代えてバイパス流速計測器を有し、バイパス速計測器が計測するバイパス流速v3に基づいて、下流側流量調整弁42の開度およびバイパス流量調整弁43の開度を制御してもよい。
【0052】
・調整部40は、バイパス流量Q3の流量により、下流側流量Q2を調整する構成であればよい。そのため、調整部40は、下流側流量調整弁42およびバイパス流量調整弁43のいずれか一方を有する構成であってもよい。こうした構成であっても、その流量調整弁によるバイパス流量Q3の流量調整を通じて、下流側流量Q2の調整を行うことができる。
【0053】
・
図4に示すように、調整部40は、下流側流量調整弁42およびバイパス流量調整弁43に代えて、上流側配管21、下流側配管22、および、バイパス管41が接続された三方弁60であってもよい。三方弁60は、自動弁であり、制御装置50によって下流側配管22に対する開度およびバイパス管41に対する開度が制御される。
【0054】
・配管システム10を構成する各配管は、配管用ステンレス鋼鋼管に限らず、例えば銅やアルミニウムなどの金属管であってもよいし、塩化ビニル管のような樹脂管であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…配管システム、11…供給源、12…タンク、13…ポンプ、15…主管、16…供給量調整管、17…第1供給量調整弁、18…第2供給量調整弁、19…供給量計測器、21…上流側配管、22…下流側配管、23…還流管、24…排水管、25…第1ユースポイント、26…第1枝管、27…第1開閉弁、28…第1計器用枝管、29…第1計器、30…分流点、31…第2ユースポイント、32…第2枝管、33…第2開閉弁、34…第2計器用枝管、35…第2計器、36…循環弁、37…排水弁、38…合流点、40…調整部、41…バイパス管、42…下流側流量調整弁、43…バイパス流量調整弁、44…下流側流量計測器、45…バイパス流量計測器、50…制御装置、51…流量取得部、52…流速演算部、53…弁制御部、54…記憶部、60…三方弁。